弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     一 原決定を取り消す。
     二 抗告人の行政事件訴訟法二二条一項に基づく参加申立てを許可す
る。
         理    由
 一 抗告人は、主文同旨の裁判を求め、相手方(原告)らは、抗告棄却の裁判を
求めた。
 二 抗告人の本件参加申立ては、相手方(原告)らが相手方中央労働委員会を被
告として提起した東京地方裁判所平成六年(行ウ)第七二号中労委救済申立棄却命
令取消請求事件について、相手方(原告)らの請求が認容され、救済申立棄却決定
が取り消されると、その取消判決によって抗告人の権利が害されることになると主
張して、抗告人が行政事件訴訟法二二条一項に基づき相手方中央労働委員会に訴訟
参加する旨を申し立てたものである。
 そこで検討すると、行政事件訴訟法二二条による参加が認められる当事者以外の
第三者は、その訴訟の結果により権利を害される者であることを要するとされてい
るのは規定上明らかである。そして、相手方中央労働委員会が救済命令に対する再
審査申立てを認容して、相手方(原告)らの救済申立てを棄却した命令の取消しを
求める右訴訟において、救済申立棄却命令が取り消されたとしても、これによって
抗告人にはなんらの権利義務の変動も生じないから、右命令の相手方当事者である
抗告人は、取消判決の効力によって直接<要旨>その権利を害されることにはならな
い。しかし、取消判決が確定した場合には、その拘束力(同法三三条)によ
って被告である相手方中央労働委員会が救済申立事件の相手方当事者である抗告人
に対する救済命令を発することがあり、それによつて抗告人の法律上の利益が害さ
れることがある。同法二二条による参加は、直接に第三者の権利義務の変動を及ぼ
す場合だけでなく、訴訟の結果の拘束力によって権利を害される場合をも対象とす
ると解すべきである。なお、このように解して、相手方(原告)らの救済命令申立
てに関する相手方当事者である抗告人を本件訴訟に参加させることが、仮に本件訴
訟の被告である相手方中央労働委員会が敗訴したときには、抗告人にも本件訴訟の
判決の拘束力を及ぼすことにより(同法三二条、三四条)、紛争の一回的解決に繋
がり、訴訟経済に資することにもなる。
 相手方(原告)らは、抗告人は本件訴訟において既に補助参加が認められてお
り、本件参加の利益がないと主張する。
 しかし、行政事件訴訟法二二条による参加が認められた第三者は、同条四項によ
り民事訴訟法六二条所定の必要的共同訴訟人の地位に関する規定が準用され、単な
る補助参加の場合以上の訴訟行為ができるのであるから、補助参加人としてできる
訴訟行為の範囲等について当事者間に顕著な争いがある本件訴訟においては、抗告
人に補助参加が認められているからといって、本件参加申立ての利益がないことに
はならない。相手方(原告)らの右主張は失当である。
 三 以上のとおり、抗告人は、行政事件訴訟法二二条所定の参加人適格を有する
から、その参加申立てを不適法として却下した原決定は不当である。
 よって、本件抗告は理由があるから、原決定を取り消して、抗告人の本件参加申
立てを許可することとし、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 稲葉威雄 裁判官 三輪和雄 裁判官 浅香紀久雄)

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