弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人Aの弁護人内水主一、同内水主計の上告趣意第一点について。
 論旨は、違憲をいう点もあるが、その実質は、単なる訴訟法違反の主張に帰し上
告適法の理由とならない。のみならず、原判決中の所論摘録の記載は、被告人Aに
対する検察官の量刑不当の控訴趣意に対する判断として、訴訟記録並びに第一審お
よび原審において取調べた諸証拠によつて認められる本件犯行の動機、態様、罪責
等について判示したものであり、その判示中には所論のように、「罪となるべき事
実」にわたる記載があることは明らかであるけれども、所論摘録の記載は、第一審
判決認定の判示第一の事実をより詳細に判示したに止まり、所論の如く、これと異
なる別個の罪となるべき事実を新らたに認定判示したものとは到底認められない。
それ故所論は、その前提において既に失当である。
 同第二点について。
 原判決は本件恐喝の動機、態様等について詳細判示した後、本件は「要するに博
徒の集団を背景とし、事の理非曲直を正当な手段によつて明らかにしようとはせず、
ただ自己の勢力や面目にかけても相手方をくじこうとし、そのため暴力手段に訴え
ることを辞しない犯行であり、民主社会の建設に背くこと甚だしいものがある。し
かも被告人の地位閲歴等は原審相被告人Bの如き若輩と比較にならぬほどその社会
における上位者であり、ひつきようBの担当した役割と被告人がこれに加功した程
度とをひきくらべてみて被告人の犯情軽いとはいえないものが認められ」と判示し
ているのであつて、その趣意とするところは、本件犯行における被告人Aの役割の
重要性を強調しひいて同被告人の本件犯罪の情状は軽いものとは認められないとい
うに帰するのであつて、所論のように、同被告人がC一家の総長であることをとら
え、単にそのことの故にこれを判決の前提又は背景とするとか或は抽象的に犯人の
地位閲歴の差異により犯人を区別し同被告人を若輩者たる一審相被告人Bとは量刑
上その処遇を差別すべきであるなどとの趣旨は少しも判示していないのであるから、
所論憲法違反の主張、判例違反の主張はいずれもその前提において失当であつて、
採るを得ない。
 同第三点について。
 論旨は、判例違反をいうが、引用判例が事案を異にする本件に不適切であつて上
告適法の理由とならない。のみならず控訴審が、第一審判決の事実認定には誤りが
ないがその量刑が不当であるとしてこれを破棄自判する場合には、証拠説明をする
必要はなく第一審判決の確定した事実に法令を適用して量刑すれば足りることは既
に当裁判所の判例(昭和二七年(あ)第六三一六号同二九年四月一三日第三小法廷
判決刑集八巻四号四六二頁、昭和三〇年(あ)第一九二四号同三〇年一二月一日第
一小法廷決定刑集九巻一三号二五七七頁各参照)とするところである。
 同第四点について。
 論旨は、原判決の理由そご、訴訟法違反の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当ら
ない。
 同第五点について。
 論旨は、事実誤認と訴訟法違反の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
 同第六点について。
 論旨は、違憲をいう点もあるが、実質は量刑不当の主張に帰し刑訴四〇五条の上
告理由に当らない。
 被告人Dの弁護人内水主一の上告趣意は量刑不当の主張で刑訴四〇五条の上告理
由に当らない。
 また記録を調べても本件に刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和三五年六月一三日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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