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裁判例


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平成29年10月6日宣告
平成29年第158号,同第233号住居侵入,殺人,詐欺,窃盗被告事件
主文
被告人を懲役18年に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1事業主体となる会社を順次変えながら住宅リフォーム工事の訪問販売等を業
として行っていた者であるが,平成22年以降,経営会社が数回にわたって特定
商取引に関する法律に基づく業務停止命令等の行政処分を受け,平成25年には,
その事業が捜査の対象とされて,経営会社と従業員が同法違反の罪により罰金刑
の言渡しを受け,自らも,その後不起訴処分(嫌疑不十分)となったものの同様
の容疑で逮捕されたほか,その頃,被告人らが悪徳リフォーム業者であるとする
テレビ番組が放送され,これらの背景には,平成21年3月に経営会社に入り,
平成22年に退職していった被害者が関係機関等に告発や情報提供を繰り返し
たことがあると考え同人を恨むようになっていたところ,平成28年8月頃には,
逮捕や実名報道等の影響で仕事がうまくいかず,従業員もいなくなった上,定ま
った住居も失うに至り,人生を諦めて投げやりな心境になったことを契機に,被
害者を殺害して恨みを晴らそうと思い,殺害に用いる出刃包丁等を準備するなど
した上,同人を殺害する目的で,同年10月7日頃,札幌市所在の同人方に玄関
から侵入し,同人(当時65歳)に対し,殺意をもって,前記出刃包丁でその胸
部を突き刺すなどし,よって,その頃,同所において,同人を心臓刺創による出
血性ショックにより死亡させて殺害し,
第2同年12月18日午前8時4分頃から同日午前8時7分頃までの間,北海道石
狩市所在の甲給油所において,同給油所従業員Aに対し,給油後に代金を支払う
意思もないのにあるように装い,手指3本を示すなどしてガソリンの給油を申し
込み,同人をして,給油後直ちに代金の支払を受けられるものと誤信させ,よっ
て,即時,同所において,同人から被告人使用の自動車に同給油所所長B管理の
レギュラーガソリン30リットル(販売価格3780円)の給油を受け,
第3平成29年1月11日午前8時3分頃から同日午前8時6分頃までの間,北海
道小樽市所在の乙給油所において,同給油所従業員Cに対し,給油後に代金を支
払う意思もないのにあるように装い,「満タン」と申し向けるなどしてガソリン
の給油を申し込み,同人をして,給油後直ちに代金の支払を受けられるものと誤
信させ,よって,即時,同所において,同人から被告人使用の前記自動車に同給
油所店長D管理のレギュラーガソリン約45.81リットル(販売価格5442
円)の給油を受け,
第4同月29日,札幌市所在の丙(店舗)において,商品として陳列されていた同
店店長E管理のカセットガスストーブ等2点(販売価格合計8097円)を窃取
し,
第5同年2月11日,前記同店舗1階に所在する丁書店において,商品として陳列
されていた同店店長F管理の書籍2冊(販売価格合計3672円)を窃取し
たものである。
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,殺人の点は
同法199条に,判示第2及び第3の各所為はいずれも同法246条1項に,判示第
4及び第5の各所為はいずれも同法235条にそれぞれ該当するところ,判示第1の
住居侵入と殺人との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条
により1罪として重い殺人罪の刑で処断することとし,判示第1の罪については所定
刑中有期懲役刑を,判示第4及び第5の各罪については各所定刑中いずれも懲役刑を
それぞれ選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10
条により最も重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲
役18年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入し,
訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととす
る。
(量刑の理由)
被告人は,被害者方アパートの下見を重ね帰宅時の様子を注意深く観察すると
ともに,包丁を複数そろえ,犯行後に現場に噴射しようと消火器を用意するなど入
念な準備をした上,犯行当日は,被害者方付近でその帰りを待ち,帰宅する姿を認
めると,思い描いていたとおり,被害者が自宅に入るタイミングを見計らって同所
への侵入を果たし,ほとんど間を置かずに被害者を仰向けに倒して馬乗りになり,
心臓を狙って胸部に強い力で出刃包丁を深く突き刺し,大量出血を惹き起こして死
亡させ,その頃更にその顔面を数回突き刺したというのである。犯行の手口は甚だ
残忍というほかなく,本件は計画的で強い殺意に基づく確信的犯行であって,厳し
い非難に値する。被告人は,いったん被害者方を出た後,持参していた消火器を携
えて同所に戻り消火剤を噴射したり,出刃包丁や着衣を処分したりするなど,犯行
の発覚等を防ごうとする行為にも出ている。犯行の結果はもとより重大であり,遺
族の悲しみも深い。
被告人が被害者に恨みを抱いた経緯について,検察官は,被告人の会社はリフォ
ーム詐欺を行う悪徳業者であったことが明らかで,そうである以上,その旨訴えて
いた被害者の告発等は主たる内容,目的,方法のいずれにあっても正当なものであ
るから,そこに落ち度はなく,犯行の動機は独りよがりな逆恨みにあり,酌量の余
地はない旨を主張する。これに対し,弁護人は,被害者の告発は虚偽や誇張を含み,
マスコミを利用し又は告発ビラを会社事務所の近隣に配布するといった方法の点
などでも被害者の行為はやりすぎであって,被害者には落ち度があった旨を主張す
る。そこで検討すると,被害者の告発内容には虚偽が含まれていた上,そこで述べ
られているほどまでに被告人らが組織的かつ悪質な業者であったかについては,そ
の事業実態等に関し関係者が直接的な証言をしているわけでもなく,決め手に欠け
るところであって,検察官の主張は根拠が十分とはいえない。しかし,被告人の事
業については,行政処分を複数回受け,刑事訴追の対象にもなっており,法令順守
の観点からかなり問題があったと認められ,被害者の告発等は全く根拠のない誹謗
中傷のたぐいではなかったと考えられるから,被害者において,前記のような方法
で殺害されるような落ち度があったとはいえない。被告人は,被害者が告発等を行
っていた間は相手にせず,これが止んで数年が経過した後,仕事や生活基盤を失い
人生を諦めて投げやりな心境になったことを契機に,被害者の殺害という最も過激
な行為に及ぶことを決意しており,自分本位というべきであって,その経緯等に酌
量の余地はないに等しい。
これらの事情に照らすと,本件の住居侵入,殺人の情状は相当重い。
なお,詐欺,窃盗の各犯行は常習性が認められ,被害額が必ずしも大きくはな
く全て弁償済みであるものの,その責任をあまり軽視するのは相当ではない。
2そこで,怨恨に基づく動機から計画的に刃物を用いて落ち度のない被害者1名を
殺害した単独犯の事案での量刑傾向等をふまえ,本件の住居侵入,殺人の量刑を検
討すると,準備の状況,手口の残忍さ,殺意の強さ,経緯等に酌量の余地がないこ
となどに照らせば,本件は情状が相当重い部類に属するというべきである。これに
窃盗及び詐欺の責任を加味すると,被告人に対しては相当重い刑をもって臨む必要
がある。そのほか,被告人は,殺害した被害者には謝罪の言葉を述べようとしない
など,反省の態度がうかがえないことをも考慮して,主文の刑を定めた。
3よって,主文のとおり判決する。
(求刑懲役20年)
平成29年10月16日
札幌地方裁判所刑事第3部
裁判長裁判官金子大作
裁判官坂田正史
裁判官山田雅秋

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