弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴は之を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す控訴人に対し被控訴人合資会社A商会は別紙目録記
載の不動産について名古屋法務局昭和二十三年八月十三日受附第一〇八四〇号を以
て為された同年六月一日附売買を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続を為
せ、被控訴人Bは同不動産について名古屋法務局昭和二十七年三月一日受附第四〇
一〇号を以て為された同年二月二十七日附売買を原因とする所有権移転登記の抹消
登記手続を為せ、被控訴人東和相互融資株式会社は同不動産について名古屋法務局
昭和二十八年七月十八日受附第八五八六号を以て為された同年七月十六日附売買を
原因よする所有権移転登記の抹消登記手続を為せ、訴訟費用は第一、二審共被控訴
人等の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上の主張は原判決事実摘示と同一であるから之を引用する。
 証拠として被控訴代理人は甲第一乃至第四号証を提出し控訴代理人は原審証人C
の証言並びに原審に於ける被控訴人合資会社A商会代表者D及び被控訴人東和相互
融資株式会社代表者E各本人尋問の結果を援用し甲号各証の成立を認めた。
         理    由
 成立に争の無い甲第一、二号証によれば本件不動産は昭和二十年三月十五日死亡
したFの所有に属していたことが認められる。而してF死亡に基く相続関係につい
ては当裁判所は原判決と同一の見解に立つものである。従て本件不動産は原判示の
相続関係の推移によつて控訴人とGとの共有関係にあつたものと判断する。此の点
に関する原判決の説明は総て之を引用する。而して成立に争無い甲第一号証原審に
於ける被控訴人合資会社A商会代表者D同じく東和相互融資株式会社代表者Eの各
本人尋問の結果に依れば、Gは本件不動産を被控訴人合資会社A商会に控訴人主張
の日時に売渡し、次で同商会から被控訴人Bに更に同人から被控訴人東和相互融資
株式会社に順次売渡され、夫々控訴人主張のように登記手続を経由されたことを認
めることが出来る。
 <要旨>そこで問題はGの右処分行為がその処分後の認知に依つて共有者の関係に
立つことになつた控訴人と被控訴人A商会やその後の転得者である爾余の被
控訴人等との間にどのような効力をもつであろうかどうかと云うことである。民法
第七百八十四条によれば認知は出生の時に遡つて効力を生ずるが第三者の既得権を
害することを得ないと定めている。その趣旨は遡つて認知されたからと云つても共
同相続人のような地位は別として被認知者の認知と出生との間に既に生じている法
律関係を動揺さすべきではない。即ちこうすることによつて取引の安定を期せんと
するに在るものと考えるから本件の場合に在つてもGの前示行為は控訴人との間に
於てどのように調整さるべきやの問題は別論として被控訴人等に対しては聊かも影
響無く被控訴人等は何れもその得たる権利を確保し得らるるものと云わなければな
らない。而して此の場合Gから被控訴人A商会に対して為された前示移転登記がそ
の登記名義人であつたFの名義を使用して経由されたとしても被控訴人A商会の権
利取得には柳かも支障あるものでない。従つて同商会の為めに為された前示登記も
無効となるべきものでもなくその後の権利、移転登記については尚更である。左す
れば以上と同趣旨の下に控訴人の本訴請求を排斥した原判決は相当で本件控訴は棄
却すべきものである。
 仍て民事訴訟法第三百八十四条第八十九条第九十五条に則り主文の通り判決す
る。
 (裁判長裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 渡辺門偉男 裁判官 海部安昌)
(別紙目録省略)

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