弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人酒井武義の上告理由第一点について。
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決(その引用する第一審判決を含む。
以下同じ。)の挙示する証拠関係により是認するに足り、その判断の過程に所論の
違法はない。論旨は採用することができない。
 同第二点について。
 所論判示部分がその引用にかかる第一審判決中、訴外更生会社が本件建物を訴外
Dから買い受けてその所有権を取得した旨の認定部分を指すものであることは、原
判決の判文自体によつて明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用す
ることができない。
 同第三点について。
 記録に徴すると、本件訴訟は、訴訟更生会社の管財人に選任された被上告人B1、
同B2の両名が右会社の管財人として共同原告となり、弁護士福村武雄に第一審手
続の訴訟代理を委任し、同弁護士が訴訟代理人となつてその訴訟手続を追行し、昭
和四三年一月二四日終結した口頭弁論に基づいて第一審判決が言い渡されたもので
あるが、右第一審判決に対し上告人から控訴申立がなされたのに応じて、被上告人
三名から、原裁判所に対し、本件訴訟が第一審に係属中の昭和四二年一一月四日金
沢地方裁判所の決定により、新たに被上告人B3が訴外更生会社の管財人に追加選
任されたため、被上告人B1、同B2は訴訟追行権を失い、訴訟手続の中断事由を
生じたから、あらためて被上告人三名において本件訴訟手続を受け継ぐ旨の訴訟手
続受継の申立および第一審判決の敗訴部分に対する附帯控訴の申立をしたので、原
裁判所は、右受継申立に基づいて被上告人三名を被控訴人兼附帯控訴人として訴訟
手続を進行させ、原判決を言い渡したことが明らかである。
 ところで、更生会社の管財人が数人あるときは、その数人は、原則として、共同
して職務を行なうことを要し、数人の管財人を当事者とする訴訟がいわゆる固有必
要的共同訴訟に属することは所論のとおりである。したがつて、本件のように数人
の管財人によつて適法に追行されて来た訴訟の係属中に、さらに新たな管財人が追
加選任されたときは、その選任の時以後は、従来の管財人だけでは訴訟を追行する
権限を失い、従来の管財人と新たに追加選任された管財人とが共同してのみ訴訟を
追行する権限を有することになるが、かような場合においても、当事者適格を欠く
者の追行する訴訟として直ちに右訴が不適法になるものではなく、新管財人を含む
全管財人が一体として従来の管財人により追行されて来た訴訟上の地位を承継する
とともに、民訴法二一二条一項の類推適用により、その訴訟手続きが中断し、全管
財人においてその訴訟手続きを受け継ぐことを要することになるものと解するのが
相当である。
 しかるところ、本訴の第一審においては、被上告人B1、同B2の訴訟代理人と
して福村弁護士が選任されていたことは前記のとおりであるから、被上告人B3が
管財人に追加選任され、訴訟に承継を生じたことによつては、本件訴訟手続は中断
せず、第一審判決が被上告人らの代理人に送達された時にはじめて中断したものと
いうべきであり、承継前の当事者である被上告人B1、同B2のみを原告と表示し
た第一審判決にはなんら違法はなかつたものといわなければならない。のみならず、
右第一審判決に対する上告人の控訴に伴つて被上告人三名が訴訟手続を受継したこ
とにより、前記中断は解消したことが明らかであるから、その訴訟手続に基づいて
なされた原判決にもなんら違法はない。論旨は、独自の見解に立つて原判決を非難
するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    関   根   小   郷

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