弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告理由は末尾添附別紙記載の通りでありこれに対する当裁判所の判断は次ぎの
如くである。
 地方自治法における選舉に関する訴訟においては市委員会(市選舉管理委員会の
意以下同じ)の処分に対して不服ある者は必ず県委員会(県選挙管理委員会の意以
下同じ)に対する訴願を経なければ高等裁判所に対する訴を提起すること出来ない
のであるから高等裁判所に提起する訴における不服の対象となるものは先ず第一次
的には右訴願に対する県委員会の裁決であつて市委員会の処分ではない筈である、
(この事は県委員会が市委員会の処分を取消した場合については疑ない処である)
されば此訴は不服の対象たる裁判をした者でない市委員会を相手とするよりは右の
裁決をした県委員会を相手とする方が筋が通るわけである、只県委員会が市委員会
の処分を支持した場合及本件の如く訴願を形式的理由で却下した場合においては訴
の終局の目的は市委員会の処分を取消すことにあるのだし、市委員会を被告として
も其の訴に対する裁判は行政事件特例法第一二条に於いて県委員会をも拘束するで
あらうから市委員会を被告としてもいいではないかとの説もある。
 しかし前記の様に県委員会が市委員会の処分を取消した場合は県委員会を被告と
しなければならないから、此場合には県委員会を被告とし然らざる場合は市委員会
を被告とするというのは統一を欠く嫌がないでもない、それのみならず、処分―訴
願―訴訟と行く順序からいつても訴訟においては訴願庁を相手とするのが本筋であ
るといわなければならない。
 此場合行政事件訴訟特例法第三条が適用あるか否かは争のある処であるが、適用
あるものとすれば同条にいう「処分を為した行政庁」とは県委員会であり「処分」
とは訴願に対する裁決である)そして県委員会を被告とした訴に対する裁判は同法
第一二条によつて、市委員会をも拘束するから本件において原審に対して県委員会
を被告として市委員会の告示の取消を求むる訴が提起されてある以上これによつて
原告(上告人)の目的は十分達せられるであろう。それ故(たとえ市委員会を被告
としても訴を提起し得るとする説を採るとしても)市委員会に対する訴は最早全く
其必要のないものであるから原審がこれを却下したことは結局違法でないこととな
り論旨は総て理由なきに帰する。
 よつて民事訴訟法第三九六条、第三八四条、第九五条、第八九条に従つて主文の
如く判決する。
 以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井           登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    穂   積   重   遠

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