弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人等を免訴する。
         理    由
 検察官山井浩の上告受理申立について。
 本件公訴事実の要旨は、昭和二二年九月、A労働組合(以下A労組と略称する。)
は、中央労働委員会に対し、賃金制の改訂等数項目について調停の申請をなし、同
二三年三月二五日A労組と経営者会議との間に仮協定が成立したが、その後更にA
労組は経営者会議に要求を提出し、紛争中のところ、被告人B、同C、同D、同E、
同F、同Gは同年一〇月一三日から一四日にかけ、A労組H支部の常任執行委員会
において、不当弾圧に対する抗議ストライキを含めて、進駐軍関係、保安関係の一
部を除き福岡県下一斉に全面的停電を実行することを謀議し、同月一五日、一六日、
組合員I外数十名をして、県下数発電所、変電所の接続器、スイツチ等を切断せし
め、電気の供給を停止し、その他停電ストライキ、野放送電ストライキを敢行し、
よつて、電気の供給を妨害し、被告人Jは同月六日A労組H支部K分会内において、
分会役員十数名とストライキ対策を協議した上ストライキ計画を決定し、同月八日、
九日、一一日にわたり停電ストライキ、野放送電ストライキを敢行し、被告人L、
同Mは、被告人Jの指導の下に、同月一五日停電ストライキを敢行し、よつて電気
の供給を妨害し、以つて、それぞれ電気事業法三三条に違反したというのである。
これに対し原審は、本件争議行為は、いずれも第二次電産争議に関連してその目的
達成のため為されたものであり、正当な争議行為の範囲を逸脱したものではないか
ら、被告人等の本件行為は、労働組合法一条二項によつてその違法性を阻却せらる
べき場合に該当すると判断し、被告人等に対し無罪の言渡をしたのであるが、右電
気事業法違反に関する検察官の上告受理申立の要旨は、原判決は労働関係調整法七
条、三七条、労働組合法一条二項の解釈を誤り、罪となるべき事実に不当に電気事
業法三三条を適用しない違法があるというのであつて、右申立は当裁判所において
受理されている。職権で調査すると右電気事業法は、昭和二五年政令三四三号公益
事業令附則二項によつて廃止され、同令は同年一二月一五日から施行されたが、同
令附則二一項は、「この政令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、
第二項及び前項の規定にかかわらず、なお従前の例による。」と規定していた。と
ころが、昭和二七年法律八一号ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃
止に関する法律によつて、昭和二〇年勅令五四二号に基く命令、即ち所謂ポツダム
命令は、別に法律で、その廃止又は存続に関する措置がなされない場合においては、
同法施行の日たる昭和二七年四月二八日から起算して一八〇日間に限り法律として
の効力を有するもとせられたが、右一八〇日の最終日は同年一〇月二四日に当ると
ころ、同日迄に公益事業令に関する立法上の措置は何らなされることなくして経過
したのであつて、従つて同令は右一〇月二四日限り失効したものと解すべきである。
よつて本件公訴事実については、犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当ると
解すべきであるから、検察官の上告受理申立につき判断を与えるまでもなく、刑訴
施行法三条の二、刑訴四一一条五号により、原判決を破棄し、刑訴施行法二条、旧
刑訴四四八条に則り当裁判所において更に判決をすることとし、同四五五条、三六
三条二号により被告人に対し免訴の言渡をすべきものとし、主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官田中耕太郎、同斎藤悠輔、同本村善太郎の反対意見を除き、裁
判官全員一致の意見によるものである。
 裁判官田中耕太郎、同斎藤悠輔及び同本村善太郎の反対意見
 本件公訴事実は、要するに、被告人B、同C、同D、同E、同F、同G等は共謀
の上昭和二三年一〇月一五日及び一六日、被告人Jは同年同月八日、九日及び一一
日、被告人L、同Mは同年同月一五日いずれも昭和六年法律六一号電気事業法三三
条一項に該当する違反行為をしたというのである。
 しかるに、右電気事業法は、右犯行後昭和二五年一一月二四日政令三四三号公益
事業令に吸収されるとともに(電気事業法三三条一項は、公益事業令八三条一項に
吸収)、同令附則二項により廃止されたが、同時に同附則二一項(罰則の経過規定)
において、この政令の施行前にした行為に対する罰則の適用については、第二項及
び前項の規定にかかわらず、なお従前の例によると規定されているから、被告人等
に対する本件公訴事実については、なお従前の電気事業法三三条一項を適用すべく、
右公益事業令の罰則(八三条一項)を適用すべきものでないこと明白である。従つ
て、その後右公益事業令が失効したとしても、その失効により刑の廃止があつたと
して本件被告人等を免訴すべきでないこと多言を要しない。
 しかのみならず、元来わが現行の刑事法においては、犯罪行為の可罰性とこれに
科すべき刑罰は、犯罪行為時法によるべきであつて、判決時法によるべきではなく
(刑法改正ノ綱領四〇、改正刑法仮案六条参照)、ただ判決時に犯罪後の法律に因
り刑の変更があつたときは、刑法六条の規定により例外として軽き刑罰を科し、ま
た、判決時に犯罪後の法令により刑が廃止されたときは、刑訴法の規定により免訴
の言渡をなすに過ぎない。そして、刑訴三三七条二号に「犯罪後の法令により刑が
廃止されたとき。」(旧刑訴三六三条二号に「犯罪後ノ法令ニ因刑ノ廃止アリルト
キ」)とは、読んで字のごとく、既に発生成立した刑罰が犯罪後発布された法令に
より廃止(放棄)されたときを指すものであつて、刑罰を規定した法令そのものが
犯罪後一時失効し又は犯罪後単に将来に向つて廃止されたに過ぎないような場合を
いうものではない。されば、電気事業法を吸収しこれとその内容を同じくする公益
事業令が多数説の説くごとく、昭和二七年一〇月二四日限り失効したとしても、そ
れは、同令が単に将来に向つて一時失効しただけで、犯罪後発布された法令により
既成の刑罰を廃止(放棄)したものではないから(しかも、同年同月同日に効力を
有していた右旧公益事業令は、同年一二月二七日法律三四一号電気及びガスに関す
る臨時措置に関する法律により新らたに法律が制定施行されるまでの間罰則をも含
め全面的に法律としてそのままその効力を維持されたのであるから、その失効期間
は僅か六〇余日に過ぎないのであつて、この点からいつても公益事業令の失効は既
成の刑罰を廃止(放棄)したものと見ることはできないばかりでなく、むしろ、反
対に、従前の刑罰を廃止(放棄)しない国家意思であること毫も疑を容れない。)、
仮りに本件につき旧公益事業令の適用があるものとしても、刑訴三三七条二号(旧
刑訴三六三条二号)に該当しないこと明白である。
 裁判官霜山精一は退官につき合議に関与しない。
 検察官 安平政吉、神山欣治出席
  昭和二九年一一月一〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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