弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1一審原告の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。
()一審被告は一審原告に対し,2858万9173円及びこれに対す1
る平成14年4月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支
払え。
()一審原告のその余の請求を棄却する。2
2一審被告の控訴を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを5分し,その2を一審原告の,
その余を一審被告の,各負担とする。
4この判決は,第1項()に限り,仮に執行することができる。1
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1一審原告
()原判決を次のとおり変更する。1
()一審被告は,一審原告に対し,5464万2300円及びこれに対する2
平成14年4月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2一審被告
()原判決中,一審被告敗訴部分を取り消す。1
()一審原告の請求を棄却する。2
第2事案の概要
1本件は,火災保険契約の保険の目的としていた工場が火災に遭い損害を被っ
たとして,保険契約者である一審原告が保険者である一審被告に対し,火災保
険契約に基づき,火災保険金及び商事法定利率による遅延損害金の支払を請求
している事案である。原審が請求の一部を認容したところ,双方が控訴した。
2前提事実
原判決の「第2事案の概要」欄の第1項に「争いのない事実等」として摘
示されているところと同一であるから,これ(同2頁8行目から4頁16行目
まで)を引用する。
3争点及びこれを巡る当事者の主張
()原審におけるそれは,原判決7頁15行目の「北側窓の両端の下部の」1
を「及び同入口から北側にある2箇所の西側窓の中間にある」と,同11頁
5行目に「被告の反論」とあるのを「一審原告の反論」と,それぞれ改める
ほかは,原判決の「第2事案の概要」欄の第2項「争点」のとおりである
から,これ(同4頁17行目から11頁9行目まで)を引用する。ただし,
後記()の当審での追加主張(一審原告の重過失又は法令違反)を争点()と22
し,以下「一審原告の不実申告の有無」を争点()「本件火災による一審,,3
」,。原告の損害額及び支払われるべき保険金額を争点()と順次繰り下げる4
したがって,後記()は争点()についての補充主張ということになる。34
()当審での追加主張(一審原告の重過失又は法令違反)2
(一審被告)
ア本件約款2条1項()は,法人である保険契約者,被保険者の理事,取1
締役または法人の業務を執行するその他の機関に,重大な過失または法令
違反があったときは,保険金を支払わないと定めている。
イところで,消防法は,指定数量以上の危険物の貯蔵を禁止し,消防署長
の承認を得た場合に一時的貯蔵を認めているが,その数量は,政令で定め
られ「10立方メートル以上の木材加工品及び木くず」が「指定数量以,
上の危険物」とされているところ(同法10条,9条の3(ただし,平成
16年法律第65号による改正前のもの。以下同じ,危険物の規制に。)
関する政令1条の12,別表4,一審原告代表者は,本件工場に,これ)
を上回る多数の木製建具及び部材その他を貯蔵していたし,これについて
消防署長の承認を取っていなかった。一審原告代表者が,この消防法の規
定に違反しなければ本件火災は発生していなかったし,かつ,消防法に従
うことは国民の義務でもあるので,それに従った措置を取らなかったこと
は重大な過失であり,法令違反である。
ウまた,上記木材加工品及び木くずは,指定可燃物であって,a市火災予
防条例で定める「可燃性個体類等以外の指定可燃物」に該当するから,同
条例34条に定めた技術上の基準に従って貯蔵,取扱をしなければならな
い。同条例は,①当該貯蔵場所でみだりに火気を使用することを禁じ,
②貯蔵場所の整理・清掃などを命じ,③木くず等の定期的な廃棄を命
じ,④必要な事項を記載した掲示板を設置することを命じているが,一
審原告代表者は,本件工場に10立方メートル以上の木材加工品があるこ
とを認識しながら,これらに全く従っていない。これは,上記の本件約款
2条1項()の法令違反に当たる。1
(一審原告)
ア一審被告の上記主張は,時機に遅れた攻撃防御方法として却下されるべ
きである。
イ消防法10条にいう危険物は同法別表第1に掲げる物品を指す同「」,(
法2条7項。木材加工品や木くずは,同法9条の3のいわゆる「指定可)
」,「」,。燃物であって危険物ではないから同法10条の問題は生じない
また,免責事由となる法令違反や重過失は,あくまでそれらによって損
害等が発生した場合でなければならないのに,その点の具体的な主張を欠
いている。
ウ一審原告が指定可燃物である木材加工品や木くずを保管していたことは
争わないが,上記イと同様に,それによって損害等が生じたとの具体的な
主張がないから,主張自体失当である。また,一審原告が調査したところ
では,a市の同業者で消防署に届けている例はない。
()当審での補充主張(一審原告の損害など)3
(一審原告)
ア原審が損害認定の根拠にしている鑑定書(乙12,以下「鑑定書」とい
う)を作成したのは,一審被告の費用負担で損害の調査に当たる評価人。
であって,専門性はあっても中立性はない。今回の鑑定書についても,一
審原告側の聞取りをしないなどの調査方法,本件火災直後に調査に入りな
がら,訴訟提起後約1年して提出したことなどは,一審被告寄りの結果を
窺わせるもので,信用できない。
イ新工場について,鑑定書は,その被害総額(ただし,旧工場を含む)を
1099万2000円としているが,これは一審原告が工事を依頼した専
門業者の見積より大幅に少なく合理性がない。少なくとも,一審原告が応
急工事のため支払った1540万円と未着工部分の予定額1240万円を
合算した2780万円が必要である。すなわち,一審原告は,融資などで
,,その資金を調達して工事をしているので無駄な工事ができるわけがなく
工事は当然原状回復の範囲と推認できるし,新工場について,一部(特に
2階部分)の改修をしたことで,建物全体の耐用年数が延びるわけではな
く,時価は増加しないのに,減価償却率に相当する額を減額するのは不当
である。
旧工場の建物損害額は,一審原告の見積書のとおり34万8760円と
すべきである。
ウ新工場内の設備・什器等の時価について,鑑定書は,帳簿に記載された
取得価格を無視して高額な再調達価格を設定し,評価に当たって耐用年数
について一般より大きい2倍という修正係数を用い,減価償却率を最低5
0パーセントとするなどの操作をして,一般的な損害査定よりその時価額
を高くした。それにより,時価額を一審原告の保険金額を上回る額にする
ことで,一部保険の状態を作り出し,損害額を制限している。これは,本
件各火災保険契約時に一審原告と一審被告の代理店とが検討の上で,保険
価額を決めてそれに見合う保険金額を合意してきたことに反し,信義則違
反である。
主要機械設備の修理費用は,特に争わないが,大半は時価額を上回る修
理は行われておらず,修理により時価額が増加することはないのに,増加
したとして減価償却分を損益相殺するのは不当である。また,一審原告が
本件火災後,器具工具を買い替えたうちの多くの部分について,その必要
を認めず,買い替えや取り替えをした物のうち,価額が10万円とか20
万円以下で,税法上消耗品等として減価償却を行わない物まで,減価償却
して減価したことは不当である。
エまた,旧工場内の設備・什器等についても,評価方法について同様の問
題がある。
修理費用は特に問題はないが,一部の機械について,根拠も示さずに過
大な修理であるとして減額したこと(一部の機械は可動可能なように応急
修理をしたが,それだけでも一審被告のいう価額を超えている)や,現。
に買い替えているのに買替えが必要と認めなかったこと,買替えや取替え
等を理由に減価償却するのは不当である。
オ新工場内の製品・原材料について,特に原材料の一部をデッドストック
として大幅に減価しているが,高価な建具類も存在したし,国産材はむし
ろ現在は入手困難の貴重品でその取得価格を下回ることはないから,不当
である。
カ残存物取り片付け費用については,一審原告が提出した業者の見積書は
工場の建物の片付け費用を含んでいるし,損害保険の10パーセントとい
ってもそもそも損害保険金の認定を誤っている。
(一審被告)
ア鑑定書は,相応の専門的知識を有する評価人によって公正に作成された
もので,問題はない。本件各火災保険契約は,いわゆる時価保険であるか
ら,本件火災当時での原状回復を目的とする以上,購入代金や取替え,交
換については,減価償却等の修正により本件火災当時の時価を算定するこ
とが必要なことは当然である。
イ新工場について,一審原告が現に工事代金を支出したからといって,そ
れが,原状回復の範囲であるとの推認は働かない。この点は,旧工場につ
いても同様である。
ウ新工場内の設備・什器等については,一審原告のいう取得価格は単に一
審原告が法人成りをする前から簿価がそうなっているというだけで,実際
にその価格で購入したものではない。また,修正係数や減価償却率は,評
価人がその機械に応じて所定の幅の中で適正に判断した結果であって,一
審原告の主張は理由がない(特に耐用年数を一審原告の主張どおりにする
と,本件火災当時,既に耐用年数を超過して使用できない機械があったこ
とになり,使用していたという一審原告の主張と矛盾する。。)
さらに,修理すれば耐用年数が延びるのは公知の事実である。一審原告
が買い替えたからといって,それが必要であったとは限らない。また,消
耗品等として減価償却がないと税法が規定している事実はなく(法人税法
施行令133条,133条の2参照,仮にあったとしても時価保険であ)
る以上,減価償却するのは当然である。
以上は,旧工場内の設備・什器等についても,同様である。
なお,一審原告は,一部保険などするはずはないというが,実際には,
火災の可能性と負担する保険金額を考えて,そのようにする例も多い。
第3当裁判所の判断
1争点(1)について
()一審被告は,一審原告が本件火災保険金を請求するについては,本件火1
災が偶然な事故であることを一審原告において主張立証すべきであると主張
するが,これは採用できない。そうではなくて,一審被告が保険金の支払義
務を免れるためには,一審原告に故意又は重過失があることなどの免責事由
があることを主張立証しなければならないものである。
()ところで,この点に関する一審被告の主張は,要するに,本件火災は一2
審原告代表者の意を受けた者による放火であるから,一審被告に保険金支払
義務はないというものである以下同主張について①本件火災の原因放。,,(
火によるものであるか否か,②放火だとして,それが一審原告代表者の関)
与によるものであるかどうかについて,項を改めて順次検討する。
()本件火災の原因3
ア一審被告は,本件火災現場には独立した出火箇所が複数ある旨,及びそ
れら複数の出火箇所から油分が検出されている旨主張する。そして,bの
鑑定意見書(乙2)及び原審証人bの証言(以下,これらを一括して「b
見解,鑑定意見書を「b意見書」という)は上記前段の主張に沿うも」。
のであり(むしろ,一審被告の上記前段の主張はb見解に全面的に依拠す
るものであることが明らかである,後段の主張に沿うものとしてはc。)
の「火災焼残物の分析(d」報告書(乙3,以下「c報告」という))。
がある。
ほぼ同時期に,複数の箇所から独立して出火し,それらの箇所から,本
件工場には存在しない筈のガソリン成分が検出されたとなると,まず放火
以外には考えられないから,これらの点が肯定されるならば,本件火災が
放火によるものであることは確実である。
イそこで,まず本件火災の出火箇所が複数あるとするb見解について検討
する。
(ア)ところで,b見解が独立の出火箇所であるとする各箇所の本件火災
鎮火後の状況は,原判決14頁2行目から15頁7行目までのとおりで
ある(ただし,次の点を付加訂正する。。)
(a)同14頁9行目の「木毛板」の次に「木くずをセメントで固め(
た板で,難燃性」を,同10行目の「木毛板は」の次に「火炎によ)
って白化しているが」を,同12行目から13行目にかけての「木,
毛板は」の次に「H型鋼①に近い部分を除き」を,それぞれ加える。
(b)同14行目から16行目までを「③H型鋼①の北側のH型鋼②
には火炎で炭化した板が立てかけられたままで,その根元付近(□
1)には切断された電線が置かれており,付近の木毛板の焼きが強
く,鉄製の筋交いの根元付近が変形し,一部が白く変色している。
また,H型鋼①とH型鋼②との間には,高さ約20センチメートル
の焼残物が堆積している(甲⑦ないし⑩,⑫,の1,乙1(№1029
),(⑪,⑲,原審証人eないし項」と改める。2814456458))。
(c)同15頁6行目の「スレート」の前に「外壁」を加える。
(イ)上記認定にかかる□1ないし□5の状況は,これらの箇所の焼燬の
程度がいずれもかなり顕著であることを物語っている。そして,そのよ
うな事実は,これらの箇所から出火したのではないかと考える根拠にな
り得るものといってよい。b意見書はまさにそのような見解にほかなら
ないが,同時に,同意見書においては,これらの箇所から油分が検出さ
れているということ(これは,おそらくはc報告を踏まえた指摘であろ
う)が重要な判断要素となったことが見てとれるのである。。
(ウ)これに対し,a消防署作成の火災調査書(甲8,火災原因判定書)
()(,「」甲9及び原審証人eの証言以下前二者を一括して消防署見解
という並びにf作成の火災原因調査報告書甲の1・2以下f。)(,「29
見解」という)は,いずれも本件工場1階西側の階段付近(ほぼ□1。
付近と見てよいが,f見解では,もう少し階段寄りの地点で,甲の29
2の添付図面である1階平面図に書き込まれた◎2付近であるとされ
る)から出火したとしている。。
(エ)消防署関係者はもちろん,b,f両名も,火災の原因究明について
の専門家であり,特に,後二者は,その方面の鑑定等も多数手がけた経
歴を有することからして,その見解には重みがある。
もっとも,消防署関係者が通報を受けて本件火災現場に駆け付けたの
は当然であるが,bも本件火災の痕跡が未だ生々しい平成14年2月2
3日には本件火災現場に赴いて現場を実際に見分しているのであるか
ら,本件火災現場の状況を直接把握した上での見解であるということが
できるのに対し,fが本件工場に足を運んだのは平成17年3月26日
のことであるから,f見解の調査資料及び判定方法は,火災現場の写真
やそれまでに蓄積された裁判資料の分析検討が主たるものにならざるを
。,,,得ないという制約があるしかしながらこの種の鑑定は多くの場合
そのような限られた資料に基づいてなされるものであろうことは見易い
ところである。むしろ,f見解は,後発的なものであるが故に,消防署
見解やb見解をも踏まえつつ,かつ,それらを批判的に分析し,冷静か
つ客観的に考察することが可能になっているということができるのであ
り,その考察内容及び結論も説得力がある。特に,焼燬の程度が強いと
いうことについて「発熱量が高いものが燃えたり,燃焼速度の大きい,
ものが燃えた場合に強い焼けの跡が残ることになる」のであり,それを
「出火箇所として捉えるのは一面的にすぎる」という指摘は,b見解に
対する的確な批判となっているし,b見解において独立した出火箇所で
ある可能性があるとされる本件工場の1階階段付近(□1及び□2。た
だし,f見解によれば,より正確には◎1及び◎2であるとされる,。)
同2階西側木製流し台(□4)付近,同スチール机(□5)付近,2階
北側の壁下部(□3及び△2)付近の各焼燬状況の分析も,極めて具体
的かつ実証的であって,説得力に富んでいるものということができる。
そして,上記(ウ)のとおり,f見解は,消防署見解ともほぼ同じ結論
に到達しているのである。加えて,本件火災の第一発見者である一審原
。,,,告代表者の二男gの現認状況とも概ね符合するすなわちgは同夜
外で友人と遊んでいたが,さらにドライブに行くことになり車を取りに
,,,帰ってキーを探していたところ火災警報機が鳴ったというのであり
その後「工場入口から入って左側の階段の下あたりに火の手が上がっ,
ているの見つけた(甲「その箇所は,d付近の配置図(甲の」),1910
添付図面)の⑨,⑫が指し示しているあたりである」と証言しているの
である(当審における証言。なお,一審被告は,gの陳述等がいくつ)
かの点で食い違っていることや,同人が,仕事もせず,当日も午後4時
ころまで寝ていて,それから遊びに行くような生活を送っていた若者で
あるという点を指摘するなどして,同人の証言等は信用できない旨強調
するが,その指摘のようなことがあるからといって,同人の証言等の信
用性を否定すべきであるということにはならない。
(オ)しかも,b見解がいう「独立した出火箇所」ということの意味は,
文字どおり,そこから独自に出火したということであり,単に,そこに
助燃剤や易燃性の物質が存在していたために,他の箇所から出火した火
。,が引火して激しく燃えたというにとどまらない筈であるそうであれば
b見解によれば,□3ないし□5でもほぼ同時に放火により出火したと
いうことになるが,このように近接した場所にガソリンないしはそれに
類した易燃性の油分を撒くなどして,順次放火するなどということは想
定しにくいことであるから,そのうちどこか1箇所に点火して順次他の
箇所に燃え移らせたということになろう。これと同じことは,□1及び
□2の関係についても当てはまるし,さらには,□3ないし□5と□1
及び□2との関係についてもいえるのである。すなわち,放火の犯人が
1階西側出入り口から逃走したとするならば,□3ないし□5のいずれ
かに点火した後,逃げる間際に,□1或いは□2に放火したか,それと
も,先行して□3ないし□5にガソリン類を撒いた後,1階西側出入り
口から逃走する間際に,□1或いは□2に放火し,そこから燃え上がっ
た火から□3ないし□5のガソリン類に引火したということが考えられ
るのである。仮に後者だとすると,そのような場合をも独立した出火場
所ということができるのか甚だ疑問であって,せいぜいのところ,これ
らの各箇所が激しく燃えており,しかもそれらの箇所から油分が検出さ
れたということが指摘されるにとどまるべきものである。
そうすると,ここで重要なのは,上記各箇所が独立した出火箇所であ
るということではなく,それらの箇所から油分が検出されたということ
になる筋合いである。
(カ)以上によれば,本件火災の出火箇所が,□1ないし□5というよう
に複数箇所あったとするb見解には疑問があるものといわなければなら
ない。
これに対して,出火箇所は本件工場1階の階段付近とするf見解や消
防署見解はそれなりの説得力を有するものというべきであるが,その場
,,合においても□1ないし□5からガソリン成分が検出されたとすれば
上記(オ)のいずれかの手順による放火である可能性は十分残されている
ことになるから,この点の検討が重要になってくる。
ウそこで,本件火災現場から油分が検出されたとするc報告について検討
する。これは,それ自体が一審被告の上記主張を支える重要な要素である
とともに,上記イ(イ)のとおり,b見解が導かれる要因にもなっているこ
とが窺われるから,いわば二重の意味で一審被告の主張を支えていたもの
である。上記イ(カ)のとおりb見解が斥けられた今,一審被告の主張の正
否はまさにこの点にかかっているのである。
(ア)c報告の資料分析の手法や経過及びその結果に対して,格別疑問を
差し挟むべき点はない(ただし,乙3の表紙(1枚目及び2枚目)にそ
の作成日付として「2002年6月」とあるのは同年11月の誤りであ
。)。「」(,「」。),るhの油分検出意見書甲以下h意見書というも14
c報告の検査結果そのものに疑問を差し挟むものではない。
(イ)ところで,その資料とされた焼残物は,平成14年2月23日に,
i損保調査事務所が採取したものであり,その採取箇所は本件工場の1
階西側入口付近のH型鋼①,②及び同所付近の壁から,試料AないしD
(),(),(),採取番号1ないし4試料E採取番号7試料J採取番号5
試料K(採取番号6)が,同2階北側壁から試料F(採取番号8,試)
料G(採取番号9)が,同2階西側壁から試料L(採取番号10)が,
同2階西側流し台前の床面から試料H(採取番号13)及び同所の床面
をそぎ取った土状の試料M(採取番号11)が,同所付近に積まれてい
た角材横から試料I(採取番号14)が,同所付近のスチール机の机上
から試料N(採取番号12)が,それぞれ採取されたことが認められる
(乙1,7。)
しかるに,その具体的な採取方法ということになると,その状況を撮
(,,,,,,,,,)影した数枚の写真乙1の№17182326424653586065
,,,があるのみでありしかもそれとて必ずしも鮮明なものではないから
試料が真にあるべき方法で採取されたかどうか断じがたいのであって,
仮に,f見解で指摘されるように,同じ採取道具をその都度洗浄するこ
ともなく使用したとすれば,c報告の信用性の前提となるべき試料の正
確性についてさえ疑問が生じることにもなりかねない。
(ウ)さらには,そもそも,本件工場は木工品や建具の製造工場であると
ころからして,シンナーや塗料などの有機溶剤が多種多様に存在してい
たであろうことは疑いを容れない。
しかも,採取された試料は当然のことながらいろんな物質が複雑に混
,,,合している可能性があるのであってこのことはcの検査によっても
1度目と2度目の検査で,或いはガスクロマトグラフ分析法とガスクロ
マトグラフ質量分析法とで,同じ試料について異なる検査結果が出たり
したこともある(乙3,9,原審証人j)ということからも裏付けられ
る。また,ベンゾシクロブタン,ベンゾシクロペンタン,ベンゾシクロ
ヘキサン,メチルベンゾシクロペンタン,メチルシクロヘキサンなどの
脂環式炭化水素が検出されてはじめてガソリン成分が検出されたという
べきであるのに,それらが検出されていないからガソリン成分が存在し
ていたというには無理があるというh意見書の指摘を,それらはいずれ
もガソリン中の微量成分である(乙)というだけの理由で排斥して11
よいのかといえば,事は本件火災が放火によるものであるかどうかとい
う重大な争点に関わるものであるだけに,疑問なしとしない。c報告に
,,ある検査を担当した原審証人jも一審原告代理人の反対尋問に対して
いささか反発するような気配を示しながらではあるが「シンナーの可,
能性よりもガソリンの可能性が高いんではないかという判断をした」旨
の証言をするなど,断定を避けて慎重な言い回しにとどめているところ
である。
(エ)そうであれば,c報告にあるように,いくつかの試料についてガソ
リン又はガソリン類似の成分が検出されたからといって,本件工場に存
在する筈のないガソリン又はそれ類似の油分が検出されたということが
できるのかという素朴な疑問はなお払拭できないのである。
,,そうするとc報告についても慎重に受け止めることが必要であって
これのみをもって本件火災現場からガソリン又はガソリン類似の油分の
存在を認めることはできないものというべきである。
エ以上によれば,本件火災は何者かの放火によるものであるとの一審被告
の主張を認めることはできないことに帰する。さればといって,一審原告
が主張するように,その原因はタバコの火の不始末によるものである旨断
定することもできない。ただ,焼却炉からの火の粉が飛来してきたとも考
えにくく,漏電が原因であるとも考えられない(甲9)のに対して,本件
火災現場にタバコの吸殻も発見されていること(甲の<>,消防署見1028)
解やf見解もその可能性を否定していないことに照らせば,タバコの火の
不始末によるものである可能性はあるということはできる。
()一審原告代表者の本件火災への関与の有無4
上記()で検討したところによれば,本件火災原因が放火であるとは断じ3
難いのであるから,一審被告の上記主張は既にこの点において採用できない
ものというべきであり,一審原告代表者の関与の有無については検討するま
でもない。しかし,念のため検討すれば,本件火災当時の一審原告の経済状
況(経営状態)及び本件火災後の一審原告の動静については,原判決33頁
の冒頭から34頁13行目までに認定されているとおりであって,その点か
らしても,一審原告が本件火災を故意に引き起こすとは考えられない。
2争点()について2
()本件約款2条1項()には,法人である保険契約者,被保険者の理事,取11
締役または法人の業務を執行するその他の機関に,重大な過失または法令違
,()。,反があったときは保険金を支払わないと定められている甲6そして
,,,。一審被告は上記約款に基づき当審での追加主張イウのとおり主張する
ところで,一審原告はこの新主張について,時機に遅れた攻撃防御方法と
して却下すべきであると主張する。しかしながら,時機に遅れたものである
かどうかは,訴訟全体の審理経過を見て判断すべきところ,一審被告の新主
,,,張は新たな立証を要し訴訟の完結を遅延させるというものではないから
時機に遅れたものとはいえない。
()イについて2
一審被告が主張する消防法の規定(同法10条)の対象となる「危険物」
とは,同法2条7項で同法別表第1に掲げる物品を指すのであって,同法9
条の3のいわゆる「指定可燃物」とは異なる。すなわち,木材加工品や木く
ずは上記危険物に含まれないから,一審原告には同法10条違反の問題は生
じないものというべきである。
そうすると,一審被告の上記主張は,既にその前提において失当である。
()ウについて3
上記法令違反は,それが火災原因になった場合,若しくは火災について何
らかの寄与をしている場合におけるものというと解されるところ,一審被告
は,上記法令違反と本件火災との因果関係について具体的な主張をしていな
いことは一審原告の指摘するとおりである。また,仮に,当該法令違反が本
,,件火災に何らかの寄与をしているとしても一審原告が調査したところでは
a市の同業者で一審被告主張のような届出をしている例はないというのであ
るから,そのような法令違反についてまで,上記約款により一審被告の保険
金支払義務が免責されるというのは,保険契約者にとって酷に過ぎるものと
いうべきであって,到底採り得ないところである。
3争点()について3
一審被告主張のような約款(本件約款26条1,4項)があることは,当事
者間に争いがない。
しかしながら,本件について一審原告が提出した見積書(甲4,5の1ない
し4,甲7)は,いずれも各業者が修理に要する費用等を見積ったものであっ
て,それが結果的に鑑定書と相違したとしても,それは見解の相違というべき
であり,一審原告が不実の申告をしたということになるわけではない。また,
一部に被害を受けていない器具工具や存在しなかったものが見積もられたりし
ていることが認められるが,故意に架空請求したとまでは認められず,一審被
告の上記主張は採用できない。
4争点()について4
(,,,),,,()証拠甲8乙1によれば本件火災により新工場の1階11012
2階の各北側半分が焼失した(焼損面積約140平方メートル)こと,旧工
場は,延焼により,休憩室の一部内外装が焼損し,消化活動により屋根瓦が
破損やズレを生ずるなどしたこと,しかし,その他の部分も相当範囲にわた
って消化活動の放水で水をかぶる被害を受けたことが認められる。また,設
備・什器等については,新工場内の2階のそれでは,留め波くぎ打ち機,ダ
ボ錐,チップソーが全損したが,そのほかは黒煙や放水により汚損したにと
どまること,1階のそれは,昇降装置が使用不能になったほかは,全体的に
濡汚損にとどまったこと,他方,旧工場では,全体的に濡汚損にとどまるこ
と,以上の事実が認められる。
()ところで,上記焼損や汚損による損害については,一審被告から鑑定書2
が提出されている。一審原告は,これは「鑑定書」と銘打っているものの,
その実体は一審被告の依頼による調査会社の調査報告書にすぎず,客観性,
公正性を欠き,信用性が乏しいと批判するが,これに対置すべき「鑑定書」
を提出しているわけではなく,せいぜい修理費用等の見積書を提出し,それ
が本件火災による一審原告の損害であると主張するにとどまる。
しかしながら,一審原告の主張する修理費用等の合計額がそのまま損害で
あるとすることはできないから,以下の損害の算定においては,一審原告の
主張するところを鑑定書に基づいて吟味するという手法を採用するほかはな
い。もっとも,鑑定書に対する一審原告の上記懸念も理由がないわけではな
いから,この点には十分留意しなければならないが,鑑定書は,この種の損
害査定を業とする専門業者の手になるものである上,その内容もそれなりの
根拠に基づくものであり,中には一審原告の請求額を上回る査定がなされて
いる項目もあることなどに照らしても,それが客観性,公正性を欠くもので
あると決め付けることはできない。
以下,新旧両工場の建物損害,設備什器損害,製品原材料損害について,
順次検討する。
()新旧両工場の建物損害3
ア一審原告は,平成14年3月2日付けで,1期工事2010万円,2期
,(),工事1091万円合計3101万円とする見積書甲4を提出したが
その後,同年7月までに,1期工事の規模を縮小して工場の復旧工事(以
35下「復旧工事」という)を実施し,1540万円を支払ったこと(甲。
の1・2)が認められる。
しかし,上記見積書にある1期工事と2期工事の相互の関係は定かでな
く,重複している部分もあるのではないかと思われる(甲4,乙。こ17
の点はその後に提出された甲も同じである。また,一審原告は,復38。)
旧工事は応急工事にすぎない旨主張するけれども,とにもかくにも同工事
によって工場は現に再開され稼働していること,新工場の2階部分につい
てはかなり抜本的な修理がなされたものと認められること(以上,弁論の
全趣旨)からして,復旧工事の費用である上記1540万円をもって建物
損害の上限と見るのが相当である。
イところで,一審被告は,鑑定書に依拠して,上記1540万円をそのま
ま本件火災による損害とは認められないとする。すなわち,鑑定書では,
新工場について必要な工事は,2階について,内装(ただし,内壁は元々
なし,屋根ルーフデッキ,2階外壁スレート(下地木毛板を含む)の。)。
いずれも全面取替え及び焼損焼破した2階鋼製建具9か所(全13か所)
の取替え並びに変形が見られた鉄骨材の補修,1階については,1階外壁
スレートの一部取替え(下地木毛板を含む)に限られるとして,その合。
計1065万2000円,旧工場については休憩室の補修を中心に34万
円の各修理費を要するとした上,さらに減価償却(前者につき13パーセ
ント,後者につき10パーセント)をして,一審原告の建物損害は,新工
場分が926万7240円,旧工場分が30万6000円と査定されてい
る。そして,原審証人kは,復旧工事では,新工場について2階を全部取
り替えたも同然の工事がなされている旨証言する。
ウしかしながら,一般に火災による被害を受けた場合の修理は,必ずしも
現に焼失した部分だけを補修すればそれで足りるというものではなく,そ
の周辺部分はもとより,汚損の程度や当該建物の種類及び使用目的によっ
ては,単なる汚損部分をも含めて一括して修理の対象とする必要性があっ
たり,或いはその方がむしろ合理的であるという場合もあるものというべ
きである。
そこで,新旧両工場についてこの点を見るに,建物の種類及び使用目的
はいずれも作業場ないし作業場兼倉庫であって,住居ではないから,上記
の観点からしても補修の方法及び内容には自ずから限度があるというべき
であるが,木工品や建具等の製造工場であり,製品が汚損したり,傷つい
たりすることは禁物であることからすると,一審原告が1期工事を縮少し
た上で1540万円を投じて復旧工事をし,新工場の2階部分をほぼ全面
的にやり直したということも全く理由のないことではないものといわなけ
ればならない。
エところで,一審被告も,新工場につき1065万2000円,旧工場に
つき34万円,合計1099万2000円の修理費用を要することを認め
るのであるから,一審原告がした復旧工事費用1540万円のうち109
9万2000円を上回る440万8000円相当の工事が,上記ウの観点
から検討されなければならないことになるが,一審被告が必要な工事とし
て列挙するところ(上記イ)もそれなりの相当性を有するものというべき
であるから,上記440万8000円全額を本件火災による一審原告の損
害とするのも行き過ぎであって,そのうちの半額に相当する220万40
00円については一審原告において負担すべきものとし,その余が本件火
災により余儀なくされた修理費用であり,一審原告の損害であると見るの
が相当である。
そうすると,一審原告の建物損害は合計1319万6000円(新工場
につき1285万6000円,旧工場につき34万円)となる。なお,上
記イのとおり,一審被告は減価償却分を差し引くべきである旨主張すると
ころ,新旧両工場とも新築から本件火災時までそれなりの年月が経過して
,。いたのに復旧工事により当該施工部分は新しくなったことは確かである
しかしながら,旧工場についての補修はもとより,比較的規模の大きい新
工場のそれについても,あくまで建物の部分的な手直しにとどまるのであ
って,実質的には新築にも匹敵するとか,建物の躯体部分などが抜本的に
新しくなったために,建物全体の耐用年数が顕著に伸長されたというよう
な場合ではないのである。そうであれば,このような部分的な手直しにと
どまる場合にまで,それに要した工事費用額から減価償却分を控除するの
は相当でないものというべく,上記一審被告の主張は採用できない。
()設備・什器等の損害4
ア新工場内にあった設備・什器等は,原判決別表2のとおりであり(ただ
し,同表1枚目の符号32及び34の各請求内容欄に「マーター巻替え」
とあるのを「モーター巻替え」と,符号40の同欄に「ネアリング取替」
とあるのをベアリング取替えと同3枚目の8番目の名称摘要欄にチ「」,「
」「」,。),ップカーッターとあるのをチップカッターとそれぞれ訂正する
旧工場内にあった設備・什器は同別表3のとおりである(乙,弁論の12
全趣旨。)
そして,鑑定書によれば,新工場の設備・什器については,再調達価額
が合計4708万5856円であり,その内訳は,主要機械設備(動力設
備を含む)29台が合計4244万0342円,器具工具102台が合計
240万3330円,消費税相当額が224万2184円であり,20年
を実耐用年数として,それぞれの取得時期に応じて減価償却をすると,本
(),,,件火災時における価額保険価額はそれぞれ2791万0602円
144万1998円,146万7630円であり,その合計額は3082
万0230円であるとされ,旧工場のそれについては,再調達価額が合計
2066万5838円であり,その内訳は,主要機械設備19台が合計1
794万9500円,器具工具14台が合計173万2250円,消費税
相当額が98万4088円であり,上記同様に減価償却をすると,本件火
災時における価額(保険価額)は,それぞれ,936万2000円,10
3万9350円,52万0068円であり,その合計額は1092万14
18円であるとされている。
イところで,一審原告は,本件火災により,消耗品の修理・購入代として
合計289万5580円(甲5の1,機械修理及び工場内電気配線(取)
替え,交換を含む)の費用として合計396万7960円(甲5の2,)
ドア加工機等の点検・修理代(同上)として合計325万8000円(甲
5の3,消防用設備工事費として60万2000円(甲5の4,以上))
合計1072万3540円の損害を被ったとして,その旨の見積書を提出
している(もっとも,一審原告は,本訴請求においては,別表2,3のと
おり上記消防用設備工事費を除いた費用に消費税を加算した1062万7
618円を請求している。。)
他方,一審被告(鑑定書)は,新工場については,主要機械設備の修理
費用等が合計637万2960円,器具工具では,ホース類,ダボ錐,チ
ップソー,補助錐,チップカッターについて請求額どおり合計39万69
30円が認められ,旧工場については,主要機械設備の修理費用等が合計
49万4750円,器具工具ではホース類について請求額どおりの8万5
550円に限って認められるとした上,さらに適宜減価償却分を差し引い
て,新工場分が合計509万8430円,旧工場分が合計31万5982
円の限度で損害と認められるにとどまる旨主張する。
そこで,以下個別に検討する。
ウ(ア)新工場内の設備・什器等について
このうちの主要機械設備については,原判決別表2の(留め波ク33
ギ打機)を除いて,一審被告も一審原告の主張を認めている。そして,
同機械については,一審原告が比較的最近の平成10年1月に45万円
で購入したと説明している以上,同額が基準となり,それに減価償却を
した金額が当時の時価すなわち損害となることは当然であり,一審被告
が主張する36万9000円をもってその損害とするのが相当である。
また,その他の機械について請求されているのは,修理費用であるが,
その修理(例えば,モーター巻替え,ベアリング取替え)によって,そ
の機械の使用可能年数が伸びることで価値が増加したとも考えられる
が,その他の部分はそのままであることから必ずしも現実に価値が増加
したかは疑問も残るので,一律に減価するのは相当ではない。そこで,
①新価損害額(修理費)が100万円を超えるもの,②新価損害額
が取得金額の4分の1を超えるものについては,その修理費自体から価
値が増価しているであろうと推認できるので,減価の対象とするのが相
当である。なお,その減価率については,鑑定書は,対象となった主要
機械設備の新価損害額について,木工機械という性質を踏まえて50パ
ーセントを限度に各経過年数ごとに定めた(原審証人k)というのであ
るから,合理的な方法として採用できる。
次に,器具工具について見るに,ホース類,ダボ錐,チップソー,チ
,,ップカッターなどについては一審被告もこれらが全損したものとして
一審原告の請求どおりの金額での買い換えの必要を認めている(同表新
価損害額欄。ただ,買い換えることで当時の時価を上回ることから,)
一定の減価が必要であるところ,これらについては,取得年度,取得価
格も不明であるから,一審被告の主張するとおり,一律に40パーセン
トの減価をすることが合理的である。その余の器具工具については,2
階にあるものは黒煙や放水により汚損し,1階のそれは濡汚損したとい
うにとどまるから,いずれも基本的にふき取ればよいのであって,これ
について交換(買い換え)が必要であるとの立証はない。
以上によれば,原判決別表2のうち,全損した主要機械設備の,33
器具工具のうち,ホース類,ダボ錐,チップソー,チップカッターなど
については,同表「時価損害額」欄記載のとおりの損害額であるものと
。,,,認められるまた修理費が損害であるとされる機械設備のうち1928
,,,及び動力については,同じく同表「時価損害額」欄記32344042
載のとおり,一審被告の主張額どおりの額が損害として認められるにと
どまるが,その他の主要機械設備については,一審原告の請求損害額と
「」。,同額の新価損害額欄記載のとおりの損害が認められるしたがって
その損害額合計は,561万9333円(消費税を含む)となる。
(イ)旧工場内の設備什器について
このうちの主要機械設備については,原判決別表3の1の面取機,2
の奥田片欠機を除いて,すべて一審原告の主張する請求損害額自体は一
審被告も認めている。上記両機械については,その損害である修理内容
について,旧工場は,全体的に濡汚損にとどまるのに,なぜそのような
修理が必要であるかの立証がないので,一審被告が同表新価損害額欄で
認めている限度で認めることとする。その修理費については,時価保険
であることからくる減価をする必要があるが,その対象とすべき機械設
備については,上記(ア)で述べたところが妥当すると考える。これによ
れば,原判決別表3のうち,主要機械設備のうちについては,一審12
被告の主張する時価損害額が損害といえるが,その他は,一審原告の主
張する請求損害額と同額の新価損害額が損害となるとするのが相当であ
るさらに器具工具についてはホース類は一審被告も認めている新。,,(
価損害額欄)ところであるが,それを除いては争いがあり,それらにつ
いて特に修理・買い換えが必要であるとの立証があるとは認められない
から,それらは損害から除外するほかない。ホース類についても,時価
保険からくる減価をする必要があることは同様であり,その割合は同じ
く40パーセントが相当である。
,(。)。上記の損害額の合計は54万8184円消費税を含むとなる
(ウ)そうであれば,一審原告が受けた新旧工場内の設備什器の損害は,
616万7517円となる。
()製品・原材料の損害5
ア証拠(甲,乙1,)によれば,本件火災によって,出火場所に近1012
い新工場2階の流し台付近に保管されていた原材料は,焼損しており,そ
の他の2階にあった物も黒煙や消火水を被って汚損し,1階部分に保存さ
れていた原材料は出火場所に近い場所では消火水による多大な濡汚損を被
っていることが認められる。しかしながら,焼損被害を受けた物は勿論の
こと,一審原告の業務内容に照らせば,軽微な濡汚損被害であっても,発
注者への納品は困難と判断されるから,新工場の製品・原材料は,全損と
評価するのが相当である。鑑定書によれば,新工場内に存在し,一審原告
から原判決別表4−1の請求金額欄のとおり請求された製品・原材料等に
ついて,同別表4−2のとおり単価を補正した上,別表4−1の査定金額
欄記載のとおり,在庫金額及び損害額を合計456万3177円としてい
る。
この補正に対して,一審原告は,原材料についてデッドストックとして
一律50パーセント減価をしている点を非難するが,取得時期も明確でな
い原材料について,それが将来製品として利用される可能性は乏しいと考
えられるし,一審原告が強調する国産材に該当する材料の占める割合も不
明であること,経年による劣化も考えられることを考慮すると,減価はや
むを得ないし,一審被告の評価が不当であるとはいえない。また,その他
の単価の補正についても,一審原告から必要な資料の提出を受けて,実際
の値引き後の売価率,製造原価率を算出するなど(原審証人k,合理的)
な手順を踏んで評価していると考えられるところである。
イまた,鑑定書によれば,旧工場内に存在した製品・原材料について,一
審原告から提出された原判決別表5−1の請求金額欄記載の在庫金額一覧
(合計316万0450円)等に基づき,別表5−2記載のとおりの単価
の補正をした上,在庫金額及び損害額を同別表の査定金額欄のとおり合計
291万1294円と,また,延焼した2階休憩室にあった同別表記載3
ないし5の仕掛品及び同9の製品については,納品不能となったことが認
められるとして,別表5−2記載のとおりの補正をした上で,同別表5−
1のとおり,損害額を合計163万4044円としていることが認められ
る。これらの補正についても,評価人が,上記アと同様に一審原告から必
要な資料の提出を受けてしたもので,合理的な評価であると認められる。
5支払われるべき保険金額
()次のとおり付加,訂正するほか,原判決42頁3行目から47頁8行目1
までのとおりであるから,これを引用する。
ア同42頁12行目を
保険金額「
保険価額の80パーセントに相当する額」
イ同43頁初行から2行目にかけての「上記3()イで認定した損害額で1
ある926万7240円」を「上記4()エで認定した損害額1285万3
6000円」と,同15行目の「上記3()ウ」を「上記4()エ」と,同13
19行目の「上記3()イ」を「上記4()ア」と,それぞれ改める。24
ウ同44頁の初行から3行目までを
「上記算式に従って算出すると341万8615円となる。
15,000,000
30,820,2300.8×
じ」と,)
損害額×と改める。
×5,619,333(円未満四捨五入,以下同=3,418,615
×548,814
同21,22行目を
「算出すると18万8442円となる。
3,000,000
10,921,4180.8×
エ同45頁3行目の上記3(3)アを上記4(5)アと同9行目の上「」「」,「
記3(3)イ」を「上記4(5)イ」と,同14行目を
1,000,000
2,911,2940.8×
オ同46頁6行目から7行目にかけて85万6393円とあるのを8「」「
8万7184円」と,同8行目に「31万0171円」とあるのを「34
万1862円」と,同9行目に「45万6317円」とあるのを「45万
6318円」と,同10行目に「1万9746円」とあるのを「1万88
44円」と,同11行目に「7万0159円」とあるのを「7万0160
円」と,それぞれ改める。
カ同47頁6行目から8行目までを
「払われるべき保険金額は合計2858万9173円となる。
12,856,000+340,000+3,418,615+188,442+4,563,177+701,597+545,9
58+50,400+887,184+5,000,000+37,80028,589,173」と,それぞれ改=
める。
(2)なお,一審原告は,一審被告(鑑定書)は新工場内の設備・什器等の時
価について,一審原告の保険金額を上回る額にすることで,一部保険の状態
を作り出し,損害額を制限しているなどと非難するが(上記第2の3()ウ3
の一審原告の主張,一審被告(鑑定書)がそのような意図的な操作をして)
いるとは認められず,むしろ鑑定書の上記評価は相当であるということがで
きるから,上記主張は採用することができない。
6そうであれば,一審原告の請求は,2858万9173円及びこれに対する
」,。=188,442(円)とそれぞれ改める

×1,634,044」,。=701,597(円)とそれぞれ改める
本件請求の日の翌日である平成14年4月11日から支払済みまで商事法定利
率年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるが,その
余は失当として棄却を免れない。これと結論を異にする原判決は変更を免れな
い。したがって,一審原告の控訴は一部理由があるが,一審被告の控訴は理由
がないこととなる。
よって,主文のとおり判決する。
福岡高等裁判所第3民事部
裁判長裁判官西理
裁判官有吉一郎
裁判官吉岡茂之

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