弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴会社は控訴人に対し、原判決別紙第
一目録の不動産につき旭川地方法務局昭和三九年一月二四日受付第二〇七三号を以
てした同三七年一二月三日付競落を原因とする所有権移転登記の抹消登記手続をせ
よ。被控訴人Aは控訴人に対し、同第二目録の不動産につき同局昭和三九年一月二
四日受付第二〇七二号を以てした同三七年一二月三日付競落を原因とする所有権移
転登記の抹消登記手続をせよ。被控訴金庫は控訴人に対し、同第二目録の不動産に
つき同局昭和三九年二月二四日受付第五四〇七号を以てした同月一七日付根抵当権
設定契約を原因とする根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は、第
一・二審を通じ、被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、控
訴棄却の判決を求めた。
 当事者双方の事実上・法律上の主張および証拠関係は、控訴代理人において別紙
準備書面記載のとおり主張し、立証として、甲第四ないし第一〇号証を提出し、被
控訴人らにおいて、「右甲号諸証中、甲第五号証の成立は不知、その余は成立を認
める。」と述べたほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
         理    由
 当裁判所は、控訴人の本件請求を失当と判断するものであつて、その理由は、左
に附加するほかは、原審の判示と全く同様であるから、原判決理由の記載をそのま
ま引用する。
 (抵当権実行の手続中における予約完結権の行使について)
 <要旨>債権者が債権保全の手段として、代物弁済の予約完結権の行使および
(根)抵当権の実行という二つの手段の中、任意の一手段を「選択」しうる
地位にある場合、前者を選べば後者の可能性が消滅することは当然であるが、後者
を選んだからといつて前者の手段に訴える余地が以後全然消失してしまうわけでは
なく、少なくとも抵当権実行による競売手続が取下ないし取消によつて終了した場
合には、改めて予約完結権を行使することができると解すべきものである。すなわ
ち、競売手続中にも、予約完結権自体は消滅せずに残るのであつて、この意味で
は、控訴人の論ずるように、両者は「併存」していると言える。問題は、競売手続
が終了しない間に有効に予約完結権を行使しうるか否かであつて、控訴人は、進ん
で競落許可決定の確定をまつて初めて右の行使が不可能になると解すべきである、
と論じるのである。
 しかしながら、いやしくも一方の方途を選びながら、その結果を見ないうちに、
重ねて他方の方途をも選びうるとすることは、事実上両者を同時に採用しうること
に帰し、そもそも「選択」の趣旨に反するものがあるとせねばならない。もとよ
り、予約完結権がその行使によつて即時に債権を消滅せしめるのに対し、抵当権の
実行はその完結までに一定の時的継続を手続上必要とするから、一旦抵当権実行の
方途を選んでも、時間の経過に伴つて選択当初の事情が変化し、むしろ予約完結権
の行使の方を有利とするに至る場合はありえよう。しかし、その場合には、債権者
はその競売申立を取り下げればよいのである。なるほど、最高価競売申込人が生じ
て以後は、取下にはその同意が必要であるし、競落期日以後は利害関係人全員の同
意が必要ではあるが、これは、反面、最高価競売申込人が手続上生じるに至るまで
の相当期間中は、債権者が予約完結権行使の方途を改めて採るにつき、任意になし
うる競売申立の取下の一事以外には何の障害も存在しないことを示すものである
し、逆に言えば、既に競売申立の取下につき利害関係人の同意を必要とする段階に
達したということは、一旦選ばれた抵当権実行の方途において今や端的に無視する
ことのできない過渡的な権利形成状態が生じたことを意味するのであるから、それ
が予約完結権の行使に対する障害となつても当然であるというべきであり、その場
合ですら、利害関係人が同意すれば、申立を取り下げて、予約完結の方途に進みう
るのである。(そして、正に、本件においては、成立に争いない甲第四および第八
号証によつて明らかなように、債権者は、競売申立を取り下げようとしたが、利害
関係人の同意がなかつたため、その取下が有効とならなかつた、という事情が存す
ることを考え合せるべきである。)従つて、競売手続中は有効に予約完結権の行使
をなしえないと解すべきものであつて、控訴人の所論は採用しえない。
 (代物弁済の効力発生について)
 控訴人は、代物弁済として不動産譲渡がなされる場合、移転登記を要せず、引渡
のみで足りると主張し、その理由として、移転登記につき後順位権利者の同意を要
する場合あることをあげている。(控訴人の引用する法律中には所論の趣旨の規定
は見出されないが、所論は、不動産登記法第一〇五条に規定する場合のことをいう
ものと善解できる。)しかし、前判示のように、代物弁済の予約完結権行使の効果
自体が発生しない以上、代物弁済の効果につき、登記を要するか引渡で足りるかを
論じても無益といわなければならない。
 よつて、本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第
九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 伊藤淳吉 裁判官 臼居直道 裁判官 倉田卓次)

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