弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     第二審判決(福岡高等裁判所那覇支部昭和四九年九月一八日言渡)中「
被告会社および被告人Aから各自金三、五七七万三、九二二円七五銭を追徴する。」
との部分を破棄する。
     第二審判決中その余の部分及び第一審判決に対する本件非常上告の申立
を棄却する。
         理    由
一 昭和四九年一月一八日那覇地方裁判所は、被告人B株式会社及び同Aに対し、
「被告会社は、那覇市a町b丁目c番地に本店を置き、食肉加工製品の輸出入およ
び琉球内販売等を目的とする株式会社であり、被告人Aは、右会社の代表取締役と
して、同社の業務全般を統轄している者であつたが、被告人Aは、被告会社の業務
に関し、株式会社Cの代表取締役社長Dと共謀し、被告人が被告会社の代表取締役
の地位にあつた間の一九七〇年四月一日から同年一〇月三一日までの間右株式会社
CのE工場において外貨原料を使用して製造加工した別紙一覧表記載のソーセージ、
罐詰、精肉類総計一九二、七五二弗五一仙(同年八月四日まで総計一一七、二九一
弗五五仙)相当の外国貨物を税関の許可を受けないで、右E工場から移出して琉球
内において販売し、もつて無許可輸入したものである。」との事実(別紙一覧表省
略)を認定したうえ、「被告人Aの行為は、包括して、沖縄の復帰に伴う特別措置
に関する法律(以下「特措法」という)二五条一項前段、沖縄の刑法六〇条、沖縄
の税関手続法八五条一項(懲役刑選択)に、被告会社の行為は、包括して、特措法
二五条一項前段、沖縄の刑法六〇条、沖縄の税関手続法九一条(八五条一項)、特
措法二五条一項後段、四九条一項、昭和四七年大蔵省告示五九号にあたる。被告人
Aにつき、特措法二五条一項前段、沖縄の刑法二五条一項。被告会社および被告人
Aにつき、特措法二五条一項前段、沖縄の税関手続法九二条二項(一九七〇年八月
五日立法一〇四号附則三項により、右立法により改正される以前のもの)、特措法
二五条一項後段、四九条一項、昭和四七年大蔵省告示五九号。」との法令の適用を
示して、「被告B株式会社を沖縄の刑罰法令による罰金五〇万円に、被告人Aを沖
縄の刑罰法令による懲役一年に処する。被告人Aに対し、この裁判確定の日から二
年間、その刑の執行を猶予する。被告会社および被告人Aから金三五七七万三九七
一円を追徴する。」との判決を言い渡した。
 これに対し、被告人らから控訴の申立がなされたところ、昭和四九年九月一八日
福岡高等裁判所那覇支部は、各控訴趣意を排斥しながら、職権により調査し、追徴
金額の算定に関しドルの円換算に誤りがあるとして、原判決中追徴を命じた部分を
破棄し、右破棄部分についてさらに判決するとし、原判決の法令の適用の項中追徴
に関する部分に摘示の各法条を適用して、「原判決中『被告会社および被告人Aか
ら金三、五七七万三、九七一円を追徴する。』との部分を破棄する。被告会社およ
び被告人Aから各自金三、五七七万三、九二二円七五銭を追徴する。原判決その余
の部分に対する本件各控訴を棄却する。」との判決を言い渡した。
 これに対し、被告人らから更に上告の申立がなされたところ、昭和五〇年七月一
五日最高裁判所第三小法廷は、上告棄却の判決を言い渡し、同月二六日右判決は確
定した。
 以上は、本件記録により明らかである。
二 ところで、沖縄の税関手続法については、一九七〇年立法一〇四号(同年八月
五日から施行。以下「改正法」という。)により無許可輸出入の罪に係る貨物の没
収・追徴に関して改正があり、改正前の沖縄の税関手続法(以下「旧法」という。)
九二条一項及び二項では無許可輸出入の罪に係る貨物については、同条一項但書の
場合を除きすべて没収・追徴を科すべきものとされていたのに対し、改正後の同法
(以下「新法」という。)九二条一項及び二項では、没収・追徴の対象となるもの
を無許可輸出入の罪に係る貨物のうち同条三項に規定する輸入制限貨物等に限るこ
ととされたのである。そして、本件無許可輸入罪に係る貨物は、右輸入制限貨物等
には該当しないので、旧法によれば没収・追徴の対象となるが、新法によればそれ
が許されないものである。
 しかして、前記改正法附則三項には、この立法の施行前にした行為に対する罰則
の適用についてはなお従前の例による旨の経過規定が置かれているが、被告人Aの
本件無許可輸入の行為は、改正法の施行の前後にまたがつて行われており、第二審
判決はこれを包括一罪としているので、右行為については右附則の適用の余地はな
く、主刑のみならず附加刑についても行為終了時に効力を有する規定のみを適用す
べきである。従つて、本件無許可輸入罪に係る貨物に関し、被告会社及び被告人A
に対し没収・追徴を科することはできないことが明らかである。それにもかかわら
ず、第二審判決が改正前の行為に係る貨物の価額総計を特定したうえ、右附則によ
り旧法を適用して右価額の追徴を言い渡したことは、法令に違反していることが明
らかであるうえ、被告人らのために不利益であるといわなければならない。
三 ところで、申立人は、右のような場合について、第一審判決及び第二審判決を
破棄して、さらに相当な裁判をなすことを求めている。しかし、本件においては、
第二審判決が第一審判決の一部を破棄して自判しており、その自判部分に前記のよ
うな法令違反があるためその部分を破棄することによつて非常上告申立の目的が達
せられると解されるので、その部分を破棄すれば足り、第一審判決中第二審判決に
よつて破棄されている部分についてはたとえ同様の法令違反があつてももはやこれ
を非常上告によつて是正する必要はない。なお、本件第一審、第二審判決中その余
の部分に対する申立は、またその理由がない。
四 よつて、刑訴法四五八条一号但書により、第二審判決中「被告会社および被告
人Aから各自金三、五七七万三、九二二円七五銭を追徴する。」との部分を破棄し、
その追徴を科さないこととし、第二審判決中その余の部分及び第一審判決に対する
申立については同法四五七条によりこれを棄却すべきものとし、裁判官全員一致り
意見で、主文のとおり判決する。
 検察官安西温 公判出席
  昭和五五年一一月一四日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    宮   崎   梧   一
            裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    塚   本   重   頼
            裁判官    鹽   野   宜   慶

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