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平成15年(行ケ)第529号 特許取消決定取消請求事件(平成16年6月28
日口頭弁論終結)
          判           決
     原      告      セイコーエプソン株式会社
     訴訟代理人弁理士      白井博樹
     同             阿部龍吉
     同             蛭川昌信
     同             内田亘彦
     同             菅井英雄
     同             青木健二
     同             韮澤弘
     同             米澤明
     同             飯高勉
     被      告      特許庁長官 小川洋
     指定代理人         石川昇治
     同             梅岡信幸
     同             高橋泰史
     同             伊藤三男
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 請求
   特許庁が異議2003-70071号事件について平成15年10月20日
にした決定を取り消す。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
原告は,名称を「画像形成装置」とする特許第3301474号発明(平成
7年12月12日特許出願〔以下「本件特許出願」という。〕,平成14年4月2
6日設定登録,以下,その特許を「本件特許」という。)の特許権者である。
本件特許について,特許異議の申立てがされ,異議2003-70071号
事件として特許庁に係属し,原告は,平成15年7月22日,本件特許出願の願書
に添付した明細書の特許請求の範囲の記載等について訂正(以下「本件訂正」とい
う。)を求める訂正請求をした。
   特許庁は,同事件について審理した結果,同年10月20日,「訂正を認め
る。特許第3301474号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決
定をし,その謄本は,同年11月4日,原告に送達された。
 2 本件訂正に係る明細書(以下,願書に添付した図面と併せて「本件明細書」
という。)の特許請求の範囲記載の発明の要旨
【請求項1】順次色の異なるカラートナーにより現像されたトナー像を中間
転写媒体に転写する一次転写部と,一次転写部においてバイアスを印加するための
一次転写バイアス印加電源と,前記全色中間転写媒体にて重ね合わされた全色カラ
ートナー像を記録紙に転写する二次転写部と,二次転写部においてバイアスを印加
するための二次転写バイアス印加電源を有する画像形成装置において,前記中間転
写媒体が導電層を有し,かつ前記一次転写バイアス印加電源から前記導電層までの
抵抗RTと一次転写部の見かけの抵抗R1が,RT/R1≦0.1なる関係を有す
ることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】一次転写部と二次転写部の動作を同時に実行することを特徴と
する請求項1記載の画像形成装置。 
【請求項3】一次転写部は定電圧制御され,二次転写部は定電流制御される
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。 
【請求項4】一次転写部と二次転写部間の中間転写媒体長さを画像長さより
短くすることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
(以下,【請求項1】~【請求項4】の発明を「本件発明1」~「本件発明
4」という。)
 3 決定の理由
   決定は,別添決定謄本写し記載のとおり,本件発明1,3,4は,特開平7
-152263号(審判刊行物1・本訴甲2,以下「刊行物1」という。)に記載
された発明(以下「刊行物1発明」という。)であり,特許法29条1項3号の規
定に該当し,また,本件発明2は,刊行物1発明及び周知技術に基づいて当業者が
容易に発明をすることができたものであり,同条2項の規定により,いずれも特許
を受けることができないものであるから,本件発明1~4に係る本件特許は,拒絶
の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであって,特許法等の一
部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則14条の規定に基づく,特許法
等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令
第205号)4条2項の規定により,取り消すべきものとした。
第3 原告主張の決定取消事由
 決定は,刊行物1発明の認定を誤ったことにより本件発明1と刊行物1発明
との対比・判断を誤り(取消事由1),その結果,本件発明2~4と刊行物1発明
との対比・判断を誤った(取消事由2)ものであるから,違法として取り消される
べきである。
 1 取消事由1(刊行物1発明の認定を誤ったことによる本件発明1と刊行物1
発明との対比・判断の誤り)
(1)決定は,本件発明1と刊行物1発明との相違点1として,「一次転写部に
おける抵抗に関して,本件発明1では『一次転写バイアス印加電源から前記導電層
までの抵抗RTと一次転写部の見かけの抵抗R1が,RT/R1≦0.1なる関係
を有する』のに対して,刊行物1(注,甲2)記載の発明(注,刊行物1発明)で
はこの点に関する明確な記載がない点」(決定謄本9頁第2段落,以下「相違点
1」という。)を認定した上,相違点1について,「刊行物1に『第1の転写ニッ
プ領域N1において必要な転写電流量は約5μA(注.本件発明の「一次転写電流
I11」に相当する。)であり,これは電源6より+500V(注.本件発明の
「一次転写バイアス印加電源V1」に相当する。)を芯金51に供給することで得
られる』(摘記事項1c〔注,甲2の段落【0047】の記載〕参照)と記載され
ていることから,刊行物1記載の発明において本件発明のR1+RTに相当する抵
抗は,500[V]/5[μA]=108
[Ω]と算出される。一方,刊行物1記載
の発明において本件発明の一次転写部の見かけの抵抗R1に相当する抵抗は,R1
=ρ1×(t1/L×w1)=108
[Ω](摘記事項1c参照)と実抵抗で算出さ
れ,これらの事項(R1+RT=108
[Ω],R1=108
[Ω])から,刊行物
1記載の発明においては,抵抗RTは,ほとんど「0」ということになる。よっ
て,刊行物1では,RT/R1≒0,つまり,RT/R1≦0.1となっているこ
とから,相違点1は実質的な相違点ではない」(同頁下から第3段落~最終段落)
と判断したが,誤りである。
(2)R1+RT=108
[Ω],R1=108
[Ω]であるなら,抵抗RTは,
ほとんど「0」ということになり,R1に比較すれば無視できる程度に小さく,抵
抗がないに等しい。そうすると,刊行物1(甲2)には,一次転写バイアス印加電
源から導電層までの抵抗RTが,無視できるもの,すなわち,抵抗RTがないタイ
プのものが記載されているということができ,このことは,刊行物1の【図1】に
は,抵抗を示す記号が記載されていないことからも明らかである。これに対して,
本件発明1は,本件明細書(甲4,5)の【図2】~【図4】及びその関連記載を
参酌すれば明らかなように,抵抗RTがあることを前提として,RT/R1≦0.
1なる式を規定しているのであり,抵抗RTがないものまでは含んでいない。すな
わち,本件発明1における抵抗RTは,電源から導電層までの抵抗であって,その
抵抗成分は電極と導電層の接触部の接触抵抗に起因し,その抵抗値は,実施例によ
れば,1×106
~3×108
Ωであるが,刊行物1発明においては,接触電極の抵
抗値は,無視できる程度に小さいものである。
  なお,決定は,相違点1の検討において,「画像形成装置において,中間
転写体に一次転写バイアスを印加する際には電源からのバイアスの損失を防ぐため
に,通常,電気接点等により接続し抵抗を極力小さくするように設計するものと認
められ,刊行物1記載の発明においてもそのことを前提に構成されていると言うこ
とができるし,RTがほとんど0となることは技術的にみて不自然なこととは言え
ない」(決定謄本10頁第2段落)と説示した。上記説示のうち,通常,電気接点
等により接続し抵抗を極力小さくするように設計すること及び刊行物1発明におい
て,電気接点の接触抵抗がほとんど0であることは争わないが,本件発明1は,電
気接点の接触抵抗をいっているのではなく,電源から導電層までの抵抗RTをいっ
ているのであり,刊行物1には,この抵抗RTについては一切記載されていない。
決定は,電気接点の接触抵抗がほぼ0であることを根拠に,電源から導電層までの
抵抗RTがほとんど0になると説示するものであるから,誤りである。
  以上のとおり,決定は,刊行物1(甲2)には,抵抗RTがないタイプの
ものが記載されているにもかかわらず,抵抗RTがあるかのように認定した上,刊
行物1発明も,RT/R1≦0.1なる関係を有するとして,相違点1が,実質的
な相違点ではないと判断したものであるから,誤りである。
2 取消事由2(本件発明2~4と刊行物1発明との対比・判断の誤り)
 本件発明2~4は,少なくとも本件発明1の構成を含むから,本件発明2~
4についての決定の対比・判断も誤りである。
第4 被告の反論
   決定の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
 1 取消事由1(刊行物1発明の認定を誤ったことによる本件発明1と刊行物1
発明との対比・判断の誤り)について
 本件発明1の抵抗RTは,本件明細書(甲4,5)の特許請求の範囲【請求
項1】に,「一次転写バイアス印加電源から前記導電層までの抵抗」と規定され,
その具体的な導電経路については,発明の詳細な説明に,「定電圧制御可能な一次
転写バイアス印加電源108によりトナーと逆極性のバイアスが発生され,電源1
08に接続された接触電極121から中間転写媒体106の導電層露出部を介し,
中間転写媒体106上に転写電圧が印加される」(段落【0014】),「抵抗R
Tは電源から導電層までの抵抗で,主に導電層と接触電極との間の接触抵抗である
と考えられる」(段落【0017】),「電源から導電層までの抵抗RTは,その
抵抗成分は主として電極と導電層の接触部の接触抵抗に起因している」(段落【0
027】)と記載されている。一方,刊行物1(甲2)には,「第1の転写ニップ
領域N1において必要な転写電流量は約5μAであり,これは電源6より+500
Vを芯金51に供給することで得られる」(段落【0047】)と記載されている
ところ,「電源6」,「芯金51」は,それぞれ本件発明の「一次転写バイアス印
加電源108」,「導電層」に相当することは,原告もこれを争わない。また,回
転体である中間転写ローラ5の導電層に電源6からの転写電圧を印加するには,電
源を固定側に設けるのが普通であることから,接触電極を介して中間転写ローラの
導電層に転写電圧が印加されるとみるのが常識的であり,また,接触電極を介して
電圧を印加すると,接触抵抗を生じることも技術常識である。したがって,刊行物
1発明においても,一次転写バイアスの導電経路は,電源6から接触電極を介して
中間転写媒体の導電層に至るものであり,その導電経路において,本件発明1と刊
行物1発明との間に相違はない。刊行物1において,「電源から中間転写媒体の導
電層までの抵抗RT」は,計算上0となるのであるし,電源から接触電極までの導
電経路や接触電極と中間転写媒体の導電層との接触部に電気抵抗が全くないとみる
方がむしろ不自然であるから,刊行物1には,R1に比べれば無視できる程度に小
さいという意味で,ほとんど0の抵抗を有する導電経路について記載されていると
いうことができる。刊行物1において,「電源から中間転写媒体の導電層までの抵
抗RT」が計算上0となっているのは,R1の算出には,中間転写ローラの体積抵
抗率ρ1を約109
Ω・cm等の概略値(段落【0045】)を,R1+RTの算出
には,「第1の転写ニップ領域N1において必要な転写電流量は約5μA」(段落
【0047】)等の概略値を含む数値を基礎としていることや数値の有効桁数の取
り方によっては抵抗RTがR1に比較して相当小さいことから,計算上0となって
しまうためである。
 なお,原告は,本件発明1は,電気接点の接触抵抗をいっているのではな
く,電源から導電層までの抵抗RTをいっているのであり,刊行物1には,この抵
抗RTについては一切記載されていないと主張するが,刊行物1においては,例え
ば,【図1】の電気回路図に模式的に示されているように,バイアス電源6は,抵
抗を介することなく中間転写ローラ5の芯金52に直接接続されているのであるか
ら,バイアス電源6と中間転写ローラ5の導電層との間には抵抗は不必要なのであ
るが,刊行物1発明を具体化する場合には,接触電極などを介するバイアス電源か
ら導電層までの一次転写バイアスの導電経路が必要なものであり,この導電経路に
は,接触抵抗などの抵抗を含むこととなるのである。しかし,バイアス電源6と中
間転写ローラ5との間には,もともと抵抗は不必要なのであるから,接触抵抗など
を小さくし,一次転写バイアスを印加するための導電経路の抵抗をできるだけ小さ
くすることは,設計に際して当業者が当然に考慮することである。
 以上のとおり,刊行物1には,一次転写バイアス印加電源から導電層までの
抵抗RTがないタイプのものが記載されているとの原告主張は失当であり,「刊行
物1記載の発明においては抵抗RTは,ほとんど『0』ということになる」(決定
謄本9頁下から第2段落)とした決定の認定に誤りはない。
2 取消事由2(本件発明2~4と刊行物1発明との対比・判断の誤り)につい

 上記のとおり,決定の本件発明1と刊行物1発明との対比・判断に誤りはな
いから,その誤りを前提とする取消事由2は,理由がない。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由(刊行物1発明の認定を誤ったことによる本件発明1と刊行物1発
明との対比・判断の誤り)について
(1)原告は,刊行物1(甲2)には,一次転写バイアス印加電源から導電層ま
での抵抗RTが,無視できるもの,すなわち,抵抗RTがないタイプのものが記載
されているが,本件発明1は,抵抗RTがあることを前提として,RT/R1≦
0.1なる式を規定しているのであり,抵抗RTがないものまでは含んでいないか
ら,「刊行物1では,RT/R1≒0,つまり,RT/R1≦0.1となっている
ことから,相違点1は実質的な相違点ではない」(決定謄本9頁最終段落)とした
決定の判断は誤りであると主張する。
(2)そこで,本件発明1についてみると,本件明細書(甲4,5)の特許請求
の範囲【請求項1】には,抵抗RTについて,「中間転写媒体が導電層を有し,か
つ前記一次転写バイアス印加電源から前記導電層までの抵抗」と記載され,また,
発明の詳細な説明には,「定電圧制御可能な一次転写バイアス印加電源108によ
りトナーと逆極性のバイアスが発生され,電源108に接続された接触電極121
から中間転写媒体106の導電層露出部を介し,中間転写媒体106上に転写電圧
が印加される」(段落【0014】),「抵抗RTは電源から導電層までの抵抗
で,主に導電層と接触電極との間の接触抵抗であると考えられる」(段落【001
7】),「電源から導電層までの抵抗RTは,その抵抗成分は主として電極と導電
層の接触部の接触抵抗に起因している」(段落【0027】)と記載されている。
これらの記載によれば,本件発明1において,抵抗RTは,一次転写バイアス印加
電源から中間転写媒体の導電層までの抵抗であって,その抵抗成分は,電源に接続
された接触電極と,中間転写媒体の導電層との間の接触抵抗に起因するものである
ことが認められる。
  これに対し,刊行物1(甲2)には,「中間転写ローラ5は芯金51と導
電性ポリウレタンの薄層より成る表層52より構成され,トナーとは逆極性のバイ
アス電圧を電源6により印加して感光ドラム1上のトナー画像を静電転写する」
(段落【0008】),「中間転写ローラ5は紙葉体10の搬送方向長さより,や
や大きな周長を有す有効長さL=250mmのローラであり,アルミニウムより成
る肉厚3mmのパイプ状基体51の上に,NBRゴム中にカーボン・酸化亜鉛・酸
化スズ・導電性ウィスカ等の導電性付与剤を分散させて体積抵抗率ρ1を約109
Ω・cmに調整した,厚さt1=5mm,硬度35度(JIS A)の弾性層52
を形成して直径150mmφとしたもので,感光ドラム1と同じプロセススピード
100mm/secで矢印の反時計方向に駆動されている」(段落【004
5】),「第1の転写ニップ領域N1において必要な転写電流量は約5μAであ
り,これは電源6より+500Vを芯金51に供給することで得られる」(段落
【0047】)と記載されており,これらの記載によれば,電源6は,アルミニウ
ムの芯金(パイプ状基体)51に転写電流を供給していることは明らかである。ま
た,回転体に電圧を印加する場合には,電源を,固定側に設け,接触電極を介する
のが技術常識であるから,刊行物1には,接触電極について明記されていないもの
の,回転体である中間転写ローラ5の導電層には,電源6から,接触電極を介し
て,転写電圧が印加されているとみるのが常識的な解釈である。そして,接触電極
を介して電圧を印加すると,接触抵抗を生じることも技術常識である。そうする
と,本件発明1と刊行物1発明とは,電源から導電層へ接触電極を介して電圧を印
加している点において,電流供給の構造を同じくしているということができるか
ら,「一次転写バイアス印加電源から導電層までの抵抗RT」が存在する点におい
て,構成を同じくするものであり,その抵抗成分は,上記接触電極と導電層との間
の接触抵抗に起因するものである。そして,刊行物1においては,【図1】の電気
回路図に図示されるとおり,バイアス電源6は,抵抗を介することなく中間転写ロ
ーラ5の芯金52に直接接続されているが,この導電経路の接触抵抗などを小さく
し,一次転写バイアスを印加するための導電経路の抵抗をできるだけ小さくするこ
とは,設計に際して当業者が当然に考慮することであるから,刊行物1発明におい
て,抵抗RTはほとんど0であり,RT/R1≒0となる。したがって,刊行物1
発明は,本件発明1におけるRT/R1≦0.1の条件を満たしていることが明ら
かである。
(3)原告は,本件発明1における抵抗RTは,電源から導電層までの抵抗であ
って,その抵抗成分は電極と導電層の接触部の接触抵抗に起因し,その抵抗値は,
実施例によれば,1×106
~3×108
Ωであるが,刊行物1発明においては,接
触電極の抵抗値は,無視できる程度に小さいものであると主張するが,本件明細書
の特許請求の範囲【請求項1】には,抵抗RTについては,「一次転写バイアス印
加電源から前記導電層(注,中間転写媒体の導電層)までの抵抗」と記載されてい
るにとどまり,抵抗RTの大きさが特定されているわけではないから,原告の上記
主張は,本件発明1の特許請求の範囲の記載に基づかないものであり,失当という
ほかない。
  さらに,原告は,本件発明1は,電気接点の接触抵抗をいっているのでは
なく,電源から導電層までの抵抗RTをいっているのであり,刊行物1には,この
抵抗RTについては一切記載されていないと主張するが,本件明細書には,上記(2)
のとおり,「抵抗RTは電源から導電層までの抵抗で,主に導電層と接触電極との
間の接触抵抗であると考えられる」(段落【0017】),「電源から導電層まで
の抵抗RTは,その抵抗成分は主として電極と導電層の接触部の接触抵抗に起因し
ている」(段落【0027】)と記載されているのであるから,本件発明1におい
て,抵抗RTは,実質的に電気接点の接触抵抗であることは上記(2)のとおりであ
る。したがって,原告の上記主張も理由がない。
(4)以上検討したところによれば,本件発明1と刊行物1発明とは,抵抗RT
について実質的に相違があるということはできず,相違点1は実質的な相違点とは
いえないから,決定の本件発明1と刊行物1発明との対比・判断に誤りはない。し
たがって,原告の取消事由1の主張は理由がない。
2 取消事由2(本件発明2~4と刊行物1発明との対比・判断の誤り)につい

 本件発明2は,本件発明1に,「一次転写部と二次転写部の動作を同時に実
行する」構成を付加したものであり,同付加に係る構成が周知であることは,原告
の自認するところである。そして,本件発明1と刊行物1発明とは実質的に相違が
あるということはできないことは上記のとおりであるから,本件発明2は,刊行物
1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであ
る。
 また,本件発明3は,本件発明1に,「一次転写部は定電圧制御され,二次
転写部は定電流制御される」構成を,本件発明4は,本件発明1に,「一次転写部
と二次転写部間の中間転写媒体長さを画像長さより短くする」構成を,それぞれ付
加したものであり,これら付加に係る構成を刊行物1発明が有していることは原告
の自認するところである。そして,本件発明1と刊行物1発明とは実質的に相違が
あるということはできないことは上記のとおりであるから,本件発明3,4は,刊
行物1発明と実質的に同一というべきである。
 したがって,これと同旨をいう決定の本件発明2~4と刊行物1発明との対
比・判断に誤りはないから,原告の取消事由2の主張も理由がない。
3 以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に決定を取り
消すべき瑕疵は見当たらない。
 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決
する。
     東京高等裁判所知的財産第2部
           裁判長裁判官    篠  原  勝  美
      裁判官    岡  本     岳
      裁判官   早  田  尚  貴

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