弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件再審の申立を却下する。
     申立費用は申立人の負担とする。
         理    由
 記録によると、本件再審の申立人は、さきに東京高等裁判所が本件申立人を上告
人、相手方を被上告人とする同庁昭和二八年(ツ)三五号借地権確認請求事件につ
き言渡した上告棄却の判決に対し、異議の申立をなし、該異議の申立が理由なしと
して却下されるや更にこの却下決定に対して当裁判所に特別抗告の申立をなしたが、
この特別抗告も亦当裁所第三小法廷において審理の結果不適法として却下せられた
ことが認められる。本件再審の申立は、民訴四二九条に基ずき右第三小法廷のなし
た抗告却下の決定に対し、判断の遺脱あることを理由としてなされたものである。
 よつてまず本件申立の適否について判断する。民訴四二九条の法文を一読すれば、
恰も「即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令ヵ確定シタル場合」
に限り再審の申立を許したかの如くに見える。しかし、この規定の法意は広く一般
に、一定の事項を終局的に確定する目的でなされる決定及び命令が確定した場合、
それらの裁判につき再審事由の存するとき、これが救済方法として確定判決の場合
に準じ決定で裁判をなし得る簡易な再審手続を認めたものと解するのを相当とする。
思うに決定及び命令にして判決の基本たる裁判に過ぎないもの、すなわち終局判決
を準備する目的でなされる中間的裁判について再審事由の存するときはそれらの事
由は終局判決に対する再審の訴としてこれを主張し得るのであるが(民訴四二一条
参照)、一定の事項を確定する目的でなされる終局的裁判たる決定及び命令にあつ
ては、その性質上、終局判決とは別に自身確定力を有するに至るものであるから、
これらの裁判について再審事由の存するときは確定判決に対する再審の訴とは別に
独立した救済方法として再審の申立を認めなければならない必要があるのである。
法文に「即時抗告ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得ル決定又ハ命令」とあるのは、前
掲終局的裁判たる性質を有する決定及び命令が訴訟法上多く即時抗告に服すべきも
のとされていることに着目してかかる用語を以て、この種の決定又は命令を表示す
るに足るとしたに外ならないのであり、しかも、かかる決定又は命令が確定した場
合これに対し再審の申立を認むべき必要性の存在は、独り「即時抗告ヲ以テ不服ヲ
申立ツルコトヲ得ル」場合のみに限るものではなく、かかる裁判に対し訴訟法が当
初から不服の申立を詐さない場合においても、はたまた、かかる裁判が偶々審級制
度上の最上級審裁判所によつてなされた場合においても、これを否定すべきいわれ
のないものといわなければならない。然るところ上告棄却の判決に対する異議を却
下する決定及びこの却下決定に対する抗告を却下する決定等がこゝにいわゆる終局
的裁判たる性質を有するものであることは多言を要しないところであるから、本件
再審の申立は適法であるといわなければならない。
 しかしながら所論特別抗告の理由につき、原決定が「違憲をいう点もあるが、そ
の実質は要するに訴訟法違反ないし事実誤認の主張に帰し民訴四一九条ノ二所定の
適法な抗告理由に当らない」旨説示したのは正当であり、原判決には所論のような
判断遺脱等の違法はない。それ故本件再審の申立は採るを得ない。
  よつて民訴四二九条、八九条に従い、主文のとおり決定する。
  この決定は裁判官全員一致の意見によるものである。
  昭和三〇年七月二〇日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    谷   村   唯 一 郎
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    垂   水   克   己

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