弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における被告人Aの未決勾留日数中四〇日を原判決の同
被告人に対する本刑に算入する」との部分を破棄する。
     その余の部分に対する本件上告を棄却する。
         理    由
 札幌高等検察庁検事長柳川真文の上告趣意について。
 所論は判例違反を主張する。そこで記録を調べてみるに、被告人は本件につき起
訴前である昭和三三年一一月二四日勾留状の執行を受け、爾来第一審及び原審を通
じて勾留を継続されているものであるが、これより先、被告人は昭和二四年九月七
日札幌地方裁判所において強盗、強盗傷人、窃盗罪により懲役五年以上一〇年以下
(未決勾留一〇日算入)に処せられ、同判決は同年一一月五日確定し、同日より刑
の執行を受け、その後昭和三〇年一一月一八日仮出獄を許されたが、本件により第
一審で未決勾留中であつた昭和三四年二月四日右仮出獄を取り消され、翌五日より
残刑の執行を受け(刑期満了予定日は昭和三八年一月一二日)引続き受刑中であつ
たものであること、従つて第二審における未決勾留は全部右確定刑の執行と重複執
行されていたものであること、しかるに原審は昭和三四年一一月二一日被告人の控
訴を棄却すると共に、「当審における被告人Aの未決勾留日数中四〇日を原判決の
同被告人に対する本刑に算入する」旨の判決を言い渡したものであることが明認で
きる。右のように勾留状の執行と懲役刑の執行とが重複している場合においてその
未決勾留日数を本刑に算入することは、刑法二一条の解釈適用を誤つたものであり、
この点において原判決は法令の違反があり且つ所論引用の判例にも反するが故に結
局論旨は理由があり、原判決の前記未決勾留日数を算入した部分は破棄を免れない。
 よつて刑訴四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決中右
未決勾留日数算入部分を破棄し、その未決勾留日数を算入しないこととし、その余
の部分に対する上告は、上告趣意として何等主張がなく従つてその理由がないこと
に帰するから、同四一四条、三九六条により主文二項のとおり上告を棄却すべきも
のとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 検察官 山内繁雄公判出席
  昭和三五年四月一五日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   垂
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    池   田       克
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奧   野   健   一

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