弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人等を免訴する。
         理    由
 本件公訴事実の要旨は
 被告人AはB労働組合九州地方本部C支部D発電所分会常任執行委員情報宣伝部
長、被告人Eは同分会常任執行委員組織部長、被告人Fは同支部G発電所分会執行
委員長、被告人Hは同分会副執行委員長、被告人Iは同支部J分会執行委員長、被
告人Kは同分会書記長、被告人Lは同分会常任執行委員であるが、B労働組合は昭
和二二年八月M経営者会議に対し生活費を基準とする最低賃金スライドに関する件
外二項目を要求して争議に入り、翌九月N委員会に対し右三項の外に四項目を追加
して調停の申立を為し、斡旋、折衝が行われた結果、昭和二三年三月二五日B労組
と経営者会議との間に仮協定が成立したが同年五月会社側の態度を不満とする同労
組はaの中央大会において前記三要求につき地域的に実力を行使する斗争方針を決
定し、経営者会議が同年七月前記仮協定項目中の七月スライド制実施の意思なきこ
とを表明するに及んで、同年八月二日附をもつて要求書を経営者会議に提出し、前
記C支部は同年一〇月五日要求事項を貫徹するため、同月七日午前零時を期し停電
ストライキを含む実力行使に突入せよ等の趣旨を含む支部サクラツバメ第一号と題
する指令を傘下の各分会に発するに至つたところ、第一、被告人A及び同Eは前記
D発電所分会執行委員長O等と相謀り、同月七日戸畑市所在P発電所において同分
会執行委員会、同戦術委員会を開き、「同月九日午前一〇時から同一一時までボイ
ラー一罐の電源ストライキを決行すること」を話合いの結果、これを同分会大会に
おいて確認の上同九日の右一時間に亘り、当該係員等に指示して、戸畑市所在Q株
式会社D発電所電源ボイラー一罐の操作を停止するに至らしめ、因つて当該時間直
前一時間に比し一八〇〇〇キロワツト時の電力量を減少させ、第二、被告人F及び
同Hは外二十数名と相謀り、同月九日小倉市所在G発電所分会事務所で同分会執行
委員会を開き、「同月一四日午前一〇時から同一一時までの間ボイラー一罐の操作
を停止すること」を話合いの結果、これを同月一一日小倉市所在QG発電所技術事
務所における同分会大会で確認の上、同一四日の右一時間に亘り、汽罐現場係に指
示して電源ボイラーの操作を停止するに至らしめ、因つて当該時間一五〇〇〇キロ
ワツト時の発電々力量を減少させ、第三、被告人I、同K及び同Lは外数名と共に、
同月一〇日の八幡市所在R変電所におけるJ分会大会の前記県支部サクラツバメ第
一号指令確認決議に基ずき、同月一一日及び翌一二日の二日間に亘り八幡市所在J
電力所において同分会執行委員会及び戦術委員会を開き協議の上、同月一五日午前
七時から同九時まで五〇〇キロワツト時以上の大口需要家中供給枠超過使用者に対
し送電を停止することを話合い、この旨を管内R、D、S、T、U、V、W等の各
変電所に指令し、因つて同一五日の右二時間に亘り右各交電所係員に指示して枠超
過大口需要家に対し開閉器を遮断するに至らしめ、第四、被告人Lは同日被告人I
等が逮捕された後同分会臨時執行委員長代理となつたが、さきに前記C支部から受
けていた「同月一五日午後六時から八時まで一般電灯線を停電するように」との指
令をその内容どおり実施し、因つて管下各変電所係員に指示して開閉器を遮断する
に至らしめ、もつていずれも電気の供給を妨害したという電気事業法三三条一項の
犯罪事実である。
 しかし、職権で調査すると、本件が犯罪後の法令により刑の廃止があつた場合に
該当するものと解すべきことは、既に、昭和二九年一一月一〇日当裁判所大法廷が
言渡した昭和二六年(れ)第一五一五号、同二六年(れ)第二三一六号、同二七年
(あ)第一六七六号事件の各判決に多数意見として説示せられているとおりである。
 よつて進んで検察官の上告審としての事件受理申立書記載の論旨につき判断する
までもなく、刑訴施行法三条の二刑訴四一一条五号により原判決を破棄し、刑訴施
行法二条旧刑訴四四八条四五五条三六三条二号により被告人等に対し免訴の言渡を
為すべきものとし、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
 裁判長裁判官霜山精一は退官につき、本件合議に関与しない。
 検察官 神山欣治関与
  昭和二九年一二月二四日
     最高裁判所第二小法廷
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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