弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、被告人A弁護人大池龍夫、被告人B弁護人林武雄、被告人C
弁護人岩川勝一の各控訴趣意書に記載の通りだから、これを引用する。
 大池弁護人の論旨第一点について。
 記録を調査するに、被告人Aが間もなく有効期間が切れるというので、新らしい
外国人登録証明書の交付を申請しようとして、自己がD本人である如く装い昭和二
十七年十月二十八日愛知県東春日井郡a町役場の吏員に提出したという外国人登録
証明書は名義人はDとなつているものの、Dその人として被告人Aの写真の貼つて
あるもので起訴状ではこれを変造公文書とみ、右提出を変造公文書の行使としてい
るのに、原審は格別訴因罪名罰条等訂正を命ずる等の措置を採らずに、それを偽造
公文書と為し、その提出を<要旨>以て偽造公文書の行使とし、これに該当の罰条を
適用しているのはまことに所論の通りである。ところで右外国人登録証明書
は原判示の通り発行時の写真を剥いだ後に被告人Aの写真を貼つたもので、右写真
の貼り代えは文書の性質上その重要部分の変更にあたるものとして、起訴状にある
如く外国人登録証明書の単なる変造とみるべきではなく、原審認定の通り、その偽
造に該るものと認むべきものではあるが、それを変造というも偽造と解するも畢竟
法律上の見方の相違に過ぎないものというべきであり、何等訴因に変更がないので
この点につき判決に影響すべき訴訟手続規定の違背があるとする論旨は採用の限り
でない。
 岩川弁護人の論旨第一点について。
 論旨は、被告人A、同B、同C三名のみに対する原判決理由中に「被告人E」な
るものを共犯者の一人である如く判示しているのは事実誤認であるというに在る
が、右は原審共同被告人であつたEその人を指し、同人が原判示の通り前記被告人
等三名の犯行に共謀加担したものであること記録上明白であるからEに「被告人」
なる文字を冠したのはいささか妥当を欠くとゆうわけで、この点を追えて刑事訴訟
法第三百八十二条にいわゆる事実誤認とは到底認めえないので、論旨は採用の限り
でない。
 大池、岩川両弁護人の各論旨第二点及び林弁護人の論旨について。
 論旨は、夫々被告人等に対する原審の量刑を不当過重というに在るが、記録に現
れた各犯行の動機、態様、犯行後の状況、被告人等の経歴、家庭の状況等諸般の情
状を考慮すると各懲役一年、三年間執行猶予の原判決はいずれも相当で、各所論の
事情は既に充分原審の斟酌したところと認められるので、論旨はいずれも理由がな
い。
 以上の通り論旨はすべて理由がないので、刑事訴訟法第三百九十六条に則り本件
各控訴を棄却することとし、主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 河野重貞 裁判官 高橋嘉平 裁判官 山口正章)

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