弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告人の上告状及び上告理由書記載の上告理由について
 所論は、要するに、上告人がDを被告として提起している東京地方裁判所昭和五
五年(ワ)第八八一号事件の請求(以下「旧請求」という。)と上告人が被上告人
を被告として提起している本件訴えにかかる請求とは民訴法(以下「法」という。)
五九条所定の共同訴訟の要件を具備しているから、本件訴えを旧請求の訴訟に追加
的に併合提起することが許されるべきであるところ、右の両請求の経済的利益が共
通しているから、上告人は本件訴えにつき手数料を納付する必要はない、というの
である。
 しかし、甲が、乙を被告として提起した訴訟(以下「旧訴訟」という。)の係属
後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲
は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法一三二条の規
定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきで
あり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき法五九条所定の共同訴訟の要
件が具備する場合であっても、新訴が法一三二条の適用をまたずに当然に旧訴訟に
併合されるとの効果を認めることはできないというべきである。けだし、かかる併
合を認める明文の規定がないのみでなく、これを認めた場合でも、新訴につき旧訴
訟の訴訟状態を当然に利用することができるかどうかについては問題があり、必ず
しも訴訟経済に適うものでもなく、かえって訴訟を複雑化させるという弊害も予想
され、また、軽率な提訴ないし濫訴が増えるおそれもあり、新訴の提起の時期いか
んによっては訴訟の遅延を招きやすいことなどを勘案すれば、所論のいう追加的併
合を認めるのは相当ではないからである。
 右と同旨の見解に立ち、上告人の被上告人に対する本件訴えは新訴たる別事件と
して提起されたものとみるべきであるから、新訴の訴訟の目的の価額に相応する手
数料の納付が必要であるとして、上告人が手数料納付命令に応じなかつたことを理
由に本件訴えは不適法として却下を免れないとした原審の判断は、正当として是認
することができ、原判決に所論の違法はない。所論引用の判例は、事案を異にし本
件に適切でない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。
論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用
することができない。
 よつて、法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    坂   上   壽   夫
            裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦

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