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平成12年(行ケ)第81号 審決取消請求事件(平成13年10月29日口頭弁
論終結)
          判           決
       原      告   株式会社タニ
   訴訟代理人弁護士堤   義 成
同田 宮 武 文
同    小 林 幸 夫
同依 田 修 一
    同          中 村 しん吾
同柳 澤   泰
同弓削田   博
       同    弁理士   若 原 誠 一
       被      告   株式会社ロイヤル化学研究所
       訴訟代理人弁護士   小 林 貞 五
       同    弁理士 岡 部 惠 行
          主           文
      原告の請求を棄却する。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   特許庁が平成9年審判第13183号事件について平成11年12月21日
にした審決を取り消す。
   訴訟費用は被告の負担とする。
 2 被告
   主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
   原告は、名称を「洗車方法及び洗車装置」とする特許第2530390号発
明(平成3年5月13日特許出願、平成8年6月14日設定登録、以下、その特許
を「本件特許」という。)の特許権者である。
   被告は、平成9年7月31日に本件特許につき無効審判の請求をし、平成9
年審判第13183号事件として特許庁に係属した。
   なお、本件特許については、同年3月4日に申立てのされた特許異議申立事
件(平成9年異議第70940号)も係属していたところ、同特許異議申立事件に
つき、原告は本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正す
る旨の訂正請求をし、特許庁は、平成10年6月10日に上記訂正を認め、本件特
許を維持する旨の決定をし、そのころ同決定は確定した。
   上記無効審判事件につき、原告は、同年12月28日に本件明細書の特許請
求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正請求(以下「本件訂正
請求」といい、その訂正を「本件訂正」という。)をし、特許庁は、平成11年1
2月21日に「特許第2530390号発明の明細書の請求項第1項ないし第2項
に記載された発明についての特許を無効とする。」との審決をし、その謄本は平成
12年2月7日原告に送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 本件訂正前の明細書(以下「本件特許明細書」という。)の特許請求の範
囲の記載
【請求項1】車両塗装部分の表面を洗浄体および水を使って洗浄する洗浄行
程と、この洗浄行程の後、車両塗装部分の表面を水を使って洗浄する水洗い行程
と、この水洗い行程の後、車両塗装部分の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、
車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利用して、水に分散性のフッソ重合体または
エトキシ化シリコーンの高分子重合体を塗布し、これにより車両塗装部分の表面に
この高分子重合体の薄い被膜を形成する高分子重合体塗布行程とを備えたことを特
徴とする洗車方法。
【請求項2】車両を上方より跨いで、この車両上方を往復走行し、この往動
または復動中に、当該車両表面の水洗いを行う為の散水手段、当該車両表面の洗浄
体による洗浄を行う為の洗浄体噴出手段、当該車両表面の高分子重合体の塗布を行
う為の高分子重合体塗布手段及び当該車両表面の水の除去を行う為の送風手段を備
えた洗車装置に於いて、初めに、上記散水手段及び洗浄体噴出手段を作動させて、
上記車両の塗装部分の表面を洗浄体及び水を使って洗浄を行い、この塗装面洗浄
後、上記散水手段を作動させて、車両の塗装部分の表面を水を使って洗浄を行い、
この水洗い洗浄後、上記高分子重合体塗布手段を作動させて、車両の塗装部分の表
面が乾燥せず水に濡れている状態で、車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利用し
て、水に分散性のフッソ重合体またはエトキシ化シリコーンの高分子重合体を塗布
し、これにより車両塗装部分の表面にこの高分子重合体の薄い被膜を形成し、この
高分子重合体の塗布後、上記送風手段を作動させて、車両表面の水を除去させるこ
とを特徴とする洗車装置。
 (2) 本件訂正後の明細書(以下「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の
記載
【請求項1】車両塗装部分の表面を洗浄体および水を使って洗浄する洗浄行
程と、この洗浄行程の後、車両塗装部分の表面を水を使って洗浄する水洗い行程
と、この水洗い行程の後、車両塗装部分の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、
車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利用して、水に分散性のフッソ重合体の高分
子重合体を塗布し、これにより車両塗装部分の表面にこの高分子重合体の薄い被膜
を形成する高分子重合体塗布行程とを備えたことを特徴とする洗車方法。
【請求項2】車両を上方より跨いで、この車両上方を往復走行し、この往動
または復動中に、当該車両表面の水洗いを行う為の散水手段、当該車両表面の洗浄
体による洗浄を行う為の洗浄体噴出手段、当該車両表面の高分子重合体の塗布を行
う為の高分子重合体塗布手段及び当該車両表面の水の除去を行う為の送風手段を備
えた洗車装置に於いて、初めに、上記散水手段及び洗浄体噴出手段を作動させて、
上記車両の塗装部分の表面を洗浄体及び水を使って洗浄を行い、この塗装面洗浄
後、上記散水手段を作動させて、車両の塗装部分の表面を水を使って洗浄を行い、
この水洗い洗浄後、上記高分子重合体塗布手段を作動させて、車両の塗装部分の表
面が乾燥せず水に濡れている状態で、車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利用し
て、水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体を塗布し、これにより車両塗装部分
の表面にこの高分子重合体の薄い被膜を形成し、この高分子重合体の塗布後、上記
送風手段を作動させて、車両表面の水を除去させることを特徴とする洗車装置。
(以下、訂正明細書の特許請求の範囲記載の発明を「訂正発明」という。)
 3 審決の理由
   審決は、別添審決書写し記載のとおり、①本件訂正の適否について、訂正明
細書は特許法36条4項(注、「平成6年法律第116号による改正前の特許法3
6条4項」の趣旨と解される。以下「特許法旧36条4項」という。)に規定する
明細書の記載要件を満たしていないので、訂正発明は特許出願の際独立して特許を
受けることができないものであり、本件訂正は、同法134条5項(注、「平成1
1年法律第41号による改正前の同法134条5項」の趣旨と解される。)におい
て準用する同法126条4項の規定に適合せず、これを認めることができないと
し、②本件特許明細書についても同法旧36条4項に規定する明細書の記載要件を
満たしていないので、本件特許は、同法123条4項(注、「平成6年法律第11
6号による改正前の同法123条1項4号」の誤記と認める。)に該当するものと
して無効とすべきものとした。
第3 原告主張の審決取消事由
1 審決の理由中、訂正明細書に記載の「フッソ重合体の高分子重合体」が「フ
ッ素樹脂」に相当するとの認定(審決書21頁16行目~22頁2行目)、同「水
に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」が、「それ自体『水に分散性のフッソ重
合体の高分子重合体』又は界面活性剤等を用いることにより水に分散性となる『水
に分散性のフッソ重合体の高分子重合体』であって、これを車両の塗装部分の表面
に塗布したときに、車両の塗装面に水分が十分に残存している状態でもコーティン
グ皮膜を形成でき、この高分子重合体のコーティング皮膜は、洗車の都度塗布さ
れ、洗車するにつれてコーティング皮膜が塗り重ねられ、艶の深みと界面活性剤に
対する防御能力が増加するものである」との認定(同19頁9行目~20頁1行
目)、「フッ素樹脂は、従来周知のように、接着しにくく・・・『疎水、疎油性が
あり、また非粘着性をもつ、すなわち水や油によってぬれにく』・・・いので、車
両塗装部分の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、フッ素樹脂を塗布しても、車
両の塗装部分の表面に存在する水(水膜)によってはじかれ、そして車両塗装部分
の合成樹脂層とは接着性を有しないので、車両塗装部分の表面には付着しにくいも
の」との認定(同25頁17行目~26頁6行目)は認める。
 2 取消事由(明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り)
 (1) 審決は、①訂正発明の「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」との
構成に係る記載要件の充足性について、「フッソ重合体の高分子重合体」という用
語は、学術用語や業界の技術用語ではないが、フッ素樹脂に相当するものと一応認
められ、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はその代表例である(審決書2
0頁4行目~22頁12行目)とした上、「本件訂正明細書に接しても、PTFE
に界面活性剤、石油系炭化水素、パーフルオロエーテル油を添加して水に分散性と
すること(注、口頭審理における原告(被請求人)の主張)が・・・容易に推認で
きるものとはいえない」(同25頁4行目~8行目)とし、②訂正発明の「車両塗
装部分の表面にこの(注、水に分散性のフッソ重合体の)高分子重合体の薄い被膜
を形成する」との構成に係る記載要件の充足性について、「フッ素樹脂は・・・疎
水、疎油性があり、また非粘着性をもつ・・・ので、車両塗装部分の表面が乾燥せ
ず水に濡れている状態で、フッ素樹脂を塗布しても・・・車両塗装部分の表面には
付着しにくいものと認められる。・・・洗車条件下ではPTFEの付着は極めて困
難であるものと推認される」(同25頁17行目~26頁末行)、「PTFEは固
体粒子であって、常温近くの温度では、上記PTFEの固体粒子は分散していて膜
を形成するものとは認められないので、塗装されたPTFEは車両塗装部分の表面
において上記PTFEの薄い被膜を形成することはできないものと推認される」
(同28頁12行目~17行目)とし、③訂正発明の作用効果に係る記載要件の充
足性について、「本件訂正明細書には、作用効果について当業者が発明を容易に実
施できる程度に記載されていないものである」(同30頁10行目~13行目)と
し、④本件特許明細書の記載要件の充足性について、「本件特許明細書には、上記
5.(1)~(5)(注、訂正明細書の記載不備に関する判断)に記載した理由と同様の
理由の記載不備が存在する」(同39頁19行目~40頁1行目)とするが、以下
のとおり、いずれも誤りである。
 (2)「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」との構成について
    訂正発明の「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」との構成につい
ては、訂正明細書(甲第2号証添付)の発明の詳細な説明の段落【0014】に、
界面活性剤及び石油系炭化水素の混合によって達成されることが記載されている。
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、ノニオン、両性イオンの種類があるこ
と、石油系炭化水素の代表例は灯油(ケロシン)であることは当業者には知られて
いるから、フッ素重合体を、灯油(ケロシン)等の石油系炭化水素及び上記いずれ
かの界面活性剤とともに混合すれば、「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合
体」を容易に実現することができる。したがって、上記構成に関して、訂正明細書
に記載不備はない。
 (3)「車両塗装部分の表面に水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体の薄い被
膜を形成する」との構成について
   ア 訂正明細書の発明の詳細な説明に記載された方法に従って、上記「薄い
被膜」が形成されることは、株式会社ユニケミー作成の平成13年3月5日付け試
験報告書(甲第13号証の1)に示されているとおりである。
     すなわち、同試験報告書記載の試験は、フッ素重合体であるPTFE4
重量%、石油系炭化水素であるケロシン36重量%、カチオン系界面活性剤0.5
重量%、水59.5重量%の成分(なお、PTFEとケロシンについては、これを
あらかじめ混合したものが「ルブロンLD-3E」として市販されているので、こ
れを使用した。)から成る「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」を、車両
用金属塗装板に塗布後洗浄して、その前後について、EPMA元素分析、EPMA
面分析及びFT-IR分析を行ったものである。
     その結果、EPMA元素分析では、フッ素重合体の塗布前ではフッ素が
検出されないのに対し塗布後ではこれが検出されていること、EPMA面分析で
は、フッ素重合体の塗布後にフッ素が車両用金属塗装板に面状に存在していること
が示された。FT-IR分析は、フッ素重合体の塗布面に形成された塗布膜をはが
した試料について、赤外線吸収スペクトルを利用して分光分析をしたものである
が、当該試料を真空乾燥させたもの、真空乾燥していないもののいずれについて
も、別途用意したPTFEであることが明白な物質についての分析結果である標準
チャートと極めて近似したチャートが得られた。
     これらの分析結果を総合すれば、水に分散性のフッ素重合体を車両塗装
部分の表面に塗布することによって、フッ素重合体の薄い皮膜が形成されることが
示されているということができる。
     なお、被告は、PTFEは、白色粉末であってそれ自体水に分散性でも
溶解性でもなく、コーティング膜の形成には327~370℃の加温が必要とされ
るから、PTFEを車両塗装部分の表面に塗布するだけでは、薄い被膜を形成する
ことは不可能である旨主張するが、訂正発明における「薄い被膜」は、後記(4)ア程
度の付着で足りるものであって、テフロン加工のフライパンのように半永久的な被
膜を形成するものではないから、被告の主張するような加熱溶着を必要とするもの
ではない。
   イ 名古屋市工業研究所作成の平成11年10月6日付け成績書(甲第4号
証)及び同月1日付け成績書(甲第5号証)は、車両用金属塗装板を水に濡らし、
水に分散されたフッ素重合体(上記アと同じ成分のもの)を塗布し、ドライヤーで
乾燥させて雑巾又はティッシュペーパーでふき上げた分析試料について、前者はX
線マイクロアナライザー(XMA)による分析、後者は赤外線吸収スペクトルを利
用した分光分析を行ったものである。前者の分析の結果、塗布面にフッ素が付着し
ていることが、後者の分析の結果、塗布面にフッ素重合体であるPTFEが検出さ
れたことが、それぞれ確認された。
     この実験結果は、直ちに「薄い被膜」を立証するものではないが、本件
発明の規定する条件でフッ素重合体の高分子重合体を車両塗装面に塗布した場合、
雑巾等でふき上げても容易にはがれない程度に、フッ素重合体の高分子重合体が付
着していることが示されている。
   ウ 平成11年9月16日の本件無効審判請求事件に係る特許庁の口頭審理
において、水に分散性のフッ素重合体を水に濡れた車両塗装表面に塗布し、乾燥さ
せて水を噴霧するとの実験が行われたところ、同様の実験は、上記ア、イと同じ成
分のフッ素重合体を用いた検甲第1号証(ビデオテープ)において再現されてい
る。これによると、フッ素重合体の塗布部分の水のはじき方は、これを塗布してい
ない部分と比べて明らかに異なることが確認された。しかも、このような水のはじ
き方の違いは、フッ素重合体を塗布した面全体にわたっていたことから、これをも
ってフッ素重合体の「薄い被膜」が形成されたということができる。
     なお、上記口頭審理の実験について、審決は、「上記塗装部分の表面に
は白色の粉末であるテフロンの固体粒子の付着及び上記テフロンの被膜の形成を肉
眼では確認することができなかった」(審決書31頁8行目~11行目)とする
が、そもそも車両用ワックスは、それ自身では色を出さず、艶(つや)を出すもの
であるところ、上記口頭審理の実験では新車を使用したために新車の塗装面が持つ
艶と被膜の艶とが識別しにくかったにすぎない。
 (4) 訂正発明の作用効果について
   ア 訂正発明において、フッ素重合体の付着は、通常の車両用ワックスと同
様、洗浄剤を含んだ洗車ブラシの洗浄すり付けの繰り返しで大部分が剥離する程度
の付着であり、これ以上に付着力が強いと、古くなって劣化した被膜の上に新しい
被膜を重ね塗りしてしまうことになり、新しい被膜の耐久性及び車両塗装面の美観
の上から好ましくない。訂正発明の作用効果は、このようなフッ素重合体の付着に
よって奏されるものである。
   イ この点について、審決は、訂正発明の作用効果を確認するためには、
「積層状態を観察するために積層板を垂直に切断して、その切断断面を電子顕微鏡
で層間の状態を観察することができるような塗布断面の顕微鏡写真等」(審決書3
1頁14行目~17行目)が必要であると考えているようであるが、フッ素重合体
の付着力は上記の程度の弱いものであるから、これが付着している車両用金属塗装
板を切断すると、切断時の強い圧力によりフッ素重合体は完全にはがれてしまう。
したがって、上記のような切断断面の顕微鏡写真を得ることは不可能である。
 (5) 本件特許明細書の記載要件の充足性について
    本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載不備のないことは、上記(2)
~(4)で述べたところと同一である。
第4 被告の反論
 1 審決の認定判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
 2 取消事由(明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り)について
 (1)「水に分散性のフッソ重合体の高分子重合体」との構成について
 訂正発明の上記構成は、その技術的意味が不明である。訂正明細書の発明
の詳細な説明の段落【0014】には、「ここで、ポリマー収納タンク18に収納
されるポリマーは、界面活性剤による化学的な侵食に対する防護能力が十分なもの
であると共に、例えば車両の塗装面に水分が十分に残存している状態でも確実にコ
ーティング皮膜を形成できるタイプの高分子重合体(高分子共重合体を含む)が好
ましい。この高分子重合体は、シリコーンまたはフッソ重合体等である。シリコー
ンとしてはアミノ変成シリコーンまたはエトキシ化シリコーン等であって水に分散
または溶解性のものが望ましい。フッソ重合体も同様に水に分散または溶解性のも
のが望ましい。ポリマー収納タンク18に収納されるポリマーは、水も混合されて
いるが、必要により、脂肪酸アミン系等の防錆剤、ワックス、界面活性剤、石油系
炭化水素等を混合する」と記載されているにすぎず、界面活性剤、石油系炭化水素
が混合される目的は不明である。したがって、この記載から「水に分散性のフッソ
重合体の高分子重合体」を当業者が容易に実現することができるとはいえない。
 (2)「車両塗装部分の表面にフッソ重合体の高分子重合体の薄い被膜を形成す
る」との構成について
   ア 昭和54年2月1日株式会社講談社発行の「フッ素の化合物」(乙第7
号証)には、「PTFEは・・・白色粉末で」(176頁下から3行目)、「著し
く疎水、疎油性があり、また非粘着性をもつ。すなわち水や油によってぬれにく
く」(177頁7行目~8行目)、「PTFEの最も特徴的な性質は耐化学薬品性
が格段にすぐれていることで、この点では現在ある合成樹脂中最高である。たとえ
ばすべての溶媒に対して、その沸点までの温度で全く変化しない」(同頁9行目~
11行目)、「PTFEは融点327℃でゲル化する」(同頁21行目)、「PT
FEでコーティングを行なうには50~60%の固体を含む水中分散液を作り、金
属またはセラミックの表面に塗ってから乾燥させ、次いで327~370℃に加熱
する方法がとられる」(177頁末行~次頁1行目)と記載されており、これらの
記載によれば、PTFEは、白色粉末であってそれ自体水に分散性でも溶解性でも
なく、コーティング膜の形成には327~370℃の加温が必要とされるから、現
在の技術常識では、PTFEを車両塗装部分の表面に塗布するだけでは、薄い被膜
(コーティング膜)を形成することは不可能である。
   イ 甲第13号証の1の試験報告書について
    訂正発明は、「水に分散性のフッソ重合体」を出発物質とするものであ
あるところ、上記報告書における実験では、「資材1」として、「ルブロンLD-
3E」に界面活性剤と水を混合したものが使用されており、しかも、「ルブロンL
D-3E」の組成内容、界面活性剤の成分内容、これらと水との成分比については
明らかにされていない。これに上記(1)の点も考慮すると、上記「資材1」を「水に
分散性のフッ素重合体」ということはできないから、この実験は訂正発明を追試し
たものとはいえない。
    また、EPMAによる元素分析及び面分析では、「資材1」を塗布した
面にフッ素が認められた事実、FT-IR分析では、「資材1」を塗布した面にP
TFEの吸収が認められた事実が示されているにとどまり、これは、PTFEの薄
い被膜が得られたことを示すものとはいえない。
  ウ 甲第4、第5号証の成績書について
    甲第4号証の成績書は、原告が「水に分散性のフッソ重合体」であると
主張する資材を車両用金属塗装板に塗布し、乾燥ふき上げ後のサンプルをXMA分
析した結果、フッ素が検出されたというにすぎないものであるが、含フッ素高分子
分散液を使用してこのような実験をした場合、塗装板の表面の凹部に含フッ素高分
子粒子が入り込み、含フッ素高分子粒子が残存する可能性が高く、被膜の形成の有
無とは関係なく、フッ素元素が検出され得る。したがって、上記成績書は、サンプ
ル表面にフッ素元素の付着がある事実を示すとしても、フッ素高分子重合体の被膜
の存在を証明するものではない。
    また、甲第5号証の成績書は、そもそもPTFEの存在を確認したとの
記述はなく、未塗布サンプルと塗布済サンプルの各チャートの差は誤差の範囲内に
すぎないと解すべきものである。しかも、一般に、PTFEのIRチャートは、主
鎖にフッ素が直接結合されるCF3及びCF2が多く存在するため、1200cm-

のピークはブロードである(昭和60年1月25日株式会社朝倉書店発行の「高分
子分析ハンドブック」932頁、甲第6号証)のに、上記成績書に示されているチ
ャートでは、1200cm-1
のピークはシャープであり、そのピークの形態はむし
ろ低分子フッ素に近い。このような分析結果から、フッ素高分子重合体の被膜の存
在を導くことは到底できない。
  エ 口頭審理での実験及び検甲第1号証について
    上記口頭審理での実験は、試料の成分について確認できる第三者の証明
がないばかりか、実験の結果についても、塗装部分の表面に白色の粉末であるはず
のテフロンの固体粒子の付着も、PTFEの被膜の形成も肉眼では確認することが
できなかった。
    上記試料を塗布した部分と塗布していない部分との水のはじき方が異な
るとすれば、成分中のパーフルオロポリエーテル油、ケロシン等の他の物質による
ものと推察される。
(3) 訂正発明の作用効果について
   上記(2)のとおり、訂正発明において、フッ素重合体の高分子重合体の被膜
を形成することは極めて困難であるから、その作用効果を得られないことも明らか
である。
(4) 本件特許明細書の記載不備について
   上記(1)~(3)で述べたところと同様である。
第5 当裁判所の判断
 1 取消事由(明細書の記載要件の充足性に関する判断の誤り)について
 (1) 訂正発明の「車両塗装部分の表面に水に分散性のフッソ重合体の高分子重
合体の薄い被膜を形成する」との構成に関して、訂正明細書の発明の詳細な説明に
当業者が容易に訂正発明の実施をすることができる程度に記載されているかどうか
について判断するに、訂正明細書(甲第2号証添付)の発明の詳細な説明には、上
記被膜の形成に関して、以下の記載があることが認められる。
   ア【発明が解決しようとする課題】欄
    【0006】本発明は・・・塗装表面の劣化を防止すると共に、水垢取り
洗車の作業効率を向上させることができる洗車方法を提供することを課題としてい
る。
   イ【課題を解決するための手段】欄
    【0007】上記課題を達成するために、本発明に係る洗車方法及び洗車
装置は、車両表面を洗浄体を使って洗浄する洗浄行程と、この洗浄行程の後、車両
表面を水を使って洗浄する水洗い行程と、この水洗い行程の後、車両塗装部分の表
面が乾燥せず水に濡れている状態で、車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利用し
て、水に分散又は溶解性の高分子重合体を塗布し、これにより車両塗装部分の表面
にこの高分子重合体の薄い被膜を形成する高分子重合体塗布行程とを備えたことに
ある。
   ウ【作用】欄
    【0008】これにより、洗浄行程によって水垢をとり、水洗い行程で洗
浄体を洗い流し、しかる後に高分子重合体塗布行程で高分子重合体を塗布するの
で、1度目の洗浄時には塗装面の荒れがわずかに生じるものの、水垢が除去された
後には、高分子重合体によるコーティング皮膜が塗装面に形成され、塗装面の艶が保
持される。・・・次回からの水垢取り洗車では、上記コーティング皮膜によって使用
する洗浄体が直接塗装面に届くことがなくなり、この結果、塗装面の劣化が進行す
ることがなくなる。
   エ【実施例】欄
    【0021】以上までの行程(注、水洗い行程A、洗剤洗い行程B及び水
洗い行程C)が終了すると、車両表面が乾燥しないうちに・・・高分子重合体の塗
布行程Dを行う。具体的には、洗車機本体2の復動を開始し(ステップ71)、コ
ンプレッサ17を稼働させて車両表面に高分子重合体を噴霧する(ステップ7
2)。それと同時に、回転ブラシ6~9を回転させる等のその他の処理も行う(ス
テップ73)。
    【0022】これにより、水垢の落ちた塗装面全体に、高分子重合体がコ
ーティングされる。この場合、高分子重合体は塗装面が濡れた状態で供給されるの
で、コーティング被膜は、水の滑性により車両1の表面に薄く均一に形成される。
    【0023】尚、車両表面の濡れた状態での高分子重合体の塗布は、霧吹
きで塗装面を濡らした程度に少量の水が残っている状態で行うのが好ましい。水の
残量が多すぎると、ポリマーを定着させるまでの塗布量が多くなるし、水の残量が
少なすぎると、滑性を得られず、ポリマーの延びが悪くなりムラになるためであ
る。
    【0024】~【0025】本発明は上記実施例に限定させず、本発明の
趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施例では、車両表面
が濡れている状態で高分子重合体をコーティングするようにしたが、車両表面が乾
燥してからコーティングするようにしてもよい。・・・水洗い行程Cと高分子重合
体の塗布行程Dとを同時に行ってもよい。
    【0026】しかして、一度目の洗車が行われると、界面活性剤による洗
剤洗い行程Bで水垢が除去され、高分子重合体の塗布行程Dで高分子重合体が塗布
されるので、車両表面には、界面活性剤に対し防護機能の強いコーティング皮膜が形
成され、二度目以降の洗車によって、界面活性剤による塗装面の侵食が防止され、
艶ぼけの進行を抑えることができる。
    【0027】・・・高分子重合体のコーティング皮膜は、洗車の都度塗布さ
れるので、洗車するにつれてコーティング皮膜が塗り重ねられ、水垢の浸透が益々少
なくなると共に、艶の深みと界面活性剤に対する防護能力が増加する。
   オ【発明の効果】欄
    【0028】・・・本発明は、水垢を洗浄体で取り除いた後に、油性分を
補給する代わりに高分子重合体を塗布するようにしたので、後に界面活性剤を用い
た洗車を行っても、塗装面が活性分解されることがなくなり、塗装面の劣化を防止
することができる。また、本発明によれば、ワックス等の油性分の再塗布の行程が
ないので、水垢の再付着を防止でき、次からの洗車時にタッチアップ作業がほとん
ど不要となり、作業効率の向上が図れる。・・・更に、高分子重合体の塗布を車両
表面が濡れている状態で行えば、水の滑性を利用してコーティング皮膜を車両全体
に容易に形成でき、作業効率をさらに向上させることができる。
 (2) 以上の発明の詳細な説明の記載によれば、訂正発明の「車両塗装部分の表
面にフッソ重合体の高分子重合体の薄い被膜を形成する」との構成を実現するため
の具体的な手段方法としては、「課題を解決するための手段」欄に「車両塗装部分
の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、車両塗装部分の表面に上記水の滑性を利
用して、水に分散又は溶解性の高分子重合体を塗布」するという一般的な記載がさ
れているほかは、実施例として、コンプレッサで車両表面に高分子重合体を噴霧す
るのと同時に、回転ブラシを回転させる等の処理が記載されているにとどまり、そ
れ以上の具体的な手段方法は示されていない。
    しかしながら、昭和54年2月1日株式会社講談社発行の「フッ素の化合
物」(乙第7号証)には、「2.フッ素ポリマー」の項に、「ポリ(テトラフルオ
ロエチレン)樹脂、テフロンは現在でもフッ素樹脂の代表であり、その生産量はす
べてのフッ素系プラスチックの大部分(約80%)を占めている」(171頁3行
目~5行目)、「PTFEは比重2.14~2.20の白色粉末で、合成ポリマー
中ではきわめて特異な物性をもつ。耐熱性はPTFEのすぐれた特徴の1つであ
る。・・・327℃に1次転移点をもつ。この温度で透明なゲル状となるが、流動
性はなく、さらに温度を上げて370~390℃になればシンタリングを起こし、
400℃以上ではじめて部分的に解重合を起こし分解する」(176頁下から3行
目~177頁3行目)、「PTFEの他の特長として、その界面的性質がある。す
なわち他のハイドロカーボン系ポリマーに比べて著しく疎水、疎油性があり、また
非粘着性をもつ。すなわち水や油によってぬれにくく、したがって帯電性もなく、
電気絶縁物質としてもすこぶる適している」(177頁6行目~8行目)、「PT
FEでコーティングを行なうには50~60%の固体を含む水中分散液を作り、金
属またはセラミックの表面に塗ってから乾燥させ、次いで327~370℃に加熱
する方法がとられる」(177頁末行~次頁1行目)と記載されており、これによ
れば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)はフッ素樹脂の代表とされている
こと、PTFEは、著しく疎水、疎油性及び非粘着性を有するという特徴があり、
それ自体は白色粉末であるが、PTFEでコーティングを行うには、水中分散液を
塗布後、乾燥させ、327~370℃に加熱する方法が必要とされることが認めら
れる。そして、「フッ素樹脂は、従来周知のように、接着しにくく・・・『疎水、
疎油性があり、また非粘着性をもつ、すなわち水や油によってぬれにく』・・・い
ので、車両塗装部分の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、フッ素樹脂を塗布し
ても、車両の塗装部分の表面に存在する水(水膜)によってはじかれ、そして車両
塗装部分の合成樹脂層とは接着性を有しないので、車両塗装部分の表面には付着し
にくいもの」との審決の認定は、原告も認めるところである。
    そうすると、訂正明細書の発明の詳細な説明にあるように、単に「車両塗
装部分の表面が乾燥せず水に濡れている状態で、車両塗装部分の表面に上記水の滑
性を利用して、水に分散又は溶解性の高分子重合体を塗布」するというだけであれ
ば、フッ素重合体の高分子重合体(その代表であるPTFE)の上記のような界面
的性質のために、そもそも車両塗装面と接着性を有しない上に、車両の塗装部分の
表面の水膜によってはじかれてしまうことは明らかであり、PTFEのコーティン
グにおいて必要とされる上記方法、すなわち、水中分散液を塗布後、乾燥させ、3
27~370℃に加熱するという方法によることなく、その「薄い被膜」をどのよ
うに形成するのか、また、そのようなことがそもそも実現可能であるのか、当業者
において容易に理解し得ないところといわざるを得ない。
    なお、原告は、訂正発明における「薄い被膜」は、洗車ブラシによる洗浄
の繰り返しで大部分が剥離する程度の付着であって、半永久的な被膜を形成するも
のではないから加熱溶着を必要としない旨主張する。しかしながら、原告の上記主
張は、訂正明細書の発明の詳細な説明中の「次回からの水垢取り洗車では、上記コ
ーティング皮膜によって使用する洗浄体が直接塗装面に届くことがなくなり、この結
果、塗装面の劣化が進行することがなくなる」(段落【0008】)、「高分子重
合体のコーティング皮膜は、洗車の都度塗布されるので、洗車するにつれてコーティ
ング皮膜が塗り重ねられ、水垢の浸透が益々少なくなる」(段落【0027】)と
の記載に反しているばかりか、上記「フッ素の化合物」(乙第7号証)の記載によ
れば、PTFEのコーティングに際して、乾燥後327~370℃に加熱すること
を必要とするのは、その耐熱性、界面的性質、融点等のPTFEの物性に由来する
ものであることが明らかであるところ、原告の上記主張は、これを単に必要とされ
る被膜強度の問題にすり替えた議論であって、失当といわざるを得ない。
 (3) 原告は、株式会社ユニケミー作成の平成13年3月5日付け試験報告書
(甲第13号証の1)によって、被膜の形成が確認された旨主張するので、この点
について検討する。
    甲第13号証の1、2及び弁論の全趣旨によれば、同試験報告書は、車両
用塗装金属板にPTFEを主成分とするワックスであるとされる「ルブロンLD-
3E」に界面活性剤及び水を混合させた「資材1」を塗布した面と塗布していない
面とについて、EPMA元素分析、EPMA面分析及びFT-IR分析による調査
の結果を示したものであること、その結果、EPMA元素分析では、上記資材の塗
布前ではフッ素が検出されないのに対し塗布後ではこれが検出されていること、E
PMA面分析では、上記資材の塗布面の広い範囲にわたってフッ素が検出されたこ
と、FT-IR分析は、フッ素重合体の塗布面に形成された塗布膜をはがした試料
のFT-IRチャートが、PTFEの標準チャートと比較的近似したものとなって
いることが認められるが、これらを総合しても、上記「資材1」の塗布面の広い範
囲からフッ素が検出されたことが認められるにすぎない。そうすると、フッ素を含
有する物質が車両用塗装金属板の表面の凹部に入り込んで残存していたにすぎない
可能性も考えられるのであって、上記事実だけでは、原告が主張するように塗布に
よって「フッソ重合体の薄い被膜」が形成されたこと、これが訂正発明にいう「フ
ッソ重合体の薄い被膜」に相当することを確認することはできないといわざるを得
ない。なお、上記試験報告書の「所見」欄には、「一般に、車輌用塗装金属板に使
用するワックスは、表面に薄く塗布します。したがって、塗布面上のほぼ全体に、
極薄膜のフッ素(PTFE)が存在していると考えられます」との記載があるが、
これは客観的な試験結果に基づく所見とは認められないものであって、採用するこ
とはできない。
    したがって、上記試験報告書は、訂正発明の「車両塗装部分の表面にフッ
ソ重合体の高分子重合体の薄い被膜を形成する」との構成の実施の容易性を基礎付
けるものとはいえない。
 (4) また、原告は、名古屋市工業研究所作成の平成11年10月6日付け成績
書(甲第4号証)及び同月1日付け成績書(甲第5号証)、口頭審理での実験並び
に検甲第1号証に基づく実施の容易性を主張するが、まず、甲第4、第5号証の成
績書は、「ルブロンLD-3E」40重量%(PTFE4重量%、ケロシン36重
量%)、カチオン系界面活性剤0.5重量%、水59.5重量%から成る資材の塗
布面からフッ素が検出されたことを確認したものにとどまり、これがフッ素高分子
重合体の「薄い被膜」の存在を立証するものでないことは原告も自認するところで
ある。
    さらに、上記口頭審理での実験は、それ自体の具体的な内容を示す証拠は
提出されていないので、これに代わる検甲第1号証(ビデオテープ)の実験につい
て見るに、この実験は、上記甲第4、第5号証で使用されたものと同じ資材を水に
濡れている車両用金属塗装板に塗布し、乾燥させた上でふき取った面に水を噴霧
し、上記資材を塗布していない面と水のはじき方の相違を比較したものであり、そ
の結果、塗布部分は非塗布部分と比較して水がよく流れ落ちることが確認されたと
いうものである。しかし、このような水のはじき方の違いが何に由来するものであ
るかは、上記実験からは明らかでなく、例えば、上記資材中に大量に含有されてい
るケロシンが界面活性剤などと結合して残存した等の可能性も否定することはでき
ないから、上記のような水のはじき方の違いのみをもって、フッ素高分子重合体の
「薄い被膜」の形成を裏付けるものということはできない。
 (5) 以上の認定判断によれば、訂正明細書の「車両塗装部分の表面に水に分散
性のフッソ重合体の高分子重合体の薄い被膜を形成する」との構成は、フッ素樹脂
の代表とされるPTFEのコーティングに関する出願当時の技術常識に照らして、
発明の詳細な説明の記載からは、当業者が容易にこれを実現することはできないと
いわざるを得ない。
    したがって、訂正明細書には、特許法旧36条4項に反する記載不備の違
法があり、また、本件特許明細書についても、上記(1)の記載は訂正明細書と同一で
あって、訂正明細書に関する上記判断がそのまま妥当し、同様の記載不備の違法が
あるというべきである。これと同旨の審決の判断に誤りはない。
 2 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消す
べき瑕疵は見当たらない。
   よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担に
つき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 長  沢  幸  男
    裁判官 宮  坂  昌  利

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