弁護士法人ITJ法律事務所

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主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2上記部分に係る被控訴人の請求を棄却する。
第2事案の概要
1本件事案の概要は,次のとおり補正し,後記2のとおり加えるほかは,原判
決の「事実及び理由」中「第2事案の概要」に記載のとおりであるから,こ
れを引用する(ただし「不整型減価「不整型地「不整型」とあるのはそれ,」」
ぞれ「不整形減価「不整形地「不整形」の誤記と認める。」」。)
(1)原判決4頁3行目の「市町村」の次に「東京都の特別区においては,(
東京都。地方税法734条1項」を加える。)
(2)原判決6頁21行目の「取扱基準」を「取扱通達」に改める。
(3)原判決13頁10行目の冒頭から15行目の「取り消すべきであるとし
た上で」までを次のように改める。
「前訴控訴審判決の示した理由は,①前訴第1審判決の示した前記ウ⑪の判
断とは異なり,登録価格の決定については適正な価格を超える部分について
のみ違法と評価することが可能である以上,固定資産評価審査委員会の審査
決定取消訴訟において,裁判所が適正な価格として具体的金額を認定し登録
価格がこれを超えることを理由にその決定を違法とするときは,その超える
部分についてのみ審査決定を取り消す一部取消判決をするのが相当である
が,登録価格の決定が違法とされる場合でも,客観的に適正とされる価格を
認定し判断するためには訴訟手続内の資料では足りずそのため裁判所として
具体的な金額を認定判断することができないときは,同委員会に改めて判決
の趣旨に従いこれについての審理をさせるのが相当であるから,同委員会の
決定を全体として取り消すことになるところ,本件では,登録価格が客観的
時価を超えていることは認定することができても,提出された証拠だけでは
適正な時価が幾らであるかを確定することができないから,第1次決定を全
部取り消すべきであるとした上で」
(4)原判決17頁15行目の「最も規範力がある形で」を「最も規範性を有
するものとして」に改める。
2控訴人の当審における追加主張
(1)前訴控訴審判決は地価下落率が30%を超えている疑いがあるとしたに
すぎないのに,第2次決定はこれを上回る31.3%の下落率を認めて従来
の固定資産税評価額を低めに評価し直したのだから,更に容積率による減価
を認める必要はない。
(2)不整形であっても,面積が広く土地の有効利用に支障がない場合には不
整形地補正をする必要はない。本件各土地の面積の合計は525.85㎡に
,,及び本件各土地上の建物はほぼ土地の形に即して無駄なく建築されていて
利用不可能な土地はないから,不整形地補正をする必要はないというべきで
ある。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,被控訴人の本件請求は,第2次決定のうち,本件土地1の価格
が22億9782万2340円を超える部分及び本件土地2の価格が3億80
50万0270円を超える部分の各取消しを求める限度で理由があるものと判
断する。
その理由は次のとおり補正し後記2のとおり加えるほかは原判決の事,,,「
実及び理由」中「第3争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これ
を引用する(ただし「不整型「不整型減価「不整型地」とあるのはそれぞ,」」
れ「不整形「不整形減価「不整形地」の誤記と認める。」」。)
(1)原判決36頁15行目の「(1)」を削る。
(2)原判決37頁7行目の「取り消した」の前に「全部」を加える。
(3)原判決38頁5行目冒頭から42頁14行目末尾までを次のように改め
る。
「しかしながら,固定資産課税台帳に登録された基準年度に係る賦課期日に
おける土地の価格についての固定資産評価審査委員会の決定の取消訴訟にお
いて,裁判所が,同期日における当該土地の適正な時価又は固定資産評価基
準によって決定される価格を認定し,同委員会の認定した価格が上記の適正
な時価等を上回っていることを理由として同決定を取り消す場合には,同決
定のうち上記の適正な時価等を超える部分を取り消せば足りるところ(最高
裁平成14年(行ヒ)第181号同17年7月11日第二小法廷判決・民集5
9巻6号1197頁,上記のとおり前訴控訴審判決は,登録価格の決定が)
違法とされる場合でも,客観的に適正とされる価格を認定し判断するために
は訴訟手続内の資料では足りずそのため裁判所として具体的な金額を認定判
断することができないときは,同委員会に改めて判決の趣旨に従いこれにつ
いての審理をさせるのが相当であるとした上,本件では,登録価格が客観的
時価を超えていることは認定することができても,適正な時価が幾らである
かを確定することはできないという理由で第1次決定を全部取り消すべきで
あるとしたものである。
そうすると,前訴控訴審判決は,訴訟手続内の資料のみでは客観的な時価
を認定判断するための証拠が十分でないため,同委員会に改めてこれについ
ての審理をさせるべく,第1次決定を全部取り消したものであるから,前訴
控訴審判決の拘束力は,登録価格が客観的時価を超えているという判断につ
いてのみ生ずるというべきであって,上記の諸点,すなわち,<ア>平成5年
1月1日から同6年1月1日までの地価の下落率が30%を超えている疑い
のあること,及び<イ>本件各土地を評価するに際しては標準的画地と容積率
が異なることに伴う減価補正として少なくとも3%程度は必要であるとの認
定事実は,登録価格が客観的時価を超えており違法であるという判断を導く
に至った推認事実ではあるが,同委員会における再度の審理いかんによって
数値に変更が生ずる可能性もあるものとして認定判断されたにとどまり,前
訴の証拠上,第1次決定を全部取り消さざるを得ないものとして,その判決
主文が導き出された事実認定及び法律判断にとどまるものと解され,上記<
ア>については30%を超えている「疑いのある」と,上記<イ>については
3%「程度」と,いずれも幅のある認定判断がされているのはこのような経
緯を示しているものというべきである。したがって,上記<ア><イ>の点につ
いて前訴控訴審判決の拘束力が発生しており,控訴人がこれらの判断に反す
る処分又は裁決をすることが許されないということはできない」。
(4)原判決43頁20行目冒頭から44頁14行目末尾までを次のように改
める。
「そこで,①の点について判断する。
(,,,,,,,)証拠甲19乙12411の1・212の1~31314
によると,本件各土地の周辺(半径500m以内)において,平成5年度及
び同6年度に商業地の地価公示地点であった地点は2地点(α-14及びα
-15)存するところ,平成5年1月1日から同6年1月1日までの地価下
落率は,それぞれ28.7%及び31.3%であるが,地価公示地α-15
と本件土地1との間には相当の状況類似性があること,一方,A鑑定におい
て比準価格算定の基礎とされた東京都基準地α-6の同期間における地価下
落率は,28.2%であるとされているものの,これは,平成4年7月1日
時点の価格と平成5年7月1日時点の価格の中間値及び同日時点の価格と平
成6年7月1日時点の価格の中間値を比較したもので,平成4年7月1日か
ら平成6年7月1日まで地価が一定の割合で下落したことを前提としている
点において,本件土地1との状況類似性が地価公示地α-15よりも優れて
いるとはいえないこと,第2次決定においては本件各土地の地価下落率を3
1.3%とし,特段の反対証拠の指摘もしていないことが認められる。上記
認定事実によれば,平成5年1月1日から同6年1月1日までの本件各土地
の地価下落率は,地価公示地α-15のそれと同一の31.3%であると認
めるのが相当である」。
(5)原判決44頁18行目の「乙1」の前に「甲18」を加える。,
2控訴人の当審における追加主張について
(1)控訴人は前訴控訴審判決は地価下落率が30%を超えている疑いがある
としたにすぎないのに,第2次決定はこれを上回る31.3%の下落率を認
めて従来の固定資産税評価額を低めに評価し直したのだから,更に容積率に
よる減価を認める必要はない旨主張する。
しかし,地価下落率を理由とする減価と容積率を理由とする減価は観点を
,.異にする問題であることはいうまでもなく本件各土地の地価下落率を31
3%と認め,容積率による減価を3%と認めるのが相当であることは上記の
とおりであるから,控訴人の主張は採用することができない。
(2)控訴人は本件各土地の面積の合計は525.85㎡に及び,本件各土地
上の建物はほぼ土地の形に即して無駄なく建築されていて,利用不可能な土
地はないから,不整形地補正をする必要はない旨主張する。
しかし,本件各土地の不整形の形状は,面積が広いことを理由に無視し得
る程度のものということはできず,また,被控訴人は不整形地という制約の
下で最大限に本件各土地を活用して建物を建築しているものと認められるか
,。らこのことを理由に不整形地補正をする必要はないということもできない
控訴人の主張は採用することができない。
3以上によれば,被控訴人の本件請求は,第2次決定のうち,本件土地1の価
格が22億9782万2340円を超える部分及び本件土地2の価格が3億8
050万0270円を超える部分の各取消しを求める限度で理由があるから認
容すべきであり,原判決は結論において正当である。
よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決
する。
東京高等裁判所第22民事部
裁判長裁判官石川善則
裁判官倉吉敬
裁判官德増誠一

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