弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
理由
第1弁護人後藤寛ほか及び被告人本人の各上告趣意のうち,本件被告人の行為
をもって刑法130条前段の罪に問うことは憲法21条1項に違反するとの主張に
ついて
1原判決の認定及び記録によれば,本件の事実関係は,次のとおりである。
(1)本件マンションの構造等
ア本件マンションは,東京都葛飾区亀有2丁目所在の地上7階,地下1階建て
の鉄筋コンクリート造りの分譲マンションであり,1階部分は4戸の店舗・事務所
として,2階以上は40戸の住宅として分譲されている。1階の店舗・事務所部分
への出入口と2階以上の住宅部分への出入口とは完全に区分されている。
イ2階以上の住宅部分への出入口としては,本件マンション西側の北端に設置
されたガラス製両開きドアである玄関出入口と,敷地北側部分に設置された鉄製両
開き門扉である西側敷地内出入口とがある。住宅部分への出入口である玄関出入口
から本件マンションに入ると,玄関ホールがあり,玄関ホールの奥にガラス製両開
きドアである玄関内東側ドアがあり,これを開けて,1階廊下を進むと,突き当た
りの右手側にエレベーターがあり,左手側に鉄製片開きドアである東側出入口があ
る。東側出入口から本件マンションの敷地内に出ると,すぐ左手に2階以上に続く
階段がある。
(2)玄関出入口及び玄関ホール内の状況
ア玄関出入口付近の壁面には警察官立寄所のプレートが,玄関出入口のドアに
は「防犯カメラ設置録画中」のステッカーがちょう付されていた。
イ玄関ホール南側には掲示板と集合ポストが,北側には同ホールに隣接する管
理人室の窓口があり,掲示板には,A4版大の白地の紙に本件マンションの管理組
合(以下「本件管理組合」という。)名義で「チラシ・パンフレット等広告の投函
は固く禁じます。」と黒色の文字で記載されたはり紙と,B4版大の黄色地の紙に
本件管理組合名義で「当マンションの敷地内に立ち入り,パンフレットの投函,物
品販売などを行うことは厳禁です。工事施行,集金などのために訪問先が特定して
いる業者の方は,必ず管理人室で『入退館記録簿』に記帳の上,入館(退館)願い
ます。」と黒色の文字で記載されたはり紙がちょう付されていた。これらのはり紙
のちょう付されている位置は,ビラの配布を目的として玄関ホールに立ち入った者
には,よく目立つ位置である。
ウ管理人室の窓口からは,玄関ホールを通行する者を監視することができ,本
件管理組合から管理業務の委託を受けた会社が派遣した管理員が,水曜日を除く平
日の午前8時から午後5時まで,水曜日と土曜日は午前8時から正午までの間,勤
務していた。
(3)本件マンションの管理組合規約は,本件マンションの共用部分の保安等の
業務を管理組合の業務とし,本件管理組合の理事会が同組合の業務を担当すると規
定していたところ,同理事会は,チラシ,ビラ,パンフレット類の配布のための立
入りに関し,葛飾区の公報に限って集合ポストへの投かんを認める一方,その余に
ついては集合ポストへの投かんを含めて禁止する旨決定していた。
(4)被告人は,平成16年12月23日午後2時20分ころ,日本共産党葛飾
区議団だより,日本共産党都議会報告,日本共産党葛飾区議団作成の区民アンケー
ト及び同アンケートの返信用封筒の4種(以下「本件ビラ」という。)を本件マン
ションの各住戸に配布するために,本件マンションの玄関出入口を開けて玄関ホー
ルに入り,更に玄関内東側ドアを開け,1階廊下を経て,エレベーターに乗って7
階に上がり,各住戸のドアポストに,本件ビラを投かんしながら7階から3階まで
の各階廊下と外階段を通って3階に至ったところを,住人に声をかけられて,本件
ビラの投かんを中止した(以下,この本件マンションの廊下等共用部分に立ち入っ
た行為を「本件立入り行為」という。)。当時,被告人は,上記1(2)イの玄関出
入口及び玄関ホール内の状況を認識していた。
2以上の事実関係によれば,本件マンションの構造及び管理状況,玄関ホール
内の状況,上記はり紙の記載内容,本件立入りの目的などからみて,本件立入り行
為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり,被告人もこれを
認識していたものと認められる。そして,本件マンションは分譲マンションであ
り,本件立入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マン
ションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと,法益侵害の程
度が極めて軽微なものであったということはできず,他に犯罪の成立を阻却すべき
事情は認められないから,本件立入り行為について刑法130条前段の罪が成立す
るというべきである。
3(1)所論は,本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは憲
法21条1項に違反する旨主張する。
(2)確かに,表現の自由は,民主主義社会において特に重要な権利として尊重
されなければならず,本件ビラのような政党の政治的意見等を記載したビラの配布
は,表現の自由の行使ということができる。しかしながら,憲法21条1項も,表
現の自由を絶対無制限に保障したものではなく,公共の福祉のため必要かつ合理的
な制限を是認するものであって,たとえ思想を外部に発表するための手段であって
も,その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されないというべきであ
る(最高裁昭和59年(あ)第206号同年12月18日第三小法廷判決・刑集3
8巻12号3206頁参照)。本件では,表現そのものを処罰することの憲法適合
性が問われているのではなく,表現の手段すなわちビラの配布のために本件管理組
合の承諾なく本件マンション内に立ち入ったことを処罰することの憲法適合性が問
われているところ,本件で被告人が立ち入った場所は,本件マンションの住人らが
私的生活を営む場所である住宅の共用部分であり,その所有者によって構成される
本件管理組合がそのような場所として管理していたもので,一般に人が自由に出入
りすることのできる場所ではない。たとえ表現の自由の行使のためとはいっても,
そこに本件管理組合の意思に反して立ち入ることは,本件管理組合の管理権を侵害
するのみならず,そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざ
るを得ない。したがって,本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うこ
とは,憲法21条1項に違反するものではない。このように解することができるこ
とは,当裁判所の判例(昭和41年(あ)第536号同43年12月18日大法廷
判決・刑集22巻13号1549頁,昭和42年(あ)第1626号同45年6月
17日大法廷判決・刑集24巻6号280頁)の趣旨に徴して明らかである(最高
裁平成17年(あ)第2652号同20年4月11日第二小法廷判決・刑集62巻
5号1217頁参照)。所論は理由がない。
第2その余の主張について
弁護人後藤寛ほかの上告趣意のうち,憲法21条1項の解釈の誤りをいう点は,
原判決は所論のような趣旨を判示したものではないから前提を欠き,最高裁昭和4
3年(あ)第837号同48年4月25日大法廷判決・刑集27巻3号418頁を
引用して判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件
に適切でなく,その余は,憲法31条違反,判例違反をいう点を含め,実質は単な
る法令違反,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,憲法14条,31
条違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれ
も刑訴法405条の上告理由に当たらない。
よって,同法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決す
る。
(裁判長裁判官今井功裁判官中川了滋裁判官古田佑紀裁判官
竹内行夫)

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