弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中「当審における未決勾留日数中二四〇日を原判決の本刑に算入
する。」との部分を破棄する。
     原審における未決勾留日数中一四日を本刑に算入する。
     その余の部分に対する本件各上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意について
 記録によれば、被告人は、第一審判決判示第二の一〇の窃盗の事実につき、昭和
五五年六月二八日勾留状の執行を受け、その後第一審及び原審を通じて勾留を継続
されていたものであるところ、その間、第一審は、同五六年一月一六日、右事実を
含む本件公訴事実について、被告人を懲役五年に処し、未決勾留日数中九〇日を右
刑に算入する旨の判決を言い渡し、これに対し、被告人が同月二〇日控訴を申し立
てたところ、原審は、同年一〇月二八日右控訴を棄却するとともに、「当審におけ
る未決勾留日数中二四〇日を原判決の本刑に算入する。」旨の判決を言い渡したこ
とが明らかである。他方、被告人は、昭和四九年三月二〇日横浜簡易裁判所におい
て、窃盗、同未遂、住居侵入の事実により懲役二年六月、未決勾留日数中一五〇日
本刑に算入、四年間刑の執行猶予・保護観察付きの判決の言渡しを受け、同判決は
同年四月四日確定したが、同五二年一月一八日右刑の執行猶予の言渡しの取消決定
があり、同決定は同月二五日確定したので、被告人は、右刑の執行を受け始め、同
五五年二月二七日仮出獄を許されたが、本件被告事件により勾留中の同五五年一二
月五日仮出獄を取消され、同月一〇日から同五六年一〇月一三日まで右残刑につき
受刑中であつたものであり、したがつて、同五五年一二月一〇日以降同五六年一〇
月一三日までは、右残刑の執行と本件窃盗被告事件の勾留状による未決勾留とが競
合していたことが明らかである。
 このように、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を刑法二一条により算入する
ことが違法であることは、所論引用の当裁判所の判例(昭和二九年(あ)第三八九
号同三二年一二月二五日大法廷判決・刑集一一巻一四号三三七七頁、同五〇年(あ)
第九八七号同年一一月二八日第三小法廷判決・裁判集刑事一九八号六九九頁、同五
〇年(あ)第二三八五号同五一年六月二九日第三小法廷判決・裁判集刑事二〇一号
九三頁、同五五年(あ)第四〇九号同年七月一八日第二小法廷判決・裁判集刑事二
一八号二六三頁)の示すところであるから、原審における未決勾留日数のうち本刑
に算入することが許される限度は、右残刑の執行が終了した日の翌日である昭和五
六年一〇月一四日から原判決の言渡しの前日である同月二七日までの一四日である。
したがつて、原審が右限度を超えて、原審における未決勾留日数を本刑に算入した
のは、刑法二一条の適用について右判例と相反する判断をしたものといわなければ
ならない。論旨は理由がある。
 なお、原判決中その余の部分に対する検察官の上告は、上告趣意としてなんらの
主張がなく、したがつてその理由がないことに帰するものである。
 被告人本人の上告趣意について
 所論は、違憲をいう点をも含め、実質はすべて事実誤認、単なる法令違反の主張
であつて、適法な上告理由にあたらない。
 弁護人清水建夫の上告趣意について
 所論は、違憲をいう点をも含め、実質はすべて事実誤認、単なる法令違反、量刑
不当の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 よつて、刑訴法四〇五条二号、四一〇条一項本文、四一三条但書により、原判決
中「当審における未決勾留日数中二四〇日を原判決の本刑に算入する一との部分を
破棄し、刑法二一条により、原審における未決勾留日数中一四日を本刑に算入する
こととし、原判決中その余の部分に対する各上告は、刑訴法四一四条、三九六条に
より棄却し、当審における訴訟費用は、同法一八一条一項但書により被告人に負担
させないこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官坂上吉男 公判出席
  昭和五七年五月七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    宮   崎   梧   一
            裁判官    大   橋       進

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