弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

平成14年3月29日宣告 
平成14年(わ)第57号危険運転致傷,業務上過失傷害被告事件
         判      決
         主      文
       被告人を懲役10月に処する。
       未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
         理      由
(罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 平成14年1月13日午後2時40分ころ,北九州市a区bc番d号付近道路にお
いて,運転開始前に飲んだ酒の影響により,的確なハンドル,ブレーキ操作が
困難な状態で,普通乗用自動車を時速約30ないし40キロメートルで走行さ
せ,もって,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で上記車両を走
行させたことにより,同日午後2時45分ころ,a区ef番g号付近道路において,
信号停止していたA運転の普通乗用自動車後部に自車前部を追突させ,よっ
て,同人に加療約1週間を要する腰背部打撲の傷害を負わせ
第2 上記日時ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,上記ef番g号付近道路
において,停車していた上記車両をh町方面に向けて発進後退させるにあた
り,運転開始前に飲んだ酒の酔いの影響のため運転操作等が困難な状態に
なっていたのであるから,運転を差し控えるべきであるのはもとより,あえて発
進後退する場合には,自車後方の安全を確認して発進後退すべき業務上の
注意義務があるのにこれを怠り,上記状態のまま自車後方の安全を確認する
ことなく発進後退させた過失により,折から後方から進行してきたB運転の普
通貨物自動車前部に自車後部を衝突させ,よって,同人に加療約9日間を要
する頚椎捻挫及び腰椎捻挫の傷害を,同人運転車両に同乗していたCに加療
約11日間を要する腰部捻挫及び頚部挫傷の傷害をそれぞれ負わせ
たものである。
(証拠の標目)(略)
(法令の適用)
1 罰条                   第1 刑法208条の2第1項前段
          第2 Bほか1名に対する業務上過失傷害
について,いずれも刑法211条1項前段
2 科刑上一罪の処理     第2について,同法54条1項前段,10条(1
個の行為が2個の罪名に触れる場合である
から,犯情の重いCに対する業務上過失傷
害罪の刑で処断)
3 刑種の選択              第2の罪について,懲役刑を選択
4 併合罪加重              同法45条前段,47条本文,10条(重い第1
の罪の刑に加重)
5 未決勾留日数の本刑算入     同法21条
6 訴訟費用の不負担         刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
 本件は,被告人が飲酒して正常な運転が困難な状態で普通乗用自動車を走行さ
せた結果,信号停止中の車両に追突し,同車の運転者を負傷させた危険運転致傷
と,その直後,安全確認をしないまま後退しようとして後続車に衝突し,同車の運転
者と同乗者に負傷させた業務上過失傷害の事案である。
 被告人は,日本酒を3合飲むと酔ってしまうことを認識していたが,本件当日午前
10時30分ころから午後2時40分ころにかけて,日本酒2合,ビール大瓶1本及び
350ccの缶ビール2本を次々に飲んだ結果,意識がもうろうとして,ふらついて正
常に歩くことができず,車両をまっすぐ走行させたり,的確にブレーキ操作をしたり
することもできない状態となっていたが,これまで飲酒運転をしても事故を起こしたり
捕まったりしたことがなかったので大丈夫と安易に考えて車両を運転して帰宅しよう
と考えた。
 運転開始から約5分後,前方の交差点に信号停止中の車両を発見したが,直ち
にブレーキを踏むことができずに追突し(本件第1の犯行),その事故により負傷者
が出たであろうことを認識しながら,飲酒運転の発覚を怖れて,逃走しようと後退し
た際に,丁度そこに走行してきた車両に衝突し(本件第2の犯行),その事故で更に
負傷者を出したにもかかわらず,更に逃走を図り,被害者から追跡されてようやく停
止した。
 本件事故当時の呼気1リットルあたりのアルコール濃度は,0・52ないし0・64ミリ
グラムという高濃度であったと推定されており,酒酔い運転の罪で現行犯逮捕され
た際には,両脇を抱えられても足元がふらつき,「何かお前ら,俺が何したんか。」
等と暴言を吐いたり被害者につかみかかったりする有様であった。
 これらの事情からすると,被告人はさしたる緊急の必要性もないにもかかわらず,
車両の運転を開始したものであり,動機において酌量の余地は全くなく,態様にお
いても,意識がもうろうとしてまっすぐに走行することさえもできない状態で運転を継
続しており,危険極まりないというべきである上に,事故を起こすや逃走を図ろうとし
ており,非常に悪質であるというほかはない。
 しかも,被告人には,業務上過失傷害の罰金前科のほか速度超過と人身事故2
件を含む7件の交通違反歴があること,これまで飲酒した上で車両を運転すること
が度々あったこと,過去の傷害,恐喝未遂等の前科は全て飲酒した上での犯行で
あると述べていること,日本酒3合を飲むと酔ってしまうことを知りながら,毎日のよ
うに飲酒をしていたこと等を併せ考慮すると,被告人は今後も飲酒した上で,悪質
かつ危険な運転に伴う事故を起こしたり,粗暴犯に及ぶ危険性が高いといわざるを
得ない。
 そうすると,被告人が本件について反省し,酒を断つと誓っていること,被害者の
傷害の程度が比較的軽微であること,前刑の執行猶予が取り消されて併せて刑の
執行を受けること等の諸事情を最大限考慮しても,再度の執行猶予を付するべき
特に酌量すべき情状は存在しないというほかはなく,一定期間実刑に処することに
より,飲酒の上での犯行の危険さ,悪質さ,自らの責任の重さを自覚させる必要が
あると思料し,主文のとおり量刑した。
(検察官山口浩,国選弁護人兒嶋かよ子各出席)
(求刑 懲役1年)
  平成14年3月29日
     福岡地方裁判所小倉支部第2刑事部
             裁判官   佐  藤  道  恵

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛