弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

主文
1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1控訴人
()原判決を取り消す。1
()控訴人が平成18年11月14日に行った東京都建築審査会裁決案の2
評議の議事録の開示請求に対して,処分行政庁が同月28日に行った非開
示処分(××都市建調第×××号)を取り消す。
2被控訴人
主文と同旨
第2事案の概要
1本件は,控訴人が東京都情報公開条例6条1項に基づき,東京都建築審査
会で口頭審査が行われて裁決書が出された審査請求事件に関する議事録のう
ち,口頭審査の議事録を除いたものについて開示請求を行ったところ,処分
行政庁が,裁決の評議は非公開とされていて,これが開示されると今後の審
査会の審議において委員の自由かつ率直な意見交換が妨げられ,意思決定の
中立性・正確性が不当に損なわれるおそれがある(同条例7条5号及び6号
該当)として,これを全部開示しない旨の決定をしたことから,控訴人がそ
の取消しを求め,原審が控訴人の請求を棄却したので,控訴人が控訴した事
案である。
2前提事実,法令の定め及び争点は,次のとおり当審での主張を付け加える
ほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2事案の概要」の1ないし3
に記載(原判決1頁22行目から3頁17行目まで)のとおりであるから,
これを引用する。
()控訴人の主張1
ア被控訴人は,建築審査会が準司法機関的性格を有すると主張するが,
そのように解すべき法的根拠はない。
イ建築審査会が正常に機能しその職責を遂行していれば,裁定の評議を
,。,公開したとしても無用な誤解や憶測を招くことはあり得ないむしろ
,,非公開にすることによって無用の誤解や憶測を増大させることになり
建築という社会的に見て重要な財産に関する全国民の様々な利益が不当
に侵害されることになる。
仮に裁定の評議を公開することによって無用な誤解や憶測を招くこと
があり得るとしても,これを非公開とすることによっても無用な誤解や
憶測を招くことがあり得るのであり,いずれにしてもその可能性がある
以上,行政は手抜きをせず,公開して,そこから生じる誤解を正すこと
をすべきである。
ウ控訴人が公開を求めた情報の中には「建築の敷地に対する道路の取,
り扱い」という公共性の高い情報が含まれているが,それに関する議論
が今後の建築問題に大いに資することが明白である。建築物が公共性を
有するものである以上,建築審査会の審議の内容は公共の利益に資する
可能性があるのであり,その内容は公開されるべきである。非公開とさ
れるのは,個人情報に属する部分と意見発言者の氏名に限定されるべき
,,でありそれ以外はすべて公開することが建築審査会の公明性を証明し
信頼性を保つもとになる。
エ建築審査会の同意に関しては,同意議案の内容が開示されているので
あり,同意議案の審査と同じ建築審査会の職責に属する裁決の評議が公
開されないのは不当である。
オ裁決の評議における発言者の特定に関しては,既に口頭審査が公開さ
れているのであり,その口頭審査を踏まえて裁決の評議が行われるので
あるから,裁決の評議での発言者が特定されても建築審査会の事務に支
障はきたさない。
カ被控訴人は,控訴人が本件で公開を求めている審査請求事件に関する
情報を,過去に開示しているから,本件公文書も公開すべきである。
()控訴人の主張に対する被控訴人の反論2
ア控訴人の主張イについて
無用な誤解や憶測は,建築審査会が正常に機能しているか否かにかか
わらず,評議の内容の受け手側の認識の違いにより,常に生じ得るもの
であり,建築審査会が正常に機能しその職責を遂行していくためにも,
検討段階の未成熟な情報等により無用な誤解や憶測を生じさせないこと
が必要である。
イ控訴人の主張エについて
審査請求に係る裁決の評議は,東京都建築審査会条例6条1項ただし
書により非公開にされているが,特定行政庁の一定の行為に対し同意を
与える同意議案に係る会議については,審査請求に係る裁決の評議を非
公開としなければならない事情を考慮する必要がないことから,同条例
6条1項により,会議自体も原則公開とされている。これらを同列に論
じる控訴人の主張には理由がない。
ウ控訴人の主張オについて
建築審査会の評議における各委員の意見が公にされることが予定され
ているとすれば,各委員に対する外部利害関係者からの何らかの働きか
けや,個人責任追及のおそれ等の心理的影響から,各委員の自由かつ率
直な意見交換が阻害され,その結果,審査会としての適正な判断が損な
われるおそれが生じることが容易に予想される。そして,これは,当該
審査請求事案にとどまらず,当該事案に直接関連するような何らかの事
案が後日発生した場合や同種の類似事案はもちろんのこと,その他の評
議においても,同様の心理萎縮効果により,支障が生じるおそれがある
のであり,控訴人の主張は失当である。
第3当裁判所の判断
1当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないから棄却すべきものと判断す
。,「」「」るその理由は原判決の事実及び理由欄の第3争点に対する判断
の1及び2に記載(原判決3頁19行目から8頁末行まで)のとおりである
から,これを引用する。
2控訴人は,当審において,前記のとおり主張するが,いずれも本件文書に
東京都情報公開条例7条5号及び6号に該当する情報は記録されていないこ
とを指摘したり又はその疑いを抱かせるものではなく(①建築審査会が準司
法機関的性格を有するか否かは,上記条例7条5号及び6号の該当性判断に
おいて結論を左右する事柄ではなく,②裁定の評議を公開することによって
無用な誤解や憶測を招くことがあり得るとしてもこれを公開してそこから生
じる誤解を正すべきであるというのは,明らかに上記条例の趣旨に反するも
のであり,③本件審査請求事件に公共性の高い事柄が含まれそれに関する議
論が今後の建築問題に大いに資することが明白であって建築審査会の審議の
内容が公共の利益に資する可能性があるというだけで,非公開事由があるの
にその内容が公開されるべきであるというのは,上記条例7条5号及び6号
が非公開事由を定める趣旨に反するものであり,④同意議案の内容が開示さ
れているからといって,それとは処分の性質も手続も異なる審査裁決の評議
を同意議案と同様に開示すべきであるとはいえず,⑤口頭審査が公開されて
いるからといって裁決の評議を公開しても差し支えないということはいえな
いし,⑥過去に本件審査請求事件に関する情報が開示されているからといっ
て,その裁決の評議を公開すべきであるともいえない,本件処分の適法。)
性について合理的な疑いを生じさせるに足りない。
3そして,控訴人の指摘する点及び新たに当審で提出された証拠をも踏まえ
て検討しても,本件文書が東京都情報公開条例7条5号及び6号に該当する
との判断を覆すべき理由を見出すことはできない。なお,控訴人が指摘する
最高裁第三小法廷平成19年4月17日判決(最高裁判所裁判集民事224
号97頁)における藤田裁判官の補足意見は,本件とはまったく異なる事案
に関するものであり,本件に適切ではない。
第4結論
よって,控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理
由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第8民事部
裁判長裁判官原田敏章
裁判官加藤謙一
裁判官小出邦夫は,都合により署名押印することができない。
裁判長裁判官原田敏章

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛