弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人野尻昌次の上告理由第一点について。
 上告人が昭和二六年一二月一日までに訴外Dらから本件ジユラルミン屑の引渡を
受けた旨の所論主張に対しては、原判決は、被上告人がその引渡を受けた同月一五
日以前に上告人がDらからその引渡を受けたことを認めるに足る証拠がないと判示
して、右主張を排斥しているのであるから、原判決に所論の違法はない。
 同第二点について。
 原判決の所論判示のほか上告人の抗弁その二に対する原判示を併せてみると、原
審は、被上告人が昭和二六年一二月一五日Dから譲受にかゝる本件ジユラルミン屑
の引渡を受け、同月一七日その払下代金の確定とともに右ジユラルミン屑がDらの
共有となり、かつ他の共有者の追認によりその所有権が被上告人に移転し、前記引
渡もその後は適法となつた旨判示したものと解すべきであるから、原判決に所論の
違法はない。
 同第四点について。
 原審は、本件ジユラルミン屑が国有の飛行機を海中から引き揚げ解体したもので、
判示のとおり運搬されて三箇所に保管され、その後上告人とDらとの間の和解調書
正本に基く強制執行により、その全部が肩書上告人方住居およびその前の道路上ま
で運搬され同所に保管されるに至つた事実を確定した上、その全部について、被上
告人の所有に属することを確認し被上告人に引渡すべき旨を命ずる判決をしたので
あるから、右判決主文と理由とを併せてみれば右所有権確認ならびに引渡の対象で
あるジユラルミン屑は十分に特定されているというべきであり、原判決に所論の違
法はない(所論判例は本件に適切でない。)。
 同第五点について。
 原審の確定した事実によれば、訴外Dの委託によりE通運株式会社(以下Eと略
称する)倉庫に保管中のジユラルミン屑につき、訴外Fの申請にかゝる仮処分命令
により、昭和二六年一二月四日、債務者Dの占有を解き執行吏がこれを占有し、執
行吏は占有を他に移転しないことを条件にこれを第三債務者Eに保管させ、その後
同月一五日、Dは右仮処分執行中のジユラルミン屑を被上告人に売渡し、Eに対す
る指図による占有移転の方法によつてその引渡をなしたというのであるが、原判決
の挙示する証拠によれば、前記仮処分命令の内容は、「第三債務者保管に係る債務
者所有のジユラルミン屑二噸に対する債務者の占有を解き債権者の委任する鹿児島
地裁川内支部執行吏にこれを保管せしめる。執行吏は他に占有を移転しないことを
条件として第三債務者に保管せしめることができる。」というものであり、その執
行として、執行吏が第三債務者たるEから目的物の占有を取得した上、命令の趣旨
にしたがいこれをEに保管させたことを認めるに足り、前記原審の判示は右の趣旨
を認定判示したものと解すべきである。
 しかし、右仮処分命令の執行がなされた場合でも、債務者Dの占有代理人である
第三債務者Eは、前記ジユラルミン屑に対する占有権を喪失するものではないと解
するのが相当である。したがつて、DがEに対し爾後被上告人のために右ジユラル
ミン屑を占有すべき旨を命じ被上告人がこれを承諾することにより、DのEに対す
る返還請求権は被上告人に移転し、被上告人はその代理占有を取得することになる
のであるから、被上告人は指図による占有移転の方法によりその引渡を受けたもの
というべく、右引渡はこれをもつて仮処分債権者Fに対抗できないのは格別、上告
人に対する関係においてその効力を妨げられる理由はない。されば原判決に所論の
違法はない。(所論の判例は本件に適切でない。)。
 よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    河   村   大   助
            裁判官    奥   野   健   一

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