弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人野尻昌次の上告理由第一点について。
 所論は、原判決別紙第二目録記載(五)の建物の所有者とその敷地の占有者に関
する当事者双方の主張に争いがあるのに、争いないものとして判断した点に違法が
あるという。すなわち、右建物はDの死亡により、その妻たる上告人A1が相続し
同人の単独所有にかかるものであって、上告人A2、同A3、同A4、同A5、同
A6、同A7の六名が右A1と共同相続しこれを共有しているとの被上告人主張は
誤りであり、上告人らは原審第二回口頭弁論期日において昭和三六年九月一八日付
準備書面に基づき陳述し右被上告人主張を争い、その立証として甲八号証の一、二、
六、甲一〇号証、同一五号証の一ないし七を提出しているのに、原判決はこの点に
ついて判断を遺脱し、審理不尽、理由不備若しくは釈明権不行使の違法をおかすと
いうのである。
 たしかに、原判決は所論の点につき争いない旨判示している。しかして、昭和三
六年九月一八日付の所論準備書面の「第一主張抗弁事実の補正」と題する項の二の
(14)には、借地人Dは昭和三三年六月死亡し妻たる上告人A1が相続した旨記
載があるけれども、同人の単独相続を主張した事迹は見当らず、また、所論甲八号
証ノ一、二、六、甲一〇号証甲一五号証ノ一ないし七の表示文言をもってしても、
同書証の提出により右単独相続の主張立証をしたものとは認められないから、所論
はその点においてすでに前提を欠くものであり、当事者双方の弁論の趣旨に徴し原
審が前掲所論の点について当事者間に争いないものとした点に違法はなく、所論は
採用できない。
 同第二点について。
 論旨は、上告人らの通謀虚偽表示は原審証人Eの証言に照らすと所論のとおり明
白に認定できるはずのところ、原判決は右通謀虚偽表示の点についての判断は第一
審判決の理由の該当部分を引用するのみで原審としての附加理由を判示していない
から、右認定判断に必要な原審証人Eの所論証言に対する証拠判断を遺脱している
ものというべく、この点原判決に審理不尽、理由不備の違法があると唱える。
 しかし、原判決の理由説示の全文(説示の一部において所論E証人の原審証言に
も言及している)を前後通読し、これを第一審判決の理由説示と併せて見れば、所
論E証人の原審における証言をもってしてもなお、上告人ら主張の通謀虚偽表示の
主張は排斥すべきである旨を判示しているととれるから、原判決には所論違法はな
いものというべきであり、所論参照の大審院判例は本件に適切でなく、論旨は採用
できない。
 同第三点について。
 所論指摘の重要な主張抗弁なるものは、ひっきょう、本件土地賃貸借が土地区画
整理施行までの間の一時使用のための借地権設定ではないことをいう趣旨に含まれ
るものであると解せられるところ、原判決はその判文上明らかなとおり、所論賃貸
借が一時使用のためのものかどうかの当事者の主張を争いあるものとして摘示し、
これに対する判断を証拠に基づいて示しているのであるから、原判決に所論判断遺
脱、理由不備等の違法は毫も存しないものというべく、所論は採用できない。
 同第四点について。
 所論は、原判決が本件土地全部(二五〇坪)について上告人A8が借地権を有す
ることを認定しながら、同人の関知しない間に地主Eとその余の上告人らとの間に
上告人A8の右借地を分割してそれぞれ直接賃貸借契約が成立したことを認定判示
していることをとらえて、原判決としては当然上告人A8の右土地に対する賃借権
はどうなったかを審理判示すべきであるにかかわらず、その点に関する判断遺脱、
審理不尽、理由不備が原判決にあるという。
 しかし、原審引用の第一審判決理由が所論EとA8間の賃貸借は当事者間で昭和
二五年一二月頃合意解除されたことを証拠に基づいて明確に認定判示し、そのうえ
で、右Eは直接本件各家屋を所有する各上告人らに対しその敷地として占有する土
地部分をA8に対する従前の賃貸借契約と同一条件でそれぞれ賃貸した旨を判示し
ているのであるから、原審に所論違法があるとする論旨は、原判文を正解しないこ
とによるもので、採るに足らない。
 同第五点について。
 所論は、その指摘の点について原判決に理由そごがあるというが、ひっきょう、
原判文を正解しないことによるものであって採るに足らない。すなわち、所論前段
掲記の所論上告人らが昭和二五年一二月以降本件宅地を訴外Eから直接賃借したと
の主張事実は、所論後段掲記の原審認定の経緯でA8を介せず直接その余の上告人
らがEからそれぞれ占有部分を賃借することになつたとの事実とはその内容を異に
するものであることが原判文上明瞭であって、原判決が前後矛盾そごする判断を示
している点は全然存しない。
 同第六点について。
 所論は、原判決に採証法則違反、虚無の証拠によって事実を認定した違法、その
他判断遺脱、理由不備の違法があるというが、すべてその実質は、原審の専権に属
する証拠の取捨判断、事実の認定について異論を唱えるにすぎず、原判決に所論違
法は見当らないから、所論は採用できない。
 同第七点について。
 所論中、借地法一一条の規定の趣旨をもって、原判決が本件賃貸借を一時使用の
ためのものと判断したことについて云々する点は、独自の見解であって採用できな
い。
 その他原判決の判断遺脱をいい、かつ、借地法九条の解釈を誤って証拠判断をし
たことを論ずる点は、ひっきょう原判決が適法な証拠調の結果本件土地の賃貸借を
一時使用のためのものと認定判断したことについて異見を述べ原審の専権事項を云
為するに帰するものであり、上告理由として採用できない。
 よって、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    五 鬼 上   堅   磐
            裁判官    石   坂   修   一
            裁判官    横   田   正   俊
            裁判官    柏   原   語   六
            裁判官    田   中   二   郎

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