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裁判例


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主文
1処分行政庁が,原告aに対し平成21年6月30日付けでした行政情報一部
公開決定(21環業第40号。ただし,平成23年4月14日付け(23重環
業第6号)でした異議申立てに対する決定及び平成23年6月6日付け(23
重環業第26号)でした行政情報一部公開決定により変更された部分を含む。)
のうち,別紙「開示請求文書等目録(原告a関係)」の「第2開示請求部分」
1ないし5及び「第1開示請求文書」6のうちの金額欄の各金額が記載され
た部分を除く部分を非公開とした部分を取り消す。
2処分行政庁が,原告組合に対し平成21年4月2日付けでした行政情報一部
公開決定(20環業第73号。ただし,平成23年4月14日付け(23重環
業第5号)でした異議申立てに対する決定及び平成23年6月6日付け(23
重環業第14号)でした行政情報一部公開決定により変更された部分を含む。)
のうち,別紙「開示請求文書等目録(原告組合関係)」の「第2開示請求部分」
1ないし5を非公開とした部分を取り消す。
3原告aのそのほかの請求を棄却する。
4訴訟費用は,原告aと被告との間に生じた費用は,12分の1を原告aの,
そのほかを被告の負担とし,原告組合と被告との間に生じた費用は,被告の負
担とする。
事実及び理由
第1原告の請求
1原告aの請求
処分行政庁が,原告aに対し平成21年6月30日付けでした行政情報一部
公開決定(21環業第40号。ただし,平成23年4月14日付け(23重環
業第6号)でした異議申立てに対する決定及び平成23年6月6日付け(23
重環業第26号)でした行政情報一部公開決定により変更された部分を含む。)
のうち,別紙「開示請求文書等目録(原告a関係)」の「第2開示請求部分」
1ないし6の部分を非公開とした部分を取り消す。
2原告組合の請求
主文第2項と同旨
第2当事者の主張等
1事案の概要
原告らが,それぞれ,処分行政庁に対し,高知市行政情報公開条例(以下「本
件条例」という。)に基づき,高知市と高知市再生資源処理協同組合(以下「協
同組合」という。)との間の業務委託契約(以下「本件委託契約」という。)に
関する行政情報の公開を請求したところ,処分行政庁は,それぞれ,対象文書
を別紙「開示請求文書等目録(原告a関係)」及び別紙「開示請求文書等目録(原
告組合関係)」の「第1開示請求文書」(以下,それぞれ「原告a文書」,「原
告組合文書」という。)と特定した上で,本件条例9条3号または6号の非公開
情報に当たることなどを理由として,それぞれ,別紙「開示請求文書等目録(原
告a関係)」及び別紙「開示請求文書等目録(原告組合関係)」の「第2開示
請求部分」(以下,それぞれ「原告a請求部分」,「原告組合請求部分」という。)
などの部分を公開せず,そのほかを公開する決定(以下「本件各決定」という。)
をした(なお,それぞれ,平成23年4月14日付けの異議申立てに対する決
定及び平成23年6月6日付けでした行政情報一部公開決定により変更されて
いる。)。
本件は,原告らが,それぞれ,本件各決定のうち原告a請求部分及び原告組
合請求部分は,本件条例9条所定の非公開情報に該当しないと主張して,被告
に対し,上記非公開部分の取消しを求めている事案である。
2前提となる事実(証拠等の記載のあるもの以外は争いがない。)
(1)本件条例の規定
本件条例9条本文,3号本文,6号,10条1項の規定は,別紙「高知市行
政情報公開条例」のとおりである(乙1)。
(2)当事者
ア原告組合は,高知県内の労働者等で組織された労働組合である(弁論の全
趣旨)。
イ処分行政庁は,本件条例の実施機関である。
(3)本件委託契約等
ア協同組合の事業環境(乙1)
協同組合は,昭和46年,中小企業等協同組合法(以下「協同組合法」と
いう。)に基づき設立された法人であり,古物商など10名の組合員で設立
し(昭和52年に現在の名称に変更),現在約30人の従業員がおり,被告
から,一般廃棄物の収集,運搬,処理の業務のうち,不燃雑ごみの収集運搬,
資源物の収集及び水銀含有廃棄物の中間処理の3業務を委託されている(本
件委託契約)。
協同組合の主要な収入は,被告との間の本件委託契約の委託料(以下「本
件委託料」という。)と長年の事業活動で開拓した資源物の売却代金等であ
る。
イ被告と協同組合の関係
協同組合は,昭和51年以降,補助金の交付を受けて高知市の資源物の収
集運搬を担い,昭和59年から現在まで,本件委託契約を特命随意契約の方
式で締結している(甲4の1,乙1)。
被告は,協同組合が,30年以上の業務遂行経験を有すること,本件委託
契約を受けるに足りる設備,機材等を保有すると判断していることから,今
後も協同組合との間で,本件委託契約関係を継続する方針である(甲4の2,
乙1,甲A4・7ページ)。
ウ本件委託料の算出過程
高知市では,契約に先立ち,予定価格算定調書を作成し,その調書に契約
の物件名,予定価格等を記載している(甲B4・3ページ)。
高知市は,協同組合に,収集経費の見積額並びにその内訳のうち人件費(給
料・諸手当・賞与),厚生費(共済費,退職積立金,支給品),物件費(修繕
費,燃料費,消耗品費,保険料,車両諸税),管理費(事務管理費,雑費)
の積算単価及び各費用の合計額などが記載された見積書を作成,提出させる
(甲B4・5,6ページ)。
高知市は,上記見積書などを基に,収集経費の計算をした計算書を作成し,
その計算書と見積書を参考に,本件委託契約の予定価格算定調書を作成する
(甲B4・5,6ページ)。
高知市は,本件委託料を,予定価格算定調書や見積書等の情報を基に決定
する(甲B4・7ページ)。
エ本件委託料の算出根拠
高知市は,本件委託料を,資源物等を収集運搬するための必要経費から資
源物の売却収入の見込額を一定程度減額した金額としている(乙1)。
本件委託契約は,資源物の売却収入が当初の見込みよりも多額であった場
合,協同組合からの委託料の減額申し入れを受けて,年度末に委託料の変更
契約を締結することになっている。また,年度末に委託料が不足していた場
合,委託料を増額する変更契約を締結したこともある(甲5の1,乙1)。
オ高知市における予定価格の公表に関する方針
高知市は,平成13年の「入札及び契約に関する情報の公表等及び入札契
約制度の改正について」の通知に基づき,公共工事の予定価格の事前公表を
行っているが,公共工事以外の契約の予定価格を公表していない(甲B4,
乙1)。
もっとも,契約書は公開しているため,本件委託契約の各業務(資源物収
集,不燃雑ごみ収集運搬,水銀含有廃棄物中間処理)の委託料と変更契約に
基づき返還された額は公開されている(甲3の1~3,甲5の1)。
(4)本件文書の内容
ア原告a関係(甲A2(枝番を含む),A3(枝番を含む),A4)
原告a文書1ないし5は,実施機関が予算編成時に作成したものであり,
本件委託契約の契約金額を決定する基準となる予算額やその積算単価が計
算式により記載されている。
具体的には,平成21年度の本件委託契約のうち,同文書5は資源物収集
業務に関する,同文書2は不燃雑ごみ収集運搬業務に関する,同文書4は水
銀含有ごみの中間処理業務に関する,それぞれ予算見積額,予算決定額及び
予算見積積算内訳の各金額などが記載されている。
同文書1は,平成21年度の本件委託契約のうち資源物収集業務に関する
予算説明資料であり,同年度当初予算案の委託料,同契約の経費の見積りの
各金額及び経費に関する高知市と協同組合間の負担割合や各負担金額など
が記載されている。
同文書3は,平成21年度の本件委託契約のうち不燃雑ごみ収集運搬業務
に関する収集運搬経費(人件費,一般管理費,燃料費)の積算金額とその詳
細な積算内訳とそれを基にした委託料の見積金額等が記載されている。
同文書6は,協同組合が作成した貸借対照表及び損益計算書であり,協同
組合が企業会計基準に沿って組合の資産,負債や収支の状況などが記載され
ている。
イ原告組合関係(甲B2(枝番を含む),B3(枝番を含む),B4)
原告組合文書1ないし4は,実施機関が予算編成時に作成したものであり,
本件委託契約の契約金額を決定する基準となる予定価格やその積算単価が
計算式により記載された文書である。
具体的には,平成20年度の本件委託契約のうち,同文書1は資源物収集
業務に関する,同文書2は不燃雑ごみ収集運搬業務に関する,それぞれ収集
経費の算定やその収集経費から算出した予定価格が記載されている。
同文書3は,平成20年度の本件委託契約のうち不燃雑ごみ収集運搬業務
に関する収集運搬経費(人件費,一般管理費,燃料費)の積算金額とその詳
細な積算内訳とそれを基にした委託料の見積金額等が記載されている。
同文書4は,平成20年度の本件委託契約のうち水銀含有廃棄物中間処理
業務に関する処理経費(人件費,諸経費等)の積算内訳と人件費の算定根拠
等が記載されている。
同文書5は,協同組合が作成したものであり,平成20年度の本件委託契
約のうち資源物収集業務に関する収集経費(人件費,厚生費,物件費,管理
費)の詳細な積算内訳が記載されている。
(5)本件訴訟に至る経緯(原告a関係)
ア原告aは,平成21年6月16日,処分行政庁に対し,本件条例に基づき,
高知市の協同組合に対する平成21年度の本件委託料に関する予算調書等
の公開を請求した(甲A1)。
イ処分行政庁は,同月30日,上記公開請求にかかる文書を原告a文書1な
いし6などと特定した上で,原告a請求部分1ないし5(以下「本件非公開
部分①」という。)が市の契約事務の公正かつ適正な遂行に支障を生じる(本
件条例9条6号),また,原告a請求部分6(以下「本件非公開部分②」と
いう。)が協同組合の競争上及び事業運営上の地位等正当な利益を侵害する
(同条3号)おそれがあるなどという理由で,これらの部分等を非公開とし,
そのほかの部分を公開する旨の行政情報一部公開決定をした(21環業第4
0号。甲A2の1)。
ウ原告aは,同年9月3日,処分行政庁に対し,同決定に対する異議申立て
をし,処分行政庁は,平成23年4月14日,公開請求の対象外として非公
開とした部分について,公開を求める場合には新たな公開請求に基づき認め
る旨の決定をし(23重環業第6号),同年6月6日,同決定に基づき,同
部分を公開する旨の行政情報一部公開決定をした(23重環業第26号。甲
A3の1,乙2)。
原告aは,同年10月11日,本件訴えを提起した。
(6)本件訴訟に至る経緯(原告組合関係)
ア原告組合は,平成21年3月19日,処分行政庁に対し,本件条例に基づ
き,高知市の協同組合に対する平成20年度の本件委託料に関する見積積算
書等の公開を請求した(甲B1)。
イ処分行政庁は,同年4月2日,上記公開請求にかかる文書を原告組合文書
1ないし5などと特定した上で,原告組合請求部分1ないし4(以下「本件
非公開部分③」という。)が市の契約事務の公正かつ適正な遂行に支障を生
じる(本件条例9条6号),また,原告組合請求部分5(以下「本件非公開
部分④」という。)が協同組合の競争上及び事業運営上の地位等正当な利益
を侵害する(同条3号)おそれがあるという理由で,これらの部分等を非公
開とし,そのほかを公開する旨の行政情報一部公開決定をした(20環業第
73号。甲B2の1)。
ウ原告組合は,同年6月8日,処分行政庁に対し,同決定に対する異議申立
てをし,処分行政庁は,平成23年4月14日,原告組合文書5の合計金額
を開示するなどの決定をし(23重環業第5号),高知市は,同年6月6日,
同決定に基づき,行政情報一部公開決定をした(23重環業第14号。甲B
3の1,乙3)。
原告組合は,同年10月11日,本件訴えを提起した。
3本件の争点
本件非公開部分①~④がそれぞれ本件条例9条所定の非公開情報に該当する
か否か。
4争点についての当事者の主張
(1)本件非公開部分①,③について
【被告の主張】
ア本件委託契約の予定価格(地方公共団体が契約の締結又は入札に際し,そ
の契約金額又は落札金額を決定する基準として発注者である地方公共団体
があらかじめ設定する金額)を公開することは,本件委託契約が年度により
予定価格の大幅な変動が生じにくい役務であること,高知市が今後も協同組
合に対して本件委託契約を継続的に委託する予定であること,競争入札に適
しない随意契約を行っている案件であることなどを踏まえると,将来の同種
契約の予定価格を推測させることにより,業者の見積努力を阻害し,予定価
格の近辺に契約額が高止まる可能性が十分に想定される。
予定価格は,予算見積額等を参考に決定されるから,本件非公開部分①,
③を公開すれば,将来における本件委託契約の予定価格が推測される。
イしたがって,本件非公開部分①は,これを公開した場合に予定価格を公開
した場合と同様,将来における同様の契約の予定価格が推測され,市の契約
事務の公正かつ適正な遂行に支障を生じるおそれがあるから,本件条例9条
6号に該当する。
ウまた,本件非公開部分③は,予定価格そのもの,及び,それを公開した場
合に予定価格が推測されるもので,市の契約事務の公正かつ適正な遂行に支
障を生じるおそれがあるから,本件条例9条6号に該当する。
【原告aの主張】
ア本件条例9条6号に該当するためには,公開することによる事務への支障
が,具体的かつ客観的に認められることが必要であると解されるが,被告は,
その抽象的な支障を主張するにとどまる。
イ被告と協同組合は,本件委託契約を特命随意契約の方式で20年以上続け
ていること,今後も契約を継続する方針であることなどに照らすと,協同組
合において,長期の契約実績から,今後の予定価格を想定することは容易で
ある。また,今後経費の大幅な増額などは予想されないから,公開すること
により協同組合の見積努力が阻害されるなどのおそれもない。
ウしたがって,本件非公開部分①は,本件条例9条6号には該当しない。
【原告組合の主張】
ア上記【原告aの主張】ア及びイと同旨。
イしたがって,本件非公開部分③は,本件条例9条6号には該当しない。
(2)本件非公開部分②について
【被告の主張】
ア貸借対照表及び損益計算書は,協同組合の事業活動上,内部限りで管理し,
公開すべき相手方を限定する利益を有する情報が記載されたものであるか
ら,これらが公開されると,協同組合の財産状況及び経営成績が明確になる
ことで,事業活動を行う協同組合の利益が害される。これは,協同組合法4
0条12項1号が,貸借対照表や損益計算書を含む決算関係書類の閲覧等を
請求できる相手方を組合員等に限定していることにも現れている。
具体的には,協同組合は,協同組合法に基づき設立された法人であり,被
告からの本件委託料だけでなく,独自の売却収益で協同事業を継続している
民間法人であるところ,資源物の収集では他の資源物回収業者と,資源物の
売却では売却先との価格交渉で利害が対立する関係にある。決算書類である
貸借対照表や損益計算書は,協同組合の財政状態や経営成績が具体的かつ詳
細に表示されたものであるから,公開されると,競争相手や取引先に内部情
報を知られることにより,営業上の不利益を被る。
イしたがって,本件非公開部分②は,公開することにより協同組合の正当な
利益を害するものと認めるに足りる合理的な理由があるから,本件条例9条
3号本文に該当する。
【原告aの主張】
ア本件条例9条3号は,法人等の正当な利益が侵害されると認められる具体
的かつ客観的な理由が必要であると解されるが,被告はその抽象的なおそれ
を主張するにとどまる。
イ協同組合は,高知市の所有する土地建物を無償で事務所などに使用してい
ること,事業に使用する器具・機械は高知市から無償譲渡されたものである
こと,経営資金の一部を毎年高知市から無利子で貸与されていることなど,
実質的には高知市の外郭団体としての性格を有する公的な色彩の強い団体
であるから,同号の予定する通常の「法人」と同列に扱うことは適切ではな
い。
また,高知市の委託業務に関するもので,究極的には住民の税金に関わる
ものであることも考え合わせると,公開の対象を広く解するべきである。
そして,以上のように,事業の必要経費等が高知市によってまかなわれて
おり,20年以上特命随意契約をするなど競争業者も存在しないのであるか
ら,本件非公開部分②を非公開することにより,保護されるべき協同組合の
独自の利益はない。
ウしたがって,本件非公開部分②は,本件条例9条3号に該当しない。
仮に本件非公開部分②に同号に該当する部分があるとしても,被告に対す
る別の情報公開請求において,平成22年度の協同組合の損益計算書及び貸
借対照表の金額欄の各金額が記載された部分を除いて公開されているから,
同部分以外は,同号に該当せず,本件条例10条1項に基づき一部公開すべ
きである。
(3)本件非公開部分④について
【被告の主張】
ア協同組合は,協同組合法に基づき設立された法人であり,被告からの本件
委託料だけでなく,独自の売却収益で協同事業を継続している民間法人であ
る。
協同組合は,資源物の収集では他の資源物回収業者と,資源物の売却では
売却先との価格交渉で利害が対立する関係にある。協同組合作成の見積計算
書は,協同組合の経営に必要な利益を含め,協同組合の競争力や営業上の方
針,ノウハウが反映された内容(単価等)が表示されたものであるから,公
開されると,競争相手や取引先に内部情報を知られることにより,営業上の
不利益を被る。
具体的には,本件非公開部分④は,人件費,厚生費,物件費,管理費の金
額及び詳細な積算内訳に関する情報である。これらの情報は,基本的には内
部限りで管理され,公開すべき相手方を限定する利益を有するものであり,
これらが公開されると,協同組合の原価情報がかなり明確になり,事業活動
を行う協同組合の正当な利益が害される。
イしたがって,本件非公開部分④は,公開することにより協同組合の正当な
利益を害するものと認めるに足りる合理的な理由があるから,本件条例9条
3号本文に該当する。
【原告組合の主張】
ア上記(2)の【原告aの主張】ア及びイと同旨。
イしたがって,本件非公開部分④は,本件条例9条3号に該当しない。
第3当裁判所の判断
1本件非公開部分①,③について
(1)前提となる事実(3)イのとおり,被告は,今後も協同組合との間で本件委託契
約を継続する方針であるから,本件委託契約の予定価格が公開されることによ
る被告の契約事務の支障の有無・程度等は,基本的に協同組合との間の契約事
務について検討すれば足りるというべきである。
前提となる事実(3)エのとおり,高知市は,本件委託料を,資源物等を収集運
搬するための必要経費から資源物の売却収入の見込額を一定程度減額した金額
としているため,必要経費に大きな変更がない限り,毎年の契約時の委託料に
大きな変動は生じにくい。そして,前提となる事実(3)イ,ウのとおり,協同組
合は,昭和59年から現在まで,本件委託契約を特命随意契約の方式で締結し
ており,当然毎年の委託料を知っていること,高知市は,協同組合に,収集経
費の見積額及びその内訳のうち人件費(給料・諸手当・賞与),厚生費(共済費,
退職積立金,支給品),物件費(修繕費,燃料費,消耗品費,保険料,車両諸税)
及び管理費(事務管理費,雑費)等の積算単価及び各費用の合計額などが記載
された見積書を作成,提出させ,その見積書も参考に本件委託契約の予定価格
を算定していることなども踏まえると,協同組合は,前年から委託料が変更さ
れた理由や自己が提出した見積書と契約金額の違いなどを分析することによっ
て,毎年の予定価格を推測することが十分可能な立場にあると考えられる。
以上のように,毎年の予定価格を推測することが十分可能な立場にある協同
組合との間では,被告の契約事務への支障は,公開することにより新たに生じ
るものとはいえないから,本件非公開部分①,③が公開されることにより,被
告の今後の同種の契約事務について,「著しい支障」が生じるとは認められない。
なお,高知県に対する情報公開請求においては,毎年の委託料算定調書など
本件における予定価格に相当するものも公開されている(甲18の1~6)。こ
のことも,他の公共団体に関する事情ではあるものの,本件において著しい支
障が生じるとは認められないことの一事情といえる。
(2)したがって,本件非公開部分①,③が本件条例9条6号に該当すると認める
ことはできないから,本件各決定のうち,同部分を非公開とした部分は違法で
ある。
2本件非公開部分②について
(1)本件非公開部分②は,貸借対照表や損益計算書であるところ,これらの書類
は,財産状況及び経営成績を明らかにするもので,これを知られた場合,競争
相手との関係等に影響を及ぼすものであるから,一般的に公表することは予定
されていない。協同組合法40条12項1号が閲覧の請求等を認める対象を組
合員及び組合の債権者に限定しているのは,この趣旨の現れといえる。
認定事実(3)エのとおり,本件委託契約は,資源物の売却収入が当初の見込
みよりも多額であった場合,協同組合からの委託料の減額申し入れを受けて,
年度末に委託料の変更契約を締結することになっているのであり,協同組合は,
営利のみを追求している法人とはいえない。しかし,協同組合は,収集した資
源物の売却収入も経営の大きな柱としており,現在では一定の収益が見込まれ
ているものの,必ずしも安定した売却市場が確立しているとまでは認められな
い(乙1)から,協同組合の財務状況等を把握されることによって,売却先と
の価格交渉で不利な立場になり,売却価格が低下することなどの影響を及ぼす
ことは十分に考えられる。
協同組合の事業活動に以上のような影響を及ぼすことは,協同組合の競争上
又は事業運営上の地位その他の正当な利益を害するといえる。
(2)この点,原告aは,協同組合は,高知市から土地や建物の無償使用許可や塵
芥収集車等の無償譲渡を受けており,実質的には高知市の外郭団体としての性
格を有する公的な色彩の強い団体であるから,本件条例9条3号の予定する通
常の「法人」と同列に扱うことは適切ではないと主張する。
しかし,被告は,その区域内における一般廃棄物を収集し,これを運搬し,
及び処分しなければならないこと(廃棄物の処理及び清掃に関する法律6条の
2第1項),一般廃棄物の処理に関する事業の実施に当たって,施設の整備及
び作業方法の改善を図るなどその能率的な運営に努める責任があること(同法
律4条1項)に照らすと,廃棄物処理行政を担う被告が,その委託先である協
同組合に対し,一定の便宜供与を行っているからといって,本件条例9条3号
の「法人」に該当しないと解釈すべき理由はない。
また,被告の委託業務の契約相手であるという事情だけで,公開の対象を広
く解することが必ずしも適切であるとはいえない。
(3)もっとも,処分行政庁は,平成24年2月6日付けの行政情報一部公開決定
において,平成23年度の協同組合の貸借対照表及び損益計算書の金額欄の各
金額が記載された部分を除いて公開している(甲20の1,20の5の1,2
0の5の2)から,金額欄の各金額を除く部分については,これを公開したと
しても,協同組合の正当な利益を害するとはいえない。
そして,金額欄については,他の部分と容易に区別して除くことができ,か
つ,区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることはないと認
められる。
(4)したがって,本件非公開部分②のうち金額欄の各金額が記載された部分は本
件条例9条3号に該当すると認められるが,その部分を除いて公開しなかった
ことは,本件条例10条に違反するものであり違法というべきである。
3本件非公開部分④について
(1)上記1のとおり,本件委託契約に係る委託料の予定価格や被告の収集経費の
積算等に関する情報は公開されるから,予定価格を算定する参考にするために
協同組合が作成した本件非公開部分④の情報は容易に推測できる。また,売却
先からしても,本件委託料は公開されているから,その原価などの情報を推測
することは可能である。
以上の点を踏まえると,本件委託契約に関する収集経費の見積りに,一定程
度協同組合の経営に関するノウハウ等が記載されているとしても,協同組合の
行う事務のうち収集に関する情報が公開されるだけで,それによって売却先と
の価格交渉で不利な立場になり,売却価格が低下するなどの影響を及ぼすこと
は考えられず,協同組合が被る不利益の程度は小さいといえる。
以上によれば,本件非公開部分④を公開しても,協同組合の正当な利益を害
すると認めるに足りる合理的な理由はない。
(2)したがって,本件非公開部分④が本件条例9条3号に該当すると認めること
はできないから,本件各決定のうち,同部分を非公開とした部分は違法である。
第4本件の結論
以上のとおりであるから,本件訴えは,主文の限度で理由があるから一部認
容し,そのほかの請求は理由がなく,棄却すべきである。したがって,主文の
とおり判決する。
高知地方裁判所民事部
裁判長裁判官松田典浩
裁判官向井宣人
裁判官髙橋憲太
別紙
開示請求文書等目録(原告a関係)
第1開示請求文書
1平成21年度経常予算説明資料(甲A2の3)
2平成21年度経常経費予算見積書(B)(雑ごみ収集委託費)(甲A2の5)
3不燃ごみ収集運搬委託料積算書(甲A2の6)
4平成21年度経常経費予算見積書(B)(水銀含有ごみ委託費)(甲A3の2)
5平成21年度経常経費予算見積書(B)(資源ごみ収集委託費)(甲A3の3)
6高知市再生資源処理協同組合作成の平成18年度及び平成19年度の貸借対
照表及び損益計算書
第2開示請求部分
1平成21年度経常予算説明資料のうち,別紙A1の各黒塗り部分
2平成21年度経常経費予算見積書(B)(雑ごみ収集委託費)のうち,別紙A
2の各黒塗り部分
3不燃ごみ収集運搬委託料積算書のうち,別紙A3の各黒塗り部分
4平成21年度経常経費予算見積書(B)(水銀含有ごみ委託費)のうち,別紙
A4の第13節見積積算内訳欄の上から2行目及び4行目の各黒塗り部分
5平成21年度経常経費予算見積書(B)(資源ごみ収集委託費)のうち,別紙
A5の第13節の各黒塗り部分
6高知市再生資源処理協同組合作成の平成18年度及び平成19年度の貸借対
照表及び損益計算書の全部
別紙
開示請求文書等目録(原告組合関係)
第1開示請求文書
1平成20年度資源物収集業務委託料予定価格算定調書(甲B2の2)
2平成20年度不燃雑ごみ収集運搬業務委託料予定価格算定調書(甲B2の4)
3不燃性雑ごみ収集運搬委託料積算書(甲B2の5)
4平成20年度水銀含有廃棄物中間処理経費計算書(甲B2の7)
5平成20年度資源物収集経費見積計算書(月/1台当り)(甲B3の3)
第2開示請求部分
1平成20年度資源物収集業務委託料予定価格算定調書のうち,別紙B1の各
黒塗り部分
2平成20年度不燃雑ごみ収集運搬業務委託料予定価格算定調書のうち,別紙
B2の黒塗り部分
3不燃性雑ごみ収集運搬委託料積算書のうち,別紙B3の各黒塗り部分
4平成20年度水銀含有廃棄物中間処理経費計算書のうち,別紙B4の各黒塗
り部分
5平成20年度資源物収集経費見積計算書(月/1台当り)のうち,別紙B5
の金額欄及び内訳欄の各黒塗り部分
別紙
高知市行政情報公開条例
9条実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号
に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を
除き,公開請求者に対し当該行政情報を公開しなければならない。
3号法人その他の団体(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政
法人を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該
事業に関する情報であって,公開することにより,当該法人等又は当該事業を
営む個人の権利,競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認
めるに足りる合理的な理由があるもの。(ただし書き以下は記載省略)
6号市の機関又は国,独立行政法人等,他の地方公共団体若しくは地方独立行
政法人が行う契約,試験,人事,交渉及び争訟等並びに取締り,調査,検査及
び監査等の事務又は事業(以下この号において「事務等」という。)に関する情
報であって,公開することにより,当該若しくは将来同種の事務等の実施の目
的が達成できなくなると認めるに足りる合理的な理由があるもの又はこれらの
事務等の公正若しくは円滑な遂行に著しい支障が生ずると認めるに足りる合理
的な理由があるもの。
10条実施機関は,公開請求に係る行政情報の一部に非公開情報が記録されてい
る場合において,非公開情報に係る部分を容易に区別して除くことができ,かつ,
区分して除くことにより当該公開請求の趣旨が損なわれることがないと認められ
るときは,当該非公開情報に係る部分以外の部分を公開しなければならない。
(別紙A1~B5)
添付省略

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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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