弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主       文
本件各控訴を棄却する。
          理       由
1 本件各控訴の趣意等
 被告人Aの本件控訴の趣意は弁護人三浦和人作成の控訴趣意書及び控訴趣
意補充書に,被告人Bの本件控訴の趣意は弁護人近藤之彦作成の控訴趣意書
に,これらに対する答弁は検察官関本倫敬作成の答弁書(答弁書訂正申立書を
含む。)にそれぞれ記載のとおりであるから,これらを引用する。被告人両名の
各論旨は,いずれも各被告人を死刑に処した原判決の量刑が重過ぎて不当で
ある,というのである。
 原判決は,被告人両名の刑事責任はまことに重大であって,極刑を科すことは
やむを得ないとして,被告人両名を死刑に処したが,本件は共犯事件であるか
ら,原判決が指摘する,犯行の罪質,動機,態様,ことに殺害の手段方法の執拗
性・残虐性,結果の重大性,ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社
会的影響,被告人両名の年齢,前科,犯行後の情状等に加えて,被告人両名の
共犯者ら間における地位や犯行において果たしたそれぞれの役割等をも併せ考
慮して,その刑事責任を決すべきは当然である。そして,原審記録及び証拠物を
調査し,当審における事実取調べの結果も併せてこれらの点を検討すると,被
告人両名をいずれも死刑に処した原判決の量刑は正当として是認せざるを得な
い。以下,これを補足して説明する(以下,共犯者C,同D,同E,同Fの4名を「C
ら4名」と,また,被告人両名とCら4名を合わせて,「被告人ら6名」ということが
ある。)。
2 本件犯行の概要及び罪質
 本件は,被告人両名が,Cら4名と共謀の上,(1)自動車で帰宅するGらを待ち
伏せ,Gの頭部等を角材で殴打する暴行を加えて,その自動車等(時価合計約6
万3000円相当)を強取し,その際,Gに全治約2週間の傷害を負わせた(原判
示第1),(2)①Gと一緒に帰宅した妻HとHの妹Iを別の自動車内に押し込んで愛
知県瀬戸市内の山林に連行し,その間,両名を不法に監禁した(同第2の1),②
同所において,Iから所持金約2万4000円及び商品券2枚(時価合計2000円
相当)を強取し,両名をドラム缶の中にそれぞれ押し込み,ガソリン混合油を振り
かけた上,点火して両名を焼き殺した(同第2の2),③同所付近において,チェ
ーンソー等で両名の焼死体を切断するなどした上投棄し,死体を損壊・遺棄した
(同第2の3,4),というものであって,なにものにも代え難い2人の女性の崇高
な生命を奪った強盗殺人事件を含む重大な事案である。 
3 犯行に至る経緯及び犯行の動機
 被告人Bは,父親経営の貸金業会社からG振出名義の約束手形(額面金額2
40万円)の取立て依頼を受け,被告人ら6名が専ら取り込み詐欺を行う目的で
設立した株式会社Jの仕事としてこれを行うことにし,Gと交渉するなどしたが,支
払いを拒否され,取り立てることができず,本件犯行の2か月ほど前である平成
12年2月3日には,手形金回収の手段として,Gが乗る自動車を強取し,Gやそ
の同行者をら致監禁することを企てたものの失敗した。その後,被告人Bが,父
親から手形の取立てが進んでいないことを厳しく叱責されたのをきっかけに,G
の不誠実な態度のため取立てができず,自分のメンツをつぶされたとして,Gに
報復するとともに犯行の発覚を防ぐため,Gやその同行者らを殺害し,さらに,自
動車等の金品を奪うべく,本件犯行に及んだというもので,まさに,短絡的で,理
不尽な犯行というほかなく,被告人両名がCら4名の共犯者とともにこのような犯
行を犯すに至った経緯や動機に酌量の余地は全くない。
4 犯行態様等
 本件犯行は,あらかじめ立てた計画に従い,準備を整えた上で,6名もの多数
の者によって遂行された集団的犯行である。すなわち,被告人ら6名は,襲撃に
使用する角材や被害者の死体を焼却するために用いるドラム缶及びガソリン混
合油,死体を切断するためのチェーンソー等を準備し,火力を高めるためドラム
缶に通気口を開けるなどした上,二手に分かれて,一方がG方車庫前付近で待
ち受け,もう一方が仕事先から帰宅するGらの自動車を追尾して,G方前で降車
したGらに襲いかかっている。そして,Gには逃げられたものの,その自動車に同
乗していた2人の女性を被告人らの自動車内に押し込んで監禁するとともに,G
の自動車を奪って,あらかじめ予定した集合場所に向かった。その途中でGから
奪った自動車に乗車していたE及びFが警察官の職務質問を受けて任意同行さ
れたため,合流できなくなるなど当初の計画に狂いが生じたが,なお,残った4名
で犯行を継続し,2人の女性を人気のない山中で殺害し,その死体を損壊・遺棄
するに至っている。このように,本件犯行は,強固な犯意に基づいて計画的かつ
集団的に遂行されたものであって,犯行態様は甚だ悪質である。
 しかも,2人の女性を殺害した手段・方法は,極めて冷酷かつ残虐である。すな
わち,被告人らは,Iの所持金等を奪ったばかりか,2人の女性をドラム缶の中に
それぞれ押し込み,頭からガソリン混合油を振りかけ,ふたに角材を噛ませるな
どして開かないように細工した上で点火したものであって,その殺害方法の残虐
さには,戦慄を禁じ得ない。また,被告人らは,女性2人が他に助けを求めること
もできないまま恐怖にすくみ,哀願し,悲鳴をあげるなかで,ほとんどためらうこと
なく殺害行為に及んでおり,その冷酷さ,無慈悲さは際立っている。
 さらには,被告人らは,2人の死体をそのままドラム缶の中で焼き続け,焼け残
った部分をチェーンソーで切断し,金槌で細かく砕くなどして,山林内にまき散ら
して投棄したもので,死体損壊・遺棄の態様にも鬼気迫るものがあり,非情という
ほかなく,そこには,女性らに対する一片の哀れみの情はおろか,死者らに対す
る尊厳の念の片りんすらも見出すことができない。
5 被害感情等
  被害女性2名の尊い命を奪った結果はまことに重大であるが,同女らは,Gの
車に同乗していただけであって,なんらの落ち度もないのに,突如として言語に
絶する恐怖や苦痛に見舞われた末に理不尽にも命まで奪われたもので,その無
念さはもとより,死に至るまでの間に2人の受けた精神的・肉体的苦痛が例えよ
うのないほど大きかったことは明白である。
  妻を奪われ,自身も強盗傷人の被害者となったGは,検察官に対し,被告人ら
の理不尽で非道な行為に対する激しい憤りを訴え,被告人らに対し極刑を望ん
でいたものである。そして,当審公判廷において,被害弁償など被告人両名の対
応の仕方如何によっては,その処罰感情が変化する可能性も全くないわけでは
ない旨を示唆するかのごとき姿勢をうかがわせるものの,現段階においても,依
然として,その処罰感情は非常に厳しい。
  また,母と伯母の命を同時に奪われたKは,原審公判廷において,母への深い
思いを切々と吐露するとともに,余りにも無惨な方法で母や伯母の命を奪った被
告人両名のみならず犯人全員を極刑にして欲しいと強く望む旨明言するなど,そ
の処罰感情にはG以上に厳しいものがある。
  そして,本件のような凶悪な犯行が社会に与えた衝撃は重大であり,その社会
的影響も軽視できない。
6 被告人両名の果たした役割及び共犯者らの間における地位等
 原判決は,被告人Bは,主犯の立場にあり,極めて重大な役割を果たしたとし
た上,被告人Aも,被告人Bと並んで最も強い立場にあり,その果たした役割も
被告人Bに準ずるほど重大であって,被告人Aの関与なくして本件犯行は遂行し
得なかったと判断している。
 被告人Bの弁護人は,原判決のこの判断を争わないが,被告人Aの弁護人
は,これを争い,「被告人Bは,父親から手形金を支払わないGを見せしめに殺
害するよう指示され,その指示に従って被告人AらにGの殺害を命じたものと考
えられるのであって,犯行の主導権は被告人Bにあり,被告人Aは,他の共犯者
らと同様,被告人Bの指示命令に従って行動したに過ぎず,単なる実行部隊の
一員として位置付けるべきであり,原判決には,量刑事情として重大な意味を持
つ,被告人Aの果たした役割や共犯者らの間における地位等についての認定に
重大な誤りがある。」旨主張する。
 しかしながら,原判決の前記判断は概ね正当であって,被告人Aの弁護人の所
論はとうてい採用できない。以下,これを補足的に説明する。
 (1) まず,所論は,被告人Bの父親がGの殺害を指示したかのごとくいうが,既に
述べたとおり,被告人Bは父親に本件手形金の回収が進んでいないことを厳
しく叱責されたに止まることが明らかであって,本件全証拠を子細に検討して
も,被告人Bが父親からGらの殺害を指示されたことをうかがわせるような事
情は一切見出すことができない。所論は,独自の推測の域を出ないものであ
って,その前提自体を欠くというほかはない。
 (2) さらに,本件犯行の主要な局面を中心に被告人両名の主な言動等を対比し
つつ検討すると,次のとおりである。
  ア 犯行準備段階についてみるに,被告人Bは,前記のとおり,父親に叱責され
たのをきっかけに本件犯行を実行しようと考え,被告人Aに犯行を持ちかけ
たところ,被告人Aが直ちに応じたので,自ら立てた計画に従ってドラム缶2
缶の入手を依頼するとともに,Dらに対し,犯行に使用するためのチェーンソ
ーやガソリン混合油などを準備するよう指示した。その上でCら4名に対し,
犯行に加わる意思の有無を確かめ,さらにはその意思を固めさせるべく,
「どうするのか。今日やれるのか。4人で相談して決めろ。」などと迫った。ま
た,被告人Bは,ドラム缶に通気口を開けたり,Gらを襲う際の共犯者らのそ
れぞれの役割や配置等を指示した。
 一方,被告人Aは,自らも犯行の実行者の1人として加わることを決意する
とともに,被告人Bから依頼されたドラム缶入手の手はずを整えた上,Cら4
名を呼び集めて本件犯行への参加を求めたところ,Cが拒否する態度を示
した。これに対し,被告人Aは,「(ドラム缶を)もう1缶用意しようか。」などと
言って,Cが犯行に加わらない場合には,GらとともにCを殺害する旨威嚇し
た。
  イ 犯行実行段階についてみるに,被告人両名は,女性らをら致して殺害現場
に向かう車中で女性らの殺害方法を相談し,当初,死体を焼却するつもりで
準備したドラム缶内に女性らを押し込んで焼き殺す方法を採ることとした。
殺害現場では,被告人Bが女性の1人が所持していた金品を奪った上,Dに
対し,「風呂に入ってもらって。」などと,女性の1人をドラム缶に入れるよう
指示し,他の1人を自ら抱きかかえてドラム缶に押し込み,被告人Aから手
渡されたガソリン混合油を女性らの頭から振りかけた。その際女性らは悲鳴
をあげたが,被告人Bは,それにかまわず,「恨むんだったらGを恨んで
な。」,「かわいそうなのはこっちの人や。関係あらへんのに。」などと言いな
がらドラム缶のふたを閉め,さらには,前記のとおり,角材を用いてふたが
開かないように細工した。
 一方,被告人Aは,被告人Bが点火するのを嫌がる素振りをみせるや,C
に対し,「お前がつけろ。」と命令して点火させた。
 ドラム缶が燃え上がり,女性らのうめき声が聞こえなくなり,女性らが絶命
したと判断した被告人Aは,「人を殺すのはこんなもんだ。」などと言い,被告
人Bも,「興奮してアドレナリンが一杯出てきた。精子が出てきたらどうしよ
う。」などと応じた。
  ウ 女性らを殺害した後も,被告人両名は,C及びDに,ドラム缶の火を消さず
燃やし続けるよう指示したり,Cに対し,固まりと化した死体をチェーンソーで
切断させたり,飛び散った骨片等を自ら付近に投げ捨てるなどした。
 のみならず,一連の犯行を終えた後には,被告人BがCに指示して犯行に
使用したチェーンソーを投棄させるなどした上,被告人両名は,犯行時間帯
には,両名がいずれも他の場所にいたとのアリバイ工作をすることにして,
Dに対し,口裏を合わせるよう指示したり,Cに対し,Cら4名で本件犯行を
行った旨供述するよう指示した上で警察に出頭させるなど,入念な罪証隠
滅行為を行った。
 (3) 以上に加え,更に記録を子細に検討すると,被告人両名がCら4名に指示命
令して本件犯行を遂行させた背景には,次のような事情があったことが認めら
れる。
  ア 被告人Aは,かねてから自己の強さを誇示しようとして,自分は元暴力団組
員であり,右足が不自由なのも暴力団同士の抗争の際に怪我をしたためで
ある,などと嘘を言っていた。一方,被告人Bも,父親が暴力団員であるなど
と周囲に吹聴したり,被告人Aに対抗しようと,裏の世界に精通しており,取
り込み詐欺の経験もある旨の嘘の話をしたことがあった。その被告人Bの嘘
が発端となって,被告人Aが中心となり,Cら4名を誘って,商品の取り込み
詐欺を行う目的で株式会社Jを設立した。その後,CとFが被告人Bに指示さ
れた株式会社J名義の当座預金口座の開設に失敗すると,被告人Aがそれ
を責めて,刃物を示しながら「指を詰めろ。」などとCらに迫り,さらには被告
人BがCら4名に指示して株式会社Jを保険金の受取人とする生命保険に
加入させたが,これらが一つの契機となって,被告人両名がCら4名を支配
し服従させる関係が形成されていった。
  イ 本件手形の取立てに失敗した平成11年12月ころには,Gの対応に立腹し
た被告人Bが,Cら4名の前で,「ああいうやつは,俺も取立てで殺してまっ
たことがあるけどなあ。相手を殺して,骨をチェーンソーで切って,ドラム缶
で燃やして,骨をすりつぶして,養鶏場の鶏のえさにした。」などと嘘を言っ
て虚勢を張った。その後も手形金回収は進展しなかったが,Gの件が話題
になるたびに,被告人Aが「あんなやつ,マジェスタとって,殺いてまった方
がいい。」などと,被告人Bも「G夫婦をさらう,チェーンソーで切る。」などと
繰り返していた。そして,平成12年2月3日には,被告人Bは,Cら4名に対
し,かねてから被告人両名が口にしていたように,Gらをら致監禁してGの自
動車等を奪うよう指示したが,その際には被告人Aも,「とにかく連れてくれ
ばいいじゃん。殴ってもいい。ドスで足でも刺せば簡単だがや。」などとあお
った。そこで,Cら4名は,翌4日深夜に被告人Bの指示を実行すべく,Gらを
待ち伏せたが眠り込んでしまい,Gらの襲撃に失敗したため,被告人両名
は,Cら4名を強く叱責した。
 (4) 以上の(2)及び(3)の諸点を総合して検討すると,被告人Bは,本件犯行を立
案計画し,被告人Aともども,Cら4名を強引に本件犯行に引き入れた上で,積
極的に犯行に及び,自ら重要な役割を行っているばかりか,Cら4名を支配し
つつ指示命令に従わせて本件犯行を遂行させ,さらには入念な罪証隠滅工作
まで指示するなど,終始一貫して主導的・中心的役割を果たしていることが明
らかである。
   一方,被告人Aも,被告人BからGらの殺害等を持ちかけられるや,直ちにこ
れに応じ,Cら4名を威嚇して強引に犯行に引き込んだばかりか,ドラム缶入
手の手配をしたり,あるいはCにドラム缶への点火を命じるなど,終始積極的
に本件犯行を推進するとともに,他の共犯者らにアリバイ工作を指示するなど
しているのであって,被告人Bともども,主導的・中心的立場にあり,本件犯行
において果たしたその役割は甚だ大きく,被告人Bに準ずるというべきである。
   また,本件犯行における被告人両名とCら4名の役割や地位等には,被告人
両名が互いに虚勢を張り合う中で作り上げられた株式会社Jにおける被告人
両名とCら4名との間の支配服従関係がそのまま反映しているとともに,本件
犯行においても,被告人両名は,対抗するかのように虚勢を張り合って犯行を
推進させていることを容易に見て取ることができる。
   このようにみると,本件犯行は,被告人Bはもとより,被告人Aの存在なくして
はあり得なかったというべきであり,また,被告人Aの果たした役割の大きさや
共犯者らの間における地位等は,Cら4名とは格段の差があることは明白であ
る。そして,被告人両名は,株式会社Jで互いに虚勢を張り合いつつCら4名を
支配し服従させて取り込み詐欺を継続する過程で,規範意識を著しく鈍麻さ
せ,倫理観はおろか,人間性までも喪失して歯止めを失ったまま暴走し,いか
にも短絡的に,本件のごとき凶悪非道で戦慄するほかない犯行を冷徹に重ね
るに至ったものといわざるを得ない。
 (5) 被告人Aの地位・役割がCら4名と同様であるとする所論は,とうてい採用で
きない。
7 被告人両名の刑事責任の重大性
 (1) 被告人B
 被告人Bは,本件犯行を立案し,自ら犯行の重要な部分を積極的に分担し
て実行しているだけでなく,被告人Aともども,被告人両名に服従していたCら
4名を犯行に引き込み,これらの共犯者に指示命令して犯行を遂行した上,入
念な罪証隠滅行為までも行わせるなど,終始一貫して本件犯行を主導してい
る。また,犯行現場におけるその言動も,既に述べたとおり,余りにも冷酷・非
情で,その無慈悲さは際立っている。被告人Bの刑事責任は,最も重いという
べきである。 
 ところで,被告人Bの弁護人は,「被告人Bが自ら警察に出頭し,犯行の詳
細を明らかにするとともに,献体に伴う臓器提供を申し出るなど深く反省し,極
刑を覚悟してその心情を吐露していること,遺族に被害弁償金を送っているこ
と,前科がなく,妻や幼い子がいること,被告人Bは未だ若く,更生の可能性が
あること,さらには,死刑廃止に向かっている世界的動向等を考慮すると,極
刑に処した原判決の量刑は不当である。」という。
 確かに,被告人Bは,犯行後一旦は逃走を図ったものの,知人の説得を受
けて自ら警察に出頭し,その後は一貫して犯行を認め,その詳細を明らかに
するとともに,自己の責任の重さを自覚し,自らの臓器を提供することによっ
て,被害者らやその遺族,あるいは社会に対して償いたいと述べ,さらには極
刑を覚悟し,その心情を吐露する等深く反省していることが認められる。また,
被告人Bの父親が,被害弁償金の一部として,合計200万円(原審段階及び
当審段階において,それぞれ各100万円)を支払ったことや,前科がなく,妻
や幼い子がいることも所論指摘のとおりである。
 しかし,これらの事情やその他所論の指摘するところをいかに考慮しても,被
告人Bの刑事責任は極めて重く,原判決が極刑に処したのもまことにやむを
得ないところである。
 (2) 被告人A
 被告人Aは,本件犯行の立案者ではないものの,被告人Bから本件犯行を
持ちかけられるや,直ちにこれに応じ,自ら積極的に犯行を推進したばかり
か,被告人Bともども,Cら4名を強引に犯行に引き込み,指示命令して犯行を
遂行させ,さらには罪証隠滅行為をさせるなど,その果たした役割は甚だ大き
く,被告人Bに準じ,被告人Aの存在なくしては,本件はあり得なかったといっ
ても過言ではない。また,犯行現場での言動がいかにも冷酷無慈悲であること
も,被告人Bと同様であり,結局のところ,その刑事責任の重大さは被告人B
とほとんど軽重がないというべきである。
 そうすると,被告人Aが一旦は逃走したものの,自ら出頭し,犯行を否認した
時期もあったが,その後犯行を認めて事件の全貌を明らかにしたり,教誨師の
指導のもとに被害女性らの冥福を祈っていること等反省の態度を示しているこ
とや,被害弁償金の一部として,合計120万円余り(原審段階において70万
円余り,当審段階において50万円)を支払ったこと,前科は古い罰金前科1犯
のみであること,妻や幼い子がいること等被告人Aのために酌むべき事情を十
分に考慮しても,その刑事責任は極めて重く,原判決が被告人Aを極刑に処し
たのも,まことにやむを得ないところである。
8 結論
 被告人両名の命もまた,なにものにも代え難いものであり,死刑がこれを剥奪
する究極の刑であることにかんがみつつ慎重な検討を重ね,熟慮したが,被告
人両名の極めて重大な刑事責任に相応する刑として極刑を科すことはやむを得
ないとした原判決の量刑は,当裁判所としても,正当として是認せざるを得ない。
 被告人両名の各論旨は,いずれも理由がない。
 よって,刑訴法396条により,本件各控訴をいずれも棄却することとし,当審にお
ける訴訟費用については,同法181条1項ただし書を適用して被告人両名に負担
させないこととし,主文のとおり判決する。
  平成15年3月12日
    名古屋高等裁判所刑事第2部
裁判長裁判官   川   原       誠
裁判官   村   田   健   二
裁判官   堀   内       満

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