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平成24年(わ)第189号,第237号,第288号窃盗被告事件
平成25年2月22日宣告高知地方裁判所
主文
被告人を懲役1年6月に処する。
未決勾留日数中150日をその刑に算入する。
本件公訴事実中,平成24年6月19日付け起訴状記載の公訴事実に係る
窃盗の点については,被告人は無罪。
理由
【罪となるべき事実】
被告人は,分離前の相被告人Sと共謀の上
第1平成24年1月31日ころ,高知県香美市a町bc丁目d番e号のf東側駐
車場付近にSと共に同人運転車両で赴き,被告人が,同駐車場に駐車中の自動
車内から,T所有の現金約8500円及び運転免許証等5点在中の財布1個
(時価約1000円相当)を窃取した
第2同年2月1日ころ,高知県南国市g町h丁目i番j号のk駐車場付近にSと
共に同人運転車両で赴き,Sが見張りをする中,被告人が,同駐車場に駐車中
の自動車内から,U所有の現金4533円及びキャッシュカード等2点在中の
財布1個(時価約4000円相当)を窃取した
ものである。
【証拠の標目】(省略)
【累犯前科】(省略)
【法令の適用】(省略)
【一部無罪の理由】
第1公訴事実の要旨及び被告人の弁解等
平成24年6月19日付け起訴状記載の公訴事実の要旨は,被告人が平成2
4年4月19日,高知市l町m丁目n番o号東側駐車場(以下「本件駐車場」
という。)において,同所に駐車中の自動車(以下「被害車両」という。)内
から,V(以下「被害者」という。)管理のデジタルカメラ1台(以下「本件
デジタルカメラ」という。)を窃取したというものである。
これに対し,被告人は,本件デジタルカメラは,平成24年4月19日の夜
に名前の言えない知人(以下「A」という。)から譲り受けたもので,自分は
盗んでいない旨述べ,弁護人も,被告人は犯人ではなく無罪である旨主張する。
第2当裁判所の判断(以下,月日のみの記載は平成24年の当該月日を指す。ま
た,甲・乙番号は記録中の検察官請求証拠等関係カード上の番号を,弁番号は
同弁護人請求証拠等関係カード上の番号をそれぞれ指す。)
1甲3,4,6,13,34,35,36,43及び被告人の公判供述によれ
ば,本件の前提となる事実として,次の事実が認められる。
(1)被害者は,4月19日午後零時45分ころ,勤務先の従業員専用駐車場
である本件駐車場に被害車両を駐車し,同日午後11時45分ころ本件駐車
場に戻ったところ,被害車両の助手席側ドアガラスが割られており,運転席
と助手席の間に置かれていた本件デジタルカメラがなくなっていた。
(2)被告人は,遅くとも同日午後9時57分ころには,本件デジタルカメラ
を所持するに至り,同時刻ころに,本件デジタルカメラを用いて自らの足下
を撮影した。被告人は,別件窃盗被疑事件について同年5月8日に逮捕され
たが,同日,被告人の使用車両(被告人の当時の交際相手が所有するもの)
から,本件デジタルカメラが発見された。
2犯行時刻(被害発生時刻)について
前記のとおり,被告人は被害発生当日の午後9時57分ころには本件デジタ
ルカメラを所持するに至っているところ,犯行時刻(被害発生時刻)は,被告
人以外の犯人が介在する余地の有無に大きく影響する。そこで,まず,客観的
な証拠から,犯行時刻を特定できないか,検討する。
(1)本件駐車場付近の防犯カメラの映像等からの推認について
ア検察官は,被告人が,4月19日午後9時44分ころ,前記被告人使用
車両で本件駐車場に行き犯行に及んだ旨主張し,その根拠として,(a)本
件現場付近の防犯カメラには,同時刻ころ,被告人使用車両と同車種,同
系色の自動車が本件駐車場に続く脇道(以下,単に「脇道」という。)に
入り,約7分後に脇道から出てくる様子が録画されていたこと,(b)本件
駐車場付近の住民の中には,当時,被告人使用車両と同車種,同系色の自
動車を使用している者がいなかったこと,(c)被告人が,捜査段階におい
て,その使用車両で脇道を通ったかもしれない旨供述していることを挙げ
る。
イしかしながら,当該防犯カメラには,検察官主張の日時に自動車が脇道
に入っていく様子や,その約7分後に脇道から自動車が出てくる様子が録
画されているものの(甲14),その映像はかなり不鮮明であり,その映
像自体から,当該自動車が被告人使用車両であると特定することは困難で
ある(仮に車種や色を特定し得たとしても,甲15,弁4によれば,高知
市における同車種の車両登録台数も相当数に上ると認められ,被告人使用
車両と特定することはできない。)。そして,犯行時刻の特定という観点
からは,防犯カメラに録画されている自動車は,脇道に入った後,画面上
では確認できない位置に進行しており,同自動車と,約7分後に脇道から
出てきた自動車とが同一であるとも画像上は断定し難いこと,本件駐車場
に自動車で行く場合には脇道を通ることになると考えられるものの(甲1
20),徒歩や自転車であれば脇道以外のルートもあり得ること(証人W
の供述。なお,被害品は,持ち運びが容易な本件デジタルカメラのみであ
り,犯人が脇道を通らずに徒歩等で本件駐車場に行って犯行に及ぶことは
十分可能である。),本件駐車場自体が大型商業施設の従業員専用駐車場
であって,脇道を自動車で通るのが付近住民のみであるとはいえないこと
からすると,そもそも,防犯カメラに録画された自動車が本件デジタルカ
メラの窃盗犯人の使用車両であり,かつ,その犯行前後の様子が録画され
たものであるとする根拠も薄弱である。
ウさらに,検察官が指摘する被告人の捜査段階の供述は,その前後の文脈
からすれば,脇道を通ったか否か「覚えていない」という趣旨であること
は明らかであり(乙11),防犯カメラに録画された自動車が被告人使用
車両であることを何ら裏付けるものではない。
エ結局,防犯カメラの映像は,録画された自動車が被告人使用車両であっ
て,録画された時刻ころに被告人が本件デジタルカメラを盗んだと仮定し
ても矛盾しないという程度の意味を持つにすぎず,これによって犯行時刻
を特定することはできない。
(2)4月19日の降雨状況及び被害車両内部の状況からの推認について
ア検察官は,本件駐車場付近では,4月19日午後2時10分ころから同
日午後8時40分ころまで雨が降っていたにもかかわらず,翌20日午前
零時ころに警察官が被害車両を見分した際,車内に顕著な濡れた痕跡や液
体が乾いた痕跡がなかったことから,犯行時刻は雨がやんだ後,すなわち
早くとも4月19日午後8時40分以降であると推認できる旨主張する。
イ写真撮影報告書(甲9)によれば,被害発覚後の被害車両は車体,ドア
ガラス,ドアルーフなどに全面的に水滴が付いており,本件駐車場付近で
降雨があったものと認められる(写真番号5,6)。そして,本件駐車場
からp川を挟んで約1キロメートル離れた位置にある高知地方気象台q露
場(地点名「高知」。以下「観測地点」という。)においては,4月19
日午後2時10分ころから同日午後8時40分ころまでの間及び同日午後
11時50分ころから翌20日午前零時10分ころまでの間,降雨が観測
されている(ただし,4月19日午後2時40分ころから同日午後2時5
0分ころまでの間を除く。)。また,その雨量は,(a)4月19日午後4
時10分から10分間,(b)同日午後5時40分から10分間,(c)同日午
後6時10分から10分間,(d)同日午後6時40分から10分間,(e)同
日午後7時10分から10分間の各時間帯にそれぞれ約0.5ミリメート
ルの降雨が観測されている以外は,いずれも規定量(0.5ミリメート
ル)に達せず,計測できない程度の量である(甲12,79,80,弁
2)。
ウ被害車両の助手席側ドアガラスはほぼ全面的に割られており,検察官の
前記主張は,雨がやんだ後の犯行でなければ,車内に濡れた痕跡が残るは
ずだということを前提とするものであるが,ドアガラスが割られた状態で
雨が降った場合に,車内に濡れた痕跡が残るかどうかは,ドアガラスが割
られた後の降雨量や風向き等の影響にもよると考えられる。前記のとおり
観測地点と本件駐車場とは約1キロメートル離れていて,大部分の時間帯
において降雨量が規定量に満たなかったことからすると,観測地点におい
て降雨が観測された時間帯であっても,本件駐車場付近では降雨がなかっ
たということも十分あり得る(現に,4月20日午前零時前後に本件駐車
場付近に臨場した警察官W及びXは,臨場した時に,雨は降っていなかっ
た旨述べているが,観測地点では降雨が観測されている。)。また,観測
地点と本件駐車場の風向きが同一であることも当然には推認できない。
エさらに,Wが,被害車両見分後,本件駐車場付近での聞き込み結果に基
づいて,少なくとも4月19日午後8時以降は雨は降っていないとの前提
で防犯カメラの映像をチェックしていること(甲14,証人W)からすれ
ば,見分を通じて,Wが車内に濡れた痕跡があるか否かという点に着目し
たことはうかがわれるが,見分当時,助手席シート上には割れたドアガラ
スが散乱しており,Wが手で触るなどして濡れているかどうかを確認し得
るスペースは相当限られていたこと,Xは,そもそも犯行時刻の特定とい
う観点から車内を見分したという意識はなく,犯行時に雨が降っていたの
かどうかは分からない,見分後に車内が濡れていなかったという話が出た
ことはあったが,それは被害者を慰める趣旨で話したものである旨供述し
ていること,助手席側ドアの内側に濡れた痕跡がないということを重視し
ていたのであれば,その写真を撮影することで容易にこれを証拠化し得る
のに写真撮影がされていないことなどからすると,見分時に車内が濡れて
いなかったという前提にも疑問の余地がある。
オ結局,降雨状況や車内の状況から犯行時刻を特定するのは困難である。
なお,検察官は,観測地点における降雨状況を前提にしつつ,4月20
日午前零時前後の降雨については規定量未満の降雨しかなく,車内に痕跡
が残るほどの降雨量ではなかったと主張するが,そのように考えるのであ
れば,4月19日午後7時20分ころから同日午後8時40分ころまでの
間も規定量未満の降雨しか観測されていないのであるから,検察官の主張
を前提としても,犯行時刻は同日午後7時20分以降となるはずであって,
同日午後8時40分以降の犯行とするのは恣意的な見方といわざるを得な
い。
(3)前記のとおり,防犯カメラの映像や降雨状況及び被害車両内部の状況か
ら犯行時刻を推認することはできない。結局,犯行時刻については,被害届
や被害者の供述等に加え,被告人が遅くとも4月19日午後9時57分ころ
には本件デジタルカメラを所持していた事実から,同日午後零時45分ころ
から同日午後9時57分ころまでの間という限度でのみ特定し得る。
3被告人の犯人性を裏付ける事情について
以上によれば,被告人は,被害発生から最大で約9時間後に本件デジタルカ
メラを所持していたことになる。その間隔からすれば,被告人が本件デジタル
カメラを所持していたこと自体,被告人が犯人であることを強く疑わせるが,
被告人以外の第三者が本件デジタルカメラを盗み,被告人に譲り渡すなどした
可能性を直ちに否定できるほど強い推認力はない。そこで,まず,被告人の弁
解を離れて,被告人が犯人であることを示す他の事情の有無について検討する。
(1)被告人のアリバイについて
被告人は,4月19日の昼ころから同日午後7時45分ころまでは当時の
交際相手とともに過ごしており,同時刻ころに同人を勤務先に送った時点ま
での行動は比較的はっきりしているが,その後,翌20日未明に交際相手ら
と合流するまでの行動は明らかではない(甲18,38。なお,検察官は,
被告人供述を前提に,同日午後9時57分ころに,高知市r町付近で被告人
が前記足下の写真を撮影したという事実を犯人性を基礎付ける間接事実とし
て主張しているが,同時刻における被告人の居場所を特定し得る客観的な証
拠はない。)。そうすると,被告人に犯行の機会はあったといえるが,これ
はあくまでも被告人が犯人であるとしても矛盾しないというだけで,積極的
に被告人の犯人性を裏付けるものではない。
(2)被告人の手袋,靴の付着物について
5月8日に被告人使用車両から発見された被告人の手袋や靴には,微量の
ソーダ石灰ガラス片が付着していたことが認められるが,これが自動車のド
アガラスの破片であるとは断定できない上(甲20,23ないし29),仮
に,自動車のドアガラスの破片であるとしても,被告人がこれまでに行った
と述べる50件から60件くらいの他の車上荒らしの犯行の際に付着した可
能性も否定できない。結局,前記の付着したガラス片は,被告人が犯人であ
って,本件被害車両のドアガラスを割った際にその破片が付着したものだと
しても矛盾しないという程度の意味を持つにすぎない。
(3)被告人が他に同種犯行に及んでいるという点について
検察官は,被告人がSと及んだ判示2件のほかにも多数の同種犯行に及ん
だ旨供述している上,手口が本件デジタルカメラの場合と共通であることを
被告人の犯人性を裏付ける間接事実として指摘する。しかし,ドアガラスを
何らかの道具を用いて割った上,車内にある物を盗むという犯行態様は取り
立てて特徴的なものではなく,被告人が常習的に同種犯行に及んでいるとし
ても,被告人が本件デジタルカメラを盗んだと推認することはできない。
(4)防犯カメラの映像について
防犯カメラの映像について,被告人が犯人であるとしても矛盾しないとい
う程度の意味しか持たないことは前記2(1)のとおりである。この点,Wは
4月19日午後8時以降の映像しか確認していないが,前記のとおり犯行時
刻は同日午後零時45分ころから同日午後9時57分ころまでの間という限
度で特定し得るのであり(なお,降雨状況を踏まえた検察官の主張によって
も,午後8時より前の犯行である可能性を否定できないことは既に述べ
た。),仮に犯人が自動車で脇道を通って本件駐車場に行き,犯行に及んだ
とすれば,午後8時よりも前の時間帯の映像中に,被告人使用車両とは明ら
かに異なる別の不審な自動車が映っている可能性もあることになる。このよ
うな可能性は,飽くまでも抽象的なものではあるが,上記のような不審な自
動車の映像が存在すれば,防犯カメラの映像は,検察官の立証上の問題にと
どまらず,被告人の防御上極めて重要な証拠として位置付けられる。捜査機
関の判断によって午後8時以降の映像しか確認しなかった結果,午後8時よ
り前の時間帯の不審な自動車の有無を確認することができないのであるから,
その不利益は捜査機関が負うべきものである。その意味でも,犯人性の検討
に当たって,防犯カメラの映像を被告人に不利益に考慮するのは相当でない。
(5)小括
ここまで,被告人の弁解とは離れて,それ以外の事情から被告人が犯人で
あると推認できるかを検討してきた。しかし,被告人が被害発生から最大で
も約9時間以内に本件デジタルカメラを所持するに至ったという事実は被告
人が犯人であることを強く推認させるものの,その他の事情は,いずれも被
告人が犯人であるとしても矛盾しないという程度の意味を持つにとどまり,
その中には,「付着物が自動車のガラス片であるとすれば」,「防犯カメラ
に写ったのが犯人の使用車両だとすれば」といった仮定を重ねて初めて意味
を持つものもある。そうすると,これらを総合しても,被告人が犯人でない
としたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明
が極めて困難である)とは到底いえない。
4被告人供述の虚偽性について
被告人が窃盗以外の方法で本件デジタルカメラを所持するに至ったというの
であれば,被告人自身がその入手経緯を合理的に説明できるのが通常である。
被告人が入手経緯について殊更に虚偽の説明をしていることが明らかな場合に
は,それをもって被告人を犯人と推認する一事情と見ることができる。そこで,
以下,入手経緯等に関する被告人供述の虚偽性について検討する。
(1)入手経緯に関する被告人の公判供述の概要は次のとおりである。
アAとは,過去に服役した際に刑務所で知り合った。被告人は1月ころ,
実家のある高知県土佐清水市から高知市内に出てきたが,その後,Aから
釣り竿やリール等をもらうようになり,今までに7回くらい,Aから物を
もらった。被告人は生活費に困っていたことから,Aからもらった釣り竿
等をリサイクルショップ等で売却して生活費を捻出するようになった。A
からは当初,ただで物をもらったが,その後はAに数千円を渡して物を売
ってもらい,これを売却するようになった。
イ4月19日午後8時前ころ,当時の交際相手を勤務先に被告人使用車両
で送った後,友人から連絡を受けて合流し,友人の車に乗って高知市中心
部を走行していたところ,Aから連絡があり,「またやるから来い」と言
われ,以前Aから物をもらったことがある,ガソリンスタンドとコンビニ
エンスストアsが一緒になったところの前の駐車場の横の路上に行った。
その後,Aが自動車で同所へやってきて,釣り竿,釣り竿ケース及び手提
げ袋を渡してきたので,自分はAに2000円から3000円くらいを渡
したと思う。受け取った時間は正確には分からないが,午後10時ころだ
ったと思う。Aから受け取った手提げ袋には,タブレット端末や携帯電話
のほか,デジタルカメラが二,三台入っていたように思う。本件デジタル
カメラは,そのうちの1台である。その場で自分の足下を撮影したように
思う。
ウAからは主に釣り竿をもらっていたが,釣り竿以外の物をもらうことも
あり,ゴルフバッグをもらった記憶がある。しかし,デジタルカメラをも
らったのは,4月19日だけという記憶であり,タブレット端末等も含め
て,4月19日以外にデジタル機器をもらったことはおそらくないと思う。
(2)被告人には累犯前科があり,判示のSと行った2件の窃盗について有罪と
なることが見込まれる以上,服役は免れない状況であって,本件デジタルカ
メラの窃盗について無罪となった場合に得られる利益は限定的ではある。
しかし,被告人は,これまでに及んだ車上荒らしについて捜査段階では2
件のみと述べるなど,現に自己の刑責を軽減しようとする態度に出たことも
あり,虚偽供述の動機があることは否定できない。以下,具体的に検討する。
アAから本件デジタルカメラを譲り受けた状況に関する供述について
(ア)被告人は,本件に先行する別件釣り竿等の窃盗被疑事実に係る勾留
期間中には,Aから釣り竿等をもらったり買ったりした旨供述し始めて
おり,高知市t町にある「飲食店u」の駐車場でもAから釣り竿やタブ
レット端末をもらったことがある旨述べている(乙3,6)。その後,
前記別件被疑事実については処分保留で釈放となり,本件デジタルカメ
ラの窃盗被疑事実により逮捕勾留されたが,その勾留期間中も本件デジ
タルカメラをAからもらった旨の供述を維持し,もらった場所について
「r町のコンビニエンスストアsとガソリンスタンドがくっついていて
近くに薬局vがある場所」と述べている(乙4,8,10,11。なお,
弁1及び被告人の公判供述によれば,前記「t町にある飲食店uの駐車
場」と「r町のコンビニエンスストアs」はほぼ同一の場所を指し,被
告人が公判廷で述べる譲受場所も同一であると認められる。)。すなわ
ち,本件デジタルカメラをAから譲り受けたこと及びその場所について
の被告人の供述は捜査段階からほぼ一貫している。
(イ)他方,被告人は,4月19日の行動経過等については捜査段階では
「覚えていない」などという供述に終始し,当公判廷において初めて友
人とドライブしていたなどと供述するに至った。また,Aの名前等,A
を特定し得る事項については,当公判廷でも明らかにしていない。
もとより,被告人が述べるAの人物像は抽象的で,被告人が自己の刑
責を軽減するために架空の第三者を作り上げるなどして供述している可
能性は否定できない。しかし,被告人は,Aのことを詳細に供述できな
い理由として,Aが被告人にとって怖い存在であって,Aのことを話せ
ば自分や周囲の者に危害を加えられるおそれがある旨を捜査段階から一
貫して述べている。それ自体は抽象的な理由ではあるが,捜査段階にお
いて,検察官がAは誰なのかということをしつこく質問したのに対して
反感を示したり(乙9),「関係人取調べ未了」という理由で勾留期間が
延長された際に供述を拒否する態度に出たこと(被告人の第5回公判に
おける供述),第2回公判において,Aの性別やおおよその年齢,Aが
いわゆるヤミ金をしていることなど,捜査段階や第5回公判では述べた
事項についてさえも「言えない」としたことなどは,Aを特定されるこ
とに対する強い警戒感の表れと理解することもでき,Aが怖くて話せな
い旨の被告人の供述を直ちに不合理なものと断ずることはできない。
(ウ)また,被告人の供述は,Aから物をもらい始めた時期(捜査段階では
4月ころからと述べた。)や,これまでにAから物をもらった回数(捜
査段階では5回と述べた。),4月19日にAと被告人のどちらから連
絡をしたのか(捜査段階では被告人から連絡した旨述べた。)といった
点について変遷が見られるが,これらの変遷や4月19日の行動につい
て捜査段階では述べなかった点も,Aを特定されることをおそれ,どこ
まで話してよいのか判断しかねた結果と見ることもできないではない。
(エ)次に,被告人は,第5回公判において,釣り竿と一緒に,本件デジタ
ルカメラを含むデジタル機器が入った手提げ袋をもらったこと及びデジ
タルカメラを4月19日以外にもらったことはないと思う旨を初めて述
べ,第10回公判では,被告人が5月8日に逮捕された際に押収された
複数のデジタルカメラやデジタル機器等(甲39,81)について,4
月19日にAからもらったもので,同日以外にデジタル機器をもらった
ことはおそらくないと思う旨述べた。これに対し,被告人の当時の交際
相手は,これらデジタル機器の一部について,4月19日よりも前から
被告人が所持していた旨供述している(甲118)。
しかし,交際相手の供述は,被告人とともに土佐清水に行った時期等
を基にしているが,交際相手が供述する以外にも土佐清水に行った機会
があることがうかがわれる(甲114の下部に「9/19」とある頁の
277番のメール及び被告人の供述からは,3月16日にも土佐清水に
行ったと見られる。)など,必ずしもその述べる時期が正確であるとは
いい難い。また,写真などの客観的な裏付けがあるのは白色のiPodの
みで,これも自動車のフロントガラスに映り込んでいるものがおそらく
押収されたものと同一であるという程度であり,その他の物については,
4月19日より前から被告人が所持していたと断定できるほど明確な根
拠があるわけではない。その上,被告人は,Aから物をもらった7回の
具体的な日時や,その都度何をもらったのかを明確には記憶していない
旨述べ,デジタル機器の入手時期に関する供述も断定的なものではない。
そうすると,一部のデジタル機器の入手時期について,被告人の供述
が事実と異なるとしても,それのみで本件デジタルカメラをAから譲り
受けた旨の弁解が虚偽であるとまではいい難い。
(オ)さらに,被告人は,4月25日から5月5日の間に,窃盗被害品を含
む大量の釣り竿等を交際相手の名義でリサイクルショップに売却してい
るが,窃盗被害品の中には車上荒らしとは異なる態様(倉庫荒らし)で
盗まれたものもある(甲116,117)。また,これら釣り竿等の窃
盗犯人は,売却目的で犯行に及んだと見られるが,3月ないし4月上旬
ころに盗まれたものなど,被害発生から被告人が売却するまでに相当日
数が経過しているものも多くあり,しかも,前記のとおり被告人が土佐
清水へ行ったと見られる3月16日の夜から翌17日朝の間に高知市内
で被害に遭ったものもある(前記別件の被疑事実に係る被害である。被
告人が高知市に戻った後,犯行に及ぶことも可能だが,当時の交際相手
とのメールの内容に照らすと不自然な感はある。なお,被告人は,3月
18日未明に,友人の家に釣り道具をもらいに行く旨のメールを交際相
手に送信している(甲114の前記の頁293番から295番のメー
ル)。)。このような状況は,釣り竿等を盗んで被告人に譲り渡した第
三者の存在をうかがわせるものと見ることもできる。
イ本件デジタルカメラを盗む動機に関する供述について
(ア)被告人は,これまでに50件から60件くらいの車上荒らしの犯行に
及んだが,それらはいずれも車内にあった財布を盗んだもので,そもそ
もお金が目的だったので,これまでに財布以外の物を盗んだことはない
と思う旨述べた上,4月19日当時,自分のデジタルカメラを所有して
いたし,売却しても大した金額にはならないであろうデジタルカメラを
あえて危険を冒して盗む理由はない旨供述する。
この供述は,いかにも被告人に都合のよい供述にも思えるが,少なく
とも,車上荒らしで被告人が財布以外の物を盗んだことがあることを的
確に認定し得る証拠はない。むしろ,被告人は,前記別件での逮捕直後
の時点で,被疑事実である釣り竿等の窃盗については自分がやった事件
なのかどうかはっきり言えないとしながら,3月ころから生活費を稼ぐ
ために「現金入りの財布を盗むこと」を何度もやっている旨自らに不利
益な供述をし(乙2),その後も車上荒らしで財布以外の物を盗んだこ
とがあるとは述べていない。
(イ)被告人の上記供述を踏まえて,本件デジタルカメラの窃盗犯人の動
機について推察すると,本件駐車場に駐車された複数の自動車のうち,
被害に遭ったのは被害車両のみであり,かつ,本件デジタルカメラが盗
まれた点を除いては,車内に物色された形跡はなく,トランクに積まれ
ていたゴルフバッグもそのまま残されていたこと(甲3,4,34)な
どから,犯人は,運転席と助手席の間に本件デジタルカメラが置かれて
いるのを確認した上でこれを狙って犯行に及んだものと考えられる。
本件デジタルカメラは,被害当時,合皮製のケースに入っていたが
(甲31。ただし,ケースは発見されておらず,その形状は明らかでは
ない。),これがデジタルカメラその他の物品だと認識し得る状態であ
ったとすれば,犯人は自ら使用するため,あるいは他人に売却して利益
を得るためなどの動機で犯行に及んだと考えることができる。
この点,被告人の知人は,被告人がその所有するデジタルカメラを壊
したことがある旨述べるが(甲30),その時期は明らかではないし,
それを裏付ける客観的な証拠もない。むしろ,被告人は,本件デジタル
カメラを用いて4月19日から同月20日にかけて数枚の写真を撮影し
たのみで,それ以降は本件デジタルカメラを使用した形跡がないのであ
って,被告人が自ら使用するために盗んだとは直ちにいい難い。また,
被告人が本件デジタルカメラを売却しようとした形跡もない。他方,A
が犯人だとすれば,Aにとっては,被告人という譲受人のあてがあるこ
とになる上,前記の本件デジタルカメラの使用状況について,被告人は
Aからたまたま釣り竿等と一緒にもらったため,当日から翌日にかけて
は使用したが,その後は持っていただけであるとも理解し得る。
(ウ)なお,ケースの形状が明らかでない以上,犯人がこれを財布と勘違
いしたという可能性も否定できないが,そうだとしても,被告人が犯人
であっても矛盾しないだけで,被告人の犯人性を裏付けたり,被告人供
述を弾劾することにはならない。重要なのは,被害車両の状況や本件デ
ジタルカメラの使用状況が被告人の供述と矛盾せず,被告人に本件デジ
タルカメラを盗む動機がないことを説明し得る状況にあるという点であ
る。
(エ)以上に対し,検察官は,被告人が本件デジタルカメラ以外にも入手
経緯について合理的に説明できないデジタル機器を複数所持していたこ
とから,本件デジタルカメラを盗む動機が裏付けられる旨主張する。し
かし,被告人は他のデジタル機器についてもAから譲り受けた旨弁解し
ているのであって,これらのうち一部でも被告人が盗んだものであるこ
とが明確ならばともかく,単に所持していたというのみで,これらを被
告人が盗んだとか,被告人に本件デジタルカメラを盗む動機があるとい
うことはできない。なお,検察官は,当公判廷において,上記他のデジ
タル機器について,一部は窃盗被害品であることの確認が取れている旨
釈明したが,当裁判所は,その程度の状況では被告人供述を弾劾するに
は至らないと考え,被害届等の更なる立証を促さなかった。
ウその他,検察官は,被告人使用の携帯電話等に,Aへ電話をかけたこと
をうかがわせる発信履歴がないことを指摘するが,被告人は,当日,Aか
ら連絡を受けた旨供述しており(捜査段階ではこれと異なる供述をしてい
るが,Aが何らかの方法により入手した物品を被告人に譲るという場面を
想定すれば,Aから被告人に連絡を入れるという方が自然である。),証
拠上,着信履歴は明らかでなく,被告人の供述を排斥するには至らない。
(3)以上のとおり,被告人の供述は,一部変遷や,事実と異なると見られる点
はあるものの,その骨格は捜査段階から概ね一貫している。その上,被告人
が窃盗被害品である大量の釣り竿等を売却する一方で複数のデジタル機器は
売却することなく所持しているのに,これらの中に被告人が盗んだと断定で
きるものがない現状にあり,かつ,本件デジタルカメラのように,被告人が
あえて盗んだとする動機を明確には説明しにくいものもあることなどは,A
から入手したとの被告人の弁解に沿うとも理解し得る。結局,本件の証拠関
係からは,Aから本件デジタルカメラを譲り受けた旨の被告人供述が虚偽で
あるとは断定できない。
5結論
被告人が本件デジタルカメラを所持していた時間帯に加え,前記3で検討し
た事情や前記4で検討した被告人の供述状況を総合しても,本件において,被
告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,
少なくとも説明が極めて困難である)とはいえない。したがって,平成24年
6月19日付け起訴状記載の公訴事実については犯罪の証明がないことになる
から,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。
【量刑の理由】
判示各犯行は,被告人が共犯者であるSと共に常習的に及んだ車上荒らしの一環
であり,その態様は,深夜,財布が置かれた自動車を物色した上,そのドアガラス
を石やハンマーで割って車内の財布を盗むという大胆で悪質なものである。
判示各犯行に係る被害車両のドアガラスを割り,車内から財布を盗んだのはいず
れも被告人であり,犯行現場まで自動車を運転したり,見張り等をしたにとどまる
Sと比較して重要な役割を果たしている。
被告人は,累犯前科を含む服役前科3犯を有しながら,前刑の仮釈放後9か月余
りで安易に判示各犯行に及んだものであり,その規範意識の鈍麻は甚だしい。
そうすると,被告人が各事実を認め,検挙されていない同種犯行の存在も述べて
反省の態度を示していること等を十分考慮しても,被告人を主文の刑に処するのが
相当である。
(検察官菊池昌晴並びに国選弁護人宮上佳恵各出席。求刑懲役3年)
平成25年2月25日
高知地方裁判所刑事部
裁判官大橋弘大橋弘大橋弘大橋弘治治治治

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