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平成25年12月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成24年(ワ)第557号正規労働者と同一の雇用契約上の地位確認等請求事

口頭弁論終結日平成25年10月18日
判決
主文
1原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2被告は,原告に対し,平成25年5月25日から本判決確定の日まで,毎月
25日限り月16万5270円の割合による金員を支払え。
3被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する平成25年3月25日から
支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4被告は,原告に対し,149万5837円及びこれに対する平成24年9月
19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5被告は,原告に対し,11万2983円及びこれに対する平成25年9月2
5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6原告のその余の請求をいずれも棄却する。
7訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担
とする。
8この判決は,第2ないし第5項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
1原告が,被告に対し,雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2被告は,原告に対し,平成25年5月25日から本判決確定の日まで,毎月
25日限り月29万0438円の割合による金員を支払え。
3被告は,原告に対し,平成25年6月30日から本判決確定の日まで,毎年
6月30日及び12月31日限り,各27万5000円を支払え。
4被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成25年3月23日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5原告が,被告に対し,被告の正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する
地位にあることを確認する。
6原告が,被告に対し,賃金の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用そ
の他の待遇について,被告の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権
利を有する地位にあることを確認する。
7被告は,原告に対し,262万2921円及びこれに対する平成24年9月
19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8被告は,原告に対し,11万8578円及びこれに対する平成25年9月2
5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9被告は,原告に対し,52万5963円及びうち51万7040円に対する
平成25年3月27日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
10被告は,原告に対し,6万4630円を,平成25年4月25日限り支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
本件は,使用者である被告との間で期間の定めのある労働契約を反復して更
新していた労働者である原告が,被告が契約期間満了前の更新の申込みを拒絶
したこと(以下,更新の申込みを拒絶したことを「更新拒絶」,それによって
賃金を得られなかった期間を「更新拒絶期間」ということがある。)は,客観
的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,被告は,従前
の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾
したものとみなされたと主張して(労働契約法19条),被告に対し,雇用契
約上の権利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,1),更新拒絶
期間中の月額賃金(前記第1,2),更新拒絶期間中の賞与(前記第1,3),
更新拒絶による慰謝料(前記第1,4)を請求するとともに,被告が原告に対
して短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パートタイム労働
法」という。)8条1項に違反する差別的取扱いをしていると主張して,同項
に基づき,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確
認(前記第1,5),被告の正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権
利を有する地位にあることの確認を求め(前記第1,6),同項に違反する差
別的取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求している(前記第1,7な
いし10)事案である。なお,原告は,正規労働者と同一の雇用契約上の権利を
有する地位にあることの確認請求(前記第1,5)の理由として,準社員とし
て3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束が被告との間で成立
したことも主張しており,また,パートタイム労働法8条1項の要件を充足す
る場合には,期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止した労働契
約法20条も充足すると主張する。
2前提となる事実
(1)当事者
ア被告は,石油製品,同副製品その他の保管及び搬出入作業,貨物自動車
運送事業,貨物利用運送事業等を目的とする株式会社である(当事者間に
争いがない。)。
被告の従業員は,就業規則等により,期間の定めのない労働契約を締結
した正社員,期間の定めのある労働契約を締結した準社員,冬期需要増に
対する業務遂行のために採用された,期間の定めのある労働契約を締結し
た期間社員などに分類されている(乙10,11,12)。被告におけるド
ライバー(運転手)中の正社員とその他の社員の比率(平成24年7月1
日現在)は,別紙1(別紙1は,乙16の4枚目と同じ内容である。)のと
おりであった。
イ原告(昭和38年2月8日生)は,被告と労働契約を締結し,被告九州
支店大分事業所で運転手として稼働していた者である(弁論の全趣旨)。
(2)原被告間の労働契約
ア原告は,平成16年10月15日,被告との間で,同日から平成17年
4月14日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇
用された(乙1)。
イ原告は,被告との間で,平成17年10月1日から平成18年3月31
日までを期間とする労働契約を締結し,期間社員として被告に雇用された
(当事者間に争いがない。)。
ウ原告は,被告との間で,平成18年4月1日,同日から平成19年3月
31日までの1年間を期間とする労働契約を締結し,準社員として被告に
雇用され,以後,原告と被告はこの契約を更新し,平成24年4月1日には,
同日から平成25年3月31日までの1年間を期間とする労働契約に更新
した(当事者間に争いがない。)。
(3)原告の業務
期間社員,準社員であった原告の職務は,貨物自動車の運転手として,タ
ンクローリーによる危険物等の配送及び付帯事業に従事することであり,正
社員の職務と同じであった(当事者間に争いがない。なお,後記第3,5(2)
のとおり,被告は,転勤等,役職への任命等の点において,準社員は正社員
と異なると主張する。)。
(4)就業規則
被告の就業規則には,主に正社員に適用される就業規則(乙10,以下「正
社員就業規則」という。),準社員に適用される準社員就業規則(乙11),期
間社員に適用される期間社員就業規則(乙12)があった。
(5)労働時間,賃金
ア被告の正社員の1日の所定労働時間は8時間であり,勤務日数は年25
8日であった(乙10,28)。
被告の準社員には,1日の所定労働時間が7時間の者と8時間の者がい
たが,平成24年7月1日以降は8時間に統一された(乙11,28)。そ
して,平成24年6月30日までの準社員の1年の勤務日数は291日で
あった(乙28)。
イ原被告間の,平成16年10月15日ないし平成17年4月14日を期
間とする労働契約(期間社員,前記(2)ア)は,1日の所定労働時間が1日
7時間,賃金の基本日額(以下,基本日額は,1日の基本給を指す。)が6
800円であった(乙1)。
平成18年4月1日ないし平成19年3月31日,同年4月1日ないし
平成20年3月31日を期間とする労働契約(準社員,前記(2)ウ)は,所
定労働時間が1日7時間,基本日額が6600円であった(乙2,3)。
平成20年4月1日ないし平成21年3月31日,同年4月1日ないし
平成22年3月31日,同年4月1日ないし平成23年3月31日,同年
4月1日ないし平成24年3月31日,同年4月1日ないし平成25年3
月31日を期間とする労働契約(準社員,前記(2)ウ)は,1日の所定労働
時間が7時間,基本日額が6850円であった(乙4ないし8)。
(6)就業規則の変更
ア被告は,平成24年7月1日,準社員就業規則,準社員賃金規程を変更
し,準社員の契約期間を7月1日から翌年の6月30日までとし,従前は,
準社員のうちに1日の所定労働時間が7時間の者と8時間の者がいたとこ
ろ,準社員の1日の所定労働時間を8時間に統一し,従前は,準社員の勤
務日数は年291日であったところ,これを,正社員と同じ年258日と
した。また,準社員の基本日額を6850円から7870円に変更した。
(乙28ないし31,弁論の全趣旨)。
イ被告の原告以外の準社員は,変更された準社員就業規則,準社員賃金規
程に則り,期間を平成24年7月1日から平成25年6月30日とし,1
日の所定労働時間を8時間とし,基本日額を7870円とする新たな雇用
契約書(乙30)に全員署名押印したが,原告は,新たな雇用契約書には
署名押印しなかった(弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年3月9日付け
第3準備書面〕)。
(7)原被告間の労働紛争
ア原告は,職務の内容(業務の内容及び業務に伴う責任の程度)が正社員
と同一であるにもかかわらず,準社員(短時間労働者)であることを理由
として処遇に差があるのは,パートタイム労働法8条1項に違反すると主
張し,被告に対して労働条件の改善を求め,その紛争の解決につき,平成
23年2月24日,パートタイム労働法21条に基づいて大分労働局長に
援助を求め,大分労働局長は,同年4月26日,被告に対し,指導を行っ
た(甲6)。
イ原告は,平成23年11月7日,前記アの紛争についてパートタイム労
働法22条に基づいて調停の申請を行い,大分紛争調整委員会は,平成2
4年1月24日,被告に対し,調停案受諾の勧告をしたが(甲8),被告は
これを受諾しなかった(甲1)。
ウ原告は,平成24年5月1日,当庁に労働審判を申し立て,同年8月2
日,労働審判が行われ,被告は,同月9日,異議を申し立てた(当裁判所
に顕著な事実)。
(8)更新拒絶
ア被告は,平成25年3月23日,原告に対し,同月31日をもって労働
契約を終了し,労働契約の更新をしないことを通知した。その通知書には,
労働契約の更新をしない理由として,原告が本件訴訟において様々な点に
おいて事実と異なることを主張していること,本件訴訟と無関係の第三者
である被告の従業員を多数本件訴訟に巻き込んでいることが記載されてい
た(甲27,28,原告本人〔前半22頁〕)。
イ原告は,平成25年3月25日,労働契約の更新をしないとの通知(前
記ア)の撤回を求めたが(甲28),被告は,同日,原告に対し,撤回の意
思はない旨回答した(甲29)。
ウ原告は,平成25年3月27日,被告に対し,同月25日の撤回の要求
(前記イ)は,労働契約法に定められた有期労働契約の更新の申込みであ
る旨を通知した(甲30)。
(原告が平成25年3月25日に行った労働契約の更新をしないとの通知
の撤回の要求〔前記イ,甲28〕は,労働契約法に定められた有期労働契
約の更新の申込みに該当し,それに対して被告が同日行った撤回の意思は
ない旨の回答〔前記イ,甲29〕は更新拒絶に該当し,被告は更新拒絶に
よる労働契約の終了を主張しているものと認められる。)
3主な争点
(1)期間の定めのない労働契約の終了との同一性,更新の合理的期待
(2)更新拒絶の相当性の有無
(3)労働契約の更新に基づく請求の成否
(4)平成24年7月1日に変更された就業規則の原告への適用
(5)パートタイム労働法8条1項違反の有無
(6)パートタイム労働法8条1項に基づく請求の成否
(7)パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損
害賠償請求権の消滅時効
(8)準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束の有

第3争点に関する当事者の主張
1争点(1)(期間の定めのない労働契約の終了との同一性,更新の合理的期待)
(1)原告の主張
原被告間の有期労働契約は,「当該有期労働契約が過去に反復して更新さ
れたことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を
更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めの
ない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当
該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できる」
(労働契約法19条1号)と認められ,仮にそうでなくとも,少なくとも,
「労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契
約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるもの」(労
働契約法19条2号)であると認められる。その理由は,以下のとおりであ
る。
アすなわち,原告は,前記第2,2(2)のとおり被告に勤務してきたもの
であり,平成17年10月1日に期間社員として勤務を再開したときには,
契約書も作成しなかったから,原告が期間社員として勤務を再開すること
は当然に予定されていたといえる。また,原告は,平成18年4月1日以
降は,期間を1年とする有期契約を更新し,7年間にわたり準社員として
勤務してきた。
イ被告は,①面接を伴う労働契約の更新手続を行っており,雇用継続につ
いて合理的期待を抱かせるような言動もしていないこと,②実際に更新拒
絶をしたこともあること,から,期間を1年とする準社員としての労働契
約を終了させることは,期間の定めのない労働契約を終了させることと同
視することはできず,また,更新の期待に合理的な理由があるとは認めら
れないと主張する。
しかし,契約更新の際に必ず面接が行われていたわけではないし,行わ
れたとしても形式的なものであった。また,更新拒絶が行われたことはほ
とんどなかった。したがって,被告の主張は理由がない。
(2)被告の主張
原被告間の有期労働契約は,「当該有期労働契約が過去に反復して更新され
たことがあるものであって,その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更
新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが,期間の定めのな
い労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期
間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できる」(労働契
約法19条1号)とは認められず,「労働者において当該有期労働契約の契約
期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて
合理的な理由があるもの」(労働契約法19条2号)であるとも認められない。
すなわち,期間を1年とする準社員としての労働契約は,有期労働契約で
あって,被告は,面接を伴う労働契約の更新手続を行っており,雇用継続に
ついて合理的期待を抱かせるような言動もしておらず,また,実際に更新拒
絶をしたこともあるから,それを終了させることは,期間の定めのない労働
契約を終了させることと同視することはできないし,更新の期待に合理的な
理由があるとは認められない。
2争点(2)(更新拒絶の相当性の有無)
(1)原告の主張
被告による更新拒絶は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当で
あるとは認められない(労働契約法19条柱書き)。その理由は,以下のとお
りである。
ア更新拒絶の通知書に記載された更新拒絶の理由は,原告が本件訴訟にお
いて様々な点において事実と異なることを主張していること,本件訴訟と
無関係の第三者である被告の従業員を多数本件訴訟に巻き込んでいること
の2点である。
しかし,本件訴訟において,原告が被告と異なる主張をしているとして
も,原告が虚偽の事実を主張していることにはならない。また,原告は,
本件訴訟において被告の労働条件等を明らかにするために,任意に同僚の
協力を得たにとどまり,それは更新拒絶の正当な理由にはならない。原告
は,同僚にできるだけ迷惑をかけたくないと考えているので,これまで,
同僚の名前を伏せて陳述書を提出したり,アンケートを無記名にするなど
の配慮をし,負担にならない範囲で任意の協力を得てきた。
イ原告が「ある親しい正社員から,『大分事業所長から,乙21の4頁6に
記載されている内容とほぼ同じ趣旨の陳述書の作成を依頼され,事実と異
なるため署名できないと拒否した。』という話を聞いている。」(原告作成の
平成25年1月24日付け準備書面の4頁4ないし6行目。乙21は,被
告の九州支店大分事業所長C作成の陳述書であり,その4頁6に記載され
た内容は,別紙2のとおりである。)という主張の内容は,以下のとおり,
真実である。
すなわち,Cらから陳述書の作成を依頼されたとの情報を原告に提供し
た同僚は2名おり,そのうち1名(以下「従業員A」という。)は,「陳述
書の内容が事実と異なるから署名押印できないと言った。」旨原告に述べた。
もう1名(以下「従業員B」という。)は,「裁判にかかわりたくないから
署名押印を断ったと言った。」旨述べた。原告の上記主張は,原告が従業員
Aから聞いたことを内容とするものである。
Cが原告の主張について事情を聞いた後記(2)アの従業員Xは,上記の従
業員Bのことであり,従業員Bは,従業員Aが原告に話した内容を知らな
かったので,「自分が原告に言ったことと異なることを原告が主張してい
る」旨Cに述べた。原告は,そのことについて従業員Bから問い質され,
事情を説明したところ,従業員Bは納得し,従業員Bの誤解も解けている。
(2)被告の主張
被告による更新拒絶は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当で
ある。その理由は,以下のとおりである。
ア(ア)原告の「ある親しい正社員から,『大分事業所長から,乙21の4頁
6に記載されている内容とほぼ同じ趣旨の陳述書の作成を依頼され,事
実と異なるため署名できないと拒否した。』という話を聞いている。」(原
告作成の平成25年1月24日付け準備書面の4頁4ないし6行目)と
いう主張の内容は虚偽である。その理由は,以下のとおりである。
被告の専務執行役員Dは,平成24年11月24日,Cとともに,大
分事業所のグループ長3名から,準社員であった頃と正社員に登用され
た後の仕事や気持ちの違い,グループ長に任命された前後の仕事や気持
ちの違い等について聴取を行い,後日裁判所に提出する陳述書の作成を
依頼した。Dは,平成24年12月12日午後8時頃,大分事業所の2
階の会議室で,原告の親しい友人である従業員(以下「従業員X」とい
う。)に対し,同年11月24日にCとともに聴取した内容をまとめた陳
述書案を示し,「事実と異なる部分があれば訂正するので,どんな細かい
ことでも遠慮なく申し出てほしい。」と説明した。従業員Xは,「事実と
異なるところはない。先日自分が話した内容と同じであるが,裁判にか
かわりたくなく,何よりも原告にかかわりたくないので,陳述書の提出
は勘弁してほしい。」旨懇請した。そのため,Dは,従業員Xの意向を斟
酌し,同従業員作成の陳述書の提出を断念した。また,Dが平成24年
12月12日に面談できなかった他の2名のグループ長については,C
が,後日,陳述書案を提示し,内容の確認を得た上,署名押印を求めた
が,それらの者も,陳述書の内容は自分達の話したとおりであるが,裁
判と原告にかかわりたくないので,陳述書を裁判所へ提出することは勘
弁してほしいと懇請した。そのため,DとCは,グループ長が作成した
陳述書を裁判所に提出することを断念し,Cの陳述書の中に,グループ
長から聴取した内容を記載して裁判所に提出することとした。
Cは,平成25年2月5日,原告の上記主張について,従業員Xに事
情を聞いたところ,従業員Xは,「『会社から陳述書にサインをお願いで
きないかと言われたが,自分は裁判に一切かかわりたくないので,勘弁
してくださいと言った。』と原告に話した。」旨述べた。Cが,「原告は,
『陳述書の内容が事実と異なるのでサインしなかった』と主張してい
る。」旨説明すると,従業員Xは,「自分は,『裁判に巻き込まれたくない
から勘弁してくださいと会社にお願いした。』と原告に言った。原告に腹
が立つので抗議する。」旨述べ,強く憤慨していた。後日,Cが,従業員
Xに対し,原告に抗議したか尋ねると,従業員Xは,「抗議しました。原
告は『ごめん,ごめん,(裁判に)巻き込むつもりは全然なかった。』と
答えました。」と報告した。
(イ)原告の前記(1)イの主張は,従業員Xが裁判に巻き込まれたくないと言
っているのを知りながら,同僚の気持ちや迷惑を全く考慮することなく,
自分の立場を有利に導くために,事実を歪曲して主張しているものであ
る。原告のこのような言動は,職場の規律を著しく乱すとともに,会社・
上司・同僚との信頼関係に重きを置くという,危険物輸送を専門とする
被告の社風や気質,社会的使命や責任と全く相容れないものであり,原
告と被告・上司・同僚との信頼関係を完全に破綻させた。
このような原告の言動は,準社員就業規則4条(服務心得)5号「職
場の秩序,風紀をみださないこと」に違反し,同規則48条(譴責・減
給および出勤停止)8号「職場の秩序をみだし,またはみだそうとした
とき」,同10号「社内の風紀または規律をみだしたとき」,同12号「そ
のほかこの規則によって遵守すべき事項に違反し,または前各号に準ず
る程度のふつごうな行為があったとき」に該当するものである。
イ(ア)原告は,平成24年4月23日に京都府で発生した交通事故(登校中
の小学生の列に自動車が突っ込んで小学生等が死傷した事故)のニュー
スを見て,タンクローリーで突っ込んだらどうなるんだろうと話し,被
告大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をし,同幹部
との間の信頼感を損ねた。
(イ)前記(ア)のような原告の行為によって被告大分事業所幹部と原告との
間の信頼感を損なわれると,点呼,特に乗務後点呼の際の業務内容の確
認が十分にできなくなり,混油事故の発覚が遅れるなど大きな弊害が生
ずる。
このような原告の言動は,準社員就業規則4条(服務心得)5号「職
場の秩序,風紀をみださないこと」に違反し,同規則48条(譴責・減
給および出勤停止)8号「職場の秩序をみだし,またはみだそうとした
とき」,同10号「社内の風紀または規律をみだしたとき」,同12号「そ
のほかこの規則によって遵守すべき事項に違反し,または前各号に準ず
る程度のふつごうな行為があったとき」に該当するものである。
ウ原告には,前記ア,イのとおり,就業規則に反する行為があり,原告を
引き続き勤務させることは,危険物の安全輸送・安全作業に差し障りを生
ずることから,契約更新を行わず,更新拒絶を行うこととした。
3争点(3)(労働契約の更新に基づく請求の成否)
(1)原告の主張
ア契約の更新
前記2(1)のとおり,被告が原告による有期労働契約の更新の申込みを拒
絶したことは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは
認められないから,被告は,平成25年3月31日までの労働契約の内容
である労働条件と同一の労働条件で原告による申込みを承諾したものとみ
なされる。
イ地位確認
原被告間の有期労働契約は更新されたものとみなされるにもかかわらず,
被告は更新拒絶による契約の終了を主張してこれを争っているから,原告
は,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め
る。
ウ月額賃金
(ア)原告の平均月額賃金は25万4166円であり,支払日は,毎月末日
締め翌月25日払(支払日が休日に当たる場合はその前日)である。
(イ)労働契約が更新されたとみなされるにもかかわらず,原告は平成25
年4月分以降の月額賃金の支払を受けていない。
(ウ)平成25年4月以降の月額賃金は,平成23年の年間総支給額(36
3万5263円,甲3)から年間賞与合計15万円を控除して12か月
で除することにより求められる。平成24年7月1日に就業規則が変更
され,それによって平成24年の年間支給額は平成23年の年間支給額
よりも減額されたから,平成25年4月以降の賃金の算出においては,
平成23年の年間総支給額を基準とすべきである。
そうすると,平成25年4月以降の月額賃金は29万0438円((363
万5263円-15万円)÷12月=29万0438円)であり,原告は,被告に
対し,平成25年5月25日から本判決確定の日まで,毎月25日限り
月29万0438円の割合による賃金の支払を求める。
エ賞与
(ア)原告は,正社員と同様に,毎年6月30日及び12月31日限り,少
なくとも各27万5000円の賞与を得ることができた。
また,そうでなくても,原告は,毎年6月30日及び12月31日限
り,少なくとも各7万5000円の賞与を得ることができた。
(イ)労働契約が更新されたとみなされるにもかかわらず,原告は平成25
年4月分以後の賞与の支払を受けていない。
(ウ)したがって,原告は,被告に対し,平成25年6月30日から本判決
確定の日まで,毎年6月30日及び12月31日限り,各27万500
0円の賞与の支払を求める。
オ慰謝料
被告による更新拒絶は不法行為を構成し,原告は,被告が更新拒絶を行
ったことにより精神的苦痛を受けたものであり,その慰謝料は100万円
を下らない。
したがって,原告は,被告に対し,慰謝料100万円及びこれに対する,
被告が労働契約の更新をしないことを原告に最初に通知した日である平成
25年3月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払を求める。
(2)被告の主張
ア契約の更新
原告の主張は争う。更新拒絶により原被告間の有期労働契約は終了した。
イ地位確認
原告の主張は争う。
ウ月額賃金
原告の主張は争う。
仮に更新拒絶期間中の賃金を請求し得るとしても,平成23年の支給額
を基準とする理由はないし,請求し得るのは基本給の部分にとどまる。
エ賞与
原告の主張は争う。
賞与,手当は,実際に就労していない期間については請求できない。
オ慰謝料
原告の主張は争う。
4争点(4)(平成24年7月1日に変更された就業規則の原告への適用)
(1)原告の主張
平成24年7月1日の就業規則の変更は,準社員の1日の所定労働時間を
8時間としてパートタイム労働法の適用を免れ,時間外手当を含む準社員の
賃金を大幅に減少させるものであり,労働者の意見を聞かず一方的に行われ
たものであるから,変更に同意していない原告には適用されない。
(2)被告の主張
原告の主張は争う。
平成24年7月1日の就業規則の変更により,準社員の勤務日数は年33
日減少したが,これらの日に勤務した場合には,従前であれば通常の勤務日
の賃金しか得られなかったのに対し,就業規則変更後は,休日の割増賃金を
得られることになり,上記の就業規則変更後も実際に休日の勤務があり,勤
務日数は減少していないから,上記の就業規則変更によって原告の賃金が減
少することはない。
5争点(5)(パートタイム労働法8条1項違反の有無)
(1)原告の主張
ア通常の労働者と同視すべき短時間労働者への該当性
原被告間の労働契約は,前記第2,2(2)のとおりであり,このような契
約の態様に照らせば,反復して更新されることによって期間の定めのない
労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある
労働契約(パートタイム労働法8条2項)に該当するといえる。
被告の正社員の1日の所定労働時間は8時間であるが,準社員である原
告の1日の所定労働時間は1日7時間であったから(前記第2,2(5)),
原告は,一週間の所定労働時間が正社員の一週間の所定労働時間に比し短
く,短時間労働者(パートタイム労働法2条)に該当する。そして,原告
の職務は,正社員の職務と同じであったから(前記第2,2(3)),原告は,
「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度が被告に雇用される通常の労
働者と同一の短時間労働者であって,被告における慣行その他の事情から
みて,被告との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内
容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一
の範囲で変更されると見込まれるもの」(パートタイム労働法8条1項)に
該当する。
正社員は実際に転勤を命じられることはないから,転勤の有無の点では,
準社員も正社員と同じである。準社員賃金規程には,準社員がチーフ,グ
ループ長,運行管理者になることを前提とした規定があり,実際にも準社
員には,チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者の職務を行っ
ている者がいた。したがって,転勤等,役職への任命等に関して,正社員
と準社員は差がない。
イ賃金の決定その他の待遇についての差別的取扱い
原告の賃金は,本件訴訟提起時において,基本給,賞与を含めて約36
0万円程度であり,被告の正社員に比べて少なくとも40万円少ない。ま
た,原告は,年間休日日数が正社員に比べて31日少ない。さらに,準社
員である原告は,正社員のように退職金を受け取ることができない。
したがって,原告は,短時間労働者であることを理由として,賃金の決
定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,差別的
取扱いを受けた。
(2)被告の主張
原告の主張は争う。
就業規則上,正社員は転勤,出向があるのに対し,準社員には転勤,出向
がないから,この数年大分事業所で正社員の転勤がなかったとしても,転勤,
出向の有無の点で正社員と準社員は人材活用の仕組みが異なる。
また,チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者は,一般ドライ
バーに対する指示連絡,指導などを職務としており,その責任は,一般ドラ
イバーよりも重いものである。そのため,正社員は,チーフ,グループ長,
運行管理者,運行管理補助者に任命されるのに対し,準社員は,これらの役
職には任命されない。
準社員ドライバーは,正社員ドライバーと異なり,新規業務,事故トラブ
ルへの対応など,緊急の対処が必要な業務,対外的な交渉が必要な業務には
従事しない。
また,正社員ドライバーの中には,事務職に職系転換して主任,事業所長
又は課長に任命された者があるのに対し,準社員には,そのように事務職に
職系転換した者はいない。
このように,正社員と準社員は,人材活用の仕組み,運用等が同一である
とはいえないから,準社員である原告は,業務の内容及び当該業務に伴う責
任の程度が被告に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者(パートタ
イム労働法8条1項)には該当せず,被告における慣行その他の事情からみ
て,被告との雇用関係が終了するまでの全期間において,その職務の内容及
び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲
で変更されると見込まれるもの(パートタイム労働法8条1項)にも該当し
ない。
6争点(6)(パートタイム労働法8条1項に基づく請求の成否)
(1)原告の主張
ア地位確認
パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いがある場合には,
正規労働者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認,正
規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあること
の確認を求めることができる。
イ損害賠償
(ア)不法行為の成立
パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いがある場合には,
その差別的取扱いは不法行為を構成するから,不法行為に基づく損害賠
償を請求することができる。
期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止を定めた労働契
約法20条は,パートタイム労働法8条1項よりも要件が緩やかである
から,パートタイム労働法8条1項に該当する場合には,労働契約法2
0条にも該当し,その違反は不法行為を構成する。
(イ)平成21年4月1日から平成24年3月31日までの賃金の差額
a原告を含む準社員は,正社員との間で,年間賞与額の差が年間40
万円以上あった。
また,準社員は,正社員よりも休日日数が年間31日少なく(原告
は,損害との関係では,休日日数の差が31日であると主張する。),
その分の休日の割増賃金を得ることができなかった。
b平成21年4月1日から平成24年3月31日まで3年間における
正社員と準社員の賃金の差額は,次のとおり合計142万2921円
であった。
(a)賞与の差額
120万円(40万円×3年=120万円)
(b)休日の割増分の差額
賃金の基本日額は6850円であり,休日1日当たりの割増分は,
その0.35倍の2397円(6850円×0.35=2397円)である。
そうすると,休日日数の差である31日の休日の割増分は22万2
921円(2397円×31日×3年=22万2921円)である。
(c)合計
賞与の差額(前記(a))と休日の割増分の差額(前記(b))の合計は
142万2921円(120万円+22万2921円=142万2921円)で
ある。
(ウ)平成24年4月1日から同年6月30日までの賃金の差額
平成24年4月1日から同年6月30日までの正社員と準社員の賃金
の差額は,次のとおり合計11万8578円であった。
a賞与の差額
9万9999円(40万円÷12月×3月=9万9999円)
b休日の割増分の差額
1万8579円(6850円×0.35×31日÷12月×3月≒1万8579円)
c合計
賞与の差額(前記(a))と休日の割増分の差額(前記(b))の合計は1
1万8578円(9万9999円+1万8579円=11万8578円)である。
(エ)平成24年7月1日以降の賃金の差額
a原告は,平成24年7月1日の準社員就業規則,準社員賃金規程の
変更により,年間の賃金が37万5558円減少した。
すなわち,平成24年6月30日まで,原告の基本日額は6850
円,勤務日数は年290日であったが,同年7月1日の準社員就業規
則,準社員賃金規程の変更により,基本日額は7870円,勤務日数
は年259日に変更された(原告は,損害との関係では,勤務日数が
290日から259日に変更されたと主張する。)。原告の労働時間を
1日平均10時間とすると,平成24年6月30日までの原告の賃金
は,日額1万0519円(6850円+6850円÷7時間×1.25×3時間≒
1万0519円),年額305万0510円(1万0519円×290日=305
万0510円)であったが,変更後の原告の賃金は,日額1万0328
円(7870円+7870円÷8時間×1.25×2時間≒1万0328円),年額2
67万4952円(1万0328円×259日=267万4952円)となった
から,準社員就業規則,準社員賃金規程の変更により,原告の賃金は
年37万5558円(305万0510円-267万4952円=37万5558円)
減少した。
b原告を含む準社員は,正社員との間で,年間賞与額の差が40万円
あったから(前記(イ)a),原告と正社員との間の年間の賃金の差額は,
上記40万円と前記aの準社員就業規則,準社員賃金規程の変更によ
る減少分37万5558円との合計77万5558円となった。その
ため,原告と正社員との間の月額の賃金の差額は,6万4630円(77
万5558円÷12か月≒6万4630円)であった。
(オ)慰謝料
原告は,被告によるパートタイム労働法8条1項に違反する差別的取
扱いにより精神的苦痛を受け,その慰謝料は100万円を下らない。
(カ)弁護士費用
被告がパートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いをしたこ
とによる不法行為と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は20
万円である。
ウ請求
(ア)平成21年4月1日から平成24年3月31日までの損害
平成21年4月1日から平成24年3月31日までの損害は,その期
間の賃金等の差額142万2921円(前記イ(イ)b(c)),慰謝料100
万円(前記イ(オ)),弁護士費用20万円(前記イ(カ))の合計262万2
921円である。
原告は,不法行為に基づき,262万2921円及びこれに対する平
成24年3月31日までの賃金の支払期日(平成24年4月25日)の
後であり不法行為の後である平成24年9月19日(訴状に代わる準備
書面送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による
遅延損害金の支払を求める。
(イ)平成24年4月1日から同年6月30日までの損害
平成24年4月1日から同年6月30日までの損害は,その期間の賃
金等の差額11万8578円(前記イ(ウ)c)である。
原告は,被告に対し,不法行為に基づき,11万8578円及びこれ
に対する平成24年6月30日までの賃金の支払期日(平成24年7月
25日)の後であり不法行為の後である平成25年9月25日(平成2
5年9月19日付け請求の拡張申立書の送達の日の翌日)から支払済み
まで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(ウ)平成24年7月1日以降の損害
平成24年7月1日以降の原告と正社員との間の月額の賃金の差は,
6万4630円(前記イ(エ)b)であり,同年8月25日から平成25年
3月25日までに支払期日の到来する差額(平成24年7月分から平成
25年2月分までの賃金の差額)の合計及び各支払期日の翌日から商事
法定利率年6分の割合による遅延損害金は,別紙3未払い時間外労働・
休日労働手当遅延利息計算書(別紙3未払い時間外労働・休日労働手当
遅延利息計算書は,平成25年4月4日付け請求の拡張の訂正申立書の
別紙と同じ内容である。)記載のとおりであり,平成25年3月26日の
時点における差額の合計は51万7040円,同日までの利息の合計は
8923円であり,それらの合計は52万5963円である。また,平
成25年4月25日に支払期日の到来する差額(平成25年3月分の賃
金の差額)は6万4630円である。
したがって,原告は,被告に対し,不法行為に基づき,平成24年8
月25日から平成25年3月25日までに支払期日の到来する差額(平
成24年7月から平成25年2月までの賃金の差額)の合計52万59
63円及びうち51万7040円に対する平成25年3月27日から支
払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め,
また,平成25年4月25日限り,同日に支払期日の到来する差額(平
成25年3月分の賃金の差額)6万4630円の支払を求める。
(2)被告の主張
原告の主張は争う。
7争点(7)(パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づ
く損害賠償請求権の消滅時効)
(1)被告の主張
アパートタイム労働法8条1項に違反したことによって不法行為が成立す
るとすれば,その損害は,通常の労働者の賃金と短時間労働者の賃金の差
額である。賃金請求権の消滅時効期間は2年であるから,パートタイム労
働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害賠償請求権の消
滅時効も2年と解すべきである。
イ被告は,原告に対し,平成24年10月29日の本件の第1回弁論準備
手続期日において,被告作成の同月24日付け第1準備書面を陳述するこ
とにより,前記アの2年の消滅時効を援用した。
(2)原告の主張
被告の主張は争う。
8争点(8)(準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束
の有無)
(1)原告の主張
原被告間には,原告が準社員として3年間勤務した後に被告が原告を正社
員として雇用するという約束があった。
原告は,準社員として3年以上勤務したから,上記の約束に基づき,正規
労働者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める。
(2)被告の主張
原告の主張は争う。
原被告間には,原告が準社員として3年間勤務した後に被告が原告を正社
員として雇用するという約束はなかった。
第4判断
1原被告間の雇用関係の実態
後掲各証拠によれば,原被告間の雇用関係の実態は,次のとおりであったも
のと認められる。
(1)準社員の労働契約の更新の手続について
ア(ア)労働契約の更新について,準社員就業規則37条には,次のように定
められていた(乙11)。
「①第30条により採用された者と雇用契約を締結する。なお,雇用
契約書には契約更新の有無を必ず明示する。
②契約期間満了時における契約の更新および退職の判断基準は次に
よる。ただし,第1項により予め雇用契約の更新を行わない旨定め
た準社員を除く。
1.契約期間満了時以降の業務量
2.勤務成績・勤務態度
3.職務遂行能力
4.会社の経営状況
5.そのほか前各号に準ずる事項
③前項に基づき契約更新を行う場合は,契約期間満了の前までに本
人と面談の上,過去の勤務状況等に基づく新雇用条件を提示し,再
契約の有無を確認する。」
(イ)被告の人事労務グループ作成名義の平成24年5月付けの「準社員
『就業規則』『賃金規程』の改訂について」(乙28)には,雇用契約期
間,契約更新について,次のとおり記載されていた。
「(5)雇用契約期間
『4~3月』から『7~6月』に変更します。(2012年7月よ
り実施)
・変形労働時間制を,1か月単位から1年単位に変更する際に,起
算日を正社員と統一する必要があることから,雇用契約期間を変
更するものです。
【注】(NBP人事労務編より)
*契約更新の有無は,契約期間満了時の業務量や勤務成績・能力,
会社の経営状況等を考慮して判断するものであり,自動更新では
ありません。
*契約更新の際は,必ず面談を実施し,更新の有無とその理由,次
回更新時の判断基準を明確に伝えて下さい。
*契約更新に期待を持たせるような言動はしないで下さい。」(乙2
8の7頁)
(ウ)契約更新について,原被告間の,平成16年10月15日ないし平成
17年4月14日を期間とする労働契約の契約書(乙1),には,「雇用
契約については,上記契約期間満了をもって終了とする。」と記載されて
おり,平成18年4月1日以降の各1年を期間とする労働契約の契約書
(乙2ないし8)には,「契約更新の有無については,契約期間満了時の
業務量,乙の勤務成績・能力,会社の経営状況等を考慮のうえ,決定す
る。」(上記の「乙」とは,原告を指す。)と記載されていた。
イ(ア)前記ア(イ)の被告の人事労務グループ作成名義の平成24年5月付け
の「準社員『就業規則』『賃金規程』の改訂について」(乙28)は,そ
の作成日付及び内容からすると,平成24年7月1日の準社員就業規則,
準社員賃金規程の変更に備えて作成されたものと認められ,そこに契約
更新に当たっての注意事項等が記載されていたとしても,それより前の
平成18年4月1日以降の原被告間の労働契約の更新の際に面談や説明
が行われていたことを裏付けるとはいえない。
(イ)被告の人事労務グループの副部長であるEは,その証言において,各
事業所に対し,契約更新に当たり面接をするように指示し,その指示が
遵守されているとの認識である旨述べるが(証人E〔6,7頁〕),その
根拠として,事業所監査において事業所長に確認をしていることを挙げ
るのみであり(証人E〔7頁〕),契約更新をした従業員に対して面接の
有無を確認するなどの裏付け調査を行ったとは認められないから(証人
E〔22頁〕),Eの上記証言によって,契約更新に際して面接が行われ
ていることが立証されるとはいえない。
(ウ)また,Cは,その証言において,契約更新の際に,毎回,「契約更新
の有無については,契約期間満了時の業務量,乙の勤務成績・能力,会
社の経営状況等を考慮のうえ,決定する。」との契約書記載の事項(前記
ア(ウ))を従業員に説明すると述べる(証人C〔6,7頁〕)。
しかし,原告は,その本人尋問(原告本人〔前半10,11頁,後半
10,33頁〕)において,契約更新の際に面接があったことを否定して
いる上,証人Cの証言によっても,「正直言いまして,今の職場は,移転
後はしっかりした会議室がありますので,以前の職場の場合,しっかり
とした会議室というのがありませんでしたので,従業員控室で,ちょっ
と座りなさいといって座らせて対面で話するのが主です。だけど,準社
員の中には,済みません,ちょっと忙しいんですよという人もいますの
で,立ち話でしながら,こうこうこうと。でも幾ら立ち話しでも給与の
問題と,それから期間の問題,期間の途中で場合によっては相談するこ
ともあると,これは,必ず言うようにしております。」(証人C〔7頁〕)
というのであり,面接の予告もせず,十分な時間も確保せず,いきなり
従業員に対し,期間の限定について述べるというのであり,その説明の
内容も,期間の途中で場合によっては相談することもあるという,必ず
しも内容が明確でない説明をしているというにとどまっており,仮に上
記のCの証言のように従業員に説明をしていたとしても,労働期間の制
限があることについて従業員の理解を得られるような説明をしていたと
は認められない。
(エ)したがって,就業規則に,契約更新の際に面談すべきことが記載され
ていたとしても(前記ア(ア)),原告の労働契約の更新に際して必ず面接
が行われていたとは認められない。また,準社員の労働契約の契約書に,
契約更新の有無について考慮すべき事由が記載されており(前記ア(ウ)),
仮に何らかの形により面接が行われたとしても,前記(ウ)のとおり,労働
期間の制限があることについて従業員の理解を得られるような説明をし
ていたとは認められない。
(2)準社員の更新拒絶の件数について
準社員ドライバーの有期労働契約についての更新拒絶の件数(更新拒絶さ
れた者の人数)は,別紙4(別紙4は,乙16の3枚目と同じ内容である。)
のとおりであり,全国でも少なく,大分事業所では平成19年ないし平成2
4年の6年間に2件(2人)あったのみであった。別紙1に示された正社員
以外の社員(シニア社員,準社員,パート社員)のうちでは,準社員が大き
な割合を占めていたものと推認され,その準社員の総数と比べると,更新拒
絶された者の割合は少なかったものと認められる。実際には,ほとんどの準
社員が契約を更新していた(証人E〔19ないし21頁〕,証人C〔23頁〕)。
(3)転勤,役職への任命等の点における正社員と準社員の差の有無について
ア転勤,役職への任命等
(ア)転勤・出向
a正社員就業規則40条1項は「会社は,業務のつごうにより社員に
就業の場所または従事する業務の変更を命ずることがある。」と定め,
同条2項は「前項の場合,本人の意志を努めて考慮するが,正当な理
由がないときはこれを拒むことができない。」と定めている(乙10)。
また,正社員就業規則47条1項は「会社は,業務のつごうにより社
員を関連会社に出向させることがある。」と定め,同条2項は「前項の
場合,本人の意志を努めて考慮するが,正当な理由がないときは,こ
れを拒むことができない。」と定めている(乙10)。正社員就業規則
3条によれば,正社員就業規則のうち準社員に適用されるのは,第5
章(安全および衛生),第6章(災害補償)のみであり,上記の40条,
47条が規定されている第4章(人事)は準社員には適用されず,正
社員に適用される(乙10)。
他方,準社員就業規則38条は「会社は,準社員に転居を必要とす
る就業場所の変更を命ずることはない。」と定め,準社員就業規則39
条は「会社は,準社員に転居を必要とする関係会社等への出向を命じ
ることはない。」と定める(乙11)。
b正社員ドライバーの転勤・出向の実績は,別紙5(別紙5は乙16
の2枚目と同じ内容である。)のとおりであった(乙16,証人E〔6,
30頁〕)。これによれば,全国で,管外転勤は,平成18年2名,平
成19年3名,平成20年3名,平成22年2名であり,いずれも九
州管外における異動であった。他社出向は,平成21年に5名あった
他はなかった。そして,九州管内の異動は,平成10年8名,平成1
1年11名,平成12年14名,平成13年9名で,これらの理由は,
いずれもドライバー余剰のためであり,平成14年以降,九州管内で
は転勤・出向はなかった。
なお,上記の別紙5の記載以外には,北海道で平成24年10月1
日付けの転勤(同年9月26日通知)があり(乙22),関東支店管内
で,出向先から戻る同年2月1日付け(同年1月31日通知),及び同
年5月1日付け(同年4月27日通知)の異動があった(乙23,2
4)。別紙1に示された正社員ドライバーの総数と比べると,転勤,出
向をした者の数は少なかったものと認められる。
他方,準社員には,転勤・出向した者はいなかった(証人E〔2,
3頁〕)。
(イ)チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者への任命
a被告において,グループ長は,5ないし7名の運転手からなるグル
ープの責任者であり,チーフは,複数のグループ長を監督する立場に
ある(乙20,21,証人E〔11,12頁〕,証人C〔19頁〕)。
運行管理者は,貨物自動車運送事業法に基づき,一般貨物自動車運
送事業者が,事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせ
るため,選任を義務づけられているものであり,運行管理者の選任,
解任は,国土交通大臣に届け出なければならないとされている(貨物
自動車運送事業法18条)。
運行管理補助者は,運行管理者の履行補助者であり,点呼に関する
業務の一部などを行うことができるが,選任,解任について監督官庁
への届出は必要ない(乙17)。
b(a)被告の準社員賃金規程には,準社員がチーフ,グループ長になっ
た場合の職務手当,準社員が運行管理者,整備管理者,毒物・劇物
取扱主任者,自動車整備主任者等の法規管理者になった場合の法規
管理者手当を定めた規定があったが(乙13の4条,5条),平成
24年7月1日の準社員賃金規程の変更の際に削除された(乙31,
証人E〔13頁〕)。
(b)被告においては,平成20年4月1日以前は,準社員の労働条件
を定めた準社員就業規則,準社員賃金規程は,各支店で独自に定め
て運用管理しており,労働時間や賃金の計算方法等が支店や事業所
により異なっていた。そして,1日の所定労働時間が7時間の準社
員がおり,準社員がチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理補
助者(運行管理代務者)に任命されていることもあった。
(c)平成20年4月1日,準社員就業規則,準社員賃金規程,それら
の運用管理を規定上全国統一基準としたが,準社員の就業状況等を
考慮し,1日の所定労働時間については当面7時間と8時間を併用
するが順次8時間に統一すること,準社員がチーフ,グループ長や
運行管理者となっている場合は速やかに解任することとした。その
後,多くの支店・事業所では,全国統一基準による運用管理がされ
たが,一部の支店・営業所では,1日の所定労働時間が7時間の準
社員がおり,準社員がチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理
補助者を務めていた。
(d)チーフ,グループ長に任命されているドライバーは全国で410
名余りいるが,平成24年3月の時点で,準社員のチーフは1名,
グループ長は4名存在した。この準社員のチーフは,四日市事業所
で定年前からチーフに任命されており,平成18年10月の定年後,
シニア社員として再雇用され,平成21年10月,準社員として再
雇用されたものであり,平成24年6月末にチーフを解任された。
また,上記グループ長4名は,隠岐事業所1名,福岡事業所2名,
鹿児島事業所1名であったが,平成24年7月1日付けでいずれも
正社員に登用された。平成24年3月の時点で,運行管理者に任命
されていた準社員はおらず,運行管理補助者に任命されていた準社
員は大分事業所に3名存在したが,これらの者は,同年4月7日,
同年5月28日,同年6月18日に解任された。平成24年7月1
日に準社員就業規則,準社員賃金規程の変更を行い,準社員の1日
の所定労働時間を8時間に統一し,全国統一基準の実施を徹底した。
(上記(b)ないし(d)につき,乙18,27,34,35,証人E〔1
3,14,16,25ないし29,31,32頁〕,証人C〔18,
19頁〕,弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年3月9日付け第3
準備書面〕。
なお,Eは,その証人尋問〔14頁〕において,準社員は運行管
理者になれない旨証言するが,上記(a)記載のとおり,被告の準社員
賃金規程には,準社員が運行管理者,整備管理者,毒物・劇物取扱
主任者,自動車整備主任者等の法規管理者になった場合の法規管理
者手当を定めた規定があったことからすると,従前は,準社員が運
行管理者を務める場合があったものと推認される。)
イ転勤等,役職への任命等に関する差の有無
(ア)就業規則上,転勤・出向は,正社員にはあるが,準社員にはなく(前
記ア(ア)a),実際にも,正社員には転勤・出向の実績はあるが,準社員
には,転勤・出向した者がなかった(前記ア(ア)b)。しかし,正社員の
転勤自体,少なく,九州管内では,平成14年以降,転勤・出向はなか
った(前記ア(ア)b)。
被告の準社員賃金規程には,平成24年7月1日の準社員賃金規程の
変更の際に削除されるまで,準社員がチーフ,グループ長になった場合
の職務手当を定めた規定があった(前記ア(イ)b(a))。平成20年3月3
1日までは,準社員をチーフ,グループ長や運行管理者,運行管理補助
者に任命することが行われており,同年4月1日以降,準社員について,
チーフ,グループ長や運行管理者から解任することとされたが,依然と
して準社員がチーフ,グループ長や運行管理者に任命されている例があ
った(前記ア(イ)b(b),(c))。平成24年3月の時点で,運行管理者に任
命されていた準社員はいなかったが,運行管理補助者に任命されていた
準社員は大分事業所に3名存在した(前記ア(イ)b(d))。運行管理補助者
は,運行管理者の履行補助者ではあるが,点呼の一部を行うことができ
る(前記ア(イ)a)など,事業用自動車の運行の安全の確保に関して重要
な業務を担当しているものということができる。
そうすると,正社員と準社員との間には,転勤・出向の点において,
大きな差があったとは認められない。また,正社員と準社員は,チーフ,
ループ長,運行管理者,運行管理補助者等への任命の点において,平成
20年3月31日までは差はなく,同日の後,準社員のチーフ,グルー
プ長や運行管理者は減少したが,平成24年3月の時点で,運行管理補
助者に任命されていた準社員は大分事業所に3名存在したから,チーフ,
ループ長,運行管理者,運行管理補助者への任命の有無によって,正社
員と準社員の間で,配置の変更の範囲が大きく異なっていたとまではい
えない。
(イ)なお,被告は,準社員ドライバーは,正社員ドライバーと異なり,新
規業務,事故トラブルへの対応など,緊急の対処が必要な業務,対外的
な交渉が必要な業務には従事しないと主張し(前記第3,5(2)),Eは,
その旨証言する(証人E〔3,4,23ないし25頁〕)。
しかし,これらの業務は,その性質に照らすと,営業や庶務を主に担
当する支店や事業所の事務職の職責に属するものと解され,正社員ドラ
イバーがそれに関与することがあるとしても,ドライバーという職務上
の地位に鑑みれば,責任者を補助する立場で関与するにとどまると解さ
れる。また,これらの職務を行うドライバーは,経験が長く交渉等の能
力のある者であり,正社員の中でもそのような職務に就く者は少なく(証
人E〔23ないし25頁〕,証人C〔25頁〕),ドライバーがそのような
業務に関与する頻度も明らかでないことからすると,仮に,ドライバー
のうちでそのような業務にかかわる者が正社員のみであったとしても,
それをもって,正社員ドライバーと準社員ドライバーの職務内容の相違
点として重視することはできない。
(ウ)また,正社員ドライバーの中には,事務職に職系転換して主任,事業
所長又は課長に任命された者があるのに対し,準社員には,そのように
事務職に職系転換した者はいない(乙45)。しかし,正社員ドライバー
の中で事務職に職系転換した者の人数は,全国で,平成15年4名,平
成16年2名,平成17年2名,平成19年3名,平成21年3名,平
成23年2名,平成24年1名,平成25年1名であり(乙45),その
人数は,正社員ドライバーの総数に比べて非常に少なく,事務職への職
系転換は,正社員ドライバーにとってもごく例外的な扱いであると認め
られ,正社員の通常の配置とは認められない。したがって,事務職への
転換の点をもって,正社員ドライバーの配置の範囲が準社員ドライバー
と異なるとはいえない。
2争点(1)(期間の定めのない労働契約の終了との同一性,更新の合理的期待)
について
(1)原被告間の労働契約は,前記第2,2(2)のとおりであり,期間の定めのあ
る有期労働契約であったが,平成18年4月1日以降,継続して更新されて
いた。原告の業務は,前記第2,2(3)のとおりであり,正社員の業務と同じ
であり,原告の労働時間,賃金は,前記第2,2(5)イのとおりであった。そ
して,準社員就業規則には,準社員の労働契約を更新する際に面談すべきこ
とが記載されていたが,原告の労働契約の更新に際して必ず面接が行われて
いたとは認められず,また,準社員の労働契約の契約書に,契約更新の有無
について考慮すべき事由が記載されており,仮に何らかの形により面接が行
われたとしても,労働期間の制限があることについて従業員の理解を得られ
るような説明をしていたとは認められない(前記1(1)イ(エ))。また,準社員
の有期労働契約についての更新拒絶の件数は,少なかった(前記1(2))。そ
して,正社員と準社員との間には,転勤・出向の点において,大きな差があ
ったとは認められず,チーフ,グループ長,運行管理者,運行管理補助者へ
の任命の有無によって,正社員と準社員の間で,配置の変更の範囲が大きく
異なっていたとまではいえない(前記1(3)イ(ア))。さらに,準社員ドライバ
ーが,正社員ドライバーと異なり,緊急の対処が必要な業務,対外的な交渉
が必要な業務に従事しないことは,正社員ドライバーと準社員ドライバーの
職務内容の相違点として重視することはできず(前記1(3)イ(イ)),正社員ド
ライバーの中には,事務職に職系転換して主任,事業所長又は課長に任命さ
れた者があるのに対し,準社員に,そのように事務職に職系転換した者はい
ないとしても,この点をもって,正社員ドライバーの配置の範囲が準社員ド
ライバーと異なるとはいえない(前記1(3)イ(ウ))。
(2)前記(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の有期労
働契約は,過去に反復して更新されたことがあるものであって,その契約期
間の満了時にその有期労働契約を更新しないことによりその有期労働契約
を終了させることが,期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解
雇の意思表示をすることによりその期間の定めのない労働契約を終了させ
ることと社会通念上同視できると認められ(労働契約法19条1号),仮に
そうでなくとも,原告において,その有期労働契約の契約期間の満了後にそ
の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が
あるものであると認められる(労働契約法19条2号)。
3争点(2)(更新拒絶の相当性の有無)について
(1)被告が原告に対して労働契約の更新をしないことを通知した通知書に記
載されていた更新拒絶の理由は,「本件訴訟において様々な点において事実
と異なる主張をしていること」,「裁判と無関係の第三者である被告の従業員
を多数裁判に巻き込んでいること」の2点であり(前記第2,2(8)ア),被
告は,更新拒絶の理由として,さらに,原告が,交通事故のニュースを見て,
被告大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をしたことを
主張する(前記第3,2(2)イ)。
(2)事実と異なる主張をしているとの点について
ア(ア)被告は,原告の「ある親しい正社員から,『大分事業所長から,乙2
1の4頁6に記載されている内容とほぼ同じ趣旨の陳述書の作成を依頼
され,事実と異なるため署名できないと拒否した。』という話を聞いてい
る。」(原告作成の平成25年1月24日付け準備書面の4頁4ないし6
行目)という主張の内容は虚偽であると主張する(前記第3,2(2)ア(ア))。
そして,その理由として,大分事業所のグループ長3名から聴取した内
容に基づいて作成した陳述書を,そのうちの1名にはDが示し,そのう
ちの2名にはCが示して陳述書の作成を求めたところ,3名はいずれも,
陳述書の内容は自分達の話したとおりであるが,裁判と原告にかかわり
たくないので,裁判所へ提出することは勘弁してほしいと懇請し,Dと
Cは,グループ長が作成した陳述書を裁判所に提出することを断念した
と主張する(前記第3,2(2)ア(ア))。Dは,その陳述書(乙32)で同
旨を述べ,Cは,その陳述書(乙33),証人尋問(証人C〔11ないし
13頁〕)で同旨を述べる。
(イ)これに対し,原告は,Cらから陳述書の作成を依頼されたと述べてい
た同僚二人のうちの一人からは,「裁判にかかわりたくないから署名押印
を断ったと言った。」旨聞いていたが,もう一人からは,「陳述書の内容
が事実と異なるから署名押印できないと言った。」旨聞いていたと主張し
(前記第3,2(1)イ),原告本人尋問(原告本人〔前半23ないし26
頁,後半25ないし27,34頁〕)でそれに沿う供述をする。
イ(ア)被告は,前記ア(ア)のとおり,大分事業所のグループ長3名はいずれも,
陳述書の内容は自分達の話したとおりであるが,裁判と原告にかかわり
たくないので,裁判所へ提出することは勘弁してほしいと懇請したと主
張するが,仮にそれが真実であるとしても,その3名が,それと同じこ
とを原告に対して述べたかどうかは明らかではなく,DとCに対しては
DとCに迎合することを述べ,原告に対しては原告に迎合することを述
べた可能性もある。Cは,その陳述書(乙33〔6頁〕)において,「同
僚も,F氏から声を掛けられると,表面上はそれとなくF氏と言葉を交
わしたりして大人の対応をしていますが,できるだけ接触しないで,自
分に任せられた業務に専念したいというのが,大分事業所で働いている
者の本音です。」と述べるが,原告の同僚の心情がそのようなものである
とすれば,原告に対しては,原告に迎合することを述べた可能性は相当
程度あったと考えられる。
このようなことを考慮すると,原告の「ある親しい正社員から,『大分
事業所長から,乙21の4頁6に記載されている内容とほぼ同じ趣旨の
陳述書の作成を依頼され,事実と異なるため署名できないと拒否した。』
という話を聞いている。」との主張の内容が虚偽であると認めるに足りる
証拠があるとはいえない。
(イ)また,原告の本件訴訟における主張中に,被告の主張と異なる点があ
るとしても,その故に,原告が事実と異なる主張をしているとはいえな
い。
そうすると,被告が更新拒絶の理由として主張する「本件訴訟におい
て様々な点において事実と異なる主張をしていること」との事実を認め
ることはできない。
(3)被告の従業員を多数裁判に巻き込んでいるとの点について
原告は,本件訴訟において,同僚の陳述書(甲18の1ないし8)やアン
ケート(甲26の1ないし8)を提出しているが,陳述書は作成者の氏名を
秘して提出しており,アンケートは無記名であるから,陳述書の作成者やア
ンケートの回答者が,陳述書やアンケートを作成したことによって不利益を
受けるものとは認められない。
その他に,原告が被告の従業員を多数本件訴訟に巻き込んでいる事実は認
められない。
したがって,被告が更新拒絶の理由として主張する「裁判と無関係の第三
者である被告の従業員を多数裁判に巻き込んでいること」との事実を認める
ことはできない。
(4)交通事故のニュースを見て,被告大分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得
ないような発言をしたとの点について
被告は,原告が,平成24年4月23日に京都府で発生した交通事故(登
校中の小学生の列に自動車が突っ込んで小学生等が死傷した事件)のニュー
スを見て,タンクローリーで突っ込んだらどうなるんだろうと話し,被告大
分事業所幹部が警戒感を抱かざるを得ないような発言をし,上司との間の信
頼感を損ねたと主張し(前記第3,2(2)イ),Cは,その証人尋問(証人C
〔14頁〕)で同旨を述べる。
しかし,原告が「タンクローリーで突っ込んだらどうなるんだろう」と話
したとしても,その意図は,これを聞いただけでは明らかでなく,それが安
全性に対する認識の欠如を示すもの又は被告との信頼関係を破壊するもので
あるとは直ちには認められない。そして,仮にCが原告の上記の発言を聞い
て,原告の安全性に対する認識に問題があり,それが,更新拒絶の理由とな
るほどに被告との信頼関係を破壊すると考えていたのであれば,その直後に,
原告に対して安全に関する指導をするなどしたはずであるが,その後にCが
原告に対して安全に関する指導などをしたことは窺われないから,そのこと
に照らすと,Cも,原告の発言によって被告との信頼関係が破壊されるとは
考えていなかったものと推認される。このような事実を踏まえると,原告の
発言は,安全性に対する認識の欠如を示すもの又は被告との信頼関係を破壊
するものであったとは認められず,更新拒絶を裏付ける客観的に合理的な理
由の存在を裏付けるものであるとは認められない。
(5)更新拒絶の相当性
被告は,平成25年3月23日,原告に対し,同月31日をもって労働契
約を終了し,労働契約の更新をしないことを通知した(前記第2,2(8)ア)
のに対し,原告は,平成25年3月25日,上記通知の撤回を求め(前記第
2,2(8)イ),原告は,平成25年3月27日,被告に対し,同月25日の
上記の撤回の要求は,労働契約法に定められた有期労働契約の更新の申込み
である旨を通知した(前記第2,2(8)ウ)から,原告は,契約期間が満了す
る日までの間に有期労働契約の更新の申込みをしたものと認められる。
そして,被告が更新拒絶の理由として挙げる「本件訴訟において様々な点
において事実と異なる主張をしていること」,「裁判と無関係の第三者である
被告の従業員を多数裁判に巻き込んでいること」は,いずれも事実として認
めることができない(前記(2),(3))。被告における原告の職務は,石油製品
という危険物の輸送であるが,職務の遂行について原告に過誤があったこと
は認められず(証人C〔33頁〕),本件訴訟における原告及び被告の主張立
証の内容,訴訟活動の態様に照らして,原被告間で本件訴訟が係属している
ことにより,被告における原告その他の従業員による職務遂行の安全が害さ
れるとは認められない。
また,原告が交通事故のニュースを見て,被告大分事業所幹部が警戒感を
抱かざるを得ないような発言をしたとの点についても,原告の話は,安全性
に対する認識の欠如を示すもの又は被告との信頼関係を破壊するものであっ
たとは認められず,更新拒絶を裏付ける客観的に合理的な理由の存在を裏付
けるものであるとは認められない(前記(4))。
したがって,被告が原告による有期労働契約の更新の申込みを拒絶したこ
とは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められな
い。
4争点(3)(労働契約の更新に基づく請求の成否)について
(1)前記3(5)のとおり,被告が原告による有期労働契約の更新の申込みを拒
絶したことは,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認
められないから,被告は,平成25年3月31日までの労働契約の内容であ
る労働条件と同一の労働条件で原告による申込みを承諾したものとみなされ
る。
(2)地位確認
被告は,原告が労働契約上の地位にあることを争っているから,原告は,
労働契約上の地位にあることの確認を求めることができる。
(3)月額賃金
ア基本給
前記(1)のとおり,労働契約が更新されたとみなされるが,原告は平成2
5年4月分以後の賃金の支払を受けていない(弁論の全趣旨)。
賃金の支払日は,毎月末日締め翌月25日払(支払日が休日に当たる場
合はその前日)である(乙1ないし8)。
平成25年2月及び3月の基本給は,いずれも16万5270円である
ことから(甲44,45),同年4月以降の基本給は,月額16万5270
円であると認められる。
したがって,原告は,被告に対し,労働契約に基づき,基本給として,
平成25年5月25日から本判決確定の日まで,毎月25日限り月16万
5270円の割合による金員の支払を求めることができる。
イ手当等
平成25年3月分まで,原告に支給されていた月額賃金には,基本給(基
本月額)の他,通勤手当,トレーラー手当,無事故表彰金,時間外手当(普
通残業手当,深夜作業手当)が含まれていた(甲44,45)。
これらのうち,通勤手当は,その支給の根拠である準社員賃金規程12
条(乙13)が,実際に通勤に要する費用に応じて支給額を定めているこ
とから,通勤に要した実費を補償するものであると認められる。トレーラ
ー手当は,その支給の根拠である準社員賃金規程6条(乙13)により,
トレーラー車に乗務した場合1日(暦日)につき600円と定められてい
るから,実際にトレーラーの運転に従事したことに対して支給されるもの
と認められる。無事故表彰金は,その性質に照らし,実際に無事故であっ
たことを表彰するために支給されるものと認められる。したがって,上記
の通勤手当,トレーラー手当,無事故表彰金は,更新拒絶がされて実際に
就労していない期間については請求できないものと解される。
時間外手当は,準社員就業規則12条が「会社は業務のつごうにより,
必要があるときは,就業時間外あるいは休日に勤務させることがある。」(乙
11)と定めていることから,原告が被告から時間外勤務を命じられて現
実に就労した場合に発生するものであると認められるので,更新拒絶がさ
れて実際に就労していない期間については請求できないものと解される。
ウ賞与
平成25年4月1日以降,原告に賞与を支給するとの査定がされたこと
は認められないから,原告は,賞与を請求することはできない。
エ慰謝料
更新拒絶の経緯は前記第2,2(8)のとおりであり,前記3(5)のとおり,
被告が原告による有期労働契約の更新の申込みを拒絶したことは,客観的
に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であるとは認められず,違法であ
ると認められる。そして,①原告は,職務の遂行について過誤があったと
は認められないこと(証人C〔33頁〕),②被告は,更新拒絶の理由とし
て,本件訴訟における原告の主張や訴訟活動に関連することを含めた事情
を主張するが,更新拒絶の理由として主張したことは事実として認められ
ないこと(前記3(1)ないし(3)),③被告は,原告との間の本件訴訟を追行
中に,本件訴訟における原告の主張や訴訟活動に関連することを理由とし
て更新拒絶しており,更新拒絶をするに当たって弁護士等の法律専門家の
助言を得ようとすれば容易に得られたにもかかわらず,そのような助言を
得た上で更新拒絶を行った形跡は窺われないこと,なども考慮すると,違
法な更新拒絶を行うにつき,被告には故意又は少なくとも過失があったも
のと認められる。そうすると,被告による更新拒絶は不法行為を構成する
ものと認められる。
被告による違法な更新拒絶により,原告は精神的苦痛を受けたものと認
められ,その損害は,雇用契約上の権利を有する地位にあることが確認さ
れ,賃金が支払われることによっては賄うことのできないものと解され,
その慰謝料は50万円と認めるのが相当である。
したがって,原告は,被告に対し,慰謝料50万円及びこれに対する不
法行為時である平成25年3月25日(被告が更新拒絶をした日)(前記第
2,2(8))から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の
支払を求めることができる。
5争点(4)(平成24年7月1日に変更された就業規則の原告への適用)につい

被告は,平成24年7月1日,準社員就業規則,準社員賃金規程を変更し,
被告の原告以外の準社員は,変更された就業規則,賃金規程に則った新たな雇
用契約書に全員署名押印したが,原告は,新たな雇用契約書には署名押印しな
かった(前記第2,2(6))。そこで,就業規則の変更が労働契約法10条を充
足し,変更された就業規則が原告に適用されるかについて検討する。
(1)各要件
ア必要性
被告は,原告がパートタイム労働法8条1項違反を主張して大分労働局
長に援助を求め,同法22条に基づいて調停の申請を行い,更に労働審判
を申し立てるなどした後に,上記のとおり準社員就業規則,準社員賃金規
程を変更したものであるから,被告は,1日の所定労働時間が7時間の準
社員がいることはパートタイム労働法に反するとの原告の指摘を受け,こ
れを改めるために,準社員の1日の所定労働時間を,正社員と同じ8時間
に統一したものと推認され,就業規則の変更の必要性はあったものと認め
られる。
イ賃金の変化
(ア)被告は,労働時間が7時間から8時間に変わる準社員について,1か
月の総労働時間を一定にした場合に1か月の総賃金額が変わらないよう
に,準社員就業規則,準社員賃金規程を変更したものと認められる(乙
28,証人E〔15.16頁〕)。
(イ)aところで,準社員就業規則,準社員賃金規程の変更前の原告の1日
の所定労働時間は7時間,基本日額は6850円であったから,1日
10時間労働したとすると,1日の賃金は1万0519円(6850円+
6850円÷7時間×1.25×3時間=1万0519円)であったのに対し,変
更後の原告の1日の所定労働時間は8時間,基本日額は7870円で
あったから,1日10時間労働したとすると,1日の賃金は1万03
29円(7870円+7870円÷8時間×1.25×2時間=1万0329円)で
あり,これのみを比べると,変更後は1日の賃金が減少したように見
られる。
bしかし,1年の勤務日数も変更されたから,基本日額に1年の勤務
日数を乗じた基本給は,変更前は199万3350円(6850円×291
日=199万3350円)であったのに対し,変更後は203万0460
円(7870円×258日=203万0460円)であり,変更により増額して
いる。時間外労働の長短は景気の動向等によって左右され,それに伴
って時間外手当等は増減するが,そのような増減のない基本給が増額
されたことは,原告にとって有利な面があるといえる。
また,変更前は,勤務日数が年291日であったのに対し,変更後
は勤務日数が年258日で,勤務日数が年33日減少した。この33
日において勤務した場合には,変更前であれば,通常の勤務日の賃金
しか得られなかったのに対し,変更後は,休日の割増賃金を得ること
ができる。そして,変更後にも休日勤務があることが認められるから
(甲38ないし甲44),変更後においても休日に勤務したことにより
その分の割増賃金を得ることができたものと認められる。
変更前の原告の平成23年の1年間の賃金総額は363万5263
円(甲3),1か月当たりの賃金は30万2938円(363万5263円
÷12か月=30万2938円)であり,変更前後を含む平成24年の1年
間の賃金総額は353万9713円(甲33),1か月当たりの賃金は
29万4976円(353万9713円÷12か月=29万4976円)であり,
変更後の平成25年1月ないし3月の原告の賃金総額は107万46
45円(甲34),1か月当たりの賃金は35万8215円(107万
4645円÷3か月=35万8215円)である。1か月当たりの賃金は,平
成23年を基準にすれば,平成24年には7962円減額したものの,
平成25年には5万5277円増額した。これらの賃金額は時間外手
当等を含むものであり,その多寡は,時間外労働の長短等によっても
左右されていると考えられるが,これらの原告が実際に得た賃金額に
照らしても,準社員就業規則の変更によって原告の賃金が減少したと
は認められない。
(ウ)そうすると,前記(イ)aを考慮しても,平成24年7月1日の準社員就
業規則,準社員賃金規程の変更によって原告の賃金が減少したと認め
ることはできない。
ウ手続
(ア)準社員就業規則及び準社員賃金規程の変更については,被告において,
平成24年5月9日に2回,同月10日に2回に分けてWeb会議を開催
し,被告本社の人事労務グループの担当者が,全国の支店の管理職,事
業所長,主任等108名に対し,説明用の資料を配付し,就業規則,賃
金規程の変更の趣旨,経緯,内容等を説明するとともに,事業所長が同
様の内容を準社員に直接説明するように指示した。大分事業所では,事
業所長であるCと主任であるGが,平成24年5月10日の1回目の
Web会議に参加した。
(乙28,弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年3月9日付け第3準備
書面〕)
(イ)大分事業所では,会議室において,平成24年5月21日月曜日の午
後4時30分から午後5時まで第1回目の説明会が開かれ,8名のドラ
イバーが参加し,平成24年5月22日火曜日の午後4時30分から午
後5時まで第2回目の説明会が開かれ,10名のドライバーが参加した。
各説明会においては,「準社員『就業規則』『賃金規程』の改訂について」
(乙28),及び各人宛の「基本日額の変更について」(乙29)の書面
を配布し,就業規則,賃金規程の変更の趣旨,内容,所定労働時間の変
更に伴う基本日額の変更の考え方が説明された。説明会の最後には質問
等が受け付けられたが,質問等はなかった。原告は第2回目の説明会に
参加したが,質問等をすることはなかった。説明会の後においても,就
業規則,賃金規程の変更について,準社員から質問や意見等はなかった。
(乙28,29,弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年3月9日付け第
3準備書面〕)
(ウ)被告の人事労務グループは,平成24年6月25日,全国の事業所に
対し,準社員就業規則,準社員賃金規程の変更内容を記載した書面を掲
示板に2週間掲示して変更の内容及び趣旨を周知するように指示し,大
分事業所では,人事労務グループによる指示後約3週間,同書面を掲示
板に掲示した。これらの掲示の最中及びその後において,被告に対し,
準社員就業規則,準社員賃金規程の変更について質問や苦情等はなかっ
た。
(乙31,弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年3月9日付け第3準備
書面〕)
(2)変更後の就業規則の適用
前記(1)アないしウの事情に照らすと,被告は,変更後の準社員就業規則,
準社員賃金規程を労働者に周知させたものと認められ,準社員就業規則の変
更は,労働者の受ける不利益の程度,労働条件の変更の必要性,変更後の就
業規則の内容の相当性その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理
的なものであると認められる。したがって,原被告間の労働契約の内容であ
る労働条件は,変更後の準社員就業規則に定めるところによるべきものと認
められる。
そうすると,平成24年7月1日以後は,変更後の準社員就業規則,準社
員賃金規程により,原告の1日の所定労働時間は8時間,勤務日数は年25
8日,基本日額は7870円となったものと認められる。
6争点(5)(パートタイム労働法8条1項違反の有無)について
(1)短時間労働者への該当性
原告は,平成24年7月1日,準社員就業規則の変更の適用を受け,1日
の所定労働時間が,7時間から8時間に変更され,正社員と同じになったか
ら,同日以降は,短時間労働者(パートタイム労働法2条)には該当しなく
なったものと認められる。そのため,パートタイム労働法8条1項違反の有
無は,平成24年6月30日までについて検討されるべきものと解される。
(2)通常の労働者と同視すべき短時間労働者への該当性
前記2(1)のような原被告間の労働契約の実情に鑑みると,原被告間の労働
契約は,反復して更新されることによって期間の定めのない労働契約と同視
することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約(パート
タイム労働法8条2項)に該当するものと認められる。そして,原告は,「事
業の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)が当
該事業所に雇用される通常の労働者と同一の短時間労働者であって,当該事
業主と期間の定めのない労働契約を締結しているもののうち,当該事業所に
おける慣行その他の事情からみて,当該事業主との雇用関係が終了するまで
の全期間において,その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内
容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されると見込まれるもの(以下
「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」という。)」(パートタイム労働法
8条1項)に該当したものと認められる。
(3)賃金の決定その他の待遇についての差別的取扱いの有無
ア賞与額
原告を含む準社員は,毎年6月30日と12月31日に各7万5000
円の賞与が支給され,年間賞与額は15万円である(甲5,原告本人〔前
半15頁〕)。他方,原告が平成21年4月1日に正社員に登用されたとし
た場合に受領し得る年間賞与額は,平成21年は55万0305円,平成
22年は55万1287円,平成23年は55万3525円,平成24年
は58万9609円であり(弁論の全趣旨〔被告作成の平成25年6月2
4日付け第6準備書面〕),準社員の年間賞与額15万円とは40万円以上
の差があることが認められる。そのため,この点において,準社員は,賃
金の決定について,正社員と比較して差別的取扱いを受けているものと認
められる。
前記(2)のとおり,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該
当すると認められ,年間賞与額について正社員と準社員に40万円を超え
る差を設けることについて合理的な理由があるとは認められず,このよう
な差別的取扱いは,短時間労働者であることを理由として行われているも
のと認められる。
イ週休日
正社員,準社員のいずれについても,休日は,就業規則により,日曜日,
年末年始(12月31日ないし1月3日),国民の祝日,週休日とされてい
る(乙10の14条,乙11の11条)。しかし,週休日の日数が,平成2
3年7月1日から平成24年6月30日までにおいて,正社員は39日で
あるのに対し,準社員は6日であり,30日を超える差がある(乙10の
14条,乙11の11条)。
この差の日数について,準社員が勤務した場合は通常の賃金しか得られ
ないのに対し,正社員が勤務すれば時間外の割増賃金を得ることができる
から,この点において,準社員は,賃金の決定について,正社員と比較し
て差別的取扱いを受けているものと認められる。
前記(2)のとおり,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該
当すると認められ,週休日の日数について正社員と準社員に差を設けるこ
とについて合理的な理由があるとは認められず,このような差別的取扱い
は,短時間労働者であることを理由として行われているものと認められる。
ウ退職金
正社員には退職金が支給されるのに対し(乙10の34条),準社員には
退職金が支給されず(乙11の29条),このような差を設けることについ
て合理的な理由があるとは認められず,この点において,準社員は,賃金
の決定について,正社員と比較して差別的取扱いを受けているものと認め
られる。
前記(2)のとおり,原告は,通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該
当すると認められ,退職金を正社員に支給し,準社員に支給しないことに
ついて合理的な理由があるとは認められず,このような差別的取扱いは,
短時間労働者であることを理由として行われているものと認められる。
(4)パートタイム労働法8条1項への違反
以上によれば,正社員と準社員である原告の間で,賞与額が大幅に異なる
点,週休日の日数が異なる点,退職金の支給の有無が異なる点は,通常の労
働者と同視すべき短時間労働者について,短時間労働者であることを理由と
して賃金の決定その他の処遇について差別的取扱いをしたものとして,パー
トタイム労働法8条1項に違反するものと認められる。
7争点(6)(パートタイム労働法8条1項に基づく請求の成否)について
(1)正規労働者と同一の地位にあることの確認
原告は,パートタイム労働法8条1項に基づいて,原告が被告の正規労働
者と同一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認,原告が,賃金
の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,被告
の正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する地位にあるこ
との確認を請求する。
しかし,上記の確認の対象である権利義務の内容は明らかではない上,パ
ートタイム労働法8条1項は差別的取扱いの禁止を定めているものであり,
同項に基づいて正規労働者と同一の待遇を受ける労働契約上の権利を有する
地位にあることの確認を求めることはできないと解されるから,上記の地位
確認の請求はいずれも理由がないものと解される。
なお,原告は,平成24年7月1日から,変更後の準社員就業規則,準社
員賃金規程の適用を受け,1日の所定労働時間が正社員と同じ8時間となり,
1年の勤務日数も正社員と同じ258日となったから(前記5(2)),パート
タイム労働法2条の短時間労働者に該当しなくなったものと認められ,平成
24年7月1日以降については,同法8条1項の適用の前提を欠くことにな
り,この点からも,同項に基づく地位確認の請求はできない。
したがって,原告の上記地位確認の請求は,いずれも理由がない。
(2)損害賠償
アパートタイム労働法8条1項に違反する不法行為
パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いは不法行為を構成
するものと認められ,原告は,被告に対し,その損害賠償を請求すること
ができる。
(ア)平成21年4月1日から平成24年3月31日までの賃金等の差額
a賞与の差額
前記6(3)アのとおり,原告は,その年間賞与額が正社員に比べて4
0万円少ない点において差別的取扱いを受けており,それによる損害
は,平成21年4月1日から平成24年3月31日までの3年間にお
ける賞与額の差の合計120万円(40万円×3年=120万円)である
と認められる。
b休日の割増分の差額
前記6(3)イのとおり,原告は,週休日の日数が正社員に比べて少な
い点において差別的取扱いを受けている。
平成21年4月1日から平成24年3月31日までの各年の正社員,
準社員の週休日の日数及びその差は,次のとおり認められる(乙10,
乙11,弁論の全趣旨〔被告平成25年1月28日付け第2準備書面
5頁〕)。
平成21年4月1日ないし平成22年3月31日正社員37日,準
社員8日,差29日
平成22年4月1日ないし平成23年3月31日正社員37日,準
社員7日,差30日
平成23年4月1日ないし平成24年3月31日正社員39日,準
社員7日,差32日
上記によれば,差の合計は91日(29日+30日+32日=91日)と
認められる。
週休日は,法定外休日であるから,その割増率は0.25である。
そして,原告の賃金の基本日額は6850円であった(前記第2,2
(5)イ)。
そうすると,原告が準社員であることにより週休日が少ないことに
よって被った割増分の損害の額は,15万5837円(6850円×0.25
×91日=15万5837円)であると認められる。
c合計
賞与の差額(前記a)と休日の割増分の差額(前記b)の合計は1
35万5837円(120万円+15万5837円=135万5837円)であ
る。
(イ)平成24年4月1日から同年6月30日までの賃金の差額
a賞与の差額
前記6(3)アのとおり,原告は,その年間賞与額が正社員に比べて4
0万円少ない点において差別的取扱いを受けており,平成24年4月
1日から同6月30日までの3か月間における賞与額の差は9万99
99円(40万円÷12か月×3か月=9万9999円)であると認められ
る。
b休日の割増分の差額
平成21年4月1日から平成24年3月31日までの3年間の,正
社員と準社員の週休日の差は合計91日であったから(前記(ア)b),
1か月当たりの週休日の差は2.5278日(91日÷3年÷12か月=
2.5278日)である。そうすると,1か月当たりの割増分の損害の額は,
4328円(6850円×0.25×2.5278日=4328円)であると認められ
る。
したがって,平成24年4月1日から同年6月30日までの3か月
の割増分の損害の額は,1万2984円(4328円×3か月=1万2984
円)であると認められる。
c合計
賞与の差額(前記a)と休日の割増分の差額(前記b)の合計は1
1万2983円(9万9999円+1万2984円=11万2983円)である。
(ウ)平成24年7月1日以降の賃金の差額
前記6(1)のとおり,原告は,平成24年7月1日からパートタイム労
働法2条の短時間労働者に該当しなくなったものと認められるから,平
成24年7月1日以降については,同法8条1項の適用の前提を欠くこ
とになり,同項に違反したことを理由とする不法行為は成立しないもの
と解される。
(エ)退職金を支給しないことによる損害
なお,前記6(3)ウのとおり,準社員である原告は,退職金の支給を受
けられない点で,退職金の支給を受けられる正社員に比べて差別的取扱
いを受けているが,原告は,被告からの退職を主張しておらず,前記4
(1)のとおり,被告は,平成25年3月31日までの労働契約の内容であ
る労働条件と同一の労働条件で原告による申込みを承諾したものとみな
され,原被告間には労働契約が存在するものとみなされるから,退職金
を支給しないことによる損害は認められない。
(オ)慰謝料
被告によるパートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いの内
容は前記6(3)のとおりであり,金銭賠償によってその損害は回復される
ものと認められ,慰謝料は認められない。
(カ)弁護士費用
前記(ア)cの135万5837円と前記(イ)cの11万2983円の合
計は146万8820円であり,この金額を考慮すると,パートタイム
労働法8条1項に違反する差別的取扱いによる不法行為と相当因果関係
にある損害としての弁護士費用は14万円と認めるのが相当である。
(キ)遅延損害金を含めた認容額
a原告は,平成21年4月1日から平成24年3月31日までの損害
については,同日までの賃金の支払期日(平成24年4月25日)の
後であり不法行為の後である平成24年9月19日(訴状に代わる準
備書面送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合に
よる遅延損害金の支払を求めているから(前記第3,6(1)ウ(ア)),原
告は,被告に対し,不法行為に基づき,前記(ア)cの135万5837
円及びこれに対する平成24年9月19日(訴状に代わる準備書面送
達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延
損害金の支払を求めることができる。
b原告は,平成24年4月1日から同年6月30日までの損害につい
ては,同日までの賃金の支払期日(平成24年7月25日)の後であ
り不法行為の後である平成25年9月25日(平成25年9月19日
付け請求の拡張申立書の送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているから(前記第3,
6(1)ウ(イ)),原告は,被告に対し,不法行為に基づき,前記(イ)cの1
1万2983円及びこれに対する平成25年9月25日(平成25年
9月19日付け請求の拡張申立書の送達の日の翌日)から支払済みま
で民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることがで
きる。
cパートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱いによる不法行
為は同年6月30日までであったと認められ(前記(イ)),その不法行
為と相当因果関係にある損害としての弁護士費用については,平成2
4年9月19日からの遅延損害金が請求されているから(前記第3,
6(1)ウ(ア)),同弁護士費用14万円(前記(カ))については,前記aと
同様に,不法行為の後である平成24年9月19日から支払済みまで
民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができ
る。
dしたがって,パートタイム労働法8条1項に違反する差別的取扱い
による不法行為に基づく損害賠償の認容額は,前記(ア)cの135万5
837円と前記(カ)の14万円の合計149万5837円及びこれに
対する平成24年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金
員,並びに11万2983円及びこれに対する平成25年9月25日
から支払済みまで年5分の割合による金員となる。
イ労働契約法20条に違反する不法行為
(ア)原告は,労働契約法20条に違反する不法行為も主張しているところ
(前記第2,1),期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
を定めた労働契約法20条は,その違反が不法行為を構成すると解され
るが,その施行日は平成25年4月1日であるから,同条の違反に関し
ては,同日後の不法行為及び損害の成否が検討されるべきである。
(イ)原告により労働契約法20条違反の損害として主張されている平成
25年4月1日以降の損害は,原告の,平成24年7月1日以降の賃金
の差額の主張(前記第3,6(1)イ(エ))に含まれているものと解される。
原告は,平成24年7月1日以降の賃金の差額を算出するに当たり,
同日の準社員就業規則,準社員賃金規程の変更による原告の賃金の減少
を主張するが(前記第3,6(1)イ(エ)a),前記5(1)イ(ウ)のとおり,その
変更によって原告の賃金が減少したと認めることはできないから,その
点に係る原告主張の損害は,認めることができない。
また,原告は,平成24年7月1日以降の賃金等の差額を算出するに
当たり,準社員と正社員の年間賞与額の差を主張するが(前記第3,6
(1)イ(エ)b),労働契約法20条が施行された平成25年4月1日以降の
賞与については,支給の査定が行われていないから,原告は,被告に対
して賞与を求める権利はなく,平成25年4月1日以降の賞与の差額に
ついて損害が生じているとは認められない。
(ウ)そうすると,労働契約法20条の施行日である平成25年4月1日以
降について,原告主張の損害が発生しているとは認められず,労働契約
法20条に違反する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
8争点(7)(パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づ
く損害賠償請求権の消滅時効)について
被告は,パートタイム労働法8条1項に違反したことによって不法行為が成
立するとすれば,その損害は,通常の労働者の賃金と短時間労働者の賃金の差
額であるとした上で,賃金請求権の消滅時効期間は2年であるから,パートタ
イム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づく損害賠償請求権
の消滅時効も2年と解すべきであると主張する(前記第3,7(1))。
しかし,パートタイム労働法8条1項に違反したことによる不法行為に基づ
く損害の額が賃金の差額と同額となるとしても,不法行為に基づく賠償請求権
の消滅時効は,民法724条により3年と解すべきであり,被告の上記主張は,
採用することができない。
9争点(8)(準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束
の有無)について
(1)原告は,被告から,準社員として3年勤務した後に正社員として雇用する
という説明を受けたと主張し(前記第3,8(1)),原告が同僚の準社員から
署名押印を得たと主張する陳述書(甲18の1ないし8)には,その旨記載
されており,原告は,その陳述書(甲1)及び本人尋問(原告本人〔前半3,
4頁,後半2頁〕)において,同旨を述べる。
(2)しかし,原告提出の陳述書(甲18の1ないし8)は,「私が,同社と雇
用契約をする際にも,準社員で3年経過すれば,正社員になれるという説明
は,受けていました。」と不動文字で記載されており,作成者が住所,氏名
を記載し押印するだけのものであり,それによっても,作成者がいつ被告の
誰からどのように説明を受けたかは明らかではなく,信用性が高いとはいえ
ない。
また,原告と面接をしたCは,その陳述書(乙14)及び証人尋問(証人
C〔2,3頁〕)において,そのような説明をしたことを否定している。
その上,原告が作成して大分労働局長に提出した平成23年11月7日付
けの調停申請書(乙9)には,調停を求める事項及びその理由として「私は,
一年契約の準社員ですが,連続して5年以上働いており,正社員と同待遇に
してほしい。」と記載されており,同調停申請書の別紙には,正社員と同待遇
にしてほしい旨の要請が記載されているが,準社員として3年間勤務した後
に正社員として雇用するという約束があったことは何ら記載されていない。
準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するという約束があり,
正社員と同待遇にしてほしいという強い希望があったのであれば,正社員と
同待遇を求めることの根拠として,上記のような約束があったことは当然に
主張されるはずであると解されるが,調停申請の際にそのような主張はなか
った。このようなことからすると,原告自身も,準社員として3年間勤務し
た後に正社員として雇用するという約束があったとの認識を有していなかっ
たものと推認される。
したがって,準社員として3年間勤務した後に正社員として雇用するとい
う約束があったとは認められず,そのような約束に基づいて正規労働者と同
一の労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める原告の請求
は,理由がない。
10結論
以上によれば,原告の請求は,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位
にあることの確認を請求すること(前記4(2)),平成25年5月25日から本
判決確定の日まで,毎月25日限り月16万5270円の割合による金員の支
払を求めること(前記4(3)ア),50万円及びこれに対する平成25年3月2
5日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めること(前記4(3)
エ),149万5837円及びこれに対する平成24年9月19日から支払済
みまで年5分の割合による金員の支払を求めること(前記7(2)ア(キ)d),11
万2983円及びこれに対する平成25年9月25日から支払済みまで年5
分の割合による金員の支払を求めること(前記7(2)ア(キ)d)の限度で理由が
あるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却する。
大分地方裁判所民事第1部
裁判官
中平健

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