弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 控訴の趣意第二(法令適用の誤)について
所論は、旅館営業者において、、いつたん宿泊客等に客室を提供した以上、その占
有使用権がその宿泊客等にあることは疑のないところであるから、本件のように、
いつたん宿泊客が客室の占有を取得した上、被告人が不知の間に芸妓らを直接電話
その他の方法で呼び寄せ、これと情交関係を結が、その対価を芸妓に支払つたよう
な場合においては、被告人は、その情を知つて売春を行う場所を提供したことにな
らないことは、いうまでもないところである、また、原判示Aは、株式会社であつ
て、被告人は、代表権を有しないその一役員に過ぎないのであるから、旅館たるA
の占有管理権は、法人たるAか、その代表取締役たるBにあるのであつて、被告人
には、その権限がないものと解すべきである、もつとも、原判決挙示の証拠を見る
と、Aの旅館及び飲食店の各営業許可名義は、いずれも被告人となつているのであ
るか、その申請及び許可は、Aが株式会社になる以前のものであり、飲食店営業を
行う者が男である場合には、その氏名を表面に出さず、形式上、その妻名義で営業
許可の申請を行うことが往々見受けられるのであつて、本件の申請及び許可の場合
もその一例に過ぎないのであるから、右旅館及び飲食店の各営業許可名義がいずれ
も被告人になつているからといつて、これをもつて、法人組織に改められた後にお
けるAの営業の実体を判断することはできないにもかかわらず、被告人をAの営業
主体であるとして原判示売春防止法違反の事実を認定した原判決には、判決に影響
を及ぼすことが明らかな法令適用の誤がある、というのである。
 よつて按ずるに、原判決挙示の各証拠及び記録編綴の甲府地方法務局吉田出張所
登官吏C認証の昭和三十五年十月九日付株式会社Aの登記簿謄本の記載を総合する
と、被告人は、昭和三十一年四月三十日山梨県からAなる名称で、旅館営業につい
ては許可期限永久、飲食店営業については許可期限五ケ年の各営業の許可を受け、
爾来右各営業を継続していたが、その後、右Aの設備を使用して旅館業及び料理飲
食業その他の営業を目的とする株式会社Aが設立せられ、B、Dほか一名が取締役
に就任し、会社を代表する取締役がBと定められ、昭和三十三年二月六日その登記
手続がなされたこと及び同年四月十六日会社の営業目的が旅館及び料理飲食業その
他これらに附帯する一切の業務に変更され、同月十七日その旨の登記手続がなされ
たことが明らかである。
 <要旨>しかし、売春防止法第十一条第一項にいわゆる「場所を提供した者」と
は、その提供した場所について事実上の支配力を有する者であれば足りるの
であつて、必ずしも所論のように売春を行う場所として提供された旅館等の経営者
や会社たる旅館等の代表取締役などを指称するものでないことは、いうまでもない
ところである。そして、原判決挙示の各証拠を総合すれば、被告人は、主として原
判示Aの帳場においてその従業員を指揮、監督し、宿泊客等を客室に案内させ、宿
泊客等から従業員を介して宿泊料等を受け取り、あるいは宿泊客等の依頼によつて
芸妓を呼び寄せ、その宿泊客等から遊興費等を受け取つたりして事実上右旅館の営
業を主宰していた事実が認められるのであるから、被告人が株式会社Aの単なる取
締役であつて、会社を代表する権限がないからといつて、右認定のような同旅館に
対する事実上の支配関係を否定し去ることはできない。なお、旅館の経営者が宿泊
客等に客室を提供しても、これによつて経営者が客室の占有権を失うものではない
ものと解すべきであり、前記認定のとおり、被告人は、旅館Aの営業を主宰してい
たのであるから、同旅館の客室に対する占有権をも有していたものと認むべく、被
告人が宿泊客等に客室を提供してもこれによつて被告人か右客室に対する占有権を
失うものではないと解すべきである。そして、原判決挙示の各証拠によれば、被告
人は、原判示宿泊客らの注文により原判示各芸妓らが右宿泊客らに売春することの
情を知りながら、同芸妓らを原判示Aに呼び寄せたばかりでなく、同旅館の従業員
をして、売春の相手方たる宿泊客らの客室に、右芸妓らが宿泊するための寝具等を
用意させ、もつて、その売春について便宜を図つたことが認められるから、原判示
各売春の事実は、いずれも被告人不知の間に行われたものであるということはでき
ない。
 従つて、原判決には、なんら所論の違法はなく論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 下村三郎 判事 高野重秋 判事 堀義次)

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