弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
被控訴人の当審における新請求を棄却する。
訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。
○ 事実
被控訴代理人は、当審において訴の交換的変更をし、新たに「控訴人が昭和四三年
一一月三〇日付で被控訴人に対してした、被控訴人の昭和三九年一二月一日から昭
和四〇年一一月三〇日までの事業年度における所得金額を九八七万六、七〇七円と
する再更正処分のうち、所得金額が八五五万一、五〇七円を超える部分及び同日付
でした過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも控訴人
の負担とする。」との請求を追加するとともに、従前の請求にかかる訴(旧訴)を
取り下げると述べ、控訴人指定代理人は主文第一項と同旨の判決を求め、旧訴の取
下に同意する、と述べた。
被控訴人の新請求の原因、これに対する控訴人の答弁及び処分の理由に関する主
張、右主張に対する被控訴人の反対主張ならびに当事者双方の証拠の提出、使用、
認否は、左記のほか原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する(なお、原
判決四丁裏一〇行目に「被告主張事実」とあるのは「原告(被控訴人)主張事実」
の誤記と認める。)
一、被控訴人の主張の訂正、追加。
1、原判決三枚目表二行目から三行目までを次のとおり改める。
「その後、控訴人は本訴の係属中昭和四三年一一月三〇日付で、被控訴人の本件係
争事業年度の所得金額を九八七万六、七〇七円、法人税額を三一九万四、一〇〇円
とする再更正処分及び過少申告加算税を二万三、二五〇円とする賦課決定処分を
し、その頃被控訴人にその通知をした。右再更正処分は、係争事業年度の直前事業
年度の更正処分が昭和四三年一一月三〇日付で取り消された(すなわち申告額まで
減額する再更正処分がなされた)ことに伴ない、係争事業年度の当初更正処分(原
更正処分)において認容されていた事業税認定損一〇万九、八四〇円につき、これ
を認容控除する理由がなくなつたとして、増額更正を行なつたものに過ぎないが、
この再更正処分が行なわれたことにより、当初更正処分は再更正処分に吸収され独
立の存在を失なうこととなつた。そして、右再更正処分においても、控訴人は、役
員賞与の損金算入の点については、当初更正処分におけると同様の計算をし、被控
訴人がその役員に支給した左記賞与の損金算入を否認した。」
2、原判決三枚目裏一行目「右更正処分」から三行目「右処分の」までを、「右再
更正処分のうち所得金額が八五五万一、五〇七円を超える部分は違法であるから、
これを超える限度で再更正処分の」と改める。
二、控訴人の主張の追加。
1、被控訴人主張の右一、1記載の事実は認める。
2、訴外Aら三名が被控訴会社の同族判定株主に該当することについて次のとおり
主張を補足する。
(一) 被控訴人は、旧法人税法第二条第一〇号所定のイないしハの三つの基準の
適用をめぐつて、イの基準に該当する以上、ロおよびハの基準にあてはめることは
無意味であり、イロハの各基準の適用には優先劣後の関係があるものと解してい
る。
(二) しかし、右解釈は、まず、同族会社の定義に関する規定の変遷からみて、
失当なものである。
わが国の税法において、同族会社という表現が用いられるようになつたのは、大正
一三年改正法以後であるが(当時の所得税法二一条の二。昭和一五年の改正で、所
得税法と法人税法が分化するまで、法人所得も所得税法のなかに一括して規定され
ていた。)、大正一二年改正法において同族会社という表現は用いられていなかつ
たものの、すでに、株主一人とその同族関係者の有する株式金額が資本金額の五〇
%以上である法人について、特に累進税率等を適用することになつており、大正一
三年改正法以後においてこの法人を同族会社と呼ぶようになつている。
かように、昭和二五年におけるシヤウプ勧告による改正前においては、同族会社と
は、株主の一人とその同族関係者の有する株式金額が資本金額の五〇%以上である
法人であつたのであるが、昭和二五年の改正法では、次のように、同族会社の「イ
メージ」が一新し、株主の五人とその各々の同族関係者を含めた持分を合計して、
そのうちのいずれかに該当する場合を、同族会社としているのである。
(1) 一人で三〇%以上
(2) 二人で四〇%以上
(3) 三人で五〇%以上
(4) 四人で六〇%以上
(5) 五人で七〇%以上
そして、次に、昭和二九年の改正法では、右の三人以下の(1)ないし(3)の基
準を一つに統合して本件にいうイの基準とし、(4)および(5)をロおよびハの
基準とするように改められたのであり、この三つの基準が昭和四〇年当時の法人税
法に継承されているのである。
これらの立法の変遷に徴してみても明らかなように、昭和二九年改正以後の法人税
法では、少数の株主による会社の支配に着目して、同族会社の三つの類型を定立
し、その各類型のそれぞれの基準を定めているのであつて、右の三つの基準の間に
は何ら優先劣後の関係はないものというべきである。
(三) 旧法人税法第二条第一〇号が定めている同族会社の三つの基準は、同族会
社の三つの類型のそれぞれの基準であつて、これらの基準の間に優先劣後の関係が
ないことは、立法の変遷を問うまでもなく、何よりも条文に照らして明らかなこと
である。
それ故、実定規定の解釈としては、いずれかの基準に該当すれば、同族会社にあた
ることはいうまでもないことであるが、また、いずれの基準にも該当する場合に
は、イロハのいずれの基準にもあたる同族会社と解すべきである。
仮りに、被控訴人主張のような考え方によれば、持株割合において同順位の株主が
ある場合、どのように取り扱われることになるのであろうか。たとえば、五人の株
主が二〇%ずつ均等に株式を保有している場合、同族会社の判定においては前記イ
ロハの各基準をすべて充足するのであるが、イロハの基準に優先劣後の関係を認め
るかぎり、同族株主はイの基準により三人にとどめざるをえないが、他面その五人
の株主の間には優劣はないのであるから、このような場合には、その会社支配にお
いて優劣の差のない五人の株主を等しく同族判定株主とするのでなければ、その合
理的な解釈を導くことはできないのであり、これによつて被控訴人の主張する解釈
が正当でないことについてその一端を指摘することができる。
(四) もつとも、同族会社に関する定義規定について、これを、同族会社の類型
に関するものでなく、単に同族会社かどうかを判定するための基準であるとし、こ
の間に先後の順序をつけようとする考え方は、昭和四五年政令第一〇六号による改
正後の法人税法施行令第七一条には取り入れられているのであるが、右政令は昭和
四五年四月一日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用される
ものであるから(同政令附則第二条)、本件について被控訴人主張のように解する
ことは、法律解釈の域を越えるものといわざるをえない。
(五) 旧法人税法第二条第一〇号は、同族会社について定めている三つの基準に
関して、明文上なんら優先劣後の関係を定めていないから、そのいずれかの基準に
該当する以上、同族会社にあたることはいうまでもないことであるが、また、いず
れの基準にも該当する場合については、イロハのいずれの基準にも該当する同族会
社として取り扱うのが、画一性を要請される税法ないし税務行政の分野において公
平な処理ということができる。
なかんずく、右取扱いは、国税庁長官通達(昭和三四年直法一-一五〇通達の「一
五」。)に示されていたもので、長い間にわたり全国の税務行政はこの取扱いによ
つて処理されており、すでに納税が済まされているのである。
(六) 被控訴会社の役員のうちAら三名が、右基準のハにも該当する同族判定株
主と解される以上、本件の再更正処分は正当である。
○ 理由
一、被控訴人のした法人税の確定申告とこれに対する控訴人の更正処分及び過少申
告加算税の賦課決定処分、右処分に対する被控訴人の審査請求等のいきさつ及び被
控訴人が本件係争事業年度において訴外A外二名に支給した賞与を損金に算入した
のに対し控訴人がこれを否認して更正処分をしたいきさつ、特に右事業年度におけ
る被控訴会社の株主構成、各株主の持株数と発行済株式総数に対する比率、A外二
名の被控訴会社における使用人としての地位及び同人らに支給された賞与の額等に
関する当事者間に争いのない事実は、原判決理由説示のとおりであるから、原判決
一一丁表二行目から同丁裏三行目まで及び同丁裏六行目から同一二丁表九行目まで
をここに引用する。そうして、控訴人が、被控訴人の主張一、1記載のとおりの再
更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をしたこともまた当事者間に争いがな
い。
二、そこで、まず被控訴人が当審においてした訴の交換的変更の適否について判断
する。
納税義務者が更正処分の取消訴訟を提起し、その係属中に再更正処分(増額再更正
処分)が行なわれ、その結果原更正処分が再更正処分に吸収され、独立の存在を失
なうに至つた場合において、原告が訴を変更し、あらためて再更正処分の取消を求
めるとともに、旧訴(原更正処分の取消を求める訴)を取り下げる(被告の同意を
えて)ことは民訴法の訴変更の要件をみたすかぎり許されることむろんである(行
訴法第一九条第二項、民訴法第二三二条)。
これを本件について見るに、旧訴も新訴も、前記A外二名が被控訴会社の同族判定
株主である「使用人兼務役員」に該当し、同訴外人等に支給した賞与は、被控訴会
社の本件係争事業年度の所得金額の計算上、損金に算入されるべきかどうかという
ことを唯一の争点とするものであるから、新訴が旧訴と請求の基礎を同じくするこ
とは明らかである。してみると、旧訴の取下につき控訴人の同意のある本件におい
ては、被控訴人のした本件交換的訴の変更は、これを許容すべきである。
もつとも、新訴が審査請求前置の要件をみたしているかどうか及び右が出訴期間の
遵守に欠けるところはないかどうかについては、なお問題があるので、次にこれら
の点につき考察する。
(一) まず、審査請求の前置について。
被控訴人が前記再更正処分に対して所定の審査請求の手続を経たことはその主張し
ないところであり、かえつて弁論の全趣旨によれば被控訴人はこれを経ていないも
のと認められる。しかし、右一、に認定したとおり、被控訴人が更正処分について
所定の審査請求の手続を経たことは当事者間に争いがなく、かつ前記のとおり再更
正処分に対する被控訴人の不服は、更正処分に対するそれと実質上全く同一である
から、このような場合にまで改めて右の手続を要求する合理的な理由はないという
べきである。従つて、本件のような場合には、行訴法第八条に表現されている、取
消訴訟については原則として審査請求前置を要件としない現行行政事件訴訟法の建
前にかんがみ、新訴について審査請求の手続を経ることを要しないものというべき
である。
(二) 出訴期間の遵守について。
右一、認定のとおり本件再更正処分が昭和四三年一一月三〇日付でなされその頃被
控訴人に通知されたことは当事者間に争いがなく、一方本件訴の変更が昭和四七年
一月二四日午前一〇時の当審第八回口頭弁論期日においてなされたことは記録上明
らかであるから、本件新訴は、形式的には、行訴法第一四条所定の出訴期間経過後
に提起されたこととなる。しかし、右一、認定の当事者間に争いのない事実及び本
件記録によれば、旧訴が出訴期間の制限内に提起されたものであることは明らかで
あり、またさきに認定したように新訴と旧訴とが実質上その争点を同じくするもの
である以上、新訴において主張されている処分の違法性は、右旧訴においてつとに
実質上主張されていたものと認められるうえに、右のような場合に出訴期間経過後
の新訴の提起を認めても、特に公益を紊したり、税務行政上重大な支障を来した
り、または第三者の利害に影響を及ぼすとは認められないから、本件のような場合
には、出訴期間遵守の関係においては、新訴は、旧訴提起の時からすでに提起され
ていたものと同視するのが相当である。従つて、本件訴の変更が形式上、新訴に対
する出訴期間の経過後になされたことによつて、直ちに新訴が不適法となるもので
はないと解すべきである。
三、そこで本案について判断をする。
1、控訴人が被控訴人のした本件係争事業年度の法人税の確定申告に対し本件更正
処分及び再更正処分をしたいきさつに関する事実は右一、認定のとおり当事者間に
争いがない。
2、ところで控訴人は、被控訴会社の「使用人兼務役員」であるA、B及びCの三
名は、被控訴会社の同族判定株主であるから旧法人税法第三五条第五項、同法施行
令第七一条第四号により、同法第三五条第二項所定の「使用人兼務役員」から除外
されることとなり、従つて右の三名に支給された賞与を同条第一項により、本件係
争事業年度の所得金額の計算上損金に算入することはできないと主張し、被控訴人
はこれを争い、この点が本件における唯一の争点をなしている。
3、法人税法は、法人のうち同族会社についていくつかの特別の取扱いをしてい
る。すなわち、(一)留保金に対する特別課税(第六七条)、(二)行為または計
算の否認(法第一三二条)及び(三)役員に対する賞与に関する課税の特例(法第
三五条第二項、第五項、施行令第七一条)がこれである(これらの点に関する限り
旧法も現行法も特に差異はない。)。法人税法がこのように特別の取扱いをするの
は、右(一)及び(二)は、同族会社であることによつて、会社の経理が比較的自
由に操作できるところから、法人税の負担を不当に軽減することを規制するためで
あり、また右(三)は、右に述べたところに加えて、同族会社においては使用人を
兼務している役員は、たとえ平役員であつても、その者が同族判定株主である限
り、自己及びその同族関係者の持株を通して会社経営にある程度の支配権を持ち得
る立場にある者として、その賞与は本来の役員(これを株式会社についていえば常
務、専務等の肩書を有する取締役)に対するものと同じく、利益処分として計算す
べきものである、との考え方によるものと解される。
そうして、旧法人税法第二条第一〇号は、同族会社の要件を、株式会社について
は、(イ)株主の三人以下及びこれらの同族関係者が所有する株式の総数がその会
社の発行済株式総数の一〇〇分の五〇以上に相当する会社、(ロ)株主の四人及び
これらの同族関係者が所有する株式の総数がその会社の発行済株式総数の一〇〇分
の六〇以上に相当する会社、(ハ)株主の五人及びこれらの同族関係者が所有する
株式の総数がその会社の発行済株式総数の一〇〇分の七〇以上に相当する会社のい
ずれかに該当するもの、と定めているが、この規定は右(イ)ないし(ハ)の要件
の適用の順序ないし右要件相互間の優先劣後の関係については特に規定することな
く、他にこの点についての定めもない。従つて、ある株式会社が右(イ)、
(ロ)、(ハ)のいずれか一つの要件に該当して同族会社とされる場合もあるし、
また右の要件のすべてに該当する同族会社である場合もあり得る。そうして、前記
(一)及び(二)の各規定の適用については、ある会社が右の要件のいずれかに該
当することが確定されれば、それ以上更に進んで他の要件にも該当するかどうかを
せんさくする必要はないが、右(三)についてはこれと異なる。すなわち、旧法人
税法第三五条第五項、同法施行令第七一条第四号によると、同族会社の「使用人兼
務役員」が同族判定株主であるときは、その者に支給した賞与は、同法第三五条第
二項にかかわらず同条第一項の原則により損金に算入されないことになつているか
ら、この場合にはある会社が同族会社であることのほか、当該「使用人兼務役員」
が同族判定株主であることが確定されなければならない。そうして、右法条が同族
会社の同族判定株主である「使用人兼務役員」に対する賞与を損金に算入しないと
する理由が右述のようなものであり、かつ旧法人税法第二条第一〇号が前記(イ)
ないし(ハ)の同族会社の三つの要件について、その適用の順序ないし優先劣後の
関係を定めていない以上、右の要件のいずれかに該当する同族会社の同族判定株主
である「使用人兼務役員」は、すべて、前記旧法人税法第三五条第五項かつこ書
き、同法施行令第七一条第四号によつて同法第三五条第二項の「使用人兼務役員」
の範囲から除外される「使用人兼務役員」と認めるべきである。換言すれば、賞与
の損金不算入の関係においては、ある株式会社が、まず右(イ)の要件をみたすか
らといつて、右施行令第七一条第四号の同族判定株主である使用人兼務役員は、そ
の要件に該当する同族判定株主だけをいうものと速断すべきではないのであつて、
更に右(ロ)及び(ハ)の要件をもみたすかどうかを判断し、その要件に該当する
同族判定株主であるものもまた同法第三五条第二項の「使用人兼務役員」の範囲か
ら除外さるべきものに該当するものと判定すべきである。もしそうではなくて、被
控訴人主張のように(原判決もこれと結論を同じくするが)、右の一つの要件をみ
たすときは、その要件に該当する最少限の同族判定株主で使用人を兼務する役員の
みが右の除外例にあたると解すると、全株主の持株の比率が二〇パーセントずつで
ある同族会社においては、何人を同族判定株主とするのかについて判断に窮するこ
とも、控訴人の指摘するとおりである。それ故右のような解釈は、到底これを採る
ことができない。
4、今これを本件について見るに、前記争いのない事実によれば、本件係争事業年
度における被控訴会社の役員らの持株数の発行済株式総数に対する割合は、D六二
パーセント、A一六パーセント、B一二パーセント、C八パーセント、E二パーセ
ントであり、右のうちAは工場長、Bは工事部長、Cは工事部次長という使用人と
しての職制上の地位を有し、常時その職務に従事していたものであるから、被控訴
会社は前記(イ)ないし(ハ)のどの要件にも該当する同族会社であり、右A外二
名は前記施行令第七一条第四号にいう同族判定株主である使用人兼務役員というべ
きである。
5、もつとも、昭和四五年政令一〇六号による改正後の法人税法施行令第七一条第
一、二項によると、現在でも株式構成が右のとおりであるとすると、被控訴会社に
おいて同族判定株主に該当するのはD一名となる。しかし、同年法律第三七号によ
つて法人税法第二条第一〇号も改められ、同族会社の要件が前記(イ)のみに限定
されたことから推すと、右の法令の改正は、同族会社に対する特例を緩和しようと
する租税政策の変更によるものと認められる。そうして、同族会社ないし同族判定
株主の要件ないし範囲をどう定めるか、これらに対してどのような特段の取扱いを
するかは、一国の租税政策の問題であつて、それが憲法に反しない限り、立法の自
由に属することがらであるから、右のような法令の改正は、叙上の解釈に何ら影響
を及ぼすものではない。
6、ところで被控訴人は、旧法人税法第三五条第一項、第五項及び同法施行令第七
一条第四号は、憲法第一四条、第二七条第一項、第三〇条の規定に違反する、と主
張する。
旧法人税法第三五条第一項は、法人の役員に対し支給する賞与(その定義は同条第
四項が定める)は、法人の利益の分配であつて、使用人に対し支給する給与及びこ
れと実質を同じくする賞与が法人の利益稼得のための必要経費であるのと性質を異
にするとの認識に立つて、その損金算入を認めず、さらに同条第三項は賞与の実質
が前者であるときはこれを受ける者が使用人であつても原則のとおりその損金算入
を認めず、また同条第二項は、役員で使用人を兼務する者に支給される賞与のうち
後者にあたると認められる部分を損金に算入することを認めて右の建前を貫いてい
る。そうして、同条第五項及び同法施行令第七一条第四号は、「使用人兼務役員」
のうちから同族会社の同族判定株主を除外し、右の者に支給された賞与について
は、右第二項にかかわらず原則に戻つて損金算入を認めないが、その理由はすでに
前記3、に述べたとおりである。従つて、旧法人税法第三五条第一項ないし第三項
の各規定は、それぞれ十分な理由を有するものであり、また同条第五項、同法施行
令第七一条四号が、賞与を同族判定株主たる「使用人兼務役員」に支給した場合と
そうでない場合とを区別して取り扱うのは理由のない差別でないことが明らかであ
るから、前記法令の各条項が憲法第一四条に反するといわれはないし、また右各条
項は、法人の経理上の原則を定めるものであるから、これが直ちに同族判定株主で
ある「使用人兼務役員」の勤労権を侵害するものとは、到底解することができな
い。
また、法人の役員に対する賞与の源資となる法人の利益に法人税が課せられ、一方
役員賞与を受けた当該役員個人の所得に所得税が課せられるのは納税主体と課税対
象が異なる以上、現行租税法の体系の下においてはむしろ当然のことであるから、
これを目して二重課税であり、憲法第三〇条の規定に反するというのはあたらな
い。
してみれば、前記法令の各条項について憲法違反をいう被控訴人の主張は理由がな
い。
7、そうして、被控訴会社が本件係争事業年度において、前記Aに五一万五、〇〇
〇円を、Bに四四万円を、Cに三七万〇、二〇〇円を賞与としてそれぞれ支払い、
右年度の法人税確定申告においてこれを損金に算入したこと及び控訴人がこれを否
認し、右の合計一三七万五、二〇〇円の損金算入を認めず、これに基づき本件更正
処分及び再更正処分をしたことはすでに認定したとおり当事者間に争いがないが、
以上に認定判断したところによれば、右各処分は、いずれも法令の正当な解釈適用
に基づく適法なものであり、被控訴人主張のような瑕疵はない。
また、控訴人が被控訴人に対し本件更正処分及び再更正処分の際、これを前提とし
てそれぞれ過少申告加算税の賦課決定処分をしたことは、右一、記載のとおり当事
者間に争いがないが、右更正処分及び再更正処分に瑕疵のない以上、右賦課決定処
分はもとより適法なものというべきである。
四、従つて、控訴人が昭和四三年一一月三〇日付で被控訴人に対してした本件再更
正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の各取消を求める被控訴人の当審におけ
る新請求は理由がなく、これを棄却すべきである。また、本件更正処分等の取消を
求める旧訴は、被控訴人が当審においてこれを取り下げ右については控訴人の同意
があるから、これについては判断を示す限りではない。
よつて、行訴法第七条、民訴法第九六条、第八九条により、訴訟費用は第一、二審
とも被控訴人の負担として、主文のとおり判決する。
(裁判官 白石健三 岡松行雄 川上 泉)

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