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判決 平成14年5月13日 神戸地方裁判所 平成13年(わ)第1172号,
同第1289号,同第1463号 詐欺,収賄被告事件
        主        文
   被告人を懲役3年に処する。
   未決勾留日数中90日をその刑に算入する。
   被告人から350万円を追徴する。
        理        由
(犯罪事実)
 被告人(元兵庫県M町町会議員)は,
第1 A(女性)(当時67歳)がB株式会社振出の約束手形2通にいずれもその
夫Cの名前で裏書きをしていたことを奇貨として手形回収資金の名目で同女から金
員をだまし取ろうと決意し,D及びEと共謀の上,平成10年2月上旬ころ,兵庫
県M郡M町Na番地所在のF方において,真実は,前記Eらが,前記約束手形2通
を交付先から回収していて,もはやこれらを回収する必要はなかったのに,これら
が未だ市中に出回っているかのように装い,Aに対し,これら約束手形の写しを示
しながら,「おばちゃん,手形の独り歩きって知ってるけ。この手形が独り歩きし
ていて,今に金利が重なって大変なことになる。手形がどこへ行ってるか探さなあ
かん。探してくれるとこ,あんねん。探してもらうのに50万円。全部で手形の回
収に500万円くらいいる。」などとうそを言い,Aに,前記約束手形が市中に出
回っており,その回収資金として金員が必要であると誤信させ,その結果,同月1
6日,前記F方において,Aから,前記約束手形の回収資金の名目で,現金540
万円の交付を受けてこれをだまし取り,
第2 平成11年7月21日から,兵庫県M町議会議員の職にあったものであるが
同町が実施するクアハウス建設事業関連工事の追加工事及び露天風呂工事を請け負
わせるための議会工作資金の名目で金員をだまし取ろうと企て,同県I市Ob番地
のc所在の土木建築業者G株式会社代表取締役H(当時41歳)に対し,
 1 平成12年8月22日ころ,同県M町Pd番地e所在の同町議会事務局応接
室において,真実は,クアハウス建設事業の追加工事はなかったのに,これがある
ように装い,「今,議会では,クアハウスの予算取りをしているところや。クアハ
ウスの追加工事として,2億円の補正予算を取るつもりにしている。この補正予算
の工事代金2億円に対してのリべートとして,土木工事なら3パーセント用意でき
るか。Hさんところは,土木がメインだから600万円や。600万円は議員皆で
分ける。皆に配らんと言うことを聞いてもらへん。そのための工作費や。2億円の
追加工事は,地元業者でとれる。そしたら,この地元業者からHさんとこに仕事を
回すことができる。」「議員にリベートを渡しておけば,わしのほうで指名業者を
自由にできるんや。わしの息がかかった業者に落札させることができる。Hさんと
こには,落札金額の90パーセント以上の金額で下請できるよう落札業者に話をつ
ける。」などと,クアハウス建設事業の追加工事を,上記G株式会社が下請業者と
して参入できる元請業者に受注させるための議会工作を行うなどとうそを言い,上
記Hに,被告人に交付する金員が議会工作費として使われ,同社がクアハウス建設
事業の追加工事の下請業者として参入できるものと誤信させ,よって,同月24日
ころ,大阪市Q区Rf丁目g番地のh所在のJホテル6階メインラウンジにおい
て,上記Hから現金600万円の交付を受け
 2 同年11月初旬から中旬にかけて,上記Jホテル6階メインラウンジにおい
て,真実はクアハウスの露天風呂工事についての分離発注はないのに,あたかも実
績のある業者に特命で分離発注するかのように装い,「クアハウスの露天風呂工事
は,別枠で考えている。」「露天風呂工事は,実績のある業者にさせようと思って
いる。露天風呂工事は2億円の予算を取っているが,実際は,2億円もかからな
い。もうけの出る仕事や。露天風呂工事については,委員会で設計施工能力のある
業者でいこうという方針を決めることになっている。11月20日にその委員会が
ある。この委員会が始まる前までに2000万円段取りできないか。ほかの議員の
ところへは,3000万円を払ってでも,露天風呂工事をやらしてくれと言って来
ている業者もいる。ほかの議員を黙らせて,Hさんが連れてくる業者に露天風呂の
工事をとらせるには全部で2000万円ばらまかなあかん。」などと,クアハウス
の露天風呂工事を,上記G株式会社が下請業者として参入できる元請業者に受注さ
せるための議会工作を行うなどとうそを言い,上記Hに,被告人に交付する金員が
議会工作費として使われ,同社がクアハウスの露天風呂工事について下請業者とし
て参入できるものと誤信させ,よって,同年11月20日,上記Hから,大阪市Q
区Ri丁目j番地のk所在の当時の株式会社S銀行R支店の被告人名義の普通預金
口座に現金1650万円の振込入金を受け
 もって人を欺いて財物を交付させ
第3 前記のとおりM町議会議員を勤めるとともに,同町議会の全員協議会構成員
として,また,同年10月20日からは同町議会に設置されたクアハウス特別委員
会の委員として,同町が実施するクアハウス建設事業に関して,同町の執行部に意
見進達を行う等の職務に従事していたものであるが,大阪府U市Vl丁目m番n号
Xビルo号において「K」の名称で設計事務所を営むLから,上記クアハウスの設
計業者選定において同人に有利な取り計らいを受けたい旨の趣旨で供与されるもの
であることを知りながら,同年10月20日,同市Yp丁目q番r号所在の当時の
株式会社S銀行豊中支店から,大阪市Q区R丁目i丁目j番地のk所在の同銀行R
支店の被告人名義の普通預金口座へ現金200万円の振込送金を受け,さらに,同
年11月2日,兵庫県I市Is丁目t番u号所在のT信用組合I支店から,上記被
告人名義の普通預金口座へ現金150万円の振込送金を受け,もっていずれも自己
の上記職務に関し,賄賂を収受した。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
罰       条
 判示第1及び第2の1,2の各行為 刑法246条1項(判示第1につき,更に
同法60条)
 判示第3の行為   刑法197条1項前段
併 合 罪 加 重  刑法45条前段,47条本文,10条(刑及び犯情の最も
重い判示第2の2の罪の刑に加重)
未決勾留日数の算入  刑法21条
追       徴  刑法197条の5後段
(量刑の理由)
 本件は,2名の被害者から合計2790万円を騙し取った詐欺の事実と,合計3
50万円の収賄の事実からなる事案である。特に,判示第2の詐欺の事案は,M町
議会議員をしていた被告人が,その地位を利用し,土木建築業者に対し,M町が計
画していた事業参入への勧誘を装い,土木建築業者の事業欲につけ込んで金員を騙
し取ったものであり,判示第3の収賄の事案は,同様に町議会議員の地位を利用
し,自己の利益のために特定業者の利便を図って町当局の行政に口を挟み,その業
者に要求して賄賂を収受したものであって,その犯行態様は,いずれもまことに悪
質であり,M町民の町議会に対する信頼を裏切った責任も重大である。また,判示
第1の詐欺の事案も,たまたま共犯者から,同人が保管していた手形を見せられ,
これに裏書きが残っていたことを利用して,手形取引の事情に疎い被害者の無知に
つけ込み,現金をだまし取ったもので,態様は良くない。そして,被告人が利得し
た金員は前記のとおり多額に上っているところ,被告人は,そのほとんどを競艇の
賭金と遊興費に費消したというのであり,犯行動機に全く酌むべきものはなく,だ
まし取った金員のうち,判示第2の2250万円中1800万円については,現在
のところ,被害弁償がなされていない。これらの事情を考慮すると,本件の犯情は
悪く,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。
 他方,判示第1の被害者に対しては,共犯者が弁済した分を含めて全額が弁償済
みであり,被害者は寛大な処分を求めていること,判示第2の被害者との間でも,
被告人が残金1800万円を分割弁済することを約し,連帯保証や物上保証を提供
して示談が成立し,同被害者も寛大な処分を求めていること,判示第3の犯行によ
り収受した賄賂金も贈賄者に返還していること,被告人には,懲役前科がないこと
など,被告人のために有利な情状も認められる。
 しかし,これらの情状を十分しん酌しても,前記の犯情に照らすと,実刑は免れ
ず,前記の諸般の事情を総合考慮して,主文の刑を定めた。
  平成14年5月27日
    神戸地方裁判所第4刑事部
          裁判官  笹野明義

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