弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原略式命令を破棄する。
     被告人を罰金五万円に処する。
     右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算し
た期間、被告人を労役場に留置する。
         理    由
 本件記録によると、千葉簡易裁判所は、昭和五五年一〇月六日被告人に対する公
然わいせつ幇助被告事件(同庁昭和五五年(い)第二九〇五号)について、「被告
人は、千葉市a町b番c号所在のストリツプ劇場『A』の照明係をしているもので
あるが、昭和五五年九月二五日午後二時五五分ころから同日午後三時ころまでの間、
同劇場舞台上において、踊り子(ストリツパー)AことB及びCことDが約一〇名
の観客の面前で『生板シヨー』と称して男客E及びFの下半身をそれぞれ裸にした
うえその陰茎を手淫して射精させるなどして公然猥褻の行為をするに際し、その情
を知りながら、右姿態などにライトを照射し、もつて右Bらの公然猥褻の犯行を容
易ならしめてこれを幇助したものである。」との事実を認定した上、刑法一七四条、
六二条一項、一八条、罰金等臨時措置法二条一項、三条一項、刑訴法三四八条を適
用して、「被告人を罰金一〇万円に処する。右罰金を完納することができないとき
は、金弐千円を壱日に換算した期間(端数が生じたときは壱日に換算する)被告人
を労役場に留置する。被告人に対し、仮に右罰金に相当する金額を納付すべきこと
を命ずる。」旨の略式命令を発付し、同略式命令は昭和五五年一〇月二一日確定し
たことが認められ、右事実によれば、本件は踊り子及び男客の正犯が共同して犯し
た一個の公然わいせつ行為を被告人が幇助したものと解される。
 ところで、刑法一七四条、罰金等臨時措置法三条によれば、公然わいせつの罪の
罰金の法定刑は一〇万円以下であり、本件は幇助犯であるから刑法六三条、六八条
四号により法律上の減軽をした処断刑は五万円以下であるところ、加重事由のない
本件について、これを超過して被告人を罰金一〇万円に処した原略式命令は、法令
に違反していることが明らかである上、被告人のために不利益であるといわなけれ
ばならない。
 よつて、刑訴法四五八条一号但書により、原略式命令を破棄し、被告事件につい
てさらに判決することとする。
 原略式命令の確定した事実に法令を適用すると、被告人の所為は、刑法一七四条、
六二条一項、罰金等臨時措置法三条に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、右
は従犯であるから、刑法六三条、六八条四号により法律上の減軽をした金額の範囲
内で被告人を罰金五万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八
条により、金二〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置することと
し、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官石原一彦 公判出席
  昭和五六年七月一七日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    栗   本   一   夫
            裁判官    木   下   忠   良
            裁判官    鹽   野   宜   慶
            裁判官    宮   崎   梧   一

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