弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人宮内勉の上告理由について
 原審は、(一) 上告人が訴外株式会社D商店(以下「訴外会社」という。)に対
する九四万四八八一円の約束手形金債権の執行保全のため、訴外会社の被上告人に
対する本件預託金返還請求権につき仮差押の申請をし、神戸地方裁判所の発した仮
差押決定が昭和四三年六月八日被上告人に送達され、次いで、上告人は訴外会社に
対する右約束手形金請求事件の勝訴判決に基づいて本件預託金返還請求権につき差
押・転付命令の申請をし、同裁判所の発した差押・転付命令が同年八月三日訴外会
社及び被上告人に送達されたこと、(二) 被上告人は、昭和四〇年一二月三一日訴
外会社と銀行取引約定を締結したうえ訴外会社の割引依頼により約束手形二三通(
金額合計三六五〇万〇九三八円)を割引いたが、右銀行取引約定には、(イ)訴外
会社が「仮差押、差押もしくは競売の申請または破産、和議開始、会社整理開始も
しくは会社更生手続開始の申立があつたとき、または清算にはいつたとき。」(銀
行取引約定書五条一項一号)には、訴外会社が割引を受けた全部の手形について、
被上告人から通知催告等がなくても当然手形面記載の金額の買戻債務を負い、直ち
に弁済する旨(同六条一項)、(ロ)「期限の到来または前二条によつて、貴行(
被上告人)に対する債務を履行しなければならない場合には、その債務と私(訴外
会社)の諸預け金その他の債権とを、期限のいかんにかかわらずいつでも貴行は相
殺することができます。」旨(同七条一項)が定められていること、(三) 被上告
人は、前記仮差押決定を受けたので、右銀行取引約定に基づき、右仮差押申請のあ
つた時点をもつて当然訴外会社に対する割引手形買戻請求権が発生し、かつ、その
弁済期が到来したものとして、転付債権者である上告人に対し、昭和四三年九月二
五日付書面をもつて、金額二一一万九二三五円の約束手形(満期同年七月三〇日、
同年四月一〇日割引)の買戻請求権(本件手形買戻請求権)を自働債権とし、本件
預託金返還請求権(その弁済期は、同年九月一四日に到来した。)を受働債権とし
て、対当額で相殺する旨の意思表示をし、同書面がそのころ上告人に到達したこと、
以上の事実を認定したうえ、前記銀行取引約定は、割引依頼人に対し仮差押の申請
があつたなどその信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合には、銀行が
割引いた約束手形について、その支払期日前でも、なんらの通知催告等を要せず当
然に割引手形買戻請求権を生ぜしめ、一方、割引依頼人の銀行に対する預金等の債
権については、銀行において期限の利益を放棄し、直ちに相殺適状を生ぜしめる旨
の合意と解することができ、このような合意は、契約当事者間ではもとより、割引
依頼人の銀行に対する預託金返還請求権につき差押・転付命令を得た債権者に対す
る関係でも有効である旨を説示し、被上告人の前記相殺の意思表示は、本件手形買
戻請求権と本件預託金返還請求権とが相殺適状を生じた昭和四三年九月一四日に遡
つて効力を生じ、本件預託金返還請求権は右相殺により全部消滅したものと判断し
た。
 上告理由第一は、本件手形買戻請求権の発生年月日についての原審の前記(三)の
認定判断に理由齟齬があるというのであるが、右認定判断は、原判決挙示の証拠関
係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
 上告理由第二は、被上告人と訴外会社との間の前記銀行取引約定が第三者である
上告人に対する関係でも有効であるとした原審の判断は、判例(最高裁昭和三六年
(オ)第八九七号同三九年一二月二三日大法廷判決・民集一八巻一〇号二二一七頁)
に反するというのである。しかし、第一に、銀行の貸付金債権について、債務者に
その信用を悪化させる一定の客観的事情が発生した場合に、債務者の有する右貸付
金債務の期限の利益を喪失せしめ、同人の銀行に対する債権につき銀行が期限の利
益を放棄し、直ちに相殺適状を生ぜしめる旨の合意が、差押債権者に対する関係に
おいても効力を有すること、また、第二に、債務者に対して仮差押等の申請がされ
ることは、債務者の信用を悪化させる定型的な徴候と解することができ、特段の事
情のない限り(本件では、このような特段の事情の存在について主張立証はない。)、
これをもつて上記の期限の利益喪失事由とすることが許されるべきであることは、
当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和三九年(オ)第一五五号同四五年
六月二四日大法廷判決・民集二四巻六号五八七頁、同昭和四二年(オ)第九〇〇号
同四五年八月二〇日第一小法廷判決・裁判集民事一〇〇号三三三頁)、所論引用の
判例は右大法廷判決によつて変更されたものである。そうして、今日の銀行取引に
おいて行われる手形割引は、割引手形の主債務者の信用が基礎にあるなどの点で、
純然たる消費貸借契約とは性質を異にする一面を有するとはいえ、広い意味におい
て割引依頼人に対する信用供与の手段ということができ、割引銀行としては、直接
の取引先である割引依頼人に信用悪化の事態が生じた場合には、その資金の早期か
つ安全な回収をはかろうと意図することは自然かつ合理的であり、その回収の手段
として、一定の場合に、割引手形の満期前においても割引手形買戻請求権が発生す
るものとするとの事実たる慣習が形成され、全国的に採用されている定型的な銀行
取引約定の中にその旨が明文化されるに至つていることは、公知の事実である(最
高裁昭和三八年(オ)第一〇〇三号同四〇年一一月二日第三小法廷判決・民集一九
巻八号一九二七頁、同昭和四三年(オ)第九三四号同四六年六月二九日第三小法廷
判決・裁判集民事一〇三号二九三頁参照)。債務者の期限の利益喪失の事由とする
ことが許容される前記の一定の客観的事情が割引依頼人について生じた場合には、
割引依頼人が割引を受けた全部の手形につき、銀行からなんらの通知催告がなくて
も当然に割引手形買戻請求権が発生し、割引依頼人は右買戻債務を直ちに弁済しな
ければならない旨の前記銀行取引約定が、割引依頼人の銀行に対する預託金返還請
求権につき仮差押をしたうえ差押・転付命令を得た債権者に対する関係でも、原則
として有効であることは、当裁判所の判例の趣旨に徴しても明らかであり(前掲各
判例のほか、最高裁昭和四三年(オ)第七七八号同四五年六月一八日第一小法廷判
決・民集二四巻六号五二七頁、同昭和四七年(オ)第一三一六号同四八年五月二五
日第二小法廷判決・裁判集民事一〇九号二六九頁参照)、本件手形買戻請求権は、
本件仮差押決定が被上告人に送達されてその効力を生ずる以前に、被上告人の取得
するところとなつていたものというべきであるから、これを自働債権として、右仮
差押ののちにした本件相殺は有効であり、これと同趣旨の原審の判断は、正当であ
る。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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