弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中上告人敗訴部分を破棄し、右部分を大阪高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人安田喜八郎の上告理由二の1ないし9について
 原判決は、被上告人B1株式会社(以下、「被上告会社」という。)はベアリン
グの製造等を目的とする会社であり、上告人は、被上告会社a工場の検査係として
ベアリング転動体の製品検査のしごとに従事していたところ、昭和四二年三月九日、
a工場内において、ベアリング転動体の研磨作業班の班長である被上告人B2から
製品の検査をせかされたことが原因となつて同被上告人と殴り合い、掴み合いの喧
嘩をし、その際同被上告人の暴行によつて後頭結節部に約五センチメートルの皮下
腫脹をともなう打撲創を負つたこと、上告人の右外傷自体は遅くとも同月一五日こ
ろには治癒したが、上告人は、その後も頭痛、吐気、めまい、手足のしびれ感等を
訴えて、その治療のため、昭和四二年三月一五日から同年一二月二〇日ころまでD
病院に通院して初診時脳振盪後遺症のちに頭部外傷後遺症と診断され、その後昭和
四三年八月一五日から昭和四四年九月ころまでE病院に入、通院して外傷性てんか
ん(焦点性発作)と診断され、さらに昭和四四年一〇月一日以降もF病院に通院し
外傷性てんかんと診断されてその治療を継続していること、をそれぞれ認定しなが
ら、他方、(イ)D病院、E病院の右診断は、いずれも医学上重要な他覚所見に特
段の異常所見を認めえないのに、主として上告人の病状に関する主訴と本件事故の
顛末に関する一方的説明のみに基づいて病名を付した嫌いがあるばかりか、上告人
の右主訴も、その神経質で心理的に動揺し易い性格と受傷部位が頭部であることに
よる心理的影響とに基づく多分に心因的なものである疑いが濃厚であること、(ロ)
F病院の診断は脳波に異常律動がみられたとの記載を除いては上告人の主訴と他覚
的所見の区別が明確でなく、右脳波に異常があるとの記載も、上告人の受傷の程度、
受傷と脳波検査の日時との間が離れていること、D病院及びE病院における脳波検
査の結果について異常所見がないこと、原審の書類送付嘱託に対してF病院が異常
所見のない脳波記録は焼却したから上告人の脳波検査記録についても送付できない
と回答してきたことなどに照らすと容易に措信できないこと、(ハ)原審が採用し
た被上告人ら申請のG大学脳神経外科医Hの鑑定につき上告人が同医師の受診を拒
否したため、鑑定人が現存資料では資料不足のため鑑定不能として鑑定を辞退した
こと、を挙げて、以上の事実に照らすと、上告人が受傷した頭部打撲創の結果上告
人主張の外傷性てんかんないし頭部後遺症が生じたことは、本件証拠上これを認め
ることができないとしているのである。
 しかしながら、原判決挙示の甲第二号証の三の一、二、第五号証、第一三号証、
第一四号証、第一七号証の一、二、第二五号証、乙第二〇号証の一ないし七、第二
二号証の一ないし五、第二三号証の一ないし五、証人I、同Jの第一審における各
証言によれば、D病院、E病院、F病院の各診断は、単に上告人の主訴のみに基づ
くものではなく、脳波検査、気脳写検査などを含む神経医学上の諸検査を経たうえ、
専門医師によつて下されたものであることが明らかであるのみならず、その検査結
果についても、カルテに原判決摘示のような他覚的所見の記載があり、殊に、E病
院における気脳写検査の結果では、脳室の変形はないが極く僅かに脳室が拡大し脳
皮質の萎縮がみられること、また、昭和四六年二月二六日のF病院における脳波検
査の結果では、脳波に異常律動がみられたことが、カルテ、診断書等の記載によつ
てそれぞれ明らかであり、右脳波に異常律動がみられたことについての診断書及び
労働基準監督署長の照会に対する医師の回答書の記載は、その異常と認められる脳
波の律動の状態を具体的に示していること、右証人Jの証言によれば、E病院の精
神神経科専門医師として上告人を診断した同人は、脳波に異常がないからといつて
てんかんでないとはいえず、上告人についても、脳室が変形する程の大きな脳皮質
の損傷はないが何らかの器質的障害があると考えられると証言していること、及び
前記原判決の確定した本件事故後の上告人の治療経過、殊に、上告人が本件受傷を
契機としてその主張するような各症状におそわれるようになつたと訴えていること、
以上の事実関係を総合すると、原判決が挙示する前記(イ)ないし(ハ)の事実は、
いずれも前記各診断書の記載を措信することができないと断ずる根拠としては不十
分であり、したがつて、他に特段の事情のない限り、上告人は被上告人B2の暴行
によつて受傷した後頭部の打撲創のため外傷性てんかんの後遺症をのこすに至つた
と認めるのが経験則上相当である。
 したがつて、原判示の理由のみで右上告人の受傷の結果外傷性てんかんないし頭
部後遺症が生じたとは認められないとした原判決には、経験則に違反し、理由不備
ひいては審理不尽に陥つた違法があるものというべく、その違法は原判決中上告人
敗訴部分の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判
決は右の部分について破棄を免れない。そして、本件については、前示特段の事情
の有無につき更に審理を尽くす必要があるので、右破棄部分を原審に差し戻すのが
相当である。
 よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    岸   上   康   夫
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    本   山       亨

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