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令和2年8月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成28年(ワ)第29490号職務発明対価請求事件
口頭弁論終結日令和2年3月4日
判決
当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり5
主文
1被告は,原告に対し,1227万6603円及びこれに対する平成28年9
月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3訴訟費用は,これを24分し,その23を原告の負担とし,その余を被告の10
負担とする。
4この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,3億円及びこれに対する平成28年9月15日から支払済15
みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1事案の要旨
⑴本件は,被告の保有していた別紙2特許目録記載1ないし7の各特許(以下,
番号に対応させて「本件特許1」などという。また,各特許に係る発明を,番号に20
対応させて「本件発明1」などという。)及び同目録記載8の実用新案登録(以下
「本件実用新案登録8」といい,本件特許1ないし7と併せて「本件各特許」とい
う。また,本件実用新案登録8に係る考案を「本件考案8」といい,本件発明1な
いし7と併せて「本件各発明」という。)の発明ないし考案当時被告の従業員であ
り,共同発明者ないし共同考案者の一人として特許及び実用新案登録を受ける権利25
(以下,これらを一括して「特許を受ける権利」という。)の持分を被告に承継さ
せた原告が,被告に対し,特許法35条(平成16年法律第79号による改正前の
もの。以下同じ。)3項,実用新案法11条3項又はこれらの類推適用に基づき,
相当の対価の一部として3億円及びこれに対する訴状送達により請求した日の翌日
である平成28年9月15日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号によ
る改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。5
⑵原告は,相当の対価が,主位的に25億5293万3605円,予備的に1
4億0134万4546円であると主張している。予備的主張に係る相当の対価の
内訳が次の表の「予備的主張の内訳」欄記載のとおり(1円未満切捨て)であると
解されることから,主位的主張に係る相当の対価の内訳(1円未満切捨て)及び請
求額3億円の内訳(端数につき補正した金額)は,予備的主張の内訳の割合で割付10
けを行った結果,それぞれ,次の表の「主位的主張の内訳」及び「請求額の内訳」
の各欄記載のとおりである。
主位的主張の内訳予備的主張の内訳請求額の内訳
本件発明14億8306万1365円2億6515万9818円5676万5445円
本件発明212億7052万6061円6億9741万1309円1憶4930万1893円
本件発明
3ないし6
1憶5790万2384円8667万5049円1855万5404円
本件発明78878万5444円4873万5697円1043万3344円
本件考案87895万1191円4333万7524円927万7702円
2前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠(以下,書証番号は
特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)15
⑴当事者
ア原告は,昭和54年4月から平成25年3月まで被告の従業員であった
者である。
イ被告は,電子・電気機械器具の製造,販売等を業とする株式会社である。
⑵本件各発明の職務発明ないし職務考案の該当性及び特許を受ける権利の承20

ア原告は,被告在職中の平成元年3月頃,被告の従業員であるB(以下「B」
という。)及びC(以下「C」という。)と共同して,本件各発明をした。本件各
発明は,いずれも,情報媒体であるディスクメディア(以下単に「ディスク」とい
う。),ディスク記録装置又はディスク記録再生装置に関するもので,被告の業務5
範囲に属し,かつ,発明ないし考案をするに至った行為が被告における原告の職務
に属するものであって,職務発明又は職務考案に当たる(甲112)。
イ原告は,平成元年5月,被告に対し,本件各発明に係る国内外で特許を受け
る権利の持分を譲渡した。
⑶被告の特許及び実用新案登録出願,登録10
被告は,平成元年5月15日,日本において,本件特許1に係る特許出願をし,
平成2年5月15日,同出願を優先権主張の基礎とする国際出願(PCT/JP9
0/00608)をして,平成5年4月8日から平成13年4月16日までの間に,
日本,米国,欧州(指定締約国:イギリス,フランス,オランダ,ドイツ),オー
ストラリア,韓国において,それぞれ,対応する特許権設定登録又は実用新案権設15
定登録を受けた。
本件各特許の登録日及び存続期間満了日は,別紙2特許目録記載1ないし8の各
「登録日」欄及び「存続期間満了日」欄のとおりであり,特許請求の範囲又は実用
新案登録請求の範囲は,同目録記載1ないし8の各「特許請求の範囲」又は「請求
の範囲」欄のとおりである(甲2ないし9)。20
⑷本件各発明についての構成要件の分説
本件各発明の独立請求項に係る発明又は考案のうち,本件特許1に係る特許請求
の範囲請求項1,3,5,6記載の各発明,本件特許2に係る特許請求の範囲請求
項1記載の発明,本件特許3に係る特許請求の範囲請求項1記載の発明,本件特許
7に係る特許請求の範囲請求項1,18記載の各発明,本件実用新案登録8に係る25
実用新案登録請求の範囲請求項1記載の考案(以下,本件各特許に係る個別の請求
項記載の発明又は考案を,特許又は実用新案登録の番号と請求項の番号に対応させ
て「本件発明1-1」などという。)について,構成要件に分説すると,次のとお
りである(以下,分説に係る各構成要件を符号に対応させて「構成要件1A」など
という。)。
本件発明3-1は,本件発明4-1,本件発明5-1及び本件発明6-1と同一5
の発明である(以下,これらの発明を一括して「本件発明3-1」ということがあ
る。)。
ア本件発明1-1
1A所定の規格に基づいて形成されたデイスクの記録領域に所望の情報信号を
記録するデイスク記録装置において,10
1B外部から入力される上記情報信号を上記デイスクの上記規格に基づく上記
記録領域に線速度一定方式で記録すると共に,
1C上記記録領域の内周側に設けられたリードインエリアに記録される上記情
報信号の内容を表す目次情報を上記記録領域より内周側の上記リードインエリア近
傍の領域に一時的に記録するための記録手段15
1Dを具えることを特徴とするデイスク記録装置。
イ本件発明1-3
1E所定の規格に基づいて形成される記録領域に所定の情報信号が線速度一定
方式で記録されるデイスクにおいて,
1F上記規格に基づく上記記録領域は,プログラム記録エリア,当該プログラ20
ム記録エリアに記録されている上記情報信号の内容を表す目次情報を含むリードイ
ンエリア,及びリードアウトエリアを有し,
1G上記記録領域より内周側の上記リードインエリア近傍に,上記目次情報を
一時的に記録するための拡大記録領域が形成されてなる
1Hことを特徴とするデイスク。25
ウ本件発明1-5
1Iプログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリアの記録内容を含むリ
ードインエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域が形成されたデイスク
に対して所望の情報信号を線速度一定方式により記録するデイスク記録装置におい
て,
1J外部から入力される上記情報信号を上記記録領域に記録するための記録手5
段と,
1K上記記録領域への上記情報信号の記録時に,上記プログラム記録エリアに
記録されている上記記録内容として上記リードインエリアに記録すべき上記情報信
号の内容を表す目次情報が書き込まれるメモリ手段と,
1L上記記録領域への上記情報信号の記録が終了されたか否かを判別し,当該10
記録が終了されたもの判断した場合は,上記メモリ手段に記憶された内容を上記目
次情報として上記記録領域の内周側に設けられた上記リードインエリアに記録し,
当該記録が中断されたものと判断した場合は,上記メモリ手段の内容を上記記録領
域より内周側の上記リードインエリア近傍に形成された拡大記録領域に一時的に記
録するように上記記録手段を制御する制御手段と15
1Mを具えることを特徴とするデイスク記録装置。
エ本件発明1-6
1Nプログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリアの記録内容を含むリ
ードインエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域が形成されると共に,
上記記録領域の内周側に上記プログラム記録エリアの記録内容を一時的に記録する20
ための拡大記録領域が形成されたデイスクに対して所望の情報信号を記録再生する
ためのデイスク記録再生装置において,
1O外部から入力される上記情報信号を上記記録領域に対して線速度一定方式
により記録再生するための記録再生手段と,
1P上記プログラム記録エリアの記録内容として上記リードインエリアに記録25
すべき上記情報信号の内容を表す目次情報を一時的に記録するメモリ手段と,
1Q記録処理動作時に上記リードインエリアに上記目次情報が記録されている
か否かを判別すると共に,上記リードインエリアに上記目次情報が記録されていな
いと判断した場合,上記拡大記録領域に記録された上記目次情報を上記メモリ手段
に書き込み,上記リードインエリアに上記目次情報が記録されていると判断した場
合は,再生モードへ移行する制御手段と5
1Rを具えることを特徴とするデイスク記録再生装置。
オ本件発明2-1
2A記録領域に記録された情報信号に基づいて,目次情報が記録領域の一部分
に記録された光ディスクの記録領域に,所望の情報信号を記録するための光ディス
ク記録装置であって:10
2B前記情報信号を記録領域に書き込み,目次情報を前記記録領域の一部分以
外の一時的な領域に書き込む書込手段と;
2C前記一時的な領域から前記目次情報を読み出す読出手段と;
2D前記一時的な領域から目次情報を読み出し,それに応じた前記記録領域以
外の所定の領域にさらなる所望の情報信号を書き込む前記書込手段を制御し,前記15
所定の領域に記録された前記さらなる所望の情報信号に基づいて,新しいデータを
前記記録領域の一部分に書き込む前記書込手段を制御する制御手段と;
2Eを備える光ディスク記録装置。
カ本件発明3-1
3Aライトワンス型光ディスク(7)の記録領域のプログラムエリア(ARR20
EC)に所望の情報信号を記録し,前記プログラムエリア(ARREC)の前記所望の
情報信号の記録終了時に,前記記録領域の拡張領域(ARRI)に前記プログラム
エリア(ARREC)に記録された前記所望の情報信号に基づいて,目次情報を記録
する光ディスク記録装置であって,
3B当該装置は,前記プログラムエリア(ARREC)に前記所望の情報信号の25
記録終了前に記録が中断した場合,記録領域以外の所定の領域(AREXI)に前記
目次情報を記録するよう前記装置を制御する制御手段(3)を備え,
3C前記制御手段(3)は,記録操作開始時に前記記録領域の拡張領域(AR
RI)のコンテンツを再生する(SP3)ように当該装置を制御し,再生出力が前
記拡張領域(ARRI)に目次情報が記録されていることを示している場合は,記
録操作を終了し(SP16),一方,再生出力が前記拡張領域(ARRI)に目次情5
報がまだ記録されていないことを示している場合,当該装置は記録領域以外の所定
の領域(AREXI)のコンテンツを再生し(SP5),再生結果に基づいて記録操
作を行う(SP6)ことを特徴とする光ディスク記録装置。
キ本件発明7-1
7A光ディスクの第1の記録領域に情報信号を記録するための光ディスク記録10
装置であって,
7B前記第1の記録領域は,前記第1の記録領域に記録された情報信号に対応
するデータを記録するためのリードイン領域を有し,
7C前記装置は,前記第1の記録領域に記録された情報信号に対応するデータ
を前記第1の記録領域の同心円状の拡大記録領域に記録し,後続の記録操作を制御15
するために前記拡大領域に記録された前記データを利用可能としたことを特徴とす
る光ディスク記録装置。
ク本件発明7-18
7D情報信号を記録し,記録された情報信号に対応するデータを記録するため
のリードインを有する第1の記録領域と,20
7E前記第1の記録領域の同心円状に設けられ,以前の記録中に前記第1の記
録領域に記録された情報信号に対応するデータを記録するための拡大記録領域と,
を備え,
7F先行する前記データを,後続の記録操作の制御に利用できるようにした光
記録ディスク。25
ケ本件考案8-1
8A光ディスクの記録領域に所望の情報信号を記録する光ディスク記録装置で
あって,前記記録領域に記録された前記情報信号に基づいてTOC(目次)データ
が前記記録領域の一部に記録されている光ディスク記録装置において,
8B前記記録領域に前記情報信号を記録し,前記記録領域の一部の外側にある
一時領域に前記TOCデータを記録して,付加情報データを前記記録領域の外側に5
ある拡大記録領域に記録する記録手段と,
8C前記一時領域から前記TOCデータを読み出して,前記拡大記録領域から
前記付加情報データを読み出す読み出し手段と,
8D前記一時領域から前記TOCデータの読み出しに応答して,前記記録領域
の外側の所定の領域に加えて所望の情報信号を記録するように前記記録手段を制御10
し,前記所定の領域に記録された前記追加の所望の情報信号に基づいて新しいデー
タを前記記録領域の一部に記録するように前記記録手段を制御し,前記拡大記録領
域からの付加情報データ読み出しに応答して,前記拡大記録領域に付加情報データ
を記録するように制御する制御手段と,を備える光ディスク記録装置。
⑸ディスクへの記録方法15
ディスクへの記録方法には次のものがある(乙109,110)。
ア線速度一定方式
線速度一定方式(英文表記である「constantlinearvelocity」を略して「CL
V」と表記されることもあり,以下「CLV方式」ともいう。)は,ディスクの内
周から外周まで一定の速度で記録すること,具体的には,ディスクへの記録時の回20
転速度を内周側ほど速く,外周側ほど遅くすることにより,内周から外周まで記録
密度を一定にする記録方法である。
イゾーンCLV
ゾーンCLVは,ディスクを内周部から外周部にかけて複数のゾーンに分けて,
ゾーンごとに線速度一定方式で記録する記録方法である。25
ウ回転速度一定方式
回転速度一定方式(英文表記である「constantangularvelocity」を略して
「CAV」とも表記されており,以下「CAV方式」ともいう。)は,角速度一定
方式ともいい,ディスクの内周から外周まで一定の回転速度で記録する記録方法で
あり,パーシャルCAVと呼ばれる方式もこの一種である。
⑹製品規格及びこれが策定されたCD-R等の各種ディスク5
ア製品規格
製品規格は,製品又は製品群が満たさなければならない特性などの要求事項であ
り,一般に認められている団体によって承認されている文書において規定されてい
るものである(以下,このような製品規格を,単に「規格」ということがある。乙
37,39)。10
イ規格が策定された各種ディスク
(ア)CD-Rは,記録したデータを消去することはできないものの,追加して
記録すること(以下「追記」という。)ができるCDとして,平成2年11月に被
告及びコーニンクレッカ・フィリップス・エヌ・ヴェ(以下「フィリップス社」と
いう。)によって規格(以下,各製品の規格を,製品名に対応させて「CD-R規15
格」などといい,規格を記載した書面を,製品名に対応させて「CD-R規格書」
などという。)が策定されたものである(甲133。この規格書は平成10年12
月に作成されたものであるが,CD-R規格を規定するものであるとされている。
以下の各種ディスクの規格書についても同様である。)。上記機能を指して「R」
(英語表記である「Recordable」の略)と表される。20
CD-RWは,記録したデータを消去し,繰り返し記録をすること(以下「書換」
という。)ができるCDとして,平成8年10月に被告及びフィリップス社によっ
て規格が策定されたものであり(甲132),上記機能を指して「RW」(英語表
記である「ReWritable」の略)と表される。
CD-R及びCD-RW(以下,各ディスクの「R」と「RW」を一括して「R25
/RW」ということがある。)は,いずれもドライブやレコーダーによって記録,
再生される光ディスクであり,上記各規格に準拠して製造されたCD-R/RW
(以下,対応規格に準拠して製造されたディスクを,種類に対応させて「CD-R
ディスク」などといい,これらを記録,再生するドライブ又はレコーダーを,対応
するディスクの種類に対応させて「CD-Rドライブ」,「CD-Rレコーダー」
などという。)は,音楽用のCDであるCD-DA(以下「音楽用CD」という。)5
と互換性を有する。
(イ)DVD(DVD-R,DVD-RW,DVD+R,DVD+RW等),B
D,MDは,いずれも,CD-R/RWと同時期又はその後に規格が策定された光
ディスク又は光磁気ディスクであり(DVD-Rについて甲134,DVD-RW
について甲135,DVD+Rについて甲140,MDについて甲138),ドラ10
イブ又はレコーダーによって記録,再生される。
⑺被告による規格準拠製品の販売
ア被告は,日本及び米国において,平成7年頃から,CD-R/RWドライブ
を,日本において,平成9年頃から,CD-Rディスクを,平成12年頃から,C
D-RWディスクを,それぞれ販売していた。15
イ被告は,日本及び米国において,平成14年頃から,CD-R/RWディス
クに記録する機能を有する追記書換型DVDドライブ,CD-R/RWドライブと
DVD-ROMドライブの複合ドライブを,平成18年頃から,CD-R/RWデ
ィスクに記録する機能を有するBDドライブを販売していた(甲38,141ない
し144,158,170,乙141)。20
⑻被告とフィリップス社とのジョイント・ライセンス・プログラム
被告は,フィリップス社との間で,被告とフィリップス社が保有する光ディスク
関連規格に係る特許をリストとして公開し,合理的な条件で第三者に許諾すること
を内容とする契約を締結し,フィリップス社を窓口として同社と共同で第三者に実
施許諾をしていた。この契約の内容は,ジョイント・ライセンス・プログラムと呼25
ばれている(以下,この契約又は契約の内容を示すものとして「本件ジョイント・
ライセンス・プログラム」という。)。
フィリップス社は,被告に対して,本件ジョイント・ライセンス・プログラムに
基づくライセンス料として,ライセンシーから支払を受けたライセンス料に被告の
配分率を乗じて算出される金額を配分していた。
本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおいて必須特許とされている特許は,5
欧州及び米国の特許を専門とする団体によって,対象となる規格を実施するために
必須の特許として承認されたものであり,少なくとも一部の製品との関係では,本
件各特許も必須特許として取り扱われていた(甲10,11,13ないし15,乙
44,45,81ないし90,120,181)。
⑼被告における職務発明に関する規定等10
ア被告は,被告の役員及び従業員(以下,これらを一括して「従業員」とい
う。)が職務上行った発明,考案又は意匠の創作(以下,これらを一括して「発明」
又は「職務発明」ということがある。)に関し,発明考案規定(以下「被告発明考
案規定」という。)を定めていた。被告発明考案規定には,本件各発明に係る特許
を受ける権利の持分が譲渡された平成元年5月当時,次の(ア),(イ)の定めがあり,15
その後複数回にわたる改正を経て,平成9年5月改正に係るもの(乙12)から,
これらの定めに加えて,次の(ウ)の定めが設けられた(乙1,10ないし13,1
5,17,19)。
(ア)従業員は,職務発明をした場合,被告に対し,当該職務発明に関し日本を含
む世界各国で特許権,実用新案権又は意匠権(以下,これらを一括して「知的財産20
権」という。)の登録を受ける権利を譲渡する。
(イ)被告は,職務発明をした従業員に対し,登録を受けた発明の実施又は実施許
諾(以下,これらを一括して「実施等」という。)によって顕著な功績,貢献が認
められた場合には報奨金(平成17年4月1日より効力を有する改正がされるまで
の表記は褒賞金であり,以下,同改正前のものを含めて,登録を受けた発明の実施25
等によって功績,貢献が認められた場合に支払われる報奨金を「実施報奨金」とい
う。また,実施報奨金の支払を単に「報奨」ということがある。さらに,実施報奨
金以外の報奨金について「褒賞金」と規定されているものについても「報奨金」と
表記する。)を支払う。
(ウ)平成9年度以降,実施報奨金の支払を受けた従業員は,5年後に,同じ発明
について,実施報奨金の支払に係る再度の審査を受けることができる(以下,一度5
実施報奨金の支払を受けた発明について再度実施報奨金を支払うことを「再報奨」
という。)。
イ被告は,実施報奨金の支払を求める従業員から,職務発明に係る知的財産権
について実施報奨金の支払を求める旨の推薦書の提出を受け,前記アの被告発明考
案規定の定めに従って審査し,実施報奨金の支払の可否,支給額に係る等級等を決10
定していた。
⑽実施報奨金の支払
ア被告は,平成13年12月20日,原告に対し,●(省略)●を支払った
(乙6。以下,この支払を「平成13年支払」という。平成13年支払が本件特許
1に係る実施報奨金の性質を有することは争いがないが,本件特許2ないし7及び15
本件実用新案登録8(以下,これらを一括して「本件各外国特許」といい,本件発
明2ないし7及び本件考案8を一括して「本件各外国発明」という。)に係る実施
報奨金の性質も有するか否かについては争いがある。)。
イ被告は,平成19年12月18日,原告に対し,●(省略)●(乙5。以下,
この支払を「平成19年支払」という。平成19年支払が本件特許1に係る実施報20
奨金の性質を有することは争いがないが,本件各外国特許に係る実施報奨金の性質
も有するか否かについては争いがある。)。
⑾本件訴訟の提起
原告は,平成28年9月1日,本件訴訟を提起した。
⑿消滅時効の援用25
被告は,原告に対し,平成28年10月17日の本件口頭弁論期日において,本
件各発明に係る特許を受ける権利の持分の承継に伴う各相当対価請求権(以下,こ
れらを一括して「本件各相当対価請求権」という。)につき,消滅時効を援用する
旨の意思表示をした。
3争点
本件の争点は,本件各相当対価請求権の存否及び額であり,具体的には,次の各5
点である。
⑴本件各発明の実施の有無(争点1)
ア本件発明1の実施の有無(争点1-1)
イ本件発明2の実施の有無(争点1-2)
ウ本件発明3ないし6の実施の有無(争点1-3)10
エ本件発明7の実施の有無(争点1-4)
オ本件考案8の実施の有無(争点1-5)
⑵本件各発明により被告が受けるべき利益の額(争点2)
ア本件各発明のライセンスにより被告が受けるべき利益の額(争点2-1)
イ本件各発明の実施により被告が受けるべき利益の額(争点2-2)15
⑶本件各発明について被告が貢献した程度(争点3)
⑷共同発明者間における原告の貢献度(争点4)
⑸相当の対価の額(争点5)
⑹本件各相当対価請求権の消滅時効の成否(争点6)
第3争点に対する当事者の主張20
1争点1(本件各発明の実施の有無)について
⑴争点1-1(本件発明1の実施の有無)について
【原告の主張】
アCD-R/RWドライブについて
(ア)CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクに記録,再生す25
る装置も対象としており,別紙3実施品説明書記載1⑴,⑶及び⑷,2⑴,⑶及び
⑷のとおりの構成要件1Aないし1D,1Iないし1Rに対応する構成を示してい
るから,対応する規格に準拠して製造された製品であるCD-R/RWドライブは,
少なくとも本件発明1-1,1-5,1-6の技術的範囲に属するものであり,い
ずれも本件発明1の実施品である。
(イ)被告が日本で製造,販売していた追記書換型DVDドライブ,CD-R/R5
WドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ及びBDドライブ(以下,こ
れらの製品と被告が日本で製造,販売していたCD-R/RWドライブ及びディス
クを一括して「被告製品1」という。)は,CD-R/RWディスクを記録,再生
することができるものであり,CD-R/RWドライブと同様の構成を有するもの
であるから,いずれも,構成要件1Aないし1D,1Iないし1Rを充足し,少な10
くとも本件発明1-1,1-5,1-6の技術的範囲に属するものであって,本件
発明1の実施品である。
(ウ)CD-R/RWドライブは構成要件1B,1C,1K,1L,1P,1Qを
充足するとはいえないとする被告の主張のうち,構成要件1L,1Qに対応する構
成が開示されていないとの主張は否認し,その余の主張に対する反論は次のとおり15
である。
a構成要件1B(本件発明1-1)
次の各点に照らせば,CD-R/RWドライブは,全て「線速度一定方式で記録
する」に対応する構成を有しており,構成要件1Bを充足する。
(a)「線速度一定方式で記録する」は,ディスクの記録密度を一定にすること20
ができる方式で記録することを意味すると解すべきである。
(b)16倍速以上の記録をゾーンCLVやパーシャルCAVで行うCD-R/
RWドライブであっても,12倍速以下の記録は必ずCLV方式で行われていた。
(c)ゾーンCLVやパーシャルCAVも,一部はCLV方式で記録するもので
ある。25
b構成要件1C(本件発明1-1)
「情報信号の内容を表す目次情報」は,記録される情報の内容の一部を表すもの
であり,記録内容自体を推知させる情報である必要はないと解されるから,CD-
R/RWドライブにおけるトラック開始位置情報等の目次情報も,これに該当する。
c構成要件1K(本件発明1-5),1P(本件発明1-6)
「メモリ手段」は,リードインエリアに記録すべき目次情報を所定の領域に保持5
する手段や手順を示すものであり,ハードウェアに限定されるものではないから,
CD-R/RWドライブの記録手段もこれを充足する。
イCD-R/RWディスクについて
(ア)CD-R規格書及びCD-RW規格書は,別紙3実施品説明書記載1⑵,2
⑵のとおりの構成要件1Eないし1Hに対応する構成を示しているから,対応する10
規格に準拠して製造された製品であるCD-R/CD-RWディスクは,少なくとも
本件発明1-3の技術的範囲に属するものであり,いずれも本件発明1の実施品で
ある。
(イ)CD-R/RWディスクは構成要件1Eないし1Gを充足するとはいえない
とする被告の主張に対する反論は,前記ア(ウ)a及びbと同様である。15
ウDVD-R/RWドライブについて
(ア)DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクに記録,再
生する装置も対象としており,別紙3実施品説明書記載3⑴,⑶及び⑷,4⑴,⑶
及び⑷のとおりの構成要件1Aないし1D,1Iないし1Rに対応する構成を示し
ているから,対応する規格に準拠して製造された製品であるDVD-R/RWドラ20
イブは,少なくとも本件発明1-1,1-5,1-6の技術的範囲に属するもので
あり,いずれも本件発明1の実施品である。
(イ)DVD-R/RWドライブは構成要件1B,1C,1K,1L,1P,1Q
を充足するとはいえないとする被告の主張のうち,構成要件1L,1Qに対応する
構成が開示されていないとの主張は否認し,その余の主張に対する反論は次のとお25
りである。
a構成要件1B(本件発明1-1)
次の各点等に照らせば,DVD-R/RWドライブは,全て「線速度一定方式で
記録する」に対応する構成を有しており,構成要件1Bを充足する。
①「線速度一定方式で記録する」は,ディスクの記録密度を一定にすることが
できる方式で記録することを意味すると解すべきである。5
②DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,ディスク全体にわたるチャ
ネルビット長を固定長とすることが記載されており,同じ長さのチャネルビット長
は当然に同じ速度で記録されることになるため,「線速度一定方式で記録する」こ
とが記載されているということができる。
b構成要件1C(本件発明1-1)10
「情報信号の内容を表す目次情報」は,記録される情報の内容の一部を表すもの
であり,記録内容自体を推知させる情報である必要はないと解されるから,DVD
-R規格書及びDVD-RW規格書における「開始セクタ番号」,「最終記録アド
レス」も,これに該当する。
c構成要件1K(本件発明1-5)15
前記bのとおり,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,「情報信号の
内容を表す目次情報」に該当する情報が記載されている。
また,「メモリ手段」は,リードインエリアに記録すべき目次情報を所定の領域
に保持する手段や手順を示すものであり,ハードウェアに限定されるものではない
から,DVD-R/RWドライブの記録手段もこれを充足する。20
d構成要件1P(本件発明1-6)
「メモリ手段」の意義は,前記cのとおりであり,DVD-R/RWドライブの
記録手段は,構成要件1Pの「メモリ手段」に該当する。
エDVD-R/RWディスクについて
(ア)DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,別紙3実施品説明書記載3⑵,25
4⑵のとおりの構成要件1Eないし1Hに対応する構成を示しているから,対応す
る規格に準拠して製造された製品であるDVD-R/RWディスクは,構成要件1
Eないし1Hを充足し,少なくとも本件発明1-3の技術的範囲に属するものであ
り,いずれも本件発明1の実施品である。
(イ)DVD-R/RWディスクは構成要件1Eないし1Gを充足するとはいえな
いとする被告の主張に対する反論は,前記ウ(イ)a及びbと同様である。5
オDVD+Rドライブについて
(ア)DVD+R規格書は,ディスクに記録,再生する装置も対象としており,別
紙3実施品説明書記載5⑴のとおりの構成要件1Aないし1Dに対応する構成を示
しているから,この規格に準拠して製造された製品であるDVD+Rドライブは,
少なくとも本件発明1-1の技術的範囲に属するものであって,本件発明1の実施10
品である。
(イ)被告の主張に対する反論は次のとおりである。
a構成要件1B
次の各点に照らせば,DVD+Rドライブは,全て「線速度一定方式で記録する」
に対応する構成を有しており,構成要件1Bを充足する。15
①「線速度一定方式で記録する」は,ディスクの記録密度を一定にすることが
できる方式で記録することを意味すると解すべきである。
②CAV方式で記録する機能を備えたDVD+Rドライブであっても,いずれ
の製品もCLV方式で記録する機能を備えている。
b構成要件1C20
「情報信号の内容を表す目次情報」は,記録される情報の内容の一部を表すもの
であり,記録内容自体を推知させる情報である必要はないと解されるから,DVD
+R規格書における「セッションのスタート及びエンドを規定する情報」も,これ
に該当する。
カDVD+Rディスクについて25
(ア)DVD+R規格書は,別紙3実施品説明書記載5⑵のとおりの構成要件1E
ないし1Hに対応する構成を示しているから,この規格に準拠して製造された製品
であるDVD+Rディスクは,構成要件1Eないし1Hを充足し,少なくとも本件
発明1-3の技術的範囲に属するものであり,本件発明1の実施品である。
(イ)DVD+Rディスクは構成要件1Eないし1Gを充足するとはいえないとす
る被告の主張に対する反論は,前記オ(イ)と同様である。5
キMD機器について
(ア)MD規格書は,光ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実施品
説明書記載6⑴のとおりの構成要件1Aないし1Dに対応する構成を示しているか
ら,MD規格に準拠して製造された記録機能を有するMD機器(以下,単に「MD
機器」という。)は,少なくとも本件発明1-1の技術的範囲に属するものであり,10
本件発明1の実施品である。
(イ)被告は,MD規格書に構成要件1Cに対応する構成が開示されていない旨主
張するが,同構成要件の「一時的に」は,目次情報をリードインエリア近傍の領域
に恒久的に記録する場合を排除するものではないと解すべきところ,リードインエ
リアに記録されている目次情報と,UTOCエリアに記録されているUTOCは,15
相互に関連する情報であり,リードインエリアにUTOC開始アドレスが記録され
ていることなどに照らせば,目次情報は,関連するUTOCがUTOCエリアに記
録されることによって,UTOCエリアに「一時的に」記録されているということ
ができるから,MD規格書に構成要件1Cに対応する構成は開示されている。
クMDディスクについて20
(ア)MD規格書は,別紙3実施品説明書記載6⑵とおりの構成要件1Eないし1
Hに対応する構成を示しているから,この規格に準拠して製造された製品であるM
Dディスクは,少なくとも本件発明1-3の技術的範囲に属するものであり,本件
発明1の実施品である。
(イ)MDディスクは構成要件1Gを充足するとはいえないとする被告の主張に対25
する反論は,前記キ(イ)と同様である。
【被告の主張】
アCD-R/RWドライブについて
CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクの構成を定めたもの
にすぎず,装置の客観的構成を確定することができるものではない。
また,次の(ア)ないし(カ)のとおり,CD-R/RWドライブは,構成要件1B,5
1C,1K,1L,1P,1Qを充足しないので,本件発明1-1,1-5,1-
6の技術的範囲に属するとはいえず,本件発明1の実施品であるとはいえない。
同様に,CD-R/RWディスクを記録,再生することができる追記書換型DV
Dドライブ及びBDドライブも,本件発明1の実施品であるとはいえない。
(ア)構成要件1B(本件発明1-1)10
「線速度一定方式で記録する」とは,線速度一定方式でディスクを回転制御して
記録することを意味すると解すべきところ,CD-R規格書及びCD-RW規格書
にその点は明確に記載されておらず,ゾーンCLVやパーシャルCAVでディスク
を回転制御する記録装置も存在していたこと(乙109)からすると,CD-R/
RWドライブの全てがこれに対応する構成を備えるものとはいえない。15
(イ)構成要件1C(本件発明1-1)
「情報信号の内容を表す目次情報」とは,「曲番号」のように,情報の内容自体
を推知させる情報を含む必要があると解すべきであり,コンピュータ用の外部記録
媒体としてコンピュータデータのようなデジタルデータを記録する場合にはこれを
充足するとはいえない。20
(ウ)構成要件1K(本件発明1-5)
CD-R規格書及びCD-RW規格書には,構成要件1Kの「メモリ手段」を用
いることが開示されておらず,蓄積された目次情報を読み出すタイミングや記録の
方法も具体的に開示されていないから,CD-R/RWドライブは,いずれも同構
成要件を充足するとはいえない。25
(エ)構成要件1L(本件発明1-5)
CD-R規格書及びCD-RW規格書には,構成要件1Lに対応する構成が開示
されていないから,CD-R/RWドライブは,いずれも同構成要件を充足すると
はいえない。
(オ)構成要件1P(本件発明1-6)
CD-R規格書及びCD-RW規格書には,構成要件1Pの「メモリ手段」を用5
いることが開示されておらず,CD-R/RWドライブは,いずれもこれを充足す
るとはいえない。
(カ)構成要件1Q(本件発明1-6)
CD-R規格書及びCD-RW規格書には,構成要件1Qに対応する構成が開示
されていないから,CD-R/RWドライブは,いずれも同構成要件を充足すると10
はいえない。
イCD-R/RWディスクについて
前記ア(ア),(イ)と同様に,CD-R/RWディスクは,いずれも「線速度一定方
式で記録される」(構成要件1E),「上記情報信号の内容を表す目次情報」(構
成要件1F),「上記目次情報」(構成要件1G)を充足するとはいえず,本件発15
明1-3の技術的範囲に属するとはいえないから,本件発明1の実施品であるとは
いえない。
ウDVD-R/RWドライブについて
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクの構成を定めた
ものにすぎず,装置の客観的構成を確定することができるものではない。20
また,次の(ア)ないし(カ)のとおり,DVD-R/RWドライブは,構成要件1B,
1C,1K,1L,1P,1Qを充足しないので,本件発明1-1,1-5,1-
6の技術的範囲に属するとはいえず,本件発明1の実施品であるとはいえない。
(ア)構成要件1B(本件発明1-1)
ゾーンCLVやパーシャルCAVでディスクを回転制御する記録装置も存在して25
いたこと(乙110),DVD-R規格書及びDVD-RW規格書にはチャネルビ
ット長を固定長とすることが示されているにとどまり,線速度一定とすることは示
されていないことからすると,DVD-R/RWドライブの全てが「線速度一定方
式で記録する」を充足するとはいえない。
(イ)構成要件1C(本件発明1-1)
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書においてRMDとして扱われているデ5
ータは「開始セクタ番号」,「最終記録アドレス」のみであり,これらが情報の内
容自体を推知させる情報であるかは明らかでないから,DVD-R/RWドライブ
は,いずれも「情報信号の内容を表す目次情報」を充足するとはいえない。
(ウ)構成要件1K(本件発明1-5)
前記(イ)のとおり,DVD-R/RWドライブは,いずれも「リードインエリア10
に記録すべき上記情報信号の内容を表す目次情報」を充足するとはいえない。
また,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,「メモリ手段」を用いる
ことが開示されておらず,蓄積された目次情報を読み出すタイミングや記録の方法
も具体的に開示されていないから,DVD-R/RWドライブは,いずれもこの点
を充足するとはいえない。15
(エ)構成要件1L(本件発明1-5)
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,構成要件1Lに対応する構成が
開示されていないから,DVD-R/RWドライブは,いずれも同構成要件を充足
するとはいえない。
(オ)構成要件1P(本件発明1-6)20
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,「メモリ手段」を用いることが
開示されておらず,DVD-R/RWドライブは,いずれもこれを充足するとはい
えない。
(カ)構成要件1Q(本件発明1-6)
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,構成要件1Qに対応する構成が25
開示されていないから,DVD-R/RWドライブは,いずれも同構成要件を充足
するとはいえない。
エDVD-R/RWディスクについて
前記ウ(ア),(イ)と同様に,DVD-R/RWディスクは,いずれも「線速度一定
方式で記録される」(構成要件1E),「上記情報信号の内容を表す目次情報」
(構成要件1F),「上記目次情報」(構成要件1G)を充足するとはいえず,本5
件発明1-3の技術的範囲に属するとはいえないから,本件発明1の実施品である
とはいえない。
オDVD+Rドライブについて
DVD+R規格書は,ディスクの構成を定めたものにすぎず,装置の客観的構成
を確定することができるものではない。10
また,次の(ア)及び(イ)のとおり,DVD+Rドライブは,構成要件1B,1Cを
充足しないので,本件発明1-1の技術的範囲に属するとはいえず,本件発明1の
実施品であるとはいえない。
(ア)構成要件1B
DVD+R規格書に,線速度一定方式でディスクを回転制御して記録することは15
明確に記載されておらず,CAV方式でディスクを回転制御する記録装置も存在し
ていたこと(乙110,121)からすると,DVD+Rドライブの全てが「線速
度一定方式で記録する」を充足するとはいえない。
(イ)構成要件1C
原告の主張する「セッションのスタート及びエンドを規定する情報」が情報の内20
容自体を推知させる情報であるかは明らかでないから,DVD+Rドライブは「情
報信号の内容を表す目次情報」を充足するとはいえない。
カDVD+Rディスクについて
前記オ(ア),(イ)と同様に,DVD+Rディスクは,「線速度一定方式で記録され
る」(構成要件1E),「上記情報信号の内容を表す目次情報」(構成要件1F),25
「上記目次情報」(構成要件1G)を充足するとはいえず,本件発明1-3の技術
的範囲に属するとはいえないから,本件発明1の実施品であるとはいえない。
キMD機器について
(ア)MD規格書は,ディスクの構成を定めたものにすぎず,装置の客観的構成を
確定することができるものではない。
(イ)構成要件1Cの「リードインエリア近傍の領域に一時的に記録」される「目5
次情報」と「リードインエリアに記録される…目次情報」は同一の情報であると解
すべきところ,MD規格書において,UTOCエリアに記録されるUTOCと,リ
ードインエリアにあらかじめ記録された目次情報は異なる情報であり,UTOCが
リードインエリアに最終的に記録されるものではないから,構成要件1Cに対応す
る構成は開示されていない。したがって,MD機器は,構成要件1Cを充足しない10
ので,本件発明1-1の技術的範囲に属するとはいえず,本件発明1の実施品であ
るとはいえない。
クMDディスクについて
前記キ(イ)と同様の理由により,MDディスクは,構成要件1Gを充足するとは
いえず,本件発明1-3の技術的範囲に属するとはいえないから,本件発明1の実15
施品であるとはいえない。
⑵争点1-2(本件発明2の実施の有無)について
【原告の主張】
アCD-R/RWドライブについて
(ア)CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置20
も対象としており,別紙3実施品説明書記載1⑸,2⑸のとおりの構成要件2Aな
いし2Eに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製
品であるCD-R/RWドライブは,少なくとも本件発明2-1の技術的範囲に属
するものであり,いずれも本件発明2の実施品である。
(イ)被告が米国で製造,販売していた追記書換型DVDドライブ,CD-R/R25
WドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ及びBDドライブ(以下,こ
れらの製品と被告が米国で製造,販売していたCD-R/RWドライブを一括して
「被告製品2」という。)は,CD-R/RWディスクを記録,再生することがで
きるものであり,CD-R/RWドライブと同様の構成を有するものであるから,
いずれも,構成要件2Aないし2Eを充足し,少なくとも本件発明2-1の技術的
範囲に属するものであって,本件発明2の実施品である。5
イDVD-R/RWドライブについて
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置
も対象としており,別紙3実施品説明書記載3⑸,4⑸のとおりの構成要件2Aな
いし2Eに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製
品であるDVD-R/RWドライブは,少なくとも本件発明2-1の技術的範囲に10
属するものであって,いずれも本件発明2の実施品である。
ウDVD+Rドライブについて
DVD+R規格書は,ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実施品
説明書記載5⑶のとおりの構成要件2Aないし2Eに対応する構成を示しているか
ら,この規格に準拠して製造された製品であるDVD+Rドライブは,少なくとも15
本件発明2-1の技術的範囲に属するものであって,本件発明2の実施品である。
エMD機器について
本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る明細書及
び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件発明2の
実施品である。20
【被告の主張】
アCD-R/RWドライブについて
CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクの構成を定めたもの
にすぎず,装置の客観的構成を確定することができるものではない。取り分け,構
成要件2Dの「書込手段を制御する制御手段」は,装置としての具体的な制御動作25
を規定するものであり,上記各規格書に基づいてこれに対応する構成を認定するこ
とはできない。
また,構成要件2Dの「記録領域以外の所定の領域」は「記録領域」と異なる領
域を意味し,「記録領域」の一部はこれに当たらないところ,CD-R/RWドラ
イブにおける「プログラムエリアの空き領域」は,プログラムエリアの一部である
から,「記録領域以外の所定の領域」に当たらない。5
したがって,CD-R/RWドライブは,本件発明2-1の技術的範囲に属する
とはいえず,本件発明2の実施品であるとはいえない。
同様に,CD-R/RWディスクを記録,再生することができる追記書換型DV
Dドライブ及びBDドライブも,本件発明2の実施品であるとはいえない。
イDVD-R/RWドライブ,DVD+Rドライブ,MD機器について10
DVD-R/RWドライブ,DVD+Rドライブ,MD機器についての原告の主
張は争う。
⑶争点1-3(本件発明3ないし6の実施の有無)について
【原告の主張】
アCD-R/RWドライブについて15
CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置も対
象としており,別紙3実施品説明書記載1⑹,2⑹のとおりの構成要件3Aないし
3Cに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製品で
あるCD-R/RWドライブは,少なくとも本件発明3-1の技術的範囲に属し,
これと同一の発明である本件発明4-1,5-1,6-1の技術的範囲にも属する20
ものであり,いずれも本件発明3ないし6の実施品である。
イDVD-R/RWドライブについて
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置
も対象としており,別紙3実施品説明書記載3⑹,4⑹のとおりの構成要件3Aな
いし3Cに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製25
品であるDVD-R/RWドライブは,少なくとも本件発明3-1の技術的範囲に
属するものであって,いずれも本件発明3ないし6の実施品である。
ウDVD+Rドライブについて
DVD+R規格書は,ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実施品
説明書記載5⑷のとおりの構成要件3Aないし3Cに対応する構成を示しているか
ら,この規格に準拠して製造された製品であるDVD+Rドライブは,少なくとも5
本件発明3-1の技術的範囲に属するものであって,本件発明3ないし6の実施品
である。
エMD機器について
本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る明細書及
び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件発明3な10
いし6の実施品である。
【被告の主張】
原告の主張する各製品は,いずれも「目次情報が記録されていることを示してい
る場合」,「目次情報がまだ記録されていないことを示している場合」(構成要件
3C)という分岐処理を行うものではないから,同構成要件を充足するとはいえな15
い。
また,CD-RWドライブ,DVD-RWドライブ,MD機器については,そも
そも「ライトワンス型光ディスク」(構成要件3A)ではない。
したがって,原告の主張する各製品は,いずれも本件発明3ないし6の実施品で
あるとはいえない。20
⑷争点1-4(本件発明7の実施の有無)について
【原告の主張】
アCD-R/RWドライブ及びディスクについて
(ア)CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置
も対象としており,別紙3実施品説明書記載1⑺,2⑺のとおりの構成要件7Aな25
いし7Cに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製
品であるCD-R/RWドライブは,少なくとも本件発明7-1の技術的範囲にも
属するものであって,いずれも本件発明7の実施品である。
(イ)CD-R規格書及びCD-RW規格書は,別紙3実施品説明書記載1⑻,2
⑻のとおりの構成要件7Dないし7Fに対応する構成を示しているから,対応する
規格に準拠して製造された製品であるCD-R/RWディスクは,構成要件7Dな5
いし7Fを充足し,少なくとも本件発明7-18の技術的範囲に属するものであり,
いずれも本件発明7の実施品である。
(ウ)なお,CD-R/RWディスク上には,らせん状のトラックが形成されるが,
トラックに沿って形成される各領域は全て同心円状に配置されるものであるから,
CD-R/RWドライブ及びディスクは,構成要件7C,7Eの「同心円状」を充10
足する。
イDVD-R/RWドライブ及びディスクについて
(ア)DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する
装置も対象としており,別紙3実施品説明書記載3⑺,4⑺のとおりの構成要件7
Aないし7Cに対応する構成を示しているから,DVD-R/RWドライブは,少15
なくとも本件発明7-1の技術的範囲に属するものであって,いずれも本件発明7
の実施品である。
(イ)DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,別紙3実施品説明書記載3⑻,
4⑻のとおりの構成要件7Dないし7Fに対応する構成を示しているから,対応す
る規格に準拠して製造された製品であるDVD-R/RWディスクは,構成要件720
Dないし7Fを充足し,少なくとも本件発明7-18の技術的範囲に属するもので
あり,いずれも本件発明7の実施品である。
(ウ)なお,DVD-R/RWディスク上には,らせん状のトラックが形成される
が,トラックに沿って形成される各領域は全て同心円状に配置されるものであるか
ら,DVD-R/RWドライブ及びディスクは,構成要件7C,7Eの「同心円状」25
を充足する。
ウDVD+Rドライブ及びディスクについて
(ア)DVD+R規格書は,ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実
施品説明書記載5⑸のとおりの構成要件7Aないし7Cに対応する構成を示してい
るから,この規格に準拠して製造された製品であるDVD+Rドライブは,少なく
とも本件発明7-1の技術的範囲に属するものであって,本件発明7の実施品であ5
る。
(イ)DVD+R規格書は,別紙3実施品説明書記載5⑹のとおりの構成要件7D
ないし7Fに対応する構成を示しているから,この規格に準拠して製造された製品
であるDVD+Rディスクは,構成要件7Dないし7Fを充足し,少なくとも本件
発明7-18の技術的範囲に属するものであり,本件発明7の実施品である。10
(ウ)なお,DVD+Rディスク上には,らせん状のトラックが形成されるが,ト
ラックに沿って形成される各領域は全て同心円状に配置されるものであるから,D
VD+Rドライブ及びディスクは,構成要件7C,7Eの「同心円状」を充足する。
エMD機器及びMDディスクについて
(ア)MD規格書は,光ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実施品15
説明書記載6⑶のとおりの構成要件7Aないし7Cに対応する構成を示しているか
ら,この規格に準拠して製造された製品であるMD機器は,少なくとも本件発明7
-1の技術的範囲に属するものであり,本件発明7の実施品である。
(イ)MD規格書は,別紙3実施品説明書記載6⑷のとおりの構成要件7Dないし
7Fに対応する構成を示しているから,この規格に準拠して製造された製品である20
MDディスクは,少なくとも本件発明7-18の技術的範囲に属するものであり,
本件発明7の実施品である。
(ウ)なお,MDディスクには,らせん状のトラックが形成されるが,トラックに
沿って形成される各領域は全て同心円状に配置されるものであるから,MD機器及
びMDディスクは,構成要件7C,7Eの「同心円状」を充足する。25
【被告の主張】
アCD-R/RWディスクについて
構成要件7C,7Eの「同心円状」は,「拡大記録領域」と「第1の記録領域」
が,同じ中心をもつ,2個以上の円弧として構成されていることを意味すると解す
べきところ,CD-R/RWディスクのトラックは,らせん状に内周から外周に連5
続するものであり,円弧を描くものではないから,PMAと情報エリアが「同心円
状」に設けられているとはいえず,同構成要件を充足するとはいえない。
イその他の製品について
その他の製品についての原告の主張は争う。
⑸争点1-5(本件考案8の実施の有無)について10
【原告の主張】
アCD-R/RWドライブについて
CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置も対
象としており,別紙3実施品説明書記載1⑼,2⑼のとおりの構成要件8Aないし
8Dに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製品で15
あるCD-R/RWドライブは,少なくとも本件考案8-1の技術的範囲に属する
ものであって,いずれも本件考案8の実施品である。
イDVD-R/RWドライブについて
DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクに記録する装置
も対象としており,別紙3実施品説明書記載3⑼,4⑼のとおりの構成要件8Aな20
いし8Dに対応する構成を示しているから,対応する規格に準拠して製造された製
品であるDVD-R/RWドライブは,少なくとも本件考案8-1の技術的範囲に
属するものであって,いずれも本件考案8の実施品である。
ウDVD+Rドライブについて
DVD+R規格書は,ディスクに記録する装置も対象としており,別紙3実施品25
説明書記載5⑺のとおりの構成要件8Aないし8Dに対応する構成を示しているか
ら,この規格に準拠して製造された製品であるDVD+Rドライブは,少なくとも
本件考案8-1の技術的範囲に属するものであって,本件考案8の実施品である。
エMD機器について
本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る明細書及
び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件考案8の5
実施品である。
【被告の主張】
原告の主張する各製品は,いずれも「一時領域」,「拡大記録領域」がディスク
の「外側」に存在するものではないから,構成要件8Bを充足するとはいえず,本
件考案8の実施品であるとはいえない。10
2争点2(本件各発明により被告が受けるべき利益の額)について
⑴争点2-1(本件各発明のライセンスにより被告が受けるべき利益の額)
について
【原告の主張】
ア被告が収受し,又は免れたライセンス料の額15
(ア)被告が収受し,又は免れたライセンス料の額は,別紙4原告計算表(主位的)
の「ライセンス」欄における「対象製品」欄記載の製品ごとに計算された同別紙⑤
欄に記載された金額である。具体的には,上記製品ごとに,同別紙①欄記載の販売
数又は売上げに同別紙②欄記載の補正係数0.8を乗じた上で,同別紙③欄記載の
実施料率又は単価を乗じ,更に同別紙④記載の被告の●(省略)●を乗じて算出さ20
れている金額である。
上記の販売数及び売上げは,株式会社日本エコノミックセンター(以下「日本エ
コノミックセンター」という。)発行の市場調査等の統計データにおける販売数が,
被告の自己実施製品,本件ジョイント・ライセンス・プログラムの対象となった製
品,被告が単独でライセンスをしている製品,クロスライセンスの対象となった製25
品の販売数を合計した全世界の合計数であるといえることから,そこから被告の自
己実施製品の販売数を控除して算出したものであって,合理的なものである。
(イ)被告の主張するライセンス料の額は,本件各発明を実施する製品の売上げが
増加し,ライセンスを行う企業も増加しているにもかかわらず収受額が減少する点
で不自然であり,公開された統計データにおいて推計される実施品の販売数量に対
して極めて低額であるなど,不正確かつ不十分である。また,被告が単独で得たラ5
イセンス料(甲137)やライセンスを実施する規格団体であるDVD3C,DV
D+RWアライアンス,One-Red,One-Blueからのライセンス料,
クロスライセンスによって免れたライセンス料を含んでいない点でも不十分である。
さらに,被告の主張は,フィリップス社作成に係るライセンス対象の特許(以下
「ライセンス対象特許」という。)のリスト(以下「ライセンス対象特許リスト」10
という。)の記載を前提とするものであるが,ライセンス対象特許リストは,例え
ば,DVD-R/RWレコーダーには本件各特許が全て掲載されているのに対して,
DVD-R/RWディスクには本件各特許がいずれも掲載されていないなど不自然
な点があり,信用することができないものである。
イ前記ライセンス料に対する本件各発明の貢献度15
(ア)被告の実施報奨制度において,本件各特許が1個の「ファミリー」を構成す
るものとして取り扱われていたことからすると,被告が収受したライセンス料等に
おける本件各発明の貢献度を算定するに当たっては,本件各特許及びそれらと実質
的に同一の特許によって構成される「ファミリー」全体を一体として評価すべきで
ある。20
また,規格において,ライセンス対象とされる特許が必須特許であるか否かは極
めて重要であるから,本件各特許のような必須特許とそうでない特許は区別すべき
である。
以上に照らせば,別紙4原告計算表(主位的)の「ライセンス」欄における「対
象製品」欄記載の各製品について被告が収受し又は免れたライセンス料に対する本25
件各発明の貢献度は,被告の主張するライセンス対象特許リストのうち,製品と対
応するパートに必須特許として掲載された登録済みの特許における,本件各特許及
びそれらと実質的に同一の特許の占める割合等を踏まえて算定すべきであり,同別
紙⑥欄のとおりである。
(イ)予備的に,別紙5原告計算表(予備的)の「ライセンス」欄における「対象
製品」欄記載の製品ごと,また,発明又は考案ごとに,被告が収受したライセンス5
料等における本件各発明の貢献度を算定すると,本件発明1につき同別紙②欄,本
件発明2につき同別紙④欄,本件発明3ないし6につき同別紙⑥欄,本件発明7に
つき同別紙⑧欄,本件考案8につき同別紙➉欄のとおりである。
(ウ)被告の主張に対する反論は次のとおりである。
a被告の主張する音楽用CDに係る特許は,レコード針,テープレコーダ,ヨ10
ーヨー関係等のCD関連製品で実施されないものがほとんどであり,必須特許は含
まないものであって,被告が得たライセンス収入に貢献するものではない。
b被告の主張するヤマハ株式会社(以下「ヤマハ」という。)の出願に係る特
開平2-208885号公報(乙28,以下「乙28公報」という。)記載の発明
(以下「乙28発明」という。)は,乙28公報の第2図左上の「ディスク内周」15
がエリアを特定したものではないのに対し,本件各発明は,「拡大記録領域」等が
「ディスク内周」の所定のエリアに配置される点で相違しており,これらが実質的
に同一であるとはいえない。
cディスクにデータを全て複製する場合であっても,途中でエラーが起こるリ
スクがあるから,ディスクアトワンス方式のように,リードインエリアから書き始20
めるのは技術的に不合理であり,いったん拡大記録領域に記録した上でファイナラ
イズするのが通例である。
d被告の指摘する文献(乙140)には,4倍,8倍,12倍,16倍の書込
み等がCLV方式で行われることも記載されている。また,ゾーンCLVやパーシ
ャルCAVで書込み等がされる場合も,一部にCLV方式が採用されていることに25
変わりなく,本件発明1が実施されている。
【被告の主張】
ア被告が収受したライセンス料の額
(ア)本件ジョイント・ライセンス・プログラムに基づくフィリップス社と共同の
実施許諾により,被告が配分を受けたライセンス料の額は,①CD-R/RWドラ
イブに係るものにつき,平成15年から平成24年までに合計●(省略)●円,②5
DVD-Recordableドライブに係るものにつき,平成15年から平成2
3年までに合計●(省略)●円,③CD-Rディスクに係るものにつき,平成13
年から平成22年までに合計●(省略)●円,④CD-RWディスクに係るものに
つき,平成15年から平成17年までに合計●(省略)●円である。
(イ)原告が主張する被告単独のライセンス(甲137)は本件各特許を対象とす10
るものではなく,DVD3Cから収受したライセンス料は前記(ア)に含まれている。
また,被告は,DVD+RWアライアンス,One-Red,One-Blueか
ら本件各発明についてライセンス料を収受していない。さらに,本件各特許を代表
特許又は提示特許とするクロスライセンスは存在しないから,本件各発明がクロス
ライセンスの対象とされたことによって被告がライセンス料の支払を免れたとはい15
えない。
(ウ)また,原告の主張する統計データにおける販売数は全世界のものであり,被
告が本件各発明を実施する全てのライセンシーに対して実施許諾をすることができ
るものではないから,原告の主張する販売数の算定方法は合理的なものとはいえな
い。20
イ前記ライセンス料に対する本件各発明の貢献度
次の各点に照らせば,被告が受領したライセンス料に対する本件各発明の貢献度
はわずかなものである。
(ア)被告が受領したライセンス料に対しては,ライセンス対象特許リストに掲載
されている多数のライセンス対象特許のほか,音楽用CDに係る2508件の特許25
の貢献がある。
(イ)本件各特許の出願前の出願に係る乙28発明は,本件各発明と実質的に同一
の発明であり,本件各特許には無効理由が存在していた。
(ウ)本件各特許が登録された当時,CD-Rディスク等の値段は十分に下がって
おり,ユーザーにとって追記の手間を掛けるよりも新たなディスクを購入して記録
する方が便宜であった。5
(エ)本件各発明は,CD-RW,DVD-RWのように書換できるディスクとの
関係では,特に技術的意義に乏しいものであった。
(オ)CD-Rディスクへの記録に最も多く使用されるディスクアトワンス方式で
は,追記する必要はない。
(カ)8倍,16倍といった高速での記録方式では,ゾーンCLVやパーシャルC10
AVを用いるのが通常であり(乙140),本件発明1の「線速度一定方式」は用
いられない。
(キ)本件各発明は,ライセンシーからも重要特許として扱われていなかった。
⑵争点2-2(本件各発明の実施により被告が受けるべき利益の額)につい
て15
【原告の主張】
ア被告製品1及び2の売上げ
被告は,平成7年から平成21年まで,日本及び米国において,被告製品1及び
2を製造,販売しており,その売上げは,別紙4原告計算表(主位的)の①´欄の
とおりである。20
イ超過売上げの有無及び割合
次の各点等に照らせば,前記アの売上げには,他社に本件各発明の実施を禁止し
たことに基づいてあげた利益,すなわち,他社に実施許諾をしていた場合に予想さ
れる売上げを超える売上げである超過売上げが認められ,その割合は20%を下ら
ない。25
(ア)被告がオープンライセンスポリシーを採用していても,ライセンス料の負担
に相応して製品価格等の競争力に差が生じ,ライセンシーに規格や製品の改変を禁
止することにより製品開発における競争力にも差が生じるから,超過売上げが認め
られることに変わりはない。また,被告において,その子会社を含め,ライセンシ
ーに対して同一の条件でライセンスをしていたともいえない。
(イ)被告が主張するDVDディスク及びBDディスク等の光ディスク,SDカー5
ド,USBメモリ,クラウドストレージは,本件各発明と併存する技術であり,代
替技術であるとはいえない。
(ウ)被告が製造,販売していたというフロッピーディスク,メモリースティック
等は本件各発明の代替技術に係る実施品であるとはいえない。
(エ)本件各発明は,ディスクの最内周に拡大記録領域を設けることで音楽用CD10
等と互換性を有する追記可能な光ディスクを実現するものであり,必須特許として
規格に採用されていることからも明らかなように,技術的価値は極めて高い。
ウ仮想実施料率
社団法人発明協会発行の「実施料率〔第5版〕」(甲19,乙179,以下「実
施料率〔第5版〕」という。)の「20.電子計算機・その他の電子応用装置」にお15
ける実施料率の平均はイニシャル(契約時の頭金)なしで33.2%,イニシャル
ありで13.5%であり,株式会社帝国データバンクの調査によっても,特許権の
ロイヤリティ料率の平均値は3.7%であるとされていること(甲20)などに照
らせば,仮想実施料率は3%を下らない。
エ本件各発明の貢献度20
(ア)前記(1)【原告の主張】イ(ア)のとおり,本件各発明の貢献度を認定するに当
たっては,本件各特許及びそれらと実質的に同一の特許によって構成されるファミ
リー全体を一体として評価すべきであり,必須特許とそれ以外の特許は区別すべき
である。
そうすると,別紙4原告計算表(主位的)の「自己実施」欄における対象製品に25
ついて,被告が得た利益における本件各発明の貢献度は,被告の指摘するライセン
ス対象特許リストのうち,対応するパートに必須特許として掲載された登録済みの
特許に占める,本件各特許及びそれらと実質的に同一の特許の割合等によって算定
すべきであり,同別紙⑥欄のとおりである。
(イ)予備的に,別紙5原告計算表(予備的)の「自己実施」欄における「対象製
品」欄記載の製品ごと,また,発明又は考案ごとに,実施によって被告が得た利益5
における本件各発明の貢献度を算定すると,本件発明1につき同別紙②欄,本件発
明2につき同別紙④欄のとおりである。
(ウ)前記⑴【原告の主張】イ(ウ)aのとおり,被告の主張する音楽用CDに係る
特許は,CD関連製品で実施されないものがほとんどであり,必須特許は含まない
ものであるほか,被告の主張する有用特許は被告製品1及び2に実施されているか10
も明らかでないから,これらは実施によって被告が得た利益に貢献するものである
とはいえない。その他の被告の主張に対する反論は,前記⑴【原告の主張】イ(ウ)
bないしdのとおりである。
【被告の主張】
ア被告製品1及び2の売上げ15
被告製品1及び2の販売によって被告が得た売上げは,次のとおりである。ただ
し,本件特許1の登録日は平成12年4月28日であるから,日本における同日以
前の売上げは被告が受けるべき利益を基礎付けるものではない。
(ア)CD-R/RWドライブ(日本及び米国の合計)
平成7年から平成18年まで:●(省略)●円20
(イ)追記書換型DVDドライブ及びBDドライブ,CD-R/RWドライブとD
VD-ROMドライブの複合ドライブ(日本及び米国の合計)
平成14年から平成18年まで:●(省略)●円
(ウ)CD-Rディスク(日本)
平成9年から平成21年まで:●(省略)●円25
(エ)CD-RWディスク(日本)
平成12年から平成21年まで:●(省略)●円
イ超過売上げの有無及び割合
次の各点に照らせば,前記アの売上げについて,超過売上げは認められず,仮に
認められたとしても1%程度であるというべきである。
(ア)被告は,本件特許1及び2について,多数のライセンシーに対して比較的低5
廉かつ合理的な実施料率でライセンスを行い,かつ,ライセンシーの性質による差
別を行わずに一括して複数の特許をライセンスするという,いわゆるオープンライ
センスポリシーを採用していた。
(イ)CD-R/RWドライブ及びディスクが本件発明1及び2の実施品である
としても,本件発明1及び2には,記録可能なDVDディスク,BDディスクとい10
った光ディスクはもとより,SDカード,USBメモリ,クラウドストレージとい
った多数の代替技術が存在した。
(ウ)被告も,5.25インチ光磁気ディスク,3.5インチ光磁気ディスク,3.
5インチマイクロフロッピーディスク,DVDディスクやBDディスクなどの光デ
ィスク,メモリースティック等の記録メディアのような代替製品を製造,販売して15
いた。
(エ)一般に,標準規格に準拠した製品の市場形成は標準化及び規格化によって促
進されるものであり,ユーザーが利用を開始すると代替規格への変更が困難になる
ロックインという現象が生じることが売上げに貢献するのに対し,標準規格に採用
された個々の特許の重要性は低い。20
ウ仮想実施料率
超過売上げが認められたとしても,実施料率〔第5版〕の「21.電子・通信用部
品」において,実施料率は1%が契約の中心であるとされていることなどに照らせ
ば,仮想実施料率は,1%を基本とし,ノウハウや規格といった特許以外の知的財
産の貢献を考慮して2分の1を乗じた上で算定するのが相当である。25
エ本件発明1及び2の貢献
前記⑴【被告の主張】イのとおり,被告が得た利益に対する本件発明1及び2の
貢献度は低く,次のとおりの各製品の規格を実施するために必要な固有の特許の数
で除して算定すべきである。
(ア)CD-R/RWドライブ
①音楽用CDに係る特許2508件,②ライセンス対象特許リスト(乙83,85
4の1~3)に掲載されている特許の数を平均した135件,③実施に当たって必
要と考えられる有用特許325件(乙181添付資料2)の合計2968件
(イ)追記書換型DVDドライブ(CD-RとDVD-ROM複合ドライブを除
く)
①音楽用CDに係る特許2508件,②ライセンス対象特許リスト(乙181添10
付資料4-1ないし4)に掲載されている特許164件(重複するものを除いた総
数)の合計2672件
(ウ)CD-R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ
①前記aの特許2968件,②DVD再生プレーヤー用のライセンス対象特許リ
スト(乙181添付資料3-1)に掲載されている特許140件,③DVD再生プ15
レーヤーの実施に当たって必要と考えられる有用特許54件(乙181添付資料3
-2)の合計3162件
(エ)BDドライブ
①音楽用CDに係る特許2508件,②ライセンス対象特許リスト(乙181添
付資料5-1及び2)に掲載されている特許714件(重複するものを除いた総数)20
の合計3222件
(オ)CD-Rディスク
①音楽用CDに係る特許2508件,②ライセンス対象特許リスト(乙81の1
~5)に掲載されている特許の数を平均した61件,③実施に当たって必要と考え
られる有用特許6件(乙181添付資料1)の合計2575件25
(カ)CD-RWディスク
①音楽用CDに係る特許2508件,②ライセンス対象特許リスト(乙82の1
~4)に掲載されている特許の数を平均した21件の合計2529件
3争点3(本件各発明について被告が貢献した程度)について
【原告の主張】
次の各点に照らせば,本件各発明について被告が貢献した程度は極めて低く,75
5%を超えることはない。
⑴本件各発明は,被告から研究施設,設備,予算等の特別の貢献を受けること
なく,原告の知識,経験のみに基づき,発明された。
⑵平成元年当時,被告は,光磁気ディスク(CD-MO)の開発,取り分け,
MDの開発に注力し,被告代表者であったD(以下「D社長」という。)を始めと10
する被告の役員のほぼ全員がCD-Rの研究開発に反対していたものであり,CD
-Rの研究開発をすることは人事考課においてもマイナスに評価されていた。
⑶CD-RW規格,DVD-R規格,DVD-RW規格,BD規格の準拠製品
については,フィリップス社,DVD3C,DVD6C,One-Red,One
-Blueなどの規格団体が多大な費用をかけて宣伝広告等をしており,被告はそ15
の利益を享受しているにすぎない。
⑷原告は,CD-R製品の販売を業とする株式会社スタート・ラボ(以下「ス
タート・ラボ」という。)の設立や共同ライセンサーである太陽誘電株式会社(以
下「太陽誘電」という。)との交渉等を担当し,CD-RW規格,DVD-R規格,
DVD-RW規格等の策定,製品化,普及活動にも貢献した。20
【被告の主張】
次の各点に照らせば,本件各発明についての被告の貢献度は99%を下らない。
⑴被告は,本件各特許のライセンスについてオープンライセンスポリシーを採
用していた。
⑵CD-R規格を含む各種規格の標準規格化を推進するなどしたのは,被告,25
太陽誘電,フィリップス社等であり,その点に原告の貢献はない。
⑶CD-Rは,発売当初は互換性に問題があったものの,平成6年以降は,
「オレンジ研究会」という名称の業界団体(以下,単に「オレンジ研究会」とい
う。),平成8年4月以降は,「オレンジフォーラム」という名称の業界団体(以
下,単に「オレンジフォーラム」という。)が中心となってその問題に取り組んだ
ことにより,市場が拡大した。被告は,「オレンジフォーラム」の事務局を務め,5
同団体を構成する中心的な企業として,CD-Rの市場の拡大に貢献した。
⑷CD-Rの開発費用を負担したのは被告や太陽誘電であり,原告が負担した
ものではない。被告には,音楽用CD等の関連技術についての技術的な蓄積があり,
原告が研究開発に専念できる環境を整えていたからこそ,本件各発明に至ったもの
である。10
4争点4(共同発明者間における原告の貢献度)について
【原告の主張】
原告は,平成元年3月頃,本件各発明の着想を得て,音楽用CD等との互換性を
保ちながら追記を可能とする構成に係る原案を作成し,最終的に本件各発明を完成
させた。原告は,共同発明者であるBから相談を受けて上記原案を作成したもので15
あるが,発明の内容についてBと協議したことはない。また,共同発明者であるC
は,上記原案の作成後,実装上の問題がないことを確認したにとどまる。
したがって,共同発明者間における原告の貢献度は50%を下らない。
【被告の主張】
平成元年当時,Bは被告のメカトロシステム機器部に,Cは被告のメカトロニク20
ス事業本部に所属し,主な職務としてCD-Rの開発を行っていたものであり,本
件各発明についての原告の貢献度がB及びCと比べて格段に高かったということは
できないから,本件各発明の共同発明者間における原告の貢献度は,共同発明者間
の均等割相当分を超えるものではない。
5争点5(相当の対価の額)について
【原告の主張】
⑴算定方法
相当の対価の額は,次の計算式に基づいて算定される金額の合計額である。
アライセンス料に係るもの5
(被告の得たライセンス料)×(本件各発明の貢献度)×(原告ら発明者の貢献
度)×(共同発明者間における原告の貢献度)
イ被告の実施に係るもの
(被告の実施に係る売上げ)×(超過売上割合)×(仮想実施料率)×(本件各
発明の貢献度)×(共同発明者間における原告の貢献度)10
⑵主位的主張
別紙4原告計算表(主位的)の「ライセンス」欄における「対象製品」欄記載の
各製品について被告が収受した又は免れたライセンス料の額は,それぞれ,同別紙
⑤欄記載のとおりであり,これらに同別紙⑥欄記載の本件各発明の貢献度,同別紙
⑪欄記載の原告ら発明者の貢献度25%,同別紙⑫欄記載の共同発明者間における15
原告の貢献度50%を乗じた金額は同別紙⑬欄記載のとおりであって,合計24億
3817万9335円である。
また,別紙4原告計算表(主位的)の「自己実施」欄における「対象製品」欄記
載の各製品の被告による売上げは,それぞれ,同別紙①´欄のとおりであり,これ
らに同別紙⑧欄記載の超過売上割合20%,同別紙⑨欄記載の仮想実施料率3%,20
同別紙⑥欄記載の本件各発明の貢献度,同別紙⑫欄記載の共同発明者間における原
告の貢献度50%を乗じた金額は,同別紙⑬欄記載のとおりであって,合計1億1
475万4270円である。
⑶予備的主張
相当の対価の額を,発明又は考案ごとに算定すると次のとおりである。ここでは,25
BDドライブについては主張しない。
すなわち,別紙5原告計算表(予備的)の「ライセンス」欄における「対象製品」
欄記載の各製品について被告が収受した又は免れたライセンス料のうち本件各発明
の貢献に係る額は,同別紙①欄記載のとおりであり,これらに同別紙②欄,④欄,
⑥欄,⑧欄,⑩欄記載の本件各発明の発明又は考案ごとの貢献度,同別紙⑫欄記載
の原告ら発明者の貢献度25%,同別紙⑬欄記載の共同発明者間における原告の貢5
献度50%を乗じた金額は同別紙⑭欄のとおりであって,合計12億8661万6
156円である。
また,自己実施に係る相当の対価の額は,前記⑵で検討した各製品の自己実施に
係る独占の利益(別紙4原告計算表(主位的)➉欄)を前提に別紙5原告計算表
(予備的)記載のとおりに算定されるべきである。すなわち,CD-R/RWドラ10
イブは,自己実施に係る独占の利益の8割を日米に,そのうち,世界市場における
日米のシェア占有割合(日本1割,米国2割5分)に応じて,10を日本,25を
米国として按分し,追記書換型DVDドライブは全額が日米分であるので,そのう
ち10を日本,25を米国として按分し(いずれも同別紙②欄及び④欄記載),本
件特許1にのみ関わるCD-R/RWディスクは日本国内の売上げに係る割合を同15
別紙②欄記載のとおりとみて,それらの割合を乗じて算定した金額に,同別紙⑬欄
の共同発明者間における原告の貢献度50%を乗じると,同別紙⑭欄のとおりであ
って,合計1億1472万8390円である。
【被告の主張】
原告の主張は争う。20
6争点6(本件各相当対価請求権の消滅時効の成否)について
【被告の主張】
⑴消滅時効の起算点
ア特許法35条3項(実用新案法11条3項によって準用されるものを含
む。以下同じ。)所定の相当対価請求権は,発生時,すなわち,特許を受ける25
権利を使用者が承継した時点から行使することができるから,その時点が消滅
時効の起算点となる。被告発明考案規定における実施報奨金の定めは,顕著な
功績が挙がったときに実施報奨金が支払われる可能性があることをいうものに
すぎないから,相当対価請求権に係る支払時期を定めたものではなく,相当対
価請求権の行使についての法律上の障害に当たらない。
本件各相当対価請求権に係る消滅時効の起算点は,本件各発明に係る特許を5
受ける権利を被告が承継した平成元年5月であり,遅くとも平成11年5月の
経過により消滅時効は完成している。
イ仮に,被告発明考案規定における実施報奨金の定めが相当対価請求権に
係る支払時期の定めに当たるとしても,その支払時期は,特許権の設定登録が
された時点と発明の実施等がされた時点のうちいずれか遅い時点であると解さ10
れるから,その時点が消滅時効の起算点になる。
本件各相当対価請求権については,本件各特許の設定登録日が別紙2特許目
録記載1ないし8の各「登録日」欄のとおりであり,被告において平成6年頃
から実施品であるCD-R製品の製造,販売を開始し,平成15年1月から本
件各発明がライセンスの対象とされていたことからすると,遅くとも同月が消15
滅時効の起算点となり,平成25年1月の経過により消滅時効は完成している。
⑵時効の中断又は時効援用権の喪失
ア平成19年支払
以下のとおり,平成19年支払は,本件各相当対価請求権についての債務の承認
に当たらないから,時効は中断されず,被告が時効援用権を喪失することもない。20
(ア)平成19年支払は,本件特許1に係る実施報奨金として支払われたもの
であり,少なくとも,本件各外国発明に係る各相当対価請求権についての債務
の承認に当たらない。
このことは,平成19年12月当時の被告の実施報奨金に係る運用によっても裏
付けられている。すなわち,被告は,●(省略)●本件特許1と本件各外国特許は,25
「ファミリー」の関係にあるものの,特許請求の範囲が実質的に同一でないから,
平成19年支払は,本件各外国特許に係る評価を含むものではなく,本件各外国発
明に係る各相当対価請求権についての債務の承認となるものではない。
原告は,平成19年支払は本件各特許に係るものであったとして,原告に対する
各通知書面(甲103,104),被告の知財センターの担当者のメール(甲92)
等の記載を指摘するが,これらは平成20年に●(省略)●が廃止された後の運用5
を記載したものであり,平成19年支払が本件特許1に係るものであったことと矛
盾するものではない。
(イ)被告は,平成19年支払の際には,被告発明考案規定における再報奨の
定めに基づき,平成13年から平成18年までの本件特許1の貢献分を評価し
た十分な金額として●(省略)●円を支払っており,特許法35条3項所定の10
相当の対価に満たないことを知らなかったから,平成19年支払は,本件発明
1に係る相当対価請求権との関係でも債務の承認に当たらない。
イ●(省略)●の廃止及び原告に対する通知等
原告は,●(省略)●の廃止や原告に対する各通知書面(甲103,104)
によって,本件各相当対価請求権に係る債務が承認されたと主張するが,●15
(省略)●廃止後も,平成19年支払が本件特許1に係る実施報奨金として支
払われたことに変わりはなく,上記の各通知書面も,●(省略)●廃止後の被
告の運用を通知するものであり,平成19年支払が本件各特許に係るものであ
ったことを通知するものではないから,これらは本件各相当対価請求権に係る
債務の承認になり得ない。20
【原告の主張】
⑴消滅時効の起算点
本件各相当対価請求権の消滅時効の起算点は,次のア,イのとおりであり,
本件訴訟の提起時において10年の時効期間は経過しておらず,消滅時効は完
成していない。25
ア本件各発明は,社会的事実として実質的に1個と評価される発明である
ところ,原告は,被告に対し,本件各発明に係る特許を受ける権利を日本特許
と海外特許を区別することなく1個の譲渡行為によって包括的に承継したもの
であるから,本件各相当対価請求権の訴訟物は1個である。そして,相当対価
請求権の消滅時効の起算点は,特許法35条4項所定の「使用者等が受けるべ
き利益の額」が確定する特許権の消滅時,すなわち,特許権の存続期間満了日5
であると解すべきであるから,本件各相当対価請求権の消滅時効の起算点は,
本件各特許のうち存続期間満了日が最も遅い本件特許2の存続期間満了日であ
る平成24年4月11日であると解すべきである。
イ被告は,本件各特許を「ファミリー」を構成するものとして取り扱い,
「ファミリー」を単位として実施報奨金を支払っており,次の被告発明考案規10
定の定め等にも照らせば,本件各相当対価請求権に係る支払時期は,次の(ア)な
いし(ウ)のとおり解すべきであり,いずれかの時点から消滅時効が進行すると解
される。
(ア)被告発明考案規定における実施報奨金は,特許権の消滅時,すなわち,
特許権の存続期間満了日までの推薦に基づき支払われており,それまでは実施15
報奨金の額を確定し得なかったから,本件各相当対価請求権に係る支払時期は,
本件各特許のうち存続期間満了日が最も遅い本件特許2の存続期間満了日であ
る平成24年4月11日であると解すべきである。
(イ)被告発明考案規定における実施報奨金には,再報奨が認められており,
再報奨に係る審査結果が確定するまでは実施報奨金の額を確定し得なかったか20
ら,本件各相当対価請求権に係る支払時期は,再報奨に係る審査結果の確定日
である平成19年12月であると解すべきである。
(ウ)被告発明考案規定に基づき実施報奨金が支払われている限り,実施報奨
金の額を確定し得ないから,本件各相当対価請求権に係る支払時期は,本件各
発明につき最後に実施報奨金が支払われた平成19年12月18日であると解25
すべきである。
⑵時効の中断又は時効援用権の喪失
ア平成19年支払
(ア)仮に,本件訴訟の提起時に時効期間が経過していたとしても,被告は,平成
19年12月18日,原告に対し,本件各特許に係る実施報奨金として50万円を
支払い(平成19年支払),本件各相当対価請求権に係る債務を承認したものであ5
るから,平成19年支払によって,本件各相当対価請求権の消滅時効は中断し,又
は,被告は時効援用権を喪失した。
平成19年支払が本件各特許に係るものであったことは,①被告において,
原告から平成23年及び平成24年にされた本件特許2を含む特許に係る推薦
について,「表彰済」を理由として,実施報奨金を支払わなかったこと(甲110
03,104),②被告の知財センターの担当者からのメール(甲92)に,
●(省略)●などが記載されていたこと,③被告の「実施報奨推薦マニュアル」
(甲97)に●(省略)●と記載されていたことなどによって裏付けられてお
り,被告が主張する●(省略)●は存在していなかったか,●(省略)●に従
った運用はされていなかったと考えられる。15
(イ)被告は,平成19年支払が相当の対価に満たないことを知らなかったと
して,平成19年支払は本件発明1に係る相当対価請求権との関係でも債務の
承認に当たらない旨主張するが,被告発明考案規定における再報奨の定めの存
在,実施報奨金の額が一律に設定されていることなどに照らし,被告が相当の
対価に満たないことを知らなかったとはいえない。20
イ●(省略)●の廃止及び原告に対する通知等
仮に,平成19年支払が本件特許1に係るものであったとしても,被告の主
張によれば,平成20年の●(省略)●廃止後は,●(省略)●の下で「ファ
ミリー」を構成する特許について実施報奨金が支払われていれば,新たに推薦
のあった他の特許は実施報奨金の支払の対象とならないことになるから,被告25
は,●(省略)●を廃止したことにより,平成19年支払が本件各特許に係る
ものであったことを承認し,平成24年に,その旨原告に通知するなどしたも
のであって(甲103,104),それらによって,本件各相当対価請求権に
係る時効は中断し,又は,被告は時効援用権を喪失した。
第4当裁判所の判断
1争点1(本件各発明の実施の有無)について5
⑴事実認定及びこれに関する当事者の主張に対する判断
争点1に関して,前記第2の2の前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ
り認められる事実並びにこれに反する当事者の主張に対する判断は次のとおりであ
る。
ア本件各発明の内容等10
(ア)発明の詳細な説明の記載等
本件特許1に係る明細書(以下,図面と併せて「本件明細書1」という。)の発
明の詳細な説明は,概要,次のとおりであり,第1図ないし第3図は,別紙6本件
明細書1の図面のとおりである(甲4)。
a産業上の利用分野15
「本発明はデイスク,デイスク記録装置及びデイスク記録再生装置に関し,例え
ば追記型のコンパクトデイスクに所望の記録情報を記録する光デイスク記録装置及
びそのコンパクトデイスクに適用して好適なものである。」(4欄)
b従来の技術
「従来,追記型光デイスクいわゆるWO(writeonce)光デイスクを用いて,再20
生用として定められたコンパクトデイスク(CD)規格と再生時に互換性を有するよ
うに音楽情報等を録音し得るようになされた光デイスク記録装置が提案されている。
実際上CD規格において,光デイスクは直径120〔mm〕でなり,内径50
〔mm〕から外径116〔mm〕の光デイスク上の記録領域が,音楽情報等を記録する
プログラム記録エリアとして規定されている。25
またこれに加えて,プログラム記録エリアの内周側2〔mm〕幅(すなわち内径4
6〔mm〕から外径50〔mm〕でなる)及び外周側1〔mm〕幅(すなわち内径116
〔mm〕から外径118〔mm〕でなる)のデイスク上の領域が,それぞれリードイン
エリア及びリードアウトエリアとして規定されている。
このうち,特にリードインエリアには,プログラク
ママ
記録エリアに記録される音楽
情報等の曲番号,スタート及びエンド時間等の内容を表す目次情報でなるTOC5
(tableofcontents)として記録され,飛び越し再生やプログラム再生等,再生
時の種々の操作上のデータとして使用されるようになされている。
従つて上述のような光デイスク記録装置においても,WO光デイスクのプログラ
ム記録エリアに所望の音楽情報を録音する際には,当該音楽情報の曲番号,スター
ト及びエンド時間を順次内部メモリに記憶し,録音終了時に当該内部メモリの内容10
をTOCとして光デイスク上のリードインエリアに記録することにより,CD規格
と再生時に互換性を有するWO光デイスクを形成し得るようになされている。」
(5,6欄)
c発明が解決しようとする問題点
「ところがかかる構成の光デイスク記録装置においては,例えばWO光デイスク15
のプログラム記録エリアの途中で録音を一旦中断すると,上述のようにリードイン
エリアにTOCが記録されてしまうことから,この後プログラム記録エリアの空き
エリアに対して,新たな録音処理を行うことが困難になる問題があつた。
従つて,ユーザは録音に先立つて,録音しようとする音楽情報等を,プログラム
記録エリアの録音可能エリアに応じた時間分,完全な状態で一旦オーデイオテープ20
等に録音しなければならず,ユーザの使い勝手の点で未だ不十分であつた。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので,従来の問題を一挙に解決してユー
ザの使い勝手を格段的に向上し得るデイスク,デイスク記録装置及びデイスク記録
再生装置を提案しようとするものである。」(6欄)
d実施例25
(a)「第1図において,1は全体として光ディスク記録再生装置を示し,ユーザ
が操作/表示装置2を用いて例えば録音操作すれば,これが制御データDTCNTとし
て制御回路3に提供される。」(8欄)
(b)「この光ピツクアツプ5は,半導体レーザでなる光源,フオトデイテクタで
なる受光手段及び対物レンズ等の光学系を含を
ママ
で構成されており,記録信号SRECに
応じて発光駆動されるレーザ光L1を,軸6を中心に線速度一定(CLV(constant5
linearvelocir
ママ
y))方式で回転駆動される光デイスク7に照射し,このようにし
て,記録データDTREC及び又は入力オーデイオ信号ADINを光デイスク7上に記録
し得るようになされている。」(9欄)
(c)「ここでこの光デイスク7は,第2図に示すように,コンパクトデイスク
(CD)規格に準じて構成された追記型(WO)光デイスクで形成されている。…また10
これに加えてプログラム記録エリアARRECの内周側2〔mm〕幅及び外周側1〔mm〕
幅のデイスク7上の領域が,それぞれリードインエリアARR1及びリードアウトエ
リアARR0として用いられる。
さらにこの実施例による光デイスク7の場合,リードインエリアARR1の内周側
1〔mm〕幅…及びリードアウトエリアARR0の外周側0.5〔mm〕幅…のCD規格15
外の領域が,第1及び第2の拡大記録エリアAREXI及びAREXOとして定義され,
それぞれTOCの一時記録用の領域及び付加情報記録用の領域として用いるように
なされている。
以上の構成において,この光デイスク記録再生装置1の場合,ユーザが操作/表
示装置2を用いて録音操作すれば,これが制御データDTCNTとして制御回路3に供20
給され,このタイミングで制御回路3のCPUは,第3図に示す録音処理プログラ
ムSP1を実行する。」(9,10欄)
(d)「ここでCPUは,入力された終了コマンドがTOC記録操作の場合,次の
ステツプSP13に移つて,メモリ回路9の内容をTOCとして,光デイスク7の
リードインエリアARRIに記録した後,次のステツプSP14において,当該録音25
処理プログラムSP1を終了し,このようにして,CDと再生互換を有する光デイ
スク7を形成することができる。
またCPUは,入力された終了コマンドがSTOP操作の場合,次のステツプSP
15に移つて,メモリ回路9の内容をTOCとして,光デイスク7の第1の拡大記
録エリアAREXIに記録した後,次のステツプSP14において,当該録音処理プロ
グラムSP1を終了し,このようにして,さらに録音可能な光デイスク7を形成す5
ることができる。」(11欄)
e発明の効果
「上述のように第1の発明によれば,所定の規格に基づいて形成されたデイスク
の記録領域に所望の情報信号を記録するデイスク記録装置において,外部から入力
される情報信号をデイスクの規格に基づく記録領域に線速度一定方式で記録すると10
共に,記録領域の内周側に設けられたリードインエリアに記録される情報信号の内
容を表す目次情報を記録領域より内周側のリードインエリア近傍の領域に一時的に
記録するための記録手段を設けたことにより,簡易な構成でその規格と無関係にデ
イスク上に種々の記録情報を記録し得るデイスク記録装置を実現できる。
また第2の発明によれば,所定の規格に基づいて形成される記録領域に所定の情15
報信号が線速度一定方式で記録されるデイスクにおいて,規格に基づく記録領域は,
プログラム記録エリア,当該プログラム記録エリアに記録されている情報信号の内
容を表す目次情報を含むリードインエリア,及びリードアウトエリアを有し,記録
領域より内周側のリードインエリア近傍に目次情報を一時的に記録するための拡大
記録領域を形成し,当該拡大記録領域に対してリードインエリアに記録される目次20
情報を一時的に記録するようにしたことにより,その規格外の任意の記録情報を保
持し得るデイスクを実現することができる。
さらに第3の発明によれば,プログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリ
アの記録内容を含むリードインエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域
が形成されたデイスクに対して所望の情報信号を線速度一定方式により記録するデ25
イスク記録装置において,外部から入力される情報信号を記録領域に記録するため
の記録手段と,記録領域への情報信号の記録時に,リードインエリアに記録すべき
情報信号の内容を表す目次情報が書き込まれるメモリ手段と,記録領域への情報信
号の記録が終了されたか否かを判別し,当該記録が終了されたもの判断した場合は,
メモリ手段に記憶された内容を目次情報として記録領域の内周側に設けられたリー
ドインエリアに記録し,当該記録が中断されたものと判断した場合は,メモリ手段5
の内容を記録領域より内周側のリードインエリア近傍に形成された拡大記録領域に
一時的に記録するように記録手段を制御する制御手段とを設けたことにより,ユー
ザは目次情報を見ながら情報信号の有無を判別することによつて,拡大記録領域に
記録されたデータに関係なく,実際の記録領域のデータ記録状態を把握できると共
に,拡大記録領域のデータをメモリ手段に書き込むことによつて,現在のリードイ10
ンエリア内の目次情報が記録された後に更新された最新の記録情報に関する目次情
報を取り込むことができ,ユーザの使い勝手を格段的に向上し得るデイスク記録装
置を実現することができる。
さらに第4の発明によれば,プログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリ
アの記録内容を含むリードインエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域15
が形成されると共に,記録領域の内周側にプログラム記録エリアの記録内容を一時
的に記録するための拡大記録領域が形成されたデイスクに対して所望の情報信号を
記録再生するためのデイスク記録再生装置において,外部から入力される情報信号
を記録領域に対して線速度一定方式により記録再生するための記録再生手段と,リ
ードインエリアに記録すべき情報信号の内容を表す目次情報を一時的に記録するメ20
モリ手段と,記録処理動作時にリードインエリアに目次情報が記録されているか否
かを判別すると共に,リードインエリアに目次情報が記録されていないと判断した
場合,拡大記録領域に記録された目次情報をメモリ手段に書き込み,リードインエ
リアに目次情報が記録されていると判断した場合は,再生モードへ移行する制御手
段とを設けたことにより,ユーザは目次情報を見ながら情報信号の有無を判別する25
ことによつて,拡大記録領域に記録されたデータに関係なく,実際の記録領域のデ
ータ記録状態を把握できると共に,拡大記録領域のデータをメモリ手段に書き込む
ことによつて,現在のリードインエリア内の目次情報が記録された後に更新された
最新の記録情報に関する目次情報を取り込むことができ,ユーザの使い勝手を格段
的に向上し得るデイスク記録装置を実現することができる。」(13,14欄)
(イ)本件特許1の出願経過(乙52,弁論の全趣旨)5
被告は,特許庁審査官から,本件発明1(出願当初の特許請求の範囲記載のもの)
は,第1引用例とされた特開昭63-25870号公報記載の発明等により容易に
発明をすることができたものと認められるなどとして,平成11年7月16日を起
案日とする書面により拒絶査定を受け,その後,拒絶査定不服審判を請求して,特
許請求の範囲に「線速度一定方式」で記録する旨の文言を挿入することなどを内容10
とする補正をした上で,特許庁長官に対し,同年12月27日付けの手続補正書
(乙52,以下「本件補正書」という。)を提出した。
本件補正書には,次の記載がある。
「第1引用例には,『追記型光デイスクのデータ記録装置において,光学ヘツド
から照射するレーザ光によって光デイスクの所定領域にデータを記録する』ような15
記載が示されており,この限りにおいて,本願第1の発明の上記第1の特徴点と一
致するが,『線速度一定方式によってデイスクを回転制御する』ようにはなってい
ない点において,第1引用例は,本願第1の発明の上記第2の特徴点とは相違する。
この点について,第1引用例には,『CD(1)の回転を角速度一定方式で制御
する』ような構成が記載されているに止まり,本願第1の発明の上記第2の特徴点20
の場合と比較して,デイスクの外周側部分における記録密度が低下することとなり,
この限りにおいて,線速度一定方式で記録するようになされた本願第1の発明の上
記第2の特徴点の効果の方がデイスクの記録密度の向上性の面で一段と優れている
と言い得る。」
(ウ)本件発明1の概要25
a本件発明1は,ディスク,ディスク記録装置及びディスク記録再生装置につ
いて,例えば,追記型のコンパクトディスクに所望の記録情報を記録する光ディス
ク記録装置及びそのコンパクトディスクに適用して好適なものに関するものである
(前記(ア)a)。
b従来,CD規格と再生時に互換性を有するように音楽情報等を録音し得るよ
うにされた追記型光ディスク記録装置が提案されていたものの(前記(ア)b),プ5
ログラム記録エリアの途中で録音を一旦中断すると,リードインエリアに目次情報
が記録されてしまうことから,その後,プログラム記録エリアの空きエリアに対し
て,新たな録音処理を行うことが困難になり,ユーザーは録音に先立って,録音し
ようとする音楽情報等を,プログラム記録可能エリアに応じた時間分,完全な状態
でオーディオテープ等に一旦録音しなければならなくなるなど,ユーザーの使い勝10
手の点で未だ不十分であるという解決すべき課題があった(同c)。
c本件発明1は,前記bの課題を解決するための手段として,ディスク,ディ
スク記録装置,ディスク記録再生装置について,いずれも,CLV方式で記録する
ことを前提として(前記(イ),構成要件1B,1E,1I,1O),目次情報を一
時的に記録するための「リードインエリア近傍の領域」(構成要件1C)又は「拡15
大記録領域」に係る構成(構成要件1G,1L,1N)を採用することにより,簡
易な構成でその規格と無関係にディスク記録装置(本件発明1-1),所定の規格
外の任意の記録情報を保持し得るディスク(本件発明1-3),ユーザーの使い勝
手を格段的に向上し得るディスク記録装置又はディスク記録再生装置(本件発明1
-5,1-6)を実現するという効果を奏するものである(前記(ア)e)。20
(エ)本件各外国発明の概要(甲5~9)
本件各外国発明は,光ディスク記録装置,光ディスクに関するものであり,前記
(ウ)b認定の従来技術に係る追記型光ディスク記録装置の問題点を踏まえ,本件発
明1と同様の課題を解決するための手段として,光ディスク記録装置(本件発明2
-1,3-1,7-1,本件考案8-1),光ディスク(本件発明7-18)につ25
いて,それぞれ,目次情報を書き込む「一時的な領域」(構成要件2B等),プロ
グラムエリアへの記録が中断した場合に目次情報が記録される「所定の領域」(構
成要件3B等),後続の記録操作の制御に利用可能なデータが記録される「拡大記
録領域」又は「拡大領域」(構成要件7C,7E),TOCデータを記録する「一
時領域」(構成要件8B等)に係る構成を採用することにより,ユーザーの利便性
を向上させ得る光ディスク記録装置又は光記録ディスクを提供しようとするもので5
あると認めるのが相当である。
イCD-R/RWディスク及びドライブの構成等
(ア)CD-R規格書の記載
CD-R規格書には,次の内容の記載がある(甲133)。
●(省略)●10
(イ)CD-RW規格書の記載
CD-RW規格書には,次の内容の記載がある(甲132)。
●(省略)●
(ウ)CD-R/RWディスク及びドライブの構成(前記(ア),(イ)の各記載,弁論
の全趣旨)15
aCD-R/RWディスク及びドライブの構成
(a)CD-R/RWディスク
(ⅰ)その情報エリアが,PCA,PMA,リードインエリア,プログラムエリ
ア,リードアウトエリア等によって構成されており,このうち,プログラムエリア
は,オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号が記録される領域である20
(前記(ア)②,⑧,⑫,⑳,(イ)②,⑧,⑫,⑳,弁論の全趣旨)。
(ⅱ)プログラムエリアの内周側にリードインエリアが設けられ,その更に内
周側にリードインエリアと隣接してPMAが設けられている(前記(ア)⑫,(イ)⑫,
弁論の全趣旨)。
(ⅲ)PCAは,ディスクの正確な記録パワーを決定するためのキャリブレー25
ションに関する情報が記録される領域であり,プログラムエリアの内周側に設けら
れている(前記(ア)⑥,⑬,(イ)⑥,⑬,弁論の全趣旨)。
(ⅳ)ディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいてCLV方式
でディスクを回転させることにより,情報信号が記録される(前記(ア)③,⑤,(イ)
③,⑤)。
(ⅴ)記録途中の状態,すなわち,リードインエリアが未記録状態の間,PM5
Aに中間的にトラック開始位置に係る情報を含む目次情報が記録され,当該目次情
報に基づいて,プログラムエリアの記録済みの領域以外の空き領域に更なるユーザ
ー情報に係る情報信号が記録され,当該ユーザー情報に係る情報信号に基づく新た
な目次情報がPMAに中間的に記録される(前記(ア)④,⑦,⑩,⑭,⑮,(イ)④,
⑦,⑩,⑭,⑮)。10
(ⅵ)データを記録済みの状態にするファイナライズ処理に応じて,当該PM
Aに記録されたトラック開始位置に係る情報を含む目次情報がPMAから読み出さ
れてリードインエリアに記録される(前記(ア)⑨,⑯ないし⑲,(イ)⑨,⑯ないし⑲,
弁論の全趣旨)。
(b)CD-R/RWドライブ15
前記(a)のような構成を有するCD-R/RWディスクに記録可能な装置(前記
(ア)①,(イ)①)であり,前記(a)の(ⅴ),(ⅵ)のとおり,ファイナライズ処理の前
後で目次情報の記録位置を変化させるために記録手段を制御する制御手段に係る構
成を有するものである。
b本件発明1-1,1-3,2-1と対比される構成として認められるCD-20
R/RWドライブ及びディスクの構成(以下,各製品の構成を,符号に対応させて
「構成1a」などという。)
(a)本件発明1-1と対比される構成
1aCD-R規格又はCD-RW規格に基づいて形成されたディスクのプログ
ラムエリアにオーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号を記録するため25
のディスク記録装置であって,
1bディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定と
なるようにディスクを回転させて,情報信号をプログラムエリアに記録する手段と,
1cプログラムエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録されるト
ラック開始位置に係る情報を含む目次情報を,リードインエリアが未記録状態の間,
リードインエリアより内周側に隣接して設けられたPMAに一時的に記録する手段5
と,
1dを具えるディスク記録装置。
(b)本件発明1-3と対比される構成
1eCD-R規格又はCD-RW規格に基づいて形成されるプログラムエリア
に,オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号が,ディスク上に形成さ10
れたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定となるようにディスクを回転さ
せて記録されるディスクであって,
1fCD-R規格又はCD-RW規格に基づく情報エリアが,トラック開始位
置に係る情報を含む目次情報を記録するリードインエリア,プログラム記録可能エ
リア,リードアウトエリアを含み,15
1gプログラムエリアより内周側のリードインエリアに隣接し,リードインエ
リアが未記録状態の間,上記目次情報を一時的に記録するPMAが形成される
1hディスク。
(c)本件発明2-1と対比される構成
2aプログラムエリアに記録された情報信号に基づいて,トラック開始位置に20
係る情報を含む目次情報が情報エリアの一部分であるリードインエリアに記録され
たディスクのプログラムエリアに,オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情
報信号を記録するための光ディスク記録装置であって
2bリードインエリアが未記録状態の間,上記ユーザー情報をプログラムエリ
アに書き込み,上記目次情報をリードインエリア以外の一時的な領域であるPMA25
に書き込む書込手段と
2cPMAから上記目次情報を読み出す読出手段と
2dPMAから上記目次情報を読み出し,プログラムエリアの記録済みの領域
以外の空き領域に更なるユーザー情報を書き込む書込手段を制御し,ファイナライ
ズ処理に応じ,プログラムエリアの記録済みの領域以外の空き領域に記録された更
なるユーザー情報に基づいて,新たな目次情報をリードインエリアに書き込む書込5
手段を制御する制御手段と
2eを備える光ディスク記録装置。
(エ)被告の主張に対する判断
a記録装置に係る構成
被告は,CD-R規格書及びCD-RW規格書は,いずれもディスクの構成を定10
めたものにすぎず,装置の客観的構成を確定することはできない旨主張する。
しかしながら,前記(ウ)aのとおり,各規格書には,CD-R/RWディスクの
情報エリアの構成や記録される目次情報の内容,記録時期,記録方式等が開示され
ており,そのような構成を有するディスクに記録可能な装置としてCD-R/RW
ドライブの構成を特定することができるから,被告の主張は採用することができな15
い。
b構成要件1Bに対応する構成
また,被告は,CD-R規格書及びCD-RW規格書に線速度一定方式でディス
クを回転制御して記録することは明確に記載されておらず,ゾーンCLVやパーシ
ャルCAVでディスクを回転制御する記録装置も存在していたこと(乙109)か20
らすると,CD-R/RWドライブの全てが構成要件1Bに対応する構成を備える
ものとはいえない旨主張する。
しかしながら,前記(ウ)aのとおり,各規格書には,ディスク上に形成されたプ
リグルーブのウォブルに基づいてCLV方式でディスクを回転させることによって
情報信号が記録されることが記載されており(前記(ア)③,⑤,(イ)③,⑤),CD25
-R/RWドライブは,各規格に基づいて形成されるディスクに対して記録可能な
装置として,構成1bを有すると認めることができるから,被告の主張は採用する
ことができない。
c構成要件2Dに対応する構成
さらに,被告は,構成要件2Dの「書込手段を制御する制御手段」は,装置とし
ての具体的な制御動作を規定するものであり,上記各規格書に基づいてこれに対応5
する構成を認定することはできないとも主張するが,CD-R/RWドライブは,
いずれも,ファイナライズ処理の前後で目次情報の記録位置を変化させるために記
録手段を制御する制御手段に係る構成を有するものと認められることは,前記(ウ)
aで認定,説示したとおりである。
ウDVD-R/RWディスク及びドライブの構成等10
(ア)DVD-R規格書の記載
●(省略)●
(ウ)DVD-R/RWディスク及びドライブの構成(前記(ア),(イ)の各記載,弁
論の全趣旨)
aDVD-R/RWディスク15
(ⅰ)その情報エリアが,リードインエリア,データエリア(データ記録エリ
ア),リードアウトエリアによって構成され,そのR情報エリアが,RMA等によ
って構成されている(前記(ア)④,⑮,(イ)④,⑮)。
(ⅱ)情報エリアの内周側にリードインエリアが設けられ,リードインエリア
の内側近傍にRMAが設けられている(前記(ア)⑥,⑦,⑫,(イ)⑥,⑦,⑫)。20
(ⅲ)データエリアはユーザーデータに係る情報信号が記録される領域であり,
RMAはRMDを格納する領域である(前記(ア)④,⑦,(イ)④,⑦)。
(ⅳ)RMDは,ディスク上の記録に関する情報であり,各記録モードにおけ
る情報であって,追加記録の際にユーザーデータに割り当てられる記録可能エリア
であるRゾーンを特定する情報,すなわち,各Rゾーンの開始セクター番号及び最25
終記録アドレスに係る情報を含む(前記(ア)⑧,⑨,⑯ないし⑱,(イ)⑧,⑨,⑯な
いし⑱,弁論の全趣旨)。
(ⅴ)ファイナライズ処理が行われると,リードインエリアにデータエリアの
開始セクター番号,ボーダーエリアの最後のRゾーンの記録された最後のアドレス
に係る情報を含む情報が記録される(前記(ア)⑤,⑫ないし⑭,(イ)⑤,⑫ないし
⑭)。5
bDVD-R/RWドライブ
DVD-R/RWドライブは,いずれも,上記のような構成を有するDVD-R
/RWディスクの記録,再生可能な装置(前記(ア)①,②,(イ)①,②)である。
c前記aの(ⅳ),(ⅴ)のとおり,RMAに格納されるRMDは,各Rゾーンの
開始セクター番号及び最終記録アドレスに係る情報を含む情報であるのに対し,フ10
ァイナライズ処理によってリードインエリアに記録される情報は,データエリアの
開始セクター番号,ボーダーエリアの最後のRゾーンが記録された最後のアドレス
に係る情報であり,個別のRゾーンの位置を特定することができないものである点
で,RMDに含まれる上記の情報とは異なる情報である。
また,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,ファイナライズ処理等に15
よってRMDがリードインエリアに記録されることは記載されていないことにも照
らせば,DVD-R/RWディスクについて,RMDがリードインエリアに記録さ
れる構成を有すると認めるに足りず,DVD-R/RWドライブについて,そのよ
うな処理が行われる構成を有すると認めるに足りない。
さらに,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,RMDがRMAに記録20
された後にその他の領域に記録されることも記載されておらず,そのように認める
こともできないから,RMAがRMDを一時的に記録するための領域であると認め
るに足りない。
(エ)被告の主張に対する判断
被告は,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書は,いずれもディスクの構成25
を定めたものにすぎず,装置の客観的構成を確定することができるものではない旨
主張するが,前記(ウ)のとおり,各規格書には,DVD-R/RWディスクの情報
エリアの構成や記録される目次情報の内容,記録方式等が開示されており,そのよ
うな構成を有するディスクに記録可能な装置としてDVD-R/RWドライブの構
成を特定することができるから,被告の主張は採用することができない。
(オ)原告の主張に対する判断5
原告は,DVD-R/RWディスク及びドライブは,ファイナライズ処理に応じ
てRMAに格納されたRMDがリードインエリアに記録されるものであり,RMA
は,RMDを一時的に記録する領域である旨主張し,それらの構成を基礎付けるD
VD-R規格書及びDVD-RW規格書の記載として,前記(ア)⑫ないし⑭,⑰,
⑱,(イ)⑫ないし⑭,⑰,⑱の各記載等を指摘する。10
しかしながら,原告の指摘する各記載は,RMDに含まれる情報や,リードイン
エリアに記録される情報の内容を個別に説明するものにすぎず,ファイナライズ処
理に応じてRMDがリードインエリアに記録されることを基礎付けるに十分なもの
ではない。
また,RMAがRMDを一時的に記録する領域であると認められないことは,前15
記(ウ)cで認定,説示したとおりである。
したがって,原告の主張は採用することができない。
エDVD+Rディスク及びドライブの構成等
(ア)DVD+R規格書の記載
DVD+R規格書には,次の内容の記載がある(甲140)。20
●(省略)●
(イ)DVD+Rディスク及びドライブの構成(前記(ア)の各記載,弁論の全趣旨)
aDVD+Rディスク
(ⅰ)その情報ゾーンが,インナードライブエリア,リードインゾーン,データ
ゾーン,リードアウトゾーンによって構成され,データゾーンの内周側にリードイ25
ンゾーンが,リードインゾーンの内周側にインナードライブエリアがそれぞれ設け
られている(前記(ア)③,⑨,⑫)。
(ⅱ)データゾーンはユーザーデータに係る情報信号が記録される領域であり,
インナードライブエリアは,ディスク上のセッションの位置及び記録に関する情報
を保持するTOCゾーンを含む領域である(前記(ア)②,④,⑤)。
(ⅲ)TOCゾーンには,セッションがクロージングされると,TOCブロック5
によって,全てのクローズドセッションの位置情報が記録され,TOCブロックを
構成するTOCアイテムには,セッション開始アドレス,すなわち,セッションの
データゾーン内の最初の物理セクター番号,セッション終了アドレス,すなわち,
セッションのデータゾーン内の最後の物理セクター番号に係る情報が含まれる(前
記(ア)⑤ないし⑧)。10
(ⅳ)ファイナライズ処理又はセッションがクロージングされると,リードイン
ゾーンに,セッションの開始,すなわち,第1のセッションのデータゾーンの最初
の物理セクター番号,セッションの終了,すなわち,第1のセッションのデータゾ
ーンの最後の物理セクター番号に係る情報が記録される(前記(ア)⑨ないし⑪,
⑬)。15
bDVD+Rドライブ
DVD+Rドライブは,前記aのような構成を有するDVD+Rディスクに記録
可能な装置(前記(ア)①)である。
c前記aの(ⅱ)ないし(ⅳ)のとおり,インナードライブエリアに記録される情
報は,全てのクローズドセッションについてのセッション開始アドレス及びセッシ20
ョン終了アドレスに係る情報が含まれるのに対し,ファイナライズ処理又はセッシ
ョンのクロージングに応じてリードインゾーンに記録される情報は,第1のセッシ
ョンのデータゾーンの最初及び最後の物理セクター番号に係る情報であり,全ての
クローズドセッションの位置を特定することはできないものである点で,インナー
ドライブエリアに含まれる上記の情報とは異なる情報である。25
また,DVD+R規格書には,ファイナライズ処理又はセッションのクロージン
グによってインナードライブエリアに含まれる上記の情報がリードインゾーンに記
録されることは記載されていないことにも照らせば,DVD+Rディスクにおいて,
インナードライブエリアに含まれる上記の情報がリードインゾーンに記録される構
成を有すると認めるに足りず,DVD+Rドライブにおいて,そのような処理が行
われる構成を有すると認めるに足りない。5
さらに,DVD+R規格書には,インナードライブエリアに含まれる上記の情報
がインナードライブエリアに記録された後にその他の領域に記録されることも記載
されておらず,そのように認めることもできないから,インナードライブエリアが
上記の情報を一時的に記録するための領域であると認めるに足りない。
(ウ)被告の主張に対する判断10
被告は,DVD+R規格書によって装置の客観的構成を確定することはできない
旨主張するが,前記(イ)のとおり,DVD+R規格書には,DVD+Rディスクの
情報ゾーンの構成や記録される目次情報の内容,記録方式等が開示されており,そ
のような構成を有するディスクに記録可能な装置としてDVD+Rドライブの構成
を特定することができるから,被告の主張は採用することができない。15
(エ)原告の主張に対する判断
原告は,DVD+Rディスク及びドライブは,ファイナライズ処理又はセッショ
ンのクロージングに応じてインナードライブエリアに記録された情報,すなわち,
全てのクローズドセッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終
了アドレスに係る情報がリードインゾーンに記録されるものであり,インナードラ20
イブエリアは,上記の情報を一時的に記録する領域である旨主張し,それらの構成
を基礎付けるDVD+R規格書の記載として,前記(ア)⑥,⑨,⑬,⑭の各記載を
指摘する。
しかしながら,原告の指摘する記載のうち,前記(ア)⑥の記載は,セッションの
クロージングに応じてインナードライブエリアに記録される情報に関するものであ25
るが,それがリードインソーンに記録されることは記載されておらず,前記(ア)⑨,
⑬,⑭の各記載も,ファイナライズ処理又はセッションのクロージングについて記
載するものであるが,ファイナライズ処理又はセッションのクロージングに応じて
リードインゾーンに記録される情報の内容や,それがインナードライブエリアに記
録される情報であることは記載されていないものであって,原告の主張する処理が
行われていることを基礎付けるに十分なものではない。5
また,インナードライブエリアが上記の情報を一時的に記録する領域であると認
められないことは,前記(イ)cで認定,説示したとおりである。
オMDディスク及びMD機器の構成等
(ア)MD規格書の記載
MD規格書には,次の内容の記載がある(甲138,弁論の全趣旨)。10
●(省略)●
bMD機器
MD機器は,前記aのような構成を有するMDディスクに記録可能な装置である
と認められる。
c前記aの(ⅱ)ないし(ⅳ)のとおり,UTOCエリアに記録されるUTOCは,15
UTOCセクターにおける記録情報の開始アドレス及び終了アドレスに係る情報を
含むものであるのに対し,リードインエリアに記録された情報は,目次情報と共に
プレマスターされた情報が含まれ,TOCセクターにおけるU-TOC開始アドレ
ス,レコーダブルユーザーエリア開始アドレスに係る情報であって,プレマスター
されたものである点,個別のユーザー情報の位置を特定することができないもので20
ある点で,UTOCとは異なる情報であると認められるから,MDディスクにおい
て,UTOCエリアに記録されるUTOCがリードインエリアに記録される構成を
認めることはできず,MD機器において,そのような処理が行われる構成を認める
こともできない。
また,MD規格書には,UTOCがUTOCエリアに記録された後にその他の領25
域に記録されることも記載されておらず,そのように認めることもできないから,
UTOCエリアがUTOCを一時的に記録するための領域であると認めるに足りな
い。
(ウ)被告の主張に対する判断
被告は,MD規格書によって装置の客観的構成を確定することはできない旨主張
するが,前記(イ)のとおり,MD規格書には,MDディスクの情報エリアの構成や5
記録される目次情報の内容,記録方法等が開示されており,そのような構成を有す
るディスクに記録可能な装置としてMD機器の構成を認定することができるから,
被告の主張は採用することができない。
(エ)原告の主張に対する判断
原告は,リードインエリアに記録される目次情報は,関連するUTOCがUTO10
Cエリアに記録されることによって,UTOCエリアに「一時的に」記録されてい
るということができるとし,その理由として,リードインエリアにU-TOC開始
アドレスが記録されていることを指摘して,リードインエリアに記録されている目
次情報とUTOCが相互に関連する情報であることを主張する。
しかしながら,前記(イ)cのとおり,リードインエリアに記録される目次情報は,15
プレマスターされたものである点,個別のユーザー情報の位置を特定することがで
きないものである点で,UTOCとは異なる情報であると認められ,それらに関連
性が認められるというだけでは,UTOCエリアにUTOCが記録されることをも
って,リードインエリアに記録される目次情報に記録されていると認めるに足りな
い。20
したがって,原告の主張は採用することができない。
⑵争点1-1(本件発明1の実施の有無)について
アCD-R/RWドライブ
(ア)CD-R/RWドライブの構成と本件発明1-1の対比
前記⑴イ(ウ)b(a)のとおり,CD-R/RWドライブは,構成1aないし1dを25
有すると認められるところ,①CD-R/RWドライブの「CD-R規格」及び
「CD-RW規格」は,本件発明1-1の「所定の規格」に,②CD-R/RWド
ライブの「プログラムエリア」は,本件発明1-1の「記録領域」に,③CD-R
/RWドライブの「オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号」は,本
件発明1-1の「所望の情報信号」に,④CD-R/RWドライブの「PMA」は,
本件発明1-1の「リードインエリア近傍の領域」に,それぞれ対応する構成であ5
ると認められる。
そうすると,CD-R/RWドライブは,少なくとも構成要件1A,1Dを充足
する。
(イ)構成要件1Bについての検討
a「線速度一定方式で記録する」の解釈10
(a)構成要件1Bは「情報信号を…記録領域に線速度一定方式で記録する」こと
を規定するものであり,①線速度一定方式は,ディスクの内周から外周まで一定の
速度で記録する記録方法であること(前記第2の2⑸ア),②本件特許1の出願過
程で被告が提出した本件補正書に,第1引用例として引用された発明は,ディスク
の回転を角速度一定方式,すなわち,CAV方式で制御するものである点で,「線15
速度一定方式によってディスクを回転制御する」本件発明1と相違する旨記載され
ていること(前記⑴ア(イ)),③本件明細書1の発明の詳細な説明にも,実施例の
説明の中で,「記録信号SRECに応じて発光駆動されるレーザ光L1を,軸6を中心
に線速度一定(CLV(constantlinearvelociry))方式で回転駆動される光デイ
スク7に照射し,このようにして,記録データDTREC及び又は入力オーデイオ信号20
ADINを光デイスク7上に記録し得るようになされている。」(9欄)と記載され
ていること(前記⑴ア(ア)d(b))からすると,「線速度一定方式で記録する」は,
線速度一定方式によってディスクを回転制御することにより記録することを意味す
るものと解される。
(b)原告は,「線速度一定方式で記録する」は,ディスクの記録密度を一定にす25
ることができる方式で記録することを意味すると解すべきである旨主張するが,前
記(a)のとおりの「線速度一定方式」の意味内容,本件特許1の出願経過,本件明
細書1の発明の詳細な説明の記載と整合せず,採用することができない。
bあてはめ
(a)構成1bは,「ディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて
線速度一定となるようにディスクを回転させて,情報信号をプログラムエリアに記5
録する手段」というものであり,線速度一定方式によってディスクを回転制御する
ことにより記録するものであると認められるから,CD-R/RWドライブは,構
成要件1Bを充足する。
(b)他方で,前記第2の2⑸のとおり,ディスクへの記録方法には,ゾーンCL
VやCAV方式といった線速度一定方式以外のものもあり,これらは線速度一定方10
式とは異なる記録方法であると認めるのが相当であるから,線速度一定方式以外の
記録方式でのみCD-R/RWディスクに記録する装置が存在していた場合には,
同装置は,構成要件1Bを充足するとはいえない。もっとも,線速度一定方式以外
の記録方式でのみCD-R/RWディスクに記録する装置が存在していたことは明
らかではないから,CD-R/RWドライブは構成要件1Bを充足するものと認め15
た上で,上記の点は,本件各発明の実施により被告が受けるべき利益の額の算定に
おいて考慮することとする。
(ウ)構成要件1Cについての検討
a「情報信号の内容を表す目次情報」の解釈
(a)構成要件1Cは,「リードインエリアに記録される上記情報信号の内容を表20
す目次情報を…リードインエリア近傍の領域に一時的に記録する」ことを規定する
ものであり,①「目次」に箇条または題目の順序,目録,書物・雑誌の内容の見出
し書き,目録といった一般的な字義があること,②本件明細書1の発明の詳細な説
明に,「特にリードインエリアには,プログラク記録エリアに記録される音楽情報
等の曲番号,スタート及びエンド時間等の内容を表す目次情報でなるTOC25
(tableofcontents)として記録され,飛び越し再生やプログラム再生等,再生
時の種々の操作上のデータとして使用されるようになされている。」(5欄)と記
載されていること(前記⑴ア(ア)b)からすると,「情報信号の内容を表す目次情
報」は,情報信号の内容を推知させるものに限られないというべきであり,これに
関連する情報であり,再生時の種々の操作上のデータとして使用される情報であっ
て,曲番号のほか,スタート時間及びエンド時間等のディスク上の記録位置を特定5
する情報を含むものであると解される。
(b)被告は,「情報信号の内容を表す目次情報」は,「曲番号」のように,情報
の内容自体を推知させる情報を含むと解すべきであり,コンピュータ用の外部記録
媒体としてコンピュータデータのようなデジタルデータを記録する場合にはこれを
充足するとはいえない旨主張する。10
しかしながら,前記(a)認定の「目次」の一般的な字義,本件明細書1の発明の
詳細な説明の記載に照らせば,「情報信号の内容を表す目次情報」は,情報の内容
自体を推知させるものでなければならないものとは認め難く,また,音楽情報に係
る曲番号にとどまらず,各種データのスタート時間及びエンド時間等のディスク上
の記録位置を特定する情報を含むものと解するのが相当であるから,コンピュータ15
用の外部記録媒体としてコンピュータデータのようなデジタルデータを記録する場
合にも記録される情報であると認められる。
したがって,被告の主張は採用することができない。
bあてはめ
構成1cは,「プログラムエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録20
されるトラック開始位置に係る情報を含む目次情報を,リードインエリアが未記録
状態の間,リードインエリアより内周側に隣接して設けられたPMAに一時的に記
録する手段」というものであり,「トラック開始位置に係る情報を含む目次情報」
は,情報信号に関連する情報であり,再生時の種々の操作上のデータとして使用さ
れるものであって,「情報信号の内容を表す目次情報」に相当する情報であると認25
められるから,CD-R/RWドライブは,構成要件1Cを充足する。
(エ)CD-R/RWドライブについての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブは,構成要件1Aないし1Dを充足し,
本件発明1-1の技術的範囲に属するから,本件発明1の実施品であると認められ
る。
イCD-R/RWディスク5
(ア)CD-R/RWディスクの構成と本件発明1-3の対比
前記⑴イ(ウ)b(b)のとおり,CD-R/RWディスクは,構成1eないし1hを
有すると認められるところ,①CD-R/RWディスクの「CD-R規格」及び
「CD-RW規格」は,本件発明1-3の「所定の規格」に,②CD-R/RWデ
ィスクの「プログラムエリア」又は「情報エリア」は,本件発明1-3の「記録領10
域」に,③CD-R/RWディスクの「オーディオやデータ等のユーザー情報に係
る情報信号」は,本件発明1-3の「所定の情報信号」に,④CD-R/RWディ
スクの「PMA」は,本件発明1-3の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構
成であると認められる。
そうすると,CD-R/RWディスクは,少なくとも構成要件1Hを充足する。15
(イ)構成要件1Eについての検討
構成要件1Eの「線速度一定方式で記録される」が線速度一定方式によってディ
スクを回転制御することにより記録することを意味すると解されることは,前記ア
(イ)と同様であり,CD-R/RWディスクは,構成1eのとおり,線速度一定方
式によってディスクを回転制御することにより記録されるものであると認められる20
から,構成要件1Eを充足する。
(ウ)構成要件1F,1Gについての検討
構成要件1Fの「情報信号の内容を表す目次情報」,1Gの「上記目次情報」が,
情報信号の内容に関連する情報であり,再生時の種々の操作上のデータとして使用
されるものであって,曲番号のほか,スタート時間及びエンド時間等のディスク上25
の記録位置を特定する情報を含むものであると解されることは,前記ア(ウ)と同様
であり,構成1fの「トラック開始位置に係る情報を含む目次情報」,構成1gの
「上記目次情報」はこれに相当する情報であると認められるから,CD-R/RW
ディスクは,構成要件1F,1Gを充足する。
(エ)CD-R/RWディスクについての小括
以上のとおり,CD-R/RWディスクは,いずれも,構成要件1Eないし1H5
を充足し,本件発明1-3の技術的範囲に属するから,本件発明1の実施品である
と認められる。
ウDVD-R/RWドライブ及びディスク
(ア)DVD-R/RWドライブ及びディスクの構成と本件発明1-1,1-3,
1-5,1-6の対比10
DVD-R/RWドライブ及びディスクは,前記(1)ウ(ウ)a及びbのとおりの構
成を有するものであり,これを本件発明1-1,1-3,1-5,1-6と対比す
ると,①DVD-R/RWドライブ及びディスクの「DVD-R規格又はDVD-
RW規格」は,本件発明1-1,1-3の「所定の規格」に,②DVD-R/RW
ドライブ及びディスクの「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件発明1-1,15
1-3,1-5,1-6の「所望の情報信号」又は「所定の情報信号」に,③DV
D-R/RWドライブ及びディスクの「情報エリア」又は「データエリア」は,本
件発明1-1,1-3,1-5,1-6の「記録領域」に,④DVD-R/RWド
ライブ及びディスクの「RMD」は,本件発明1-1,1-3,1-5,1-6の
「情報信号の内容を表す目次情報」に,⑤DVD-R/RWドライブ及びディスク20
の「RMA」は,本件発明1-1の「リードインエリア近傍の領域」及び本件発明
1-3,1-5,1-6の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構成であると認
められる。
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,DVD-R/RWドライブ及びディスクは,少な25
くとも,構成要件1C,1F,1G,1L,1Qを充足するとはいえず,本件発明
1-1,1-3,1-5,1-6の技術的範囲に属するものであるとはいえないか
ら,本件発明1の実施品であるとはいえない。
a本件発明1-1(構成要件1C),本件発明1-3(構成要件1F,1G)
すなわち,前記(1)ウ(ウ)cのとおり,DVD-R/RWドライブ及びディスクに
ついては,ファイナライズ処理等によってRMDがリードインエリアに記録される5
とは認められず,RMAがRMDを一時的に記録する領域であるとも認められない
ことからすると,「リードインエリアに記録される上記情報信号の内容を表す目次
情報を…リードインエリア近傍の領域に一時的に記録する」(構成要件1C),
「情報信号の内容を表す目次情報を含むリードインエリア」(構成要件1F),
「上記目次情報を一時的に記録するための拡大記録領域」(構成要件1G)に対応10
する構成を有するとは認められず,構成要件1C,1F,1Gを充足するとはいえ
ない。
b本件発明1-5(構成要件1L),本件発明1-6(構成要件1Q)
これらに加えて,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,RMDがRM
Aに格納される時期等は記載されておらず,また,データエリアへのユーザーデー15
タに係る情報信号の記録が終了されたか否か,記録処理動作時にリードインエリア
にRMDが記録されているか否かを判別し,それらの判別結果に応じてRMDの記
録等に係る処理を分岐させることも記載されておらず,DVD-R/RWドライブ
において,そのような処理が行われていると認めるに足る証拠はないことからする
と,DVD-R/RWドライブは,「記録領域への上記情報信号の記録が終了され20
たか否かを判別し,当該記録が終了されたもの判断した場合は,上記メモリ手段に
記憶された内容を上記目次情報として…リードインエリアに記録し,当該記録が中
断されたものと判断した場合は,上記メモリ手段の内容を…拡大記録領域に一時的
に記録する」(構成要件1L),「記録処理動作時に上記リードインエリアに上記
目次情報が記録されているか否かを判別すると共に,上記リードインエリアに上記25
目次情報が記録されていないと判断した場合,上記拡大記録領域に記録された上記
目次情報を上記メモリ手段に書き込み,上記リードインエリアに上記目次情報が記
録されていると判断した場合は,再生モードへ移行する」(構成要件1Q)に対応
する構成を有するとは認められず,構成要件1L,1Qを充足するとはいえない。
エDVD+Rドライブ及びディスク
(ア)DVD+Rドライブ及びディスクの構成と本件発明1-1,1-3,1-5,5
1-6の対比
DVD+Rドライブ及びディスクは,前記(1)エ(イ)a及びbのとおりの構成を有
するものであり,これを本件発明1-1,1-3,1-5,1-6と対比すると,
①DVD+Rドライブ及びディスクの「DVD+R規格」は,本件発明1-1,1
-3の「所定の規格」に,②DVD+Rドライブ及びディスクの「ユーザーデータ10
に係る情報信号」は,本件発明1-1,1-3,1-5,1-6の「所望の情報信
号」又は「所定の情報信号」に,③DVD+Rドライブ及びディスクの「情報ゾー
ン」又は「データゾーン」は,本件発明1-1,1-3,1-5,1-6の「記録
領域」に,④DVD+Rドライブ及びディスクの「リードインゾーン」は,本件発
明1-1,1-3,1-5,1-6の「リードインエリア」に,⑤DVD+Rドラ15
イブ及びディスクの「全てのクローズドセッションについてのセッション開始アド
レス及びセッション終了アドレスに係る情報」は,本件発明1-1,1-3,1-
5,1-6の「情報信号の内容を表す目次情報」に,⑥DVD+Rドライブ及びデ
ィスクの「インナードライブエリア」は,本件発明1-1の「リードインエリア近
傍の領域」及び本件発明1-3,1-5,1-6の「拡大記録領域」に,それぞれ20
対応する構成であると認められる。
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,DVD+Rドライブ及びディスクは,少なくとも,
構成要件1C,1F,1G,1L,1Qを充足するとはいえず,本件発明1-1,
1-3,1-5,1-6の技術的範囲に属するものであるとはいえないから,本件25
発明1の実施品であるとはいえない。
a本件発明1-1(構成要件1C),本件発明1-3(構成要件1F,1G)
すなわち,前記(1)エ(イ)cのとおり,DVD+Rドライブ及びディスクについて
は,ファイナライズ処理又はセッションのクロージングによって全てのクローズド
セッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る
情報がリードインゾーンに記録されるとは認められず,インナードライブエリアが5
上記の情報を一時的に記録する領域であるとも認められないことからすると,「リ
ードインエリアに記録される上記情報信号の内容を表す目次情報を…リードインエ
リア近傍の領域に一時的に記録する」(構成要件1C),「情報信号の内容を表す
目次情報を含むリードインエリア」(構成要件1F),「上記目次情報を一時的に
記録するための拡大記録領域」(構成要件1G)に対応する構成を有するとは認め10
られず,構成要件1C,1F,1Gを充足するとはいえない。
b本件発明1-5(構成要件1L),本件発明1-6(構成要件1Q)
これらに加えて,DVD+Rには,全てのクローズドセッションについてのセッ
ション開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る情報がインナードライブエ
リアに格納される時期等は記載されておらず,また,データエリアへのユーザーデ15
ータに係る情報信号の記録が終了されたか否か,記録処理動作時に上記の情報が記
録されているか否かを判別し,それらの判別結果に応じて上記の情報の記録等に係
る処理を分岐させることも記載されておらず,DVD+Rドライブにおいて,その
ような処理が行われていると認めるに足る証拠はないことからすると,DVD+R
ドライブは,「記録領域への上記情報信号の記録が終了されたか否かを判別し,当20
該記録が終了されたもの判断した場合は,上記メモリ手段に記憶された内容を上記
目次情報として…リードインエリアに記録し,当該記録が中断されたものと判断し
た場合は,上記メモリ手段の内容を…拡大記録領域に一時的に記録する」(構成要
件1L),「記録処理動作時に上記リードインエリアに上記目次情報が記録されて
いるか否かを判別すると共に,上記リードインエリアに上記目次情報が記録されて25
いないと判断した場合,上記拡大記録領域に記録された上記目次情報を上記メモリ
手段に書き込み,上記リードインエリアに上記目次情報が記録されていると判断し
た場合は,再生モードへ移行する」(構成要件1Q)に対応する構成を有するとは
認められず,構成要件1L,1Qを充足するとはいえない。
オMD機器及びMDディスク
(ア)MD機器及びMDディスクは,前記(1)オ(イ)a及びbのとおりの構成を有す5
るものであり,これを本件発明1-1,1-3と対比すると,①MD機器及びMD
ディスクの「MD規格」は,本件発明1-1,1-3の「所定の規格」に,②MD
機器及びMDディスクの「ユーザー情報に係る情報信号」は,本件発明1-1,1
-3の「所望の情報信号」又は「所定の情報信号」に,③MD機器及びMDディス
クの「情報エリア」又は「レコーダブルユーザーエリア」は,本件発明1-1,110
-3の「記録領域」に,④MD機器及びMDディスクの「UTOC」は,本件発明
1-1,1-3の「情報信号の内容を表す目次情報」に,⑤MD機器及びMDディ
スクの「UTOCエリア」は,本件発明1-1の「リードインエリア近傍の領域」
及び本件発明1-3の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構成であると認めら
れる。15
(イ)しかしながら,前記(1)オ(イ)cのとおり,MD機器及びMDディスクについ
ては,UTOCがリードインエリアに記録されるとは認められず,UTOCエリア
がUTOCを一時的に記録する領域であるとも認められないことからすると,少な
くとも,「リードインエリアに記録される上記情報信号の内容を表す目次情報を…
リードインエリア近傍の領域に一時的に記録する」(構成要件1C),「情報信号20
の内容を表す目次情報を含むリードインエリア」(構成要件1F),「上記目次情
報を一時的に記録するための拡大記録領域」(構成要件1G)に対応する構成を有
するとは認められず,構成要件1C,1F,1Gを充足するとはいえない。
(ウ)したがって,MD機器及びMDディスクは,本件発明1-1,1-3の技術
的範囲に属するものであるとはいえず,本件発明1の実施品であるとはいえない。25
カ争点1-1についての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブ及びディスクは,いずれも,本件発明1
の実施品であると認められる。
また,前記第2の2⑺イのとおり,被告は,日本において,CD-R/RWディ
スクに記録する機能を有する追記書換型DVDドライブ及びBDドライブ,CD-5
R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブを販売していたと認め
られ,これらの製品についても,CD-R/RWドライブと同様の構成を有するも
のであると認められるから,いずれも,本件発明1の実施品であると認めるのが相
当である。
他方で,DVD-R/RWドライブ及びディスク,DVD+Rドライブ及びディ10
スク,MD機器及びMDディスクは,いずれも,本件発明1の実施品であるとはい
えず,ほかに本件発明1の実施品が存在すると認めるに足る証拠もない。
⑶争点1-2(本件発明2の実施の有無)について
アCD-R/RWドライブ
(ア)CD-R/RWドライブの構成と本件発明2-1の対比15
前記⑴イ(ウ)b(c)のとおり,CD-R/RWドライブは,構成2aないし2eを
有すると認められるところ,①CD-R/RWドライブの「プログラムエリア」又
は「情報エリア」は,本件発明2-1の「記録領域」に,②CD-R/RWドライ
ブの「リードインエリア」は,本件発明2-1の「記録領域の一部分」に,③CD
-R/RWドライブの「オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号」は,20
本件発明2-1の「所望の情報信号」に,④CD-R/RWドライブの「PMA」
は,本件発明2-1の「一時的な領域」に,それぞれ対応する構成であると認めら
れる。
また,本件発明2-1の「目次情報」が,情報信号の内容に関連する情報であり,
再生時の種々の操作上のデータとして使用されるものであって,曲番号のほか,ス25
タート時間及びエンド時間等のディスク上の記録位置を特定する情報を含むもので
あると解されることは,前記⑵ア(ウ)と同様であり,構成2aの「トラック開始位
置に係る情報を含む目次情報」,構成2bないし2dの「上記目次情報」又は「新
たな目次情報」はこれに相当する情報であると認められる。
そうすると,CD-R/RWドライブは,少なくとも構成要件2Aないし2C,
2Eを充足する。5
(イ)構成要件2Dについての検討
a「記録領域以外の所定の領域」の解釈
(a)本件発明2-1は,構成要件2Bで「前記情報信号を記録領域に書き込み,
目次情報を前記記録領域の一部分以外の一時的な領域に書き込む書込手段」に係る
構成を規定した上で,構成要件2Dで「前記一時的な領域から目次情報を読み出し,10
それに応じた前記記録領域以外の所定の領域にさらなる所望の情報信号を書き込む
前記書込手段」に係る構成を規定していることからすると,構成要件2Dの「前記
記録領域以外の所定の領域」は,情報信号が書き込まれた記録領域以外の領域,す
なわち,記録済みとなった記録領域以外の領域を意味すると解するのが相当である。
(b)被告は,構成要件2Dの「記録領域以外の所定の領域」は「記録領域」と異15
なる領域を意味し,「記録領域」の一部はこれに当たらない旨主張するが,「記録
領域」は情報信号を記録可能な領域をいうものと解するのが相当であるから,「記
録領域」と異なる領域に「さらなる所望の情報信号を書き込む」ことは想定されて
いないというべきであって,被告の主張は採用することができない。
bあてはめ20
構成2dは,「PMAから上記目次情報を読み出し,プログラムエリアの記録済
みの領域以外の空き領域に更なるユーザー情報を書き込む書込手段を制御し,ファ
イナライズ処理に応じ,プログラムエリアの記録済みの領域以外の空き領域に記録
された更なるユーザー情報に基づいて,新たな目次情報をリードインエリアに書き
込む書込手段を制御する制御手段」というものであり,「プログラムエリアの記録25
済みの領域以外の空き領域」は,記録済みとなった記録領域以外の領域であって,
「記録領域以外の所定の領域」に相当する領域であると認められるから,CD-R
/RWドライブは,構成要件2Dを充足する。
(ウ)CD-R/RWドライブについての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブは,構成要件2Aないし2Eを充足し,
本件発明2-1の技術的範囲に属するから,本件発明2の実施品であると認められ5
る。
イDVD-R/RWドライブ
(ア)DVD-R/RWドライブは,前記(1)ウ(ウ)a及びbのとおりの構成を有す
るものであり,これを本件発明2-1と対比すると,①DVD-R/RWドライブ
の「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件発明2-1の「所望の情報信号」に,10
②DVD-R/RWドライブの「情報エリア」又は「データエリア」は,本件発明
2-1の「記録領域」に,③DVD-R/RWドライブの「リードインエリア」は,
本件発明2-1の「記録領域の一部分」に,④DVD-R/RWドライブの「RM
D」は,本件発明2-1の「目次情報」に,それぞれ対応する構成であると認めら
れる。15
(イ)しかしながら,前記(1)ウ(ウ)cのとおり,DVD-R/RWドライブについ
ては,RMDがリードインエリアに記録されるとは認められず,RMAがRMDを
一時的に記録する領域であるとも認められないことからすると,少なくとも,「目
次情報が記録領域の一部分に記録された」(構成要件2A),「一時的な領域」
(構成要件2Bないし2D)に対応する構成を有するとは認められず,構成要件220
Aないし2Dを充足するとはいえない。
(ウ)したがって,DVD-R/RWドライブは,本件発明2-1の技術的範囲に
属するものであるとはいえず,本件発明2の実施品であるとはいえない。
ウDVD+Rドライブ
(ア)DVD+Rドライブは,前記(1)エ(イ)a及びbのとおりの構成を有するもの25
であり,これを本件発明2-1と対比すると,①DVD+Rドライブの「ユーザー
データに係る情報信号」は,本件発明2-1の「所望の情報信号」に,②DVD+
Rドライブの「情報ゾーン」又は「データゾーン」は,本件発明2-1の「記録領
域」に,③DVD+Rドライブの「リードインゾーン」は,本件発明2-1の「記
録領域の一部分」に,④DVD+Rドライブの「全てのクローズドセッションにつ
いてのセッション開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る情報」は,本件5
発明2-1の「目次情報」に,それぞれ対応する構成であると認められる。
(イ)しかしながら,前記(1)エ(イ)cのとおり,DVD+Rドライブについては,
全てのクローズドセッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終
了アドレスに係る情報がリードインゾーンに記録されるとは認められず,インナー
ドライブエリアが上記の情報を一時的に記録する領域であるとも認められないこと10
からすると,少なくとも,「目次情報が記録領域の一部分に記録された」(構成要
件2A),「一時的な領域」(構成要件2Bないし2D)に対応する構成を有する
とは認められず,構成要件2Aないし2Dを充足するとはいえない。
(ウ)したがって,DVD+Rドライブは,本件発明2-1の技術的範囲に属する
ものであるとはいえず,本件発明2の実施品であるとはいえない。15
エMD機器
原告は,本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る
明細書及び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件
発明2の実施品である旨主張するが,前記⑵オのとおり,MD機器は本件発明1の
実施品であるとは認められず,原告の主張は前提を欠く。20
また,本件発明1と本件発明2は異なる発明特定事項を有するものであり,MD
機器の具体的構成と本件発明2の対比についての主張もなく,MD機器が本件発明
2-1の技術的範囲に属するものであり,本件発明2の実施品であると認めるに足
る証拠はない。
オ争点1-2についての小括25
以上のとおり,CD-R/RWドライブは,本件発明2の実施品であると認めら
れる。
また,前記第2の2⑺イのとおり,被告は,米国において,CD-R/RWディ
スクに記録する機能を有する追記書換型DVDドライブ及びBDドライブ,CD-
R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブを販売していたと認め
られ,これらの製品についても,CD-R/RWドライブと同様の構成を有するも5
のであると認められるから,いずれも,本件発明2の実施品であると認めるのが相
当である。
他方で,DVD-R/RWドライブ,DVD+Rドライブ,MD機器は,いずれ
も,本件発明2の実施品であるとはいえず,ほかに本件発明2の実施品が存在する
と認めるに足る証拠もない。10
⑷争点1-3(本件発明3ないし6の実施の有無)について
アCD-R/RWドライブ
(ア)CD-R/RWドライブの構成と本件発明3-1の対比
CD-R/RWドライブは,前記(1)イ(ウ)aのとおりの構成を有するものであり,
これを本件発明3-1と対比すると,①CD-R/RWドライブの「情報エリア」15
又は「プログラムエリア」は,本件発明3-1の「記録領域」に,②CD-R/R
Wドライブの「オーディオやデータ等のユーザー情報に係る情報信号」は,本件発
明3-1の「所望の情報信号」に,③CD-R/RWドライブの「リードインエリ
ア」は,本件発明3-1の「拡張領域」に,④CD-R/RWドライブの「PMA」
は,本件発明3-1の「記録領域以外の所定の領域」に,それぞれ対応する構成で20
あると認められる。
また,本件発明3-1の「目次情報」が,情報信号の内容に関連する情報であり,
再生時の種々の操作上のデータとして使用されるものであって,曲番号のほか,ス
タート時間及びエンド時間等のディスク上の記録位置を特定する情報を含むもので
あると解されることは,前記⑵ア(ウ)と同様であり,「トラック開始位置に係る情25
報を含む目次情報」もこれに相当する情報であると認められる。
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,CD-R/RWドライブは,少なくとも,構成要
件3Cを充足するとはいえず,CD-RWドライブは,構成要件3Aも充足しない
ものであって,本件発明3-1の技術的範囲に属するものであるとはいえないから,
本件発明3ないし6の実施品であるとはいえない。5
a構成要件3C
すなわち,CD-R規格書及びCD-RW規格書には,記録操作開始時にリード
インエリアのコンテンツが読み出されることは記載されておらず,リードインエリ
アから読み出されたコンテンツに基づいて処理を分岐させることも記載されていな
いものであって,CD-R/RWドライブにおいて,そのような処理が行われてい10
ることを認めるに足る証拠はないから,CD-R/RWドライブは,「前記制御手
段…は,記録操作開始時に前記記録領域の拡張領域…のコンテンツを再生する…よ
うに当該装置を制御し,再生出力が前記拡張領域…に目次情報が記録されているこ
とを示している場合は,記録操作を終了し…,一方,再生出力が前記拡張領域…に
目次情報がまだ記録されていないことを示している場合,当該装置は記録領域以外15
の所定の領域…のコンテンツを再生し…,再生結果に基づいて記録操作を行う」
(構成要件3C)に対応する構成を有するとは認められず,構成要件3Cを充足す
るとはいえない。
b構成要件3A
また,本件発明3-1は「ライトワンス型光ディスク」(構成要件3A),すな20
わち,1回のみ書込み可能な光ディスク(甲6・2頁)に対する記録装置の発明で
あるところ,CD-RWディスクは,前記⑴イ(イ)①のとおり,情報の消去,書換
をすることができるものであって,「ライトワンス型光ディスク」に当たらないか
ら,CD-RWドライブは,構成要件3Aも充足しない。
イDVD-R/RWドライブ25
(ア)DVD-R/RWドライブの構成と本件発明3-1の対比
DVD-R/RWドライブは,前記(1)ウ(ウ)a及びbのとおりの構成を有するも
のであり,これを本件発明3-1と対比すると,①DVD-R/RWドライブの
「情報エリア」又は「データエリア」は,本件発明3-1の「記録領域」に,②D
VD-R/RWドライブの「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件発明3-1
の「所望の情報信号」に,③DVD-R/RWドライブの「リードインエリア」は,5
本件発明3-1の「拡張領域」に,④DVD-R/RWドライブの「RMA」は,
本件発明3-1の「記録領域以外の所定の領域」に,⑤DVD-R/RWドライブ
の「RMD」は,本件発明3-1の「目次情報」に,それぞれ対応する構成である
と認められる。
(イ)検討10
しかしながら,以下のとおり,DVD-R/RWドライブは,構成要件3A,3
Cを充足するとはいえず,本件発明3-1の技術的範囲に属するものであるとはい
えないから,本件発明3ないし6の実施品であるとはいえない。
a構成要件3A
(a)前記(1)ウ(ウ)cのとおり,DVD-R/RWドライブについては,RMDが15
リードインエリアに記録されるとは認められないことからすると,「拡張領域…に
…目次情報を記録する」(構成要件3A)に対応する構成を有するとは認められな
いから,構成要件3Aを充足するとはいえない。
(b)DVD-RWディスクについては,前記⑴ウ(イ)①のとおり,DVD情報の
多数回の書込みを可能とするものであって,「ライトワンス型光ディスク」(構成20
要件3A)に当たらないから,DVD-RWドライブは,この点も充足しない。
b構成要件3C
さらに,DVD-R規格書及びDVD-RW規格書には,記録操作開始時にリー
ドインエリアのコンテンツが読み出されることは記載されておらず,リードインエ
リアから読み出されたコンテンツに基づいて処理を分岐させることも記載されてい25
ないものであって,DVD-R/RWドライブにおいて,そのような処理が行われ
ていることを認めるに足る証拠はないから,DVD-R/RWドライブは,構成要
件3Cに対応する構成を有するとは認められず,構成要件3Cを充足するとはいえ
ない。
ウDVD+Rドライブ
(ア)DVD+Rドライブの構成と本件発明3-1の対比5
DVD+Rドライブは,前記(1)エ(イ)a及びbのとおりの構成を有するものであ
り,これを本件発明3-1と対比すると,①DVD+Rドライブの「情報ゾーン」
又は「データゾーン」は,本件発明3-1の「記録領域」に,②DVD+Rドライ
ブの「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件発明3-1の「所望の情報信号」
に,③DVD+Rドライブの「リードインゾーン」は,本件発明3-1の「拡張領10
域」に,④DVD+Rドライブの「インナードライブエリア」は,本件発明3-1
の「記録領域以外の所定の領域」に,⑤DVD+Rドライブの「全てのクローズド
セッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る
情報」は,本件発明3-1の「目次情報」に,それぞれ対応する構成であると認め
られる。15
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,DVD+Rドライブは,構成要件3A,3Cを充
足するとはいえず,本件発明3-1の技術的範囲に属するものであるとはいえない
から,本件発明3ないし6の実施品であるとはいえない。
a構成要件3A20
前記(1)エ(イ)cのとおり,DVD+Rドライブについては,全てのクローズドセ
ッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る情
報がリードインゾーンに記録されるとは認められないことからすると,「拡張領域
…に…目次情報を記録する」(構成要件3A)に対応する構成を有するとは認めら
れないから,構成要件3Aを充足するとはいえない。25
b構成要件3C
さらに,DVD+R規格書には,記録操作開始時にリードインゾーンのコンテン
ツが読み出されることは記載されておらず,リードインゾーンから読み出されたコ
ンテンツに基づいて処理を分岐させることも記載されていないものであって,DV
D+Rドライブにおいて,そのような処理が行われていることを認めるに足る証拠
はないから,DVD+Rドライブは,構成要件3Cに対応する構成を有するとは認5
められず,構成要件3Cを充足するとはいえない。
エMD機器
原告は,本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る
明細書及び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件
発明3ないし6の実施品である旨主張するが,前記⑵オのとおり,MD機器は本件10
発明1の実施品であるとは認められず,原告の主張は前提を欠く。
また,この点を措いても,弁論の全趣旨に照らせば,MDディスクは,多数回に
わたる記録が可能なディスクであると認められるから,「ライトワンス型光ディス
ク」(構成要件3A)を充足することはなく,本件発明3ないし6の実施品である
とは認められない。15
オ争点1-3についての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブ,DVD-R/RWドライブ,DVD+
Rドライブ,MD機器は,いずれも,本件発明3ないし6の実施品であるとはいえ
ず,ほかに本件発明3ないし6の実施品が存在すると認めるに足る証拠もない。
⑸争点1-4(本件発明7の実施の有無)について20
アCD-R/RWドライブ及びディスク
(ア)CD-R/RWドライブ及びディスクの構成と本件発明7-1,7-18の
対比
CD-R/RWドライブ及びディスクは,前記(1)イ(ウ)aのとおりの構成を有す
るものであり,これを本件発明7-1,7-18と対比すると,①CD-R/RW25
ドライブ及びディスクの「情報エリア」又は「プログラムエリア」は,本件発明7
-1,7-18の「第1の記録領域」に,②CD-R/RWドライブの「リードイ
ンエリア」は,本件発明7-1,7-18の「リードイン領域」又は「リードイン」
に,③CD-R/RWドライブの「PMA」は,本件発明7-1,7-18の「拡
大記録領域」に,それぞれ対応する構成であると認められる。
(イ)検討5
しかしながら,以下のとおり,CD-R/RWドライブ及びディスクは,少なく
とも,構成要件7C,7Eを充足するとはいえず,本件発明7-1,7-18の技
術的範囲に属するものであるとはいえないから,本件発明7の実施品であるとはい
えない。
すなわち,構成要件7C,7Eは,「第1の記録領域の同心円状」に「拡大記録10
領域」を設けることを規定しているところ,「同心円」に「同じ中心をもつ,二つ
以上の円」という一般的な字義があること(乙122)からすると,上記の「同心
円状」は,「拡大記録領域」が「第1の記録領域」と同じ中心をもつ円の形状であ
ることを意味するものと解するのが相当である。
これをCD-R/RWドライブ及びディスクについてみると,弁論の全趣旨に照15
らせば,CD-R/RWディスクのトラックは,らせん状に内周から外周に連続す
るようにして形成されたものであり,PMA,情報エリア又はプログラムエリアは,
いずれも,そのようにして形成されたトラック上の領域であると認められるものの
らせん状に連続する形状は円の形状とは異なるものであるというべきであって,P
MAが情報エリア又はプログラムエリアと同じ中心をもつ円の形状であるというこ20
とはできない。
したがって,CD-R/RWドライブ及びディスクは,PMAが情報エリア又は
プログラムエリアと「同心円状」に設けられている構成を有するとは認められず,
構成要件7C,7Eを充足するとはいえない。
イDVD-R/RWドライブ及びディスク25
(ア)DVD-R/RWドライブ及びディスクは,前記(1)ウ(ウ)a及びbのとおり
の構成を有するものであり,これを本件発明7-1,7-18と対比すると,①D
VD-R/RWドライブ及びディスクの「情報エリア」又は「データエリア」は,
本件発明7-1,7-18の「第1の記録領域」に,②DVD-R/RWドライブ
及びディスクの「リードインエリア」は,本件発明7-1,7-18の「リードイ
ン領域」又は「リードイン」に,③DVD-R/RWドライブ及びディスクの「R5
MA」は,本件発明7-1,7-18の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構
成であると認められる。
(イ)しかしながら,弁論の全趣旨に照らせば,DVD-R/RWディスクのトラ
ックは,らせん状に内周から外周に連続するようにして形成されたものであり,R
MA,情報エリア又はデータエリアは,いずれも,そのようにして形成されたトラ10
ック上の領域であると認められるものの,RMAが情報エリア又はデータエリアと
「同心円状」に設けられている構成を有すると認められないことは前記ア(イ)と同
様である。
(ウ)したがって,DVD-R/RWドライブ及びディスクは,少なくとも,構成
要件7C,7Eを充足するとはいえないから,本件発明7-1,7-18の技術的15
範囲に属するものであるとはいえず,本件発明7の実施品であるとはいえない。
ウDVD+Rドライブ及びディスク
(ア)DVD+Rドライブ及びディスクは,前記(1)エ(イ)a及びbのとおりの構成
を有するものであり,これを本件発明7-1,7-18と対比すると,①DVD+
Rドライブ及びディスクの「情報ゾーン」又は「データゾーン」は,本件発明7-20
1,7-18の「第1の記録領域」に,②DVD+Rドライブ及びディスクの「リ
ードインゾーン」は,本件発明7-1,7-18の「リードイン領域」又は「リー
ドイン」に,③DVD+Rドライブ及びディスクの「インナードライブエリア」は,
本件発明7-1,7-18の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構成であると
認められる。25
(イ)しかしながら,弁論の全趣旨に照らせば,DVD+Rディスクのトラックは,
らせん状に内周から外周に連続するようにして形成されたものであり,インナード
ライブエリア,情報ゾーン又はデータゾーンは,いずれも,そのようにして形成さ
れたトラック上の領域であると認められるものの,インナードライブエリアが情報
ゾーン又はデータゾーンと「同心円状」に設けられている構成を有すると認められ
ないことは前記ア(イ)と同様である。5
(ウ)したがって,DVD+Rドライブ及びディスクは,少なくとも,構成要件7
C,7Eを充足するとはいえないから,本件発明7-1,7-18の技術的範囲に
属するものであるとはいえず,本件発明7の実施品であるとはいえない。
エMD機器及びMDディスク
(ア)MD機器及びMDディスクの構成と本件発明7-1,7-18の対比10
MD機器及びMDディスクは,前記(1)オ(イ)a及びbのとおりの構成を有するも
のであり,これを本件発明7-1,7-18と対比すると,①MD機器及びMDデ
ィスクの「情報エリア」又は「レコーダブルユーザーエリア」は,本件発明7-1,
7-18の「第1の記録領域」に,②MD機器及びMDディスクの「リードインエ
リア」は,本件発明7-1,7-18の「リードイン領域」又は「リードイン」に,15
③MD機器及びMDディスクの「UTOCエリア」は,本件発明7-1,7-18
の「拡大記録領域」に,それぞれ対応する構成であると認められる。
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,MD機器及びMDディスクは,少なくとも,構成
要件7B,7C,7D,7Eを充足するとはいえず,本件発明7-1,7-18の20
技術的範囲に属するものであるとはいえないから,本件発明7の実施品であるとは
いえない。
a構成要件7B,7D
すなわち,前記(1)オ(イ)cのとおり,MD機器及びMDディスクについて,リー
ドインエリアに記録される情報はプレマスターされたものであるから,「第1の記25
録領域に記録された情報信号に対応するデータを記録するためのリードイン領域」
(構成要件7B),「記録された情報信号に対応するデータを記録するためのリー
ドイン」(構成要件7D)に対応する構成を有しているとは認められず,構成要件
7B,7Dを充足するとはいえない。
b構成要件7C,7E
また,弁論の全趣旨に照らせば,MDディスクのトラックは,らせん状に内周か5
ら外周に連続するようにして形成されたものであり,UTOCエリア,情報エリア
又はレコーダブルユーザーエリアは,いずれも,そのようにして形成されたトラッ
ク上の領域であると認められるものの,UTOCエリアが情報エリア又はレコーダ
ブルユーザーエリアと「同心円状」に設けられている構成を有すると認められない
ことは前記ア(イ)と同様であるから,MD機器及びMDディスクは,構成要件7C,10
7Eを充足するとはいえない。
オ争点1-4についての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブ及びディスク,DVD-R/RWドライ
ブ及びディスク,DVD+Rドライブ及びディスク,MD機器及びMDディスクは,
いずれも,本件発明7の実施品であるとはいえず,ほかに本件発明7の実施品が存15
在すると認めるに足る証拠もない。
⑹争点1-5(本件考案8の実施の有無)について
アCD-R/RWドライブ
(ア)CD-R/RWドライブの構成と本件考案8-1の対比
CD-R/RWドライブは,前記(1)イ(ウ)a(b)のとおりの構成を有するもので20
あり,これを本件考案8-1と対比すると,①CD-R/RWドライブの「プログ
ラムエリア」又は「情報エリア」は,本件考案8-1の「記録領域」に,②CD-
R/RWドライブの「オーディオやデータ等のユーザー情報」は,本件考案8-1
の「所望の情報信号」に,③CD-R/RWドライブの「リードインエリア」は,
本件考案8-1の「記録領域の一部」に,④CD-R/RWドライブの「PMA」25
は,本件考案8-1の「一時領域」に,それぞれ相当する構成であると認められる。
また,本件考案8-1の「TOCデータ」が,信号情報の内容に関連する情報の
データであり,再生時の種々の操作上のデータとして使用されるものであって,曲
番号のほか,スタート時間及びエンド時間等のディスク上の記録位置を特定する情
報を含むものであると解されることは,前記⑵ア(ウ)と同様であり,「トラック開
始位置に係る情報を含む目次情報のデータ」もこれに相当する情報であると認めら5
れる。
(イ)検討
しかしながら,以下のとおり,CD-R/RWドライブは,少なくとも,構成要
件8Bないし8Dを充足するとはいえず,本件考案8の技術的範囲に属するとはい
えないから,本件考案8の実施品であるとはいえない。10
a構成要件8Bないし8Dの「付加情報データ」,「拡大記録領域」の解釈
構成要件8Bないし8Dは,それぞれ,「TOCデータ」の記録,読み出し,制
御に係る構成を規定するとともに,それらに続けて,「付加情報データ」の記録,
読み出し,制御に係る構成を規定しているところ,①「付加」に「付け加える」と
いう字義があること,②本件考案8に係る明細書の考案の詳細な説明(甲9・訳文15
の9~10頁)に,時計回路から得られる視覚情報,タイトル情報,シリアル番号
情報等の情報を「付加情報データDTADD」として選択することができ,そのように
して,「第2の拡大記録領域AREXO」に所望の付加情報を記録することができるこ
となどが記載されていることにも照らせば,「付加情報データ」は,信号情報の内
容に関連する情報のデータであり,時計回路から得られる視覚情報,タイトル情報,20
シリアル番号等の情報を含むものであると解するのが相当である。
また,「拡大記録領域」は,このような内容の「付加情報データ」が記録される
領域であると解される。
bあてはめ
前記(1)イ(ウ)aのとおり,CD-R/RWドライブは,ディスクの正確な記録パ25
ワーを決定するためのキャリブレーションに関する情報のデータがPCAに記録さ
れる構成を有すると認められる。
しかしながら,キャリブレーションに関する情報は,ディスクへの記録を正確に
行うために必要な情報であるとしても,時計回路から得られる視覚情報,タイトル
情報,シリアル番号等の情報とは異なり,信号情報の内容に関連する情報のデータ
であるとはいえず,「付加情報データ」に相当する構成であるとは認められない。5
また,キャリブレーションに関する情報のデータが「付加情報データ」に相当す
ると認められない以上,PCAも「拡大記録領域」に相当する構成であるとはいえ
ない。
イDVD-R/RWドライブ
(ア)DVD-R/RWドライブは,前記(1)ウ(ウ)のとおりの構成を有するもので10
あり,これを本件考案8-1と対比すると,①DVD-R/RWドライブの「情報
エリア」又は「データエリア」は,本件考案8-1の「記録領域」に,②DVD-
R/RWドライブの「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件考案8-1の「所
望の情報信号」に,③DVD-R/RWドライブの「RMD」は,本件考案8-1
の「TOCデータ」に,④DVD-R/RWドライブの「リードインエリア」は,15
本件考案8-1の「記録領域の一部」に,それぞれ対応する構成であると認められ
る。
(イ)しかしながら,前記(1)ウ(ウ)cのとおり,DVD-R/RWドライブについ
ては,RMDがリードインエリアに記録されるとは認められず,RMAがRMDを
一時的に記録する領域であるとも認められないことからすると,少なくとも,「T20
OC(目次)データが前記記録領域の一部に記録されている」(構成要件8A),
「一時領域」(構成要件8Bないし8D)に対応する構成を有するとは認められず,
構成要件8Aないし8Dを充足するとはいえない。
(ウ)したがって,DVD-R/RWドライブは,本件考案8-1の技術的範囲に
属するものであるとはいえず,本件考案8の実施品であるとはいえない。25
ウDVD+Rドライブ
(ア)DVD+Rドライブは,前記(1)エ(イ)a及びbのとおりの構成を有するもの
であり,これを本件考案8-1と対比すると,①DVD+Rドライブの「情報ゾー
ン」又は「データゾーン」は,本件考案8-1の「記録領域」に,②DVD+Rド
ライブの「ユーザーデータに係る情報信号」は,本件考案8-1の「所望の情報信5
号」に,③DVD+Rドライブの「全てのクローズドセッションについてのセッシ
ョン開始アドレス及びセッション終了アドレスに係る情報」は,本件考案8-1の
「TOCデータ」に,④DVD+Rドライブの「リードインゾーン」は,本件考案
8-1の「記録領域の一部」に,それぞれ対応する構成であると認められる。
(イ)しかしながら,前記(1)エ(イ)cのとおり,DVD+Rドライブについては,10
全てのクローズドセッションについてのセッション開始アドレス及びセッション終
了アドレスに係る情報がリードインゾーンに記録されるとは認められず,インナー
ドライブエリアが上記の情報を一時的に記録する領域であるとも認められないこと
からすると,少なくとも,「TOC(目次)データが前記記録領域の一部に記録さ
れている」(構成要件8A),「一時領域」(構成要件8Bないし8D)に対応す15
る構成を有するとは認められず,構成要件8Aないし8Dを充足するとはいえない。
(ウ)したがって,DVD+Rドライブは,本件考案8-1の技術的範囲に属する
ものであるとはいえず,本件考案8の実施品であるとはいえない。
エMD機器
原告は,本件各発明は,同一の発明思想に基づくものであり,本件各特許に係る20
明細書及び図面の内容は同じであるから,MD機器は,本件発明1と同様に,本件
考案8の実施品である旨主張するが,前記⑵オのとおり,MD機器は本件発明1の
実施品であるとは認められず,原告の主張は前提を欠く。
また,本件発明1と本件考案8は異なる発明特定事項を有するものであり,MD
機器の具体的構成と本件考案8の対比についての主張もなく,MD機器が本件考案25
8の技術的範囲に属するものであり,本件考案8の実施品であると認めるに足る証
拠はない。
オ争点1-5についての小括
以上のとおり,CD-R/RWドライブ,DVD-R/RWドライブ,DVD+
Rドライブ,MD機器は,いずれも,本件考案8の実施品であるとはいえず,ほか
に本件考案8の実施品が存在すると認めるに足る証拠はない。5
2争点2(本件各発明により被告が受けるべき利益の額)について
⑴総論
使用者等が,職務発明について特許を受ける権利を承継しない場合でも,当該特
許権について無償の通常実施権を取得する(特許法35条1項)ことからすると,
同条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は,使用者10
等が当該特許発明を実施することによって得られる利益の全体をいうものではなく,
使用者等が当該特許発明を排他的かつ独占的に実施し得る地位を得,その結果,実
施許諾を得ていない第三者に対する禁止権を行使し得ることによって得られる利益,
すなわち,独占の利益をいうものと解される。
そして,職務発明に係る特許発明の実施を許諾した場合の実施料収入は,当該特15
許発明の禁止権に基づいて得られた利益と評価し得るから,そのような実施料収入
は,原則として,独占の利益に該当するというべきである。
また,使用者等が第三者に実施許諾をせずに,職務発明の対象となる特許発明を
自ら実施している場合における独占の利益は,第三者に対して職務発明の実施を禁
止することができることにより,第三者に実施許諾していた場合に予想される売上20
げと比較して,これを上回る売上げ,すなわち,超過売上げを得たことに基づく利
益,すなわち,超過利益をいうものと解される。
ここで,超過売上げとは,仮定的に,従業者が特許権を有し,使用者等が法定通
常実施権のみを有し,当該従業者が第三者に実施許諾をした事態を想定し,その場
合に使用者等が得たであろう仮想の売上げを想定し,その仮想売上げと現実に使用25
者等が得た売上げとを比較して算出された差額に相当するものというべきである。
もっとも,具体的には,現実に使用者等が得た売上げに,独占的地位に起因する一
定の割合を乗じて算出することが相当である。そして,独占的地位に起因する一定
の割合は,超過売上げの割合ということもでき,①当該特許発明が他社においてど
の程度実施されているか,当該特許発明の代替技術又は競合技術としてどのような
ものがあり,それらが実施されているか,②使用者等が当該特許について有償実施5
許諾を求める者にはすべて合理的な実施料率でこれを許諾する方針を採用している
か,あるいは,特定の企業にのみ実施許諾をする方針を採用しているか,などの事
情を総合的に考慮して定めることが相当である。
そして,上記方法により算出された超過売上げにおける利益が超過利益となると
ころ,その算出のためには,使用者等の具体的な利益ないし利益率を明らかにし得10
ない場合もあることなどを踏まえ,仮想実施料率とも呼ばれる,第三者へのライセ
ンスを仮想した場合の実施料率を想定し,超過売上げに当該仮想実施料率を乗じて
算出するのが相当である。
以上を前提として,以下,独占の利益,すなわち,本件各発明により被告が受け
るべき利益の有無及びその額を検討する。15
⑵事実認定
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア本件ジョイント・ライセンス・プログラムの概要
被告は,フィリップス社との間で,被告とフィリップス社が保有する光ディスク
関連規格に係る特許について,本件ジョイント・ライセンス・プログラムに係る契20
約を締結し,フィリップス社を窓口として同社と共同で実施許諾を行っていた。
●(省略)●。
また,●(省略)●(乙44,45,114,120,129)。
イライセンス対象特許リストの掲載状況
ライセンス対象特許リストは,本件ジョイント・ライセンス・プログラムに基づ25
いてフィリップス社とライセンシーの間で締結されたライセンス契約に係る契約書
に添付されたライセンス対象特許を示すリストであり,製品カテゴリごとに,ライ
センス対象特許(実用新案登録及び登録前のものを含む。)が掲載されていた。
次の(ア)ないし(カ)の各製品カテゴリに対応する各ライセンス対象特許リスト(以
下,番号に対応させて「ライセンス対象特許リスト①」などという。)に掲載され
た被告保有のライセンス対象特許の数,本件各特許の掲載状況等は次のとおりであ5
る(甲10,11,13ないし15,乙81ないし90,181)。
(ア)CD-R/RWレコーダーに係るもの
①平成9年1月7日付けライセンス対象特許リスト(乙83)
被告保有のライセンス対象特許が「CD-Audio」パートに157件,「CD-ROM」パ
ートに6件,「CD-i」パートに3件の合計166件掲載されていたが,本件各特許10
は掲載されていなかった。
②平成11年3月9日付けライセンス対象特許リスト(乙84の1)
被告保有のライセンス対象特許が「CD-Audio/GeneralCD」パートに149件,
「CD-ROM」パートに6件,「CD-i」パートに3件,「CD-RW」パートに13件の合
計171件掲載されていたが,本件各特許は掲載されていなかった。15
③平成15年1月16日付けライセンス対象特許リスト(乙84の2)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-R」パートに38件,
「CD-RW」パートに29件の合計67件掲載されており,その中に,本件各特許も
掲載されていた。
④平成22年9月7日付けライセンス対象特許リスト(甲11,13,乙8420
の3)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-R」パートに11件,
「CD-RW」パートに2件の合計13件掲載されており,その中に,本件特許2も掲
載されていた。他方で,本件特許1,本件特許3ないし7及び本件実用新案登録8
は掲載されていなかった。25
(イ)DVD-R/RWレコーダー,DVD+RWレコーダー
⑤平成14年9月13日付けライセンス対象特許リスト(乙90,181添付
資料4-1及び2)
DVD+RWレコーダーについて,被告保有のライセンス対象特許が「DVD+R
Data」パートに58件,「DVD+RWData」パートに67件の合計125件掲載され
ていたが,本件各特許は掲載されていなかった。ただし,「DVD+RData」パートに5
掲載された特許と「DVD+RWData」パートに掲載された特許には同一のものが含ま
れている。
⑥平成14年12月18日付けライセンス対象特許リスト(乙87の1,乙1
81添付資料4-3及び4)
DVD-R/RWレコーダーについて,被告保有のライセンス対象特許が,必須10
特許として,「DVD-RData」パートに163件,「DVD-RWData」パートに163
件掲載されており,その中に,本件各特許も掲載されていた。ただし,「DVD-R
Data」パートに掲載された特許と「DVD-RWData」パートに掲載された特許はほぼ
共通している。
⑦平成16年9月2日付けライセンス対象特許リスト(甲14,15,乙8715
の2)
DVD-R/RWレコーダーについて,被告保有のライセンス対象特許が,必須
特許として,「DVD-RData」パートに119件,「DVD-RWData」パートに121
件の合計240件掲載されており,その中に,本件各特許も掲載されていた。ただ
し,「DVD-RData」パートに掲載された特許と「DVD-RWData」パートに掲載され20
た特許には同一のものが含まれている。
⑧平成19年3月27日付けライセンス対象特許リスト(乙87の3)
DVD-R/RWレコーダーについて,被告保有のライセンス対象特許が,必須
特許として,「DVD-RData」パートに110件,「DVD-RWData」パートに112
件掲載されており,その中に,本件各特許も掲載されていた。ただし,「DVD-R25
Data」パートに掲載された特許と「DVD-RWData」パートに掲載された特許には同
一のものが含まれている。
(ウ)DVD-ROMドライブ
⑨平成15年2月21日付けライセンス対象特許リスト(乙181添付資料3
-1)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,141件掲載されていた。5
(エ)CD-Rディスク
⑩平成11年3月9日付けライセンス対象特許リスト(乙81の1)
被告保有のライセンス対象特許が「CD-General」パートに24件,「CD-ROM」パ
ートに8件,「CD-I」パートに12件,「CD-R」パートに15件の合計59件掲載
されていたが,本件各特許は掲載されていなかった。10
⑪平成13年12月6日付けライセンス対象特許リスト(乙81の2)
被告保有のライセンス対象特許が「CD-General」パートに32件,「CD-ROM」パ
ートに56件,「CD-I」パートに26件,「CD-R」パートに32件の合計146件
掲載されており,その中に,本件特許1及び7も掲載されていた。他方で,本件特
許2ないし6及び本件実用新案登録8は掲載されていなかった。15
⑫平成15年11月12日付けライセンス対象特許リスト(甲10)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-R」パートに22件掲
載されており,その中に,本件特許1及び7も掲載されていた。他方で,本件特許
2ないし6及び本件実用新案登録8は掲載されていなかった。
⑬平成15年11月13日付けの各ライセンス対象特許リスト(乙81の3)20
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-RHC」パートに13
件,「CD-RMS」パートに13件の合計26件掲載されていたが,本件各特許は掲
載されていなかった。
⑭平成21年2月19日付けライセンス対象特許リスト(乙81の4)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-R」パートに16件掲25
載されており,その中に,本件特許1及び7も掲載されていた。他方で,本件特許
2ないし6及び本件実用新案登録8は掲載されていなかった。
⑮平成22年9月7日付けのライセンス対象特許リスト(乙81の5)
全ての特許権の存続期間が満了したとして,ライセンス対象となる特許は掲載さ
れていなかった。
(オ)CD-RWディスク5
⑯平成11年3月9日付けライセンス対象特許リスト(乙82の1)
被告保有のライセンス対象特許が「GeneralCD」パートに5件,「CD-ROM」パー
トに4件,「CD-i」パートに5件,「CD-Extra」パートに9件,「CD-RW」パート
に7件の合計30件掲載されていたが,本件各特許は掲載されていなかった。
⑰平成15年11月3日付けライセンス対象特許リスト(乙82の2)10
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-RW」パートに20件
掲載されており,その中に,本件特許1及び7も掲載されていた。他方で,本件特
許2ないし6及び本件実用新案登録8は掲載されていなかった。
⑱平成21年2月19日付けの各ライセンス対象特許リスト(乙82の3)
被告保有のライセンス対象特許が,必須特許として,「CD-RW」パートに13件15
掲載されており,その中に,本件特許1及び7も掲載されていた。他方で,本件特
許2ないし6及び本件実用新案登録8は掲載されていなかった。
⑲平成22年9月7日付けライセンス対象特許リスト(乙82の4)
全ての特許権の存続期間が満了したとして,ライセンス対象となる特許は掲載さ
れていなかった。20
(カ)DVD-R/RWディスク,DVD+R/RWディスク
平成14年9月13日付け,同年12月6日付け,同月18日付け,平成16年
9月2日付け,平成22年9月10日付けの各ライセンス対象特許リスト(乙85
の1ないし3,乙86の1及び2,乙88,89)には,本件各特許は掲載されて
いなかった。25
ウ音楽用CDに係る特許の数
音楽用CDが準拠する規格のうち,CD-DA規格は,昭和57年までに被告及
びフィリップス社によって規格書が発表されたものであり,CD-R規格及びCD
-RW規格を実施するに当たって準拠する必要があるものであった。
CD-DA規格に採用された被告保有又は出願に係る特許の数は,被告子会社の5
従業員により,データベースを用い,①最先出願日を,昭和51年3月11日より
後から昭和58年1月1日より前までとし,②国際特許分類であるIPCコードと
してG11B(記録担体と変換器との間の相対運動に基づいた情報記録に関する分
類。ただし,一部を除く。)が付与されたものとする検索条件によって母集団を抽
出するなどして検索された結果,2509件であった(甲112,乙36,1810
1)。
エBDドライブに係る特許の数
規格団体であるOne-Blueが公開している次の各特許リストには,BDド
ライブの規格特許に係るものであり,同一の特許を1件として算出すると,合計7
14件の特許が掲載されている(乙181)。15
(ア)「PatentListProduct:BDCombiDrivePatentpool:One-BlueNovember
19,2012」と題する特許リスト
(イ)「PatentListProduct:BDRecorderDrivePatentpool:One-Blue
November19,2012」と題する特許リスト
オ本件ジョイント・ライセンス・プログラムに係るライセンス料配分額20
被告子会社の従業員において,ライセンス対象特許リストに本件各特許が掲載さ
れているCD-R/RWレコーダー,DVD-R/RWレコーダー,CD-Rディ
スク,CD-RWディスクの各製品カテゴリ(前記イ(ア),(イ),(エ),(オ))に対応
する次の各製品について,被告がフィリップス社から本件ジョイント・ライセン
ス・プログラムに係るライセンス料配分額として報告を受けた各年の金額を調査,25
集計したところ,それらの各年の金額及び合計額は次のとおりであった(乙112
ないし115,120,129)。
(ア)CD-R/RWドライブ
前記イ(ア)のライセンス対象特許リストのCD-R/RWレコーダーに対応する製
品カテゴリである(乙120,弁論の全趣旨)。
平成15年:●(省略)●円5
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
平成19年:●(省略)●円
平成20年:●(省略)●円10
平成21年:●(省略)●円
平成22年:●(省略)●円
平成23年:●(省略)●円
平成24年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円15
(イ)DVD-Recordableドライブ
前記イ(イ)のライセンス対象特許リストのDVD-R/RWレコーダーに対応す
る製品カテゴリである(乙120,弁論の全趣旨)。
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円20
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
平成19年:●(省略)●円
平成20年:●(省略)●円
平成21年:●(省略)●円25
平成22年:●(省略)●円
平成23年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円
(ウ)CD-Rディスク
平成13年:●(省略)●円
平成14年:●(省略)●円5
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
平成19年:●(省略)●円10
平成20年:●(省略)●円
平成21年:●(省略)●円
平成22年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円
(エ)CD-RWディスク15
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円
カ被告製品1及び2の売上げ20
(ア)CD-R/RWドライブ
日本及び米国における,被告の販売に係るCD-R/RWドライブの各年の売上
げ及びその合計額は,次のとおりであった(乙159)。
平成7年:●(省略)●円
平成8年:●(省略)●円25
平成9年:●(省略)●円
平成10年:●(省略)●円
平成11年:●(省略)●円
平成12年:●(省略)●円
平成13年:●(省略)●円
平成14年:●(省略)●円5
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円10
(イ)追記書換型DVDドライブ,BDドライブ等
日本及び米国における,被告の販売に係る,CD-R/RWディスクに記録する
機能を有する追記書換型DVDドライブ,CD-R/RWドライブとDVD-RO
Mドライブの複合ドライブ及びBDドライブの各年の売上げ及びその合計額は,次
のとおりであった(乙159)。15
平成14年:●(省略)●円
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円20
合計:●(省略)●円
(ウ)CD-Rディスク
日本における,被告の販売に係るCD-Rディスクの各年の売上げ及びその合計
額は,次のとおりであった(乙158)。
平成9年:●(省略)●円25
平成10年:●(省略)●円
平成11年:●(省略)●円
平成12年:●(省略)●円
平成13年:●(省略)●円
平成14年:●(省略)●円
平成15年:●(省略)●円5
平成16年:●(省略)●円
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
平成19年:●(省略)●円
平成20年:●(省略)●円10
平成21年:●(省略)●円
合計:●(省略)●円
(エ)CD-RWディスク
日本における,被告の販売に係るCD-RWディスクの各年の売上げ及びその合
計額は,次のとおりであった(乙158)。15
平成12年:●(省略)●円
平成13年:●(省略)●円
平成14年:●(省略)●円
平成15年:●(省略)●円
平成16年:●(省略)●円20
平成17年:●(省略)●円
平成18年:●(省略)●円
平成19年:●(省略)●円
平成20年:●(省略)●円
平成21年:●(省略)●円25
合計:●(省略)●円
キ全世界における光ディスク及び光ドライブの販売数についての統計資料
日本エコノミックセンター発行の①「96光磁気ディスクの現状と展望」(甲4
9),②「97光ディスク&ドライブ市場の全貌」(甲23,50),③「99光
ディスク&ドライブ市場の全貌」(甲51,59),④「01光ディスク&ドライ
ブ市場の全貌」(甲24,52),⑤「03光ディスク&ドライブ市場の全貌」5
(甲25,34,53,60,65,70),⑥「04光ディスク&ドライブ市場
の全貌」(甲26,54,61,66,71),⑦「05次世代光ディスクの将来
展望」(甲27,31,35,62,67,72),⑧「07次世代光ディスク市
場の将来展望」(甲28,32,36,56,63,68,73),⑨「10光デ
ィスク業界の実態と将来展望」(甲33,37,38,44,57,69,74),10
日経BPコンサルティング発行の⑩「デジタル家電市場総覧2004」(甲30),
⑪「デジタル家電市場総覧2008」(甲43)には,平成6年から平成24年ま
での,全世界における,CD-R/RWドライブ,CD-R/RWドライブとDV
D-ROMドライブの複合ドライブ,追記書換型DVDドライブ,BDドライブ,
CD-Rディスク,CD-RWディスク,書換型DVDディスク,追記型DVDデ15
ィスクの各販売数について,予測値も含めて,別紙7統計資料等一覧表のとおり記
載されている。
クヤマハのプログラマブルディスクシステム及び乙28発明
(ア)ヤマハ及び富士写真フィルム株式会社は,昭和62年4月に開催された「第
1回電子出版システム展」において,音楽用CDと互換性を有する追記型光ディス20
クとして,プログラマブルディスクシステム(以下「PDS」という。)を発表し
た。PDSは,光ディスクにレーザを照射して直接的にカッティングする方式で記
録するライトワンス型ディスクであり,その頃,業務用の製品として販売を開始さ
れた(乙30,32,36,173)。
(イ)ヤマハは,平成元年2月7日,乙28発明に係る特許出願をした(乙28)。25
ケ実施料率に関する文献の記載
(ア)株式会社帝国データバンクが作成した「知的財産の価値評価を踏まえた特許
等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルテ
ィ料率に関する実態把握~(平成22年3月)」(以下「本件報告書」という。)
には,国内同業他社のロイヤルティ料率に関するアンケート結果に係る特許権のロ5
イヤルティ率の平均値として,産業分野を電気とするものは2.9%,全体の平均
は3.7%と記載されている(甲20)。
(イ)実施料率〔第5版〕には,「20.電子計算機・その他の電子応用装置」につ
いて,その技術分野は,電子計算機・同付属装置,X線装置,ビデオ機器,医療用
電子応用装置,その他の電子応用装置の製造技術であり,平成4年度から平成1010
年度の実施料率の平均は,契約時頭金のあるものが13.5%であることが記載さ
れている。
また,実施料率〔第5版〕には,「21.電子・通信用部品」について,その技術
分野は,電子部品・デバイス製造技術,すなわち,電子管,半導体素子,集積回路,
抵抗器・コンデンサ・変成器・複合部品,音響部品等の製造技術であり,平成4年15
度から平成10年度の実施料率の平均は,契約時頭金のないものが3.3%,ある
ものが3.5%であること,この技術分野では1%の契約が中心であることが特徴
であること,実施料率が低く抑えられている理由として,この技術分野では,ライ
センス収入を得るとともに,技術を普及させ,対象技術を標準化することが重要視
されるケースが他の技術分野と比較して多いことが考えられることが記載されてい20
る(甲19,乙179)。
⑶争点2-1(本件各発明のライセンスにより被告が受けるべき利益の額)
について
ア被告が収受したライセンス料の額
(ア)検討25
a前記⑵イのとおり,ライセンス対象特許リストは,本件ジョイント・ライセ
ンス・プログラムに基づいてフィリップス社とライセンシーの間で締結されたライ
センス契約に係る契約書にライセンス対象特許を示すものとして添付されたリスト
であるから,特定の時点において被告が保有していた本件ジョイント・ライセン
ス・プログラムに基づくライセンス対象特許を示すものであるということができる。
そして,前記⑵イのとおり,(ⅰ)CD-R/RWレコーダーにつき,平成15年15
月16日付けライセンス対象特許リスト③に本件各特許が掲載され,平成22年9
月7日付けライセンス対象特許リスト④に本件特許2が掲載されていたこと,(ⅱ)
DVD-R/RWレコーダーにつき,平成14年12月18日付けライセンス対象
特許リスト⑥,平成16年9月2日付けライセンス対象特許リスト⑦,平成19年
3月27日付けライセンス対象特許リスト⑧に,それぞれ本件各特許が掲載されて10
いたこと,(ⅲ)CD-Rディスクにつき,平成13年12月6日付けライセンス対
象特許リスト⑪,平成15年11月12日付けライセンス対象特許リスト⑫,平成
21年2月19日付けライセンス対象特許リスト⑭に,それぞれ本件特許1及び7
が掲載されていたこと,(ⅳ)CD-RWディスクにつき,平成15年11月3日付
けライセンス対象特許リスト⑰,平成21年2月19日付けライセンス対象特許リ15
スト⑱に,それぞれ本件特許1及び7が掲載されていたものである。
そして,前記⑵オのとおり,被告子会社の従業員において,被告がフィリップス
社から報告を受けたライセンス料配分額を調査,集計したところ,CD-R/RW
ドライブ(CD-R/RWレコーダー)につき,平成15年から平成24年までの
●(省略)●円,DVD-Recordableドライブ(DVD-R/RWレコ20
ーダー)につき,平成15年から平成23年までの●(省略)●円,CD-Rディ
スクにつき,平成13年から平成22年までの●(省略)●円,CD-RWディス
クにつき,平成15年から平成17年までの●(省略)●円であった。
そうすると,上記の調査,集計は,ライセンス対象特許リストの製品カテゴリに
対応する製品カテゴリを対象とし,本件各特許がライセンス対象特許リストに掲載25
されていた時期と概ね整合する期間を対象としてされたものであるということがで
きるから,本件各特許を含むライセンス対象特許についての被告のライセンス料配
分額については,基本的に,上記の調査,集計に従って算出するのが相当である。
bもっとも,前記aのとおり,DVD-R/RWレコーダーについては,平成
14年12月18日付けライセンス対象特許リスト⑥に本件各特許が掲載されてい
たことからすると,本件各特許は,同年時点で,ライセンス対象特許とされていた5
と認められるのに対し,これに対応する製品カテゴリであるDVD-Record
ableドライブに係るライセンス料配分額については,平成15年以降のものし
か集計されていない。
前記⑵キのとおり,日本エコノミックセンターの統計資料において,追記書換型
DVDドライブの販売数が平成12年から計上されていること,前記第2の2⑺イ10
のとおり,被告も平成14年から追記書換型DVDドライブを販売していたことな
どに照らすと,平成14年にDVD-Recordableドライブについてのラ
イセンス収入が全くないことは考え難く,その金額は明らかでないものの,前記⑵
オ(イ)のとおり,平成15年のライセンス料配分額が●(省略)●円であったこと
からして,平成14年のライセンス料配分額もこれと●(省略)●円であったと推15
認するのが相当である。
cまた,前記aのとおり,CD-RWディスクについては,平成21年2月1
9日付けライセンス対象特許リスト⑱に本件特許1及び7が掲載されていたことか
らすると,本件特許1及び7は,同年時点で,ライセンス対象特許とされていたと
認められるものの,これに対応する平成18年以降のライセンス料配分額は集計さ20
れていない。
しかしながら,前記⑵オ(エ)のとおり,平成17年のライセンス料配分額が●
(省略)●円とわずかな金額であることからすると,仮に被告が平成18年以降に
ライセンス料の配分を受けていたとしても●(省略)●であったと考えられるから,
同年以降のライセンス料配分額があったと認めることはできない。25
d他方で,前記⑵アのとおり,被告は,フィリップス社において,ライセンス
を受けようとしない第三者に対して特許権侵害訴訟等によって権利行使をした場合
には,訴訟関係費用の一部をライセンス料配分額から控除した金額の支払を受けて
いたと認められるものの,本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおいて訴訟
関係費用を控除することの契約上の位置付け等は明らかでなく,職務発明に関する
訴訟費用は,一般的に,対価の算定にあたっての使用者側である被告の貢献度の一5
事情として考慮されるべきものであると考えられ,被告は,フィリップス社を窓口
として,ライセンシーからライセンス料の支払を受けている以上,同控除前のライ
センス料配分額を受領したものであると認めるのが相当であるから,他に特段の事
情がない限り,被告が収受したライセンス料の額を算定するに当たり,訴訟関係費
用を控除する必要があるということはできない。10
(イ)原告の主張に対する判断
a原告は,本件各発明を対象とするライセンスによって被告が収受したライセ
ンス料,具体的には,本件ジョイント・ライセンス・プログラムによって配分を受
けたライセンス料,被告が単独で得たライセンス料に加えて,クロスライセンスに
よって免れたライセンス料の合計額は,別紙4原告計算表(主位的)の「ライセン15
ス」欄における①欄記載の販売数又は売上げに基づいて算出された同別紙⑤欄のと
おりであるとし,上記①欄記載の販売数及び売上げは,日本エコノミックセンター
発行の市場調査等の統計データにおける販売数が,被告の自己実施製品,本件ジョ
イント・ライセンス・プログラムの対象となった製品,被告が単独でライセンスを
している製品,クロスライセンスの対象となった製品の販売数を合計した全世界の20
合計数であることから,そこから被告の自己実施製品の販売数を控除して算出した
ものであって,合理的なものである旨主張する。
しかしながら,そもそも,前記⑵キのとおり,原告の主張する統計データにおけ
る販売数は,全世界を対象とするものであり,本件各特許が対象とする日本,米国,
イギリス,フランス,オランダ,ドイツ,オーストラリア,韓国の8か国の販売数25
に対応するものではないから,本件各発明についてのライセンス収入を基礎付ける
販売数であると認めることはできない。
また,この点を措いても,原告の主張は,被告の自己実施製品,本件ジョイン
ト・ライセンス・プログラムの対象となった製品,被告が単独でライセンスをして
いる製品,クロスライセンスの対象となった製品の販売数の合計が,統計データに
おける販売数と合致することを前提とするものであるが,●(省略)●被告子会社5
の従業員の陳述書(乙120)における供述からもうかがわれるように,本件各発
明を実施して製品を製造,販売する全ての者が被告とライセンス契約を締結してラ
イセンス料を支払うとは限らないから,本件各発明を実施すると考えられる製品の
統計上の販売数から直ちにライセンス料を推認することが合理的であるとは認め難
い。10
したがって,原告の主張は前提を欠いており,採用することができない。
bまた,原告は,①被告子会社の従業員の調査,集計に係るライセンス料の額
は,本件各発明を実施する製品の売上げが増加し,ライセンスを行う企業も増加し
ているにもかかわらず収受額が減少する点で不自然であり,公開された統計データ
において推計される実施品の販売数量に対して極めて低額であるなど,不正確かつ15
不十分である,②被告が単独で得たライセンス料やDVD3C,DVD+RWアラ
イアンス,One-Red,One-Blueからのライセンス料,クロスライセ
ンスによって免れたライセンス料を含んでいない点でも不十分である,③ライセン
ス対象特許リストは,例えば,DVD-R/RWレコーダーには本件各特許が全て
掲載されているのに対して,DVD-R/RWディスクには本件各特許がいずれも20
掲載されていないなど不自然な点があり,信用することができないなどとも主張す
る。
しかしながら,上記①について,本件各発明を実施すると考えられる統計上の製
品の販売数から直ちにライセンス料を推認することが合理的であると認め難いこと
は前記aで説示したとおりであり,契約内容によってもライセンス料の額は変動し25
得ることにも照らせば,被告子会社の従業員の調査,集計に係る前記⑵オ認定のラ
イセンス料配分額が低額にすぎると直ちにはいえない。
また,上記②について,原告は,本件各特許について被告が受領したライセンス
料,クロスライセンスによって免れたライセンス料について,本件ジョイント・ラ
イセンス・プログラムに係るものと区別せずに前記⑵キ認定の統計データに含まれ
ると主張するにとどまり,本件各特許について,本件ジョイント・ライセンス・プ5
ログラムに基づくライセンス料のほかに被告がライセンス料を得たことや,クロス
ライセンスによってライセンス料の支払を免れたことを認めるに足る具体的な証拠
はない。
さらに,上記③について,前記⑵イのとおり,ライセンス対象特許リストは,フ
ィリップス社とライセンシーの間で締結されたライセンス契約に係る契約書にライ10
センス対象特許を示すものとして添付されていたものであるから,契約内容を構成
するものとして相当の注意を払って作成されたものと考えられるところ,本件各発
明のうち,装置についての発明とディスクについての発明の構成が同一であるとは
いえないことなどにも照らすと,本件各特許について,DVD-R/RWレコーダ
ーとの関係でライセンス対象特許とされ,DVD-R/RWディスクとの関係でラ15
イセンス対象特許とされないことがないとはいえず,ライセンス対象特許リストの
記載が直ちに不自然であるということはできない。
したがって,原告の主張は採用することができない。
(ウ)被告が収受したライセンス料の額についての小括
以上に照らせば,本件各特許を含むライセンス対象特許について被告が収受した20
ライセンス料は,CD-R/RWドライブ,CD-Rディスク,CD-RWディス
クについては,前記⑵オ(ア),(ウ),(エ)のとおりであり,DVD-Recorda
bleドライブについては,前記⑵オ(イ)の金額に平成14年の●(省略)●円を
加えたものであり,具体的には,別紙8相当対価計算表(ライセンス1)の「対象
製品」欄記載の製品カテゴリごとに,【A】欄及び【A】´欄記載のとおりの金額25
である。
イ本件各特許をライセンス対象特許としてライセンス料が支払われていた期間

本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおいて本件各特許がライセンス対象
特許とされていた期間等については,本件各特許のライセンス対象特許リストへの
掲載状況等を踏まえて認定するのが相当であって,具体的には,次のとおりである。5
(ア)CD-R/RWレコーダー
すなわち,前記⑵イ(ア)のとおり,平成15年1月16日付けライセンス対象特
許リスト③には本件各特許が必須特許として掲載されており,平成22年9月7日
付けのライセンス対象特許リスト④には本件特許2を除いて掲載されていなかった
ことからすると,本件各特許は,平成15年時点で,いずれも必須特許としてライ10
センス対象特許とされていたものであり,その後,本件特許1及び3ないし7につ
いては,それぞれ,存続期間が満了する平成21年又は平成22年までライセンス
対象特許とされ,また,本件実用新案登録8については,ライセンス対象特許リス
ト④作成時である平成22年までライセンス対象特許とされていたと推認するのが
相当である。15
さらに,前記⑵オ(ア)のとおり,CD-R/RWレコーダーに対応するCD-R
/RWドライブについてのライセンス料の支払が平成24年まで継続していたこと
からすると,本件特許2については,存続期間が満了する平成24年までライセン
ス対象特許とされていたと推認される。
そうすると,CD-R/RWレコーダーについて,本件各特許をライセンス対象20
特許としてライセンス料が支払われていた期間は次のとおりである。
a本件特許1:平成15年から平成21年まで
b本件特許2:平成15年から平成24年まで
c本件特許3ないし6:平成15年から平成22年まで
d本件特許7:平成15年から平成22年まで25
e本件実用新案登録8:平成15年から平成22年まで
(イ)DVD-R/RWレコーダー
また,前記⑵イ(イ)のとおり,平成14年12月18日付け,平成16年9月2
日付け,平成19年3月27日付けの各ライセンス対象特許リスト(ライセンス対
象特許リスト⑥ないし⑧)に本件各特許が必須特許として掲載されていたこと,同
オ(イ)のとおり,DVD-R/RWレコーダーに対応するDVD-Recorda5
bleドライブについてのライセンス料の支払が平成23年まで継続していたこと
からすると,本件各特許は,平成14年時点で,いずれも必須特許としてライセン
ス対象特許とされていたものであり,その後,本件特許1,3ないし7及び本件実
用新案登録8については,それぞれ,存続期間が満了する平成21年,平成22年
又は平成23年までライセンス対象特許とされていたと推認するのが相当であり,10
本件特許2についても,少なくとも平成23年まではライセンス対象特許とされて
いたと推認される。
そうすると,DVD-R/RWレコーダーについて,本件各特許をライセンス対
象特許としてライセンス料が支払われていた期間は次のとおりである。
a本件特許1:平成14年から平成21年まで15
b本件特許2:平成14年から平成23年まで
c本件特許3ないし6:平成14年から平成22年まで
d本件特許7:平成14年から平成22年まで
e本件実用新案登録8:平成14年から平成23年まで
(ウ)CD-Rディスク20
さらに,前記⑵イ(エ)のとおり,本件特許1及び7は,平成15年11月13日
付けライセンス対象特許リスト⑬には掲載されていないものの,平成13年12月
6日付けのライセンス対象特許リスト⑪に記載され,平成15年11月12日付け
ライセンス対象特許リスト⑫,平成21年2月19日付けライセンス対象特許リス
ト⑭にも必須特許として掲載されていたこと,同オ(ウ)のとおり,CD-Rディス25
クについてのライセンス料の支払が平成22年まで継続していたことからすると,
本件特許1及び7は,いずれも平成13年からライセンス対象特許とされ,平成1
5年時点では必須特許とされていたものであり,その後,存続期間が満了する平成
21年又は平成22年までライセンス対象特許とされていたと推認するのが相当で
ある。
そうすると,CD-Rディスクについて,ライセンス対象特許としてライセンス5
料が支払われていた期間は次のとおりである。
a本件特許1:平成13年から平成21年まで
b本件特許7:平成13年から平成22年まで
(エ)CD-RWディスク
また,前記⑵イ(オ)のとおり,本件特許1及び7は,平成15年11月3日付け,10
平成21年2月19日付けの各ライセンス対象特許リスト(ライセンス対象特許リ
スト⑰及び⑱)に必須特許として掲載されており,同オ(エ)のとおり,CD-RW
ディスクについてのライセンス料の支払が平成17年まで継続していたことからす
ると,本件特許1及び7は,いずれも必須特許として,平成15年から平成17年
まで,CD-RWディスクについてのライセンス対象特許としてライセンス料が支15
払われていたと推認することができる。
ウライセンス対象特許の数
(ア)ライセンス対象特許リストに掲載されたライセンス対象特許の数
本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおける特定の時点において被告が保
有していたライセンス対象特許の数は,ライセンス対象特許リストに掲載された特20
許の数をもって認定するのが相当であるが,前記⑵イのとおり,ライセンス対象特
許リストは,製品カテゴリごとに複数のものが存在しており,そこには特許登録前
のものも一定程度含まれていたほか,同オのとおり,被告が本件各発明について本
件ジョイント・ライセンス・プログラムに基づきライセンス料の支払を受けていた
期間も,平成13年から平成24年までと長期間に及んでいる。そして,特定の時25
点におけるライセンス対象特許の数は,その後の新たな特許登録のほか,存続期間
満了や無効審判請求等によって無効とされることによって権利が消滅することなど
により変動することがあったと考えられることにも照らせば,被告が保有していた
ライセンス対象特許の数は,製品カテゴリごとに,被告が本件各発明についてライ
センス料の支払を受けていた期間に作成されたと認められるライセンス対象特許リ
ストに掲載された特許の数を平均した上で,その9割をもって認定するのが相当で5
あって,具体的には,次のaないしdのとおりである。
aCD-R/RWドライブ
前記⑵イ(ア)のとおり,CD-R/RWドライブに対応するCD-R/RWレコ
ーダーについてのライセンス対象特許リストのうち,被告がライセンス料の支払を
受けていた平成15年から平成24年までに作成されたと認められるものは,ライ10
センス対象特許リスト③及び④であり,それらに掲載されているライセンス対象特
許の数は,それぞれ,67件,13件である。その平均は40件であるから,上記
の期間における平均的なライセンス対象特許の数は,その9割に相当する36件で
あったと推認するのが相当である。
bDVD-Recordableドライブ15
前記⑵イ(イ)のとおり,DVD-Recordableドライブに対応するDV
D-R/RWレコーダー及びDVD+RWレコーダーについてのライセンス対象特
許リスト⑤ないし⑧は,いずれも被告がライセンス料の支払を受けていた平成14
年から平成23年までに作成されたと認められるものの,そのうち,ライセンス対
象特許リスト⑤には本件各特許が含まれていないから,ライセンス対象特許リスト20
⑥ないし⑧に基づいて算出するのが相当である。そして,前記⑵イ(イ)のとおり,
ライセンス対象特許リスト⑥ないし⑧には同一の特許がかなり重複して掲載されて
おり,正確なライセンス対象特許の数を直ちに把握することができないものである
から,ライセンス対象特許の数を算定するに当たっては,ライセンス対象特許リス
ト⑥ないし⑧の各パートに掲載された特許の数の平均によるのが相当である。25
そこで,ライセンス対象特許リスト⑥ないし⑧の各パートに掲載された特許の数
は,それぞれ,163件,163件,119件,121件,110件,112件で
あるところ,その平均は131.3件であるから,上記の期間における平均的なラ
イセンス対象特許の数は,その9割に相当する118.17件であったと推認する
のが相当である。
cCD-Rディスク5
前記⑵イ(エ)のとおり,CD-Rディスクについてのライセンス対象特許リスト
のうち,被告がライセンス料の支払を受けていた平成13年から平成22年までに
作成されたと認められるものは,ライセンス対象特許リスト⑪ないし⑭であるが,
そのうちライセンス対象特許リスト⑬には本件各特許が含まれていないから,ライ
センス対象特許リスト⑪,⑫及び⑭に基づいて算出するのが相当である。それらに10
掲載されているライセンス対象特許の数は,それぞれ,146件,22件,16件
である。その平均は61.3件であるから,上記の期間における平均的なライセン
ス対象特許の数は,その9割に相当する55.17件であったと推認するのが相当
である。
dCD-RWディスク15
前記⑵イ(オ)のとおり,CD-RWディスクについてのライセンス対象特許リス
トのうち,被告がライセンス料の支払を受けていたと平成15年から平成17年ま
でに作成されたと認められるものは,ライセンス対象特許リスト⑰であり,そこに
掲載されている特許は20件であるから,上記の期間における平均的なライセンス
対象特許の数は,その9割に相当する18件であったと推認するのが相当である。20
(イ)音楽用CDに係るライセンス対象特許の数
また,前記⑵ウのとおり,被告子会社の従業員において,データベースを用いて,
CD-R規格及びCD-RW規格を実施するに当たって準拠する必要があるCD-
DA規格に採用された被告保有又は出願に係る特許の数を検索したところ,合計2
509件であったことが認められ,その検索方法は,国際特許分類を用いたもので25
あり,最先出願日をCD-DA規格に対応する期間に限定してされたものと認めら
れる点で合理的なものであると評価することができる。
しかしながら,上記の検索によってCD-DA規格に採用されたとされる250
9件の特許は特定されておらず,CD-R/RWディスク及びこれに記録する機能
を有するドライブに実施されていないものが相当程度含まれる可能性を否定するこ
とはできない。5
また,最先出願日を昭和51年3月11日より後から昭和58年1月1日より前
までとして検索したものであるというのであるから,上記の検索に係る特許は,い
ずれも平成8年から平成14年までの間に存続期間が満了したものであると考えら
れ,平成15年以降も存続した特許を含むものであったと認めるに足る証拠はない。
これらの事情を総合すると,被告が本件各発明についてライセンス料の支払を受10
けていた平成13年から平成24年までの期間のうち,平成14年までの期間にお
いて,ライセンス対象とされた音楽用CDに係る特許の数は,上記の検索に係る2
509件の3割に相当する752.7件であったと推認するのが相当である。
(ウ)ライセンス対象特許の数についての小括
以上に照らせば,ライセンス対象特許リストに掲載されたライセンス対象特許の15
数は,製品カテゴリごとに,前記(ア)のとおりであり,平成14年までの期間にお
けるDVD-Recordableドライブ及びCD-Rディスクについてのライ
センス料との関係では,音楽用CDに係る前記(イ)の特許もライセンス対象とされ
ていたと認められ,ほかにライセンス対象特許が存在したと認めるに足る証拠はな
い。20
したがって,ライセンス対象特許の数は,別紙8相当対価計算表(ライセンス1)
の「対象製品」欄記載の製品カテゴリごとに,【B】欄記載のとおりであったと認
められる。
エ本件各発明の貢献度
(ア)検討25
a前記1⑴ア(ウ)のとおり,本件発明1は,従来技術に係る追記型光ディスク
記録装置では,プログラム記録エリアの途中で録音を一旦中断すると,リードイン
エリアに目次情報が記録されてしまうことから,その後,プログラム記録エリアの
空きエリアに対して,新たな録音処理を行うことが困難になり,ユーザーは録音に
先立って,録音しようとする音楽情報等を,プログラム記録可能エリアに応じた時
間分,完全な状態でオーディオテープ等に一旦録音しなければならなくなるなど,5
ユーザーの使い勝手の点で未だ不十分であるという解決すべき課題があったことを
踏まえてされたものであり,目次情報を一時的に記録するための「リードインエリ
ア近傍の領域」(構成要件1C)又は「拡大記録領域」に係る構成(構成要件1G,
1L,1N)を採用することにより,ユーザーの使い勝手を格段的に向上し得るデ
ィスク,ディスク記録装置又はディスク記録再生装置を簡易な構成でその規格と無10
関係に実現するという効果を奏するものである。
また,本件各外国発明は,本件発明1と同様の課題を解決するための手段として,
目次情報を書き込む「一時的な領域」(構成要件2B等),プログラムエリアへの
記録が中断した場合に目次情報が記録される「所定の領域」(構成要件3B等),
後続の記録操作の制御に利用可能なデータが記録される「拡大記録領域」又は「拡15
大領域」(構成要件7C,7E),TOCデータを記録する「一時領域」(構成要
件8B等)に係る構成を採用することにより,ユーザーの利便性を向上させ得る光
ディスク記録装置又は光記録ディスクを提供しようとするものである。
そして,前記(2)イのとおり,本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおい
て,本件各特許は,CD-R/RWドライブ,DVD-R/RWレコーダーとの関20
係で,いずれも必須特許とされ,本件特許1及び7は,CD-Rディスク,CD-
RWディスクとの関係でも必須特許とされていること,前記1⑵,⑶のとおり,被
告も,CD-R/RWドライブ,CD-R/RWディスクに記録する機能を有する
追記書換型DVDドライブ及びBDドライブ,CD-R/RWドライブとDVD-
ROMドライブの複合ドライブについて本件発明1及び2を実施し,CD-Rディ25
スク,CD-RWディスクについて本件発明1を実施していたと認められることか
らすると,本件各特許については,これらが対象特許として含まれるライセンス契
約の相手方において,相当程度の割合で実施されていたものと推認するのが相当で
あり,契約締結時に相手方がこれらを考慮に入れて当該契約を締結した可能性があ
るというべきである。
したがって,本件各発明は,ライセンス契約の締結に対する一定の寄与があった5
と認めることができる。
bまた,前記アのライセンス料における本件各発明の貢献度については,本件
各特許と同様に必須特許とされていた前記ウ(ア)認定のライセンス対象特許と同等
のものであったと推認することができるから,製品カテゴリごとに,必須特許の数
で,対応するライセンス料の額を除して算定するのが相当である。10
他方で,必須特許とされている特許は,必須特許とされていない特許と比べてラ
イセンス契約の締結に寄与した程度は大きく,諸般の事情に照らせば,3倍程度の
貢献があったと認めるのが相当であるから,本件各発明の貢献度を算定するに当た
っては,必須特許とされていない特許の数を3で除するのが相当であって,具体的
には次のとおりである。15
(a)すなわち,まず,前記ウ(ア)c認定のCD-Rディスクについてのライセン
ス対象特許の数(55.17件)の認定に用いたライセンス対象特許リスト⑪,⑫
及び⑭のうち,必須特許に係るライセンス対象特許⑫及び⑭に掲載された特許の数
は,それぞれ,22件,16件であり,それらを平均すると19件であるから,
55.17件から19件を控除した36.17件は,ライセンス対象特許リスト⑪20
に係る必須特許とされていない特許であると認められ,本件各発明の貢献度を算定
するに当たっては,これを3で除した上で(12.05件,小数点第2位以下切捨
て。以下,同じ。),必須特許に係る19件を加えた31.05件で,対応するラ
イセンス料の額を除するのが相当である。
(b)また,DVD-Recordableドライブ及びCD-Rディスクのライ25
センス料との関係で,平成14年までの期間については,前記ウ(イ)のとおり,音
楽用CDに係る752.7件の特許がライセンス対象特許とされていたと認められ
るところ,これらが必須特許であるとは認められないから,本件各発明の貢献度を
算定するに当たっては,音楽用CDに係る特許の数を3で除した250.9件に,
DVD-Recordableドライブについては前記ウ(ア)b認定の118.1
7件を加えた369.07件,CD-Rディスクについては前記(a)認定の31.5
05件を加えた281.95件で,それぞれ対応するライセンス料の額を除するの
が相当である。
(イ)被告の主張に対する判断
被告は,被告が受領したライセンス料に対する本件各発明の貢献度はわずかなも
のであるとし,その理由として,①被告が受領したライセンス料に対しては,ライ10
センス対象特許リストに掲載されている多数のライセンス対象特許のほか,音楽用
CDに係る2508件の特許の貢献があること,②本件各特許の出願前の出願に係
る乙28発明は,本件各発明と実質的に同一の発明であり,本件各特許には無効理
由が存在していたこと,③本件各特許が登録された当時,CD-Rディスク等の値
段は十分に下がっており,ユーザーにとって追記の手間を掛けるよりも新たなディ15
スクを購入して記録する方が便宜であったこと,④本件各発明は,CD-RW,D
VD-RWのように書換できるディスクとの関係では,特に技術的意義に乏しいも
のであったこと,⑤CD-Rディスクへの記録に最も多く使用されるディスクアト
ワンス方式では,追記する必要はないこと,⑥8倍,16倍といった高速での記録
方式では,ゾーンCLVやパーシャルCAVを用いるのが通常であり(乙140),20
本件発明1の「線速度一定方式」は用いられないこと,⑦本件各発明は,ライセン
シーからも重要特許として扱われていなかったことを主張する。
しかしながら,以下のとおり,被告の主張する上記①ないし⑦の各点を踏まえて
も,本件各発明のライセンス料に対する貢献度が必須特許とされていたほかの特許
と同等のものであり,必須特許とされていない特許と比べて3倍の貢献があったと25
する前記(ア)bの認定が高すぎるものであるとは認めるに足りない。
a①について
すなわち,前記ウ(イ)のとおり,被告がライセンス料の支払を受けていた期間の
うち,音楽用CDに係る特許がライセンス対象とされていたと認められるのは平成
14年までにとどまるから,音楽用CDに係る特許の貢献があったと認められる期
間も同年まででとすべきであり,平成15年以降もそれらの特許の貢献があったと5
認めるに足る証拠はない。
b②について
また,本件各特許が有効な特許として第三者に対して禁止権を行使し得る状態で
存続していた以上,仮に無効理由が存在したとしても,独占の利益を享受すること
を想定することができる。ライセンス交渉において,本件各特許が無効であること10
を前提として取り扱われていたと認めるに足る証拠もない。
したがって,本件各特許における無効理由の存否は,前記ライセンス料における
本件各特許の貢献度を検討するに当たり考慮するには及ばない。
c③について
さらに,CD-R/RWディスクの価格が他の記録媒体と比べて低額であったと15
しても,記録を途中で中断した上で新たな録音処理を行う場合に,途中まで情報が
記録されたディスクを廃棄するなどし,新たなディスクを購入して最初から記録す
るのはユーザーにとって不便であるというべきであるから,CD-R/RWディス
クの価格が低額であることによって,記録途中のディスクに追記できることにより
ユーザーの使い勝手が向上するという本件各発明の効果が損なわれるとはいえない。20
d④について
また,CD-RW,DVD-RW等の書換可能なディスクとの関係でも,記録を
途中で中断した場合に,一旦記録を消去した上で新たに記録するのではなく,途中
まで記録された情報に引き続いて追記することによりユーザーの手間が省け,使い
勝手が向上するという本件各発明の効果は発揮されると考えられるから,上記の書25
換可能なディスクについてのライセンス料との関係でのみ本件各発明の貢献が乏し
いとはいい難い。
e⑤について
証拠(乙175)及び弁論の全趣旨に照らせば,CD-Rディスクへの記録をデ
ィスクアトワンス方式で行う場合には,情報信号が最初から最後まで一度に記録さ
れるため,PMAに目次情報が記録されることはないものの,そのためには,記録5
前にディスクに記録する全ての情報が分かっていて,それを編集しておく必要があ
ること,トラックアトワンス方式等で記録する場合には,PMAを使用することが
できることが認められる。
そうすると,ユーザーにおいて,記録前にディスクに記録する全ての情報が分か
っていない場合などにPMAを利用して目次情報を一次的に記録することは十分に10
考えられるところであって,トラックアトワンス方式等のPMAを利用した記録方
法が利用されていなかったと認めるに足る証拠もないから,CD-Rディスクへの
記録をディスクアトワンス方式で行うことができたことによって,ライセンス契約
に対する本件各発明の貢献度が大きく低下するということはできない。
f⑥について15
本件発明1は,CLV方式によってディスクを回転させることにより記録する構
成を前提とするものであるのに対し,前記第2の2⑸イ,ウのとおり,ディスクへ
の記録方法には,CLV方式のほかに,ゾーンCLV,パーシャルCAVといった
方法があったと認められるものの,これらは併存していた記録方法であり,ユーザ
ーによってディスクへの記録時に適宜選択されていたと認められる。20
被告の指摘する日本エコノミックセンター発行の「03光ディスク&ドライブ市
場の全貌」(乙140)においても,被告の製造,販売するCD-Rドライブにお
いて,8ないし24倍速,8ないし20倍速,16ないし24倍速の記録がゾーン
CLVで行われること,18ないし40倍速での記録がパーシャルCAVで行われ
ることが記載されているのに対し,4倍速,8倍速,12倍速,16倍速の記録や,25
CD-RWドライブについての記録がCLV方式以外の記録方式によって行われる
ことは記載されておらず,CLV方式で記録するものであったと認められるところ,
CLV方式による記録方法が利用されていなかったと認めるに足る証拠はない。
したがって,ゾーンCLVやパーシャルCAVといった方法でディスクへの記録
を行うことができたことによって,本件発明1のライセンス契約に対する貢献度が
大きく低下するということはできない。5
g⑦について
被告は,本件各特許がライセンシーから重要特許として扱われていなかったこと
を基礎付ける事情として,CDとの互換性を確保する上ではCD規格の要求する反
射率を達成することが重要であったことなどを主張するが,前記ウ認定のライセン
ス対象特許のうち,反射率の達成に必要なものの割合等は明らかでなく,ほかにラ10
イセンシーからの本件各特許に対する評価が低かったことを認めるに足る具体的な
証拠もないから,前記ウ認定のライセンス対象特許の中で,本件各特許の貢献度が
特に低かったということはできない。
(ウ)原告の主張に対する判断
原告は,被告の実施報奨制度において,本件各特許が1個の「ファミリー」を構15
成するものとして取り扱われていたことからすると,被告が収受したライセンス料
等における本件各発明の貢献度を算定するに当たっては,本件各特許及びそれらと
実質的に同一の特許によって構成される「ファミリー」全体を一体として評価すべ
きであるなどとして,本件各発明の貢献度は,ライセンス対象特許リストのうち,
製品と対応するパートに必須特許として掲載された登録済みの特許における,本件20
各特許及びそれらと実質的に同一の特許の占める割合等を踏まえて算定すべきであ
る旨主張する。
しかしながら,相当対価請求権は特許権ごとに発生するものであるから,そのラ
イセンス契約に対する貢献度を算定するに当たっても,当該特許権ごとにするのが
相当であり,本件各特許と類似する内容の特許が存在することによって,本件各発25
明の貢献後が,その数に応じて増加するということはできない。
また,ライセンス対象特許リストの中で製品と対応するパートに掲載された特許
の数に基づいて本件各発明の貢献度を算定すべきであるとする点も,ライセンス対
象特許リストに掲載された必須特許について,掲載されているパートによって,ラ
イセンス契約に対する貢献度が異なると認めるに足る証拠もない。
したがって,原告の主張は採用することができない。5
(エ)本件各発明の貢献度についての小括
以上に照らせば,前記アのライセンス料に対する本件各発明の貢献度は,別紙8
相当対価計算表(ライセンス1)の「対象製品」欄記載の製品カテゴリごとに,
【C】欄記載の補正後の対象特許数で除して算定することができる。
オ争点2-1についての小括10
そうすると,本件各発明のライセンスにより被告が受けるべき利益の合計額は,
別紙8相当対価計算表(ライセンス1)における「対象製品」欄記載の製品カテゴ
リごと,「対象期間」欄の期間ごとに,【A】欄記載のライセンス料の額を,【C】
欄記載の補正後の対象特許数で除した上で,【E】欄記載の本件各特許の数を乗じ
て算定することができ,【F】欄及び【F】´欄のとおりである。15
また,弁論の全趣旨に照らせば,上記各製品についての全世界の市場に占める日
本,米国,イギリス,フランス,オランダ,ドイツ,オーストラリア,韓国の8か
国の市場の割合は,概ね,日本が10%,米国が25%,イギリス,フランス,オ
ランダ,ドイツが各4%,オーストラリア,韓国が各2%であったと認めるのが相
当であるから,上記の被告が受けるべき利益の合計額における本件各発明の内訳は,20
別紙8相当対価計算表(ライセンス1)における「対象製品」欄記載の製品カテゴ
リごと,「対象期間」欄の期間ごとに,ライセンス対象とされていた特許が対象と
する国の市場の割合を踏まえて算定することができ,具体的には,別紙9相当対価
計算表(ライセンス2)の該当欄のとおりである。
⑷争点2-2(本件各発明の実施により被告が受けるべき利益の額)につい25

ア被告製品1及び2の売上げ
(ア)検討
a前記1(2)カ及び1(3)オのとおり,被告製品1及び2のうち,被告が日本及
び米国で販売していたCD-R/RWディスクに記録可能な,CD-R/RWドラ5
イブ,追記書換型DVDドライブ,CD-R/RWドライブとDVD-ROMドラ
イブの複合ドライブ及びBDドライブは,本件発明1及び2の実施品であり,被告
が日本で販売していたCD-Rディスク,CD-RWディスクは本件発明1の実施
品であって,ほかに本件各発明の実施品が存在すると認めるに足る証拠はない。
そして,前記⑵カのとおり,被告の販売に係る被告製品1及び2の売上げは,①10
CD-R/RWドライブにつき,日本及び米国における平成7年から平成18年ま
での●(省略)●円,②上記の追記書換型DVDドライブ,CD-R/RWドライ
ブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ及びBDドライブにつき,日本及び米
国における平成14年から平成18年までの●(省略)●円,③CD-Rディスク
につき,日本における平成9年から平成21年までの●(省略)●円,④CD-R15
Wディスクにつき,日本における平成12年から平成21年までの●(省略)●円
であり,ほかに被告が被告製品1及び2を販売して利益を得たと認めるに足る証拠
はない。
bまた,前記a②の売上げについて,追記書換型DVDドライブ,CD-R/
RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ及びBDドライブの各売上20
げの内訳は明らかでないが,BDドライブについては,平成18年に販売が開始さ
れたものであり,前記⑵キ認定の日本エコノミックセンター発行の統計資料に照ら
しても,同年の上記各製品の販売数に占めるBDドライブ及びBDレコーダーの割
合はわずかなものであったことがうかがわれることなどに照らすと,原告が主張す
るとおり,平成18年に●(省略)●円の売上げがあったと認めるのが相当である。25
また,追記書換型DVDドライブ,CD-R/RWドライブとDVD-ROMド
ライブの複合ドライブの売上げについては,同程度であったと推認するのが相当で
あるから,平成14年から平成18年までの間に,それぞれ,●(省略)●円であ
ったと認められる。
(イ)被告の主張に対する判断
被告は,本件特許1の登録日は平成12年4月28日であるから,日本における5
同日以前の売上げは被告が受けるべき利益を基礎付けるものではない旨主張するが,
本件特許1は,平成2年12月13日に出願公開されており(甲4),その後は被
告が補償金請求をし得る地位にあることによって実質的に他社を排除して本件特許
1を実施することができたものであるから,超過売上げが認められる限り,被告の
独占の利益を基礎付ける売上げとして考慮するのが相当である。10
(ウ)被告製品1及び2の売上げについての小括
以上に照らせば,被告製品1及び2の売上げは,別紙10相当対価計算表(自己
実施1)の「対象製品」欄記載の製品カテゴリごとに,【A】欄及び【A】´欄記
載のとおりであったと認められる。
イ超過売上げの有無及び割合15
(ア)代替技術又は競合技術,本件発明1及び2の実施割合等
a①前記1(2)アのとおり,CD-R/RWドライブのうち,線速度一定方式
以外の記録方式のみでCD-RWディスクに記録する装置や,②前記1(2)カのとお
り,DVD-R/RWディスク,DVD+R/RWディスク,BDディスクといっ
たCD-R/RWディスク以外の追記,書換可能な光ディスク及び当該光ディスク20
に記録可能なドライブ及びレコーダー等のDVD関連製品やBD関連製品は,本件
各発明の実施品ではないが,前記1(1)において検討したとおり,追記,書換が可
能であるとの機能を有する光ディスクであり,また,そのような光ディスクに記録
可能な機器であるといえるから,DVD関連製品やBD関連製品等のCD-R/R
Wディスク以外の光ディスク関連製品に用いられている技術は,いずれも本件発明25
1及び2の代替技術又は競合技術となるものであったと認めるのが相当である。
bそして,被告が被告製品1及び2を販売していた平成7年から平成21年ま
での期間における光ディスク及び光ドライブの市場に占める上記各製品の販売数の
割合を正確に把握することは困難であるが,前記⑵キ認定の日本エコノミックセン
ター発行の統計資料等によれば,少なくとも,平成12年にDVD-RW/+RW
/-RAMディスク,DVD-R/+Rディスクの販売が開始されるまで,CD-5
R/RWディスク以外の光ディスクが広く販売されていたことはうかがわれない。
しかしながら,上記の統計資料等において,①CD-Rディスクの販売数は,平
成19年から減少に転じ,平成21年には,DVD-R/+Rディスクの販売数を
下回っていたこと,②CD-RWディスクの販売数は,平成15年から減少に転じ,
平成18年以降は,DVD-RW/+RW/-RAMディスクの販売数を下回って10
いたこと,③CD-R/RWドライブの販売数も,平成16年から減少に転じ,被
告が販売を終了する平成18年頃には,CD-R/RWドライブとDVD-ROM
ドライブの複合ドライブや追記書換型DVDドライブの販売数を大きく下回り,D
VDレコーダーの販売数も下回っていたこと,④平成18年にはBDドライブ,B
Dレコーダーの販売が開始されたことなどが示されていることからすると,DVD15
-R/RWドライブ及びディスク,DVD+R/RWドライブ及びディスク等のD
VD関連製品については平成12年以降,BDドライブ及びディスク等のBD関連
製品については平成18年以降,それぞれ,広く販売されるようになったと考えら
れ,取り分け,DVD関連製品の平成21年頃の販売数は,対応するCD関連製品
の販売数を上回っていたことがうかがわれる。20
(イ)ライセンスポリシー
前記⑵アのとおり,被告は,フィリップス社との間で,被告とフィリップス社が
保有する光ディスク関連規格に係る特許について,本件ジョイント・ライセンス・
プログラムに係る契約を締結し,フィリップス社を窓口として同社と共同で実施許
諾を行っていたところ,証拠(乙44,45)によれば,フィリップス社は,本件25
ジョイント・ライセンス・プログラムに係る同社及び被告保有の特許について,ラ
イセンスを求める者に対して,非差別的な条件でライセンスを許諾し,原則として,
ライセンスを求める全ての企業にこれを認めるというライセンスポリシーを採用し
ていたことが認められる。
また,前記⑶イのとおり,本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおいて,
本件特許1及び2は,CD-R/RWレコーダー,DVD-R/RWレコーダーに5
ついての必須特許とされており,本件特許1及び7はCD-Rディスク,CD-R
Wディスクについての必須特許とされていたものであるから,被告は,上記各製品
カテゴリに属する製品を製造,販売しようとする者がライセンスを求める場合には,
フィリップス社における上記のライセンスポリシーに従って,当該製品カテゴリに
属する製品を製造,販売するために必要となるほかの特許と一括して実施許諾の対10
象としていたと認められる。
(ウ)検討
以上のとおり,いずれも本件発明1及び2の代替技術又は競合技術となるDVD
関連製品やBD関連製品等のCD-R/RWディスク以外の光ディスク関連製品は,
被告製品1及び2の販売期間中に広く販売されるようになり,取り分け,DVD関15
連製品の平成21年頃の販売数は,対応するCD関連製品の販売数を上回っていた
ことがうかがわれること,被告は,ライセンスを求める全ての企業にライセンスを
認めることを原則とするフィリップス社のライセンスポリシーに従って,本件特許
1及び2を必須特許としてほかの特許と一括して実施許諾の対象としていたことな
どに照らせば,被告製品1及び2の売上げが第三者に実施許諾していた場合に予想20
される売上げを大きく上回るものであったと認めるに足りない。
他方で,少なくとも,平成12年にDVD関連製品の販売が開始されるまで,C
D-R/RWディスク以外の光ディスクが広く販売されていたことはうかがわれず,
また,フィリップス社が採用していたライセンスポリシーにおけるライセンス料,
ライセンス条件等の契約内容は明らかでないことなどにも照らせば,被告製品1及25
び2の売上げの一部は本件発明1及び2を含む特許発明による独占的地位に起因す
る超過売上げであったと認めるのが相当であり,諸般の事情に照らせば,その割合
は被告製品1及び2の売上げの1割であったと認めるのが相当である。
(エ)被告の主張に対する判断
被告は,前記アの売上げについて,超過売上げは認められず,仮に認められたと
しても1%程度であるとし,その理由として,①被告は,本件特許1及び2につい5
て,多数のライセンシーに対して比較的低廉かつ合理的な実施料率でライセンスを
行い,かつ,ライセンシーの性質による差別を行わずに一括して複数の特許をライ
センスするという,いわゆるオープンライセンスポリシーを採用していたこと,②
本件発明1及び2には,記録可能なDVDディスク,BDディスクといった光ディ
スクはもとより,SDカード,USBメモリ,クラウドストレージといった多数の10
代替技術が存在したこと,③被告も,5.25インチ光磁気ディスク,3.5イン
チ光磁気ディスク,3.5インチマイクロフロッピーディスク,DVDやBDなど
の光ディスク,メモリースティック等の記録メディアのような代替製品を製造,販
売していたこと,④一般に,標準規格に準拠した製品の市場形成は標準化及び規格
化によって促進されるものであり,ユーザーが利用を開始すると代替規格への変更15
が困難になるロックインという現象が生じることが売上げに貢献するのに対し,標
準規格に採用された個々の特許の重要性は低いことを主張する。
しかしながら,上記①については,前記のとおり,被告は,ライセンスを求める
全ての企業に実施許諾を認めることを原則とするフィリップス社のライセンスポリ
シーに従って実施許諾を行っていたと認められるものの,フィリップス社が採用し20
ていたライセンスポリシーにおけるライセンス料,ライセンス条件等の契約内容は
明らかでなく,ライセンシーに対して低廉かつ合理的な実施料率でライセンスが行
われていたと認めることはできないから,被告製品1及び2の売上げに超過利益が
認められることを否定するに足りない。
また,上記②,③については,被告の指摘する製品のうち,DVDディスク,B25
Dディスクといった光ディスクに用いられている技術が本件発明1及び2の代替技
術又は競合技術になることは前記(ア)のとおりであるが,SDカード,USBメモ
リ,クラウドストレージ,5.25インチ光磁気ディスク,3.5インチ光磁気デ
ィスク,3.5インチマイクロフロッピーディスク,メモリースティックについて
は,記録メディアとして例示されているというにとどまり,販売数や具体的な構成
も明らかでないから,これらが本件発明1及び2の代替技術又は競合技術になり得5
たとしても,超過売上げの割合等の認定において重視することはできない。
さらに,上記④の被告の主張は,標準規格に準拠した製品の市場形成についての
一般論をいうものにすぎず,本件発明1及び2の技術的意義が乏しいものであった
ことをうかがわせる事情であるとはいえない。また,被告は,この点に関連して,
ヤマハのPDSや乙28発明についても主張しているが,仮にこれらが本件発明110
及び2と同様の構成を備えたものであったとしても,前記⑵ク(ア)のとおり,PD
Sは業務用の製品として販売されていたものであり,証拠(乙32,36,173)
及び弁論の全趣旨に照らせば,PDSの販売数は多いものではなかったと認められ
るほか,乙28発明が広く実施許諾の対象とされていたと認めるに足る証拠はない
から,超過売上げの割合等の認定において,これらを重視することはできない。15
したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ仮想実施料率
(ア)前記⑵ケ認定の本件報告書及び実施料率〔第5版〕の記載,取り分け,本件
報告書に,国内同業他社のロイヤルティ料率に関するアンケート結果に係る特許権
のロイヤルティ率の平均値として,産業分野を電気とするものは2.9%,全体の20
平均は3.7%と記載されていることを踏まえ,実施料率〔第5版〕に,技術の普
及や対象技術の標準化が重要視されるケースが多い技術分野では実施料率が低く抑
えられることが考えられる旨記載されていることも併せ考慮すれば,被告製品1及
び2に実施されている本件発明1及び2を含む特許発明に係る仮想実施料率は,2.
5%と認めるのが相当である。25
(イ)被告は,実施料率〔第5版〕の「21.電子・通信用部品」に,当該技術分野
では1%の契約が中心であることが特徴であるなどと記載されていることから,基
本となる実施料率は1%であり,ノウハウや規格といった特許以外の知的財産の貢
献を考慮して2分の1を乗じた上で算定するのが相当である旨主張する。
しかしながら,前記⑵ケ(イ)のとおり,被告の指摘する技術分野は,電子部品・
デバイス製造技術,すなわち,電子管,半導体素子,集積回路,抵抗器・コンデン5
サ・変成器・複合部品,音響部品等の製造技術であるとされており,被告製品1及
び2のようなCD関連製品に直ちに当てはまるものであるとは認め難く,仮想実施
料率を2.5%とする前記(ア)の認定が高額にすぎると認めるに足りない。
また,ノウハウや規格といった特許以外の知的財産の貢献を考慮して2分の1を
乗ずるべきであるとする点については,前記(ア)で考慮した限度を超えて,仮想実10
施料率を減額すべき事情であるとはいえない。
したがって,被告の主張は採用することができない。
(ウ)原告は,仮想実施料率は3%が相当であるとし,その理由として,実施料率
〔第5版〕の「20.電子計算機・その他の電子応用装置」には,平成4年度から平
成10年度の実施料率の平均は,契約時頭金のあるものが13.5%であると記載15
されていることを指摘するが,前記⑵ケ(イ)のとおり,原告の指摘する技術分野は,
電子計算機・同付属装置,X線装置,ビデオ機器,医療用電子応用装置,その他の
電子応用装置の製造技術であり,X線装置や医療用電子応用装置を含んでいる点で,
本件に直ちに当てはまるものであるとは認め難く,採用することができない。
エ本件発明1及び2の貢献度20
(ア)実施特許の数
前記イ,ウのとおり,超過売上げ及び仮想実施料率は,被告製品1及び2に実施
されている本件発明1及び2を含む特許発明に係るものであるから,本件各発明の
実施により被告が受けるべき利益の額を算定するに当たっては,実施特許の中での
本件発明1及び2の貢献度を算定する必要があるというべきである。そして,被告25
製品1及び2に係る実施特許の数については,被告製品1及び2が準拠するCD-
R規格及びCD-RW規格が被告及びフィリップス社によって策定されたものであ
り,本件ジョイント・ライセンス・プログラムにおいて,製品カテゴリに属する製
品を製造,販売するために実施許諾を受ける必要がある特許として,両社の保有す
る特許が一括して実施許諾されていたと認められることからすると,前記⑵イ認定
のライセンス対象特許リストに掲載されていた特許の数や,音楽用CDに係る特許5
の数,規格団体によって公開されていた特許の数を踏まえて認定するのが相当であ
って,具体的には次のとおりである。
aライセンス対象特許リストに掲載された実施特許の数
前記⑵イのとおり,ライセンス対象特許リストは,製品カテゴリごとに複数のも
のが存在しており,そこには特許登録前のものも一定程度含まれていたほか,被告10
製品1及び2の販売期間も平成7年から平成21年までと長期間に及んでいること,
特定の時点における実施特許の数は,その後の新たな特許登録のほか,存続期間満
了や無効審判請求等によって無効とされることによって権利が消滅することなどに
より変動することがあったと考えられることにも照らせば,被告製品1及び2に係
る実施特許の数は,製品カテゴリごとに,被告製品1及び2の販売期間中に作成さ15
れたと認められるライセンス対象特許リストに掲載された特許の数を平均した上で,
その9割をもって認定するのが相当であって,具体的には,次の(a)ないし(e)のと
おりである。
(a)CD-R/RWドライブ
前記⑵イ(ア)のとおり,CD-R/RWドライブに対応するCD-R/RWレコ20
ーダーについてのライセンス対象特許リストのうち,被告が日本及び米国において
CD-R/RWドライブを販売していた平成7年から平成18年までに作成された
と認められるものは,ライセンス対象特許リスト①ないし③であり,それらに掲載
されている特許の数は,それぞれ,166件,171件,67件である。その平均
は134.66件であるから,上記の期間における実施特許の数は,その9割に相25
当する121.19件であったと推認するのが相当である。
(b)追記書換型DVDドライブ
前記⑵イ(イ)のとおり,追記書換型DVDドライブに対応するDVD-R/RW
レコーダー及びDVD+RWレコーダーについてのライセンス対象特許リストのう
ち,被告が日本及び米国において追記書換型DVDドライブを販売していた平成1
4年から平成18年までに作成されたと認められるものは,ライセンス対象特許リ5
スト⑤ないし⑦であるものの,これらには同一の特許がかなり重複して掲載されて
おり,正確なライセンス対象特許の数を直ちに把握することができないものである
から,実施特許の数を算定するに当たっては,ライセンス対象特許リスト⑤ないし
⑦の各パートに掲載された特許の数の平均によるのが相当である。そして,ライセ
ンス対象特許リスト⑤ないし⑦の各パートに掲載された特許の数は,58件,6710
件,163件,163件,119件,121件であるところ,その平均は115.
16件であり,その9割に相当する103.64件であったと推認するのが相当で
ある。
(c)CD-R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ
弁論の全趣旨に照らせば,CD-R/RWドライブとDVD-ROMドライブの15
複合ドライブに対応するライセンス対象特許リストは,CD-R/RWドライブ及
びDVD-ROMドライブであり,これらは別個のものであると認められるところ,
前記⑵イ(ア)のとおり,CD-R/RWドライブのライセンス対象特許リストのう
ち,被告が日本及び米国においてCD-R/RWドライブとDVD-ROMドライ
ブの複合ドライブを販売していた平成14年から平成18年までに作成されたと認20
められるものは,ライセンス対象特許リスト③であり,同(ウ)のとおり,DVD-
ROMドライブのライセンス対象特許リスト⑨も上記の期間に作成されたものであ
ると認められる。
ライセンス対象特許リスト③,⑨に掲載されている特許の数は,それぞれ,67
件,141件であり,その合計は208件であるから,上記の期間における平均的25
な実施特許の数は,その9割に相当する187.2件であったと推認するのが相当
である。
(d)CD-Rディスク
前記⑵イ(エ)のとおり,CD-Rディスクについてのライセンス対象特許リスト
のうち,被告が日本においてCD-Rディスクを販売していた平成9年から平成2
1年までに作成されたと認められるものは,ライセンス対象特許リスト⑩ないし⑭5
であり,それらに掲載されている特許の数は,それぞれ,59件,146件,22
件,26件,16件である。その平均は53.8件であるから,上記の期間におけ
る実施特許の数は,その9割に相当する48.42件であったと推認するのが相当
である。
(e)CD-RWディスク10
前記⑵イ(オ)のとおり,CD-RWディスクについてのライセンス対象特許リス
トのうち,被告が日本においてCD-RWディスクを販売していた平成12年から
平成21年までに作成されたと認められるものは,ライセンス対象特許リスト⑰,
⑱であり,それらに掲載されている特許の数は,それぞれ,20件,13件である。
その平均は16.5件であるから,上記の期間における実施特許の数は,その9割15
に相当する14.85件であったと推認するのが相当である。
bBDドライブに係る実施特許の数
また,前記⑵エのとおり,規格団体であるOne-Blueが公開しているBD
ドライブの規格特許に係るリストには,合計714件の特許が掲載されていること
からすると,被告が日本及び米国においてBDドライブを販売していた平成18年20
の時点でも,その実施特許は714件であったと推認することができる。
c音楽用CDに係る実施特許の数
さらに,前記⑵ウのとおり,被告子会社の従業員において,データベースを用い
て,CD-R規格及びCD-RW規格を実施するに当たって準拠する必要があるC
D-DA規格に採用された被告保有又は出願に係る特許の数を検索したところ,合25
計2509件であったことが認められ,その検索方法には合理性が認められるもの
の,この2509件の特許は特定されておらず,CD-R/RWディスク及びこれ
に記録する機能を有するドライブに実施されていないものが相当程度含まれる可能
性を否定することはできないこと,上記の検索に係る特許は,いずれも平成8年か
ら平成14年までの間に存続期間が満了したものであると考えられることについて
は,前記⑶ウ(イ)で認定,説示したとおりである。5
これらの事情を総合すると,被告が被告製品1及び2を販売していた平成7年か
ら平成21年までの期間のうち,平成14年までの期間において,音楽用CDに係
る実施特許の数は,上記の検索に係る2509件の6割に相当する1505.4件
であったと推認するのが相当である。
d実施特許の数についての小括10
以上に照らせば,CD-R/RWドライブ,追記書換型DVDドライブ,CD-
R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ,CD-Rディスク,
CD-RWディスクについての実施特許の数は,前記a認定のとおりであり,平成
14年までの期間における超過利益との関係では,音楽用CDに係る前記cの特許
も実施特許であったと認められ,ほかに実施特許が存在したと認めるに足る証拠は15
ない。
また,BDドライブについての実施特許の数は,前記b認定のとおりであり,ほ
かに実施特許が存在したと認めるに足る証拠はない。
したがって,実施特許の数は,別紙10相当対価計算表(自己実施1)の「対象
製品」欄記載の製品カテゴリごとに,【C】欄記載のとおりであったと認められる。20
(イ)検討
前記1⑴ア認定の本件発明1及び2の技術的意義等に照らせば,本件発明1及び
2は,被告製品1及び2の販売に係る超過利益に対して一定の寄与があったという
べきところ,実施特許の中での本件発明1及び2の貢献度については,本件ジョイ
ント・ライセンス・プログラムにおいて必須特許とされていた特許と同等のもので25
あったと推認することができるから,製品カテゴリごとに,必須特許の数で,超過
利益の額を除して算定するのが相当である。
また,BDドライブに係る実施特許は,規格団体であるOne-Blueが公開
しているBDドライブの規格特許に係るリストに掲載されたものであるから,被告
製品1及び2の販売に係る超過利益に対する貢献度は本件発明1及び2と同等のも
のであったと認めるのが相当である。5
他方で,必須特許とされている特許は,必須特許とされていない特許と比べて超
過利益の獲得に貢献した程度は大きいと考えられ,諸般の事情に照らせば,3倍程
度の貢献があったと認めるのが相当であるから,本件発明1及び2の貢献度を算定
するに当たっては,必須特許とされていない特許の数を3で除するのが相当であっ
て,具体的には次のとおりである。10
aすなわち,まず,前記(ア)a(a)認定のCD-R/RWドライブについての実
施特許の数(121.19件)の認定に用いたライセンス対象特許リスト①ないし
③のうち,必須特許に係るライセンス対象特許③に掲載された特許の数は67件で
あるから,121.19件から67件を控除した54.19件は,ライセンス対象
特許リスト①及び②に係る必須特許とされていない特許であると認められ,本件発15
明1及び2の貢献度を算定するに当たっては,これを3で除した上で(18.06
件),必須特許に係る67件を加えた85.06件で,対応する超過利益の額を除
するのが相当である。
bまた,前記(ア)a(d)認定のCD-Rディスクについての実施特許の数(48.
42件)の認定に用いたライセンス対象特許リスト⑩ないし⑭のうち,必須特許に20
係るライセンス対象特許⑫ないし⑭に掲載された特許の数は,それぞれ,22件,
26件,16件であり,その平均は21.33件であるから,48.42件から2
1.33件を控除した27.09件は,ライセンス対象特許リスト⑩及び⑪に係る
必須特許とされていない特許であると認められ,本件発明1及び2の貢献度を算定
するに当たっては,これを3で除した上で(9.03件),必須特許に係る21.25
33件を加えた30.36件で,対応する超過利益の額を除するのが相当である。
cさらに,前記(ア)cのとおり,平成14年までの期間については,音楽用CD
に係る1505.4件の特許も実施特許であったと認められ,これらが必須特許で
あるとは認められないから,本件発明1及び2の貢献度を算定するに当たっては,
音楽用CDに係る特許の数を3で除した501.8件に,CD-R/RWドライブ
については前記a認定の85.06件を加えた586.86件,追記書換型DVD5
ドライブについては前記(ア)a(b)認定の103.64件を加えた605.44件,
CD-R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブについては前記
(ア)a(c)認定の187.2件を加えた689件,CD-Rディスクについては前記
b認定の30.36件を加えた532.16件,CD-RWディスクについては前
記(ア)a(e)認定の14.85件を加えた516.65件で,それぞれ対応する超過10
利益の額を除するのが相当である。
(ウ)被告の主張に対する判断
a被告は,被告が得た利益に対する本件発明1及び2の貢献度について,各製
品の規格を実施するために必要な固有の特許の数で除して算定すべきであるとし,
音楽用CDやライセンス対象特許リストに掲載された特許に加えて,①CD-R/15
RWドライブの実施に当たって必要と考えられる有用特許325件(乙181添付
資料2),②DVD再生プレーヤーの実施に当たって必要と考えられる有用特許5
4件(乙181添付資料3-2),③CD-Rディスクの実施に当たって必要と考
えられる有用特許6件(乙181添付資料1)を合計した数で除するべきであると
主張する。20
しかしながら,上記①ないし③の特許は,被告の主張によっても,各実施に当た
って必要と考えられるとされているにとどまり,ライセンス対象とされていたかも
明らかでないものであって,これらの特許が被告製品1及び2の実施特許であると
認めるに足る証拠はなく,被告製品1及び2の販売に係る超過利益に貢献するもの
であったと認めることはできない。25
b被告は,被告が得た利益に対する本件発明1及び2の貢献度は低いとし,そ
の理由として,前記⑶エ(イ)と同様の事情を主張するが,これらの主張を採用する
ことができないことは,前記⑶エ(イ)のとおりである。
(エ)原告の主張に対する判断
原告は,本件発明1及び2の貢献度は,ライセンス対象特許リストのうち,製品
と対応するパートに必須特許として掲載された登録済みの特許における,本件各特5
許及びそれらと実質的に同一の特許の占める割合等を踏まえて算定すべきである旨
主張するが,採用することができないことは,前記⑶エ(ウ)のとおりである。
(オ)本件発明1及び2の貢献度についての小括
以上に照らせば,被告製品1及び2の販売に係る超過利益に対する本件発明1及
び2の貢献度は,別紙10相当対価計算表(自己実施1)の「対象製品」欄記載の10
製品カテゴリごとに,【D】欄記載の対象特許数で除して算定することができる。
オ争点2-2についての小括
そうすると,本件発明1及び2の実施により被告が受けるべき利益の合計額は,
別紙10相当対価計算表(自己実施1)における「対象製品」欄記載の製品カテゴ
リごと,「対象期間」欄の期間ごとに,【A】欄記載の売上げに,超過売上割合115
0%,仮想実施料率2.5%を乗じた上で,【D】欄記載の補正後の対象特許数で
除した上で,【F】欄記載の本件各特許の数を乗じて算定することができ,【G】
欄及び【G】´欄のとおり,●(省略)●円である。
また,前記⑶オと同様に,被告製品1及び2についての全世界の市場に占める日
本及び米国の市場の割合は,概ね,日本が10%,米国が25%であったと認める20
のが相当であるから,CD-R/RWドライブ,追記書換型DVDドライブ,CD
-R/RWドライブとDVD-ROMドライブの複合ドライブ,BDドライブにつ
いて,被告が受けるべき利益の合計額における本件発明1及び2の内訳は,上記の
市場の割合を踏まえて算定することができ,具体的には,別紙11相当対価計算表
(自己実施2)の該当欄のとおりである。25
⑸争点2についての小括
以上のとおり,本件各発明のライセンスにより被告が受けるべき利益の額は●
(省略)●円であり,本件発明1及び2の実施により被告が受けるべき利益の額は
●(省略)●円であるから,本件各発明により被告が受けるべき利益の額は,これ
らを合計した●(省略)●円であると認められ,その内訳は,次のとおりであると5
認められる。
ア本件発明1
●(省略)●
イ本件発明2
●(省略)●10
ウ本件発明3ないし6
●(省略)●
エ本件発明7
●(省略)●
オ本件考案815
●(省略)●
3争点3(本件各発明について被告が貢献した程度),争点4(共同発明者間
における原告の貢献度)について
⑴事実認定
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。20
ア原告の職務内容等
原告は,昭和54年4月,被告に入社し,その後,配属された技術研究所及び情
報処理研究所において,音楽用CDのエラー訂正技術,CDプレーヤーの信号処理
LSI,CD-ROM,光磁気ディスク等の研究,開発に従事し,それらの技術分
野について多数の職務発明をした。25
原告は,昭和63年6月,被告の経営企画本部R&D部門に配属され,平成元年
頃は,同部門において,R&Dマーチャンダイザーとして勤務していた(甲112,
203,原告本人)。
イCD-Rの開発経緯
(ア)被告は,昭和57年に音楽用CDを商品化し,昭和58年頃までに,フィリ
ップス社と共同で,CD-DA規格及びCD-ROM規格を発表していた(甲115
2,203,乙29,30,175)。
(イ)被告の元従業員であり,当時は被告の子会社であったアイワ株式会社の代表
者を務めていたE(以下「E」という。)は,昭和56年頃,データを記録可能な
CD,すなわち,CD-Rの開発を発案していたものの,その頃,被告は,データ
の書換ができる光磁気方式のCDであるCD-MOの開発に取り組んでおり,デー10
タの書換ができない有機色素方式のCDであるCD-WOを開発するための部署を
有していなかったほか,D社長ら被告の役員の反対もあったため,CD-Rを開発
するための研究施設や設備を提供することはなく,そのための予算を組むこともな
かった。そのため,Eは,太陽誘電等の企業に対し,CD-Rの開発を依頼し,C
D-DA規格及びCD-ROM規格との互換性に関する資料の提供を依頼した(甲15
112,乙29,30,175)。
(ウ)当時,CD-DA規格における反射率70%以上という要件を達成すること
は技術的に困難であるとされていたものの,太陽誘電は,昭和63年,上記要件を
満たす有機色素方式の記録メディアを開発し,同年9月,CD-R製品の開発を発
表した(乙29,30,32ないし34,173,175)。20
ウ本件各発明の経緯,状況等
(ア)被告は,平成元年2月末頃の経営会議において,太陽誘電との合弁会社を設
立し,同社においてCD-R製品の販売等を行う方針を決定したものの,その際,
CD-R製品の事業化に当たっては追記の実現が課題になることが指摘された(甲
112)。25
(イ)被告のメカトロニクス機器部の係長であったBは,その頃,原告に対し,前
記(ア)の指摘を踏まえ,追記可能なCD-Rの開発ができないかについて検討を依
頼した(甲112,原告本人)。
(ウ)原告は,その頃,前記(イ)の依頼を踏まえて自宅で検討し,リードインエリ
アより内周側に拡大記録領域を設け,ファイナライズするまでは,そこに一時的に
目次情報を記録し,ファイナライズするときに,リードインエリアに最終的な目次5
情報を記録する構成を着想し,そのような構成によれば,CD-DA規格及びCD
-ROM規格に準拠したディスクと互換性を確保することができ,追記中及び追記
後に問題が生じないことを結論付けるに至ったため,そのような構成を有するディ
スクのレイアウトの概略図,追記の処理のフローチャート図を作成した(甲112,
原告本人)。10
(エ)原告は,その後,前記(ウ)の図面等に基づいてBと協議するなどした上で,
被告のメカトロニクス事業本部システム機器部の総括課長であり,CD-Rドライ
ブの開発を担当していたCに対し,前記(ウ)の図面等に基づいて前記(ウ)の構成を有
するディスクの製造やドライブへの実装に問題がないかについて確認したところ,
Cは,基本的に問題ない旨回答した(甲112,乙31,原告本人)。15
(オ)原告らは,その後の詰めの作業を経て本件各発明の構成を具体的に確定した
上で,平成元年3月又は4月頃,被告に対して,書面で報告した。
被告は,原告らの報告に基づき,平成元年5月15日,本件発明1について特許
出願をし,平成2年5月15日,同出願を優先権の基礎とする国際出願をして,そ
の後,日本,米国,欧州(指定締約国:イギリス,フランス,オランダ,ドイツ),20
オーストラリア,韓国において,それぞれ,特許権設定登録又は実用新案権設定登
録を受けた(甲2ないし9,112,原告本人)。
(カ)原告は,本件各発明をするまで,被告から,CD-Rの開発のための研究施
設や設備の提供を受けることはなく,特別な手当てを付与されることはなかった。
エCD-R/RW製品の普及に向けた取組み等25
(ア)被告及び太陽誘電は,平成元年6月14日,両社の合弁会社であるスター
ト・ラボを設立し,同社において,同月からCD-R製品の販売を開始したものの,
CD-RドライブとCD-ROMドライブの互換性が十分でなかったことも一因と
なり,CD-R製品の売上げは大きくは増加しなかった(甲113,乙30)。
(イ)被告及びフィリップス社は,平成2年11月,CD-R規格を策定して「オ
レンジブックPartⅡ」として発表し,平成8年10月,CD-RW規格を策定5
して「オレンジブックPartⅢ」として発表した(甲113,乙26)。
(ウ)オレンジ研究会は,CD-Rの普及を目的として平成7年2月に設立された
業界団体であり,被告もその構成員となっていた。オレンジ研究会は,平成8年3
月,後記のオレンジフォーラムの設立に伴う組織再編により解散した(乙30,1
72,173,175)。10
(エ)オレンジフォーラムは,CD-R規格及びCD-RW規格に準拠したCD-
R/RWドライブ及びディスク並びにそれらの関連ハードウェア及びソフトウェア
の普及,促進を図ることを目的とし,各製品の互換性を確保するための検証作業を
行うなどの活動をしていたオレンジ研究会の後身に当たる業界団体であり,被告を
含む57社で構成された(乙30,172,174,175)。15
⑵被告の使用者としての貢献度
ア検討
原告の職務内容,CD-Rの開発経緯,本件各発明の経緯等は,前記⑴アないし
ウのとおりであり,①原告は,入社以来,音楽用CDのエラー訂正技術,CDプレ
ーヤーの信号処理LSI,CD-ROM,光磁気ディスク等の研究,開発に従事し,20
CDに関する専門的知識,経験を有していた者であり,本件各発明は,そのような
原告の専門的知識,経験に基づき,ほぼ全ての構成を原告において着想したもので
あること,②被告は,当時,CD-MOの開発に取り組んでおり,CD-Rの開発
のための部署を設けていなかったほか,D社長ら役員が反対していたこともあって,
CD-Rを開発するための研究施設や設備を提供することはなく,そのための予算25
を組むこともなかったものであり,本件各発明に至るまで,原告に対してそのため
の研究施設及び設備を提供することはなく,特別な手当てを付与することもなかっ
たことなどに照らせば,経営会議においてCD-Rの追記が事業化に当たり課題に
なる旨指摘したことが本件各発明の契機となったとみる余地があるとしても,本件
各発明に至る経緯において,被告の使用者としての貢献が大きいものであったとは
いい難い。5
他方で,前記⑴エ(ア)のとおり,CD-R製品の発売当初は互換性が十分でなか
ったことも一因となり,売上げが大きくは増加しなかったものの,前記2⑷イ(イ),
前記⑴エ(イ)ないし(エ)のとおり,③被告は,フィリップス社と共に,CD-R規格
及びCD-RW規格を策定してこれらを発表するとともに,④オレンジ研究会及び
オレンジフォーラムの構成企業として,互換性を確保するための活動にも携わって10
おり,また,⑤ライセンスを求める全ての企業にライセンスを認めることを原則と
するフィリップス社のライセンスポリシーに従い,本件各特許を必須特許として実
施許諾の対象としていたものであって,それらにより,CD-R/RW製品の世界
的な普及,売上げ及びライセンス収入の増加に大きく寄与したというべきであるか
ら,CD-R/RW製品の売上げ又はライセンス収入に対する被告の使用者として15
の貢献は極めて大きいということができる。
以上を総合すると,本件各発明についての被告の使用者としての貢献度は95%
と認めるのが相当である。
イ原告の主張に対する判断
原告は,本件各発明について被告の使用者としての貢献度は75%を超えること20
はないとし,これを基礎付ける事情として,前記ア①,②と同様の事情を指摘する
とともに,(ⅰ)CD-RW規格,DVD-R規格,DVD-RW規格,BD規格の
準拠製品については,フィリップス社,DVD3C,DVD6C,One-Red,
One-Blueなどの規格団体が多大な費用をかけて宣伝広告等をしており,被
告はその利益を享受しているにすぎないこと,(ⅱ)原告は,CD-R製品の販売を25
業とするスタート・ラボの設立や共同ライセンサーである太陽誘電との交渉等を担
当し,CD-RW規格,DVD-R規格,DVD-RW規格等の策定,製品化,普
及活動にも貢献したことを主張する。
しかしながら,上記(ⅰ)については,前記アのとおり,被告もフィリップス社と
共に規格を策定し,これを発表していたほか,フィリップス社のライセンスポリシ
ーに従って対象特許を広く実施許諾していたこと,オレンジ研究会及びオレンジフ5
ォーラムの構成企業として製品の互換性を確保するための活動に携わっていたこと
などにも照らせば,他の規格団体等の宣伝広告による利益を享受しているにとどま
るものとはいえない。
また,上記(ⅱ)については,原告がスタート・ラボの設立や太陽誘電との交渉等
の業務に携わっていたとしても,当初はCD-R製品の売上げが大きく増加するこ10
とはなく,その後の売上げやライセンス料の増加に貢献したのは規格の策定及び発
表や,オレンジフォーラム等における互換性確保に向けた取組みのほか,被告がフ
ィリップス社のライセンスポリシーに従って広く実施許諾をしていたこと等であっ
たと認めるのが相当であり,規格の策定等を主導したのが原告であったと認めるこ
ともできないというべきである。15
したがって,被告の使用者としての貢献度が75%にとどまるということはでき
ず,原告の主張は採用することができない。
ウ被告の主張に対する判断
被告は,本件各発明についての被告の貢献度は99%を下らないとし,これを基
礎付ける事情として,前記ア③ないし⑤と同様の事情を指摘するとともに,CD-20
Rの開発費用を負担したのは被告や太陽誘電であることや,被告に音楽用CD等の
関連技術についての技術的な蓄積があったことを指摘する。
しかしながら,被告は,本件各発明に至るまで,原告に対してCD-Rの開発の
ための研究施設及び設備を提供することはなく,特別な手当てを付与することもな
かったものであって,本件各発明の状況等に照らしても,本件各発明に至る経緯に25
おける被告の使用者としての貢献が大きいとはいえないことも前記アで認定,説示
したとおりであるから,被告の使用者としての貢献が95%を超えるものであった
ということはできない。被告の主張は採用することができない。
⑶共同発明者間の貢献度
ア検討
前記⑴ウのとおり,本件各発明は,追記可能なCD-R製品を開発することがで5
きないかというBの依頼を受け,原告において発明の着想を得て図面化し,Cに対
し,当該図面等に基づき実装上の問題点等を確認するなどして,具体化されたもの
であると認められ,原告は,本件各発明のほぼ全ての構成を着想し,図面化するこ
とによってその構成を具体化しているのに対し,Bは,解決すべき課題を提示した
にとどまり,Cは,実装上の問題点を確認したにとどまるから,本件各発明の着想10
及び具体化の過程におけるB及びCの貢献が原告と同程度のものであったというこ
とはできない。
以上を総合すると,共同発明者間における原告の貢献度は,本件各発明について,
いずれも50%と認めるのが相当である。
イ被告の主張に対する判断15
被告は,平成元年当時,Bは被告のメカトロシステム機器部に,Cは被告のメカ
トロニクス事業本部に所属し,主な職務としてCD-Rの開発を行っていたもので
あり,本件各発明についての原告の貢献度がB及びCと比べて格段に高かったとい
うことはできないから,本件各発明の共同発明者間における原告の貢献度は,共同
発明者間の均等割相当分を超えるものではない旨主張する。20
しかしながら,前記⑴ウ認定の本件各発明の経緯,状況等に照らせば,本件各発
明の着想及び具体化の過程における原告の貢献は大きく,B及びCに50%を超え
る貢献があったということはできないから,被告の主張は採用することができない。
4争点5(相当の対価の額)について
⑴相当対価の計算25
本件各発明についての特許を受ける権利の承継に係る相当対価は,(本件各発明
のライセンスにより被告が受けるべき利益の額(別紙9の本件各特許の合計額)+
本件発明1及び2については各実施により被告が受けるべき利益の額(別紙11の
各合計額))×(1-被告の使用者としての貢献度95%)×(原告の共同発明者
間における貢献度50%)によって算定するのが相当であり,内訳は,次のとおり
であって,その合計額は1297万6603円であると認められる。5
ア本件発明1
●(省略)●
イ本件発明2
●(省略)●
ウ本件発明3ないし610
●(省略)●
エ本件発明7
●(省略)●
オ本件考案8
●(省略)●15
⑵原告の主張に対する判断
原告は,本件発明1及び2の実施に係る相当対価の計算方法について,被告の使
用者としての貢献度は,被告が受けるべき利益の額の検討において斟酌されるため,
重ねて斟酌する必要はない旨主張するが,被告が受けるべき利益の額と被告の使用
者としての貢献度は,相当対価の算定に当たり異なる観点から考慮されるものであ20
り,同じ事情を二重に評価するものであるとはいえない。原告の主張は採用するこ
とができない。
5争点6(本件各相当対価請求権の消滅時効の成否)について
⑴事実認定
掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。25
ア被告発明考案規定の定め
被告発明考案規定には,本件各発明に係る特許を受ける権利の持分が譲渡された
平成元年5月当時,次の(ア)の定めがあり,その後,平成19年支払がされた平成
19年12月までに,次の(イ)ないし(カ)のとおり改正された(乙1,10ないし1
3,15,17,19)。
(ア)昭和61年5月1日施行のもの(乙1)5
●(省略)●
(イ)平成3年4月3日頃改正のもの(乙10)
●(省略)●
(ウ)平成4年12月4日改正のもの(乙11)
●(省略)●10
(エ)平成9年5月改正のもの(乙12)
●(省略)●
(オ)平成10年9月,平成13年4月,平成16年4月各改正のもの(乙13,
15,17)
●(省略)●15
(カ)平成17年4月改正のもの(乙19)
●(省略)●
イ平成13年支払
(ア)原告は,平成13年7月19日頃,被告に対し,実施報奨金の支払を求
める旨のB作成の同日付け推薦書(以下「平成13年推薦書」といい,平成120
3年推薦書に基づく推薦を「平成13年推薦」という。)を提出した。平成1
3年推薦書には,冒頭に本件特許1の特許番号が記載されている(乙23)。
(イ)被告は,平成13年推薦について審査し,●(省略)●として,平成1
3年12月20日,原告に対し,●(省略)●を支払った(平成13年支払)。
(ウ)被告が平成13年11月19日付けで作成した「2001年度発明・25
考案実施褒賞発明者別褒賞リスト」と題する書面には,平成13年支払に係る
「登録番号」及び「発明の名称」として,本件特許1の特許番号及び発明の名
称が記載されている(乙6)。
ウ平成19年支払
(ア)原告は,平成19年6月28日頃,被告に対し,実施報奨金の支払を求
める旨の同日付け推薦書(以下「平成19年推薦書」といい,平成19年推薦5
書に基づく推薦を「平成19年推薦」という。)を提出した。平成19年推薦
書には,冒頭の「登録番号」欄に,本件特許1の特許番号が記載されている
(乙24)。
(イ)被告は,平成19年推薦について審査し,●(省略)●として,平成1
9年12月18日,原告に対し,●(省略)●を支払った(平成19年支払)。10
(ウ)被告が平成19年11月25日付けで作成した「2007年度発明・
考案実施報奨発明者別報奨リスト」と題する書面には,平成19年支払に係る
「登録番号」及び「発明の名称」として,本件特許1の特許番号及び発明の名
称が記載されている(乙5)。
エ平成23年の推薦15
(ア)原告は,平成23年10月17日頃,被告に対し,実施報奨金の支払を
求める旨の同日付け推薦書(以下「平成23年推薦書」といい,平成23年推
薦書に基づく推薦を「平成23年推薦」という。)を提出した。
平成23年推薦書には,冒頭に,本件特許2の特許番号が記載されているほ
か,「その他の貢献2」欄に,「本特許(US5406538)のファミリー20
特許・JP3060460(判決注:本件特許1の特許番号)は●(省略)●
を受けている。しかし,本特許自身は表彰されていないので今回推薦する。仮
にファミリー特許表彰時に一緒に評価したというのであれば,どう評価したか
を説明いただくと共に,●(省略)●ではその貢献度から考えて客観的に評価
が低すぎるので,改めて正当に評価することをお願いする…」と記載されてい25
る(乙25)。
(イ)被告は,平成24年2月9日頃,原告に対し,同日付け「2011年度
発明・考案実施報奨の件」と題する書面(以下「本件通知書1」という。)
を交付し,平成23年推薦について,実施報奨金を支払わない旨を通知した。
本件通知書1には,「選外*海外特許(US)第5406538号光ディス
ク記録装置及び光ディスク(判決注:本件特許2の特許番号及び発明の名称)5
●(省略)●」と記載されている(甲103)。
オ平成24年の推薦等
(ア)原告は,被告に対し,平成24年8月頃,平成23年推薦に係る実施報
奨金の支払について再審査を求めた(以下「平成24年推薦」という。)。
(イ)被告の知財センターの担当者は,平成24年8月23日,原告に対し,10
被告の知財センターのメーリングリストを「Cc」として,次のとおり記載さ
れた●(省略)●
(ウ)被告は,平成24年10月19日頃,原告に対し,同日付け「2012
年度発明・考案実施報奨の件」と題する書面(以下「本件通知書2」とい
う。)を交付し,平成24年推薦について,実施報奨金を支払わない旨を通知15
した。
本件通知書2には,「●(省略)●」と記載されている(甲104)。
カ被告の知的財産部における取扱い
●(省略)●
⑵消滅時効の起算点についての検討20
ア消滅時効の起算点の解釈
勤務規則等に基づき職務発明について特許を受ける権利を使用者等に承継させた
従業者等は,その承継時に使用者等に対して相当対価請求権を取得するものの,勤
務規則等に使用者等が従業者等に対して支払うべき対価の支払時期に関する定めが
あるときは,当該所定の支払時期までは権利行使について法律上の障害があるとい25
え,その支払時期が消滅時効の起算点となると解される(最高裁平成13年(受)
第1256号同15年4月22日第三小法廷判決・民集57巻4号477頁参照)。
イ本件各相当対価請求権の消滅時効の起算点
これを本件についてみると,本件各発明に係る特許を受ける権利の持分が被告に
承継されたのは,被告の勤務規則等であると認められる被告発明考案規定の定めに
よるものであると認められるところ,本件各発明に係る特許を受ける権利の持分が5
被告に承継された平成元年5月から平成19年支払がされた平成19年12月まで
の被告発明考案規定の定めは前記⑴アのとおりのものであった。すなわち,被告発
明考案規定には,●(省略)●そして,●(省略)●が定められていた。
もっとも,どのような場合に●(省略)●が認められるかは必ずしも明らかでな
いこと,●(省略)●を規定したものであることなどからすると,実施報奨金の支10
払時期は,●(省略)●,すなわち,被告が特許を受ける権利の譲渡を受けた発明
につき,特許権又は実用新案権の設定登録がされ,かつ,当該発明が実施等された
時点であると解するのが相当である。
以上のとおりの被告発明考案規定における実施報奨金の支払時期の定めに照らせ
ば,本件各相当対価支払請求権の消滅時効は,特許権又は実用新案権の設定登録が15
された時点と当該発明の実施等がされた時点の,いずれか遅い時点から進行すると
解するのが相当である。
ウ被告の主張に対する判断
被告は,被告発明考案規定における実施報奨金の定めは,●(省略)●をいうも
のにすぎず,相当対価請求権の支払時期を定めたものではない旨主張する。20
しかしながら,前記イのとおり,本件各発明に係る特許を受ける権利が被告に承
継され,原告が本件各相当対価請求権を取得するのは,被告発明考案規定の定めに
よるものであり,被告発明考案規定における実施報奨金は,特許を受ける権利の承
継に係る対価の性質を有すると認めるのが相当であるから,原告は,被告発明考案
規定に定められた実施報奨金の支払時期まで,本件各相当対価請求権を行使するこ25
とはできないものと解される。
したがって,被告の主張は採用することができない。
エ原告の主張に対する判断
(ア)他方で,原告は,本件各相当対価請求権の訴訟物は1個であり,相当対価請
求権の消滅時効の起算点は,特許法35条4項所定の「使用者等が受けるべき利益
の額」が確定する特許権の消滅時であるなどとして,本件各相当対価請求権の消滅5
時効の起算点は,本件各特許のうち存続期間満了日が最も遅い本件特許2の存続期
間満了日である旨主張する。
しかしながら,相当対価請求権は特許権ごとに発生すると解されるから,訴訟物
は特許権ごとに別々であると解するのが相当である。
そして,前記アのとおり,相当対価請求権について,勤務規則等にその対価の支10
払時期に関する定めがあるときには,その支払時期が消滅時効の起算点となると解
されるところ,被告発明考案規定における実施報奨金の支払時期は前記イのとおり
であると認められるから,当該支払時期が到来すれば,本件各相当対価請求権の行
使について法律上の障害はないと解するのが相当であり,当該支払時期が消滅時効
の起算点になると解される。15
(イ)また,原告は,被告発明考案規定の定め及び実施報奨金の支払に係る被告の
運用に照らせば,①特許権の消滅時,②再報奨に係る審査結果の確定日,又は③実
施報奨金の最後の支払日までは,実施報奨金の額を確定し得ないとし,本件各相当
対価請求権に係る支払時期は,上記①ないし③のいずれかについて,本件各特許の
うち最も遅い時期であり,その時点が消滅時効の起算点になる旨主張する。20
しかしながら,被告発明考案規定における実施報奨金の支払時期の定めは前記⑴
アのとおりのものであると認められ,これを①特許権の消滅時,②再報奨に係る審
査結果の確定日,③実施報奨金の最後の支払日とする旨の定めはない。また,実施
報奨金の支払において発明の実施等に係る功績等が考慮されるとしても,必ずしも
上記①ないし③の時点までの実施等に係る実績に基づいて支払がされることが定め25
られているものでもないから,そのことをもって相当対価請求権について前記イの
時点から行使することに法律上の障害があったとは認められず,支払時期について
の前記イの認定を左右するものともいえない。
(ウ)したがって,原告の前記(ア),(イ)の主張はいずれも採用することができない。
オあてはめ
以上に照らせば,本件各相当対価支払請求権についての消滅時効の起算点は次の5
とおりである。
(ア)本件発明1
別紙2特許目録記載1「登録日」欄のとおり,本件特許1が設定登録されたのは
平成12年4月28日であるのに対し,前記第2の2(7)のとおり,本件発明1は,
同日より前の時点で,被告がその技術的範囲に属すると認められるCD-R/RW10
ドライブ及びCD-R/RWディスクを販売することによって実施されていたと認
められるから,本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効の起算点は,平成12
年4月28日であり,同月29日から消滅時効が進行すると解される。
(イ)本件発明2
別紙2特許目録記載2「登録日」欄のとおり,本件特許2が設定登録されたのは15
平成7年4月11日であるのに対し,前記第2の2(7)の事実及び弁論の全趣旨に
照らせば,本件発明2は,同日より前の時点で,被告がその技術的範囲に属すると
認められるCD-R/RWドライブを販売することによって実施されていたと認め
られるから,本件発明2に係る相当対価請求権の消滅時効の起算点は,平成7年4
月11日であり,同月12日から消滅時効が進行すると解される。20
(ウ)本件発明3ないし6
別紙2特許目録記載3ないし6の各「登録日」欄のとおり,本件特許3ないし6
が設定登録されたのは,いずれも平成7年7月5日であるのに対し,前記2⑶イ
(イ)のとおり,本件発明3ないし6は,いずれも遅くとも平成14年12月18日
までには,第三者に実施許諾されていたと認められるから,本件発明3ないし6に25
係る各相当対価請求権の消滅時効の起算点は,いずれも平成14年12月18日で
あり,同月19日から消滅時効が進行すると解される。
(エ)本件発明7
別紙2特許目録記載7「登録日」欄のとおり,本件特許7が設定登録されたのは
平成5年4月8日であるのに対し,前記2⑶イ(ウ)のとおり,本件発明7は,遅く
とも平成13年12月6日には,第三者に実施許諾されていたと認められるから,5
本件発明7に係る相当対価請求権の消滅時効の起算点は,平成13年12月6日で
あり,同月7日から消滅時効が進行すると解される。
(オ)本件考案8
別紙2特許目録記載8「登録日」欄のとおり,本件実用新案登録が設定登録され
たのは平成13年4月16日であるのに対し,前記2⑶イ(イ)のとおり,本件考案10
8は,遅くとも平成14年12月18日には,第三者に実施許諾されていたと認め
られるから,本件考案8に係る相当対価請求権の消滅時効の起算点は,平成14年
12月18日であり,同月19日から消滅時効が進行すると解される。
⑶時効の中断又は時効援用権の喪失についての検討
ア平成13年支払及び平成19年支払の性質,被告における実施報奨金の15
支払に係る審査の運用等
(ア)前記⑴イ,ウのとおり,平成13年支払及び平成19年支払は,被告に
おいて,いずれも,各年の推薦書に基づき,各推薦について審査し,それぞれ,
●(省略)●ものであるところ,①平成13年推薦書には,冒頭に,本件特許
1の特許番号が記載されており,被告が作成した「2001年度発明・考案20
実施褒賞発明者別褒賞リスト」と題する書面には,平成13年支払に係る「登
録番号」及び「発明の名称」として,本件特許1の特許番号及び発明の名称が
記載されていたこと,②平成19年推薦書には,冒頭に,本件特許1の特許番
号が記載されており,被告が作成した「2007年度発明・考案実施報奨発
明者別報奨リスト」と題する書面には,平成19年支払に係る「登録番号」及25
び「発明の名称」として,本件特許1の特許番号及び発明の名称が記載されて
いたことに照らすと,平成13年支払及び平成19年支払は,いずれも,本件
特許1を報奨対象とするものであったと認めるのが相当である。
(イ)また,次のとおり,被告の実施報奨金の支払に係る審査の運用等に照ら
しても,平成19年支払が本件各外国特許に係る報奨の性質を有するものであ
ったと認めるに足りないというべきである。5
すなわち,前記⑴カ(ア)ないし(ウ)のとおり,被告の知的財産部は,第1国出
願を優先権の基礎として第2国出願を行った場合等に,登録を受けた複数の知
的財産権を「ファミリー」の関係にあるものとして管理していたものの,●
(省略)●
このような被告の取扱いに照らせば,平成13年支払及び平成19年支払に10
ついて,本件各外国特許が本件特許1と同じ「ファミリー」を構成するものと
して管理されていたからといって,本件各外国特許に係る報奨の性質も含まれ
ていたと直ちにはいえない。また,本件発明1は「線速度一定方式」によって
ディスクに記録されるものであるのに対し,本件各外国発明はそのようなもの
に限定されていないなど,請求項単位で比較しても相違する点が見られるから,15
本件発明1と本件各外国発明が請求項単位で比較した場合に同一と判断される
ものと認めることはできず,ほかに平成19年支払が本件各外国特許に係る報
奨の性質を有するものであったと認めるに足る証拠はない。
(ウ)他方で,被告は,●(省略)●ところ,①被告社内向けの説明資料に,
1個の「ファミリー」を構成する特許の中に報奨済みのものがあれば,同一の20
「ファミリー」を構成する全ての特許について「表彰済み」であるとして,重
ねて報奨対象としない旨の説明が記載されていること(前記⑴カ(エ)),②被告
は,本件特許2を推薦対象としてされた平成23年推薦及びその再審査を求め
る平成24年推薦に対し,いずれも実施報奨金を支払わないこととし,原告に
対し,平成24年2月9日に本件通知書1を,同年10月19日に本件通知書25
2をそれぞれ交付し,●(省略)●,すなわち,平成13年支払及び平成19
年支払によって本件特許1について報奨があった際に本件特許2についても報
奨済みである旨をそれぞれ通知したこと(前記⑴エ(イ),オ(ウ)),③被告の知
財センターの担当者は,平成24年8月23日,平成23年推薦についての審
査結果に対する原告からの問合せに対し,本件メールにおいて,被告発明考案
規定では,同一発明につき外国出願等の「ファミリー案件」がある場合は,他5
国の知的財産権の貢献を加算して評価することとされており,審査会において
も「ファミリー」全体について貢献を説明し,評価していること,表彰対象と
して通知される特許番号はその「代表番号」として記載されたものであると考
えればよいこと,本件特許2について実施報奨金が支払われないのは,平成1
9年に本件特許1について審査された際に本件特許2についても審査済みであ10
ることを理由とするものであることなどを回答したこと(前記⑴オ(イ))などに
照らせば,被告は,平成20年以降は,同年以前に報奨対象とされたものも含
めて「ファミリー」を構成する特許の中に報奨済みのものがあれば,当該「フ
ァミリー」を構成する全ての特許についても報奨があったものとして,重ねて
報奨対象としないこととしたものと認めるのが相当であり,本件各外国特許に15
ついても,それらと同じ「ファミリー」を構成する本件特許1が平成13年支
払及び平成19年支払の報奨対象とされていたことから,いずれも報奨があっ
たものとして,重ねて報奨対象としないこととしたものであると認められる。
(エ)原告の主張に対する判断
原告は,平成19年支払は本件各特許に係るものであり,●(省略)●と考20
えられるとし,その理由として,①被告は,原告からの本件特許2を含む特許
に係る推薦に対し,本件通知書1及び2において,いずれも,「表彰済」を理
由として,実施報奨金を支払わなかったこと,②本件メールに,実施報奨金の
審査では「ファミリー」全体が評価されることなどが記載されていること,③
被告の「実施報奨推薦マニュアル」(甲97)に「実施報奨はファミリー単位25
で評価を行っています。」と記載されていることなどを主張する。
しかしながら,前記(ウ)のとおり,原告の主張する本件通知書1及び2並びに
本件メールの記載は,平成20年以降の被告の実施報奨金の支払に係る運用に
基づくものであると認められ,また,被告の「実施報奨推薦マニュアル」(甲
97)も,平成23年9月頃に作成されたものであり(前記⑴カ(オ)),平成2
0年以降の被告の運用を説明するものであったと認められるから,上記変更前5
の運用に基づくものと認められる平成13年支払及び平成19年支払の性質に
ついての前記(ア),(イ)の認定を左右するものであるとはいえない。
イ平成19年支払による債務の承認
(ア)前記アのとおり,平成19年支払は,本件特許1に係る実施報奨金とし
て支払われたものであり,本件発明1に係る相当対価請求権についての債務の10
承認(平成29年法律第44号による改正前の民法147条3号)に当たると
解される。
また,前記⑵エのとおり,相当対価請求権は特許権ごとに発生すると解され
るところ,平成19年支払について,本件各外国特許に係る報奨の性質を有す
るものであったと認めることはできないから,本件各外国発明に係る相当対価15
請求権についての債務の承認に当たるとはいえない。
(イ)被告の主張に対する判断
被告は,平成19年支払の際には,被告発明考案規定における再報奨の定め
に基づき,平成13年から平成18年までの本件特許1の貢献分を評価した十
分な金額として●(省略)●を支払ったものであり,相当の対価に満たないこ20
とを知らなかったとして,平成19年支払は,本件発明1に係る相当対価請求
権との関係でも債務の承認に当たらない旨主張する。
しかしながら,前記⑴アのとおり,平成9年5月改正の被告発明考案規定か
らは,同年以降に実施報奨の対象となった発明について,●(省略)●の規定
があったのであるから,被告は,平成19年に実施報奨金を支払ったとしても,25
その後の再審査によって実施報奨金の支給を要する場合があることを認識して
いたと考えられる。
また,実施報奨金の支払額は,被告発明考案規定において,等級及び発明者
数に対応するものとして定められた固定額であり,前記2⑵カ,⑶ア認定の本
件各発明について被告が受領したライセンス料や被告製品1及び2の売上げと
比して必ずしも高額であったとはいえないことなどにも照らせば,被告は,平5
成19年支払の際に,当該支払額が相当の対価の額を満たすと認識していたと
いうことはできない。
したがって,被告の主張は採用することができない。
ウ本件通知書1及び2の交付又は本件メールの送信による債務の承認
(ア)前記アのとおり,平成19年支払は本件特許1に係る実施報奨金として10
支払われたものであるものの,被告は,平成20年7月頃の運用変更により,
同年以降は,本件特許1と同じ「ファミリー」を構成する本件各外国特許につ
いては報奨対象としないこととした上で,原告に対し,このような運用変更が
あったことを明確にしないまま,本件通知書1及び2を交付し,平成13年支
払及び平成19年支払により本件特許2についても報奨済みである旨を通知し15
て,本件特許2に係る実施報奨金の支払を拒絶したものであり,被告が平成1
3年支払及び平成19年支払の際に各支払額が相当の対価の額を満たすと認識
していたということもできないから,被告は,本件通知書1及び2を交付した
時点で,本件発明2に係る相当対価請求権についての債務が存在することを知
っている旨を表示したものと認めるのが相当である。20
以上に加えて,被告の知財センターの担当者から原告に送信された本件メー
ルには,本件特許2について実施報奨金が支払われない理由として平成19年
支払が挙げられていることについて,実施報奨金の支払に係る審査の際には,
審査会において「ファミリー」全体を評価していること,表彰対象として通知
される特許番号はその「代表番号」として記載されたものであると考えればよ25
いことが記載されており,そうであれば,本件特許1と同じ「ファミリー」を
構成する本件特許3ないし7及び本件実用新案登録8についても,本件特許2
と同様に,平成19年支払の際の評価及び報奨対象に含まれていたと考えられ
ることにも照らせば,被告は,遅くとも本件メールを送信した時点で,本件発
明3ないし7及び本件考案8に係る各相当対価請求権についての債務が存在す
ることを知っている旨を表示したものと認めるのが相当である。5
したがって,被告は,本件発明2に係る相当対価請求権については,本件通
知書1及び2の交付により,本件発明3ないし7及び本件考案8に係る各相当
対価請求権については,本件メールの送信により,それぞれ,債務を承認した
と認められる。
(イ)被告の主張に対する判断10
被告は,●(省略)●平成19年支払が本件特許1に係る実施報奨金として
支払われたことに変わりはなく,本件通知書1及び2は,●(省略)●廃止後
の被告の運用を通知するものであり,平成19年支払が本件各特許に係るもの
であったことを通知するものではないから,これらは本件各相当対価請求権に
係る債務の承認になり得ない旨主張する。15
しかしながら,平成19年支払が本件特許1に係るものであったとしても,
実施報奨金の支払に係る審査の運用を変更した後に原告に交付又は送信された
本件通知書1及び2並びに本件メールの内容等に照らし,被告が本件各外国発
明に係る各相当対価請求権についての債務が存在していることを知っている旨
を表示したと認められることは前記(ア)で認定,説示したとおりである。20
したがって,被告の主張は採用することができない。
⑷争点6についての小括
以上に検討したところによれば,本件各相当対価請求権の消滅時効の成否,
時効中断又は時効援用権の喪失の有無については,次のとおり解される。
ア本件発明125
本件発明1に係る相当対価請求権の消滅時効は,平成19年12月18日の
平成19年支払によって中断し,同月19日から再び進行するところ,本件訴
訟が提起された平成28年9月1日までに時効期間は経過していないから,本
件発明1に係る相当対価請求権は消滅時効によって消滅しない。
イ本件発明2
本件発明2に係る相当対価請求権は,平成17年4月11日の経過により消5
滅時効が完成したが,被告は,平成24年2月9日及び同年10月19日の本
件通知書1及び2の交付によって債務を承認し,時効援用権を喪失した(最高
裁昭和41年4月20日大法廷判決・民集20巻4号702頁参照)。
ウ本件発明3ないし6
本件発明3ないし6に係る各相当対価請求権の消滅時効は,平成24年8月10
23日の本件メールの送信によって中断し,同月24日から再び進行するとこ
ろ,本件訴訟が提起された平成28年9月1日までに時効期間は経過していな
いから,本件発明3ないし6に係る相当対価請求権は消滅時効によって消滅し
ない。
エ本件発明715
本件発明7に係る相当対価請求権は,平成23年12月6日の経過により消
滅時効が完成したが,被告は,平成24年8月23日の本件メールの送信によ
って債務を承認し,時効援用権を喪失した。
オ本件考案8
本件考案8に係る相当対価請求権の消滅時効は,平成24年8月23日の本20
件メールの送信によって中断し,同月24日から再び進行するところ,本件訴
訟が提起された平成28年9月1日までに時効期間は経過していないから,本
件考案8に係る相当対価請求権は消滅時効によって消滅しない。
6まとめ
⑴既払額の控除25
前記4⑴のとおり,本件各発明についての特許を受ける権利の承継に係る相
当対価のうち,本件発明1に係る相当対価は,●(省略)●である。
前記5⑶のとおり,被告は,原告に対し,いずれも本件特許1に係る実施報奨金
として,平成13年12月20日に●(省略)●を支払い(平成13年支払),平
成19年12月18日に●(省略)●を支払っており(平成19年支払),これら
の既払額合計●(省略)●については,本件発明1に係る相当対価の額に充当する5
のが相当であって,前記の本件発明1に係る相当対価の額から●(省略)●を控除
すると,その残額は●(省略)●である。
⑵相当対価の額
以上に照らすと,本件各発明についての特許を受ける権利の承継に係る相当
対価は,合計●(省略)●であり,その内訳は,本件発明1につき,●(省略)10
●,本件発明2につき,●(省略)●,本件発明3ないし6につき,合計●
(省略)●,本件発明7につき,●(省略)●,本件考案8につき,●(省略)
●である。
第5結論
以上によれば,原告の請求は1227万6603円及びこれに対する平成28年15
9月15日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で
理由があるからこれらを認容し,その余はいずれも理由がないから棄却することと
して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第29部20
裁判官
矢野紀夫
裁判長裁判官山田真紀,裁判官西山芳樹は,転補のため,署名押印をす
ることができない。
裁判官
矢野紀夫5
(別紙一覧)
別紙1当事者目録
別紙2特許目録
別紙3実施品説明書5
別紙4原告計算表(主位的)
別紙5原告計算表(予備的)
別紙6本件明細書1の図面
別紙7統計資料等一覧表
別紙8相当対価計算表(ライセンス1)10
別紙9相当対価計算表(ライセンス2)
別紙10相当対価計算表(自己実施1)
別紙11相当対価計算表(自己実施2)
(別紙4~11は省略)
(別紙1)
当事者目録
原告A
同訴訟代理人弁護士田中康久5
園部洋士
伊藤周作
片岡直輝
中尾亮太
同補佐人弁理士飯塚雄二10
被告ソニー株式会社
同訴訟代理人弁護士熊倉禎男
𠮷田和彦
佐竹勝一
奥村直樹15
山本飛翔
(別紙2)
特許目録
1日本特許5
特許番号特許第3060460号
出願日平成元年5月15日(特願平1-121238)
登録日平成12年4月28日
存続期間満了日平成21年5月15日
発明の名称デイスク,デイスク記録装置及びデイスク記録再生装置10
特許請求の範囲
【請求項1】
所定の規格に基づいて形成されたデイスクの記録領域に所望の情報信号を記録す
るデイスク記録装置において,外部から入力される上記情報信号を上記デイスクの
上記規格に基づく上記記録領域に線速度一定方式で記録すると共に,上記記録領域15
の内周側に設けられたリードインエリアに記録される上記情報信号の内容を表す目
次情報を上記記録領域より内周側の上記リードインエリア近傍の領域に一時的に記
録するための記録手段を具えることを特徴とするデイスク記録装置。
【請求項2】
上記記録領域は,コンパクト・デイスク規格に基づいて形成されていることを特20
徴とする請求項1に記載のデイスク記録装置。
【請求項3】
所定の規格に基づいて形成される記録領域に所定の情報信号が線速度一定方式で
記録されるデイスクにおいて,上記規格に基づく上記記録領域は,プログラム記録
エリア,当該プログラム記録エリアに記録されている上記情報信号の内容を表す目25
次情報を含むリードインエリア,及びリードアウトエリアを有し,上記記録領域よ
り内周側の上記リードインエリア近傍に,上記目次情報を一時的に記録するための
拡大記録領域が形成されてなることを特徴とするデイスク。
【請求項4】
上記記録領域は,コンパクト・デイスク規格に基づいて形成されていることを特
徴とする請求項3に記載のデイスク。5
【請求項5】
プログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリアの記録内容を含むリードイ
ンエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域が形成されたデイスクに対し
て所望の情報信号を線速度一定方式により記録するデイスク記録装置において,外
部から入力される上記情報信号を上記記録領域に記録するための記録手段と,上記10
記録領域への上記情報信号の記録時に,上記プログラム記録エリアに記録されてい
る上記記録内容として上記リードインエリアに記録すべき上記情報信号の内容を表
す目次情報が書き込まれるメモリ手段と,上記記録領域への上記情報信号の記録が
終了されたか否かを判別し,当該記録が終了されたもの判断した場合は,上記メモ
リ手段に記憶された内容を上記目次情報として上記記録領域の内周側に設けられた15
上記リードインエリアに記録し,当該記録が中断されたものと判断した場合は,上
記メモリ手段の内容を上記記録領域より内周側の上記リードインエリア近傍に形成
された拡大記録領域に一時的に記録するように上記記録手段を制御する制御手段と
を具えることを特徴とするデイスク記録装置。
【請求項6】20
プログラム記録エリアと,当該プログラム記録エリアの記録内容を含むリードイ
ンエリアと,リードアウトエリアとを有する記録領域が形成されると共に,上記記
録領域の内周側に上記プログラム記録エリアの記録内容を一時的に記録するための
拡大記録領域が形成されたデイスクに対して所望の情報信号を記録再生するための
デイスク記録再生装置において,外部から入力される上記情報信号を上記記録領域25
に対して線速度一定方式により記録再生するための記録再生手段と,上記プログラ
ム記録エリアの記録内容として上記リードインエリアに記録すべき上記情報信号の
内容を表す目次情報を一時的に記録するメモリ手段と,記録処理動作時に上記リー
ドインエリアに上記目次情報が記録されているか否かを判別すると共に,上記リー
ドインエリアに上記目次情報が記録されていないと判断した場合,上記拡大記録領
域に記録された上記目次情報を上記メモリ手段に書き込み,上記リードインエリア5
に上記目次情報が記録されていると判断した場合は,再生モードへ移行する制御手
段とを具えることを特徴とするデイスク記録再生装置。
2米国特許
特許番号5406538
出願番号63563810
出願日平成2年(1990年)5月15日
国際出願番号PCT/JP90/00608
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成7年(1995年)4月11日
存続期間満了日平成24年(2012年)4月11日15
発明の名称目次情報を備える光ディスクシステム
特許請求の範囲
【請求項1】
記録領域に記録された情報信号に基づいて,目次情報が記録領域の一部分に記録
された光ディスクの記録領域に,所望の情報信号を記録するための光ディスク記録20
装置であって:
前記情報信号を記録領域に書き込み,目次情報を前記記録領域の一部分以外の一
時的な領域に書き込む書込手段と;
前記一時的な領域から前記目次情報を読み出す読出手段と;
前記一時的な領域から目次情報を読み出し,それに応じた前記記録領域以外の所25
定の領域にさらなる所望の情報信号を書き込む前記書込手段を制御し,前記所定の
領域に記録された前記さらなる所望の情報信号に基づいて,新しいデータを前記記
録領域の一部分に書き込む前記書込手段を制御する制御手段と;
を備える光ディスク記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は,前記光ディスクの記録領域に前記目次情報が記録済みであるこ5
とを検出したときに,記録動作を終了するように前記書込手段を制御する,請求項
1に記載の光ディスク記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記光ディスクの記録領域に前記目次情報が記録されていないこ
とを検出したときに,前記光ディスクの記録領域以外の前記一時的な領域からデー10
タを読み出す読出手段を制御し,再生結果に基づいて記録操作を行うように前記書
込手段を制御する,請求項1に記載の光ディスク記録装置。
【請求項4】
前記所定の領域は,前記記録領域の外周側に設けられている,請求項3に記載の
光ディスク記録装置。15
【請求項5】
前記制御手段は前記所望の情報信号が前記所定の領域に記録済みであることを検
出したときに,記録動作を終了するように前記書込手段を制御する,請求項4に記
載の光ディスク記録装置。
【請求項6】20
前記書込手段は前記目次情報と同じ情報を所定の領域に書き込む,請求項3に記
載の光ディスク記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は前記所定の領域の再生結果に基づいて,直前に書き込みを終了し
たポイントから記録動作を開始するように前記書込手段を制御する,請求項6に記25
載の光ディスク記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は記録装置を制御するものであって,前記記録装置は,記録動作が
終了した際に,直前の記録で前記光ディスクに記録された情報信号に基づいたデー
タとともに,前記光ディスクの前記記録領域の一部分に記録された情報信号に基づ
いたデータを記録する前記記録装置を制御する,請求項7に記載の光ディスク記録5
装置。
【請求項9】
前記所定の領域は,前記記録領域の内周側に設けられている,請求項8に記載の
光ディスク記録装置。
【請求項10】10
前記制御手段は記録装置を制御するものであって,前記記録装置は,前記光ディ
スクへの最初の記録が完了した際に,前記記録領域以外の所定の領域に,前記最初
の記録によって前記光ディスクに記録された情報信号に関連するデータを記録する
前記記録装置を制御する,請求項3に記載の光ディスク記録装置。
【請求項11】15
前記所定の領域は,前記記録領域の内周側に設けられている,請求項10に記載
の光ディスク記録装置。
3イギリス特許
特許番号0426872
出願番号90907421.320
出願日平成2年(1990年)5月15日
国際出願番号PCT/JP90/00608
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成7年(1995年)7月5日
存続期間満了日平成22年(2010年)5月15日25
発明の名称光ディスク記録装置
特許請求の範囲
【請求項1】
ライトワンス型光ディスク(7)の記録領域のプログラムエリア(ARREC)に
所望の情報信号を記録し,前記プログラムエリア(ARREC)の前記所望の情報信
号の記録終了時に,前記記録領域の拡張領域(ARRI)に前記プログラムエリア5
(ARREC)に記録された前記所望の情報信号に基づいて,目次情報を記録する光
ディスク記録装置であって,
当該装置は,前記プログラムエリア(ARREC)に前記所望の情報信号の記録終
了前に記録が中断した場合,記録領域以外の所定の領域(AREXI)に前記目次情
報を記録するよう前記装置を制御する制御手段(3)を備え,10
前記制御手段(3)は,記録操作開始時に前記記録領域の拡張領域(ARRI)
のコンテンツを再生する(SP3)ように当該装置を制御し,再生出力が前記拡張
領域(ARRI)に目次情報が記録されていることを示している場合は,記録操作
を終了し(SP16),一方,再生出力が前記拡張領域(ARRI)に目次情報がま
だ記録されていないことを示している場合,当該装置は記録領域以外の所定の領域15
(AREXI)のコンテンツを再生し(SP5),再生結果に基づいて記録操作を行
う(SP6)ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項2】
前記所定の領域(AREXI)は,前記記録領域の内周側に設けられている,請求
項1に記載の光ディスク記録装置。20
【請求項3】
前記目次情報は,前記光ディスク(7)の前記プログラムエリア(ARREC)に
記録された前記情報信号の少なくともプログラム番号,プログラムのスタート時間
及びエンド時間である,請求項1又は請求項2に記載の光ディスク記録装置。
【請求項4】25
前記制御手段は,前記所定の領域(AREXI)から目次情報が再生されたときに,
前記再生された目次情報によって決定された直前の記録を終了したポイントから記
録操作を開始するように前記装置を制御する,先行するいずれか1の請求項に記載
の光ディスク記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は,前記光ディスク(7)の前記記録領域及び前記所定の領域(A5
REXI)以外の第2の所定の領域(AREXO)に所望の付加データ(DTADD)を
記録するように前記装置を制御する,先行するいずれかの請求項に記載の光ディス
ク記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は,前記第2の所定の領域(AREXO)に記録操作を開始するとき10
に,前記第2の所定の領域(AREXO)のコンテンツを再生し(SP22),再生
出力が第2の所定の領域(AREXO)に付加データ(DTADD)が記録されている
ことを示している場合は,記録操作を終了するように前記装置を制御する,請求項
5に記載の光ディスク記録装置。
【請求項7】15
前記第2の所定の領域(AREXO)は,前記記録領域の外周側に設けられている,
請求項5又は請求項6に記載の光ディスク記録装置。
4フランス特許
特許番号0426872
出願番号90907421.320
出願日平成2年(1990年)5月15日
国際出願番号PCT/JP90/00608
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成7年(1995年)7月5日
存続期間満了日平成22年(2010年)5月15日25
発明の名称光ディスク記録装置
特許請求の範囲前記3の「特許請求の範囲」欄のとおり
5オランダ特許
特許番号0426872
出願番号90907421.3
出願日平成2年(1990年)5月15日5
国際出願番号PCT/JP90/00608
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成7年(1995年)7月5日
存続期間満了日平成22年(2010年)5月15日
発明の名称光ディスク記録装置10
特許請求の範囲前記3の「特許請求の範囲」欄のとおり
6ドイツ特許
特許番号69020688.7(EP0426872)
出願番号90907421.3
出願日平成2年(1990年)5月15日15
国際出願番号PCT/JP90/00608
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成7年(1995年)7月5日
存続期間満了日平成22年(2010年)5月15日
発明の名称光ディスク記録装置20
特許請求の範囲前記3の「特許請求の範囲」欄のとおり
7オーストラリア特許
特許番号635932
出願番号55667/90
出願日平成2年(1990年)5月15日25
国際公開番号WO90/14666
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成5年(1993年)4月8日
存続期間満了日平成22年(2010年)5月15日
発明の名称光ディスク記録装置及び光ディスク
特許請求の範囲5
【請求項1】
光ディスクの第1の記録領域に情報信号を記録するための光ディスク記録装置で
あって,
前記第1の記録領域は,前記第1の記録領域に記録された情報信号に対応するデ
ータを記録するためのリードイン領域を有し,10
前記装置は,前記第1の記録領域に記録された情報信号に対応するデータを前記
第1の記録領域の同心円状の拡大記録領域に記録し,後続の記録操作を制御するた
めに前記拡大領域に記録された前記データを利用可能としたことを特徴とする光デ
ィスク記録装置。
【請求項2】15
前記装置は前記制御手段を備え,
前記制御手段は前記光ディスクが前記記録装置にローディングされた後に,前記
リードインエリアに記録されたデータを再生し,前記再生されたデータに基づいて
記録操作を制御することを特徴とする請求項1に記載の光ディスク記録装置。
【請求項3】20
前記制御手段は前記データが前記光ディスクのリードインエリアに既に記録され
ていることを再生出力によって検出したときに,記録操作を終了するよう記録装置
を制御する,請求項2に記載の光ディスク記録装置。
【請求項4】
前記制御手段は前記データが前記光ディスクのリードインエリアに記録されてい25
ないことを再生された出力によって検出したときに,前記拡大記録領域に記録され
ているデータを再生し,前記再生結果に基づいて記録操作を制御するよう記録装置
を制御する,請求項2に記載の光ディスク記録装置。
【請求項5】
前記拡大記録領域は,前記記録領域の内周側に設けられていることを特徴とする
請求項4に記載の光ディスク記録装置。5
【請求項6】
前記制御手段は,前記データが前記所定の領域に既に記録されていることを再生
出力によって検出したときに,記録操作を終了するよう記録装置を制御する,請求
項5に記載の光ディスク記録装置。
【請求項7】10
前記リードインエリアに記録された前記データは,前記光ディスクが再生される
ときに記録装置の操作を制御するために利用される情報を含むことを特徴とする請
求項4に記載の光ディスク記録装置。
【請求項8】
前記拡大記録領域に記録された前記データは,以前の記録で前記光ディスクに記15
録された情報信号の少なくとも曲番号,スタート時間及びエンド時間を含むことを
特徴とする請求項7に記載の光ディスク記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は,前記拡大記録領域の再生結果に基づいて,前記記録装置が以前
に記録を終了したポイントから記録操作を開始するよう前記記録装置を制御するこ20
とを特徴とする請求項8に記載の光ディスク記録装置。
【請求項10】
前記制御手段は,前記記録操作が終了した際に,以前の記録で前記光ディスクに
記録された情報信号に基づいたデータとともに,前記光ディスクの前記第1の記録
領域の一部分に記録された情報信号に基づいて,データを前記リードインエリアに25
記録するように,前記記録装置を制御することを特徴とする請求項9に記載の光デ
ィスク記録装置。
【請求項11】
第2の拡大記録領域は,前記記録領域の外周側に設けられていることを特徴とす
る請求項10に記載の光ディスク記録装置。
【請求項12】5
前記制御手段は,前記光ディスクへの第1の記録が終了した際に,前記第1の記
録によって前記光ディスクに記録された情報信号に対応する前記データを,前記拡
大記録領域に記録するように,前記記録装置を制御する,請求項4に記載の光ディ
スク記録装置。
【請求項13】10
前記拡大記録領域は,前記第1の記録領域の内周側に設けられていることを特徴
とする請求項12に記載の光ディスク記録装置。
【請求項14】
記録情報信号のための第1の記録領域,前記第1の記録領域に記録された前記情
報信号に対応するデータを記録するための前記第1の記録領域の内周側に設けられ15
たリードインエリア,及び前記第1の記録領域に同心円状に設けられた拡大記録領
域を有する光ディスクの記録方法であって,
前記記録方法は:
前記光ディスクの前記第1の記録領域の前記リードインエリアに記録装置の記録
手段を移すステップと;20
前記リードインエリアに前記情報信号に対応するデータが記録されているか否か
を検出するステップと;
前記リードインエリアの否定的な結果が得られたときに,前記第1の記録領域の
スタート位置に前記記録手段を移すステップと;
前記第1の記録領域のスタート位置から情報信号を記録するステップと;25
前記第1の記録領域に記録された前記情報信号に対応するデータをメモリ手段に
記憶するステップとを備える。
【請求項15】
前記記録方法は,ストップモードが設定されたときに,メモリ手段から読み出し
たデータを前記拡大記録領域に記録するステップをさらに備えた,請求項14に記
載の記録方法。5
【請求項16】
前記記録方法は前記リードインエリアの肯定的な結果が得られたときに,前記リ
ードインエリアから読み出した前記データをメモリ手段に記憶し,前記第1の記録
領域エンド位置に前記記録手段を移すステップをさらに備えた,請求項14に記載
の記録方法。10
【請求項17】
前記記録方法はストップモードが設定されたときに,メモリ手段から読み出した
データを前記リードインエリアに記録するステップをさらに備えた,請求項16に
記載の記録方法。
【請求項18】15
情報信号を記録し,記録された情報信号に対応するデータを記録するためのリー
ドインを有する第1の記録領域と,
前記第1の記録領域の同心円状に設けられ,以前の記録中に前記第1の記録領域
に記録された情報信号に対応するデータを記録するための拡大記録領域と,を備え,
先行する前記データを,後続の記録操作の制御に利用できるようにした光記録デ20
ィスク。
【請求項19】
前記第1の記録領域の同心円状に第2の拡大記録領域をさらに備える,請求項1
8に記載の光記録ディスク。
【請求項20】25
前記第1の記録領域以外の内周側に拡大記録領域が設けられている,請求項18
に記載の光記録ディスク。
【請求項21】
前記第1の記録領域以外の外周側に第2の拡大記録領域が設けられている,請求
項19に記載の光記録ディスク。
【請求項22】5
先行する記録の前記データは,先行する記録中に前記光ディスクに記録された前
記情報信号の少なくとも曲番号,スタート時間及びエンド時間を含む,請求項18
~請求項21のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
【請求項23】
本明細書及び図面で実質的に説明されている,請求項1~請求項13のいずれか10
1項に記載の光ディスク記録装置。
【請求項24】
本明細書及び図面で実質的に説明されている,請求項14~請求項17のいずれ
か1項に記載の記録方法。
【請求項25】15
本明細書及び図面で実質的に説明されている,請求項18~請求項22のいずれ
か1項に記載の光ディスク記録装置。
8韓国実用新案登録
登録実用新案番号20-0228673
出願番号20-1999-700000620
出願日平成11年(1999年)4月21日
優先権平成元年(1989年)5月15日
登録日平成13年(2001年)4月16日
存続期間満了日平成23年(2011年)4月16日
考案の名称光ディスク記録装置及び光ディスク25
請求の範囲
【請求項1】
光ディスクの記録領域に所望の情報信号を記録する光ディスク記録装置であって,
前記記録領域に記録された前記情報信号に基づいてTOC(目次)データが前記記
録領域の一部に記録されている光ディスク記録装置において,
前記記録領域に前記情報信号を記録し,前記記録領域の一部の外側にある一時領5
域に前記TOCデータを記録して,付加情報データを前記記録領域の外側にある拡
大記録領域に記録する記録手段と,
前記一時領域から前記TOCデータを読み出して,前記拡大記録領域から前記付
加情報データを読み出す読み出し手段と,
前記一時領域から前記TOCデータの読み出しに応答して,前記記録領域の外側10
の所定の領域に加えて所望の情報信号を記録するように前記記録手段を制御し,前
記所定の領域に記録された前記追加の所望の情報信号に基づいて新しいデータを前
記記録領域の一部に記録するように前記記録手段を制御し,前記拡大記録領域から
の付加情報データ読み出しに応答して,前記拡大記録領域に付加情報データを記録
するように制御する制御手段と,15
を備える光ディスク記録装置。
【請求項2】
請求項1において,
前記制御手段は,前記光ディスクの前記記録領域上にあらかじめ記録された前記
TOCデータが検出された場合,前記記録手段が記録動作を終了するように制御す20

ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項3】
請求項1において,
前記制御手段は,前記TOCデータが前記光ディスクの前記記録領域上に記録さ25
れていないことを検出した場合,
前記読み出し手段が,前記光ディスクの前記記録領域の外側にある前記一時領域
からデータを読み出しするように制御して,その再生結果に基づいて前記記録手段
が記録動作をするように制御する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項4】5
請求項3において,
前記所定の領域は,前記記録領域の外周側に設けられている
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項5】
請求項4において,10
前記制御手段は,前記所望の情報信号が既に前記所定の領域上に記録されている
場合,記録動作を終了させるように制御する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項6】
請求項3において,15
前記記録手段は,前記所定の領域上に前記TOCデータなど,情報を記録する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項7】
請求項3において,
前記データは,前記光ディスクを再生するときに,再生装置の動作を制御するた20
めに利用される情報である
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項8】
請求項7において,
前記所定の領域に記録された前記任意の記録情報は,前回の記録によって前記光25
ディスク上に記録された情報信号の少なくとも曲番号,開始時刻,終了時刻である
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項9】
請求項8において,
前記制御手段は,前記所定の領域を再生して得られた結果に基づいて,前記記録
手段が従来の記録終了点から記録動作を開始するように制御する5
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項10】
請求項9において,
前記制御手段は,前記記録装置が記録動作を完了したとき,前記光ディスク上に
記録された情報信号に基づいたデータを,前記従来の記録による前記光ディスク上10
に記録された前記情報信号に基づいたデータと一緒に前記記録領域の一部に記録す
るように制御する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項11】
請求項10において,15
前記所定の領域は,前記記録領域の内周側に設けられた
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項12】
請求項3において,
前記制御手段は,前記記録装置が,前記光ディスク上への第1の記録を完了した20
とき,前記第1の記録によって前記光ディスク上に記録された情報信号に対応する
前記データを前記記録領域の外の所定の領域上に記録するように制御する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項13】
請求項12において,25
前記所定の領域は,前記記録領域の内周側に設けられた
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項18】
請求項1において,
前記制御手段は,前記拡大記録領域の付加情報データの読み出しに応じて,付加
情報を表示したり,付加情報を選択した後,前記拡大記録領域に再度記録するよう5
に制御する
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
【請求項19】
請求項18において,
前記付加情報は,視覚情報,タイトル情報,シリアル番号情報である10
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
(別紙3)
実施品説明書
1CD-R
⑴本件発明1-1に対応する構成5
1a記録可能なコンパクトディスクのプログラムエリアにオーディオやデータ
などの情報信号を記録するためのディスク記録装置であって,
1bディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定と
なるようにディスクを回転させて,情報信号をプログラムエリアに記録する手段と,
1cプログラムエリアの内周側に設けられたリードインエリアが未記録状態の10
間,当該リードインエリアより更に内周側に隣接して設けられるプログラムメモリ
エリア(英文表記である「ProgramMemoryArea」を略して「PMA」とも表記さ
れており,以下「PMA」という。)に一時的にトラック開始位置情報等の目次情
報を記録する手段と,
1dを具えるディスク記録装置。15
⑵本件発明1-3に対応する構成
1e記録可能なコンパクトディスクにおいて,ディスク上に形成されたプリグ
ルーブのウォブルに基づいて線速度一定となるようにディスクを回転させて,オー
ディオやデータなどの情報信号を情報エリアに記録するディスクであって,
1f情報エリアが,トラック開始位置情報等の目次情報を記録するリードイン20
エリア,プログラム記録可能エリア,リードアウトエリアを含み,
1gリードインエリアより更に内周側に隣接し,目次情報を一時的に記録する
PMAが形成されてなる
1hことを特徴とするディスク。
⑶本件発明1-5に対応する構成25
1iプログラムエリアと,プログラムエリアに記録された内容を表す目次情報
を記録するリードインエリアと,リードアウトエリアとを有する情報エリアに対し
て,ディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定となる
ようにディスクを回転させて,プログラムエリアにオーディオやデータなどの情報
信号を記録するディスク記録装置であって,
1j外部から入力される情報信号をプログラムエリアに記録する手段と,5
1kプログラムエリアへの情報信号の記録時に,プログラムエリアに記録され
ている記録内容として,リードインエリアに記録すべきトラック開始位置情報等の
目次情報を記録する手段と,
1lプログラムエリアへの情報信号の記録が終了したか否かを判別し,記録が
終了されたものと判断した場合は,プログラムエリアの内周側に設けられたリード10
インエリアに目次情報を記録し,プログラムエリアへの記録が終了していない場合
は,リードインエリアに隣接して設けられたPMAに一時的に目次情報を記録する
手段と,
1mを具えるディスク記録装置。
⑷本件発明1-6に対応する構成15
前記⑶と同様の構成を備えるディスク記録再生装置。
⑸本件発明2-1に対応する構成
2aプログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて,目次情報がリー
ドインエリアに記録されたCD-Rディスクのプログラムエリアに,ユーザー情報
を記録するための光ディスク記録装置であって20
2bユーザー情報をプログラムエリアに書き込み,目次情報をリードインエリ
ア以外の一時的な領域であるPMAに書き込む書込手段と
2cPMAから目次情報を読み出す読出手段と
2dPMAから目次情報を読み出し,プログラムエリアの空き領域に更なるユ
ーザー情報を書き込む書込手段を制御し,当該追記された情報に基づいて,新たな25
目次情報をリードインエリアに書き込む書込手段を制御する制御手段と
2eを備える光ディスク記録装置。
⑹本件発明3-1に対応する構成
3aCD-Rディスクの情報エリアのプログラムエリアにユーザー情報を記録
し,プログラムエリアのユーザー情報の記録終了時,すなわち,ファイナライズ時
に,プログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて,リードインエリアに5
目次情報を記録する光ディスク記録装置であって,
3bプログラムエリアに対してユーザー情報の記録終了前に記録が中断した場
合に,情報エリア以外のPMAに目次情報を記録するよう装置を制御する制御手段
を備え,
3c記録操作開始時にリードインエリアのコンテンツを読み出し,リードイン10
エリアに目次情報が記録されている場合には,記録操作を終了し,一方,リードイ
ンエリアに目次情報が記録されていない場合には,PMAのコンテンツを読み出し,
読み出した結果である目次情報に基づいて記録操作を行うことを特徴とする光ディ
スク記録装置。
⑺本件発明7-1に対応する構成15
7aCD-Rディスクのプログラムエリアにユーザー情報を記録するための光
ディスク記録装置であって,
7b情報エリアには当該プログラムエリアに記録されたユーザー情報に対応す
る目次情報を記録するリードインエリアを有し,
7cプログラムエリアに記録されたユーザー情報に対応する目次情報を情報エ20
リアの同心円状のPMAに記録し,当該目次情報に従って追記を行うことを特徴と
する光ディスク記録装置。
⑻本件発明7-18に対応する構成
7dユーザー情報を記録し,記録されたユーザー情報に対応する目次情報を記
録するリードインエリアを有する情報エリアと,25
7e情報エリアの同心円状に設けられ,以前の記録中にプログラムエリアに記
録されたユーザー情報に対応する目次情報を記録するPMAとを備え,
7fCD-Rディスクがファイナライズされるまでは,PMAに一時的に記録
された目次情報を利用して,後続の記録操作をする光記録ディスク。
⑼本件考案8-1に対応する構成
8aCD-Rディスクのプログラムエリアにユーザー情報を記録する光ディス5
ク記録装置であって,プログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて目次
情報がリードインエリアに記録された光ディスク記録装置において,
8bプログラムエリアにユーザー情報を記録し,リードインエリアの外側にあ
るPMAに目次情報を記録して,パワーキャリブレーションに関するデータをプロ
グラムエリアの外側にあるパワーキャリブレーションエリア(英文表記である10
「PowerCalibrationArea」を略して「PCA」とも表記されており,以下「PC
A」という。)に記録する記録手段と,
8cPMAに記録された目次情報を読み出し,PCAにおいて,パワーキャリ
ブレーションに関するデータを読み出す読み出し手段と,
8dPMAから目次情報を読み出し,読み出された目次情報に基づいて,プロ15
グラムエリアの記録済の領域以外の空き領域に新たなユーザー情報を記録するよう
に記録手段を制御し,追記されたユーザー情報に対応した目次情報をリードインエ
リアに記録するように記録手段を制御し,PCAから最適記録パワーに関するデー
タを読み出すとともに,新たな最適記録パワーに関するデータをPCAに記録する
ように制御する制御手段と,を備える光ディスク記録装置。20
2CD-RW
⑴本件発明1-1に対応する構成
1a書換可能なコンパクトディスクのプログラムエリアにオーディオやデータ
などの情報信号を記録するためのディスク記録装置であって,
1bディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定と25
なるようにディスクを回転させて,情報信号をプログラムエリアに記録する手段と,
1cプログラムエリアの内周側に設けられたリードインエリアが未記録状態の
間,当該リードインエリアより更に内周側に隣接して設けられるPMAに一時的に
トラック開始位置情報等の目次情報を記録する手段と,
1dを具えるディスク記録装置。
⑵本件発明1-3に対応する構成5
1e書換可能なコンパクトディスクにおいて,ディスク上に形成されたプリグ
ルーブのウォブルに基づいて線速度一定となるようにディスクを回転させて,オー
ディオやデータなどの情報信号を情報エリアに記録するディスクであって,
1f情報エリアが,トラック開始位置情報等の目次情報を記録するリードイン
エリア,プログラム記録可能エリア,リードアウトエリアを含み,10
1gリードインエリアより更に内周側に隣接し,目次情報を一時的に記録する
PMAが形成されてなる
1hことを特徴とするディスク。
⑶本件発明1-5に対応する構成
1iプログラムエリアと,プログラムエリアに記録された内容を表す目次情報15
を記録するリードインエリアと,リードアウトエリアとを有する情報エリアに対し
て,ディスク上に形成されたプリグルーブのウォブルに基づいて線速度一定となる
ようにディスクを回転させて,プログラムエリアにオーディオやデータなどの情報
信号を記録するディスク記録装置であって,
1j外部から入力される情報信号をプログラムエリアに記録する手段と,20
1kプログラムエリアへの情報信号の記録時に,プログラムエリアに記録され
ている記録内容として,リードインエリアに記録すべきトラック開始位置情報等の
目次情報を記録する手段と,
1lプログラムエリアへの情報信号の記録が終了したか否かを判別し,記録が
終了されたものと判断した場合は,プログラムエリアの内周側に設けられたリード25
インエリアに目次情報を記録し,プログラムエリアへの記録が終了していない場合
は,リードインエリアに隣接して設けられたPMAに一時的に目次情報を記録する
手段と,
1mを具えるディスク記録装置。
⑷本件発明1-6に対応する構成
前記⑶と同様の構成を備えるディスク記録再生装置。5
⑸本件発明2-1に対応する構成
2aプログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて,目次情報がリー
ドインエリアに記録されたCD-RWディスクのプログラムエリアに,ユーザー情
報を記録するための光ディスク記録装置であって
2bユーザー情報をプログラムエリアに書き込み,目次情報をリードインエリ10
ア以外の一時的な領域であるPMAに書き込む書込手段と
2cPMAから目次情報を読み出す読出手段と
2dPMAから目次情報を読み出し,プログラムエリアの空き領域に更なるユ
ーザー情報を書き込む書込手段を制御し,当該追記された情報に基づいて,新たな
目次情報をリードインエリアに書き込む書込手段を制御する制御手段と15
2eを備える光ディスク記録装置。
⑹本件発明3-1に対応する構成
3aCD-RWディスクの情報エリアのプログラムエリアにユーザー情報を記
録し,プログラムエリアのユーザー情報の記録終了時,すなわち,ファイナライズ
時に,プログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて,リードインエリア20
に目次情報を記録する光ディスク記録装置であって,
3bプログラムエリアに対してユーザー情報の記録終了前に記録が中断した場
合に,情報エリア以外のPMAに目次情報を記録するよう装置を制御する制御手段
を備え,
3c記録操作開始時にリードインエリアのコンテンツを読み出し,リードイン25
エリアに目次情報が記録されている場合には,記録操作を終了し,一方,リードイ
ンエリアに目次情報が記録されていない場合には,PMAのコンテンツを読み出し,
読み出した結果である目次情報に基づいて記録操作を行うことを特徴とする光ディ
スク記録装置。
⑺本件発明7-1に対応する構成
7aCD-RWディスクのプログラムエリアにユーザー情報を記録するための5
光ディスク記録装置であって,
7b情報エリアには当該プログラムエリアに記録されたユーザー情報に対応す
る目次情報を記録するリードインエリアを有し,
7cプログラムエリアに記録されたユーザー情報に対応する目次情報を情報エ
リアの同心円状のPMAに記録し,当該目次情報に従って追記を行うことを特徴と10
する光ディスク記録装置。
⑻本件発明7-18に対応する構成
7dユーザー情報を記録し,記録されたユーザー情報に対応する目次情報を記
録するリードインエリアを有する情報エリアと,
7e情報エリアの同心円状に設けられ,以前の記録中にプログラムエリアに記15
録されたユーザー情報に対応する目次情報を記録するPMAとを備え,
7fCD-RWディスクがファイナライズされるまでは,PMAに一時的に記
録された目次情報(トラックの始まりと終わり)を利用して,後続の記録操作(追
記)をする光記録ディスク。
⑼本件考案8-1に対応する構成20
8aCD-RWディスクのプログラムエリアにユーザー情報を記録する光ディ
スク記録装置であって,プログラムエリアに記録されたユーザー情報に基づいて目
次情報がリードインエリアに記録された光ディスク記録装置において,
8bプログラムエリアにユーザー情報を記録し,リードインエリアの外側にあ
るPMAに目次情報を記録して,パワーキャリブレーションに関するデータをプロ25
グラムエリアの外側にあるPCAに記録する記録手段と,
8cPMAに記録された目次情報を読み出し,PCAにおいて,パワーキャリ
ブレーションに関するデータを読み出す読み出し手段と,
8dPMAから目次情報を読み出し,読み出された目次情報に基づいて,プロ
グラムエリアの記録済の領域以外の空き領域に新たなユーザー情報を記録するよう
に記録手段を制御し,追記されたユーザー情報に対応した目次情報をリードインエ5
リアに記録するように記録手段を制御し,PCAから最適記録パワーに関するデー
タ読み出すとともに,新たな最適記録パワーに関するデータをPCAに記録するよ
うに制御する制御手段と,を備える光ディスク記録装置。
3DVD-R
⑴本件発明1-1に対応する構成10
1aDVD-R規格に基づいて形成されたディスクのデータエリアにユーザー
データを記録するディスク記録装置において,
1b外部から入力されるユーザーデータをディスクのDVD-R規格に基づく
データエリアに線速度一定方式で記録すると共に,
1cデータエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録されるユーザ15
ーデータの内容を表す情報(英文表記である「RecordingManagementDate」を略
して「RMD」とも表記されており,以下「RMD」という。)をデータエリアよ
り内周側のリードインエリア近傍の記録管理エリア(英文表記である「Recording
ManagementArea」を略して「RMA」とも表記されており,以下「RMA」とい
う。)に一時的に記録するための記録手段20
1dを具えることを特徴とするディスク記録装置。
⑵本件発明1-3に対応する構成
1eDVD-R規格に基づいて形成されるデータエリアにユーザーデータが線
速度一定方式で記録されるディスクにおいて,
1fDVD-R規格に基づくデータエリアは,当該データエリアに記録されて25
いるユーザーデータの内容を表すRMDを含むリードインエリア,及びリードアウ
トエリアを有し,
1gデータエリアより内周側のリードインエリア近傍に,RMDを一時的に記
録するためのRMAが形成されている
1hことを特徴とするディスク。
⑶本件発明1-5に対応する構成5
1iデータエリアと,当該データエリアの記録内容を含むリードインエリアと,
リードアウトエリアとを有するデータエリアが形成されたディスクに対してユーザ
ーデータを線速度一定方式により記録するディスク記録装置において,
1j外部から入力されるユーザーデータをデータエリアに記録するための記録
手段と,10
1kデータエリアへのユーザーデータの記録時に,データエリアに記録されて
いる記録内容としてリードインエリアに記録すべきユーザーデータの内容を表すR
MDが書き込まれる手段と,
1lデータエリアへのユーザーデータの記録が終了されたか否かを判別し,当
該記録が終了されたものと判断した場合は,ファイナライズ処理として,記憶され15
た内容をRMDとしてデータエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録
し,当該記録が中断されたものと判断した場合は,その内容をデータエリアより内
周側のリードインエリア近傍に形成されたRMAに一時的に記録するように書込手
段を制御する制御手段と
1mを具えることを特徴とするディスク記録装置。20
⑷本件発明1-6に対応する構成
前記⑶と同様の構成を備えるディスク記録再生装置。
⑸本件発明2-1に対応する構成
2aデータエリアに記録されたユーザーデータに基づいて,RMDがデータエ
リアの一部であるリードインエリアに記録されたDVD-Rディスクのデータエリ25
アに,ユーザーデータを記録するための光ディスク記録装置であって
2bユーザーデータをデータエリアに書き込み,RMDをデータエリアの一部
であるリードインエリア以外の一時的な領域であるRMAに書き込む書込手段と
2cRMAからRMDを読み出す読出手段と
2dRMAからRMDを読み出し,データエリアの既にユーザーデータが記録
されたエリア以外の所定の領域に更なるユーザーデータを書き込む前記書込手段を5
制御し,データエリアに追記されたユーザーデータに基づいて,新しい目次情報を
ファイナライズの際にリードインエリアに書き込む書込手段を制御する制御手段と
2eを備える光ディスク記録装置。
⑹本件発明3-1に対応する構成
3aDVD-Rディスクの情報エリアのデータエリアにユーザーデータを記録10
し,データエリアのユーザーデータの記録終了時,すなわち,ファイナライズ時に,
リードインエリアにデータエリアに記録されたユーザーデータに基づいて,RMD
を記録する光ディスク記録装置であって,
3b当該装置は,データエリアにユーザーデータの記録が終了する前に記録が
中断した場合,RMAにRMDを記録するような制御を行う制御手段を備え,15
3c制御手段は,記録操作開始時にリードインエリアにアクセスし,リードイ
ンエリアにRMDが既に記録されている場合には,記録処理を終了し,リードイン
エリアにRMDが記録されていない場合には,RMAに記録されているRMDを読
み出して,追加の記録を行うことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑺本件発明7-1に対応する構成20
7aDVD-Rディスクのデータエリアにユーザーデータを記録するための光
ディスク記録装置であって,
7b情報エリアが当該データエリアに記録されたユーザーデータに対応するR
MDを記録するためのリードインエリアを有し,
7c前記装置は,データエリアに記録されたユーザーデータに対応するRMD25
を情報エリアの同心円状のRMAに記録し,後続の記録操作を制御するためにRM
Aに記録されたRMDを利用可能としたことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑻本件発明7-18に対応する構成
7dユーザーデータを記録し,記録されたユーザーデータに対応するRMDを
記録するためのリードインエリアを有する情報エリアと,
7eDVD-Rディスクが,情報エリアの同心円状に設けられ,以前の記録中5
にデータエリアに記録されたユーザーデータに対応するRMDを記録するためのR
MAとを備え,
7fRMAに記録された先行するRMDを,追記の際に利用可能な光記録ディ
スク。
⑼本件考案8-1に対応する構成10
8aDVD-Rディスクのデータエリアにユーザーデータを記録する光ディス
ク記録装置であって,データエリアに記録されたユーザーデータに基づいてRMD
をリードインエリアに記録するDVD-Rディスク記録装置において,
8bデータエリアにユーザーデータを記録し,データエリアの一部の外側にあ
るRMAにRMDを記録して,ディスクステイタスをデータエリアの外側にあるR15
MAに記録する記録手段と,
8cRMAからRMDを読み出して,RMAからディスクステイタスを読み出
す読み出し手段と,
8dRMAからRMDを読み出し,読み出されたRMDに基づいて,データエ
リアの記録済の領域以外の空き領域に新たなユーザーデータを記録するように記録20
手段を制御し,追記されたユーザーデータに対応したRMDをリードインエリアに
記録するように記録手段を制御し,RMAからディスクステイタスを読み出すとと
もに,新たなディスクステイタスをRMAに記録するように制御する制御手段と,
を備える光ディスク記録装置。
4DVD-RW25
⑴本件発明1-1に対応する構成
1aDVD-RW規格に基づいて形成されたディスクのデータエリアにユーザ
ーデータを記録するディスク記録装置において,
1b外部から入力されるユーザーデータをディスクのDVD-RW規格に基づ
くデータエリアに線速度一定方式で記録すると共に,
1cデータエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録されるユーザ5
ーデータの内容を表すRMDをデータエリアより内周側のリードインエリア近傍の
RMAに一時的に記録するための記録手段
1dを具えることを特徴とするディスク記録装置。
⑵本件発明1-3に対応する構成
1eDVD-RW規格に基づいて形成されるデータエリアにユーザーデータが10
線速度一定方式で記録されるディスクにおいて,
1fDVD-RW規格に基づくデータエリアは,当該データエリアに記録され
ているユーザーデータの内容を表すRMDを含むリードインエリア,及びリードア
ウトエリアを有し,
1gデータエリアより内周側のリードインエリア近傍に,RMDを一時的に記15
録するためのRMAが形成されてなる
1hことを特徴とするディスク。
⑶本件発明1-5に対応する構成
1iデータエリアと,当該データエリアの記録内容を含むリードインエリアと,
リードアウトエリアとを有するデータエリアが形成されたディスクに対してユーザ20
ーデータを線速度一定方式により記録するディスク記録装置において,
1j外部から入力されるユーザーデータをデータエリアに記録するための記録
手段と,
1kデータエリアへのユーザーデータの記録時に,データエリアに記録されて
いる記録内容としてリードインエリアに記録すべきユーザーデータの内容を表すR25
MDが書き込まれる手段と,
1lデータエリアへのユーザーデータの記録が終了されたか否かを判別し,当
該記録が終了されたものと判断した場合は,ファイナライズ処理として,記憶され
た内容をRMDとしてデータエリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録
し,当該記録が中断されたものと判断した場合は,その内容をデータエリアより内
周側のリードインエリア近傍に形成されたRMAに一時的に記録するように書込手5
段を制御する制御手段と
1mを具えることを特徴とするディスク記録装置。
⑷本件発明1-6に対応する構成
前記⑶と同様の構成を備えるディスク記録再生装置。
⑸本件発明2-1に対応する構成10
2aデータエリアに記録されたユーザーデータに基づいて,RMDが情報エリ
アの一部であるリードインエリアに記録されたDVD-RWディスクのデータエリ
アに,ユーザーデータを記録するための光ディスク記録装置であって
2bユーザーデータをデータエリアに書き込み,RMDをリードインエリア以
外の一時的な領域であるRMAに書き込む書込手段と15
2cRMAからRMDを読み出す読出手段と
2dRMAからRMDを読み出し,データエリアの既にユーザーデータが記録
されたエリア以外の所定の領域に更なるユーザーデータを書き込む書込手段を制御
し,データエリアに追記されたユーザーデータに基づいて,新しいRMDをファイ
ナライズの際にリードインエリアに書き込む書込手段を制御する制御手段と20
2eを備える光ディスク記録装置。
⑹本件発明3-1に対応する構成
3aDVD-RWディスクの情報エリアのデータエリアにユーザーデータを記
録し,データエリアのユーザーデータの記録終了時,すなわち,ファイナライズの
時に,リードインエリアにデータエリアに記録されたユーザーデータに基づいて,25
RMDを記録する光ディスク記録装置であって,
3b当該装置は,データエリアにユーザーデータの記録が終了する前に記録が
中断した場合,RMAにRMDを記録するような制御を行う制御手段を備え,
3c制御手段は,記録操作開始時にリードインエリアにアクセスし,リードイ
ンエリアにRMDが既に記録されている場合には,記録処理を終了し,一方,リー
ドインエリアにRMDが記録されていない場合には,RMAに記録されているRM5
Dを読み出して,追加の記録を行うことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑺本件発明7-1に対応する構成
7aDVD-RWディスクのデータエリアにユーザーデータを記録するための
光ディスク記録装置であって,
7b情報エリアが当該データエリアに記録されたユーザーデータに対応するR10
MDを記録するためのリードインエリアを有し,
7c前記装置は,データエリアに記録されたユーザーデータに対応するRMD
を情報エリアの同心円状のRMAに記録し,後続の記録操作を制御するためにRM
Aに記録されたRMDを利用可能としたことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑻本件発明7-18に対応する構成15
7dユーザーデータを記録し,記録されたユーザーデータに対応するRMDを
記録するためのリードインエリアを有する情報エリアと,
7e情報エリアの同心円状に設けられ,以前の記録中にデータエリアに記録さ
れたユーザーデータに対応するRMDを記録するためのRMAと,を備え,
7fRMAに記録された先行するRMDを,追記の際に利用できるようにした20
光記録ディスク。
⑼本件考案8-1に対応する構成
8aDVD-RWディスクのデータエリアにユーザーデータを記録する光ディ
スク記録装置であって,データエリアに記録されたユーザーデータに基づいてRM
Dをリードインエリアに記録するDVD-RWディスク記録装置において,25
8bデータエリアにユーザーデータを記録し,リードインエリアの外側にある
RMAにRMDを記録し,ディスクステイタスを情報エリアの外にあるRMAに記
録する記録手段と,
8cRMAからRMDを読み出して,RMAからディスクステイタスを読み出
す読み出し手段と,
8dRMAからRMDを読み出し,読み出されたRMDに基づいて,データエ5
リアの記録済の領域以外の空き領域に新たなユーザーデータを記録するように記録
手段を制御し,追記されたユーザーデータに対応したRMDをリードインエリアに
記録するように記録手段を制御し,RMAからディスクステイタスを読み出すとと
もに,新たなディスクステイタスをRMAに記録するように制御する制御手段と,
を備える光ディスク記録装置。10
5DVD+R
⑴本件発明1-1に対応する構成
1aDVD+R規格に基づいて形成されたディスクのデータゾーンにユーザー
データを記録するディスク記録装置において,
1b外部から入力されるユーザーデータをディスクのDVD+R規格に基づく15
データゾーンに線速度一定方式で記録すると共に,
1cデータゾーンの内周側に設けられたリードインゾーンに記録されるユーザ
ーデータの内容を表す目次情報をデータゾーンより内周側のリードインゾーン近傍
のインナードライブエリアに一時的に記録するための記録手段
1dを具えることを特徴とするディスク記録装置。20
⑵本件発明1-3に対応する構成
1eDVD+R規格に基づいて形成されるデータゾーンにユーザーデータが線
速度一定方式で記録されるディスクにおいて,
1fDVD+R規格に基づくデータゾーンは,当該データゾーンに記録されて
いるユーザーデータの内容を表す目次情報を含むリードインゾーン,及びリードア25
ウトゾーンを有し,
1gデータゾーンより内周側のリードインゾーン近傍に,目次情報を一時的に
記録するためのインナードライブエリアが形成されている
1hことを特徴とするディスク。
⑶本件発明2-1に対応する構成
2aデータゾーンに記録されたユーザーデータに基づいて,目次情報がリード5
インゾーンに記録されたDVD+Rディスクのデータゾーンに,ユーザーデータを
記録するための光ディスク記録装置であって
2bユーザーデータをデータゾーンに書き込み,目次情報をリードインゾーン
以外の一時的な領域であるインナードライブエリアに書き込む書込手段と
2cインナードライブエリアから目次情報を読み出す読出手段と10
2dインナードライブエリアから目次情報を読み出し,データゾーンのユーザ
ーデータが既に記録されたエリア以外の所定の領域に更なるユーザーデータを書き
込む書込手段を制御し,データエリアに追記されたユーザーデータに基づいて,新
しい目次情報をクロージング又はファイナライズの際にリードインゾーンに書き込
む書込手段を制御する制御手段と15
2eを備える光ディスク記録装置。
⑷本件発明3-1に対応する構成
3aDVD+Rディスクのデータゾーンにユーザーデータを記録し,データゾ
ーンのユーザーデータの記録終了時,すなわち,ファイナライズの時に,リードイ
ンゾーンにデータエリアに記録されたユーザーデータに基づいて,目次情報を記録20
する光ディスク記録装置であって,
3b当該装置は,データゾーンにユーザーデータの記録終了前,すなわち,フ
ァイナライズ前に記録が中断した場合,インナードライブエリアに目次情報を記録
するよう装置を制御する制御手段を備え,
3c制御手段は,記録操作開始時にリードインゾーンの記録内容を確認するよ25
うに当該装置を制御し,再生出力がリードインゾーンに目次情報が記録されている
ことを示している場合は,記録操作を終了し,一方,再生出力がリードインゾーン
に目次情報がまだ記録されていないことを示している場合,当該装置は記録領域以
外のインナードライブエリアの目次情報を読み出し,当該目次情報に基づいて記録
操作を行うことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑸本件発明7-1に対応する構成5
7aDVD+Rディスクのデータゾーンにユーザーデータを記録するための光
ディスク記録装置であって,
7bデータゾーンは,データゾーンに記録されたユーザーデータに対応する目
次情報を記録するためのリードインゾーンを有し,
7c前記装置は,データゾーンに記録されたユーザーデータに対応する目次情10
報をデータゾーンの同心円状のインナードライブエリアに記録し,後続の記録操作
を制御するためにインナードライブエリアに記録された目次情報を利用可能とした
ことを特徴とする光ディスク記録装置。
⑹本件発明7-18に対応する構成
7dユーザーデータを記録し,記録されたユーザーデータに対応する目次情報15
を記録するためのリードインゾーンを有するデータゾーンと,
7eデータゾーンの同心円状に設けられ,以前の記録中にデータゾーンに記録
されたユーザーデータに対応する目次情報を記録するためのインナードライブエリ
アと,を備え,
7f先行する目次情報を,後続の記録操作の制御に利用できるようにした光記20
録ディスク。
⑺本件考案8-1に対応する構成
8aDVD+Rディスクのデータゾーンにユーザーデータを記録する光ディス
ク記録装置であって,データゾーンに記録されたユーザーデータに基づいて目次情
報をリードインゾーンに記録する光ディスク記録装置において,25
8bデータエリアにユーザーデータを記録し,リードインエリアの外側にある
インナードライブエリアに目次情報を記録し,TOCアイテムを記録領域の外側に
あるインナードライブエリアに記録する記録手段と,
8cインナードライブエリアから目次情報を読み出して,インナードライブエ
リアからTOCアイテムを読み出す読み出し手段と,
8dインナードライブエリアから目次情報を読み出し,読み出された目次情報5
に基づいて,データゾーンの記録済の領域以外の空き領域に新たなユーザーデータ
を記録するように記録手段を制御し,追記されたユーザーデータに対応した目次情
報をリードインゾーンに記録するように記録手段を制御し,インナードライブエリ
アからTOCアイテムを読み出すとともに,新たなTOCアイテムをインナードラ
イブエリアに記録するように制御する制御手段と,を備える光ディスク記録装置。10
6MD
⑴本件発明1-1に対応する構成
1aMD規格に基づいて形成されたディスクの情報エリアにユーザー情報を記
録するディスク記録装置において,
1b外部から入力されるユーザー情報をディスクのMD規格に基づく情報エリ15
アに線速度一定方式で記録すると共に,
1c情報エリアの内周側に設けられたリードインエリアに記録されるユーザー
情報の内容を表す目次情報を情報エリアより内周側のリードインエリア近傍のユー
ザー目次情報(英文表記である「UserTableofContents」を略して「UTOC」
とも表記されており,以下「UTOC」という。)エリアに一時的に記録するため20
の記録手段
1dを具えることを特徴とするディスク記録装置。
⑵本件発明1-3に対応する構成
1eMD規格に基づいて形成される情報エリアにユーザー情報が線速度一定方
式で記録されるディスクにおいて,25
1fMD規格に基づく情報エリアは,レコーダブルユーザーエリア,当該レコ
ーダブルユーザーエリアに記録されているユーザー情報の内容を表す目次情報を含
むリードインエリア,及びリードアウトエリアを有し,
1g情報エリアより内周側のリードインエリア近傍に,目次情報を一時的に記
録するためのUTOCエリアが形成されている
1hことを特徴とするディスク。5
⑶本件発明7-1に対応する構成
7aMDディスクのレコーダブルユーザーエリアにユーザー情報を記録するた
めの光ディスク記録装置であって,
7b情報エリアは,レコーダブルユーザーエリアに記録されたユーザー情報に
対応する目次情報を記録するためのリードインエリアを有し,10
7cレコーダブルユーザーエリアに記録されたユーザー情報に対応する目次情
報をレコーダブルユーザーエリアの同心円状のUTOCエリアに記録し,後続の記
録操作を制御するためにUTOCエリアに記録された目次情報を利用可能としたこ
とを特徴とする光ディスク記録装置。
⑷本件発明7-18に対応する構成15
7dユーザー情報を記録し,記録されたユーザー情報に対応する目次情報を記
録するためのリードインエリアを有するレコーダブルユーザーエリア,リードイン
エリアと,
7eレコーダブルユーザーエリアの同心円状に設けられ,以前の記録中にレコ
ーダブルユーザーエリアに記録されたユーザー情報に対応する目次情報を記録する20
ためのUTOCエリアと,を備え,
7f先行する目次情報を,後続の記録操作の制御に利用できるようにした光記
録ディスク。

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