弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決中窃盗罪に関する部分を破棄する。
     被告人を原判示窃盗罪につき懲役八月に処する。
     但し、本裁判確定の日から、五年間、右刑の執行を猶予し、且つ、同期
間中被告人を保護観察に付する。
     原判決中、森林法違反に関する部分の控訴は棄却する。
     当審における訴訟費用は、被告人の負担とする。
         理    由
 本件控訴の趣意は、検察官柳沢七五三治の控訴趣意書を引用する。よつて案ずる
に、被告人は、昭和二十八年十月十三日高山簡易裁判所で、窃盗罪及び道路交通取
締法違反により懲役一年及び罰金三千円に処する。但し徴役刑については、五年
間、刑の執行を猶予する旨の判決言渡を受け、該判決は確定したのに、本件におい
て、原判決は、窃盗罪につき、懲役八月に処する旨言渡し、再度の刑の執行猶予を
為しながら、被告人を保護観察に付さなかつたことは、所論の通りで、原判決は、
その理由として、保護観察に付する旨の改訂刑法の規定が施行されたのは、本件窃
盗の行為の後であつて、執行猶予に右の条件を付することは、被告人にとつて不利
益であるから、憲法第三十九条により、違憲であるので、改訂前の刑法第二十五条
を適用すると謂うにある。
 <要旨>然れども、昭和二十八年法律第一九五号刑法等の一部を改正する法律(改
訂刑法と略称する)により、刑法第二十五条等を改正附加し、刑の執行猶予
の条件を変更しているが、これは、一般的に見て、執行猶予の条件を寛大にしたも
のと謂うことができる。本件においては、再度刑の執行を猶予する場合の条件が問
題となつているので、特にこの点に限局して説明するが、再度刑の執行を猶予する
条件としては、一般の条件の外に、改訂刑法第二十五条第二項の条件が充たされる
必要があり、更に同法第二十五条の二により、猶予の期間中保護観察に付すること
になつている。而して改訂刑法施行前においては、判例(昭和二十八年六月十日最
高裁大法廷判決)により、再度刑の執行を猶予し得る場合があるとしていたが、そ
れは、無条件のものでなく、「併合罪の関係に立つ数罪が前後して、起訴され、後
に犯した罪につき、刑の執行猶予が言渡された場合に、前に犯した罪が同時に審判
されていたならば一括して執行猶予が言い渡されたであろうときは、前に犯した罪
につき、更に執行猶予を言い渡すことができる」としたもので、且つ右判例及びこ
れと同一結論に出でた下級裁判所の判決例に現れたすべての場合を検討するに、二
度目の刑は、改訂刑法第二十五条第二項と同じく、一年を超ゆるものはなかつたこ
とが明らかであるから、前記判例の再度執行猶予を為し得る条件は、改訂刑法第二
十五条第二項の条件より、むしろ厳格なものであると謂うことが出来る。即ち改訂
刑法第二十五条第二項で、再度刑の執行を猶予し得る場合は、判例の条件と異り、
一年以下の刑の言渡を為すべき場合で情状憫諒すべきものがあるとさと謂い、併合
罪の関係に立つ数罪が前後して起訴されて別個に審判を受けたが若し一括して審判
を受けたとするも執行猶予を為し得べき場合に限り、再度執行を為し得ると謂うよ
うな厳格な条件と異つている。
 改訂刑法は、前記判例より寛大な条件がある一方、保護観察に付すると謂う不利
益な条件があるが、これを差引考慮するとするも、改訂刑法とその以前の判例解釈
による条件との間に、何れに軽重があるか一概に決し難く、むしろ具体的事例に照
して見ると、右の条件を考慮しても、改訂刑法の条件が寛大であると謂う見方も成
立する。立法の趣旨とするところは、前記判例の解釈を考慮に入れ、刑法を改訂し
たのであるから、改訂刑法施行後は施行以前の犯罪についても改訂刑法の適用と前
記判例に則つた解釈とは両立しないもので、すべて改訂刑法が適用されるものと解
するべきである。しかのみならず、刑の執行猶予の条件に関する規定の変更は、刑
法第六条に所謂刑の変更にあたらないことは判例(昭和二十三年十一月十日最高裁
大法廷判決)の示すところであるから、改訂刑法第二十五条第二十五条の二の規定
は、刑法第六条により、新旧比照して適用すべきものでなく、裁判時法である改訂
刑法を適用すべきものである。而して前記のような執行猶予の条件の変更は、実行
の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為について、刑事上の責任を問う
ものに該当しないから、憲法第三十九条に違反するものではない。原判決は、この
点を誤解し、被告人を保護観察に付さなかつたら、改訂刑法第二十五条第二十五条
の二、刑事訴訟法第三百三十三条第二項の解釈適用を誤つた違法があり、この法令
違反は、判決に影響すること明らかであるから、破棄を免れない。論旨は、理由が
ある。
 しかし右のような原判決破棄の理由は窃盗罪に関する部分であつて原判決が窃盗
罪に関する部分と森林法違反に関する部分とに事実認定をはつきり分け、後者につ
いては、罰金刑を選択しているので、窃盗罪に関する部分について破棄理由があつ
ても、森林法違反の部分についての事実認定、証拠説明、法令の適用、量刑等に何
等の影響もなく、且つ森林法違反の部分については、破棄理由がないのでこの部分
については、刑事訴訟法第三百九十六条により、本件控訴を棄却し、窃盗罪に関す
る部分については、同法第三百九十七条第三百八十条により、原判決を破棄し、同
法第四百条但書により、次の通り判決する。
 窃盗罪についての犯罪事実及び前科並にその証拠については、原判決中、その該
当部分を引用する。
 法律に照すに、被告人の判示窃盗の各所為は、刑法第二百三十五条第六十条に該
当し、右は、原判示確定判決前の併合罪であるから、同法第四十五条後段第四十七
条第十条により、原判示第三の(1)の罪の刑に法定の加重を為し、その刑期範囲
内で、被告人を懲役八月に処するが情状刑の執行を猶予するを相当と認め、同法第
二十五条第二頃により、本裁判確定の日から、五年間、右刑の執行を猶予し、同法
第二十五条の二により、同期間中被告人を保護観祭に付することとする。当審にお
ける訴訟費用については、刑事訴訟法第百八十一条本文により、被告人に負担させ
る。
 よつて主文の通り判決する。
 (裁判長判事 高城運七 判事 滝川重郎 判事 赤間鎮雄)

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