弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○主文
一本件訴えを却下する。
二訴訟費用は原告の負担とする。
○事実
第一当事者の求めた裁判
一請求の趣旨
1被告は、高野口町に対し、七八三四万円を支払え。
2訴訟費用は被告の負担とする。
二請求の趣旨に対する答弁
1本案前の答弁
主文第一、二項と同旨
2本案の答弁
(一)原告の請求を棄却する。
(二)訴訟費用は原告の負担とする。
第二当事者の主張
一請求原因
1(一)被告は、和歌山県伊都郡高野口町町長であり、旧高野口中学校跡地の払下げに
関する行政の責任者であつた。
(二)原告は、高野口町の町民である。
2(一)被告は、昭和六〇年八月一三日、別紙物件目録記載の土地である旧高野口中学
校跡地(以下「本件土地」という)を和歌山県(以下「県」という)に四億八〇〇、。、。

万円で払い下げた。
(二)本件土地の適正価格は、払下げ当時六億七〇四〇万円であつた。
3(一)本件土地払い下げは、適正価格を大幅に下回る価格で行なわれたものであり、
高野口町の「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例(昭和三九年条例第一三号、」

下「本件条例」という)に違反し、違法である。。
(二)本件条例三条は、高野口町は、他の地方公共団体その他公共団体において公用若
しくは公共用又は公益事業の用に供するため、普通財産を他の地方公共団体、その他公共
、、団体に譲渡するときはこれを時価よりも低い価格で譲渡することができる旨規定するが
右条例も地方公共団体の財産は適正な対価なくしてこれを譲渡してはならない旨定める地
方自治法二三七条二項の趣旨に沿つて限定して解釈、適用されねばならず、右条例は理事
者に対し普通財産の処分における無制限の裁量を肯定したものということはできない。
(三)その結果、単に普通財産の譲渡先が他の地方公共団体や公共団体であることから
直ちに「適正な対価によらない普通財産の譲渡」が許容されるのではなく、少なくとも、

方自治法二三七条二項の趣旨から次の要件が存在する場合にのみ許容されると解すべきで
ある。
(1)他の地方公共団体その他公共団体の当該普通財産の取得目的が、地元住民にも関
係する公共性(公共目的)を有すること
(2)当該普通財産を他の地方公共団体その他公共団体に「適正な価格によらない」で
譲渡することによる利益が、
当該普通財産を「適正な対価(時価)により譲渡又は賃貸することによる利益と比較し」
て、
一見明白に優越していること
(3)他の地方公共団体その他公共団体に譲渡した対価と「適正な対価」との差が、前
記(1)の「公共性の目的」又は(2)の「優越的利益」に基づく価格の合理的範囲内に
あること
(4)(3)の合理的範囲の基準については、本件条例二条が普通財産の交換における
許容範囲として定める、価格の差がその高価なものの価格の六分の一をこえるときは交換
することができない旨の規定と同一の基準が適用されること
(四)本件土地の処分には「適正な対価によらない価格」との差を埋める程度の高野、

町の住民に関係するような公共上の利便の増進等の利益はない。
また、本件土地について存在するのは、和歌山県教育委員会が評価した六億七〇四〇万円
という適正価格であり、これを仮に本件条例二条にいう「高価なものの価格」と類推した
場合には、その価格の六分の一である一億一一六六万円の範囲内において時価を下回るこ
とができるにすぎない。しかるに、本件土地の処分価格は、右の一億一一六六万円の範囲
を七八三四万円下回つており、違法な払下げといわざるを得ない。
4高野口町は、被告の違法行為により、少なくとも七八三四万円の損害を豪つた。
5原告外二名は、昭和六一年一月二一日本件払下げ行為を是正するべく、高野口町監査
委員に対して監査請求を行つた(以下「本件監査請求」という)が、監査委員は、昭、。

六一年三月一四日本件条例には時価の制限がないことを理由として、本件払下げは差し支
えない旨の監査結果を出した。
よつて、原告は、被告に対し、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、右違法な払
下げの結果高野口町が蒙つた損害(少なくとも)七八三四万円について高野口町に代位し
て損害の填補を求める。
二被告の本案前の主張
1原告は、現在橋本市に居住し、<地名略>の住家は他に売却して空き家となり、同所
に在住しないのに住民票をそのままとしているにすぎない。したがつて、原告は<地名略
>町民ではないから、被告に対し、本訴を提起する適格を有しない。
一般に、住民の住所に関しては、これを住民票に基づき決するのが簡明であるが、本件原
告のように従前の居住建物を土地とともに売却して住民票記載の場所に生活の根拠があり
えない状況となり、しかも、
その家族と別居して数年前から他の町で愛人との生活を続け、かつ、現に<地名略>に在
住する妻子のもとへ帰る意志もないような場合には、客観的にも主観的にも住民票の住居
表示性は失われているものとして、その実体に即した考察に従い、その住民票所在の公共
団体の長に対する住民訴訟を提起することは許されないものとみるべきである。
2(一)原告は、昭和六一年三月一四日高野口町監査委員の監査結果通知書の交付を受
け、その結果を知つた。
(二)仮に、原告自身が右同日右通知書を受け取つていなかつたとしても、原告は、本
件監査請求に際して現実の住所、電話番号を明らかにせず、監査結果の通知方法について
原告に質した監査委員らに対しその結果通知書を<地名略>に在住する相請求人Aに渡し
てもらつて結構である旨の回答をしたことから、右監査委員らは、昭和六一年三月一四日
朝、Aに本件監査結果通知書を手交し、その公告に及んだものである。
(三)原告は、昭和六一年四月一四日本訴を提起したもので、地方自治法二四二条の二
第二項の出訴期間を遵守しなかつた。したがつて、原告による本訴提起は不適法である。
三被告の本案前の主張に対する原告の答弁
1(一)地方自治法一〇条一項は「市町村の区域内に住所を有するものは、当該市町村
の住民とする」と規定し、この住所の定め方について、住民基本台張法四条は「・・・。
・・・
地方自治法第一〇条第一項に規定する住民の住所と異なる意義の住所を定めるものと解し
てはならない」と定め、地方自治法に規定する「住所」と住民基本台張法により定めら。

た住民票の「住所」とが一致することを明示している。
(二)住民訴訟を提起することができる当該市町村の「住民」とは、当該市町村に「住
民票」を置く住民でなければならないのであり、たまたま生活の一部がその他の市町村で
行なわれている事実があるとしても、住民自らが住民票を移転させるか、市町村が職権に
基づき移転させるかしない以上、住民であるか否かの判断は住民票の住所を基準にしなけ
ればならない。
(三)以上の理由から、原告の本件訴訟に関する当事者適格について何ら問題はない。
2本件監査結果は、昭和六一年三月一七日町役場において、原告とともに住民監査を行
なつたAに交付されたものであり、被告の主張するように同月一四日に受領した事実は全
く存在しない。その結果、
本件訴訟は、右受領日から三〇日以内に提起されており、地方自治法二四二条の二第二項
に定める要件を充足している。
四請求原因に対する認否及び反論
(認否)
()、()。()、請求原因1一の事実は認め同1二の事実は否認する同2一の事実は認め
同2(二)の事実は否認する。同3の主張は争う。同4の事実は否認する。同5の事実は
認める。
(反論)
1高野口町は、昭和五七年九月、いわゆる財政再建団体の指定を解除されたが、公債比
を制限する比率が二〇パーセントを上回る可能性があつたため、昭和五八年には本件土地
を売却して繰上げ償還の財源に充当し、その比率の低下を来すべく、その売却時期を検討
していた。
他方、県は、昭和五九年ころから養護学校の建設を計画し、昭和六〇年に用地買収等の予
算が可決されたが、交通の便等の立地条件を満たす場所として本件土地が適正であるとの
判断により、高野口町に対しその協力を求めたところ、同町町長である被告は、昭和六〇
年二月から三月にかけて高野口町議会の全員協議会を開催し、養護学校誘地の場所、売却
金額等を議会に相談した後、養護学校の設置について県と交渉を進めることを検討した。
高野口町は、昭和六〇年六月一一日、県教育委員会に対し土地評価意見書を提出したが、
同委員会は同年七月本件土地の土地鑑定書(評価額六億七〇四〇万円、坪当たり一五万二
〇〇〇円)を高野口町へ持参し、双方で協議の結果、同委員会から買収価格を四億八〇〇
〇万円とする呈示があり、高野口町臨時議会は、同年八月一三日、右金額による本件土地
の払下げ契約を認める旨の決議を行つた。
2本件条例三条によれば、町有の普通財産の譲渡について、これを他の地方公共団体に
払下げる場合には「時価を下回ることができる」とされているところであり、これは、公
共団体に譲渡することが結局は住民の利益となることを考慮し、その運用については町長
の裁量事項としているものと認めるのが相当である。本件土地の譲渡は、右条項に従い、
高野口町議会の議決を経たうえでなされたものであり、町長の裁量権を逸脱してはおらず
何ら違法ではない。
原告は、町有の動産等の交換に関して、交換による差額が高価なものの価格の六分の一以
下でなければならないとされているのを取り上げ(本件条例二条、この制約が本件のよ)

な不動産の場合にまで及ぶとしているが、
これは右条項の解釈の限界を越えるものである。
第三証拠(省略)
○理由
一被告は、その本案前の主張として、原告は高野口町の町民ではないから、被告に対し
本件訴訟を提起する適格を有しない旨述べ、原告はこれを争うので、まずこの点について
判断する。
1地方自治法二四二条の二第一項は本件訴訟のようないわゆる住民訴訟について普、、「
通地方公共団体の住民」が裁判所に対し訴えを提起することができる旨規定し、地方自治
法一〇条一項は「市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する、

道府県の住民とする」と定めているから、住民訴訟においては、その原告が当該地方公。

団体の区域内に住所を有することが訴訟要件として必要である。
右「住所」の内容をいかに解釈すべきかについて案ずるに、民法においては各人の生活の
本拠を住所とする旨定められているところ(民法二一条、およそ法令において人の住所)

つき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、そ
の住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するのが相当である。そして、地方自治法に
おける住所について、これを別異に解釈すべき特段の事由を見いだすことができないのみ
ならず、地方公共団体の執行機関及び職員による財政上の違法、不当な行為を予防、是正
する権利を個々の住民に与え、その実効性を裁判所の判決によつて確保しようとする住民
訴訟の趣旨に照らしても、当該地方公共団体の区域内に生活の本拠を有し、その行政の運
営について直接利害関係を有する者に原告となりうる資格を付与するのが妥当である。そ
うすると、地方自治法一〇条一項における住所とは各人の生活の本拠を指すものと解すべ
きであり、住民訴訟については、当該地方公共団体の区域内に生活の本拠を有する者が原
告として右訴えを提起する資格を有するものというべきである。
2右の点に関して、原告は、住民訴訟を提起することができる当該市町村の「住民」と
は当該市町村に住民票を置く住民でなければならず、住民であるか否かの判断は住民票の
住所を基準にしなければならない旨主張する。確かに、住民基本台帳法による住民票は、
住民の届出に基づいて市町村長が作成するものであり、高度の公証的機能を有するものと
認めることはできるが、その記載は住民の生活の本拠を推認する重要な一資料にすぎず、
その生活の本拠を確定する唯一の絶対的資料であると認めることはできないから、右原告
の主張はこれと相反する限度において採用することができない。
また、住民の住所に関する法令の規定は、地方自治法一〇条一項に規定する住民の住所と
異なる意義の住所を定めるものと解釈してはならない旨規定する住民基本台帳法四条の規
定は、住民の住所に関する法令の規定がその「住所」に関しては地方自治法一〇条一項の
規定と同義に解釈されるべきであることを規定したにとどまり、地方自治法一〇条一項の
住民の住所が、常に住民票記載の住所によつて決定されることまでを規定したものという
ことはできない。
3生活の本拠の有無は(1)一定の地を生活の本拠とする意思と(2)その地に常、、

(又は定住)する事実とによつて認定されるべきであるところ、本件において、原告が高
野口町に生活の本拠を有するか否か検討する。
各成立に争いのない乙第一ないし第四号証、撮影者、撮影年月日、被写体につき争いのな
い写真である検乙第一号証及び原告本人尋問の結果(第一、二回)によれば、次の事実が
認められる。
原告は、昭和四三年ころ、現在の妻と結婚して<地名略>所在の建物に住もようになり、
住民票の住所を同所へ変更し、昭和四七年七月には同建物の所有権をも取得し、同所で時
計屋を営んで生活していたが、妻が病気になつたこともあり、昭和五八年ころ妻と別居し
て橋本市<地名略>で別の女性と同棲するようになり、昭和六〇年九月二日には前記<地
名略>所在の建物を伊都農業協同組合へ譲渡してしまつた。他方、原告の妻及び子も右建
物を出て<地名略>に転居し、妻の母親の収入で生計をたててきた。現在、原告は、橋本
市<地名略>から転居し、同市<地名略>において前記女性と同棲し、原告とその女性の
二人の収入で生活している。原告は、一週間に一回程度妻や子の住む前記<地名略>の家
に顔を出すとともに、子供の学資を援助するなどしているが、右女性との同棲を打ち切る
考えはなく、現在の生活を今後も継続する意思を有している。
以上の諸事実を総合すると、原告は、橋本市において前記女性と同棲しはじめて以降、<
地名略>に生活の本拠を有しなくなつたものというべきである。前掲乙第一号証及び原告
本人尋問の結果(第一、二回)によれば、原告は、
現在妻の母親の本家において経営する伊都郡<地名略>所在の印刷会社の役員として働
き、
収入を得ていること、前記のとおり、一週間に一回程度<地名略>に住も妻子のもとを訪
れていること、原告の住民票記載の住所は<地名略>となつていること等の事実が認めら
れるけれども、原告が<地名略>に生活の本拠を有しないとする前記認定を覆すに足りな
い。
4以上によれば、原告は、本件監査請求を行つた当時及び本件訴えを提起した当時、高
野口町の住民ではなかつた事実が認められ、したがつて、原告は本件について地方自治法
二四二条の二第一項の規定する原告適格を有しないものといわなければならない。
二よつて、本件訴えは不適法であるから、その余の点について判断するまでもなくこれ
を却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文
のとおり判決する。
(裁判官弘重一明安藤裕子高橋譲)
物件目録(省略)

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