弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
一 被告は、別紙物件目録(一)ないし(四)記載の物干具を製造し、譲渡し、譲
渡のために展示してはならない。
二 被告は、その本店、営業所、工場に存する前項の物干具の完成品およびその半
成品(右物干具の構造を具備しているがいまだ製品として完成に至らないもの)を
廃棄し、同物干具の製造に使用している成型用金型を除却せよ。
三 被告は原告に対し、金五四八万五二五〇円およびこれに対する昭和五三年七月
二二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告のその余の請求を棄却する。
五 訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の各負担とする。
六 この判決は仮に執行することができる。
       事   実
第一 申立
(原告)
一 第一、二項として主文第一、二項と同旨。
二 被告は原告に対し、金五七九九万五八七五円およびこれに対する昭和五三年七
月二二日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 仮執行宣言。
(被告)
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
第二 原告の請求原因
A 差止請求
一 原告は、左記登録意匠、(以下、本件意匠という)の意匠権者である。なお、
本件意匠は、もともと訴外大阪均一株式会社(後に株式会社ダイキンと商号変更)
出願にかかる同会社所有のものであつたが、昭和四九年一二月二五日原告が同会社
より譲渡を受け昭和五〇年二月二六日その旨の登録を特許庁において了したもので
ある。
 記
出願 昭和四五年二月七日(意願昭四五ー四〇四三)
登録 昭和四七年一二月二七日(第三六〇五九二号)
意匠にかかる物品 物干し器具
登録意匠 別紙登録意匠図記載のとおり。
そして、本件意匠には左記(一)ないし(五)の類似意匠が付帯している。
(一) 類似意匠(1)
出願 昭和四六年一月一四日(意願昭四六ー五三六)
登録 昭和五三年二月一四日(第三六〇五九二号の類似1)
意匠にかかる物品 物干し器具
登録意匠 別紙類似意匠図(一)記載のとおり。
(二) 類似意匠(2)
出願 昭和四六年四月一三日(意願昭四六ー一一七九七)
登録 昭和五三年二月一四日(第三六〇五九二号の類似2)
意匠にかかる物品 (一)に同じ
登録意匠 別紙類似意匠図(二)記載のとおり。
(三) 類似意匠(3)
出願 昭和四六年八月五日(意願昭四六ー二八五六五)
登録 昭和五三年二月一四日(第三六〇五九二号の類似3)
意匠にかかる物品 (一)に同じ。
登録意匠 別紙類似意匠図(三)記載のとおり。
(四) 類似意匠(4)
出願 昭和四六年八月五日(意願昭四六ー二八五六六)
登録 昭和五三年二月一四日(第三六〇五九二号の類似4)
意匠にかかる物品 (一)に同じ。
登録意匠 別紙類似意匠図(四)記載のとおり。
(五) 類似意匠(5)
出願 昭和四七年五月一七日(意願昭四七ー二一七七四)
登録 昭和五三年二月一四日(第三六〇五九二号の類似5)
意匠にかかる物品 (一)に同じ。
登録意匠 別紙類似意匠図(五)記載のとおり。
二 被告は、業として、別紙物件目録(一)ないし(四)記載の物干し器具(以下
物干具という)を現に製造販売し、また同目録(五)ないし(七)記載の物干具を
製造販売していた(以下、右(一)ないし(七)の物干具を順次(イ)ないし
(ト)号物件という)。
三 右(イ)ないし(ト)号物件の各意匠は、いずれも以下に述べるとおり本件意
匠の類似範囲に属するものである。
〔一〕 本件意匠は、一般家庭で使用される物干具のうち、吊杆、物干杆を有し使
用時において物干杆が放射状に拡開する方式の物干具に関するものであるが、その
構成は次のとおりである。
(一) 基本形状
 円形基盤の中央上部に上端を吊鉤とした吊杆を突設し、同基盤の周りから一〇本
の物干杆を放射状にかつほぼ水平に突出している。
(二) 物干杆
 物干杆はその先端の挾み部分を除いて断面がI字形をなしている。
(三) 吊杆
 吊杆は上端の吊鉤部を除いて断面十字形であつて、上端吊鉤部との境界部に断面
円形のリブが設けられている。
(四) 物干杆と吊杆の長さ
 物干杆は吊杆とほぼ同程度の長さを有している。
(五) 基盤
 基盤は上面が逆椀状に膨出し、その中央部に吊杆を接合するための突出短筒が設
けられかつ周面から上面にかけて円周方向に物干杆の突出する一〇個の縦長窓孔が
等間隔にあけられるとともに、下面は底蓋で塞がれている。
(六) 挾持片
 各物干杆の先端にはこれと一体の先端挾持片が設けられており、該挾持片は下側
の側面視<12252-001>形状の受部と上側の側面視<12252-002
>形状の挾み片とで構成されている。
(七) 吊鉤
 吊鉤は一部を切欠いたほぼ円形でその頂部が上方に小さく屈曲されてロープ掛け
部が形成されている。
〔二〕 前記類似意匠(1)ないし(5)の各構成を本件意匠の右構成に対応して
分説し、その相違点および共通点を指摘すると、次のとおりである。
1 類似意匠(1)
(一) 基本形状(一)は本件意匠と同じ。
(二) 物干杆(二)は先端の挾み部分を除いた部分の断面形状が角形である点で
相違する。
(三) 吊杆(三)は本件意匠と同じ。
(四) 物干杆と吊杆の長さ比(四)は本件意匠と同じ。
(五) 基盤(五)は本件意匠と同じ。
(六) 挾持片(六)は各物干杆の先端および基部にはこれを上方に二つ折り(ヘ
アピン状)にした挾持片が対向的に形成されている点で本件意匠と異なる。
(七) 吊鉤(七)はほぼ円形である点で本件意匠と共通するが、吊鉤の斜め上方
に鉤状のロープ掛けが形成されている点で相違する。
2 類似意匠(2)
 物干杆の数が二〇本になり、これに伴つて基盤の縦長窓孔の数も二〇個となつて
いる以外は類似意匠(1)と同じ。
3 類似意匠(3)
(一) 前記(一)ないし(五)の構成(基本形状、物干杆、吊杆、物干杆と吊杆
の長さ比、基盤)はいずれも本件意匠と同じ。
(二) 挾持片(六)は各物干杆の先端に設けられている点で本件意匠と共通であ
るが、その形状が上方に二つ折りしたヘアピン状である点で相異する。
(三) 吊鉤(七)は類似意匠(1)と同じ。
4 類似意匠(4)
 前記(一)ないし(七)の構成は類似意匠(3)と同じ。
各物干杆の先端にピンチ(洗濯挾み)が吊下げられている点が本件意匠にも他の類
似意匠にもない構成となつている。
5 類似意匠(5)
 物干杆の数が一五本になりこれに伴つて基盤の縦長窓孔の数も一五個となつてい
る以外は類似意匠(1)と同じ。
 以上の類似意匠を大別すると、その相互間では、(a)物干杆の断面形状が角形
でその先端と基部の両方に挾持片があるグループ(類似意匠(1)、(2)、
(5))と、(b)物干杆の断面形状が本件意匠と同じI字形でその先端にのみ挾
持片のあるグループ(類似意匠(3)、(4))の二つに分けることができるが、
いずれにせよ、基本形状、吊杆、物干杆、吊杆と物干杆の長さ比、基盤の構成は本
件意匠と共通しており、これらの類似意匠を通観すると、物干杆の本数、挾持片や
ロープ掛けの位置、形状、ピンチの有無等の相違点は本件意匠との類似性を否定す
る理由にならないことが明らかである。
〔三〕 本件意匠の出願前においても、吊杆、物干杆を有し放射状に拡開する物干
具は存したが、出願前公知のものは、いずれも吊杆、物干杆とも断面円形の線状の
ものあるいは物干杆を平板な板状にしたものであつた。
〔四〕 そして、右公知の物干具が全体として細く繊細であり、かつ、基盤の大き
さと物干杆、吊杆の長さとのバランス面からみると不安定な感じを与え力強さがな
いものであつたのに比べ、本件意匠は、(1)物干杆を断面I字形に形成したこ
と、(2)吊杆を断面十字形に形成したこと、(3)基盤を、上面において周縁か
ら中央部にかけてなだらかな線で次第に盛り上つた逆椀状とし、その中央部に吊杆
と接合させるための突出短筒を下端外周をなだらかなカーブで基盤上面に連続せし
めて一体に突設したこと、(4)右(1)ないし(3)の単位要部の相互関係で
は、吊杆、物干杆が太くかつほぼ同じ長さであることに基づき、基盤がそれらに対
応するように大きなものとされて、右の単位要部が全体として良く調和のとれた形
で配列されていること、および、これら単位要部の組合せにより見る者に堅牢感、
重厚感、調和感、安定感を与えるもので、この点において革新的審美性を有するも
のである。
〔五〕 そこで、次に(イ)ないし(ト)号物件の各意匠と本件意匠を対比してみ
るが、(イ)ないし(ト)号物件は別紙物件目録の記載から明らかなとおり、吊杆
特にその吊鉤部の形状の相違に応じて区別すると、(a)吊鉤が一部を切欠いたほ
ぼ円形のグループ((イ)、(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件)と(b)吊鉤が上下
方向に長いほぼ長円形のグループ((ロ)、(ハ)、(ニ)号物件)に分けること
ができる。以下、便宜、(a)、(b)のグループの順で検討する。
(一) まず、(a)グループについてみる。
1 (イ)号物件と本件意匠の比較
 (イ)号物件は、(1)物干杆を断面I字形に形成している、(2)吊杆を断面
十字形に形成している、(3)基盤を上面において周縁から中央部にかけてなだら
かな線で次第に盛り上つた逆椀状とし、その中央部に吊杆と接合させるための突出
短筒を下端外周をなだらかなカーブで基盤上面に連続せしめて一体に突設してい
る、(4)右(1)ないし(3)の単位要部の相互関係では、吊杆、物干杆が太く
かつほぼ同じ長さであることに基づき、基盤がそれらに対応するように大きなもの
とされ右の単位要部が全体として良く調和のとれた形で配列されているという意匠
構成をなしているが、これらは全く本件意匠の構成要部とするところであり、本件
意匠との間にはわずかに、リブの数、基盤下面の底蓋の有無、挾持片の形状の相
違、ロープ掛けの位置と数、逆吊用吊鉤の有無にその相違点を見い出すにすぎな
い。そして、右の相違点は、意匠の構成上従属的部分にすぎず、見る者に特別な審
美感を与えるものでない。このことは、本件意匠と前記類似意匠の意匠構成の比較
から容易に判断されるところであり、(イ)号物件は本件意匠が有するのと同一の
堅牢感、重厚感、調和感、安定感を与える同質の審美性を有するものである。した
がつて、総合的審美感において同一であるから、(イ)号物件の意匠は本件意匠の
類似範囲に入る意匠である。
2 (ホ)、(ヘ)、(ト)号物件と本件意匠の比較
 (ホ)、(ヘ)、(ト)号物件は、(イ)号物件が物干杆の先端にのみ挾持片を
もつのに対し、先端と基部の両方に挾持片をもつ点でこれと相違するが他は共通の
構成であり、(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件相互間では、物干杆の数およびこれに
伴う基盤の縦長窓孔の数が違つているだけである。そして、これら基部にも挾持片
のあることや、物干杆および縦長窓孔の数に相違のあることが本件意匠との類似性
を否定する理由とならないことは、前記本件意匠と類似意匠の対比から明らかなと
ころである。したがつて、これらの相違点を加味しても、(ホ)、(ヘ)、(ト)
号物件の各意匠が、(イ)号物件の意匠と同様、本件意匠の類似範囲に入ることは
明らかである。
(二) 次に、(b)グループについてみる。
1 (ロ)号物件の意匠と本件意匠の対比
 (ロ)号物件は、(1)物干杆を断面I字形に形成している、(2)吊杆を断面
Y字形に形成している、(3)基盤を上面において周縁から中央部にかけてなだら
かな線で次第に盛り上つた大きくて厚い逆椀状とし、その中央部に吊杆と接合させ
るための突出短筒を下端外周をなだらかなカーブで基盤上面に連続せしめて一体に
突設している、(4)右(1)ないし(3)の単位要部の相互関係では、吊杆、物
干杆が太くかつほぼ同じ長さであることに基づき、基盤がそれらに対応するよう大
きなものとされ右の単位要部が全体として良く調和のとれた形で配列されていると
いう意匠構成をなしているが、これらは本件意匠の構成要部とするところと同一で
ある。本件意匠との間には吊杆の断面形状がY字形になつている点で異るところが
あるが、この点は断面図として見れば見分けがつきやすいが、これを吊杆として側
面から見る限り(本件意匠では側面からしか見れない)十字形とY字形の相違を見
い出すことは容易でない。このような変化は前記(4)の単位要素の取合せのバラ
ンス美という点に着目したときは、見る者の注意を惹くものといえず意匠の類似判
断上は微差というべきである。その他右意匠と本件意匠との間には、わずかに物干
杆の数、リブの数、基盤下面の底蓋の有無、先端挾持片の形状の相違、ロープ掛け
の位置と数、逆吊用吊鉤の有無にその相違点を見い出すが、右相違点は、意匠の構
成上従属的部分にすぎず、見る者に特別な審美感を与えるものでない。このこと
は、本件意匠と類似意匠の意匠構成の比較から容易に判断されるところであり、
(ロ)号物件は本件意匠の有するのと同一の堅牢感、重厚感、調和感、安定感を与
える同質の審美性を有するものである。したがつて、総合的審美感において同一で
あるから、(ロ)号物件の意匠は本件意匠の類似範囲に入る意匠である。
2 (ハ)号物件の意匠と本件意匠の対比
 (ハ)号物件は、(ロ)号物件と物干杆の数とこれに伴う基盤の縦長窓孔の数を
異にするだけである。そして、かかる物干杆や縦長窓孔の数の相違が本件意匠との
類似性を否定する理由とならないことは、前記(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件に関
して述べたとおりである。したがつて、右相違点を加味しても、(ハ)号物件の意
匠が、(ロ)号物件の意匠と同様、本件意匠の類似範囲に入ることは明らかであ
る。
3 (ニ)号物件の意匠と本件意匠の対比
 (ニ)号物件は、物干杆の断面形状がI字形になつている点で、(ロ)号物件と
相違し本件意匠と同一であり、各物干杆の先端にピンチ吊下片が設けられこれにピ
ンチが吊下げられていること、および、各物干杆の下面に下向鉤が設けられている
点は、(ニ)号物件に特有の構成であるが、他は(ロ)号物件とほぼ同一である。
そして、(ニ)号物件に特有の右構成は、意匠の構成上従属的部分にすぎず、その
他の本件意匠との相違点を合せ考えても、それらが本件意匠との類似性を否定する
理由にならないことは、(イ)、(ロ)号物件に関して述べたところから明らかで
ある。
 (ニ)号物件も本件意匠が有するのと同一の堅牢感、重厚感、調和感、安定感を
与える同質の審美性を有するものであり、総合的審美感において本件意匠と同一で
あるから、(ニ)号物件の意匠は本件意匠の類似範囲に入る意匠である。
四 したがつて、被告は、(イ)ないし(ト)号物件を業として製造販売し、ある
いは製造販売していたことによつて、原告の本件意匠権を侵害するものである。
B 損害賠償請求
 被告が(イ)ないし(ト)号物件を製造販売することが原告の本件意匠権を侵害
する違法行為であることは前記のとおりである。
 そして、被告は、故意または過失により右侵害行為をなし(意匠法四〇条)、原
告は、これにより左記のとおり合計五七九九万五八七五円相当の損害を蒙つた。す
なわち、被告は、昭和五〇年四月一日から同五三年六月末までの間に、およそ次の
数量の(イ)ないし(ト)号物件を販売し、その売上高二億三一九八万三五〇〇円
の二割五分に相当する五七九九万五八七五円の利益を得ており、原告はこれと同額
と推定される損害を蒙つた(意匠法三九条一項)。
物件 販売期間 販売数量 単価(被告出値) 総額
(イ)号物件 五二・七・一~五三・六・末 三六、〇〇〇本 金一二五円 金
四、五〇〇、〇〇〇円
(ロ)号物件 五二・一・一~五三・六・末 九〇、〇〇〇本 金二二〇円 金一
九、八〇〇、〇〇〇円
(ハ)号物件 五一・一一・一~五三・六・末 三〇〇、〇〇〇本 金二八〇円 
金八四、〇〇〇、〇〇〇円
(ニ)号物件 五一・八・一~五三・六・末 一六一、〇〇〇本 金九五円 金一
五、二九五、〇〇〇円
(ホ)号物件 五〇・四・一~五二・六・末 五一、三〇〇本 金一二五円 金
六、四一二、五〇〇円
(ヘ)号物件 五〇・四・一~五一・一二・末 一〇〇、八〇〇本 金二二〇円 
金二二、一七六、〇〇〇円
(ト)号物件 五〇・四・一~五一・一〇・末 二八五、〇〇〇本 金二八〇円 
金七九、八〇〇、〇〇〇円
合計 一、〇二四、一〇〇本 金二三一、九八三、五〇〇円
C 本訴請求
 よつて、原告は被告に対し、被告が現に製造販売している(イ)ないし(ニ)号
物件についての製造販売の中止を求め、被告の本店、営業所、工場に存在する
(イ)ないし(ニ)号物件の完成品およびその半成品の廃棄と右製品製造用の成型
用金型の除却とを求め、かつ、前記損害金五七九九万五八七五円およびこれに対す
る被告への本訴状送達の日の翌日である昭和五三年七月二二日から支払ずみまで民
法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
第三 被告の答弁および主張
一 請求原因A一、二の事実、同三のうち〔一〕、〔二〕の事実(但し、〔二〕の
末尾の意見の点は除く)は認めるが、その余の同三の〔三〕ないし〔五〕、四、同
B、Cの各請求原因事実および主張はいずれも争う(但し、(イ)、(ハ)号物件
以外の物件の単価は認める)。
二 (イ)ないし(ト)号物件の各意匠は、いずれも本件意匠の類似範囲には入ら
ない。
〔一〕 本件意匠は、我々の日常生活に極めて密接し、その形状構成は別として
も、どの家庭にもいわば必需品として存在する物干具に関するものである。そし
て、物干具そのものは、明治以降のものに限つてもその公知公用された種類は実に
おびただしい数にのぼり、また実用新案や意匠として登録されているものの公報を
一瞥しただけで数百種類に及んでいる。
 そして、本件の如き物干具には、その用途からくる制約すなわち、ハンカチ、靴
下、手ぬぐい、おしめ等々の比較的小物の洗濯物を、出来るだけ狭い空間内で日光
照射や自然乾燥させるという目的のために、機能上欠くことの出来ない構成上の諸
要素がある。それは、まず、(イ)洗濯物を掛ける物干杆(使用時は放射状かつほ
ぼ水平に位置する)であり、さらに、(ロ)その物干杆およびそれに掛けてある使
用時の洗濯物を空間に保持するため、竿や柱などに固定されたくぎなどに吊す吊鉤
を有した吊杆、および、(ハ)物干杆と吊杆とを一体化して結合し、使用時には物
干杆が放射状に拡げられ、そうでない時には折畳みを可能とする基盤部分であり、
以上の(イ)(ロ)(ハ)の各構成要素は同種のどのような物干具にも共通であ
り、いわばその物品を成りたたしめる基本的構成である。
 しかして、このように従来から多数の同種製品が存し、基本的形状が公知であつ
てその用途機能から多くの制約をうける物品に関する意匠は、その共通の構成要素
のゆえに外形上も多くの共通性を有し、「革新的審美性」などなかなか持ちにくい
ものであり、これら共通の基本的形状以外の部分に、何ほどかの新規性、創作性が
加つて権利性を取得するものである。したがつて、その権利範囲を把握するにあた
つても、そのような前提に立つて当該意匠の新規性ないし創作性が究明されるべき
であり(この点については、物干具同様、家庭用品として各種各様のものが存する
ハンガーの意匠に関する東京地裁昭和四七年七月一七日判決無体集四巻二号四〇七
頁参照)、従来から公知であつた物品の用途機能から必然的制約を受ける要素を重
要視するのは誤りである。
 したがつて、本件意匠の権利範囲を正しく画定するためには、かなり数多くの公
知例との比較対照が必要であり、いくつかの公知意匠との比較により、本件意匠の
いかなる点に新規性、創作性があるかを究明し、しかる後にその範囲を更に確認す
るために、前記類似意匠を参照すべきである。この順序を誤つてはならない。
〔二〕 しかるところ、原告は、従来公知の物干具は吊杆、物干杆とも断面円形の
線状なもの、あるいは物干杆を平板な板状にしたものなどであるから、本件意匠の
特徴も、「吊杆物干杆とも断面円形の線状」のものとの比較に求められるべきとの
大前提に立ち、(イ)物干杆の断面I字形、(ロ)吊杆の断面十字形、(ハ)基盤
の逆椀状と中央部における突出短筒の形状および(二)これらのバランスにその審
美性が求められるとする。
 また、原告の右主張の裏づけとして原告が提出、援用する鑑定書(甲第一九号
証)も、従来の公知例では全部品がプラスチツクからなるものは存在せず公知例は
「何れも、吊杆および物干杆とも断面円形の線状体、または同細いプラスチツク被
覆線状体を用いている結果、看者に繊細な印象を与えているのに対し」として、本
件意匠は全部品がプラスチツク製の物干具に適するものとして創作されたものであ
り「その結果、物干杆を太いI字形、吊杆を太い十字形、物干杆と吊杆をつなぐ基
盤を大きく、厚い逆椀状に形成するといつた具体的形状」に特徴があり、そこにこ
そ本件意匠保護の対象があると力説する。
 しかしながら、右の従来の公知例では物干杆や吊杆の断面の形状が丸棒や平板な
板状であり全部品をプラスチツク製としたものは存しなかつたとの前提が誤りであ
ることは、
(イ)昭和四八年実用新案出願公告第八一八八号(昭和四八年三月三日公告)公報
(乙第一号証。なお、右考案は昭和四二年一二月二二日に出願されたものであり、
その考案にかかる物干具が本件意匠の出願前である昭和四三、四年中に現実に製造
販売されていたことについては乙第二号証の証明書および検乙第一号証の物干具参
照)、および、(ロ)昭和五〇年実用新案出願公告第一七号(昭和五〇年一月六日
公告)公報(乙第三号証。なお、右考案は昭和四四年九月三日に出願されたもので
あり、その考案にかかる物干具が前同様昭和四三、四年中に現実に製造販売されて
いたことについては乙第八号証の証明書および検乙第二号証参照)によつて明らか
である。
 すなわち、右(イ)の公報には「細長い棒杆を少し柔軟性を保有せしめる合成樹
脂で成型すると共にその断面をT字状、H字状等に形成し」として、物干杆や吊杆
の断面がI字形やT字形にした形状が存在することが示されており、また、右
(ロ)の公報の二頁第一図には物干杆の断面形状が本件意匠のそれと同様のI字形
の物干具が図示されている。したがつて、従前公知の物干具の物干杆や吊杆の断面
形状が丸棒や平面板状のものであつたという原告の前記主張が誤りであることは明
らかである。しかも、右各公報では「本案品をオールプラスチツク製にしたから」
(乙第一号証一頁右欄二行)とか「各部材は全て弾力性のよい合成樹脂を使用して
あるから」(乙第三号証一頁右欄三四ないし三五行)とかマテリアルとしてのプラ
スチツク製たることが明記されているから、前記鑑定書が強調する「プラスチツク
製の物干具に適した形状」を本件意匠の新規性、創作性の中心に置くことが誤りで
あることは明白である(しかも遡つては本件意匠の解釈にその材質を特定すること
も基本的な誤りである)。したがつて、かかるプラスチツク製の形状としての太い
I字形の物干杆や太い十字形の吊杆、大きく厚い逆椀状の基盤、それらの組合せに
よつて得られる見る者に対する目立つた部分を本件意匠の要部とする原告の主張が
的はずれであることは明らかである。
 結局、本件意匠の新規性や創作性は、このような大雑把な捉え方ではなく、より
厳密な細かい部分において究明されるべきである。
〔三〕 そして、物干具のような全体的な構成がその機能上必然的に類似してくる
ような物品の場合、その物の部分的な形状の差異によつて全体としての意匠も異つ
てくるとみるべきことは、本件意匠の出願人が本件意匠の出願手続において自から
主張していたところである。すなわち、本件意匠の出願一件記録によると、本件意
匠の出願人は、意匠登録第一五六九四三号の意匠公報(乙第六号証)の図面を引用
して本件意匠は出願前に国内に頒布された刊行物に記載されたものと類似であり意
匠法三条一項三号に該当するとして拒絶理由通知を受けた(乙第四号証)のに対
し、次のように主張している。「支持体を放射状に突設し、これを折り畳み可能に
した物干器が極めてありふれたものであることは、ここで挙証するまでもなく明ら
かなところであります。これは甲(右引用意匠)の出願前の古くからのものである
と確信をします」「したがつて、甲(右引用意匠)においても、その当時その各
部、例えば、取付部にだるま状に2個の球体を取り付けるなどの点における意匠の
創作により全体的に新規なものとして認められたものであると思料します」「すな
わち、全体的な構成が類似するとしてもそれがその物品における基本的な形状とし
て一般的になつている物の場合においては、その物の部分的な形状の差異によつて
新規な意匠となりうるものであると確信します」と述べ、引用意匠が取付部(基盤
部)の下側に二個の球体をだるま状に取りつけているのに対し、本件意匠は中心部
に筒状の突出部を突設している相違点を強調し、また、「引掛棒(吊杆)において
も、甲(右引用意匠)は丸棒でその鉤部が単なる円形であるのに対して、乙(本件
意匠)は断面十字形の棒で鉤部においても中心部に膨出部(ロープ掛部)を有する
の差異がある」と主張していたものであり、本件意匠の類似範囲も右の如き見地か
ら検討されるべきである。
 前述のとおり、物干具はありふれた物品であり、その使用上の制約からくる形状
的な制約があるため、新規性、創作性といつても、原告主張の如き革新的審美性な
どを持つことは到底無理である。物干具の如き日常用品に関する意匠権は極めて僅
かな目先の差によつて与えられていることが銘記されるべきである。
〔四〕 以上公知意匠の存在、前記引用意匠との差異および右出願経過における経
緯等の諸要素を総合的に判断すれば、本件意匠において新規性、創作性があるとい
える部分は、(イ)吊杆は上端の吊鉤部を除いて断面十字形であり、上端吊鉤部と
の境界に断面円形のリブが設けられていること、(ロ)基盤の下面は円盤状の底蓋
で塞がれ、同心の二重の条溝が形成され内側のそれは外側に比較してやや幅が広い
こと、(ハ)吊鉤は円形でその頂部に外方へ突出するロープ掛け部が一個形成され
ていること、以上の点である。
〔五〕 そこで、以下、本件意匠と(イ)ないし(ト)号物件の意匠の類否を検討
するが、対象物件が権利意匠に類似するか否かを判断する際には、(1)その対象
物件が権利意匠の持つ新規性、創作性ある特徴部分の必須構成要素を具備している
か否かという観点と、(2)一般需要者からみて商品の混同がみられるか否かとい
う実際的な観点からの対比判断がなされるべきである。
 そして、右(1)の観点からみる場合に留意しなければならないのは、この場合
に実用新案的な考察を意匠の解釈に持ち込むことが筋違いだということである。例
えば、本件の如き物干具において、権利意匠と対象物件の双方に同一の機能を果す
吊鉤やロープ掛があり、あるいは吊杆にリブが設けられているからといつて、直ち
に意匠的にも同じだということにはならない。何故なら、機能的にみて同一であつ
ても、その形成個所や形状、その大小、個数によつて意匠的感覚は大きく異つてく
るからである。その意味で吊鉤部の形状やロープ掛けの取付位置と形状、あるいは
吊杆の長さが長いか短いかは全体的なバランスの中で極めて意匠的に重要である
し、リブについてもその有無と数の多少やその位置と間隔はこれまた意匠的にみて
極めて重要である。リブの如きは実用新案的にみて補強の必要からつけられること
もあろうし、また意匠的な観点から単純にアクセサリー的な意図で設けられること
もあろうが、意匠的にみた場合、それが実用新案的な意味でどのような機能を果し
ているかどうかは問題にならない。それが意匠的にどのような役割、意味を持つか
が問題であり、この観点から検討されねばならない。
 また、右(2)の観点からみた場合、本件の如き物干具において一般需要者が類
否判断をするのは、一つにはスーパー等の店頭で陳列、展示されている選択の場に
おいてであり、一つには実際に使用している使用の場においてである。
 そして、右店頭展示の場合、本件の如き物干具は折り畳まれビニール袋に入れら
れて積まれているのが通常であるが、ビニール袋はセロテープ等で閉じられている
ので特別の場合以外は顧客はそのままの折り畳まれた状態で商品を選び購入する。
そして、この状態では物品はビニール袋の宣伝用文字や写真、あるいは同趣旨の包
装用の紙にくるまれていて、吊杆や物干杆、その付属物はほとんど目立たない。そ
の時点で最も目につき易いのは底面の部分である。その販売時点では、需要者の購
入意欲にかかわり選択を決定づけるのは底面部分の意匠であり、類似判断上この部
分の意匠が重視されなければならない。
 次に、使用時において目立つ個所といえば吊杆である。物干杆は洗濯物が掛けら
れていて露出する部分が少ないからあまり目立たない。そして、吊杆のなかでもそ
の直線棒状部分(以下、本体ともいう)の形状はよほど近寄らない限り、すなわ
ち、遠隔観察によれば断面が角状か円形かはたまた三角形か十字形かY字形等かは
さほど目立たない。決定的に目立つのは吊鉤部分の形状であり、その附近に設けら
れているロープ掛け等の形状と構成である。したがつて、この部分の意匠の異同
も、全体としての意匠の類否を決するうえで、重要な意味をもつといわなければな
らない。
 しかるところ、従来の公知意匠との対比において、本件意匠の特徴が、(イ)吊
杆の断面の形状が十字形であつて、その上端吊鉤部との境界にリブが設けられてい
ること、(ロ)基盤の下面が円盤状の底蓋で塞がれ、同心の二重の条溝が形成され
その内側のそれは外側に比較してやや幅が広いこと、(ハ)吊鉤は円形で、その頂
部に外方へ突出するロープ掛け部が形成されていることの三点に集約されることは
前記のとおりであり、まさに、その底面部分と吊鉤部分が実際的にも最も目立つ部
分であることは右に述べたとおりである。
 そこで、まず右部分を中心として概括的に(イ)ないし(ト)号物件の意匠をみ
ておくと、右被告製品は基盤底面に底蓋がない点で本件意匠とは大きく異つてい
る。すなわち、被告製品には底蓋がないから中の枢支機構がそのまま露出して見ら
れ、かつ、逆吊用フツクが曲げられた状態で底面上にのせられている。被告製品で
は、底面の中心にフツクを挿通する穴を設けた板状突出部を形成した円錐状の突出
があり、これを基部として物干杆の数に応じて一〇ないし二〇の放射状の突出条が
外周縁に向つて形成され、さらに、各条はそれぞれ二本の突出条に枝分かれして底
面の外周縁に至りこれとの間で三角形の空間を作つている。突出条が二条に枝分か
れする個所から外周へは他側面は各条間に長方形の空間が作られ、その内側にほぼ
十字形の、外側にはほぼT字形の物干杆の基盤側先端の突出子が一〇ないし二〇個
したがつて合計二〇個ないし四〇個配列されている。このため、被告製品では、こ
れらの多数の規則正しい突出条や突出子によつて花弁状の複雑な形状となつてい
る。
 また、被告製品の吊鉤部の形状は前記物件目録記載のとおりであり、その頂部に
は本件意匠のロープ掛け部のような特異な形状はない。被告製品の吊鉤部には、な
めらかな流れ感があり、本件意匠の如くにロープ掛けが頂部辺に突出することによ
る取つてつけたような異和感がない。被告製品では、吊鉤部の先端がU字形に形成
され、吊鉤部の下端より僅かに下つた位置に左右一対のほぼS字形のロープ掛けが
形成されている。この一対のほぼS字状のロープ掛けの存在が全体に上品さ、洗練
された感じ、スマートなあか抜けした感じを与えている。
 次に、(イ)ないし(ト)号各物件ごとにその意匠を本件意匠と対比してみる
と、次のとおりである。
(1) (イ)号物件について
 (イ)号物件は、吊杆の本体の断面が十字形である点および吊鉤が一部を欠いた
ほぼ円形である点で、本件意匠と共通するが、その他の点では本件意匠と大きく異
る。
 まず、基盤の下面は底蓋で塞がれていないで内部構造が露出されるとともに、中
央下方への突出する突起とその下面の逆吊用フツクが吊下げられている点で大きく
相違する。
 また、吊鉤部の先端にほぼU字形のアクセサリーが付加され、吊鉤部の下端より
僅かに下つた位置に設けられた左右一対のほぼS字状のロープ掛けが設けられてい
る点が際立つて相違するのみならず、本件意匠の一つの特色といえる頂部での外方
へ突出するロープ掛け部を欠いている。
 さらに、(イ)号物件の吊杆は、その吊鉤部との境界部付近と中央部、基部の三
か所にリブを具えており、右境界部付近一か所だけにリブを設けた本件意匠と異つ
ている。
 これらの相違点により、(イ)号物件は本件意匠にない「洗練さ」「なめらかな
感じ」を有しており、本件意匠とは全体として意匠的審美感を異にしている。
(2) (ロ)、(ハ)号物件について
 (ロ)号物件と(ハ)号物件とは、物干杆の本数に差があるが本件意匠に対応す
る構成は両者共通であるから、一括して本件意匠と比較するに、右両物件の本件意
匠との差は、(イ)号物件におけるよりさらに顕著である。
 まず、本件意匠の吊杆が断面十字形であるのに対し、(ロ)、(ハ)号物件の吊
杆は断面Y字形であるとともに、途中に四個のリブが形成されている点で大きく相
違している。
 またその基盤下面には底蓋がなく内部構造が露出しているし、本件意匠の出願手
続の際にその一事をもつてしても創作性に差異が出てくるとされた基盤下面に吊さ
れた球体に相当するものとして、下面の中央下方へ突出する突起とその下側の逆吊
用フツクが設けられており、この点の相違は大きい。
 そして、本件意匠では吊鉤が円形であるのに対して、(ロ)、(ハ)号物件では
上下に長いほぼ長円形でしかもその先端がU字形に形成されている。また、本件意
匠では、頂部に外方へ突出するロープ掛が一個形成されているが、(ロ)、(ハ)
号物件にはこれがなく、吊鉤部の下端よりさらに少し下つた位置に外方へ突出るロ
ープ掛が左右一対形成されている。
 要するに、(ロ)、(ハ)号物件は本件意匠の特徴ある各構成を全く欠くかこれ
と相違する構成しか有していないのである。
 その結果、使用時において最も注目を惹く吊杆において(物干杆は洗濯物で覆れ
るからあまり目立たない)、本意匠では吊鉤が円形であるうえにその頂部近辺で外
方へ突出したロープ掛があるためいわば「せせこましい感じ」を与え「なめらかな
流れ感」に欠ける。また、類似意匠にみられるロープ掛の突出は、いかにも「取つ
てつけた感じ」であるのに対して、(ロ)、(ハ)号物件では吊鉤が長円形であり
かつ先端がほぼU字形に形成されているから、それだけ外周部も長くなり、しかも
正背面は吊鉤部の幅が吊杆部より広くなつて「のびのびした感じ」「なめらかな感
じ」を与えている。そして、吊杆本体は適当な間隔をもつて設けられた四個のリブ
の存在により単調感が破られ、これに加えて上方の左右に形成された一対のほぼS
字状のロープ掛部の形状(これも単なる円形ではなく、その先端が外方に滑らかに
若干突出させている細かい配慮がある)によつて安定感と「上品さ」が加わつてい
る。さらに、前述のとおり吊鉤部の正面背面部が吊杆部より若干幅が広くなつてい
ることが吊杆部をそれだけスマートなものにしている。
 以上のとおり、本件意匠がいわゆる「荒らけずり」で「泥くさい」のに対し、
(ロ)、(ハ)号物件は「なめらかな流れ感」と「安定感」「上品さ」「スマート
さ」を有しており、いわゆる審美感、意匠的趣味感において大きな差異のあること
が明白に感じられる。
(3) (ニ)号物件について
 (ニ)号物件は、吊杆部が断面十字形である点は本件意匠と同一であるが、途中
に三個のリブが形成されている点で相違し、また、基盤下面は(ロ)、(ハ)号物
件の場合と全く同様である。そして、吊鉤部も(ロ)、(ハ)号物件とほぼ同一で
あつて(但し(ロ)、(ハ)号物件では正面図、背面図で吊鉤部の幅が若干吊杆部
より広いのに対して、(ニ)号物件では吊杆部とほぼ同じかやや狭い)、「のびの
びした感じ」を有しているが、吊杆部に比して吊鉤部の占める縦方向の長さの割合
が(ロ)、(ハ)号物件より大きいためやや「頭でつかち」の感を与える。しか
し、それだけ安定感があることにもなり、さらに吊杆部のリブや吊鉤部の下端より
相当下つた位置に外方へ突出するロープ掛部の一対の存在がこれまた本件意匠には
ない「上品さ」と手の込んだ形状という感じを与え、特に安定感を与えている。
(4) (ホ)、(ヘ)、(ト)号物件について
 (ホ)、(ヘ)、(ト)号物件の吊杆本体の断面が十字形である点は本件意匠と
同一である。
 しかし、右各号物件の基盤の下面は、内部構造が露出されるとともに中央下方へ
の突出する突起とその下面の逆吊用フツクの存在することで本件意匠と著しく相違
する。吊鉤は一部を欠いたほぼ円形である点は本件意匠と同一であるが、(ホ)、
(ヘ)、(ト)号物件の先端にほぼU字形のアクセサリーが付加され、また、吊鉤
部の下端より僅かに下つた位置に左右一対のほぼS字状のロープ掛けが設けられて
いることが、吊鉤部の頂部に外方へ突出するロープ掛け部を有する本件意匠とは異
なる審美感をもたらしている。右各号物件には、本件意匠にはない「洗練さ」「な
めらかな感じ」がある(なお、右各号物件相互間では物干杆の数が相違するだけで
ある)。
〔六〕 以上にみたとおり、本件意匠は、物干具というありふれた日用品に関する
意匠であつて、部分的な細部での新規性に対して与えられた権利であり、「日用品
は比較的類似の幅が狭い」といわれているとおり類似範囲の狭いものである。
 もし、原告主張のように、本件意匠の特徴を「吊杆、物干杆が太くかつほぼ同じ
長さであることに基づき基盤がそれらに対応するように大きなものとされて、右の
単位要部が全体として良く調和のとれた形で配列されている」ことにあるというよ
うな抽象的な捉え方をすると、本件意匠とは別に別紙後願意匠目録(一)ないし
(五)記載の各意匠が登録されていること(乙第一一号証の一、二、第一五ないし
第一八号証参照)を理解し得なくなるであろう。例えば、同目録(ニ)記載のもの
(乙第一五号証)は、その吊鉤部に特色があるからこそ別個の意匠として、権利付
与を受けているのであり、もし、原告のような見方からすれば、それは本件意匠の
類似意匠になることはあつても、別個の独立した意匠になることはない筈である。
その他の意匠もそれぞれ細部の特色により独立の権利として登録されているもので
ある。
 原告としては、本件意匠の創作者が出願時に意見書で述べたとおり、日用品にお
いては「その物の部分的な形状の差異によつて新規な意匠となりうる」ことを想起
すべきであるし、その権利範囲も「その部分的な形状の差異」に限定されることを
考えるべきである。
三 もし、万一、(イ)ないし(ト)号物件の意匠が本件意匠に類似し、これを業
として製造販売することが本件意匠権を侵害することになるとしても、被告はこれ
につき無過失であり、そうでなくとも原告による損害賠償請求は信義則上許さるべ
きでない。
〔一〕 すなわち、本件意匠の登録出願がなされたのは昭和四五年二月七日である
が、原告は、それより以前の昭和四四年一二月から「エンゼルA二〇」と称する物
干具を発売しており、本件意匠は、右商品の意匠に類似するものであつたから、本
来登録を許されないものであり、例え登録されても無効事由を内在し、少くとも原
告は、右権利の出願人である訴外株式会社ダイキンに対し、先使用権を主張し得る
立場にあつた。
 ところが、原告は、右出願に対しこれを争わず右権利を譲受ける方針をとつて同
社と交渉し、昭和四九年七月には原告において右権利を譲受けることが確実に見込
まれる状況になつていた。
 そこで、被告は、昭和四九年七月「サンドライ」旧型(本件(ホ)、(ヘ)、
(ト)号物件)を製造発売するにあたり原告の立場を尊重し、同月一七日原告との
間で、原告の販売上の有利な立場を是認しそのうえで公正な競業をなし共存共栄を
図つていく旨の誓約書(乙第一〇号証)を取交わした。すなわち、右時点で、原告
が本件意匠の出願前から商品名「エンゼルA二〇」という本件意匠の範囲に属する
意匠の実施を行い先使用権を有すること、そして本件意匠が実質的に公知公用のた
め無効であることは共通の認識であり、右誓約書を原、被告間で交わすにあたつて
特に原告が強調したところである。だからこそ、被告は右誓約書において「(甲)
(原告)の「エンゼルA二〇」が実願並に意匠の先願により以後此の両製品に付い
ては(甲)の主権を認めた」のである。ここでの先願とは先使用の意味である。
 被告としては、右商品の意匠が本件意匠権を侵害すると考えて右の如き誓約書を
取交わしたのではない。むしろ、被告は、慎重に原告の意向を確認してその立場を
尊重し、原告も被告の右商品の販売を是認して、右誓約書を取交わしたものであ
る。
 右のとおり、被告は、右商品を販売することは何ら本件意匠権を侵害するもので
はないと信じてこれを行つたものであり、そう信ずるについて善意かつ無過失であ
つた。
〔二〕 ところが、その後、原告が実施料支払いの話を持出してきたので、被告に
おいて、当時いまだ本件意匠の権利者でない原告にこれを支払う義務がないとして
これを拒否し物別れとなつていたところ、本件意匠権を譲受けた原告が本件意匠権
の侵害を主張し、損害賠償請求をなすに至つたのであるが、原告の右一連の所為は
極めて不信義かつ被告をおとし入れる性格のものであるといわねばならない。
 したがつて、万一、無過失でないとしても、原告において損害賠償請求権を行使
することは信義則上許されないというべきである。
四 損害算定に関する原告の主張も不当である。
〔一〕 まず、原告のいう売上額の二五パーセントという利益率は常識外の主張で
ある。本件のような物品においてそのような高率の利益があがることは絶対にな
く、製造原価(下請けよりの仕入値)と売り値の差額は一本当り一〇円から三・四
〇円であり、この粗利益から運送荷造り、宣伝広告、人件費、その他の諸々の諸経
費を差引くと純利益率は数パーセントにとどまるのが通常である。損害額一般に関
連して当事者間で示談し、実施料をもつて損害額と扱う場合でも五パーセントを上
限として算出しているのが普通であり、裁判上の和解においてもしばしば見られる
ところである。また、国がこの種権利についての実施料を算出する場合の算出基準
も二ないし四パーセントとされている(東京地裁昭和四七年五月二二日判決無体集
四巻一号二九四頁参照)。
〔二〕 ちなみに、原告主張の期間に対応して(イ)ないし(ト)号物件の取扱数
量を明らかにすると、次のとおりである。
物件 販売期間 販売数量 単価
イ号 五二・七・一~五三・六・末 二二、〇〇〇本 一二〇~一二五円
ロ号 五二・七・一~五三・六・末 五七、〇〇〇本 二二〇円
ハ号 五一・一一・一~五三・六・末 二七〇、〇〇〇本 二六〇円
ニ号 五一・八・一~五三・六・末 八一、〇〇〇本 九五円
ホ号 五〇・四・一~五〇・八・末 一〇、〇〇〇本 一二五円
ヘ号 五〇・四・一~五〇・八・末 一九、〇〇〇本 二二〇円
ト号 五〇・四・一~五〇・八・末 四〇、〇〇〇本 二八〇円
五 しかして、仮に前記無責の主張が認められないとしても、被告には故意または
重過失は存しないから、損害額算定にあたつて意匠法三九条三項が適用され充分減
額されるべきである。
第四 原告の反論
一 被告の意匠の類否に関する主張には一般論として首肯すべき点もあるが、本件
意匠と被告製品の意匠に関していえば誤りである。
〔一〕 まず、被告が本件意匠出願前の公知資料であるという公報は、いずれも本
件匠意の出願後に発行されたものであり、それ自体公知資料になるものではない。
そして、被告が第三の二の〔二〕で挙げる(イ)の公報(乙第一号証)には吊杆や
物干杆の断面形状をT字状、H字状にすると記載してあるだけでその形状が具体的
に図示されている訳でもない。
 まして、右同(イ)、(ロ)の公報(乙第一号証、第三号証)に記載の如き物干
具が本件意匠の出願前にすでに製造販売されていたというのは全く事実に反する主
張である。原告は、いわゆる物干具類を昭和三〇年頃から製造販売している大手の
メーカーであるが、そのようなオールプラスチツク製の物干具が被告主張の頃に販
売された事実は承知していない。
〔二〕 被告は、物干具のような日用品の意匠にあつてはその類似の幅が狭い旨強
調するが、被告の右主張が妥当するのは見易く目立ち易い基本的な構成部分につい
て公知意匠が存在する場合である。そのような場合であれば、他の僅かな部分であ
つてもそれが特異な形状であれば、全体として別個の意匠として評価されるであろ
うが、そうではなくて、右の如き目立ち易い基本的な構成において新規な意匠が出
現すれば、例え日用品であろうとその類似の幅は相当広く考えられなければならな
い。教科書にも「日用品でも非常に特異な意匠、すなわち、同種類の物品にかつて
想像もしなかつたような新しい意匠が出れば、その類似の幅は相当広く考えなけれ
ばならないのである。」と記載されているとおりである。
 また、本件意匠の出願人も、物干具のようなものについては常にその物の部分的
な形状の差異によつて新規な意匠となり得るといつているのではない。右出願人は
その出願手続において、「全体的な構成が類似するとしてもそれがその物品におけ
る基本的な形状として一般的になつている物の場合においては、…」との前提をお
き、その場合にはその物の部分的な形状の差異によつて従前の意匠と別個の意匠と
なり得るといつているのである。
 しかるところ、本件意匠の吊杆、物干杆、基盤の形状は、当時の公知資料に照す
とき、まさに「想像もしなかつた新しい意匠」であつた。本件意匠の吊杆、物干
杆、基盤の形状は、プラスチツクの成型技術の乏しかつた時代においては想像もで
きなかつた形状であり、プラスチツク成型技術が一段と進歩した昭和四五年以降に
おいてやつと開発されるに至つたのである。本件意匠の前記形状が従来のものに比
べて極めて特異なものであつたことは、本件意匠の実施相当品を商品化して販売し
たとき得意先より傘のおばけのようだとの批判を受けたことによつても明らかであ
る。
〔三〕 また、被告は、本件のような物干具の意匠において実際に目立つのは、販
売購入時においては底部、使用時では吊杆特にその吊鉤部であり、そこが本件意匠
の要部であるというが、これも誤りである。
 まず、販売時における姿についていえば、販売店においては包装を解いた見本品
が展示されているのが普通である。
これは消費者に対し商品の全部を見せることによつて、使用時における全体の姿を
確認しその全体の意匠を知つて貰うためである。したがつて、販売時においても底
部のみが目立ち一般需要者が底部の意匠を見ただけで他の商品と区別し購入すると
いうようなことはあり得ない。
 また、被告は、使用時の姿として洗濯物を掛けた状態での意匠を問題にしている
が、物干具を買つて帰りそれに洗濯物を掛けたうえではじめてその物干具の形状、
意匠を認識する消費者はいない。遅くとも物干具を拡げた瞬間にこれを認識、区別
するのであるから、洗濯物を掛けた状態で意匠を問題にする被告の主張はその立論
の前提において誤つている。
 そして、被告の上記の如き強弁が通用しないことは、被告自身その商品を販売す
るにあたつて、そのカタログ、パンフレツトの類に、底部や吊鉤部のみを強調した
写真を使わず、物干具全体の展開図を示していることからも明らかである。もし、
被告のいうように底部と吊鉤部分に最大のポイントがあるならば、この部分を強く
印象づける写真を載せるべきであるのにこれをしていないのである。
〔四〕 さらに、被告は、後願意匠の登録を云々するが、別紙後願意匠目録記載
(二)、(三)の各意匠(乙第一五、第一六号証参照)は原告の出願にかかるもの
であるが、それが本件意匠と別意匠と評価されたのは、被告のいうような細部にお
いて特色があるためではなく、吊杆、物干杆、基盤以外の部分において従来存在し
なかつた特異な形状が現わされ、このために本件意匠とは別個の意匠と判断される
に至つたからであり、同目録記載のその他の後願意匠についても、吊杆、物干杆の
形状が本件意匠のものと異なるものであるから、別個の意匠と判断されて然るべき
であろう。いずれにせよ、これらは本訴訟において何ら考慮されるべきものではな
い。
二 被告主張の誓約書(乙第一〇号証)を取交わしたのは事実であるが、それは被
告主張の如く、原告が昭和四四年一二月から既に「エンゼルA二〇」なる商品を販
売しており、本件意匠に関し先使用権を主張し得るような状況の下で、原告におい
てこれを主張して取交わしたものではない。
〔一〕 原告が「エンゼルA二〇」なる商品を販売し始めたのは昭和四六年春以降
のことであり、右誓約書に昭和四四年一二月から発売したように記載してあるの
は、その種商品の開発研究をその頃から開始していたことと混同したために生じた
誤記である。そして、それが誤記であり右商品が発売されたのが昭和四六年になつ
てからであることは、右商品の取扱業者がこれを証明している(甲第二〇号証ない
し第三一号証参照)し、昭和四七年四月一一日付家庭日用品新聞(甲第三二号証の
一、二)で右商品が「昨年新発売した」商品として紹介されていることからも明ら
かである。
〔二〕 しかして、右誓約書は次のような事情で取交わされたものである。すなわ
ち、原告は、昭和四六年春から物干杆が一〇本の「エンゼルA一〇」なる商品を発
売し、次いで、物干杆が二〇本の「エンゼルA二〇」の製造販売を開始したのであ
るが、これに先立ち右商品の意匠および構造について意匠登録出願、実用新案登録
出願をなしていた。
 ところが、右出願がいまだ登録になつておらず権利化されていない昭和四九年七
月の時点で、被告が右商品に類似する「サンドライ」なる商品を発売する状況にな
つた。そこで、原告は、法的な権利によつてはいまだその製造中止を求めることは
できなかつたが、原、被告双方が加入している大阪日用品工業会(同業者間の任意
団体)の内規に従い、被告に対し、右製品の製造販売を中止するよう求めたのであ
る(大阪日用品工業会においては、同業者間において同じような商品を作つてトラ
ブルが発生するのを防止する目的で、会員の中で新製品を最初に商品化した会員を
尊重する建前から、他の会員はこれを模倣しない、新製品には大阪日用品工業会の
推薦品の認定マークをつけて、他の会員の模倣を防止しようという内規があつたの
である)。
 ところが、被告がすぐには右申入れに応じなかつたため、同会の会長【A】の仲
介をうけることになつたが、右仲介の結果取交わされたのが前記誓約書であり、そ
こでは原告が実用新案登録、意匠登録の各出願を先になしているのであるから、
「エンゼルA二〇」については、大阪日用品工業会の内規の適用を受けるものであ
ることを原、被告両名が認め、大阪日用品工業会推薦の認定マークは、原告の「エ
ンゼルA二〇」について貼付されることになつたのである。
 右のとおりでああるから、右誓約書の存在は、何ら被告の無過失を証し原告の損
害賠償請求の不当なことを裏づけるものではなく、むしろ、被告の過失を推認させ
るものである。被告の主張は失当である。
第五 証拠(省略)
       理   由
第一 差止請求について
一 請求原因A一の事実(原告が本件意匠の意匠権者であり、本件意匠に類似意匠
(1)ないし(5)が付帯していること)および同二の事実(被告が業として
(イ)ないし(ニ)号物件を現に製造販売し、かつて(ホ)ないし(ト)号物件を
製造販売していたこと)については当事者間に争いがない。
二 しかるところ、原告は、(イ)ないし(ト)号物件の意匠は本件意匠に類似す
る旨主張するので検討する。
 (イ)ないし(ト)号物件が本件意匠に係る物品と同じ「物干し器具」であるこ
とについては争いがないから、以下、専らその意匠の類否について考える。
〔一〕 本件意匠の構成
 本件意匠の構成が原告主張の如く分説し得るものであることについては当事者間
に争いがない。
〔二〕 本件意匠の特徴把握のための参考資料
(一) 本件意匠に原告主張の類似意匠(1)ないし(5)が付帯していることは
前示のとおりであり、右類似意匠の構成を本件意匠の構成と対応させてその共通
点、相違点をみると、原告主張の如く指摘し得るものであることについても当事者
間に争いがない。
(二) いずれも成立につき争いのない甲第一九号証と乙第九号証によると、次の
各意匠が本件意匠の出願前公知であつたと認められる。
(1) 昭和三四年一二月一〇日登録第一五六九四三号(同三五年一〇月四日公報
発行)の折畳式物干器の意匠(別紙公知意匠図(1)記載のとおり)。
(2) 昭和三四年一月三〇日登録第一四六五〇七号(同三四年七月三一日公報発
行)の物干具の意匠(右同図(2)記載のとおり)。
(3) 昭和三五年一一月一五日登録第一六八六四五号(同三六年八月二二日公報
発行)の物干具の意匠(右同図(3)記載のとおり)。
(4) 昭和三四年三月三日登録第一四七六五二号(同三四年九月一一日公報発
行)の物干器の意匠(右同図(4)記載のとおり)。
(5) 昭和三四年一二月一〇日登録第一五六八〇六号(同三五年九月二〇日公報
発行)の物干具の意匠(右同図(5)記載のとおり)。
(6) 昭和四二年実用新案出願公告第五五五八号公報(昭和四二年三月二〇日公
告)第二頁第1図記載の洗濯物干の意匠(右同図(6)記載のとおり)。
(7) 昭和四三年実用新案出願公告第一九〇〇五号公報(昭和四三年八月七日公
告)第二頁第1図、第三頁第4図記載の物干器の意匠(右同図(7)記載のとお
り)。
(8) 昭和三七年八月一一日登録第一七二五九三号(同三八年四月二六日公報発
行)の物干器の意匠(右同図(8)記載のとおり)。
(三) 被告は、(イ)昭和四八年実用新案出願公告第八一八八号公報、および、
(ロ)昭和五〇年実用新案出願公告第一七号公報の考案にかかる物干具は、本件意
匠の出願前既に実施され右公報に記載された意匠は、出願前公知となつていた旨主
張するので、この点について検討する。
 しかるところ、成立に争いのない乙第一号証(右(イ)の公報)、第三号証(右
(ロ)の公報)、証人【B】の証言により成立を認むべき乙第二号証、第八号証お
よび右証人の証言によると、右(イ)の実用新案にかかる物干器具についてその考
案者(【C】、新潟県燕市居住)が右公報に記載の物干器具と同一の物干器具を日
本国内において昭和四三年一月一〇日から同四五年一月三一日までの間に約一〇〇
万個製造販売した旨証明し(乙第二号証)、右(ロ)の実用新案についてもその考
案者(【D】、同市居住)が右公報に記載の物干器具と同一の物干器具を日本国内
において昭和四五年五月二日から同四四年一月三〇日までに約一五〇〇個製造した
旨証明していること(乙第八号証)が認められる。
 しかしながら、一方、右乙第二号証に関していえば、原告代表者本人尋問の結果
により成立を認むべき甲第二〇号証によると、新潟市内で日用雑貨品の卸問屋を営
む株式会社佐々木商会において、右(イ)の公報に記載の如き物干具を、昭和四三
年ないし同四五年の間に取扱つたことはないし新潟県市内で販売されたことは知ら
ない旨証明していることが認められ、もし右物干器具が前掲乙第二号証に記載され
ているように一〇〇万個も製造販売されたのが事実であるとすれば、例え同一市内
でないにせよ近接市にある同種商品の取扱い業者(卸問屋)が全くこれを承知して
いないのはいささか不自然であると思われるし(もつとも、前掲甲第二〇号証の記
載内容が事実に反するものであることが明らかにされれば別論であるが、そのよう
なことを窺わせる資料は存しない)、他に右製造販売の事実を具体的に裏づける資
料も存しないことからすれば、右乙第二号証の記載をそのまま採用することには躊
躇せざるを得ない(なお、仮に被告のいうところに従い、右物干具すなわち検乙第
一号証の物干具が本件意匠の出願前公知であつたとしても、その形状からみれば本
件意匠が右物干具の意匠と同一ないし類似といえるかどうか疑問である点について
は後に判示の〔三〕の(二)の(2)参照)。
 また、乙第八号証に関しても右甲第二〇号証や原告代表者本人尋問の結果により
成立を認むべき甲第二一号証、第二二号証では、新潟市内で日用雑貨品の卸問屋を
営む務式会社紫竹屋および株式会社佐々木商店において、右(ロ)の公報記載の如
き物干具を右乙第八号証記載の期間中に取扱つたことはなく見たこともない旨証明
しているのみならず、そもそも乙第八号証によつても一五〇〇本を製造したという
のみでこれを現実に販売したのかどうかは明らかでなく、右販売の事実を具体的に
裏づける証拠はない。
 そうすると、右乙第八号証の記載のみでは被告主張の公知事実を認定し難いとい
わざるを得ない。
 そして、被告提出にかかる検乙第一、第二号証が被告主張の時期に製造販売され
たものであることを証する証拠はない(かえつて、前提【B】証人自身検乙第二号
証を実際にいつ造つたのかは聞いていない旨証言している点参照)。
 そうすると、被告主張の右各意匠が本件意匠の出願前公知であつたとは断じ難
く、被告の主張は採用できない。
〔三〕 そこで、以下、右認定事実に照らし本件意匠の要部ないし特徴を考え、そ
が類似範囲について検討する。
(一) まず、登録意匠の要部ないし特徴を把握しあるいはその類似範囲を画定す
るにあたつて、当該登録意匠出願前にその分野に属する公知意匠が存した場合に
は、これを参酌してその類似範囲を決定すべきことは被告主張のとおりである。
 また、登録意匠に類似意匠が付帯している場合、類似意匠は本意匠の類似範囲を
明確ならしめるための有力な資料であるから、これを参酌すべきこともいうまでも
ない(但し、対比意匠との類否はあくまで本意匠との比較によつて決すべきことは
もちろんである)。ただ、類似意匠を参考にする場合でも、当該本意匠または類似
意匠が公知意匠との関係で創作性の程度が相対的に低いことが明らかになれば、そ
のことも考慮に入れたうえで参考資料とすべきである。すなわち、公知意匠の内容
如何によつては類似意匠を参考にして定められる類似の範囲も相応に限定されなけ
ればならない。その意味で被告がまず公知意匠との比較により当該本意匠がいかな
る点に新規性、創作性があるかを究明し、しかる後に類似意匠を参照すべきである
というのは正当である。
(二) しかして、一つの意匠の要部ないし特徴がどこにあるかをみる場合、公知
意匠にない新規な部分であつて見る者の注意を強く惹く部分があればそこにこそ当
該意匠の要部ないし特徴があるといつてよいと解されるので、右の如き観点から前
示公知意匠と対比して本件意匠の要部ないし特徴を考えてみるに、右意匠の基本的
な要部ないし特徴は、原告主張の如く、(イ)太い断面形状I字状の物干杆と、
(ロ)太い断面形状十字形状の吊杆、(ハ)これらを結合し中央部における突出短
筒を有する逆椀状の基盤の形状、および、(二)吊杆、物干杆が太くほぼ同じ長さ
であり、基盤がそれらに対応して大きなものとなつていて全体的に調和のとれた形
になつていること(詳しくは原告の請求原因三の〔四〕参照)にあると認められ
る。
(1) すなわち、前示公知意匠と対比してみるに、本件意匠にかかる物品の物干
具においては、洗濯物を掛ける物干杆、これを空間に保持するための吊杆、物干杆
と吊杆とを一体化して結合し使用時には物干杆がほぼ水平な状態で放射状に拡げら
れそうでないときには折畳みを可能とするような基盤からなる構成は、同種物品を
成りたたしめるための基本的構成であり同種物品に共通のものであるから、かかる
構成から必然的にもたらされる形状それ自体が本件意匠の要部ないし特徴となり得
ないことは明らかである。しかしながら、右物干杆、吊杆、基盤等の具体的な形
状、模様、色彩に新たな創意工夫を加え、全体として従来の公知意匠にない審美感
をもたせることはもとより可能であり、これらの部分は同種物品の全体観察上もつ
とも強く見る者の注意を惹く部分であるから、もし、右物干杆や吊杆および基盤の
形状、模様、色彩に新らたな創意工夫が加えられ、全体として新たな審美感をいだ
かせるような意匠が創作された場合には、そこにこそ該意匠の要部ないし特徴があ
るというべきである。
 そこで、これを本件意匠についてみるに、前示各公知意匠をみても、本件意匠の
如き断面I字形状が物干杆、断面十字形状の吊杆および中央に突出短筒を有する逆
椀状の基盤を有し、その物干杆と吊杆の長さと太さとの比(長さに対する断面積の
比)において本件意匠に類するようなものは見当らない。そうすると、本件意匠は
右の点において従来の公知意匠にない新規なものを有するというべく、かつ、右各
部によつて構成される形状は、本件意匠の全体形状をみる場合に、もつとも見る者
の注意を惹く部分であり、これによつて従来の公知意匠にみられなかつた独特の審
美感(それを原告主張が如く表現するか否かはしばらく措く)を与えるものとなつ
ていると認められるから、本件意匠の要部ないし特徴は右の点にあるというべきで
ある。
(2) 被告は、本件意匠の要部ないし特徴は右の如き概括的な構成、形状にある
のではなく、(イ)吊杆本体の断面が十字形であり、上部吊鉤部との境界に断面円
形のリブが設けられていること、
(ロ)基盤の下面が円盤状の底蓋で塞がれていて、二重の条溝が形成されているこ
と、(ハ)吊鉤がほぼ円形でその頂部に外方へ突出するロープ掛け部が設けられて
いることにあると主張し、特に類否判断上重要な要部ないし特徴が、店頭販売時に
おいてもつとも目立つ底面の形状と、使用時においてもつとも目につき易い吊鉤部
の形状であることを強調する。
 しかし、被告の右主張は、前記各実用新案公報(乙第一、第三号証)記載の物干
具が本件意匠の出願前に実施されていたことを前提とするものであるところ、これ
を認め得ないことは前判示のとおりであるから(なお、仮に被告のいうように乙第
一号証の実施品すなわち検乙第一号証の物干具が本件意匠の出願前公知であつたと
しても、右物干具の形状をみると、その吊杆は金属性の細い丸棒杆であり、物干杆
も外観上は丸味を帯びた棒状杆であつて、外部観察でみる限り本件意匠の物干杆の
ような断面I字形とはたやすく認め得ないものであり、かえつて、その頂部に突出
したロープ掛けを有する吊鉤部の形状が本件意匠のそれと類似している点に関して
いえばもしそれが本件意匠の出願前公知ならば、本件意匠のその部分の形状は格別
新規なものではなく、要部ないし特徴となり得ないものであることを意味するとす
ら考えられる)、本件意匠の要部ないし特徴を被告主張の如く限定して解すべき理
由はないというべきである。
 また、その底面および吊鉤の部分がもつとも目立つ部分でありもつとも重要な特
徴部分であると主張する点も、以下に述べるとおりにわかに採用できない。
 すなわち、本件の如き物干具は、通常底面の形状、模様が人目につかない状態で
展示される物品(例えば、テレビ、冷蔵庫、ポツト等)と異なり、底面が目につき
易い状態で店頭に展示され販売されることがあり得ることは被告主張のとおりと考
えられるが、販売時点において需要者の注意を強く惹きその購入意欲にかかわり選
択を決定づけるのが底面部分の意匠であるとの点はたやすく首肯できない。けだ
し、元来、ある意匠の要部ないし特徴がどこにあるかは、その意匠にかかる物品の
全体像を把握し、これを全体的に観察したうえで定められるべきものであるし、一
般需用者が意匠に留意して購入しようとする以上、その全体の意匠には全く無頓着
で底部の意匠にのみ着目してこれを決するということは考え難く、原告も指摘する
ように、店頭に置かれている見本やカタログ等によつてその全体像を知つたうえで
これを決するのが通例であると考えられるからである(なお、この点については、
成立につき争いのない甲第一六号証の被告製品のカタログや成立に争いのない甲第
一七号証の一、二の被告の新聞公告においても、被告商品の全体像をつかみ得るよ
うな展開図ないし写真が載せられている点参照)。その意味で、仮に被告主張のと
おり本件意匠が基盤の底面に新規性を有するとしても、その部分が特に見る者の注
意を惹きその購買意欲を決定づけるとまで解するのは相当でない。その特徴部分と
しての重要性も、他の新規性ある部分との相互関係の中で相対的にとらえられ決せ
られるべきである(なお、基盤の底面を閉塞しその内部をみえないようにすること
自体が新規なものでないことについては別紙公知意匠図(1)の下面図参照)。
 次に、被告は、本件意匠の吊鉤部の形状にも新規性、創作性があり、使用時にお
いてもつとも強く見る者の注意を惹くのは右部分であるというが、前記公知意匠に
照らすと、右部分の形状自体は格別新規なものとは認められず(別紙公知意匠図
(7)参照)、また、物干具はその使用時においても常に洗濯物を掛けた状態での
み観察されるものではなく、洗濯物を掛けあるいはこれをとりはずす前後において
は必然的にその全体像が観察されるものであるから、特に右吊鉤部分のみをとり出
してその特異性を強調するのは相当でなく、右部分をもつて本件意匠の要部である
とする被告の主張はたやすく採用できない。
(3) なお、成立につき争いのない乙第四ないし第六号証によると、本件意匠の
出願人は、別紙公知意匠図(1)の意匠(乙第六号証)を引用しての拒絶理由通知
(乙第四号証)に対して、右引用意匠と本件意匠とは全体的な形状においては似て
いるが両者は基盤、物干杆、ピンチ、吊鉤部の各形状を異にしているから非類似で
あると主張していたことが明らかであり(乙第五号証)、出願人が本件意匠の要部
ないし特徴を前判示のとおりとらえていたか疑問なしとしないが、意匠は視覚を通
じてとらえられる物品の外観に関するものであって、登録意匠の範囲は願書の記載
および願書に添付した図面等により現わされた意匠に基づいて定められるものであ
り(意匠法二四条参照)、その要部ないし特徴は、出願人がどのように説明したか
によつて定まるものではなく、右資料を基礎として客観的に定められるべきものと
解されるので、右事実は本件意匠の要部ないし特徴に関する前認定判断の妨げにな
るものではないというべきである。
(三) 本件意匠の要部ないし特徴については前判示のとおりであるが、さらに被
告の主張および被告の提出援用する鑑定書(乙第九号証)の記載に鑑み、本件意匠
の類似範囲を画定するにあたつて考慮すべき点を検討しておくと、次のとおりであ
る。
(1) まず、被告は、物干具の如きありふれた日用品にあつては、その基本的形
状が公知であつてその用途機能から多くの制約をうけるものであるから、これらの
物品に関する意匠は、その基本形状以外の部分的な形状の差異によつて新規な意匠
となり得るものであるが、反面その権利範囲もその部分的な形状の差異に限定され
る狭いものであり、そのことは本件意匠の出願人自身がその出願手続において強調
していたところである旨主張する。
 しかし、ある意匠権の類似範囲が狭いものであるか広いものであるかは、その権
利の内容、性質にもよるものであつて、日用品に関する権利だからといつて一概に
その類似範囲が狭いものであるとは断じ得ない。物干具の如き日用品については、
その基本形状において特異なものは少なく、したがつて権利範囲の狭いものが多い
ことは被告主張のとおりであろうが、日用品に関する意匠であつても新規性、創作
性の高いものについては、その類似の範囲も相応に広くなると解すべきことは原告
主張のとおりである。また、本件意匠の出願人も、無限定に日用品においては部分
的な形状の差異によつて新規な意匠になるといつているのではなく、全体的な構成
がその物品における基本的な形状として一般的になつている物の場合においてはと
の限定を付したうえで、被告指摘の如く主張していたものであることは原告の反論
するとおりであり(前掲乙第五号証参照)、被告の主張自体からも明らかなところ
である。
(2) また、成立につき争いのない乙第七号証と前掲乙第六号証によると、本件
意匠の出願人の意見書(乙第五号証)や前掲鑑定書(乙第九号証)に触れられてい
るとおり、本件意匠の拒絶理由通知(前掲乙第四号証)において引用された第一五
六九四三号の登録意匠(別紙公知意匠図(1)の意匠。乙第六号証参照)とその出
願前に登録された第一四六五〇七号の登録意匠(別紙公知意匠図(2)の意匠。乙
第七号証参照)とは、一見、その全体的な構成すなわち物干杆、吊杆、基盤により
形成される基本的な形状自体には大差なく、後者において「基盤の下面が開放され
て内部構造が露出している」のに対し、前者にあつては「基盤の下面が底盤で塞が
れその下側に二個の球体が設けられている」ことにおいて異なるだけであり、その
ことによつて前者は後者に類似しないとして登録を許されたもののようにみえ、こ
の点からすると、本件の如き物干具にあつては、部分的な形状(基盤底面の形状)
が異なれば別意匠になり得るかの如くである。しかし、さらに検討するに、前記乙
第七号証によると、右先願意匠のものは形状、模様、色彩の結合意匠であつて物干
杆、吊杆、基盤の各構成部分には無色透明の被覆層の存することが認められるか
ら、前記両意匠が果して基盤底面の形状を異にするというだけで別意匠として認め
られたかは疑問であるし、この点はしばらく措くとしても、右先願意匠の物干杆、
吊杆、基盤の各形状およびこれらを組合わせたときの全体形状自体は、さらにそれ
以前から存する公知のものと同じであつて特別の新規性あるものではなく、その点
に右意匠の要点ないし特徴があるのではないと認められるから、前記引用意匠のも
の(乙第六号証)が基盤底面の形状を異にすることによつて、別意匠として登録を
許されたとしても、充分理由のあることと考えられる。すなわち、右事例は両意匠
の基本的形状がともに公知の形状である場合の例であつて、その限りにおいてその
妥当性を主張し得るにとどまるものと解すべきである。したがつて、右事例が存す
るからといつて、物干具の如きものの意匠が一般に部分的形状の差異によつて別意
匠となると結論づけるのは妥当でない。
(3) また、成立につき争いのない乙第一一号証の一、二、第一五、第一六号
証、第二二、第二三号証によると、被告主張の各後願登録意匠の存することが明ら
かであり、これも本件意匠の類似範囲を考えるうえで無視できない事実である。そ
こで、右各後願意匠と本件意匠の類否について概観しておくと、次のとおりであ
る。
 後願意匠(一)は、本件意匠と対比した場合のもつとも特徴的な点として、物干
杆が長短二種類のものからなり(短杆の長さは長杆の約半分)、長短各五本の物干
杆が交互に配列されていることであつて、この相違点が本件意匠とは異なる審美感
を与える要因をなしているものと認められる。そして、以下、同様に後願意匠
(二)は、吊杆上部に環状になつた大きな吊鉤部とその下部から大きく突出してい
る鶴嘴状把手が設けられている点に、後願意匠(三)は、吊杆上部に環状になつた
吊鉤部とその下部から突出する鶴嘴状把手が設けられていることと、基盤下面から
突出直杆が突出し、これに鶴嘴状の把手が設けられている点に、後願意匠(四)
は、吊杆本体が物干杆と比べると極端に短かくその長さ比が大きく異つていること
と、基盤下面より下方に向けて右吊杆本体の長さに匹敵するほどの長さの剣先状の
突出杆が設けられている点に、後願意匠(五)は、吊杆本体が物干杆に比してかな
り短かくなつている反面、基盤下面より下方に向けて剣先状の突出杆が設けられて
いることと、物干杆がその正面視において根本部分の方が幅広く先端部にむかつて
狭くなつていて、一見棒状杆というより平板状杆というような印象を与えるものと
なつている点に、それぞれ本件意匠と異なる特徴を有し、これが本件意匠と異なる
審美感を与える要因をなしているものと認められる。換言すれば、後願意匠(一)
のものは物干杆の構成の特異性(長短二種のものの組合せ)に基づく形状の差異に
より、後願意匠(二)のものは特異な形状で大きな吊鉤部をもつ吊杆の形状におい
て、後願意匠(三)ないし(五)のものはいずれも基盤下面にかなり長い突出杆を
有していて、見方を変えれば本件意匠の如く吊杆の下部にではなく吊杆の途中に基
盤が取付けられているといえるような構成になつていることや、物干杆の形状(後
願意匠(五))において本件意匠とは基本的形状が異なつているということがで
き、全体観察において本件意匠との類似性を超えた独特の審美感を有すると評する
ことも可能である。
(四) そこで、以上の諸点を考慮し前示類似意匠を参酌して本件意匠が効力を及
ぼし得る類似範囲について考えるに、概括的にいえば、本件意匠の要部ないし特徴
は前判示のとおりであり、これに類する特徴を有するもの、すなわち、物干杆と吊
杆の長さがほぼ等しく、それぞれが断面I字形状、断面十字形状ないしこれに類す
る形状のもので太く、かつ、これに対応して大きく中央に突出短筒を有する基盤か
らなるようなものにはその効力を及ぼし得るが、右両杆の長さの比が本件意匠のも
のとは大きく異なり、他の付加的構成と相まつて、見る者に本件意匠とは別異の印
象を与え、本件意匠にかかるものと混同を生ぜしめないようなものには、その効力
を及ぼし得ないというべきである。
〔四〕 (イ)ないし(ト)号物件の構成
 (イ)ないし(ト)号物件の各構成が別紙物件目録(一)ないし(七)記載のと
おりであることは当事者間に争いがない。
〔五〕 本件意匠と(イ)ないし(ト)号物件の対比
 ここでは便宜原告のいうように(a)グループ((イ)、(ホ)、(ヘ)、
(ト)号物件)と(b)グループ((ロ)、(ハ)、(ニ)号物件)に分けて検討
する。
(一) (a)グループについて
1 (イ)号物件と本件意匠の比較
 (イ)号物件において、(1)物干杆の先端折れ曲り部分(挾持片)以外の部分
が断面I字形であること、
(2)吊杆本体の断面形状が十字形であること、(3)基盤は上面が膨出した逆椀
状でその中央に吊杆を接合する突出短筒を有していること、(4)そして、吊杆と
物干杆は太くほぼ同じ長さであつて基盤がそれらに対応して大きなものとなつてい
ることは一見して明らかであり、そのこと自体は被告においても実質的に争つてい
ないものと認められる。そして、右はまさに本件意匠の要部ないし特徴とするとこ
ろであり、これを有する(イ)号物件の意匠は本件意匠に類似するというべきであ
る。
 もつとも、(イ)号物件は、(1)吊杆の吊鉤部とロープ掛けの形状、(2)吊
杆に設けられたリブの数、(3)物干杆先端の挾持片の形状、(4)基盤下面には
底蓋がなく内部構造が露出され中央下方に突出する突起があつてそこに逆吊用フツ
クが吊下げられている点において本件意匠と異なることは被告主張のとおりであ
る。
 しかし、右相違点のうちリブの数や挾持片の形状の違いは、それ自体意匠全体に
別異の印象といえる程の差異をもたらすものとは認められず、本件意匠との類否観
察上あまり大きな意味を有するとはいえない(この点については、挾持片の形状が
かなり異なるにもかかわらず前記類似意匠(1)ないし(5)が本件意匠に類似す
るとして登録されている点参照)。
 ただ、吊鉤部やロープ掛けの形状の相違は、使用時において目につき易い吊杆上
部の形状の相違であり、基盤下面の相違も、販売時、使用時においてほとんど底面
の見られることのない冷蔵庫、テレビ等と異つて人目につくことは充分に考えられ
ることであり、これを無視ないし軽視し得ないことは被告主張のとおりである。
 したがつて、右相違点は本件意匠との類否判断上充分考慮されるべきであるが、
右両部分の相違を強調し、それ自体が本件意匠との類否を決定づけるかの如くいう
ことが誤りであることは前判示のとおりである。
 そして、(イ)号物件が本件意匠の要部ないし特徴をそなえているものであるこ
とを念頭において、全体観察のなかで、右相違点をみるとき、(イ)号物件が、被
告のいうように、右吊鉤部やロープ掛けの形状の違いに基づき、本件意匠にない
「洗練さ」「なめらかな感じ」を有していることは否定できないにしても、やはり
右要部ないし特徴部分からうける共通の審美感(それを原告がいうように堅牢感、
重厚感、安定感というか、被告のいうように「荒けずり」、「泥くささ」と評する
かは別論である)を強く残しており、右相違点はいまだ両者の類似性を否定し混同
惹起をなからしめるには至つていないといわざるを得ない。
 したがつて、(イ)号物件の意匠は本件意匠に類似する。
2 (ホ)、(ヘ)、(ト)号物件と本件意匠の比較
 (イ)号物件と(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件との相違点および(ホ)、
(ヘ)、(ト)号物件相互間の相違点は原告主張のとおりである。
そして、前記類似意匠を参酌すると、物干杆の本数の差とこれに伴う基盤表面の縦
長窓孔、裏面の突出条や突出子の数の違いが、本件意匠との類否の比較上重要な意
義を有するものとは認められず、その他(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件の意匠と本
件意匠との間の右相違点も、(イ)号物件に関して述べたところと同様の理由で、
いまだ類似性を脱却せしめるには至つていないと認めるのが相当である。
(二) (b)グループについて
1 (ロ)、(ハ)号物件と本件意匠の比較
 右両物件間の相違点は物干杆の本数の差とこれに伴う基盤表面の縦長窓孔、裏面
の突出条や突出子の数の違いだけであり、これらの違いが本件意匠との類否の比較
上重要な意義を有すると認められないことは前判示のとおりであるから、右物件を
一括して本件意匠と比較する。
 (ロ)、(ハ)号物件において、(1)物干杆の先端折れ曲り部分(挾持片)以
外の部分が断面I字形であること、(2)吊杆本体の断面形状がY字形であるこ
と、(3)基盤は上面が膨出した逆椀状でその中央に吊杆を接合する突出短筒を有
していること、(4)そして、吊杆と物干杆は太くほぼ同じ長さであつて基盤がそ
れらに対応して大きなものとなつていることは一見して明らかであり、右吊杆本体
の断面形状が十字形であるかY字形であるかの相違はあまり目立たず意匠観察上重
要な意義を有しないものと認められ、この点は被告も実質上争つていないのであ
る。
 そうすると、右は、まさに本件意匠の要部ないし特徴とするところと同一ないし
同一視し得るものであるというべきであるから、これを有する(ロ)、(ハ)号物
件の意匠は本件意匠に類似するというべきである。
 もつとも、(ロ)、(ハ)号物件と本件意匠との間に被告主張の如き相違点が存
することも事実であるが、右相違点のうちリブの数や挾持片の形状の違いが本件意
匠との類否観察上あまり大きな意味を有するといえないことは(イ)号物件に関し
て述べたとおりである。
 ここでも充分留意されるべき相違点は、吊鉤部とこれに付帯するロープ掛けの形
状と基盤面の形状(逆吊鉤の存在を含む)の違いであり、ことにその吊鉤部の形状
は、(イ)号物件とも異なり、上下に長いほぼ長円形でしかもその先端がU字形に
形成されている点で、被告のいうように(イ)号物件よりもさらに本件意匠との相
違点が大きいといえなくはない。
 しかし、これらの相違点をそれだけをとり出して強調してみるべきではなく、
(ロ)、(ハ)号物件が本件意匠の要部ないし特徴をそなえているものであること
を念頭において、全体観察のなかでみるべきことも、さきに(イ)号物件に関して
述べたとおりである。
 しかして、かかる観点から本件意匠と(ロ)、(ハ)号物件の意匠を対比観察す
るに、右物件の意匠が右吊鉤部やロープ掛けの形状のゆえに、被告のいうところの
「なめらかな流れ感」、「安定感」、「上品さ」、「スマートさ」を有しているこ
とを肯定するとしても、それは前示要部ないし特徴を同じくすることから生ずる共
通の審美感を超えて混同惹起をなからしめる程の差異とは認め難い。
 そうすると、(ロ)、(ハ)号物件の意匠もまた本件意匠に類似するというほか
はない
2 (ニ)号物件と本件意匠との比較
 (ニ)号物件において、(1)物干杆の断面形状がI字形であること、(2)吊
杆本体の断面形状が十字形であること、(3)基盤は上面が膨出した逆椀状でその
中央に吊杆を接合する突出短筒を有していること、(4)そして、吊杆と物干杆は
太くほぼ同じ長さであつて、基盤がそれらに対応して大きなものとなつていること
は一見して明らかであり、そのこと自体は被告においても実質的に争つていないも
のと認められる。
 そうすると、右は、まさに本件意匠の要部ないし特徴とするところであるから、
これを有する(ニ)号物件の意匠は本件意匠に類似するというべきである。
 もつとも、本件意匠と(ニ)号物件との間に、原、被告が指摘するような相違点
(吊鉤部とロープ掛けの形状、リブの位置と数、物干杆に挾持片がなくこれにかわ
るピンチ吊下片とピンチの存在、基盤下面に底蓋がなく逆吊用吊鉤が設けられてい
ること)が存することも明らかであるが、右相違点のうちリブの数や挾持片にかわ
るピンチ吊下片およびピンチの存在は本件意匠に前記類似意匠(1)ないし(5)
が付帯していることを参酌すると、本件意匠との類否観察上あまり大きな意味を有
するとはいえない。この点は(イ)号物件に関して述べたところと同様である。
 ここでも、充分留意されるべきは、(ロ)、(ハ)号物件について述べたと同
様、吊鉤部とこれに付帯するロープ掛けの形状と逆吊鉤の存在を含めた基盤底面の
形状の違いであり、ことにその吊鉤部は、(ロ)、(ハ)号物件と同様ほぼ長円形
であるうえにその吊杆部全体に占める割合は大きく、被告のいうように本件意匠と
は異なり「頭でつかち」の感を与えるといえる点である。
 しかし、当裁判所としては、かかる点を考慮しても、その全体観察において、
(ニ)号物件の意匠が本件意匠の要部ないし特徴をとり入れていることからくる類
似感を否定することはできず、(ロ)、(ハ)号物件と同様、その類似範囲に入る
ものと判断せざるを得ない(なお、この点については、本件意匠とは別に独立に登
録されている前示各後願意匠は、いずれも本件意匠とは全く構成を異にする特異な
形状の大きな吊鉤部を有し、また、基盤下面に、本件意匠にはない吊杆、物干杆、
基盤とは独立の構成部材とみられる大きく突出杆を有しているのに対し、(ニ)号
物件にはそのような特異な形状の大きな吊鉤部や突出杆がないのであり、(ニ)号
物件の基盤下面に付された逆吊用吊鉤もいまだ付加物の感を免れないものである点
参照)。
 以上の認定判断に反する乙第九号証の記載は採用できない。
三 以上のとおりとすると、被告が業として(イ)ないし(ニ)号物件を製造販売
し、(ホ)、(ヘ)、(ト)号物件を製造販売していたことは原告の本件意匠権を
侵害するものである。
第二 損害賠償請求について
一 被告が業として(イ)ないし(ト)号物件を製造販売することが原告の本件意
匠権を侵害する違法行為となることは右にみたとおりであり、被告は右侵害行為に
ついて過失があつたものと推定される(意匠法四〇条本文)。
二 しかるところ、被告は、無過失および損害賠償請求権行使の信義則違反を主張
するので、これにつき検討する。
 被告の主張は、原告が本件意匠の出願前の昭和四四年一二月頃より、「エンゼル
A二〇」の意匠すなわち本件意匠の類似範囲内に属する意匠(類似意匠(2))の
実施をしており、本件意匠の出願人訴外株式会社ダイキンに対して先使用権を主張
し得る立場にあつたこと、および、その主張の誓約書(乙第一〇号証)を取交わす
際に、これが原、被告間の共通の認識であつたことを前提とするものであるが、か
かる事実を認めるに足る証拠はない。
 成程、成立につき争いのない乙第一〇号証によると、右誓約書には、原告が昭和
四四年一二月より製造販売せる「エンゼルA二〇」および被告が昭和四九年七月よ
り製造販売せる「サンドライ」についての誓約書である旨、および、原告の「エン
ゼルA二〇」が「実願並に意匠の先願により以後此の両製品に付いては(甲)(原
告)の主張を認めた。」旨の記載の存することが明らかであり、被告は、右にいう
先願とは本件意匠との関係での先使用の意味であると主張する。
 しかしながら、原告の「エンゼルA二〇」なる商品が昭和四四年一二月頃から現
実に製造販売されていたことを認めるに足る証拠はなく、かえつて、原告代表者本
人尋問の結果により成立を認むべき甲第二三、第二四号証、第二五号証の一、第二
六ないし第三〇号証、官公署作成部分については成立につき争いがなくその余の部
分については右本人尋問の結果により成立を認むべき甲第二五号証の二、いずれも
成立に争いのない甲第四、第五号証の各一、二、第一〇号証の一、二、乙第一三号
証の二一、二二および右代表者本人尋問の結果によると、原告がその開発にかかる
「エンゼルA一〇」および「エンゼルA二〇」なる商品に関する実用新案登録およ
び意匠登録の各出願をしたのは昭和四六年一月から四月にかけてのことであり、こ
れらの製品を現実に販売したのも同年春頃以降のことであること、ところがこれよ
り先に本件意匠の登録出願がなされていたため、右意匠登録出願については拒絶理
由通知がなされ、これを受けた原告は、本件意匠の出願人訴外株式会社ダイキンよ
りこれを譲受けるべく交渉していたこと、しかして、被告がその製品「サンドラ
イ」を売出そうとした昭和四九年七月当時は、右原告自身の出願にかかる意匠およ
び実用新案が登録になつていなかつたのはもちろん、譲受けようとしていた本件意
匠も一応譲受けられる見込にはなつていたがその登録を完了しておらず、原告は右
当時いまだこれらの意匠権ないし実用新案権については法的権利を有していない状
態にあつたことが認められ、かかる事実と前示甲第二三、第二四号証、成立に争い
のない甲第三二号証の一、二によると、前記誓約書に記載された原告製品「エンゼ
ルA二〇」の製造販売年月日が誤記であること、および、右誓約書作成の経過は原
告主張のとおりであつて、誓約書の「先願により…(甲)(原告)の主権を認め
た。」旨の記載も、被告のいうような本件意匠の出願人に対する関係で原告が先使
用権を有することを認めたものではなく、被告との関係で原告が前記の如き関係か
らその営業上優先すべき立場にあることを承認したことを意味すると解するのが相
当であり、これに反する被告代表者本人尋問の結果はたやすく採用できない。
 そうすると、被告の無過失および信義則違反の主張は、その前提となる事実が認
められないので、理由がなく採用できない。
三 そこで、損害額について検討する。
 原告がその主張の如き損害を蒙つたものと認めるに足る証拠はない。本件証拠上
は、被告が原告主張の期間内に販売した(イ)ないし(ト)号物件の販売数量、単
価については、前掲【B】証人が証言し被告が自認する限度でこれを認定するにと
どめるのが相当である(なお、(イ)号物件の単価については、明確でないものに
ついては控え目に算定する趣旨で、被告自認額のうち低額の一二〇円を採用す
る)。
 そして、その利益率も被告主張の利益率および実施料率を参酌して右売上高の五
パーセントと認めるのが相当である。
 これによると、被告は前示(イ)ないし(ト)号物件を製造販売することによ
り、原告主張の期間中その売上高合計一億〇九七〇万五〇〇〇円の五パーセントに
相当する五四八万五二五〇円の利益を得たものと認められ、原告はこれと同額の損
害を蒙つたものと推定される(意匠法三九条一項)。
 被告は意匠法三九条三項の適用を主張するが、例え本件がその適用要件を備えて
いる場合であるとしても、右認定利益率からすればこれを適用するのは相当でな
く、右主張は採用できない。
第三 結論
 以上のとおりとすると、原告の本訴請求中、(1)(イ)ないし(ニ)号物件の
製造、譲渡、譲渡のための展示の差止めと、右各物件の完成品、半完成品の廃棄、
および、同物件の製造に使用する成型用金型の除却を求める部分、(2)損害賠償
金五四八万五二五〇円およびこれに対する本訴状が被告に送達された日の翌日であ
ることが記録上明らかな昭和五三年七月二二日から支払いずみに至るまで民法所定
年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるが、その余は理
由がないというべきである。
 よつて、原告の本訴請求を右の限度で認容しその余を棄却することとし、訴訟費
用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用
して、主文のとおり判決する。
(裁判官 金田育三 上野茂 若林諒)
 物件目録(一)
(イ)号物件(商品名 サンドライハンガーK一〇)
(一) 円形基盤の中央上部に上端を吊鉤とした吊杆が突設され、同基盤の周りか
ら一〇本の物干杆を放射状にかつほぼ水平に突出させ、
(二) 物干杆は断面がI字形(但し先端折り曲り部分は若干変形)であり
(三) 吊杆は上端の吊鉤部を除いては断面十字形であつて、上下両端と中間部合
計三個の断面円形のリブを有し
(四) 物干杆は吊杆とほぼ同程度の長さを有し、
(五) 基盤は上面が逆椀状に膨出し、その中央部に吊杆と接合させるための突出
短筒が一体として設けられ、その周面から上面にかけて周方向に物干杆の突出する
一〇個の縦長窓孔が等間隔にあけられ、
(六) 下面は物干杆の基部とその内部構造(枢支部分)が露出されるとともに、
中央下方へ突出する突起とその下面の逆吊用フツクが吊下げられ、
(七) 各物干杆の先端には、これを上方に二つ折り(ヘアピン状)した挾持片が
対向的に設けられ、
(八) 吊鉤は一部を切欠いた略円形でその先端はU字形に形成され、吊鉤部の下
端より僅かに下つた位置に略S字形のロープ掛けが左右二個対称的に設けられてい
る。
<12252-003>
<12252-004>
 物件目録(二)
(ロ)号物件(商品名 サンドライハンガーK一六)
 (イ)号物件と(二)(四)(六)(七)は同一である。そして(一)の物干杆
が一六本であること、(三)の吊杆が上端の吊鉤部を除いて断面Y字形でありかつ
円盤状のリブが四個であること(なお吊鉤部の正背面は吊杆部より幅が若干広くな
つている)、(五)の物干杆の突出する一六個の縦長窓孔があること、(八)の吊
鉤部が一部を切欠いた上下方向に長い略長円形であることは(イ)号物件と相違す
る。
<12252-005>
<12252-006>
 物件目録(三)
(ハ)号物件(商品名 サンドライハンガーK二〇)
 物干杆の数が二〇本であり、(五)の縦長窓孔が二〇個であることを除いては、
他は(ロ)号物件と同じである。
<12252-007>
<12252-008>
 物件目録(四)
(ニ)号物件(商品名 サニーリングハンガー)
 (一)(二)(三)(四)(五)(六)は(イ)号物件と同じ、(七)について
は各物干杆の先端にピンチ吊下片が設けられ、
これにピンチ(洗濯挾み)が吊下げられている。
 (八)については、(ロ)号物件と同じく上下方向に長い略長円形でその先端が
小さく略U字状である。また略S字状のロープ掛が吊鉤部の下端より相当下つた位
置に左右一対設けられている。(九)として各物干杆の下面で基盤より物干杆の長
さの約三分の一位の位置に下向鉤がある。
<12252-009>
<12252-010>
 物件目録(五)
(ホ)号物件(商品名 サンドライハンガーK一〇旧型)
(一) 円形基盤の中央上部に上端を吊鉤とした吊杆を突設し、同基盤の周りから
一〇本の物干杆を放射状にかつほぼ水平に突出させ、
(二) 物干杆は断面I字型(但し先端折れ曲り部分は若干変形)であり、
(三) 吊杆は上端の吊鉤部を除いて断面十字形であつて、上下両端と中間部に各
一個づつ合計三個の断面円形のリブを有し、
(四) 物干杆は吊杆とほぼ同程度の長さを有し、
(五) 基盤は上面が逆椀状に膨出し、その中央部に吊杆と接合させるための突出
短筒が一体として設けられ、その周面から上面にかけて円周方向に物干杆の突出す
る一〇個の縦長窓孔が等間隔にあけられ、
(六) 下面は物干杆の基部とその内部構造(枢支部分)が露出されると共に、中
央下方へ突出する突起とその下面の逆吊用フツクが吊下げられ、
(七) 各物干杆の先端および基部には、これを上方に二つ折り(ヘアピン状)し
た挾持片が対向的に設けられ、
(八) 吊鉤は一部を切欠いた略円形で、その先端はU字形に形成され、吊鉤部の
下端より僅かに下つた位置に略S字形のロープ掛けが左右二個対称的に設けられて
いる。
<12252-011>
<12252-012>
 物件目録(六)
(ヘ)号物件(商品名 サンドライハンガーK一六旧型)
 (ホ)号物件と(二)(三)(四)(六)(七)(八)は等しい。(一)(五)
について物干杆の数が一六本であり、そのための基盤における縦長窓孔が一六個で
ある点のみ相違し、他は(ホ)号物件と等しい。
<12252-013>
<12252-014>
 物件目録(七)
(ト)号物件(商品名 サンドライハンガーK二〇旧型)
 (ホ)号物件と(二)(三)(四)(六)(七)(八)は等しく(一)(五)に
ついて物干杆が二〇本であること、このため基盤における縦長窓孔が二〇個である
点のみ相違し、他は(ホ)号物件と等しい。
<12252-015>
<12252-016>
<12252-017>
<12252-018>
<12252-019>
<12252-020>
<12252-021>
<12252-022>
<12252-023>
<12252-024>
<12252-025>
<12252-026>
<12252-027>
<12252-028>
<12252-029>
<12252-030>
<12252-031>
<12252-032>
<12252-033>
<12252-034>
<12252-035>
<12252-036>
<12252-037>
<12252-038>
<12252-039>
<12252-040>
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<12252-052>
<12252-053>

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◎事務所の名称は自由に選択可能
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