弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     再審原告らの再審請求を棄却する。
     再審の訴訟費用は、再審原告らの連帯負担とする。
         事    実
 一 再審原告ら訴訟代理人は、「東京高等裁判所が同庁昭和三一年(ネ)第二、
六六三号調停無効確認請求控訴事件について昭和三四年六月一六日に言い渡した判
決を取り消す。申立人再審被告相手方A間の東京家庭裁判所昭和二三年(家イ)第
一、六八一号財産分与調停事件について昭和二四年二月一七日に成立した調停は無
効であることを確認する。訴訟費用は本訴再審とも再審被告の負担とする。」との
判決を求め、再審の事由として、つぎのとおり述べた。
 (一) 再審原告らは、再審被告を相手方とする東京地方裁判所昭和二八年
(ワ)第七、三二三号調停無効確認請求事件において、昭和三一年一〇月二四日
「申立人被告(再審被告)、相手方亡A間の東京家庭裁判所昭和二三年(家イ)第
一、六八一号財産分与調停事件につき、昭和二四年二月一七日成立した別紙第一記
載の調停条項第二項のうち別紙第二記載の土地に関する部分に限り無効であること
を確認する。原告(再審原告)等のその余の請求を棄却する。訴訟費用はこれを三
分し、その二を原告等の、その余を被告の各負担とする。」との判決を受けた。こ
れに対し、再審原告らから東京高等裁判所に控訴し、昭和三一年(ネ)第二、六六
三号事件として審理されたが、昭和三四年六月一六日控訴棄却の判決の言渡があつ
た。再審原告らは、さらにこの判決に対し同年七月六日上告し、同月八日上告受理
通知書の送達を受けたが、上告状に上告の理由を記載せず、また上告理由書の提出
もしないまま、その後五〇日を経過したため、同年九月一七日付で東京高等裁判所
の上告却下の決定があり、同月二三日再審原告らに対し同決定正本の送達がされ、
同決定は、その頃確定し、右判決も確定するにいたつた。
 (二) 再審原告らは、右Aの相続人であつて、昭和三〇年六月五日Aの死亡に
よつてその地位を承継したものであるところ、右訴訟において第一審以来、再審被
告を申立人、Aを相手方とする東京家庭裁判所昭和二三年(家イ)第一、六八一号
財産分与調停事件について昭和二四年二月一七日別紙第一記載のような条項の調停
が成立したものとして調書が作成されているけれども、Aにおいては、この調停で
調停条項第一項の分家者の意思に基づかない分家届に関する合意だけがされたもの
と信じていたところ、まつたく合意したことのない調停条項が調書に記載されるに
いたつたもので、調停は無効である、仮に右調停が成立したとしても、調停調書に
添付された物件目録には第三者所有の土地(別紙第二)や表示の誤つたもの(別紙
第三)があるなどして、これをAが知つていたとすれば、このような調停に応ずる
はずがないから、Aのこの調停における意思表示は要素の錯誤に基づくものであり
無効であるなどと主張し、右調停の無効確認を求めて来た。ことに、再審原告ら
は、すでに第一審において、昭和二八年一一月二八日付準備書面第五頂をもつて
「原告(右A)は貧農に生れ、原告の家に養子となつたもので文盲であつて自己の
財産が文字によつて表現されても付添人がなければはつきり判らない」と陳述主張
した。本件調停調書は、当時このような事情にありかつ脳軟化症で意識ももうろう
とし、署名することもとうてい想像できず、陳述することも正確にできない八〇才
をこえる老齢のAによつてされた合意にかかるものである。右の陳述は、本件の判
決に影響を及ぼすべき重大な事項にかかるものであるといわなければならないの
に、本件第一、二審の判決は、いずれもこれについて何ら判断を示していない。こ
れは、再審の趣旨記載の確定判決について民事訴訟法第四二〇条第一項第九号の再
審事由がある場合に該当する。再審原告らは、みずから右判決に対し上告したう
え、上告理由書の提出を弁護士に委任しておいたところ、昭和三四年九月二三日そ
の提出がないことを理由とする上告却下決定の送達を受けて驚き、はじめて再審原
告ら訴訟代理人に再審事由の検討を依頼し、同年一〇月二〇日前記再審事由を知る
にいたつたものである。法律のしろうとである再審原告らが本件第一、二審判決を
検討して右再審事由を知りこれを上告審手続上主張することはまず不可能であり、
また、上告人には法律専門家である弁護士を代理人として選任する義務がないので
あるから、本件は、民事訴訟法第四二〇条第一項但書の適用ある場合にあたらない
というべきである。よつて、再審の趣旨のとおりの判決を求める。
 なお、再審原告ら訴訟代理人は、再審原告Bの訴訟委任状は、追完できないと述
べた。
 二 再審被告訴訟代理人は、再審原告の請求を棄却する、訴訟費用は再審原告ら
の負担とするとの判決を求め、再審の事由第(一)項の事実は認めるが、同第
(二)項については、再審原告ら主張の準備書面における調停無効の主張にかかる
事実は否認する、いわゆる再審の事由を知つた日については知らない、いずれにし
ても再審の事由はないと述べた。
 三 再審原告ら訴訟代理人は、甲第一ないし第四号証を提出し、再審原告C本人
尋問の結果を援用し、再審被告訴訟代理人は、甲第一、二号証の成立は認めるが、
その余の甲各号証の成立は知らないと述べた。
         理    由
 一 本訴が再審原告ら六名の名義で再審原告ら訴訟代理人によつて提起され、そ
の後の訴訟行為が追行されて来たものであるところ、再審原告ら訴訟代理人におい
て結局再審原告Bについては訴訟代理権を証明することも追認をうることもできな
かつたことは記録上明白であるので、同人自ら訴を提起したものと認めることがで
きない。
 二 ところで、再審被告を申立人、Aを相手方とする東京家庭裁判所昭和二三年
(家イ)第一、六八一号財産分与調停事件においてこの当事者間に昭和二四年二月
一七日別紙第一記載のとおりの条項の調停が成立したものとして調停調書が作成さ
れたこと、右Aは昭和三〇年六月五日死亡し、Bを含む再審原告ら六名がその相続
人であるところ、この六名において相続によりAの法律上の地位を承継したこと、
右調停の無効確認請求訴訟がBを含む再審原告らから再審被告を被告または被控訴
人として追行され、その訴訟手続の経緯が再審原告らが再審の事由として主張する
とおりであることは弁論の全趣旨および一件記録に徴して明らかである。右の事実
から明らかなとおり、右調停無効確認請求の訴訟は、調停の一方の当事者であるA
について調停の成立当時存した事由を主張して調停の有効な成立自体を争うもので
あり、Aの死亡後同人の地位を承継した相続人においてこれを追行するにはその全
員によつてのみはじめてすることのできるいわゆる固有の必要的共同訴訟に属す
る。
 <要旨>もともと、再審の訴は、確定の終局判決について、訴訟手続上の重大なか
しや判断の基礎における異常な不公正、欠陥があることが判つた場合、法的
安定の要求から尊重されるべき確定判決を、例外的にその既判力から解放して是正
し、特に裁判の適正、司法への信頼を確保しようとするものである。したがつて、
この訴は、法定の再審事由の存在を主張し、その判決の取消と本案事件の再審判を
求める非常の不服申立方法として認められている。それは、本来の上訴とは異なる
ものがあるとはいえ、判決に対する不服の訴である点で上訴に類似し、いつたん終
結した訴訟手続の再開を求める点でその訴訟に付随している。このような再審の訴
の目的および性質からすれば、再審の対象となる確定判決にかかる訴訟が必要的共
同訴訟である場合は、その共同訴訟人のあるものが再審の訴を提起すれば、その効
力は、その余の共同訴訟人に及ぶものと解するのが相当てある。
 したがつて、本件において、前示のとおりBが自ら再審の訴を提起したことを認
めることができないけれども、その余の再審原告らによる再審の訴提起の効力は、
再審の対象たる確定判決にかかる本件調停無効確認請求控訴事件においてこれと必
要的な共同訴訟人の関係に立つBに及び、これを再審原告とならしめるものという
ことができる。
 三 そこで、進んで再審原告らが再審の事由第(二)項において主張する昭和二
八年一一月二八日付準備書面第五項記載の事実に関する判断遺脱について考える。
 再審の訴による不服の申立は、民事訴訟法第四二〇条第一項各号に定める事由が
あつても、当事者が上訴によりその事由を主張したときまたはこれを知つて主張し
なかつたときは、これが許されないことは、同項但書の規定により明らかである。
そして、ここにいう当事者が知つて主張しなかつたときとは、当事者本人ばかりで
なく、その訴訟代理人についてもいうのであつて、もし訴訟代理人が再審事由を知
りながらこれを主張しなかつたときは、当事者本人においてもまたこの事由を知つ
て主張しなかつたものとなすべきものと解するのが相当である(昭和一四年九月一
四日大審院判決民集一八巻一六号一〇八三頁)。再審原告らのこの点に関し反対の
見解に立つ主張は、すべて採用できない。
 ところで、本件において仮に再審原告ら主張の点の判断遺脱があつたとしても、
再審の訴の対象になつている当裁判所昭和三一年(ネ)第二、六六三号調停無効確
認請求控訴事件の判決は、昭和三四年六月二一日に、訴の提起以来当時まで再審原
告らの訴訟代理人であつた弁護士横溝貞夫に送達されていることが一件記録上明ら
かであり、一般に判断遺脱のかしは判決理由を一読すればただちに知りうべきもの
であるばかりでなく、本件で判断の遺脱があつたとされる右主張事実は、すでに第
一審手続中に右訴訟代理人により陳述されていることが再審原告らの主張によつて
も明らかであるから、特段の事情の認められない限り右訴訟代理人が前示判決の送
達を受けたときまたは少なくともその直後にその判決の内容を知悉し、その理由中
に判断遺脱のかしがあるかどうかを知つたと認めるに十分である。本件においてこ
れを反対に認むべき特段の事情はまつたくうかがわれない。したがつてまた、当事
者本人たる再審原告らは、その不知を主張できないといわなければならない。
 四 右のとおりである以上、再審原告らの本件再審の請求は理由がないことが明
らかであるから、これを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民
事訴訟法第八九条、第九三条第一項但書を適用し、よつて、主文のとおり判決す
る。
 (裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 入山実 裁判官 荒木秀一)

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