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裁判例


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主文
,。1原判決を取り消し控訴人らの公金支出差止請求に係る訴えを却下する
2控訴人らが当審で追加した株式会社五井建築設計研究所に対する損害賠
償請求等義務付け請求に係る訴えをいずれも却下し,Aに対する損害賠償
請求義務付け請求を棄却する。
3訴訟費用は,第1,2審とも,控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1当事者が求める裁判
1控訴人ら
(1)控訴の趣旨
ア原判決を取り消す。
イ被控訴人は,平成14年9月24日に締結したα生涯学習施設建設業務
委託契約に基づき,津幡町の公金を支出してはならない。
ウ訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
(2)当審での追加請求の趣旨
ア被控訴人は,Aに対し,7770万円及びこれに対する平成15年1月
30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
イ被控訴人は,株式会社五井建築設計研究所に対し,7770万円及びこ
れに対する平成15年1月30日から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払うよう請求せよ。
ウ訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
2被控訴人
(1)控訴の趣旨に対する答弁
ア本件控訴を棄却する。
イ控訴費用は控訴人らの負担とする。
(2)当審での追加請求の趣旨に対する答弁
(訴えの変更が許されるとした場合の予備的な答弁)
ア控訴人らの請求をいずれも棄却する。
イ控訴費用は控訴人らの負担とする。
第2事案の概要
1訴訟の経過等
(1)本件は,石川県河北郡αの町民である控訴人らが,津幡町長が株式会社五
井建築設計研究所(以下「五井建築」という)との間で随意契約の方法で。
α生涯学習施設建設実施設計業務委託契約(以下「本件実施設計委託契約」
という)を締結したことに関して,同契約が地方自治法234条2項,同。
法施行令167条の2第1項2号に該当しないため,その締結は競争入札に
よるべきであるのに,これを随意契約で締結した違法があり,同契約は無効
であると主張して,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,津幡町の
執行機関である被控訴人に対し同契約に基づく公金支出の差止めを請求以,(
下「本件差止請求」という)した住民訴訟の控訴審である。。
,,。(2)原審は控訴人らの請求を棄却したため控訴人らが本件控訴を提起した
(3)控訴人らは,当審において,被控訴人が既に五井建築に対して本件実施設
計委託契約に基づく公金7770万円を支出したことが判明したとして,行
政事件訴訟法19条2項により準用される民事訴訟法143条により,被控
訴人に対し,A及び五井建築に対してそれぞれ上記支払金7770万円及び
これに対する平成15年1月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の損害賠償請求(五井建築には,選択的に,不当利得返
還請求)をするように求める義務付け請求(前記第1の1(2)ア及びイの請
求。以下「本件義務付け請求」という)に係る訴えを追加的に提起すると。
ともに,本件差止請求に係る訴えを取り下げることを内容とする訴えの交換
的変更申立て(以下「本件交換的変更申立て」という)をした。これに対。
し,被控訴人は,本件交換的変更申立てに同意せず,その不許を求めた。
(4)略語は,原判決に準ずるものとする。
2前提事実
以下のとおり補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2の2に記載のと
おりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1)原判決2頁9行目の「9」の次に「,乙25」を,同10行目の「弁論の
全趣旨」の次に「,証人B」を,それぞれ加える。
(2)原判決3頁7行目の「あること」の次に「,基本設計を担当した業者に対
し,それに引き続く実施設計も委託すること」を加える。
(3)原判決4頁11行目と12行目の間に次のとおり加える。
「(4)本件訴訟提起後の事情
ア津幡町は,本件訴訟が原審に係属中の平成15年5月20日,五井
建築に対し,本件実施設計委託契約に基づく報酬7770万円を全額
支払った(以下「本件公金支出」という。。)
イ控訴人らは,平成16年12月6日の当審第2回口頭弁論期日にお
いて,同日付け準備書面(8)により,上記1(3)のとおりの本件交換的
変更申立てをした。なお,本件交換的変更申立てに先立って,本件公
金支出についての監査請求はされていない」。
3争点及び当事者の主張
以下のとおり原判決を補正し,当審における当事者の主張を加えるほかは,
原判決の事実及び理由の第3の1及び2に記載のとおりであるから,これを引
用する。
(原判決の補正)
(1)原判決4頁21行目の「原告」を「控訴人ら」と改める。
(2)原判決6頁23行目の「溝ずる」を「講ずる」と改める。
(3)原判決7頁10行目の「原告」を「控訴人ら」と改める。
(4)原判決10頁2行目と3行目の間に次のとおり加える。
「したがって,被控訴人による本件実施設計委託契約の締結は,違法な支
出負担行為である」。
(5)原判決11頁7行目,同13頁11行目及び14行目の各「原告」をいず
れも「控訴人ら」と改める。
(当審における当事者の主張)
(1)本件実施設計委託契約の違法事由について
ア控訴人らの主張
被控訴人による本件実施設計委託契約の締結は,次の理由によっても,
違法であり,同契約は私法上無効である。
(ア)本件施設建設のために作成されたプロポーザル方式による建築設計業
務委託者選定要領10条によれば,プロポーザル審査委員会は,選定し
た者を津幡町工事請負業者選考委員会に推薦し,同選考委員会の審議を
経て,被控訴人が決定するものとされている。ところが,本件基本設計
,,,委託契約については同審査委員長は同選考委員会に対してではなく
直接に被控訴人に対して選定者を推薦し,被控訴人は,同選考委員会の
審議の手続を経ることなく,五井建築との間で本件基本設計委託契約を
随意契約の方法で締結したものであるから,被控訴人による本件基本設
計委託契約の締結には必要な手続が履践されていないという手続上の違
法がある。したがって,本件基本設計委託契約を基として五井建築との
間で締結された本件実施設計委託契約にも,同様の違法がある。
(イ)本件基本設計委託契約及び本件実施設計委託契約の締結に先だって,
契約報酬の予定価格が定められなかった違法がある。
すなわち,地方自治法234条3項は,競争入札において,契約の目
的に応じて,予定価格の制限の範囲内で契約の相手方を決すべきものと
しているが,随意契約の方法で契約を締結する場合にも,競争入札に準
じて,予定価格の設定が当然に要請され,津幡町財務規則137条も,
予定価格の設定を要件としている。予定価格の設定は,随意契約の方法
,,で契約を締結する場合において契約の相手方の選定が一部の者に偏し
津幡町にとって不利な価格で契約が締結されるおそれがないとはいえな
いから,相手方申出に係る価格と比較検討して,その適否を判断するた
めに必要である。ところが,本件基本設計委託契約及び本件実施設計委
託契約の締結に先だって予定価格が設定されていない(甲1,11に予
定価格の記載がないことから明らかである)から,被控訴人は,上記。
適否判断のための比較検討を欠いたまま本件基本設計委託契約及び本件
実施設計委託契約を締結したのであり,本件実施設計委託契約の締結に
は合理的な裁量を逸脱した違法があり(被控訴人は,本件実施設計委託
契約について,価格の多寡で設計者を選定するのは不合理であるとの態
度をとっているから,五井建築の言い値で同契約を締結せざるを得なか
ったことになる,同契約は無効である。。)
イ被控訴人の主張
(ア)控訴人らの主張(ア)につき
プロポーザル審査委員会が平成14年3月5日に五井建築を推薦し
(乙6,これを承けて津幡町工事請負業者選考委員会が審議し,同月)
6日本件基本設計委託契約について承認し(乙22,同年9月2日本)
件実施設計契約について承認した(乙23。)
(イ)控訴人らの主張(イ)につき
本件基本設計委託契約の予定価格は乙20のとおり設定され,本件実
施設計委託契約の予定価格は乙21のとおり設定された。
(2)本件交換的変更申立ての適否
ア被控訴人の主張
(ア)本件義務付け請求については,監査請求が前置されていない。仮に本
件義務付け請求について改めて本件公金支出に対する監査請求を前置す
る必要がないとしても,本件交換的変更申立てによる本件義務付け請求
は新たな訴えの提起であるから,その出訴期間は,本件公金支出がされ
たことを知り得た日から30日以内である。本件公金支出に係る支出命
,,令日は平成15年4月25日であり支出日は同年5月20日であって
控訴人らは,平成16年10月末日までにはこの事実を知っていたか,
少なくとも知り得たから,本件交換的変更申立てによる本件義務付け請
求は出訴期間徒過後のものである。したがって,このような不適法な訴
えへの変更を内容とする本件交換的変更申立ては許されない。
,,(イ)控訴審における本件交換的変更申立ては本件義務付け請求について
被控訴人に保障された審級の利益を奪うとともに,その相手方とされた
A,五井建築の審級の利益も不当に奪う結果となるから,被控訴人及び
相手方の同意がない限り,不適法というべきである。
イ控訴人らの主張
(ア)本件差止請求と本件義務付け請求は,争点が同一であり,両請求は密
接不可分の関係にあり,本件公金支出後はこれに対する損害賠償義務付
け請求が当然に予測され,かつ,当事者も同一であるから,本件差止請
求に係る訴え提起時に本件義務付け請求に係る訴えが提起されたものと
みなすことができる特段の事情があり,本件交換的変更申立てによる本
件義務付け請求は出訴期間の制限に違反しない。
また,控訴人らが本件公金支出を知り得たのは平成16年11月14
日であり,具体的な支出命令や支出行為日を調査するには限界があると
ころ,被控訴人は,本件差止請求に係る訴えが第1審に係属中に本件公
金支出をしながら,これを控訴人らに開示することなく,隠し続けてい
たから,このような被控訴人が本件義務付け請求について出訴期間経過
を理由として不適法な訴えであると主張し,本件交換的変更申立てが許
されないと主張することは信義則に反して許されない。
(イ)五井建築は,第1審において陳述書を提出する等,本件訴訟に実質的
に参加しており,審理の対象は,本件実施設計委託契約が随意契約の方
法によって締結されたことの違法性の有無及びその効力といった点にあ
ることは変わりがないから,本件交換的変更申立てにより,控訴審にお
いて本件義務付け請求について審理しても,五井建築の審級の利益を害
するものではない。
(3)本件義務付け請求に関する主張
ア控訴人らの主張
(ア)本件実施設計委託契約の締結が違法な支出負担行為であり,同契約は
私法上も無効であることは,既に主張したとおりである。
(イ)被控訴人は,故意又は過失により,本件実施設計委託契約の締結とい
,,う違法な支出負担行為をし同契約が無効なものであるにもかかわらず
本件実施設計委託契約に基づく報酬支払のために違法に支出命令をし,
五井建築に対して本件公金支出をさせ,津幡町に対し,本件公金支出額
7770万円と同額の損害を与えた。
(ウ)五井建築は,津幡町に違法・無効な本件実施設計委託契約に基づく報
酬の支払をさせてこれを受領し,同町に対して本件公金支出相当額の損
害を与えるとともに,同額の不当利得をした。
(エ)よって,控訴人らは,被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1
項4号前段に基づき,本件実施設計委託契約を締結し,本件公金支出の
支出命令をしたAに対する前記第1,1(2)アの損害賠償請求をするこ
と,同条第1項後段に基づき,五井建築に対する前記第1,1(2)イの
損害賠償請求又は不当利得返還請求をすることを求める。
なお,本件義務付け請求が出訴期間を遵守した適法な訴えであること
は,上記(2)イ(ア)のとおりである。
イ被控訴人の主張
,,,(ア)本件義務付け請求は上記(2)ア(ア)のとおり監査請求を経ておらず
かつ,出訴期間経過後の訴えであり,不適法である。
(イ)控訴人らの主張は,被控訴人の支出命令に基づき本件公金支出がされ
たことは認め,その余を争う。
第3当裁判所の判断
1本件差止請求に係る訴えの適否について
本件差止請求に係る訴えは,地方自治法242条の2第1項1号に基づき,
津幡町長である被控訴人に対し,本件実施設計委託契約に基づく報酬の支払の
ために公金支出の差止めを請求する住民訴訟であるところ,上記報酬は,前記
前提事実のとおり,本件訴訟が原審に係属中の平成15年5月20日の本件公
金支出により全額支払われて,支払済みとなったというのであるから,本件差
止請求は,差止めの対象が消滅したことにより,訴えの利益が消滅したものと
いうべきである。
なお,被控訴人は,控訴人らが当審でした本件交換的変更申立てに対し,異
議を述べてその不許を求めているから,本件差止請求に係る訴えの取下げに同
意しているものと認めることはできず,本件交換的変更申立ての適否にかかわ
らず,本件差止請求に係る訴えは依然として係属しているものである。
,,,。したがって本件差止請求は不適法であるからこれを却下すべきである
2本件交換的変更申立ての適否について
(1)本件交換的変更申立ては,行政事件訴訟法19条2項により準用される民
事訴訟法143条に基づく訴えの変更申立てであり,上記1のとおり被控訴
人が本件差止請求の取下げに同意しないため,本件差止請求の訴えに本件義
務付け請求の訴えを追加する申立て(訴えの追加的変更申立て)としての効
,,果を有するものであるから本件義務付け請求の訴えの追加申立ての許否は
民事訴訟法143条1項に従って判断されるべきものである。なお,被控訴
人は,本件義務付け請求が不適法な訴えであるから,不適法な訴えへの変更
を内容とする本件交換的変更申立ては許されない旨主張するが,同条1項本
文は,訴えの変更の要件として,請求の基礎が同一であることを求めるのみ
で,既に係属する訴えが適法なものであることも,変更申立てに係る訴えが
適法な訴えであることも,その要件としていないから,被控訴人の上記主張
は採用できない。
(2)前記第2の1のとおり,本件差止請求は,控訴人らが,αの町民として,
被控訴人が五井建築との間で随意契約の方法で本件実施設計委託契約を締結
したことに関して,随意契約の方法で締結することができない場合であるの
に随意契約の方法で締結した違法があり,同契約は無効であると主張して,
地方自治法242条の2第1項1号に基づき,津幡町の執行機関である被控
訴人に対し,同契約に基づく報酬支払のための公金支出の差止めを請求した
住民訴訟であり,他方,本件義務付け請求は,被控訴人が既に五井建築に対
して本件実施設計委託契約に基づいて本件公金支出をしていたとの事実を承
けて,違法・無効な本件実施設計委託契約に基づく報酬支払のための違法な
本件公金支出により津幡町が本件公金支出額7770万円相当の損害を被
り,五井建築が同額の不当利得をしたと主張して,津幡町の執行機関である
被控訴人に対し,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき津幡町長
として支出負担行為及び本件公金支出の支出命令をしたAに対する損害賠償
請求をすることを求め,同第1項4号後段に基づき五井建築に対する損害賠
償請求又は不当利得返還請求をすることを求める住民訴訟であるから,本件
差止請求と本件義務付け請求とは,訴訟の当事者を同一にする同一の訴訟手
続による訴えであり,また,本件実施設計委託契約を随意契約の方法で締結
したことが違法か否か,違法な場合には同契約は無効であるか否かを主要な
争点とする点でも共通するため,両請求における主張立証は概ね共通するこ
とが認められるから,両請求はその請求の基礎を同一にするものと解するこ
とができる。
(3)ところで,本件義務付け請求の追加が認められ,控訴人らの本件義務付け
請求が認容された場合において,被控訴人が,これに従って賠償請求等を提
起すべき相手は,Aと五井建築であるところ,地方自治法242条の2第7
項によれば,被控訴人は,これらの者に対し,本件義務付け請求に係る訴え
(同第1項4号の規定による訴訟)に関して,遅滞なく訴訟告知をしなけれ
ばならないものとされている。これは,これらの者が同訴えの帰趨に強い利
害関係を有する者であるため,これらの者に対して訴訟告知をすることで,
これらの者にその訴訟手続に関与する機会を与えるとともに,本件義務付け
請求が認容された場合に被控訴人がこれに従ってこれらの者に対して提起す
る上記損害賠償請求等の訴訟において,本件義務付け請求についての判決の
効力(民事訴訟法53条による同法46条所定の効力)をこれらの者にも及
ぼすことにより,本件義務付け請求に対する判決の判断と上記損害賠償請求
等に対する判決の判断との矛盾をできる限り回避する趣旨に出たものである
から,被控訴人には,本件義務付け請求に係る訴えについて,第1審におい
てAと五井建築に対して訴訟告知をし,上記判決の効力を享受する法的利益
。,,があるというべきであるそして本件義務付け請求に係る訴えについては
地方自治法242条の2第11項により行政事件訴訟法43条が適用され,
行政訴訟手続によって審理されるべきものであることも考慮すると,被控訴
人の有する上記法的利益を内容とする審級の利益に配慮する必要があるか
ら,このような配慮を必要としない特段の事情のない限り,控訴審において
本件義務付け請求を追加するには被控訴人の同意を要するものというべきで
ある(最高裁平成5年7月20日第三小法廷判決・民集47巻7号4627
頁参照。)
これを本件についてみるに,本件義務付け請求のうちAに対する損害賠償
請求義務付け請求に関しては,同人が,津幡町の執行機関である町長として
ではあるが,上記損害賠償請求義務付け請求と請求の基礎を同一にする本件
差止請求に係る訴えについて,1審被告及び被控訴人として第1審からその
審理に関与してきたものである上,上記損害賠償請求義務付け請求は,控訴
人らが本件差止請求で差止めを求めていた公金支出が,同請求に係る訴訟の
係属中に被控訴人の支出命令により,支出されたことにより派生した訴えで
あることも考慮すると,上記特段の事情があるものというべきである。しか
し,本件義務付け請求のうち五井建築に対する損害賠償請求等義務付け請求
に関しては,上記特段の事情があることを認めることはできない(なお,五
井建築代表者作成の陳述書が,原審において,被控訴人から乙17として提
,。)。出されているがそのことで上記特段の事情があるということはできない
そして,被控訴人は,本件交換的変更申立てに異議を述べ,その不許を求
めているから,控訴人らが本件義務付け請求を追加することに同意している
ものと認められない。なお,控訴人らが指摘する事情があったとしても,被
控訴人が本件交換的変更申立てに異議を述べ,その不許を求めることが信義
則に反して許されないとはいえない。
(4)したがって,本件交換的変更申立てによるAに対する損害賠償請求義務付
け請求の追加申立ては,適法としてこれを許可することとする。他方,本件
交換的変更申立てによる五井建築に対する損害賠償請求等義務付け請求の追
加申立ては,不適法であるから,これを不許可とし,同請求に係る訴えを管
轄地方裁判所に移送すべきであるが,控訴人らは,本件交換的変更申立てに
よる訴えの追加申立てが不適法とされても,追加申立てに係る訴えを専ら本
件訴訟での他の請求と併合審判を受けることを目的としてされたものである
として,上記移送を求めない旨陳述している(当審第5回口頭弁論調書)か
ら,五井建築に対する損害賠償請求等義務付け請求に係る訴えは不適法とし
て,これを却下することとする。
3Aに対する損害賠償請求義務付け請求(以下「新請求」という)について。
(1)新請求の適否
ア監査請求経由の要否
前記前提事実のとおり,控訴人らは,本件実施設計委託契約を随意契約
,,で締結することが違法であるとして監査請求をしこれが却下されたため
被控訴人に対し,本件実施設計委託契約の締結が違法な支出負担行為であ
り,同契約が無効なものであるとして,これに基づく報酬を公金で支出す
ることの差止めを求める本件差止請求を内容とする本件訴訟を提起したも
のであるところ,新請求は,上記報酬が本件公金支出により支払われたこ
とを承けて,被控訴人に対し,本件実施設計委託契約締結という違法な支
出負担行為とこれから派生した支出命令の違法を理由としてAに対する損
害賠償請求をすることを請求する訴えであるから,上記監査請求の対象と
した違法な財務会計上の行為と,控訴人らが新請求において違法であると
主張する財務会計上の行為の主要部分は同一である。したがって,新請求
に係る訴えについては,上記監査請求により,既に地方自治法242条の
2第1項が定める監査請求を経由しているものであり,監査請求前置の要
件に欠けるところはない(最高裁平成10年7月3日第二小法廷判決・裁
判集民事189号1頁参照。)
イ出訴期間の遵守の有無
上記2のとおり,新請求は,本件交換的変更申立てにより,当審で追加
された訴えであるから,その出訴期間の遵守の有無は,特段の事情のない
限りは,新請求が追加された時を基準として決するべきものではあるが,
新請求と従前から係属していた本件差止請求とは,その訴訟物が異なるも
のの,当事者を同一にする上,上記アのとおり,違法な財務会計上の行為
の主要部分を共通にし,また,新請求は,本件差止請求に係る訴えが係属
中にそこで差止めの対象とされた公金が支出されたことから派生した訴え
であるから,新請求に係る訴えについては,本件差止請求に係る訴えが提
起された時にその提起がされたものと同視すべき特段の事情があるものと
いうべきである(最高裁昭和61年2月24日第二小法廷・民集40巻1
号69頁参照。これに反する被控訴人の主張は採用できない。)
そして,本件差止請求に係る訴えが出訴期間内に提起されたものである
ことは,前記前提事実から明らかである。
したがって,新請求に係る訴えについて,その出訴期間の遵守に欠ける
ところはないというべきである。
(2)新請求の当否
ア本件実施設計委託契約を随意契約により締結したことが違法か否か
当裁判所も,被控訴人が本件実施設計委託契約を随意契約により締結し
たことについて違法がないと判断するが,そのように判断した理由は,以
下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の事実及び理由の第4の2に
記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(ア)原判決16頁7行目の「19」の次に「27ないし29」を加え,,,
同8行目の「乙14ないし18」を「乙14ないし19,24,25,証
人B」と改める。
(イ)原判決19頁21行目の「なお」から23行目の「ためであって」まで
を「そして」と改める。
(ウ)原判決20頁4行目の「勧められるように」を「進められるように」と
改める。
(エ)原判決20頁14行目と15行目の間に次のとおり加える。
「(ウ)そして,社団法人公共建築協会が平成6年11月に発行した『公共
建築におけるプロポーザル方式に基づく設計者選定方式に関する資料乙』(
24)には,設計者の創造性,技術力,経験等が発揮されるのは基本設計
段階において顕著であり,実施設計はそれを施工者に伝達するための設計
図書作成の段階ということができること,したがって,実施設計を委託し
ようとする場合は,相応の技術力等を判断し得るものであれば,必ずしも
プロポーザル方式によらなくともよい場合もあると考えられること,しか
し,基本設計及び実施設計は,特段の理由がある場合を除き,設計行為の
一貫性の確保,著作権の保護等の観点から,同一の設計者が一貫して担当
するのが望ましいことが述べられている」。
(オ)原判決21頁9行目の「発注者」を「発注者及び基本設計者」と,同1
1,12行目の「安価に委託できるはずである」を「実施設計の委託が。
安価となることが期待できる」と,それぞれ改める。。
(カ)原判決21頁13行目の「基本設計の設計思想」を「基本設計をする過
程において発注者との協議を踏まえて形成され,基本設計図等に具体化さ
れた設計思想」と改め,同15行目末尾に次のとおり加える。
「社団法人公共建築協会発行の『公共建築におけるプロポーザル方式に基
づく設計者選定方式に関する資料(乙24)が,基本設計及び実施設計』
は,特段の理由がある場合を除き,設計行為の一貫性の確保,著作権の保
護等の観点から,同一の設計者が一貫して担当するのが望ましい旨述べて
いるのも,概ね上記と同趣旨であると解される」。
(キ)原判決21頁17行目の「競争原理」を「価格の多寡を重要な目安とす
る競争原理」と改める。
(ク)原判決21頁23行目の「のではないか」を削除する。
(ケ)原判決21頁24行目の「原告は」から同22頁2行目末尾までを次の
とおり改める。
「控訴人らは,基本設計と実施設計を異なる業者が受託した2事例(甲1
4,16)を指摘し,また,指名型プロポーザル方式で基本設計業者を選
定するとした上で,基本設計業者に選定されたことで必ずしも実施設計を
委託することを約束するものでないことを明記した実施要領(甲27,)
公募型プロポーザル方式で実施設計業者を選定するとする実施要領(甲2
8)の存在を指摘し,これらの事例から基本設計業者と実施設計業者が同
一人でなくとも不都合,不合理はない旨主張するが,これらの事例を検討
しても,社団法人公共建築協会発行の『公共建築におけるプロポーザル方
式に基づく設計者選定方式に関する資料(乙24)において述べられて』
いること(設計者の創造性,技術力,経験等が発揮されるのは基本設計段
階において顕著であり,実施設計はそれを施工者に伝達するための設計図
書作成の段階ということができ,基本設計及び実施設計は,特段の理由が
ある場合を除き,設計行為の一貫性の確保,著作権の保護等の観点から,
同一の設計者が一貫して担当するのが望ましい旨の記述)の趣旨の範囲を
出るものとは解されないのであり,結局において,控訴人らの指摘する事
例によっては,基本設計をした業者に実施設計を委託することが合理的で
ないことは何ら証明されない」。
(コ)原判決22頁10行目の「原告」を「控訴人ら」と改める。
(サ)原判決23頁14行目末尾に次のとおり加える。
「このことは,指名する複数の者から優れた設計者に設計を委ねるべく,
設計候補者を選定する方法として,指名型プロポーザル方式を採用する宮
城県の事例等(甲27,乙19,プロポーザル方式が採用されている事)
例が少なくないことからも明らかである」。
(シ)原判決24頁7行目と8行目の間に次のとおり加える。
「ウ予定価格の定めについて
控訴人らは,本件基本設計委託契約及び本件実施設計委託契約に先
立って,契約代金の予定価格が定められなかった違法があると主張す
る。しかし,証拠(乙8の1,乙9,20ないし23)によれば,本
件基本設計委託契約については,その締結に先立って,予定価格とし
て1850万円(消費税別)が決定され,本件実施設計委託契約につ
いては,その締結に先立って,予定価格として7850万円(消費税
別)が決定され,実際に約定された契約報酬額はいずれもその範囲内
であったことが認められるから,控訴人らの上記主張は採用できな
い」。
(ス)原判決24頁8行目冒頭の「ウ」を「エ」と,同行目の「原告がるる主
張する事情を考慮しても」を「控訴人らが縷々主張する事情を考慮しても
(なお,本件基本設計委託契約の締結に関しては,プロポーザル審査委員
会が平成14年3月5日に五井建築を推薦し(乙6,これを承けて津幡)
町工事請負業者選考委員会が審議し,同月6日に承認したこと(乙22)
が認められる」と,それぞれ改める。。)
イそうすると,被控訴人が,本件実施設計委託契約を随意契約の方法で締結
したことに違法があるということはできないのであり,したがって,本件実
施委託契約に基づく報酬を支払うための支出命令をしたことに違法があると
いうこともできない。
ウしたがって,控訴人らの新請求は,その余の点について判断するまでもな
く,理由がないから,これを棄却すべきである。
4結論
以上によれば,原判決を取り消し,控訴人らの本件差止請求に係る訴えを却
下し,また,控訴人らが当審で追加した五井建築を相手方とする損害賠償請求
等義務付け請求に係る訴えをいずれも却下し,Aに対する損害賠償請求義務付
け請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
名古屋高等裁判所金沢支部第1部
裁判長裁判官長門栄吉
裁判官渡邉和義
裁判官中山大行

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