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平成19年2月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官
平成15年第16924号損害賠償等請求事件(ワ)
平成19年1月19日口頭弁論終結
判決
東京都練馬区<以下略>
原告株式会社ハイテック・プロダクト
原告訴訟代理人弁護士吉澤敬夫
同牧野知彦
同訴訟代理人弁理士岡本啓三
広島県福山市<以下略>
被告ローツェ株式会社
被告訴訟代理人弁護士山下英樹
同遠山信一郎
同梶原則子
同仲卓也
同補佐人弁理士忰熊弘稔
同木村高久
同小幡義之
主文
1被告は,別紙物件目録記載の各製品を製造し,譲渡し,輸入し,又は譲渡の申
出をしてはならない。
2被告は,その占有する前項の製品を廃棄せよ。
3被告は,原告に対し,3004万2871円及びこれに対する平成15年8月
19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4原告のその余の請求を棄却する。
5訴訟費用は,これを10分し,その7を被告の負担とし,その余を原告の負担
とする。
6この判決は第3項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1原告の請求
1主文第1項と同旨
2主文第2項と同旨
3被告は,原告に対し,1億2000万円及びこれに対する平成15年8月1
9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4仮執行宣言
第2事案の概要
本件は「多関節搬送装置,その制御方法及び半導体製造装置」について特,
許権を有する原告が,被告が製造販売する基板搬送装置が上記特許発明の技術
的範囲に属するとして,その製造等の差止め,損害賠償金の支払等を求めた事
案である。
()1前提となる事実争いのない事実及び末尾掲記の証拠により認められる事実
()原告は,精密機械の開発及び設計,半導体製造装置の製図及び製造,販売1
等を業とする株式会社である。
被告は,電子機器の製造,販売,輸出入等を業とする株式会社である。
()原告は,次の特許(以下「本件特許」という)につき特許権(以下「本2。
件特許権といい本件特許の願書に添付した明細書及び図面をまとめて本」,「
件明細書」という)を有する(甲1,2。。)
ア発明の名称多関節搬送装置,その制御方法及び半導体製造装置
イ特許番号第2580489号
ウ出願日平成6年5月13日
エ出願番号特願平6−100065
オ公開日平成7年7月11日
カ公開番号特開平7−171778
キ優先日平成5年11月4日
ク優先権主張国日本
ケ登録日平成8年11月21日
()本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び請求項6の記載は次のとおり3
である(甲2。以下,請求項1に記載された発明を「本件特許発明1,請」
求項6に記載された発明を「本件特許発明2」といい,両者を併せて「本件
各特許発明」という。本判決添付の特許公報(以下「本件公報」という)。
参照。)
ア請求項1
「第1の搬送部(15)と,前記第1の搬送部(15)の回転面に対
して上又は下側に位置するように高さを規定した第2の搬送部(16)
と,前記第1の搬送部(15)を一方向に伸縮する第1の多関節駆動部
(11)と,前記第2の搬送部(16)を一方向に伸縮する第2の多関
節駆動部(12)と,前記第1の多関節駆動部(11)の回動中心とな
る第1の固定軸(13A)と,前記第2の多関節駆動部(12)の回動
中心となる第2の固定軸(13B)とを有し,かつ,前記第1の多関節
駆動部(11)に回転力を与える第1の駆動軸(13C)と前記第2の
多関節駆動部(12)に回転力を与える第2の駆動軸(13D)とを有
する共通駆動部(13)と,前記第1の多関節駆動部(11,第2の多)
関節駆動部(12)及び共通駆動部(13)を回動制御する駆動制御手
段(14)とを備え,前記第1の搬送部(15)及び第2の搬送部(1
6)を前記共通駆動部(13)の上部に縮めたとき,前記第1の搬送部
(15)と第2の搬送部(16)とを高低差をもって重なるようにした
ことを特徴とする多関節搬送装置」。
イ請求項6
「前記共通駆動部(13)の回転軸を概略垂線とする平面において,
該共通駆動部(13)が『く』の字型に屈曲されたアーム状を構成する
ことを特徴とする請求項1記載の多関節搬送装置」。
()本件各特許発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下「構成4
要件A」などという)。
ア本件特許発明1
A第1の搬送部(15)と,
B前記第1の搬送部(15)の回転面に対して上又は下側に位置する
ように高さを規定した第2の搬送部(16)と,
C前記第1の搬送部(15)を一方向に伸縮する第1の多関節駆動部
(11)と,
D前記第2の搬送部(16)を一方向に伸縮する第2の多関節駆動部
(12)と,
E前記第1の多関節駆動部11の回動中心となる第1の固定軸1()(
3A)と,前記第2の多関節駆動部(12)の回動中心となる第2の
固定軸(13B)とを有し,かつ,前記第1の多関節駆動部(11)
に回転力を与える第1の駆動軸(13C)と前記第2の多関節駆動部
(12)に回転力を与える第2の駆動軸(13D)とを有する共通駆
動部(13)と,
F前記第1の多関節駆動部(11,第2の多関節駆動部(12)及び)
共通駆動部(13)を回動制御する駆動制御手段(14)とを備え,
G前記第1の搬送部(15)及び第2の搬送部(16)を前記共通駆
動部(13)の上部に縮めたとき,前記第1の搬送部(15)と第2
の搬送部(16)とを高低差をもって重なるようにした
Hことを特徴とする多関節搬送装置
イ本件特許発明2
AないしH前記アのAないしHと同様
I前記共通駆動部(13)の回転軸を概略垂線とする平面において,
該共通駆動部(13)が「く」の字型に屈曲されたアーム状を構成す

()被告の各製品について5
,(,「」被告は別紙物件目録記載の基板搬送装置以下まとめて被告各製品
という)を製造ないし販売している(甲4,6,9,11,12,13,。
14,乙3,弁論の全趣旨。)
ア別紙物件目録記載1及び2の製品(以下「イ号物件」という)の構成。
被告各製品のうちイ号物件の構成を構成要件に則して分説すると次の
とおりである。
a第3アーム(3a)と,
b前記第3アーム(3a)の回転面に対して,第3アーム(3a)と
の間に被搬送物である基板を位置させることができる程度下側に位置
するように,高さを規定した第3アーム(3b)と,
()(),c前記第3アーム3aを一方向に伸縮する第2アーム6aと
()(),d前記第3アーム3bを一方向に伸縮する第2アーム6bと
e前記第2アーム(6a)の回動中心となる支持筒(10a)と前記
第2アーム(6b)の回動中心となる支持筒(10b)とを有し,か
つ,前記第2アーム(6a)に回転力を与える第2の支軸(16)と
前記第2アーム(6b)に回転力を与える第3の支軸(17)とを有
する第1アーム(11)と該第1アーム(11)と一体の第1の支軸
(15)と,
f前記第2アーム6a第2アーム6b及び前記第1アーム1(),()(
1)と一体の第1の支軸(15)を回動制御するモータ部(23,モ)
ータ部(30,及びモータ部(33)とを備え,)
g前記第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を前記第1アーム
(11)と前記第1アーム(11)と一体の第1の支軸(15)の上
部に縮めたとき,前記第3アーム(3a)と第3アーム(3b)とを
高低差をもって重なるようにした,
h基板搬送装置
i前記第1アーム(11)は,回転軸である第1の支軸(15)を概
略垂線とする平面上において「く」の字型に屈曲されている。,
(),()()j前記第1の支軸15第2の支軸16及び第3の支軸17
は,同心軸であって,第1の支軸(15)は,同心軸の最内軸であっ
て回動制御されるモータ部(33)に直結され,他の第2の支軸(1
6)を回動制御するモータ部(23)及び第3の支軸(17)を回動
制御するモータ部(30)は,第1の支軸(15)と一体の棚板(2
4)に固定されている
イ別紙物件目録記載3及び4の製品(以下「ロ号物件」という)の構成。
被告各製品のうちロ号物件の構成を構成要件に則して分説すると次の
とおりである。
a第3アーム(3a)と,
b前記第3アーム(3a)の回転面に対して下側に位置するように高
さを規定した第3アーム(3b)と,
()(),c前記第3アーム3aを一方向に伸縮する第2アーム6aと
()(),d前記第3アーム3bを一方向に伸縮する第2アーム6bと
e前記第2アーム(6a)の回動中心となる支持筒(10a)と,前
記第2アーム(6b)の回動中心となる支持筒(10b)とを有し,
かつ,前記第2アーム(6a)に回転力を与える第2の支軸(16)
と前記第2アーム(6b)に回転力を与える第3の支軸(17)とを
有する第1アーム(11)と該第1アーム(11)と一体の第1の支
軸(15)と,
f前記第2アーム6a第2アーム6b及び前記第1アーム1(),()(
1)を回動制御するモータ部(23,モータ部(30,及びモータ))
部(33)とを備え,
g前記第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を前記第1アーム
(11)の上部に縮めたとき,前記第3アーム(3a)と第3アーム
(3b)とを高低差をもって重なるようにした,
i前記第1アーム(11)は,回転軸である第1の支軸(15)を概
略垂線とする平面上において,別紙ロ号物件斜視図のような形状をし
ている,
h基板搬送装置
()イ号物件の構成aないしd,g及びhは本件特許発明1の構成要件Aな6
いしD,G及びHをそれぞれ充足し,イ号物件の構成aないしd,gない
しiは本件特許発明2の構成要件AないしD,GないしIをそれぞれ充足
する(弁論の全趣旨。)
ロ号物件の構成a,b,g及びhは本件特許発明1の構成要件A,B,
G及びHを充足し,ロ号物件の構成a,b及びgないしiは本件特許発明
,()。2の構成要件AB及びGないしIをそれぞれ充足する弁論の全趣旨
()本件特許の出願,無効審判及び訂正審判の経緯等7
ア原告は,平成6年5月13日,本件特許を出願した。特許庁は,本件特
許出願に対し,本件特許発明1を含む請求項1,2,4,10について特
開平2−83182号公報(乙2)に基づいて容易に発明することができ
たものであるとして平成8年4月11日起案日の拒絶理由通知をした乙,(
8。原告は,これに対し,本件特許発明1について,上記公報には記載)
されていない構成要件B及びGの特徴を備えている旨の意見書(乙9)を
提出し,同年11月21日に特許登録された。
イ被告は,平成8年11月27日,被告代表者を発明者として,くの字型
の共通駆動アームを有する基板搬送装置について特許出願した(特開平1
0−163296号。甲5。以下,同特許に係る公報を「甲5公報」とい
う。。)
ウ被告代表者は,平成13年ころ,原告代表者と面会し,原告及び被告と
の間で,被告が本件特許権を買い取るか,又は,被告が専用実施権の設定
を受けるという内容の契約締結に向けて交渉を行った。しかし,原告が被
告以外の第三者に対して本件特許権をライセンスしないという条件を承諾
せず,通常実施料の価格でも折り合いがつかないなどの事情により,上記
交渉は決裂した(弁論の全趣旨。)
エ原告は,特許庁に対し,イ号物件が本件特許発明1の技術的範囲に属す
る旨の判定を求め,特許庁は,平成15年5月2日付けで,イ号物件は本
件特許発明1の技術的範囲に属する旨の判定を行った(甲3。)
オ被告は,平成16年10月8日付け審判請求書において本件各特許発明
について無効審判を請求し(乙10,特許庁の審判官は,平成17年6)
月28日付けで本件各特許発明に係る特許を無効とする旨の審決をした
(無効2004−80181。乙16。以下「乙16審決」という。。)
原告は,平成17年8月1日,知的財産高等裁判所に上記審決の取消を求
める訴えを提起した。
カ原告は,同月22日付け審判請求書において,本件明細書の特許請求の
範囲の請求項1を次のように訂正する旨の審決を求めた(甲19。訂正2
005−39148号。以下,同訂正に係る特許請求の範囲の請求項1及
び同6を「本件訂正特許発明1「本件訂正特許発明2」という。訂正」,
によって追加された部分(以下「本件訂正部分」という)に下線を付し。
た。。)
「第1の搬送部(15)と,前記第1の搬送部(15)の回転面に対し
て上又は下側に位置するように高さを規定した第2の搬送部(16)と,
()()前記第1の搬送部15を一方向に伸縮する第1の多関節駆動部11
と前記第2の搬送部16を一方向に伸縮する第2の多関節駆動部1,()(
2)と,前記第1の多関節駆動部(11)の回動中心となる第1の固定軸
(13A)と,前記第2の多関節駆動部(12)の回動中心となる第2の
固定軸(13B)とを有し,かつ,前記第1の多関節駆動部(11)に回
転力を与える第1の駆動軸(13C)と前記第2の多関節駆動部(12)
に回転力を与える第2の駆動軸(13D)とを有する共通駆動部(13)
と,前記第1の多関節駆動部(11,第2の多関節駆動部(12)及び)
共通駆動部(13)を回動制御する駆動制御手段(14)とを備え,前記
駆動制御手段(14)が行う制御には,第1の搬送部(15)又は第2の
()(),搬送部16を伸縮するために共通駆動部13を回動させる制御と
この共通駆動部(13)を回動させる制御中,第2の搬送部(16)又は
第1の搬送部(15)が共通駆動部(13)上に取り込まれた状態である
ようにする制御とが含まれるものであって,前記第1の搬送部(15)及
び第2の搬送部(16)を前記共通駆動部(13)の上部に縮めたとき,
前記第1の搬送部(15)と第2の搬送部(16)とを高低差をもって重
なるようにしたことを特徴とする多関節搬送装置」
キ知的財産高等裁判所は,原告の上記訂正審判請求を受けて,同年11月
8日,上記審決を取り消す旨の決定を行い,事件を特許庁に差し戻した。
原告は,取消後の無効審判において,上記訂正審判請求と同じ内容の訂正
請求をした(以下「本件訂正請求」という。。)
ク特許庁は,平成18年8月15日付けで,本件訂正請求を認め,本件訂
正特許発明1及び2に係る特許を無効とする旨の審決をした(無効200
4−80181。乙17。以下「乙17審決」という。原告は,平成。)
18年9月19日付けで,知的財産高等裁判所に上記審決の取消を求める
訴えを提起した(平成18年(行ケ)第10421号事件。甲22の1・
2。)
2争点
()イ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか(争点1。1)
アイ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを充足するか
(争点1−1。)
イイ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを充足するか
(争点1−2。)
()イ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が2
成立するか(争点2。)
()ロ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか(争点3。3)
アロ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを充足するか
(争点3−1。)
イロ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを充足するか
(争点3−2。)
()ロ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が4
成立するか(争点4。)
()本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものと5
いえるか(争点5。)
ア本件特許発明1が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたも
のといえるか(争点5−1。)
イ本件特許発明1が特開平2−83182号公報(乙2)に記載された発
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたも
のといえるか(争点5−2。)
ウ本件特許発明1が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された
発明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができた
ものといえるか(争点5−3。)
エ本件特許発明1が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術(乙1」
1の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」に基づいて当業者が
容易に発明することができたものといえるか(争点5−4。)
オ本件特許発明1が合衆国特許4678393(乙12の1)に記載され
た発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか
(争点5−5。)
カ本件特許発明1が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲
載された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえ
るか(争点5−6。)
()本件特許発明1の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点6。6)
ア本件特許発明1の無効理由が本件訂正によって解消されるか(争点6−
1。)
イ本件訂正請求が訂正要件を満たすといえるか(争点6−2。)
ウ被告各製品が本件訂正部分の構成を充足するか(争点6−3。)
()本件特許発明2に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものと7
いえるか(争点7。)
ア本件特許発明2が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたも
のといえるか(争点7−1。)
イ本件特許発明2が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された
発明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができた
ものといえるか(争点7−2。)
ウ本件特許発明2が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術(乙1」
1の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」及び特開平4−30
447号公報(乙1,特開昭63−288677号公報(乙4)ないし)
特開平5−109866号公報(乙7)のいずれかに基づいて当業者が容
易に発明することができたものといえるか(争点7−3。)
エ本件特許発明2が合衆国特許4678393(乙12の1)及び特開平
(),()4−30447号公報乙1特開昭63−288677号公報乙4
ないし特開平5−109866号公報(乙7)のいずれかに記載された発
明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点
7−4。)
オ本件特許発明2が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲
載された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえ
るか(争点7−5。)
()本件特許発明2の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点8。8)
ア本件特許発明2の無効理由が本件訂正によって解消されるか(争点8−
1。)
イ本件訂正請求が訂正要件を満たすといえるか(争点8−2。)
ウ被告各製品が本件訂正特許発明2の技術的範囲に属するか(争点8−
3。)
()本件明細書の発明の詳細な説明が平成6年法律第26号による改正前の特9
許法36条(以下「改正前36条」という)4項及び5項2号の規定する。
要件を満たしているか(争点9。)
()損害の額(争点10)10
第3当事者の主張
1イ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか
()争点1−1(イ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを1
充足するか)について
ア原告
)イ号物件の構成eの「支持筒(10a」及び「支持筒(10b」はa))
「()」「()」構成要件Eの第1の固定軸13A及び第2の固定軸13B
に,イ号物件の構成eの「第2の支軸(16」及び「第3の支軸(1)
7」は構成要件Eの「第1の駆動軸(13C」及び「第2の駆動軸))
(13D」に,イ号物件の構成eの「第1アーム(11)と該第1ア)
ーム(11)と一体の第1の支軸(15」は,構成要件Eの「共通駆)
動部(13」にそれぞれ該当する。したがって,イ号物件は構成要件)
Eを充足する。
)構成要件Eの「共通駆動部(13)は,第1の駆動軸(13C)と第b
2の駆動軸(13D)を有する」の意味について
被告は,構成要件Eの「共通駆動部」が駆動軸を「有する」ことの意
味について,共通駆動部が駆動軸を組み込んで,これらが同一回転軸を
有する構成であるとして,イ号物件は上記構成を有しない旨主張する。
しかし,構成要件Eの「有する」の意味を被告主張のように解釈する
理由はない。上記文言の意味は「共通駆動部」に各駆動軸が「存在す,
る」という程度の意味である(第1の駆動軸及び第2の駆動軸が共通駆
動部の外側にあるか内側にあるかを問わない。。)
本件明細書の【図1】には,第1の駆動軸と第2の駆動軸と共通駆動
部の軸を同心軸として構成されている例が記載されている。これは,半
導体ウエハ等の搬送装置のうち真空用ロボット(半導体ウエハ等の搬送
装置には真空用ロボットと大気用ロボットがある)において,支軸に磁
性流体シールを配置して搬送に関与する部分(アーム部分)を容易に真
空状態に保つことを目的として用いられる構成である(被告出願に係る
特開平10−163296(甲5)の【0032】及び図8参照。本)
件特許明細書においては,一例として上記のような構成を有する装置の
図を記載したが,本件各特許発明の技術的範囲をかかる構成に限定する
ような記載はしていない。被告の主張は特許請求の範囲の記載に基づか
ない主張である。
)なお,特許請求の範囲に記載がない場合であってもそのように解釈しc
なければ発明の作用効果を奏しないような場合には特許請求の範囲の記
載にはない要件を付加して限定解釈するような場合がないとまではいえ
ない。そこで,本件各特許発明の作用効果について検討する。本件各特
許発明に共通の作用効果は,次の①及び②であり,本件特許発明2に特
有の作用効果は次の③であり,いずれの作用効果を実現するにおいても
被告が主張するように,第1の駆動軸と第2の駆動軸と共通駆動部の軸
部分が同一の回転中心を有していることは必要ない。
①本件各特許発明によれば,第1の搬送部の回転面に対して上又は下
側に第2の搬送部の高さを規定しているので,第1及び第2の搬送部
を共通駆動部の上部に縮めたときに,第1の搬送部と第2の搬送部と
の間に,非搬送物が入り込めるような高低差を生じさせることができ
る。このため,ホームポジションで非搬送物を載置した下側の第1の
搬送部とその上側の第2の搬送部とを重ね合わせることができる。し
たがって,ホームポジションで大きな被搬送物を載置して回転すると
きも被搬送物の旋回半径を小さくすることができる(本件公報【01
08】参照。)
また,本件各特許発明によれば,共通駆動部の回転中心がロボット
全体の旋回運動の中心点であると同時に各搬送部の伸縮運動の原点に
もなっているために,旋回運動の中心点と伸縮運動の原点との差が0
となるこのため被搬送物の旋回半径を小さくすることができる甲。,(
7。被告は,原告代表者の陳述書(甲7)に記載された従来技術())1
()においても両アームの付け根にある胴体部分を共通駆動部に見立2
てて伸縮運動の際においても回転させれば,本件各特許発明における
搬送距離と従来技術における搬送距離は等しくなる旨主張する。しか
し,上記従来技術()()に代表されるような本件特許出願前の先行技12
術においては,アームの付け根の胴体部分を旋回させてしまうと,そ
の構造上,アームの向きが変わってしまうため搬送することができな
くなってしまう。仮に上記胴体部分を旋回させた上で,アームの向き
,,,を搬送方向に修正する場合には新たな駆動装置が必要となりまた
搬送のために要する時間もその分長くなる。
②本件各特許発明においては,一方の搬送部が共通駆動部上に取り込
まれた状態で他方の搬送部が一方向に伸縮されたり,二つの搬送部や
,。二つの多関節駆動部が静止している状態で共通駆動部が旋回される
このため,従来技術のような三つの基本動作(ⅰ搬送部1を上部関節
駆動部2及び下部関節駆動部3を介して搬送元と搬送先との間で往復
させること,ⅱ搬送部1に載置された被搬送物を搬送先に移動して,
それを受渡し搬送先に帰還すること,ⅲ搬送先に搬送部1を移動し,
搬送先から被搬送物を受取り搬送元に帰還すること。本件公報【00
07)に加え,搬送先の受渡し条件を代えることなく,同一方向に】
おいて一方の搬送部に載置された被搬送物を搬送先に移動してそれを
他方の搬送部を用いて搬送先の被搬送物と交換することができる(本
件公報【0008】及び【0109】参照。)
③本件特許発明2においては,共通駆動部をくの字型に屈曲すること
で両搬送部を共通駆動部上に取り込んだ状態において両搬送部を揃え
ることが可能となる。また,共通駆動部をくの字型に屈曲することに
より,一方の搬送部が搬送先からホームポジションに戻ってくる動作
が完了した時点ですでに,他方の搬送部が搬送先の方向を向くことに
なる(ホームポジションに戻る。これにより,第1の搬送部がホー)
ムポジションに戻った後に第2の搬送部の方向を搬送先の方向に向け
るために旋回させる必要がなくなるため,両搬送部の切り替え旋回時
間が無用となり,被搬送物の入れ換え時間の短縮化を計ることが可能
となる(本件公報【0109】参照。)
なお,本件明細書には【作用】との項目の下に,本件各特許発明に,
かかる装置の動作方法【0019】が記載されている。しかし,一読す
れば明らかなようにその内容は実施例の動作を説明した記載であり,作
用効果と直接結びつくものではない。このことは【0019】において
「本発明の第1の多関節搬送装置の動作を説明する。例えば・・・」と
の記載があることから明らかである。本件各特許発明の作用効果は【0
108】以下の【発明の効果】の欄に記載されている。
イ被告
)構成要件Eの「共通駆動部(13)は,第1の駆動軸(13C)と第a
2の駆動軸(13D)を有する」の意味について
①クレーム解釈
構成要件Eの「共通駆動部(13)は,第1の駆動軸(13C)と
第2の駆動軸(13D)を有する」というためには,共通駆動部の近
くに各駆動軸があるというだけでは足りず,各駆動軸が,共通駆動部
に「備わっている」ことが必要である。そして,上記駆動軸は回転す
るものであるから,共通駆動部に「固定」されているものではない。
,「」「」,このように固定されない形で備わっているというためには
各駆動軸が共通駆動部の中に組み込まれていること,すなわち,これ
らが同一の回転軸中心を有する構成であると解する必要がある。本件
明細書においても「駆動」という用語は「回転」と同義に使用され,
ているから「共通駆動部」とは「共通回転部,すなわち,第1の,」
回転軸の回転と,第2の回転軸の回転と,共通回転軸の回転の三つの
回転が中心を共通にするという意味である。
この点,原告は,共通駆動部(13)が第1の駆動軸(13C)及
び第2の駆動軸(13D)を「有する」とは,共通駆動部(13)に
第1の駆動軸(13C)及び第2の駆動軸(13D)が「存在する」
の意味であると主張する。しかし,共通駆動部に「固定されている」
ものではないのに,共通駆動部に「存在する」というのは意味不明で
ある。
②イ号物件への当てはめ
イ号物件においては,第2の支軸(16)と第3の支軸(17)は
代1アームと一体の代1の支軸(11及び15)の外側に存在し,か
つ,三者は異なる回転軸中心を有している。したがって,イ号物件の
構成eの「第1アーム(11)と該第1アーム(11)と一体の第1
の支軸(15」は,構成要件Eの「共通駆動部」に該当しない。)
)原告は,本件特許発明1の作用効果として,共通駆動部の回転中心がb
ロボット全体の旋回運動の中心点であると同時に各搬送部の伸縮運動の
原点にもなっているために,旋回運動の中心点と伸縮運動の原点との差
が0となり,被搬送物の旋回半径を小さくすることができる旨主張する
(前記ア)①。c)
しかし,上記事項は本件明細書に作用効果として記載されていないも
のである。また,上記各事項は,本件特許出願前から既に公知技術によ
って実現されていた作用効果にすぎない。すなわち,アームの付け根の
位置を装置全体の中心に近づけるほど同一の旋回半径で搬送距離を長く
することができるということは,複雑な計算をするまでもなく当然の事
項であり,当業者はアームの付け根を装置全体の中心に近づける努力を
してきた(乙2,4,7参照。)
原告は,原告代表者の陳述書(甲7)において,コの字型を有するロ
()()ボット従来技術()及び収納角度γを有するロボット従来技術()12
と本件各特許発明とを対比して,本件各特許発明の搬送距離が最も長い
と述べる。しかし,上記従来技術()及び()においても,両アームの付12
け根に存在する胴体部分をさらに回転させて胴体部分の長手方向とアー
ムの伸縮方向を揃えることによって本件各特許発明と同様の搬送距離を
得られるものである。上記陳述書に記載されている上記搬送距離の違い
は,各装置の構造の違いに由来するものではなく各装置の回転方法に由
来するものである。
()争点1−2(イ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを2
充足するか)について
ア原告
)イ号物件の構成fの「前記第2アーム(6a,第2アーム(6b)a)
及び前記第1アーム(11)と一体の第1の支軸(15)を回動制御す
るモータ部(23,モータ部(30,およびモータ部(33」は,)))
本件各特許発明の構成要件Fの「駆動制御手段(14」に該当する。)
したがって,イ号物件は本件各特許発明の構成要件Fを充足する。
)「駆動制御手段(14」の位置関係についてb)
被告は,構成要件Fの駆動制御手段(14)は,第1の駆動軸(13
C)を駆動するモータと第2の駆動軸(13D)を駆動するモータを一
つの胴体(棚板,旋回台,支持台等)に搭載する構成の駆動手段を含ま
ない旨主張する。しかし,被告主張のような限定解釈をすべき根拠はな
い。また,上記のような限定解釈をしなければ,前記1()ア)①ない1c
し③の作用効果を奏することができないということもない。
)「駆動制御手段(14」の解釈についてc)
被告は,本件特許発明の構成要件Fにおける「駆動制御手段」は,3
個の部分を駆動制御する一つの機構でなければならない旨主張する。し
かし,本件明細書には駆動制御手段をそのように限定すべき理由は記載
されていない。3個の部分を一つの機構で制御するのか3個の部分を三
つの機構で制御するのかは,当業者が適宜選択し得る事項にすぎない。
イ被告
)「駆動制御手段(14」の位置関係についてa)
①構成要件Fの駆動制御手段(14)は,第1の駆動軸(13C)を
駆動するモータと第2の駆動軸(13D)を駆動するモータを一つの
胴体(棚板,旋回台,支持台等)に搭載する構成の駆動手段を含まな
。,,(),い構成要件Eによれば本件各特許発明は第1の駆動軸13C
第2の駆動軸(13D)及び共通駆動部(13)のうちの二つあるい
()。は三つを駆動制御手段14により同期して回動させるものである
このような構成は,第1の駆動軸(13C)を駆動するモータと第2
の駆動軸(13D)を駆動するモータを一つの胴体(棚板,旋回台,
支持台等)に搭載する構成では実現できないものである。
②イ号物件は,第2の支軸(16)と第3の支軸(17)を駆動する
2台のモータ(23,30)を棚板(24)に搭載しており,第1ア
ーム(11)は,棚板及び駆動制御手段と一体である。したがって,
構成要件Fを充足しない。
)「駆動制御手段(14」の解釈についてb)
①構成要件Fの駆動制御手段(14)は,文言上,2個の多関節駆動
部(11及び12)と共通駆動部(13)の3個の部分を回動制御す
るものでなければならない。また,本件明細書の実施例においてもそ
のような構成が記載されている(図4,9。)
,()(),②イ号物件においては第2アーム6aを駆動するモータ23
()()()第2アーム6bを駆動するモータ30及び第1アーム11
とこれと一体の第1の支軸(15)を駆動するモータ(33)は存在
するものの,第2アーム(6a,第2アーム(6b)及び第1アー)
ム(11)とこれと一体の第1の支軸(15)の三つを共通に駆動す
る制御手段は存在しない。したがって,イ号物件は本件各特許発明の
構成要件Fを充足しない。
2イ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が成
立するか(争点2。)
()原告1
ア被告は,イ号物件の一部については,第3アーム(3a)及び第3アー
ム(3b)を欠いた製品(以下「未完成イ号物件」という)を製造し,。
これを国内又は海外に輸出しているから,未完成イ号物件は本件特許発明
の構成要件AないしD,G及びHを充足しておらず,未完成イ号物件の製
造,譲渡,輸出行為は,本件特許権の侵害に当たらない旨主張する。
イ直接侵害の主張
仮に,被告の主張どおりであったとしても,本件のようないわゆるメカ
トロ製品である搬送装置では,製品の搬送の都合等の理由で一部の部品を
国内出荷時には取り付けていない状態とされることがあるが,その出荷前
に機械系の完成度の確認のために,電気系制御部(制御ソフトを含む)と
接続した上で動作確認を行う必要がある。そのため,出荷前には必ず第3
アーム(3a)及び第3アーム(3b)を付加した完成品の状態で出荷の
チェックがなされる。実際,未完成ロ号物件が,広島県において第3アー
ム(3a)及び第3アーム(3b)が接続された状態の写真が新聞に掲載
されている(甲14。)
このように,被告が,未完成イ号物件について,本件特許発明1のすべ
ての構成要件を充足する形でチェックをしている以上,この段階で本件特
許発明1の直接侵害行為が成立しているというべきである。その後,その
一部品をはずしたとしても直接侵害を否定する理由にはならない。
ウ間接侵害(特許法101条1号)の主張
仮に,未完成イ号物件について直接侵害が成立しないとしても,未完成
イ号物件は第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)以外のイ号物件の
構成を備えているのであるから,他用途があり得るはずがなく,イ号物件
の生産にのみ用いられることは明らかであり,間接侵害(特許法101条
1号)が成立する。
なお,未完成イ号物件の一部は,海外に輸出されていることから,間接
侵害に関する従属説の立場からはこのような場合に間接侵害が成立するの
か問題になり得る。しかし,間接侵害における従属説や独立説の対立はあ
るとしても,実際の解釈としては,その折衷的な立場が採られているとこ
ろであり,従属説に立つからといって輸出の場合には間接侵害が成立しな
いという結論が必然的に導かれるものではない。
本件における未完成イ号物件については,第3アーム(3a)及び第3
アーム(3b)を欠くとしても,本件特許発明1の特徴である共通駆動部
等その主要な構成を備え,かつ,第3アーム(3a)及び第3アーム(3
b)を備え付けられるような構造として輸出しているのであるから,いわ
ば完成品として必要な部品をすべて日本で生産し,部品として輸出してそ
の組み立てを海外で行っているというにすぎないのであり,実質的に日本
で発明が実施されているのと同視でき,単に形式的に直接侵害が外国で行
われているというにすぎない。したがって,未完成イ号物件については間
接侵害が成立する。
()被告2
ア未完成イ号物件は,第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を欠く
状態で輸出される。
,,,したがって未完成イ号物件は本件特許発明1の構成要件AないしD
G及びHを欠いている。
イ直接侵害の主張について
原告は,未完成イ号物件においても,日本において欠けている部品を組
み合わせた上での駆動検査等を行っているはずであるから,日本における
直接侵害が成立する旨主張する。
確かに,被告は,未完成イ号物件について出荷前に部品を取り付けた上
で検査を行っているが,この際に取り付ける部品は完成品に取り付ける部
品ではなく,あくまで検査用の部品である。甲14において撮影されてい
る部品は,第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)ではなくエンドエ
フェクターと呼ばれる搬送部に相当する部品である。そもそも,仮に完成
品に取り付けるのと同様の部品を取り付けて検査していたとしても,その
ような一時的な取り付け行為をもって完成品の「生産」をしたということ
はできない。
ウ間接侵害(特許法101条1号)の主張について
特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」にいう「生産」
とは,日本国内におけるものに限られると解すべきである。間接侵害規定
は特許権の効力を拡張するものではなく,その効力の実効性を実質的に確
保するための制度であるとされている。ところが,外国で生産される物に
ついてまで「その物の生産にのみ用いる物」であるとして特許権の効力を
及ぼすと,日本の特許権者が本来当該特許権によって及ぼし得ないはずの
外国における実施行為(生産)にまで効力を及ぼすのと同等の結果を招来
することになってしまい妥当でない。
そして,未完成イ号物件のうち海外に輸出されているものについては,
イ号物件の構成を完成させる「生産」行為は外国で行われているのである
から,かかる未完成イ号物件の製造,譲渡行為は,本件特許権の侵害には
当たらない。
この点について,原告は,未完成イ号物件のうち輸出されているものに
ついて,完成品として必要な部品をすべて日本で生産し,部品として輸出
してその組み立てを海外で行っているにすぎず,実質的にみて直接侵害と
同視し得るのであるから間接侵害が成立する旨主張する。しかし,未完成
イ号物件において欠けている部品等は,外国で製造されているものであっ
て,日本ですべての部品を生産しているという事実はない。
3ロ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか
()ロ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを充足するか1
(争点3−1)
ア原告
)ロ号物件の構成eの「支持筒(10a」及び「支持筒(10b」はa))
「()」「()」構成要件Eの第1の固定軸13A及び第2の固定軸13B
に,ロ号物件の構成eの「第2の支軸(16」及び「第3の支軸(1)
7」は構成要件Eの「第1の駆動軸(13C」及び「第2の駆動軸))
(13D」に,ロ号物件の構成eの「第1アーム(11)と該第1ア)
ーム(11)と一体の第1の支軸(15」は,構成要件E「共通駆動)
部(13」にそれぞれ該当する。したがって,ロ号物件は構成要件E)
を充足する。
)被告は,構成要件Eの「共通駆動部(13)は,第1の駆動軸(13b
C)と第2の駆動軸(13D)を有する」の意味について,イ号物件に
おけると同様に限定解釈をすべきであると主張する。これに対する原告
の反論は,前記1()ア)及び)記載のとおりである。1bc
「()」「()」c)ロ号物件が第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸13D
を有するかについて
被告は,ロ号物件において原告が駆動軸であると主張する第2の支軸
(16)と第3の支軸(17)はモータの回転シャフトであって駆動軸
ではないと主張する。
しかし,ロ号物件説明書の図3を一見して明らかなとおり,第2の支
軸(16)と第3の支軸(17)は,それぞれ第2アーム(6a(6)
b)に回転力を与える駆動軸である。被告自身が出願し,本件特許出願
と内容をほぼ等しくする発明にかかる甲5公報においては,ロ号物件の
第2の支軸(16)と第3の支軸(17)に対応する部材を第2アーム
支軸(9a,第2アーム支軸9bとしており,また,同請求項5の記)
載においては「・・・く字状に形成した第1アームを取付け,該第1ア
ームの両端部に対し第2アームを回動させる支軸及びモーターを取付け
た・・・」と記載しており,モータの軸のことを「第2アームを回動さ
せる支軸」として「モーター」の一部としてではなく「支軸」とし,,
て扱っていることからも被告の主張の不当性は明らかである。
イ被告
)ロ号物件は構成要件Eの共通駆動部13は第1の駆動軸1a,「(),(
3C)と第2の駆動軸(13D)を有する」という構成を有さない点で
構成要件Eを充足しないことについては,前記1()イ記載のとおりで1
ある。
ロ号物件においては,モータ部(23,30,33)は,第1アーム
(11)の下側に設置されている。このような構成においては,本件明
細書【0019】以下に記載されているような動作をすることは不可能
である。
「()」「()」b)ロ号物件が第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸13D
を有するかについて
①構成要件Eの記載によれば「第1の駆動軸(13C」及び「第,)
()」,「」,2の駆動軸13Dは多関節駆動部に回転力を与えるもの
すなわち,多関節駆動部に回転力を「伝える」ものである。回転力を
伝える機構と動力そのものを発動する機構とは区別されるべきである
から,動力を発動するモータの一部を構成するモータの軸等は,上記
各「駆動軸」には当たらないと解釈すべきである。
②ロ号物件において,原告が本件各特許発明の「駆動軸」に相当する
ものと主張する「第2の支軸(16」及び「第3の支軸(17」))
は,モータの回転シャフトであって,モータの一部であるから,本件
各特許発明の構成要件Eの「駆動軸」に当たらない。
()ロ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを充足するか2
(争点3−2)
ア原告
)ロ号物件の構成fの「前記第2アーム(6a,第2アーム(6b)a)
及び前記第1アーム(11)と一体の第1の支軸(15)を回動制御す
るモータ部(23,モータ部(30,およびモータ部(33」は,)))
本件各特許発明の構成要件Fの「駆動制御手段(14」に該当する。)
したがって,ロ号物件は,本件各特許発明の構成要件Fを充足する。
)被告は,構成要件Fの駆動制御手段(14)と共通駆動部(13)のb
関係について,イ号物件におけると同様に限定解釈をすべきであると主
張する。これに対する原告の反論は,前記1()ア)及び)記載のとお2bc
りである。
,,,()なおロ号物件においてはイ号物件と異なり駆動制御手段14
に相当するモータ部(23,30,33)は,共通駆動部に相当する第
1アーム(11)の下側に設置されている。しかし,この点についてイ
号物件のような構成を採用するかロ号物件のような構成を採用するかで
作用効果に差がないことは,甲5公報にモータを共通駆動部の下に設け
た場合(上記公報の図9及び図10)と共通駆動部とは別に設けた場合
(上記公報の図2及び図8)とで何ら作用効果に差異がないと記載され
ていることからも明らかである。
イ被告
,。構成要件Fの解釈についての被告の主張は前記1()イと同様である2
ロ号物件においては,両アームを作動させるモータはブーメランアーム
の下面に取付けられており,共通駆動部に相当するブーメランアームを作
動させるモータは基台の中に設置されている。したがって,ロ号物件は,
両アーム及び共通駆動部の三つを駆動制御する手段がないから構成要件F
を充足しない。
4ロ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が成
立するか(争点4。)
()原告1
ア被告は,ロ号物件の一部については,第3アーム(3a)及び第3アー
ム(3b)を欠き,かつ,構成要件Fに記載された各部の回動を個別に制
御するコンピュータ,コントローラ,ドライバ,ソフトウェア等を欠いた
製品(以下「未完成ロ号物件」という)を製造し,これを海外に輸出し。
ていると主張し,したがって,未完成ロ号物件は本件各特許発明のすべて
の構成要件を充足しておらず,未完成ロ号物件の製造,輸出行為は,本件
各特許権の侵害に当たらない旨主張する。
イ直接侵害の主張
仮に,被告の主張どおりであったとしても,本件のようないわゆるメカ
トロ製品である搬送装置では,製品の搬送の都合等の理由で一部の部品を
国内出荷時には取り付けていない状態とされることがある。しかし,その
出荷前に機械系の完成度の確認のために,電気系制御部(制御ソフトを含
む)と接続した上で動作確認を行う必要があり,そのため,出荷前には必
ず第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を付加した完成品の状態で
出荷のチェックがなされる。実際,未完成ロ号物件が,広島県において第
3アーム(3a)及び第3アーム(3b)が接続された状態の写真が新聞
に掲載されている(甲14。)
このように,被告が,未完成ロ号物件について,出荷前にすべての構成
要件を充足する形でチェックしている以上,この段階で本件各特許発明の
直接侵害行為が成立しているというべきである。その後,その一部品をは
ずしたからといって直接侵害を否定する理由はない。
ウ間接侵害(特許法101条1号)の主張
仮に,未完成ロ号物件について直接侵害が成立しないとしても,未完成
ロ号物件は第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)並びにモータを制
御するコンピュータ以外のロ号物件の構成を備えているのであるから,他
用途があり得るはずがなく,ロ号物件の生産にのみ用いられることは明ら
かであり,間接侵害(特許法101条1号)が成立する。
未完成ロ号物件は,海外に輸出されていることから,間接侵害に関する
従属説の立場からはこのような場合に間接侵害が成立するのか問題になり
得る。しかし,間接侵害における従属説や独立説の対立はあるとしても,
実際の解釈としては,その折衷的な立場が採られているところであり,従
属説に立つからといって輸出の場合には間接侵害が成立しないという結論
が必然的に導かれるものではない。
,()()未完成ロ号物件については第3アーム3a及び第3アーム3b
やコンピュータ等を欠くとしても,本件各特許発明の特徴である共通駆動
部等その主要な構成を備えかつ第3アーム3a及び第3アーム3,,()(
b)やコンピュータ等を備え付けられるような構造として輸出しており,
しかもコンピュータ,ソフトウエア等の制御関係については被告が設計し
ているのであるから,いわば完成品として必要な部品をすべて日本で生産
し,部品として輸出してその組み立てを海外で行っているというにすぎな
いのであるから,実質的に日本で発明が実施されているのと同視できる。
単に形式的に直接侵害が外国で行われているというにすぎない。したがっ
て,未完成ロ号物件については間接侵害が成立する。
()被告2
ア未完成ロ号物件は,第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を欠く
状態で輸出される。また,本件各特許発明における「多関節駆動部」は,
第1の駆動軸(13C,第2の駆動軸(13D)及び共通駆動部の回動)
を個別に制御するものであるところ(本件明細書【0013,未完成】)
ロ号物件は,モータそのものを備えているものの,上記のような制御を行
うコンピュータコントローラ,ドライバ,ソフトウェアを有していない状
態で輸出される。
したがって,未完成ロ号物件は,本件各特許発明の構成要件のすべてを
欠いている。
イ直接侵害の主張について
原告は,未完成ロ号物件においても,日本において欠けている部品を組
み合わせた上での駆動検査等を行っているはずであるから,日本における
直接侵害が成立する旨主張する。
確かに,被告は,未完成ロ号物件について日本において部品を取り付け
た上で検査を行っているが,この際に取り付ける部品は完成品に取り付け
る部品ではなく,あくまで検査用の部品である。甲14において撮影され
ている部品は,第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)ではなくエン
ドエフェクターと呼ばれる搬送部に相当する部品である。特にコンピュー
タやこれに搭載するソフトウェアの内容は完成品に取り付けるものとは異
なっている。そもそも,仮に完成品に取り付けるのと同様の部品を取り付
けて検査していたとしても,そのような一時的な取り付け行為をもって完
成品の「生産」をしたということはできない。
ウ間接侵害(特許法101条1号)の主張について
特許法101条1号の「その物の生産にのみ用いる物」にいう「生産」
は日本国内におけるものに限られると解すべきである。間接侵害規定は特
許権の効力を拡張するものではなく,その効力の実効性を実質的に確保す
るための制度であるとされている。ところが,外国で生産される物につい
てまで「その物の生産にのみ用いる物」であるとして特許権の効力を及ぼ
すと,日本の特許権者が本来当該特許権によって及ぼし得ないはずの外国
における実施行為(生産)にまで効力を及ぼすのと同等の結果を招来する
ことになってしまい妥当でない。
そして,未完成ロ号物件においては,ロ号物件の構成を完成させる「生
産」行為は外国で行われているのであるから,かかる未完成ロ号物件の製
造,譲渡行為は,本件特許権の侵害には当たらない。
この点について,原告は,未完成ロ号物件について,完成品として必要
な部品をすべて日本で生産し,部品として輸出してその組み立てを海外で
行っているにすぎず,実質的にみて直接侵害と同視し得るのであるから間
接侵害が成立する旨主張する。しかし,未完成ロ号物件において欠けてい
る部品等は,外国で製造されているものであって,日本ですべての部品を
生産しているという事実はない。また,本件特許発明1は訂正の前後を問
わず各部材の動きを構成要件中にとりこむものである。逆にいえば,各部
材の形状が同じであっても,制御内容が異なれば本件特許発明1の実施品
にはならない。そうすると,そのような制御を実現する「駆動制御装置」
を欠いている未完成ロ号物件は,本件特許発明1以外の用途に使用される
こともあり得るというべきである。
5本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものとい
えるか(争点5。)
()本件特許発明1が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発明1
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点5−1。)
ア被告
(。「」。),特開平4−30447号公報乙1以下乙1公報というには
次のような構成を有する発明(以下「乙1発明」という)が記載されて。
いる(乙1公報3頁右下欄下から8行ないし最終行,第1図,第3図。)
本件特許発明1は,乙1発明と同一か,又は進歩性がない。なお,下記の
()「」,構成のうち内に記載した構成を除く主張部分を被告主張1といい
()内に記載した構成に係る主張部分を「被告主張2」という。
「基板保持部60bと,基板保持部60bの回転面に対して上側に位置
するように高さを規定した基板保持部60aと,基板保持部60bを一方
向に伸縮する移し換えアーム30(又は左平行リンク機構50)と,基板
保持部60aを一方向に伸縮する移し換えアーム20(又は右平行リンク
機構50)と,移し換えアーム30の回動中心となる左リンク41の根元
のピン(又は左リンク52の根元のピン)と,移し換えアーム20の回動
中心となる右リンク41の根元のピン(右リンク52の根元のピン)とを
有し,かつ,前記移し換えアーム30に回転力を与える左駆動軸43と前
記移し換えアーム20に回転力を与える右駆動軸43とを有する旋回台1
0(又は旋回台10及び左右リンク機構40)と,前記移し換えアーム3
0,移し換えアーム20及び旋回台10を回動制御する左右の駆動モータ
44,旋回台用駆動モータ11及び歯車機構12とを備え,前記基板保持
部60b及び前記基板保持部60aを前記旋回台10の上部に縮めたと
き,前記基板保持部60bと前記基板保持部60aとを高低差をもって重
なるようにした基板の移し換え装置」
イ原告
)本件特許発明1と上記乙1発明の共通点a
被告主張1に対しては,本件特許発明1が乙1発明と,構成要件A,
B,G及びHの構成で一致することは認める(乙1発明の「基板保持部
60bと,基板保持部60bの回転面に対して上側に位置するように高
さを規定した基板保持部60aとを有する」構成が構成要件A及びBに
相当し,乙1発明の「前記基板保持部60b及び前記基板保持部60a
を前記旋回台10の上部に縮めたとき,前記基板保持部60bと前記基
板保持部60aとを高低差をもって重なるようにした基板の移し換え装
置」の構成が構成要件G及びHに相当する。。)
被告主張2に対しては,本件特許発明1が乙1発明と,構成要件Aな
いしD,G及びHの構成で一致することは認める(乙1発明の「基板保
持部60bを一方向に伸縮する左平行リンク機構50と,基板保持部6
0aを一方向に伸縮する右平行リンク機構50」の構成が構成要件C及
びDに相当する。。)
)本件特許発明1と乙1発明の相違点b
被告主張1に対しては,乙1発明は構成要件C,D,E及びFの構成
を有しない。また,被告主張2に対しては,乙1発明は構成要件E及び
Fの構成を有しない。なお,このことは,被告自身の出願に係る甲5公
報の【0003】ないし【0008】にも記載されていることである。
①構成要件Cについて
被告は,乙1発明の「基板保持部60bを一方向に伸縮する移し換
えアーム30(又は左平行リンク機構50」が構成要件Cの「第1)
の搬送部(15)を一方向に伸縮する第1の多関節駆動部(11」)
に相当する旨主張する。
しかし乙1発明の移し換えアーム30と基板保持部6,「()」「(
0bとの連結関係は本件特許発明1における第1の搬送部1)」,「(
5」と「第1の多関節駆動部(11」との連結関係と異なること))
は本件明細書の図1と乙1公報の第1図とを比較すれば明らかであ
る。
仮に,乙1発明において,本件特許発明の「第1の多関節駆動部」
に相当する部材をいうのであれば「平行リンク機構50」であるこ,
とは明らかである。
②構成要件Dについて
被告は,乙1発明の「基板保持部60aを一方向に伸縮する移し換
えアーム20(又は右平行リンク機構50」が構成要件Dの「第2)
の搬送部(16)を一方向に伸縮する第2の多関節駆動部(12」)
に相当する旨主張する。
しかし乙1発明の移し換えアーム20と基板保持部6,「()」「(
0aとの連結関係は本件特許発明1における第2の搬送部1)」,「(
6」と「第2の多関節駆動部(12」との連結関係と異なること))
は本件明細書の図1と乙1公報の第1図とを比較すれば明らかであ
る。
仮に,乙1発明において,本件特許発明の「第2の多関節駆動部」
に相当する部材をいうのであれば「平行リンク機構50」であるこ,
とは明らかである。
③構成要件Eについて
乙1発明の左駆動軸43が構成要件Eの第1の駆動軸1「()」「(
3C」に,乙1発明の「右駆動軸(43」が構成要件Eの「第2))
の駆動軸(13D」に,それぞれ当たることは認める。)
しかし,被告主張1に対しては,乙1発明の「リンク(41)の根
元ピン」が構成要件Eの「第1の固定軸(13A」及び「第2の固)
定軸(13B」に当たることは否認する。また,被告主張2に対し)
ても,乙1発明の「左リンク52の根元のピン」及び「右リンク52
の根元のピン」が構成要件Eの「第1の固定軸(13A」及び「第)
2の固定軸(13B」に当たることは否認する。)
,,「()」仮に乙1発明において構成要件Eの第1の固定軸13A
及び第2の固定軸13Bに相当する部材をいうのであれば左「(),「
リンク52」及び「右リンク52」であることは明らかである。
また,乙1発明の「旋回台(10」が本件特許発明の「共通駆動)
部(13」に当たることは否認する。本件特許発明の「共通駆動部)
(13」は,第1の固定軸(13A,第2の固定軸(13B,第)))
1の駆動軸(13C)及び第2の駆動軸(13D)を有するところ,
乙1発明の「旋回台(10」は,第1の固定軸(13A)に相当す)
る左リンク52と,第2の固定軸(13B)に相当する右リンク(5
2)とを有していない。また,構成要件Eの「共通駆動部(13」)
は,装置の旋回運動のみならず,アームの伸縮運動においても駆動す
るものであるところ,乙1発明の「旋回台(10」は装置の旋回運)
動においてのみ駆動するものであって,アームの伸縮運動に全く使用
されないものである。
被告は,被告主張1において「旋回台10及び左右のリンク機構4
0」が構成要件Eの「共通駆動部(13」である旨主張する。しか)
し,構成要件Eの「共通駆動部(13」は単一部材からなるもので)
あるところ,乙1発明の「左リンク(52」を有する「左平行リン)
ク機構(40」と「右リンク(52」を有する「右平行リンク機))
構(40」は「旋回台(10」とは全く別部材として構成されて),)
いるから,この点において構成要件Eの「共通駆動部(13」に当)
たるとはいえない。
④構成要件Fについて
乙1発明の左右の駆動モータ44旋回台用駆動モータ1「()」,「(
1」及び「歯車機構(12」が,本件特許発明の「駆動制御手段))
(14」に当たることは否認する。上記のとおり,乙1発明は「共),
通駆動部」を有していないから,これを駆動制御する手段である「駆
動制御装置」を有していない。
()本件特許発明1が特開平2−83182号公報(乙2)に記載された発明2
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点5−2。)
ア被告
)特開平2−83182号公報(乙2。以下「乙2公報」という)にa。
は,次のような構成を有する発明(以下「乙2発明」という)が記載。
されている。
「試料を保持するハンドを備えた第1及び第2のアームからなるハン
ドリングユニットにおいて,前記第1のアームは第1の回転軸5によっ
て伸縮動せしめられ,第2のアームは第2の回転軸6によって伸縮動せ
しめられ,また第1および第2のアームは第3の回転軸7によって同時
に回転動せしめられ,更に前記第1,第2および第3の回転軸は同軸的
に配設されていることを特徴とするハンドリングユニット」
)本件特許発明1と上記乙2発明の共通点は,次のとおりである。b
①乙2発明の「第1のアーム」に備わるハンド42は,本件特許発明
1の「第1の搬送部(15」に相当する。)
②乙2発明の「第2のアーム」に備わるハンド62は,本件特許発明
1の「第2の搬送部(16」に相当する。)
③乙2発明の「第1のアーム」のうち「第1の回転軸によって伸縮動
せしめられ」るアーム(例えば,乙2公報の第2図の中空状カバー3
7)は,本件特許発明1の「第1の搬送部(15)を一方向に伸縮す
る第1の多関節駆動部(11」に相当する。)
④乙2発明の「第2のアーム」のうち「第2の回転軸によって伸縮動
せしめられ」るアーム(例えば,乙2公報の第2図の中空状カバー5
7)は,本件特許発明1の「第2の搬送部(16)を一方向に伸縮す
る第2の多関節駆動部(12」に相当する。)
⑤乙2発明の筒体35及び筒体55は本件特許発明1の第「」「」,「
()()」1の多関節駆動部11の回動中心となる第1の固定軸13A
及び第2の多関節駆動部12の回動中心となる第2の固定軸1「()(
3B」に相当する(乙2公報535頁左上欄1ないし2行目,同2)
0行目,第6図,第7図。)
⑥乙2発明の「第1の回転軸5」及び「第2の回転軸6」は,本件特
「()」「()」許発明1の第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸13D
に相当する。
⑦乙2発明の第1,第2,第3の回転軸が「同軸的に配設され」た部
材全体(例えば,乙2公報の第2図,第6図における中空状カバー3
0,同50及び筒体35,55を含む)は,本件特許発明1の「共通
駆動部(13」に相当する。)
この点について,原告は「共通駆動部(13」は単一部材でな,)
ければならないと主張する。しかし,本件特許発明1のクレームには
そのような限定はない。仮にそのような限定があったとしても,別部
材を単一部材にすることは当業者が容易に想到し得ることである。共
通駆動部を単一部材で構成する発明は本件特許出願前に頒布された刊
行物である特開昭63−288677公報(乙4。以下「乙4公報」
。)(,というにおいて開示されている乙4公報3頁右上欄13行以下
第4図,第5図。)
⑧乙2発明の第1のモーター8,第2のモーター9及び第3のモータ
ー10は,本件特許発明1の「第1の多関節駆動部(11,第2の)
多関節駆動部(12)及び共通駆動部(13)を回動制御する駆動制
御手段(14」に相当する(乙2公報の534頁左下欄8ないし1)
1行目。)
⑨乙2発明の「ハンドリングユニット」は,本件特許発明1の「多関
節搬送装置」に相当する。
)本件特許発明1と乙2発明の相違点は,次の2点である。c
①本件特許発明1においては,第1の搬送部(15)の回転面に対し
て上又は下側に位置するように第2の搬送部(16)の高さが規定さ
れているのに対し,乙2発明においては第1の搬送部と第2の搬送部
の回転面の高さが同一である点
②本件特許発明1においては,第1の多関節駆動部と第2の多関節駆
動部は,共通駆動部と同時又は別々に回動されるのに対し,乙2発明
においては第1のアーム及び第2のアームは,第3の回転軸によって
常に同時に回動させられる点
)相違点についての評価d
①上記相違点①の構成は,本件特許出願当時,既に公知であった。
例えば,乙4公報に記載されている。
②上記相違点②は,本件特許発明1と被告各製品との相違点でもあ
るが,原告は,かかる相違点は本件特許発明の特徴的部分ではない
と主張している。
そうすると,本件特許発明1は,乙2発明と同一又は当該発明に基
づいて当業者が容易に発明することができたものといえるから,特許
無効審判により無効とされるべきものと認められる(特許法29条2
項,1項3号,123条1項2号。したがって,原告は,被告に対)
して本件特許権を行使することができない(特許法104条の3。)
イ原告
)本件特許発明1が乙2発明と構成要件ACHの構成前記ア)ab,,,(
①,③及び⑨)において共通することは認める。
)しかし,本件特許発明1と乙2発明は,次の3点において相違する。b
①乙2発明は「第1の搬送部の回転面に対して上又は下側に位置す,
」。,るように高さを規定した第2の搬送部を有していないしたがって
乙2発明は,構成要件B,Gのみならず,構成要件D,Fの構成を有
しない点で本件特許発明1と異なる。
②乙2発明は「共通駆動部」を有していない。したがって,乙2発,
明は,構成要件E(前記ア)⑦)の構成を有しない点で本件特許発b
明1と異なる。
被告は,乙2発明の中空状カバー(30,50)及び筒体(35,
55)を含むいくつかの部材を併せたものが本件特許発明1の共通駆
動部(13)に当たると主張する。
しかし,本件特許発明1の共通駆動部(13)は単一部材として構
成されており,その全体が一体として駆動するものである。乙2発明
においては伸縮運動において,中空状カバー30,同37及びハンド
42からなる第1アームは第1の回転軸5により駆動され,中空状カ
バー50,同57及びハンド62からなる第2アームは第2の回転軸
6により駆動される。このように別部材で構成され,別個に駆動され
る複数の部材が本件特許発明の共通駆動部に当たらないことは明らか
である。
乙2発明の第1のアームと第2のアームは,第3の回転軸7によっ
て同時に回動せしめられるが,第3の回転軸7による回動は,伸縮運
動においてなされるものではなく,伸縮運動と伸縮運動の合間にロボ
ット全体を旋回させるものにすぎない。本件特許発明1における「共
通駆動部」の軸部分は伸縮運動にも旋回運動にも関与するものである
から,乙2発明における第3の回転軸とはその機能を異にする。
③乙2発明に共通駆動部が存在しない以上,共通駆動部を駆動させる
モータ14に相当する構成も存在しない。
④なお,被告は,乙2発明においては「第1のアーム及び第2のアー
ムは,第3の回転軸によって常に同時に回動させられる点」が被告各
製品と共通しており,かつ本件特許発明との相違点であるなどと主張
する。しかし,被告の主張する上記構成は本件特許発明の特許請求の
範囲に記載された要件ではなく,上記被告主張の趣旨は不明である。
)相違点についての評価c
被告は,上記相違点①の構成について,各ウエハ搬送部の位置を上下
にずらして相互に干渉を回避する構成は乙4公報に開示された周知手段
であり,乙2発明に乙4公報に開示された周知技術を組み合せることは
極めて容易であると主張する。
しかし,乙2発明は,アームの位置を反対向きにすることにより各ア
ームが他方のアームに干渉されることなく独立に動作できるという効果
を奏する発明である(乙2の4頁右欄1ないし7行,第4図。乙2公)
報には,乙4公報に開示された発明と組み合せる動機付けがないばかり
か,組み合わせを阻害する理由が明確に記載されているといえる。乙4
公報に記載されたロボットは,左右それぞれ二つの駆動部しか有しない
ものであり,その共通アームは,本件特許発明1の「共通駆動部」とは
異なる。仮に,共通駆動部が乙4公報により公知であったとしても発明
の一部が個別に公知であることが進歩性を否定する理由にならないこと
は明らかである。
()本件特許発明1が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された発3
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの
といえるか(争点5−3。)
ア被告
)特開平5−109866号公報(乙7。以下「乙7公報」という)a。
には,次のような構成を有する発明(以下「乙7発明」という)が記。
載されている。
「a第1ウォンド(17)と,b第1ウォンドの回転面に対して上ま
()(),たは下に位置するように高さを規定した第2ウォンド32と図2
(),(),()c第2アーム11とd第5アーム26とe第5シャフト8
の軸受けと第7シャフト(23)の軸受けを有し,かつ,第2中空シャ
(),()(),フト3第3中空シャフト4とを有する第1中空シャフト2
第1アーム(7,第4アーム(22)と,f第1モータ(35)から)
第4モータ(44)までを有し,g第1ウォンド(17)と,第2ウォ
ンドを第1中空シャフト(2,第1アーム(7,第4アーム(22)))
の上に縮めたとき,前記第1第1ウォンドと第2ウォンドとを高低差を
もって重なるようにした,hウエハ移載ロボット」
)本件特許発明1と上記乙7発明は,同一の構成を有している。乙7発b
明の「第1中空シャフト(2「第1アーム(7」及び「第4アー)」,)
ム(22」の三つを併せた構成が,本件特許発明の「共通駆動部」に)
当たる。
この点について,原告は「共通駆動部(13」は単一部材でなけ,)
ればならないと主張する。しかし,本件特許発明1の特許請求の範囲に
はそのような限定はない。
)仮に,原告の主張するように,本件特許発明1の「共通駆動部」が単c
一部材からなるものでなければならないと解釈し,単一部材からなる共
通駆動部を有しない点で乙7発明と本件特許発明1が相違すると仮定し
たとしても,別部材を単一部材にすることは当業者が容易に想到し得る
ことである。共通駆動部を単一部材で構成する発明は本件特許出願前に
頒布された刊行物である乙4公報において開示されている(乙4公報3
頁右上欄13行以下,第4図,第5図。)
原告は,本件特許発明1においては,単一部材からなる共通駆動部を
設け,これをアームの伸縮運動においても駆動させるとともに,伸縮運
動のための回転中心と旋回運動のための回転中心を同一にすることによ
って,搬送距離を伸ばし,被搬送物がアームと衝突することを避けると
いう作用効果を初めて奏し得る旨主張する。
しかし,上記のような衝突回避は,必ずしも単一部材からなる共通駆
動部を有しない本件特許出願前の従来技術においても達成し得る。すな
わち,乙7発明においては,一方のアームが一定の運動をする間,他方
のアームに退避運動をさせることにより上記の効果は容易に達成でき
る。また,本件特許出願前の公知技術である乙2発明においては,左右
のアームの一部が共通であるため,当該共通部分を運動させることによ
って,一方のアームが一定の運動をする間,他方のアームが退避運動を
行う。このように,乙2発明及び乙7発明において,原告主張のように
アームの一部が共通に構成された場合と同じ動きをさせることは可能で
ある。
また,伸縮運動の為の回転中心と旋回運動のための回転中心を同一に
することも本件特許出願前から公知であった。アームの付け根の位置を
装置全体の中心に近づけるほど同一の旋回半径で搬送距離を長くするこ
とができるということは当然の事項であり,当業者はアームの付け根を
装置全体の中心に近づける努力をしてきた。実際,乙7発明のほか,乙
2発明及び乙4発明においても,アームの付け根を装置全体の中心と一
致させている。
イ原告
)本件特許発明1が乙7発明と,構成要件AないしD,G及びHの点でa
共通することは認める。
)しかし,本件特許発明1と乙7発明は,次の2点において相違する。b
①乙7発明は本件特許発明1の「共通駆動部」を有しない点で相違す
る。
,「()」,「()」被告は乙7発明の第1中空シャフト2第1アーム7
「()」「()」及び第4アーム22が本件特許発明1の共通駆動部13
に当たる旨主張する。
しかし,本件特許発明1の共通駆動部(13)は単一部材として構
成されており,その全体が一体として回動するものである。乙7発明
においては第1中空シャフト2第1アーム7及び第,「()」,「()」「
4アーム(22」はそれぞれ別部材で構成され,個別に駆動される)
ものである。
②乙7発明は本件特許発明1の「駆動制御手段」を有しない点で相違
する。
,「()()被告は乙7発明の第1モータ35ないし第4モータ44
及び第1歯車(33)ないし第8歯車(43」などが,本件特許発)
明の「駆動制御手段」に当たる旨主張する。
しかし,上記のとおり,乙7発明は「共通駆動部」を有していない
から,この「共通駆動部」を回動制御する「駆動制御手段」も有して
いない。また,本件特許発明1の「駆動制御手段」はアームの伸縮運
動に寄与するものであるところ,乙7発明の「第1モータ(35,)」
「第3モータ(41」及びこれらとの関係で必要とされる歯車は,)
アームの伸縮運動には寄与しないから,本件特許発明1の「駆動制御
手段」とは言い難い。そもそも,乙7公報に記載されたロボットは,
アームの伸縮運動のために左右二つのモータが必要であり(第4モー
タ44及び第2モータ38,さらに旋回運動のためにも左右二つの)
モータが必要である(第1モータ35及び第3モータ41。このよ)
うに,乙7公報に記載されたロボットは合計四つのモータが必要であ
るが,本件特許発明1に係る搬送装置においては,モータは合計三つ
で済む。本件特許発明1においては,左右のアームは同一のウエハカ
セットに向かって動くのに対し,乙7発明は左右のウォンドが別々の
ウエハカセットに向かって動く。また,乙7発明においては,それぞ
れのアームは連動することなく動作するのに対し,本件特許発明1に
おいては,共通駆動部を設けることにより左右のアームを連動させ,
一体的に制御することを可能にしたものである。このように,根本的
に異なる動きをする各装置の駆動制御手段は明らかに相違するもので
ある。
)相違点についての評価c
①被告は,単一部材からなる共通駆動部を有しない点で乙7発明と本
件特許発明1が相違すると仮定したとしても,別部材を単一部材にす
ることは当業者が容易に想到し得る旨主張する。
しかし,乙7発明は,左右のウォンドが別々のウエハカセットに向
かって動く装置であるから,左右ウォンドが相互に自由に運動できる
構成を確保する必要がある。被告が併せて共通駆動部に相当すると主
張する各部材を共通駆動部として使用するという動機付けはなく,む
しろ単一部材からなる共通駆動部を設けることを阻害する事由が存在
する。
被告は,乙4公報に左右アームの一部が共通であるロボットが記載
されていることをもって,上記別部材を単一部材にすることは当業者
が容易になし得ることである旨主張する。しかし,乙4公報に記載さ
,,れたロボットは左右それぞれ二つの駆動部しか有しないものであり
その共通アームは,本件特許発明1の「共通駆動部」とは異なる。仮
に,共通駆動部が乙4公報により公知であったとしても発明の一部が
個別に公知であることが進歩性を否定する理由にならないことは明ら
かである。
なお,被告は,原告が共通駆動部を設けることによって被搬送物が
アームと衝突することを避けることができる旨主張したことを前提に
,。これに対する反論をしているが原告はそのような主張はしていない
原告が主張しているのは,本件特許発明においては,共通駆動部によ
り左右のアームを一体的に制御するため,第2の搬送部が衝突退避位
置からホームポジションに復帰するまでの動作と第1の搬送部が搬送
先からホームポジションに復帰するまでの動作が同時に行なわれ,第
1の搬送部がホームポジションに戻ってきたときにはもはや何らの旋
回を行うことなく第2の搬送部による搬送が可能な状態になっている
ということである。
②乙7発明に係る装置は,左右に三つのアームを別々に備える搬送装
置であって共通駆動部がなく,それぞれのアームは連動することなく
動作する。これに対し,本件特許発明1に係る搬送装置は,共通駆動
部を設けることにより,左右のアームを連動させ,一体的に制御する
ことが可能であり,技術思想を異にしている。乙7発明においては,
アームの伸縮運動のために左右二つのモータが必要であり(第4モー
タ44及び第2モータ38,さらに旋回運動のためにも左右二つの)
モータが必要であるため(第1モータ35及び第3モータ41,合)
計四つのモータが必要であるが,本件特許発明1にかかる搬送装置に
おいては,モータは合計三つで済む。乙7発明の駆動装置として本件
,,特許発明1の駆動制御部分を採用するという動機付けはなくむしろ
これを阻害する事由が存在するといえる。
()本件特許発明1が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術(乙114」
の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」に基づいて当業者が容易
に発明することができたものといえるか(争点5−4。)
ア被告
)雑誌「自動化技術(1985年9月号,乙11の1。以下「乙11a」
雑誌」という)には,次の構成の装置(以下「乙11装置」という)。。
が掲載されている。なお,乙11の2の図(以下「乙11模式図」とい
う)は,被告が作成した乙11装置の模式図である。。
「ハンド付左パイプアーム(15)と,ハンド付右パイプアーム(1
6)と,ハンド付左パイプアーム(15)を一方向に伸縮する左コンロ
ッド(11)と,ハンド付右パイプアーム(16)を一方向に伸縮させ
る右コンロッド(12)と,前記左コンロッド(11)の回動中心とな
る固定軸(13A)と,前記右コンロッド(12)の回動中心となる固
定軸(13B)とを有し,かつ,左コンロッド(11)の回転の中心と
なる左パイプアーム(15)の根元の第1駆動軸(13C)と,右コン
ロッド(12)の回転の中心となる右パイプアーム(16)の根元の第
1駆動軸13Dとを有する揺動アーム13と左コンロッド1()(),(
1,右コンロッド(12)及び揺動アーム(13)を回動制御する加)
減速ロータリーアクチュエータ(14)とを備えたダブルアーム式ロー
ディン装置」
)相違点及び共通点b
乙11装置のうち第2の搬送部(16)に相当する「ハンド付右パイ
プアーム(16」は第1の搬送部(15)に相当する「ハンド付パイ)
プアーム(15」の回転面の上又は下側に位置するように高さを規定)
したものではない(構成要件Bの一部及び構成要件Gに当たる構成の開
示がない)点で乙11装置と本件特許発明1は異なる。
また,乙11装置の揺動アーム(13)の回転軸は水平であり,この
点においても乙11装置は本件特許発明1と異なる。
乙11装置と本件特許発明1は,以上の2点を除くほか,すべて一致
する。
)相違点に対する評価c
各搬送部の上下の位置をずらす構成が本件特許出願当時既に周知慣行
技術であったことは,本件特許出願前に乙1発明,乙4発明及び乙7発
明が存在していたことから明らかである。
また,水平の回転軸を垂直に変更することは本件特許出願当時の当業
者にとって容易である。
したがって,本件特許発明1は,乙11装置に乙1発明,乙4発明及
び乙7発明のいずれかを組み合せることによって当業者が本件特許出願
当時,容易に想到することができた発明である。
イ原告
乙11装置は,揺動アームを左右に動かすことによって左右のパイプア
ームが前後に伸縮するという装置であり,半導体ウエハなどの搬送装置に
係る本件特許発明とは,そもそも,技術分野や装置の目的が異なる。
乙11装置は,本件特許発明1の基本的な構造やそれに伴う作用効果に
ついて何らの開示も示唆もするものではない。したがって,乙11装置と
乙1発明,乙4発明及び乙7発明とを組み合せることは阻害されていると
いえる。また,仮に阻害要因を無視してこれらを組み合せたとしても組み
合わせによって導かれる構成は本件特許発明1とは異なる構成である。そ
もそも,被告主張の各構成要件の対比は,公知文献における全く異なった
部材をもって本件特許発明の各構成要件と対比するものであって明らかに
理由がない。
()本件特許発明1が合衆国特許4678393(乙12の1)に記載された5
発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点
5−5。)
ア被告
)米国特許第4678393号公報(乙12の1。以下「乙12公報」a
という)には,次のような構成の発明(以下「乙12発明」という)。。
が記載されている。なお,乙12の2の図(以下「乙12模式図」とい
う)は,被告が作成した乙12発明の模式図である。。
「左ガイドロッド(19)及び左顎部材(23)と,右ガイドロッド
(21)及び右顎部材(26)と,左ガイドロッド(19)を一方向に
伸縮する左ブロック(28)と,右ガイドロッド(21)を一方向に伸
縮させる右ブロック(31)と,左ブロック(28)の回動中心となる
()(()()左ピン33又は左把持具22内にあるクランク部材221
の回動中心となる固定軸(222)と,右ブロック(31)の回動中)
心となる右ピン(34(又は右把持具(25)内にあるクランク部材)
(251)の回動中心となる固定軸(252)とを有し,かつ,左把)
持具(22)内にあるクランク部材(221)を回動させる左シリンダ
(24)のロッド(241)と,右把持具(25)内にあるクランク部
材(251)を回動させる右シリンダ(27)のロッド(271)とを
有するドライブメンバ(32(又はドライブメンバ(32「両ブロ)),
ック(28,31)及びガイドロッド(19,21)と,Fig.6)
ないし9に図示された駆動機構とを備える工作物搬入搬出移送機構」
)相違点及び共通点b
乙12発明は,本件特許発明1の「第2の搬送部(16」に相当す)
る右ガイドロッド21が本件特許発明1の第1の搬送部1「()」,「(
5」に相当する「左ガイドロッド(19」の回転面の上又は下側に))
位置するように高さを規定したものではない(構成要件Bの一部及び構
成要件Gに当たる構成の開示がない)点で,本件特許発明1と異なる。
乙12発明と本件特許発明1は,以上の点を除くほか,すべて一致す
る。
)相違点に対する評価c
各搬送部の上下の位置をずらす構成が本件特許出願当時既に周知慣行
技術であったことは,本件特許出願前に乙1発明,乙4発明及び乙7発
明が存在していたことから明らかである。
したがって,本件特許発明1は,乙12発明に乙1発明,乙4発明及
び乙7発明のいずれかを組み合せることによって当業者が本件特許出願
当時,容易に想到することができた発明である。
イ原告
乙12発明は,本件特許発明1の基本的な構造やそれに伴う作用効果に
ついて何らの開示も示唆もするものではない。したがって,乙12発明と
乙1発明,乙4発明及び乙7発明とを組み合せることは阻害されていると
いえる。また,仮に阻害要因を無視してこれらを組み合せたとしても組み
合わせによって導かれる構成は本件特許発明1とは異なる構成である。そ
もそも,被告主張の各構成要件の対比は,公知文献における全く異なった
部材をもって本件特許発明の各構成要件と対比するものであって明らかに
理由がない。
()本件特許発明1が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲載6
された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか
(争点5−6。)
ア被告
)雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14。以下「乙14雑誌」a
といい,乙14雑誌に掲載された装置を「乙14装置」という)の7。
7頁には「2本の腕が同一のベースの上に乗ってましてね,回しなが,
らワークに接近する側の腕を伸ばすわけです.こうすると,動作時間が
短くなるわけで・・・ローディング・アンローディングなどには,な,
かなか有効なんですな」との記載がある。また,同頁の図1の下部に.
「全体が回転しながら,ワーク位置に向かっているほうの腕が伸びる.
・・・作業時間は大幅に短縮できる」と記載され,同頁の写真1の説.
明にも「回転させながら伸縮させることで高速化を図ったもの」と記載
されている。
)相違点及び共通点b
乙14装置はエアシリンダによるピストン運動によって直線運動して
いるものであり,本件特許発明1はスカラ型機構で伸縮運動を行なって
いる点で相違する。
また,本件特許発明1においては,左右両アームの搬送部が高低差を
もって配置されているのに対し,乙14装置においては左右のアームに
高低差があるか否かは明確ではない点で相違する。
)相違点に対する評価c
本件特許発明1で採用されているスカラ型機構は,本件明細書に記載
された先行技術において用いられていたものであって本件特許発明出願
当時の公知技術である。乙14雑誌には,直線運動をエアシリンダ機構
に限定するような記載はない。本件特許発明1はこのエアシリンダ機構
をスカラ型機構に置き換えたものにすぎず,両者の置き換えは容易であ
る。
左右のアームに高低差を設ける構成は,本件明細書に記載された先行
技術において採用された技術であり,乙14装置にそのような構成を採
用することは容易である。
イ原告
被告の提出する乙14雑誌は,極めて不鮮明な写真と雑ぱくな説明がな
されているのみであって,これによって乙14装置の具体的な構成を導く
ことは無理である。被告は,乙14雑誌から乙14装置の構成を推測した
上で主張しているようであるが,そのような推測に基づく主張は成り立つ
余地がない。
6本件特許発明1の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点6)
()()本件特許発明1の無効理由が本件訂正によって解消されるか争点6−11
ア被告
)乙7発明に乙4発明を組み合わせることによって当業者が本件特許発a
明1を発明することは容易であるという乙17審決の判断を本件訴訟に
おける被告の主張として引用する。
)乙7発明を主引例とする無効理由を除くその余の進歩性を理由とするb
無効理由も,本件訂正により解消されない。
イ原告
)乙17審決についてa
①被告は,乙17審決の判断を本件訴訟における被告の主張として引
用しており,乙17審決は,乙7発明を主引例として本件特許発明の
進歩性を否定している。しかし,乙17審決は,乙7発明の旋回運動
及び伸縮運動の駆動制御と本件特許発明との相違点の理解を誤ってい
る。
乙7発明においては,第1アームから第3アームを備えたアーム部
52は第1歯車に支持され,第4アームから第6アームを備えたアー
ム部51が第5歯車に支持されており,第1歯車(第1モータによっ
て回転させられ,この回転が第1中空シャフトを駆動する)によって
アーム部52全体が回転し,第5歯車(第3モータによって回転させ
られ,この回転が第3中空シャフトを駆動する)によってアーム部5
1全体が回転することによって,搬送方向を変更することができる構
成になっている。これに対し,第2モータ及び第4モータがアーム部
52及びアーム部51を伸縮させるためのモータである。
したがって,第1中空シャフトが回転すると第1アームが駆動され
第2アームは第1アームとの位置関係を保ったまま全体が回動し,第
3中空シャフトが回転すると第4アームが駆動され第5アームが第4
アームとの位置関係を保ったまま全体が回動するというにすぎないか
,,ら第1中空シャフトが第2アームに回転力を与える駆動軸に当たり
第3中空シャフトが第5アームに回転力を与える駆動軸に当たるとす
()。,る乙17審決の認定15頁29ないし32行は誤っているまた
第1中空シャフトを回転させることによる上記第1アームの回転及び
第3中空シャフトを回転させることによる上記第4アームの回転につ
いて,当業者は「第1中空シャフトと第1アームとを同期させて回動
する」と認識したり「第3中空シャフトと第4アームを同期させて,
回動すると認識することはないから乙17審決のその旨の認定1」,(
3頁37行ないし14頁1行)も誤っている。
被告が引用する乙17審決は,本件特許発明1と乙7発明の一致点
として「制御手段が行う制御には,第1の搬送部又は第2の搬送部を
伸縮するために駆動部を回動させる制御と,第1の搬送部又は第2の
搬送部を伸縮するために取り込まれた状態であるようにする制御と,
第1の搬送部又は第2の搬送部が駆動部上に取り込まれた状態である
」。ようにする制御とが含まれるものであってという点を認定している
しかし,本件訂正特許発明1の本件訂正部分は,一方の搬送部が搬送
動作(伸縮)を行っているときの他方の搬送部の動作(取り込まれた
状態)を特定したものである。このことは,本件訂正部分の「この共
通駆動部(13)を回動させる制御中」との文言から明らかである。
乙7発明においては,両アームは個別に動作し得るのであって,一方
のアームが伸縮運動を行っているときには他方のアームは取り込まれ
,。た状態になっているという関係にはないから上記認定は誤っている
②乙4発明に関する認定の誤り
被告が引用する乙17審決は,乙4公報には「左右のウエハ保持部
を用いて,同一方向において,一方のウエハ保持部に載置されたウエ
ハを搬送先に移動して,それを他方のウエハ保持部を用いて搬送先の
ウエハと交換する運動を行う(これは『左右のウエハ保持部材を用,
いて,一方のウエハ保持部材が未処理基板を処理室に搬入し,その間
他方のウエハ保持部材は,処理済みの基板を保持して待機し,他方の
ウエハ保持部材が処理済み基板を搬出し,その間一方のウエハ保持手
段は,未処理基板を保持して待機する運動を行う』を意味する)搬。
送装置において,第2のアーム部材とその回転軸及び第3のアーム部
材とその回転軸とを共通の第1アーム部材に設けること」が記載され
ているとして,上記を本件特許発明1と乙4発明との一致点として認
定する。
しかし,乙4公報には①「左右のウエハ保持部を用いて,同一方向
において,一方のウエハ保持部に載置されたウエハを搬送先に移動し
て,それを他方のウエハ保持部を用いて搬送先のウエハと交換する運
動を行う」技術と,②「第2のアーム部材とその回転軸及び第3のア
ーム部材とその回転軸とを共通の第1アーム部材に設ける」技術のそ
れぞれの技術が別個に記載されているのであって,両者を組み合わせ
た発明が記載されているものではない。すなわち,上記①については
乙4公報の第1図ないし第3図,乙4公報の1頁右上欄15行ないし
2頁左上欄9行,2頁右上欄7行ないし3頁右上欄12行に記載され
ており,これらの技術は,真空処理室とローダー・アンローダー室を
隔離するシャッター(39)と,大気圧下のウエハキャリアのある部
屋とローダー・アンローダー室を隔離するシャッター(38)とが,
同時に開くことはない状態で使用することを前提としている。これに
対して,上記②の技術は,第4図及び第5図,乙4公報3頁右上欄1
,,3行ないし14行に記載されておりこれらの技術を用いる場合には
左右両アームを全く同期させて動かすため,第3図における真空処理
室とローダー・アンローダー室を隔離するシャッター(39)と大気
圧下のウエハキャリアのある部屋とローダー・アンローダー室を隔離
するシャッター(38)とを同時に開かなければならない。
③組み合わせの容易性についての判断の誤り
被告の引用する乙17審決は,乙7発明に乙4発明を組み合わせる
ことによって当業者が本件特許発明1を発明することは容易である旨
主張する。しかし,そもそも,乙7発明と乙4発明の認定について誤
りがあることは前記のとおりである。
また,乙7発明は「上述した従来のウエハ移載ロボットは,アー,
ムが1本しかなかったので,第1ウエハカセットから第2ウエハカセ
ットにウエハを移載する場合には,ウエハ移載ロボットは例えば25
スロットのウエハカセットでは25往復ハンドリングする必要があ
り,ウエハの移載に時間がかかる欠点がある(乙7公報2頁右欄。」
13行ないし18行「ウエハカセット移載ロボット50の片方の),
アーム部51と他方のアーム部52は個々に,半径(R)方向と回転
(θ)方向に動作可能である。よって,図4に示すように,第1ウエ
ハカセット60から第2ウエハカセット61にウエハを移載する場合
には,ウエハカセット移載ロボット50は例えば25スロットのウエ
ハカセットでは12.5往復分でハンドリングすることができる」。
(),乙7公報4頁左欄14行ないし21行の記載から明らかなように
二つのアーム部51と52がそれぞれ独立して動作することができな
ければならないものである。乙7発明に乙4公報の第4図及び第5図
に記載された発明を組み合わせて乙7発明のアーム部51とアーム部
52が独立して動作することができない構成にした場合には乙7発明
の上記目的を達することができなくなるのであるから,乙7発明に乙
4発明を組み合わせることには阻害要因があるというべきであり,少
なくとも,何らの動機付けもなく組み合わせられるようなものではな
い。
乙17審決は,乙7発明の両搬送部の制御について「・・・独立,
して別個に行うことができるが,左右の搬送部を用いて同一方向にお
いて,一方の搬送部に載置された被搬送物を搬送先に移動して,それ
を他方の搬送部を用いて搬送先の被搬送物と交換する運動を行う場
,,合一方の搬送部を伸縮するために一方の駆動部を回動させている間
他方の搬送部を駆動部上に取り込まれた状態としておくことは,乙7
発明の使用法として,当業者が容易に選択し得るものである」旨判。
断している。しかし,乙7発明は,乙7公報【0012】に記載され
ているように,アーム部51とアーム部52とを別々のウエハカセッ
トにより交互に動かすことで,一つのアーム部からなる装置と比較し
て半分の往復分でハンドリングすることができるようにするための装
置であるから,本件特許発明1のように,一方のアーム部が稼働して
いる間に,他方のアーム部を使用しないという使用方法をするはずが
ないものである。
また乙7発明は第1第2ウォンドが設けられている第3第,,()(
6)アームは,第1(第4)アームが回転すると第2(第5)アーム
が連動して回動・・・することによって直線上を移動するものであ
る。したがって,被告が引用する乙17審決がいうように「左右の搬
送部を用いて同一方向において,一方の搬送部に載置された被搬送物
を搬送先に移動して,それを他方の搬送部を用いて搬送先の被搬送物
と交換する運動を行う場合,一方の搬送部を伸縮するために一方の駆
動部を回動させている間,他方の搬送部を駆動部上に取り込まれた状
態としておく」ためには,第1アームと第4アームが相互に独立して
回転できる構成である左右の搬送部を用いて同一方向において,一方
の搬送部に載置された被搬送物を搬送先に移動して,それを他方の搬
送部を用いて搬送先の被搬送物と交換する運動を行うことが必要であ
る。そうしないと,第1ウォンドを搬送先に移動するために第1アー
ムを駆動すると,第4アームも駆動してしまい,これにともなって第
2ウォンドが第1ウォンドとは別の方向に伸縮運動をしてしまうこと
になり,他方の搬送部が駆動部上に取り込まれた状態にならない。一
方,乙4公報の第4図及び第5図に記載されている装置は,二つのウ
エハ保持部を全く同期させて直線軌道に沿って動かすもの(二つのウ
エハ保持部を使って反対方向に同時に搬送を行うもの)である。これ
を乙7発明に組み合わせて乙7発明の第1アームと第4アームを一体
化させた場合には,第1ウォンドが搬送動作を行っている間,第2ウ
ォンドも同期して搬送運動を行うことになり,乙17審決のいうよう
「,に一方の搬送部を伸縮するために一方の駆動部を回動させている間
他方の搬送部を駆動部上に取り込まれた状態としておく」ことにはな
らない。
このように,乙7発明は,一方の搬送部でのみ搬送を行うのであれ
ば両搬送部を別々に駆動できるようにする必要がある。逆に,二つの
駆動部(第1アーム及び第2アーム)を一体化して同期させることも
可能であるが,この場合には,両搬送部が同時に反対方向に伸縮運動
をすることになり(第2(第5)アームを第1(第4)アームに対し
て回転させるための駆動手段が存在しないため,第1アームと第4ア
ームを同期して回転させると,これと連動して第2アーム及び第5ア
ームが回転する構成になっているため)一方の搬送部のみで搬送を。
行うような構成にはならない。
被告が引用する乙17審決は,乙7発明は両アーム(アーム部51
及びアーム部52)を個別に駆動させることのできる装置であるが,
第1アームと第4アームを同期させて回動させることも可能であると
認定し,そのように同期させて回動させた場合には,第1アームと第
4アームが本件特許発明1の「共通駆動部」と同じ動きをすることが
可能であると認定しているようである(乙17審決13頁37行ない
し14頁1行,16頁20行ないし23行。)
しかし,前記のとおり,第1アーム及び第4アームは,第2アーム
及び第5アームに回転力を与える駆動軸を有していないから「第1の
多関節駆動部(11)に回転力を与える第1の駆動軸(13C)と前
記第2の多関節駆動部(12)に回転力を与える第2の駆動軸(13
D)とを有する共通駆動部」とはいえない。また,本件特許発明1の
「共通駆動部」は単一部材から構成されている必要があるところ,第
1アームと第4アームは別部材から構成され,個別の動きをする部材
であるから,仮に,制御方法の仕方によっては単一部材であるかのよ
うに駆動させることが可能であったとしても,本件特許発明1の「共
通駆動部」には当たらない。
)本件訂正により,乙1発明,乙2発明を主引例とする無効理由及び被b
告が主張するその余の進歩性を理由とする無効理由はすべて解消されて
いる。
()本件訂正請求が訂正要件を満たすといえるか(争点6−2。2)
ア被告
)新規事項の追加a
本件訂正は,駆動制御手段(14)の行う制御に関するものである。
本件訂正前の本件明細書(以下「本件訂正前明細書」ということがあ
る)には,駆動制御手段(14)について「前記第1の多関節駆動。,
部(11,第2の多関節駆動部(12)及び共通駆動部(13)を回)
動制御する駆動制御手段(14」との記載がある。また,本件訂正前)
明細書の発明の詳細な説明には「第1の駆動軸13Cが固定され,第2
の駆動軸13D及び共通駆動部13が同期して回動される(001」【
9)という回動制御の方法(第1の制御方法)と「第2の駆動軸1】,
3Dが固定され,第1の駆動軸13C及び共通駆動部13が同期して回
動される(0020)という回動制御の方法(第2の制御方法)が」【】
記載されている。さらに,本件訂正前明細書の図1は,その構造からし
て,第1の多関節駆動部11を共通駆動部13の回転方向と反対方向に
回動させるためには,共通駆動部13を回動させるとともに,第1の駆
動軸13Cと第1の多関節駆動部11の軸との間に架け渡された駆動ベ
ルトによって「連れ回り」をさせないために第1の駆動軸13Cを固定
する制御(回動制御)を行わなければならない。一方,第1の多関節駆
動部11を共通駆動部13の回転方向と同じ方向に回動させるために
は,共通駆動部13を回動させるとともに,駆動ベルトによる「連れ回
り」を打ち消すために,第1の駆動軸13Cを同期させて回動させる回
動制御を行わなければならない。このように,本件訂正前明細書におい
ては,駆動制御手段(14)の制御内容は固定や同期を伴った回動制御
であることが記載されている。
ところが,本件訂正は,駆動制御手段の制御として固定や同期を伴っ
た回動制御以外の制御を含むものである。また,本件訂正のうち「伸縮
するために・・・回動させる制御」及び「回動させる制御中・・・取,
り込まれた状態であるようにする制御」は,本件訂正前明細書に直接的
に記載されていた事項ではない。すなわち,本件訂正前明細書には固定
や同期を伴う回動制御によって搬送部が伸縮したり,共通駆動部上に取
り込まれた状態になるという制御結果が得られるという記載は存在する
が(0021【0023「伸縮するために・・・回動させる制【】,】),
御」や「回動させる制御中・・・取り込まれた状態であるようにする,
制御」については直接的に記載されていない。本件訂正前明細書の記載
を読んだ当業者が本件訂正によって取り込まれた構成が記載されている
ものと理解するとはいえない。このように,本件訂正は,固定や同期を
伴った回動制御以外の制御を含んだ,いわば上位概念ともいえる事項を
請求項1に付加するものであり,新規事項の追加に当たる。
)本件訂正特許発明1が特許法29条2項に当たることによる独立特許b
要件違反について
本件訂正特許発明1は,請求項7,8の制御方法の発明の制御結果に
すぎず,進歩性がないから,本件訂正は独立特許要件を欠く。本件訂正
によって付加された「伸縮」や「取り込まれた状態」という概念は,請
求項7,8の「一方の駆動軸を固定し他方の駆動軸を共通駆動部の回動
に同期させる」という回動制御の制御結果を表現したにすぎない。そし
て,請求項7,8に係る発明は,乙16審決(乙16の22頁ないし2
3頁)において,乙7発明(審決の甲2)と乙4発明(審決の甲3)と
の組み合わせから進歩性がないと認定されている。すなわち,本件訂正
後の一方の駆動軸を固定し,他方の駆動軸を共通駆動部の回動に同期さ
せて回動させるという回動制御を行い,その結果ないしその効果として
一方の搬送部を伸縮させ,他方の搬送部を共通駆動部上に取り込まれた
状態にさせるという制御結果にすることは,乙7発明及び乙4発明から
当然に予測可能な効果である。したがって,本件訂正特許発明1は進歩
性を有しておらず,独立特許要件を欠く。
イ原告
)新規事項の追加についてa
被告は,本件訂正前明細書においては,駆動制御手段(14)の制御
内容は固定や同期を伴った回動制御であることが記載されているのみで
あるのに対し,本件訂正は駆動制御手段(14)の制御として固定や同
期を伴った回動制御以外の制御を含むものであるから新規事項の追加に
当たる旨主張する。
,,【】しかし本件訂正前明細書についての被告の上記解釈は0019
以下の第1の制御方法から第3の制御方法の記載を基に本件訂正前明細
書の解釈を限定解釈する主張である。
本件特許発明においては,図1からも明らかなとおり,モータなどの
駆動手段の位置を特定しておらず【0019】における「固定」も駆,
動手段であるモータを回転させないことを意味するのではなく,軸を一
「」,「」方向に向けて固定することを意味するにすぎないから軸を固定
するために,モータを回転させることを当然に含む。このことは【0,
019】に「駆動制御手段14により第1の駆動軸13Cが固定され」
と記載されていることからも明らかである。
本件訂正前明細書の【0019】ないし【0021】には,駆動制御
手段(14)の回動制御によって,一方の搬送部を共通駆動部(13)
上に取り込まれた状態とし,他方の搬送部を伸縮させる動作が駆動制御
手段(14)の「回動制御」によって行われることが記載されている。
したがって,本件訂正の内容は,本件訂正前明細書に記載された内容の
範囲内である。
確かに,本件訂正前明細書の上記記載部分には,一方の駆動軸が固定
され,他方の駆動軸が共通駆動部と同期して回動制御されることも記載
されている。しかし,発明の詳細な説明に記載された実施例は,発明の
内容を説明するために発明の具体的な態様を記載したものであって,明
細書には実施例に限定された発明しか記載されていないというものでは
ない。特許請求の範囲には,通常,実施例の構成要件の上位概念を構成
要件とする発明が記載されているのであって,特許請求の範囲の記載が
実施例に表されていない形態を含んではならないというものではない。
)本件訂正特許発明が特許法29条2項に当たることによる独立特許要b
件違反について
被告は,本件訂正後の本件特許発明1及び2は本件特許の請求項7,
8と同内容であり,請求項7,8の発明は,乙16審決(乙16の22
頁ないし23頁)において,乙7発明(審決の甲2)及び乙4発明(審
決の甲3)の組み合わせから進歩性がないと認定されているとして,本
件訂正特許発明は独立特許要件を欠く旨主張する。
しかし,乙16審決の上記認定は,乙4発明(審決の甲3)に関して
事実認定を誤まった結果導き出された結論である。すなわち,乙16審
決は,乙4発明について,次の①ないし③の認定をしている。
①「他の実施例として上記ウエハ保持部(28(33)を全く同),
期させて直線軌道に沿って動かす場合には第4図および第5図に示す
ような構造にしてもよい。つまり(40)は駆動モータで,この回,
()(),転駆動は駆動モータ40に連結された駆動軸41に伝達され
この駆動軸(41)の先端には第1のアーム部材(42)が取付けら
,()。,れ駆動軸41の回転に応じて旋回するようにされているまた
駆動軸(41)に同軸に固定プーリ(43)が支持板(44)に固定
されている。また上記第1のアーム部材(42)の両端には回転プー
リ(45(46)が回転自在に支持されており,上記固定プーリ),
(43)とワイヤベルト(47(48)によって回転を伝達する),
ように連結されている。上記回転プーリ(45(46)の回転軸),
(49(50)には第2及び第3のアーム部材(51(52)),),
の一端が取付けられ,この第2および第3のアーム部(51(5),
)(),()。」2の他端にはウエハ保持部材5354が形成されている
(3頁右上欄13行ないし左下欄9行)
②「他の実施例として,上記ウエハ保持部(28(33)はどち),
らか一方だけを動かすことも可能である(3頁左下欄12行ない。」
し13行)
③「左右のウエハ保持部を用いて,同一方向において,一方のウエ『
ハ保持部に載置されたウエハを搬送先に移動して,それを他方のウエ
ハ保持部を用いて搬送先のウエハと交換する運動を行うこと及び第』『
2のアーム部材とその回転軸及び第3のアーム部材とその回転軸とを
共通の第1のアーム部材に設けること・・・が記載されていると認』
められる」と認定している。審決はかかる認定を前提として,乙4。
と乙7の組み合わせから進歩性がないと判断している。
乙16審決は,上記認定を基に,本件各特許発明は,乙4発明と乙7
発明を組み合わることによって容易に想到し得たと判断している。しか
し,上記審決の認定は,上記①及び②を同一の実施例に関する記載であ
ると認定した点で誤っている。すなわち,上記②は,ウエハ保持部(2
8(33)を別々に動かすための実施例について記載した図2の実),
施例について記載したものであるのに対し,上記①はこれとまったく別
の実施例である図4及び図5についての説明である上記②の実施例乙。(
4の図1及び図2)では,二つのウエハ搬送部をそれぞれ別個に動かす
構造として,第1アーム(14)及び第2アーム(21)を別の部材と
して構成しているのに対し,上記①の実施例(乙4の図4及び図5)で
は,この目的とは異なり「上記ウエハ保持部(28(33)を全く,),
同期させて直線軌道に沿って動かす場合」について記載しているのであ
るから,このような実施例を乙7発明に組み合せた場合には,乙7発明
における片方のアーム部51と他方のアーム部52は,独立して移動す
ることができなくなるために,所望の目的効果を達成することが出来な
くなってしまう。このように,乙4発明には乙7発明との組み合わせを
阻害する事由が記載されているのである。
このように乙16審決には事実誤認があり,本件訂正後の本件各特許
発明はいずれも独立特許要件を欠くとはいえない。
()被告各製品が本件訂正部分の構成を充足するか(争点6−3)3
ア原告
)原告の主張a
被告各製品において,第3アーム(3a)が伸縮するための制御は,
第3アーム(3a)を伸縮させるために第1アーム(11)及びこれと
一体の第1の支軸(15)を回動させ,この際,第3アーム(3b)は
()。第1アーム11上に取り込まれた状態となるように制御されている
,(),()また第3アーム3bが伸縮するための制御は第3アーム3b
を伸縮させるために第1アーム11及びこれと一体の第1の支軸1()(
5)を回動させ,この際,第3アーム(3a)は第1アーム(11)上
に取り込まれた状態となるよう制御されている。
したがって,被告各製品は本件訂正部分の構成を充足する。
)被告の主張に対する反論b
被告は,本件訂正部分の意味について「共通駆動部の回動によって一
方の搬送部の伸縮が実現されることを要件とし,かつ,同時に他方の搬
,,送部が取り込まれた状態であるようにすることは共通駆動部とは別の
共通駆動部の回転と逆の回転力によって実現されることを要する」とい
うように限定して解釈すべきであると主張する。
しかし,このような限定的な解釈を本件訂正後の特許請求の範囲から
読むことは困難である。被告は,本件明細書の【0020】の実施例の
動作についての記載を根拠としているようである。しかし,特許請求の
範囲を明細書の実施例の構成に限定して解釈しなければならない理由は
ない。むしろ,本件明細書【0108】に記載された本件特許発明1の
作用効果との関係においても被告が主張するような構成でなければなら
ない理由はない。
本件訂正は,乙16審決において,乙1発明の「旋回台10」が本件
特許発明1の「共通駆動部」に当たると認定されたために,本件特許発
明1の制御装置の特定として,本件訂正部分のような構成であることを
明確にし,もって,乙1発明との差異を明確にする趣旨で行ったもので
。,「()」ある本件訂正部分はこの共通駆動部13を回動させる制御中
とあるとおり,伸縮動作中の二つの搬送部の制御を規定することに意義
がある要件であり,当該構成要件は,本件明細書の図6,図7あるいは
図13等に示されたような一方の搬送部を伸縮させるために共通駆動部
を回動させている際に,他方の搬送部は共通駆動部上に取り込まれた状
態であるようにする制御を規定しているものである。
イ被告
被告各製品においては,第3アーム(3a)を伸縮させるために第1ア
()()。ーム11及び第1の支軸15を回動させているということはない
本件訂正部分の「第1の搬送部(15)又は第2の搬送部(16)を伸
縮するために共通駆動部(13)を回動させる」とは,共通駆動部を回動
することが,第1の搬送部又は第2の搬送部を伸縮するための手段になっ
ているという意味に解釈すべきである。本件訂正部分の記載及び本件明細
書【0019】及び【0020】の記載によれば,搬送部の「伸縮」は,
駆動制御手段により共通駆動部が回動することによって実現され,他方の
「搬送部が共通駆動部上に取り込まれた状態であるようにする制御」につ
いては,共通駆動部の動きとは切り離された別系統の動きであると解釈さ
れる。すなわち,共通駆動部の回転は一方の搬送部を伸縮するための手段
であり,他方の搬送部が共通駆動部上に取り込まれる状態であるようにす
る制御(共通駆動部とは逆の回転力を与える制御)は,共通駆動部を駆動
する駆動制御手段や共通駆動部によってもたらされるものではない。
被告各製品においては,各多関節駆動部を制御するモータは共通駆動部
に固定されている棚板上に設置されている(ロ号物件においては共通駆動
部上に設置されている。このため,共通駆動部の駆動制御手段と多関。)
節駆動部の駆動制御手段とはまったく別々の制御系に属している。駆動制
御手段が共通駆動部を回動させることにより多関節駆動部あるいは搬送部
を制御しようとしてもそれは不可能である。すなわち,被告各製品におい
,「」。ては共通駆動部を回転させても一方の搬送部が伸縮することはない
一方の搬送部を伸縮するためには,共通駆動部を動かすためのモータでは
なく搬送部を動かすためのモータを使用する。さらに,他方の搬送部を共
通駆動部上に取り込まれた状態であるようにするために,共通駆動部とは
別の駆動系を用いることはない。共通駆動部が回転すれば,それに伴って
他方の搬送部が連れ回るため,共通駆動部上に取り込まれた状態が維持さ
れるにすぎない。したがって,被告各製品は,本件訂正後の構成要件Gを
充足しない。
7本件特許発明2に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものとい
えるか(争点7)
本件特許発明2は,共通駆動部をくの字型にした(構成要件I)点において
のみ本件特許発明1と構成を異にする。構成要件Iを採用することの新規性,
進歩性を除く主張は,争点5における被告及び原告の主張と同様である。そこ
で,以下,構成要件Iを採用することの新規性及び進歩性についての主張を追
記する。
()本件特許発明2が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発明1
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点7−1。)
ア被告
本件特許発明2の構成要件Iは,乙1公報の第3図に開示されている。
,,乙1公報の第3図には旋回台10の回転中心点と図中左右の駆動軸43
43とを結ぶ線分が,くの字型に屈曲されていることが示されている。ま
た,同図には,旋回台10と図中右側の平行リンク機構40のうちホーム
ポジションにある状態の図(実線で示される図)と図中左側の平行リンク
機構40のホームポジションにある図(破線で示される図)からなる各部
材がくの字型に屈曲されていることが示されている。
,。乙1発明は構成要件Iを採用することによる作用効果も実現している
すなわち,乙1公報の第3図において,平行リンク機構がホームポジショ
ンにある状態では,両基板保持部60a,60bの姿勢が完全に一致して
おり,この状態から各基板保持部60a,60bを図中上下方向にいう同
一方向に伸縮できる様子が示されている。また,乙1発明においては各基
板保持部60aと60bを切り換えるに当たって旋回は不要である。
イ原告
乙1発明においては,連続する動作の一時点において旋回台10と両ア
ーム部がくの字型に見える位置関係になることもあり得る。しかし,乙1
,。発明においてはアームがくの字型を維持して運動しているわけではない
このため,乙1発明においては,ホームポジションから右側のアームを屈
伸させようとすると,左側のアームに搭載されている被搬送物と右側のア
ームが衝突してしまう。このような衝突を回避するために,乙1発明にお
いては,アームにコの字型の部材を取付けている(乙1公報の3頁右下欄
10行ないし20行,第3図。本件特許発明2においては,共通駆動部)
を設け,これをくの字型にすることで,コの字型の部材を取付けることな
く搬送装置全体のコンパクト化と搬送時間の短縮を同時に実現できるもの
である。
()本件特許発明2が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された発2
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの
といえるか(争点7−2。)
ア被告
本件特許発明2の構成要件Iは,乙7公報の第4図及び第3図に開示さ
れている。乙7公報の第4図には,片方のアーム(51)を構成する第4
アーム(22)と他方のアーム(52)を構成する第1アーム(7)から
なる両アームの形状が全体としてくの字型に屈曲されていることが示され
ている。また,同第3図には,片方のアーム(51)を構成する第2ウォ
(),()ンド32を直線L上に沿って半径R方向に縮め他方のアーム52
を構成する第1ウォンド(17)を直線L上に沿って半径R方向に縮める
と,第1ウォンド(17)及び第2ウォンド(32)の姿勢が完全に一致
しており,この状態から第1ウォンド(17)及び第2ウォンド(32)
を図中上下方向(直線L上に沿った半径R方向)という同一方向に伸縮で
きる様子が示されている。乙7発明においては第1ウォンド(17)と第
2ウォンド(32)を切り換えるに当たって旋回は不要であって,本件特
許発明2と同じ作用効果を奏する。
イ原告
,()乙7発明においては連続した動作の一時点において第4アーム22
と第1アーム(7)についてその形状がくの字型になる位置関係になるこ
ともあり得る。また,意識的にその形状がくの字型を崩さないように制御
することも不可能ではないかもしれない。
しかし,仮にそうだとしても,乙7発明をそのように制御することはか
なり複雑な制御となるし,乙7発明においては,アームをそれぞれ別部材
で構成しているのであって,本件特許発明2との比較では制御の簡便さ,
部品点数の最小化の点で大きく異なることになる。
そもそも,乙7発明は,両方のアームでそれぞれ異なるウエハカセット
(搬送先)にウエハ(被搬送物)を搬送するための装置であって,両アー
ムで同一の搬送先に搬送物を搬送する本件特許発明2に係る装置とは目的
を異にしている。そのため,乙7発明においては,本件特許発明2におけ
る課題さえ認識されておらず,実際の構成も異にしている。
()本件特許発明2が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術(乙113」
の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」及び特開平4−3044
7号公報(乙1,特開昭63−288677号公報(乙4)ないし特開平)
5−109866号公報(乙7)のいずれかに基づいて当業者が容易に発明
することができたものといえるか(争点7−3。)
ア被告
乙11模式図の「く』の字型に屈曲された揺動アーム(13」は,『)
構成要件Iの「共通駆動部(13)の回転軸を概略垂線とする平面におい
て,該共通駆動部(13)が『く』の字型に屈曲されたアーム状を構成す
る」に相当する。
イ原告
乙11雑誌に掲載された装置は,揺動アームを左右に動かすことによっ
て左右のパイプアームが前後に伸縮するという装置であり,半導体ウエハ
などの搬送装置に係る本件特許発明とは,そもそも,技術分野や装置の目
的が異なる。
また,共通駆動部がくの字型に屈曲された構成は,被搬送物を載せる左
右の第1の搬送部がホームポジションにおいて重なった状態で揃えること
ができ,これによって被搬送物30を同一方向に伸縮させ得る構成である
(本件明細書【0056「第2の実施例では図10の共通駆動屈曲アー】
ム33が『く』の字型に屈曲されたアーム状を構成する・・・このよう。
にすることで,当該多関節搬送部の旋回半径を小さくすることができ,ま
た,両フォーク35及び36を揃えることができる【0074「本。」,】
発明の第2の実施例によれば,図9に示すように『く』の字型に屈曲さ,
れた共通駆動屈曲アーム33が採用される。このため,共通駆動屈曲アー
ム33上に両フォーク35及び36を取り込んだ状態において,従来例の
ような収納角度γを設けることなく,両フォーク35及び36を重なった
状態に揃えることが可能となる。このことで,被搬送物30を同一方向に
伸縮させることが可能となる。これに対し,乙11装置は,確かに揺。」)
動アームがわずかに屈曲しているものの,当該構成により左右のパイプア
ームを同一方向に伸縮させるものではなく,このような構成を採用したと
しても何ら装置のコンパクト化や搬送時間の短縮化という作用効果を奏す
るものではない。
このように,乙11装置は,本件特許発明2の基本的な構造やそれに伴
う作用効果について何らの開示も示唆もするものではない。したがって,
乙11装置と乙1発明,乙4発明及び乙7発明の装置とを組み合せること
は阻害されているといえる。また,仮に阻害要因を無視してこれらを組み
合せたとしても組み合わせによって導かれる構成は本件特許発明2とは異
なる構成である。
()本件特許発明2が合衆国特許4678393(乙12の1)及び特開平44
−30447号公報(乙1,特開昭63−288677号公報(乙4)な)
いし特開平5−109866号公報(乙7)のいずれかに記載された発明に
基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点7−
4。)
ア被告
乙12模式図の「く』の字型に屈曲された「ドライブメンバ(32」『)
は,構成要件Iの「共通駆動部(13)の回転軸を概略垂線とする平面に
おいて,該共通駆動部(13)が『く』の字型に屈曲されたアーム状を構
成する」に相当する。
イ原告
乙12発明は,半導体ウエハなどの搬送装置に係る本件特許発明とは,
そもそも,技術分野や装置の目的が異なる。
乙12発明は,本件特許発明2の基本的な構造やそれに伴う作用効果に
ついて何らの開示も示唆もするものではない。したがって,乙12発明に
乙1発明,乙4発明及び乙7発明の装置とを組み合せることは阻害されて
いるといえる。また,仮に阻害要因を無視してこれらを組み合せたとして
も組み合わせによって導かれる構成は本件特許発明2とは異なる構成であ
る。
()本件特許発明2が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲載5
された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか
(争点7−5。)
ア被告
,(),乙14雑誌に掲載された昭和58年1983年撮影の写真1から
乙14装置のアームが「く」の字型に屈曲された構成であったことがわか
る。
乙14雑誌77頁には,乙14装置が,2本の腕が同一のベースの上に
乗っていること,このベースを回しながらワークに接近する側の腕を伸ば
すことによって動作時間を短縮できることが記載されている。
以上によれば,旋回運動をする「く」の字型アームの両端に直線運動を
する別のアームを設けてスループットを向上させるという本件特許発明の
技術思想に関わる構成,動作,作用効果は出願前にすでに公知であったと
いえる。
乙14装置はエアシリンダによるピストン運動によって直線運動してい
るものであり,本件特許発明2はスカラ型機構で伸縮運動を行なっている
点で相違する。しかし,スカラ型機構は,本件明細書に記載された先行技
術において用いられていたものであって本件特許出願当時の公知技術であ
り,乙14装置においても直線運動をエアシリンダ機構に限定するような
記載はない。本件特許発明2はこのエアシリンダ機構をスカラ型機構に置
き換えたものにすぎない。
イ原告
被告の提出する乙14は,極めて不鮮明な写真と雑ぱくな説明がなされ
ているのみであって,これによって乙14装置の具体的な構成を導くこと
は無理である。被告は,乙14から乙14装置の構成を推測した上で主張
しているようであるが,そのような推測に基づく主張は成り立つ余地がな
い。
8本件特許発明2の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点8。)
()()本件特許発明2の無効理由が本件訂正によって解消されるか争点8−11
ア被告
)「く」の字型に屈曲したアーム状とした点に技術的な意義を認めるこa
とができないから,共通駆動部を直線状のものから「く」の字型に屈曲
されたアーム状のものに変更することは,当業者が適宜採用し得る設計
上の事項に過ぎない旨の乙17審決の判断を本件訴訟における被告の主
張として引用する。
)乙7発明を主引例とする無効理由以外のその余の無効理由も,本件訂b
正により解消されない。
イ原告
)乙17審決の判断についてa
①前記6()イのほか,共通駆動部をくの字型にする構成に関して次1
の主張を追加する。
②被告の引用する乙17審決は「本願の発明の詳細な説明には,共,
通駆動部が直線状である場合に『収納角度』が必要である理由が,実
質的に説明されていないため,両搬送部を同じ方向に伸縮させるため
に共通駆動部を回転させねばならない理由が不明である。このため共
通駆動部を直線状とした場合と『く』の字型に屈曲したアーム状とし
た場合との作用上の差異が認められないので『く』の字型に屈曲し,
たアーム状とした点に技術的な意義を認めることができない(乙。」
17審決20頁6行ないし11行「共通駆動部を,直線状のもの),
から『く』の字型に屈曲されたアーム状のものに変更することは,,
当業者が適宜に採用し得る設計上の事項に過ぎないというべきであ
る(乙17審決20頁3行ないし5行)とする。。」
しかし,そもそも,発明の構成要素の技術的意義は,明細書に記載
された発明の構成及び動作から必然的に導き出されるものであって,
対比される発明の問題点が明細書に明確に記載されていないというこ
とのみで発明の技術的意義が存在しなくなるというものではない。ま
た,本件特許発明2の共通駆動部をくの字型にする構成の技術的意義
は,本件明細書【0074【0075】及び【0109】に記載】,
されている。さらに,共通駆動部が直線状である場合,多関節搬送装
置が旋回するときの専有面積を最小に抑えるために「収納角度」が必
要である理由については,訂正審判請求書(甲19の16頁26行な
いし19頁13行)に記載したとおりであり,当業者であれば本件明
細書から容易に理解することができる。すなわち,本件特許発明2の
ような搬送装置において,搬送部を直線上に移動させることは当業者
にとってまったくの常識に属する事項である。とりわけ,プロセスチ
ャンバに被加工基板を出し入れする装置においては,プロセスチャン
バ内部は真空にされるなど,通常は外部と雰囲気を異にしている。そ
のため,プロセスチャンバの開口部はできる限り小さく設計されてお
り,当該開口部を出入りする搬送部は,開口部に対して垂直な直線上
を移動するように設計される。搬送部を開口部に対して垂直な直線上
を移動させるためには,搬送装置の基台側のアームと搬送部側のアー
ムを同じ長さにし,それら二つのアームが搬送方向を底辺とする二等
辺三角形となるようにアームを回転させる必要がある。このような構
成においては,搬送ストロークを大きくしようとすれば,アームの長
さを長くするか,アームの揺動角度を大きくしなければならない。と
ころが,直線状の共通駆動部を用いた上で,搬送部であるフォークを
(「」同じ向きにそろえてしまうと甲19添付参考図交差角無しの場合
参照,揺動角度は90度に定まってしまうことになり,アームの長)
さを大きくしない限り,搬送ストロークを大きくすることはできない
が,そうすると,アームの長さが長くなった分だけ専有面積が大きく
なってしまう。このため,アームの長さを抑えつつ,大きなストロー
クを確保するためには,本件明細書図5のように「収納角度」を設け
ざるを得ないのである。
③被告が引用する乙17審決は「搬送部が向きを変えずに一直線上,
を移動するためには,共通駆動部の回動中心軸から第1又は第2の固
定軸までの距離と,多関節駆動部の第1又は第2固定軸から第1又は
第2搬送部までの距離との関係,並びに共通駆動部の旋回角度と共通
駆動部に対する多関節駆動部の旋回角度の比率を特定することが必要
であるところ,本願の明細書にも図面にもこれらの距離の関係や比率
については記載されていないため,本件発明6(判決中:本件特許発
明2)が上記課題を満たすことを目的としていると理解することはで
きない。したがって,本願の発明の詳細な説明に『収納角度』が必要
である理由が実質的に記載されているということはできず,被請求人
が主張する,共通駆動部を『く』の字型に屈曲したアーム状とするこ
との効果も認めることができない(乙17審決20頁17行ない。」
し27行)とする。
しかし「共通駆動部の回動中心軸から第1又は第2の固定軸まで,
の距離と,多関節駆動部の第1又は第2の固定軸から第1又は第2の
搬送部までの距離との関係」については,本件明細書の図5(共通駆
動部が直線状の場合)及び図12(共通駆動部が「く」の字型に屈曲
したアーム状の場合)に示されている。図5では,共通駆動部の固定
軸の間隔が2A,多関節駆動部の固定軸と搬送部までの距離がAとさ
れている。
また「共通駆動部の旋回角度と共通駆動部に対する多関節駆動部の
旋回角度の比率」についても,本件明細書の図6及び図7並びに図1
3及び図14の図に記載されており,共通駆動部と多関節駆動部は,
共通駆動部の回動中心と,搬送部を結ぶ直線を底辺とする二等辺三角
形の各辺をなしていることがわかる。
このように,乙17審決が「記載されていない」とする事項は,本
件明細書に記載されているから,上記乙17審決の判断が事実誤認で
あることは明らかである。
④被告の引用する乙17審決は「共通駆動部が『く』の字型に屈曲,
されたアーム状を構成することの技術的意義は・・・当業者が理解,
し得る程度に記載されているということはできない。よって,本件発
明6(判決注:本件特許発明2)は,改正前特許法第36条4項に規
定する要件を満たさない(乙17審決23頁28行ないし32行)。」
として,記載不備事項として,ⅰ)共通駆動部が直線状である場合に
『収納角度』が必要である理由が記載されていない,ⅱ)搬送部が向
きを変えずに一直線上を移動するためには,共通駆動部の回動中心軸
から第1又は第2の固定軸までの距離と,多関節駆動部の第1又は第
2の固定軸から第1又は第2の搬送部までの距離との関係,並びに共
通駆動部の旋回角度と共通駆動部に対する多関節駆動部の旋回角度の
比率を特定することが必要であるところ,本願の明細書にも図面にも
これらの距離の関係や比率については記載されていないという2点を
指摘する。
しかし,平成6年法律第26号による改正前の特許法36条4項は
「前項第3号の発明の詳細な説明には,その発明の属する技術分野に
おける通常の知識を有するものが容易にその発明を実施することがで
きる程度に,その発明の目的及び効果を記載しなければならない」。
というものである。そして,上記ⅰ)については前記②のとおり,上
記ⅱ)については前記③のとおり,本件明細書の記載に基づいて当業
者が容易に理解できる程度に記載されているから,乙17審決の判断
は誤りである。
)本件訂正により,乙1発明,乙2発明を主引例とする無効理由及び被b
告が主張するその余の進歩性を理由とする無効理由はすべて解消されて
いる。
()本件訂正請求が訂正要件を満たすといえるか(争点8−2。2)
ア被告
次の事項を追加して主張するほか,前記6()アと同様である。2
本件訂正特許発明2の技術的意義は本件訂正前明細書に記載されておら
ず改正前特許法36条4項の要件を満たさないから独立特許要件を欠く。
)原告は,本件特許発明2の技術的意義について,共通駆動部が直線状a
である場合には収納角度が必要であるのに対し,共通駆動部をくの字型
にすれば収納角度が不要となり,かつ,機械自体の旋回半径(したがっ
て旋回のための専有面積)を最小化することができる旨主張する。
しかし,本件訂正前明細書には,本件訂正特許発明2の上記技術的意
義について記載されていない。当業者が本件明細書に接した場合直線状
の共通駆動部を用いても,各回動部の軸間距離や旋回角度の組み合わせ
によっては収納角度を設けることなく,専有面積を最小化し得る可能性
を排除することができない(乙16。原告は,本件訂正特許発明2は)
搬送部の向きを変えずに一直線上に移動させることを前提とした発明で
ある旨主張するが,本件訂正前明細書にはそのような記載はなされてい
ない。
)原告は,搬送部の向きを変えずに一直線上に移動させるための条件とb
して搬送アームの関節間距離がAであり,共通駆動アームの関節間距離
,,が2Aであり各回動軸中心を結んだ形状が二等辺三角形をなしており
搬送アームを共通駆動アームの2倍の早さで旋回させる旨主張する。
しかし,本件明細書には,本件訂正特許発明2の上記のような技術事
項は記載されていない。
)原告は,交差角がない場合には交差角がある場合に比べて同じ搬送距c
離を確保しようとすれば搬送アームの関節間距離を大きくとらなければ
ならず,そのために共通駆動アームの旋回半径R1が大きくなってしま
う旨主張する。
しかし,本件明細書にはそのような記載はない。原告が特許庁に提出
した訂正請求書(甲19)には参考図が記載されているが,本件明細書
には当該図面も記載されていない。
)さらに,共通駆動部をくの字型にすることについては,上記のとおりd
技術的意義の記載がないが故に,当業者が容易になし得る事項であり,
本件訂正特許発明2は進歩性がない。この点からも本件訂正特許発明2
は独立特許要件に欠ける。
このように,本件明細書には共通駆動部がくの字型に屈曲していること
の技術的意義は,当業者が理解し得る程度には記載されているとはいえな
いから,本件訂正特許発明2は改正前特許法36条4項の要件を満たして
おらず,独立特許要件に欠ける。
イ原告
次の事項を追加して主張するほか,前記6()イと同様である。2
被告は,本件訂正前明細書には,①搬送部の向きを変えずに一直線上
に移動させることを前提とした発明であること,②搬送部の向きを変え
ずに一直線上に移動させるための条件として搬送アームの関節間距離が
Aであり,共通駆動アームの関節間距離が2Aであり,回動軸中心を結
んだものが二等辺三角形をなしており,搬送アームを共通駆動アームの
2倍の早さで旋回させること,③交差角がない場合には交差角がある場
合に比べて同じ搬送距離を確保しようとすれば搬送アームの関節間距離
を大きくとらなければならず,そのために共通駆動アームの旋回半径R
1が大きくなってしまうことが記載されていないから,上記①ないし③
を前提とする本件特許発明2は改正前特許法36条4項の要件を満たさ
ない発明であり,したがって,本件訂正後の本件特許発明2は独立特許
要件を欠く旨主張する。
しかし,上記①については,本件訂正前明細書の図6,7,13及び
14に搬送部の向きを変えずに一直線上に移動させる様子が記載されて
いる。また,本件特許発明は半導体製造装置の処理チャンバへの半導体
ウエハ搬送のための装置に関するものであるところ,当該処理チャンバ
内においてはチャンバ内の雰囲気を外部の雰囲気と異なる状態にして処
理が行われるため,チャンバの開口部はできるだけ小さくすることが求
められている。このため,当該開口部を通過する搬送部はチャンバの開
口部に対して垂直な直線上を向きを変えずに移動することが求められて
いる。本件特許発明2が半導体ウエハの処理チャンバへの搬送に用いら
れるものを前提としている以上,当業者であれば本件特許発明が搬送部
が向きを変えずに一直線上に移動することを前提としていることは当然
に認識することである。
上記②のうち搬送アームを共通駆動アームの2倍の早さで旋回させる
ことについては,乙7公報にも記載されているとおり,周知の技術であ
る。
原告が,上記①ないし③のような説明を行ったのは,乙16審決にお
いて「共通駆動部が直線状である場合に『収納角度』が必要である理由
が,実質的に説明されていないため,両搬送部を同じ方向に伸縮させる
ために共通駆動部を回転させなければならない理由が不明である」と。
記載されたため,この点に関する説明を行ったというにすぎない。
なお,乙17審決は「直線状の共通駆動部を用いても,各回動部の軸
間距離や旋回角度の組み合わせによっては収納角度を設けることなく占
有面積を最小化し得る可能性を排除することができない」と記載し,。
被告は,当該記載をさらに具体化して搬送アームの関節間距離をAと2
Aの中間に設定すれば搬送部の向きを変えずにほぼ一直線上に移動させ
ることができると主張する。しかし,搬送部の交差角がない場合には,
搬送部の先にある軸点は,同点と共通駆動部と第1の多関節駆動部の接
合部分に当たる第1の固定軸点を結ぶ直線上を当該第1の固定軸点を通
過して移動させる必要がある(したがって,移動過程において搬送部と
第1の多関節駆動部が,搬送部の先にある軸点と第1の固定軸を一致さ
せて重なることになる。ところが,搬送アームの関節間距離(すな。)
わち,搬送部の先にある軸点と搬送部と第1の多関節駆動部の接合点で
ある軸点との距離)を第1の多関節駆動部の長さより長くし,又は短く
した場合には,移動過程において搬送部と第1の多関節駆動部が,搬送
部の先にある軸点と第1の固定軸を一致させて重なることができないか
ら,搬送部の先にある軸点は,同点と共通駆動部と第1の多関節駆動部
の接合部分に当たる第の固定軸点を結ぶ直線上を当該第1の固定軸点1
を通過して移動することができない(甲21。)
()被告各製品が本件訂正部分の構成を充足するか(争点6−3)3
ア原告
前記6()アと同様である。3
イ被告
前記6()イと同様である。3
9本件明細書の発明の詳細な説明が改正前特許法36条4項及び5項2号の
規定する要件を満たしているか(争点9。)
()被告1
ア共通駆動部を単一部材で構成する旨の記載の欠如と改正前特許法36条
4項及び5項2号違反について
原告が本件訴訟において主張するところの,本件各特許発明の「共通駆
動部」の左右のアームを単一部材で構成したとの本件特許発明の特徴的部
分が,本件明細書の請求項1及び6並びに発明の詳細な説明に記載されて
いないことは,改正前特許法36条4項及び5項2号に違反する。
イ旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点を一致させる構成及びこれによる
作用効果(搬送距離が長くなること)の記載の欠如と改正前特許法36条
4項及び5項2号違反について
原告が本件訴訟において主張するところの,旋回運動の回転中心と伸縮
運動の原点が一致するとの本件特許発明1の特徴が,本件明細書の請求項
1及び6並びに発明の詳細な説明には記載されていないことは,改正前特
許法36条4項及び5項2号に反する。本件明細書の【0039】にその
ように読めなくもない記載があるが,同心軸を使用しモータ3台を筒体に
固定してしまえばリード線の引き回しが簡単になるということを説明して
いるだけであり,原告が本件訴訟で主張する長い搬送距離などは記載され
ていない。
原告は,本件訴訟において,旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点を一
致させることによって,搬送距離を長くすることができることが本件特許
発明1の特徴である旨主張する。しかし,本件明細書にはそのような記載
はない旋回半径を小さくすることができるとの記述は本件明細書の0。,【
012【0023【0051【0064【0085【008】,】,】,】,】,
8】等に存在する。しかし,当該記載はいずれもホームポジションにおけ
る旋回半径についての記載である。ホームポジションから離れた搬送距離
。,【】【】についての記載はないまた本件明細書の0108及び0109
の記載は,収納角度γを有する先行技術に比して本件特許発明の方が旋回
角度が小さくて済むという効果と,本件各特許発明の中でも本件特許発明
2は本件特許発明1よりさらに旋回半径が小さいことを記載しているにす
ぎず,本件明細書に記載されていないコの字形ダブルアームロボットとの
比較において搬送距離が長いことは,本件訴訟に至ってはじめて主張され
たものであり,本件明細書には記載されていない。
ウ収納角度γを要しない構成とすることの作用効果(切り替え旋回時間が
不要であるという作用効果)の記載の欠如と改正前特許法36条4項違反
について
原告は,本件特許発明1において収納角度を要しない構成とすることに
より,各アームの切り替え旋回時間が不要となるという作用効果が生じる
旨主張する。しかし,本件明細書の発明の詳細な説明には,そのような作
用効果についての記載がない。
,【】,各アームの切り替え旋回時間については本件明細書の0012に
収納角度γを有するロボットにおいては切り替え時間が増加する旨記載さ
れているが,これはシングルアームロボットを2台併用する場合との比較
か,仮にこの角度γをゼロにした場合との比較である。本件特許発明1に
おいては切り替え時間がゼロであるなどとは記載されていない。本件明細
書の【0030】及び【0075】においては本件特許発明1と本件特許
発明2との対比において,本件特許発明1において必要とされていた旋回
,,時間が本件特許発明2においては不要であると記載されているがこれは
収納角度γを有する先行技術との比較ではなく本件特許発明1と同2の比
較である。なお,本件明細書の【0109】の記載は,その全体が本件特
許発明1と本件特許発明2の比較についての記載であるし【0030】,
及び【0075】から読み進んだ当業者には収納角度γを有する先行技術
からの進歩性の説明であるとは理解できない。
,,,むしろ本件明細書の記載によれば収納角度γを有する先行技術では
180度未満の切り替え旋回が必要であるのに対し,本件特許発明1にお
いては180度の切り替え旋回が必要となり,本件特許発明2においては
。,,180度超の切り替え旋回時間が必要となる当業者は本件明細書から
先行技術に比べて切り替え旋回時間がなくて済むという進歩性を理解する
ことができない。
エ衝突防止の作用効果の記載の欠如と改正前特許法36条4項違反につい

原告は,本件特許発明1の作用効果として,両アームの衝突防止を主張
する。しかし,衝突防止については,わずかに本件明細書の【0011】
に記載があるのみである。そして,当該記載は,衝突防止のために収納角
度γを設けた先行技術について「もしも」この角度をゼロにすると両ア,
ームが衝突するという従来技術についての説明にすぎず,本件特許発明1
における衝突防止効果についての記載はない。
()原告2
ア共通駆動部を単一部材で構成する旨の記載の欠如について
被告は,本件明細書に共通駆動部を単一部材で構成することが記載され
ていない旨主張する。しかし,本件明細書の発明の詳細な説明及びこれに
添付した図面に共通駆動部が単一部材であることが明確に記載されてい
る。
イ旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点を一致させる構成及びこれによる
作用効果の記載の欠如について
被告は,旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点が一致する構成が本件明
細書には記載されていない旨主張する。しかし,本件明細書に添付した図
面には旋回運動の中心点と伸縮運動のための回転の中心点とが一致した構
成が明確に記載されている。
被告は,旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点を一致させる構成を採用
することの効果として,本件明細書には,旋回半径を小さくできることは
記載されているが搬送距離を長くすることは記載されていない旨主張す
る。しかし,旋回半径の大きさと搬送距離の長さは表裏の関係にあり,当
業者であれば旋回半径についての記載から搬送距離に関する事項を容易に
読み取ることができる。
ウ収納角度γを要しない構成とすることの作用効果の記載の欠如について
被告は,本件明細書には,収納角度γを要しない構成とすることによっ
て旋回時間を省略できるという作用効果は記載されておらず,むしろ,本
件明細書の記載によれば,収納角度γを有する先行技術におけるγは18
0度未満であるのに対し,本件特許発明1においては180度の切り替え
旋回時間が必要となり,本件特許発明2においては180度超の切り替え
旋回時間が必要となるなどと主張する。
しかし,本件特許発明1は,搬送のための伸縮運動における旋回を不要
とする発明ではなく,被搬送物の搬送が行なわれていないときの両アーム
の切り替えのための旋回を不要とする発明である。すなわち,第1の搬送
部が搬送先からホームポジションに戻りつつある間に切り替えのための旋
回も同時に行うため,第1の搬送物がホームポジションに到達してからロ
ボット自体を旋回させる時間を節約することができるというものである。
上記のような本件特許発明1の特徴は,本件明細書を読んだ当業者は容易
に理解し得ることである。
エ衝突防止の作用効果の記載の欠如について
被告は,本件明細書に,左右両アームの衝突防止効果について記載がな
い旨主張する。しかし,本件特許発明1における共通駆動部が衝突防止と
いう効果を有することは説明するまでもなく明らかである。
10損害の額(争点10)
()原告1
ア原告は,被告の本件特許権侵害行為により,次のとおり,少なくとも1
億2000万円の損害を被った。
イイ号物件の売上げについて
被告は,イ号物件について遅くとも平成9年夏ごろまでには製造販売を
開始しており,平成15年夏までの6年間のイ号物件の売り上げは12億
円を下らない。
なお,被告は,現在,イ号物件を製造販売していない旨主張する。しか
し,自らのホームページにおいて,被告の海外(韓国及び米国)法人のホ
ームページに対するリンクを張っており,海外法人のホームページにおい
てイ号物件の譲渡の申出を行なっている(甲10,11,12。甲11に
おけるS300及びS340がイ号物件のうちRR468に当たる。。)
したがって,被告は,現在においてもイ号物件の輸入,製造,販売を行な
っているといえる。被告はイ号物件に対応する大気用のロボットであるロ
号物件について自らのホームページにおいて優れた製品であるとして宣伝
広告しているのであるから,これに対応する真空用ロボットであるイ号物
件を今後一切製造販売しないということはあり得ない。仮に,被告が現在
イ号物件の製造販売を行なっていないとしても,将来に亘って製造,販売
を行うおそれが極めて高いといえる。
ウロ号物件の売上げについて
被告は,ロ号物件を現在においても「新型ロボット・・・RR421を
搭載し,小さな旋回半径でロングリーチを実現しました」と宣伝広告し。
て製造販売している(甲9,6。そして,ロ号物件は,いわゆる第5世)
代に当たるところ,平成16年9月16日付け日刊工業新聞の記事(甲1
7)によれば,被告は,このころまでに,三星電子株式会社(以下「サム
スン」という)に対して第5世代を販売したことが認められる。ロ号物。
件の販売時期は平成13年から平成16年であるところ,平成16年2月
期決算短信の添付書類(甲18)によれば,平成14年3月1日から平成
15年2月28日までにサムスンから10億5836万6000円,平成
15年3月1日から平成16年2月29日までに9億8844万7000
円,合計20億4681万3000円を売上げている。この大部分がロ号
物件の売上であることは明らかである。
エ実施料率について
。,,本件各特許発明の実施料率は10%を下らないそして前記のとおり
イ号物件及びロ号物件の売上げは,12億円を下らないことは明らかであ
る。したがって,原告が受けた損害の額は,1億2000万円(12億円
×10%)を下らない(特許法102条3項。)
社団法人発明協会が発行している「実施料率〔第5版」によれば,本〕
件特許発明が属する技術分野である「半導体製造装置」は「特殊産業用機
械」に分類されているが,当該分野における平成4年度から平成10年度
.。,,のイニシャル無しの実施料率の平均値は65%であるまた同書には
半導体製造装置に関してはイニシャル有りの実施料率が30%の契約例,
イニシャル無しで実施料率50%の契約例2件が存在することが記載され
ている(甲20。このように,半導体製造装置の発明に対する実施料率)
は上記技術分野の中でも特に高率なことが通常である。さらに,本件にお
いては,当事者間の話合いで契約が成立せず,特許庁の判定まで得ている
のであって,被告は,本件特許発明を侵害することを認識しながら被告製
品の製造販売を継続している。したがって,本件においては,実施料率が
6.5%を下回ることは有り得ない。
()被告2
ア被告各製品の製造販売については,同心軸調達コストが過剰であること
が主な原因で,損失を計上している。
イイ号物件の売上げについて
平成9年1月31日から平成16年2月16日までのRR468の売上
げは29台1億7639万1000円,RR469の売上は57台3億8
204万1200円である。
被告は,RR468,469については,採算がとれないため,積極的
な営業活動は行っていない。過去にこれらのロボットを購入した既存の顧
,,客が購入を希望する場合顧客の仕様に合ったロボットが他にない場合で
,,営業戦略上採算を度外視して受注すべきと判断したときのみRR468
469を製造販売することにしている。
ウロ号物件の売上げについて
平成9年1月31日から平成16年2月16日までのRR421の売上
げは18台1億1344万0199円である。
RR421について,原告は,平成14年3月1日から平成16年2月
29日までの期間におけるサムスンに対する売上金20億4681万30
00円の大部分がRR421の売上であると主張する。しかし,上記売上
は,RR421に限らずシングルアームRR420,それらのカセットス
テーション,通常のダブルアームロボットを組み込んだEFEMの売上な
どを合計した額であって,大部分がRR421の売上であるとの主張は大
げさである。
エ実施料率について
原告の主張する実施料率については否認ないし争う。
第4当裁判所の判断
1イ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか(争点1。)
()イ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを充足するか1
(争点1−1。)
アイ号物件の構成eの「支持筒(10a」及び「支持筒(10b」は))
構成要件Eの「第1の固定軸(13A」及び「第2の固定軸(13B」))
,「()」「()」にイ号物件の構成eの第2の支軸16及び第3の支軸17
「()」「()」は構成要件Eの第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸13D
に,イ号物件の構成eの「第1アーム(11)と該第1アーム(11)と
一体の第1の支軸(15」は,構成要件Eの「共通駆動部(13」に))
それぞれ該当する。
したがって,イ号物件は構成要件Eを充足する。
,「(),()イ被告は構成要件Eの共通駆動部13は第1の駆動軸13C
と第2の駆動軸(13D)を有する」というためには,各駆動軸が共通駆
動部の中に組み込まれ,これらが同一の回転軸中心を有する構成であると
解する必要があり,イ号物件は,第1の駆動軸(13C)及び第2の駆動
軸(13D)に相当する第2の支軸(16)及び第3の支軸(17)が,
共通駆動部の軸部分に相当する第1の支軸(15)の外側を取り囲むよう
に位置しているから構成要件Eを充足しない旨主張する。
,。しかし構成要件Eを被告主張のように限定して解釈すべき理由はない
被告は,特許請求の範囲が「駆動軸を有する共通駆動部」と記載されて
,,「」おり駆動軸のように回転する物を別の物である共通駆動部が有する
又は「備わっている」というためには,被告主張のように解釈せざるを得
ない旨主張する。しかし,共通駆動部は,平面部分と軸部分から構成され
ているところ,イ号物件のように,共通駆動部の軸部分を「第1の駆動軸
(13C」と「第2の駆動軸(13D」に相当する駆動軸が取り囲む))
ように構成され,当該軸が共通駆動部の平面部分の上部にも顔を出す構成
であれば「共通駆動部(13)は,第1の駆動軸(13C)と第2の駆,
動軸(13D)を有する」といえるから,被告の主張は採用することがで
きない。
なお,本件明細書の【0036】及び【0039】には,実施例である
図4の説明として,次のような記載がある「共通駆動アーム23は・・。
・その中心部分には搬送アーム21に回転力を与える第1の駆動軸13C
。,と搬送アーム22に回転力を与える第2の駆動軸13Dとを有するなお
共通駆動アーム23の回転中心は,第1,第2の駆動軸13C,13Dの
回転中心と同じである「本発明の実施例では共通駆動アーム23の回。」,
転中心が第1,第2の駆動軸13C,13Dの回転中心とが同じであるこ
とから,それらに対してサーボモータ24A∼24Cを装置本体内に固定
,。」することができメンテナンス面及びモータ配線等において有利である
また,本件各特許発明の原理図である図1,本件特許発明1の実施例であ
る図4においても,左右の多関節駆動部に回転力を与える駆動軸は,共通
駆動部の軸部分と同一の回転中心を有する例が記載されている。しかしな
がら,本件明細書の【0036】及び【0039】の記載は「実施例で,
は」共通駆動部(13)と第1,第2の駆動軸13C,13Dの回転中心
が同じであると明記しているにすぎず,本件各特許発明の特許請求の範囲
(請求項1及び6)においては,左右の多関節駆動部に回転力を与える駆
動軸と共通駆動部の軸部分との位置関係を限定していない以上,両者の回
転中心が同じであると限定して解することはできない。両者の回転中心を
同じ位置関係にすることによって,サーボモータ24A∼24Cを装置本
体内に固定することができ,メンテナンス面及びモータ配線等において有
利であるという作用効果を生じることは上記【0039】記載のとおりで
あるものの,この作用効果は本件明細書の【0108】及び【0109】
に記載されている本件各特許発明の作用効果とは異なる作用効果であるか
ら,本件明細書の実施例についての上記各記載によって,本件特許発明1
の構成要件を限定解釈すべきではない。本件各特許発明の作用効果は,①
「0108・・・本発明の多関節搬送装置によれば,第1の搬送部の【】
回転面に対して上又は下側に位置するように第2の搬送部の高さを規定し
ているので,第1及び第2の搬送部を共通駆動部の上部に縮めたとき,第
1の搬送部と第2の搬送部との間に,被搬送物が入り込めるような高低差
を生じさせることができる。このため,ホームポジションで,被搬送物を
載置した下側の第1の搬送部と,その上側の第2の搬送部とを重ね合わせ
ることができる。従って,ホームポジションで大きな被搬送物を載置して
回転するときも,被搬送物の旋回半径を小さくすることができる,②。」
「0109・・・一方の搬送部が共通駆動部上に取り込まれた状態で,【】
他方の搬送部が一方向に伸縮されたり,2つの搬送部や2つの多関節駆動
部が静止している状態で,共通駆動部が旋回されるので,従来技術のよう
な3つの基本動作に加え,同一方向において,一方の搬送部に載置された
被搬送物を搬送先に移動して,それを他方の搬送部を用いて搬送先の被搬
送物と交換することが可能となる,③「また,本発明の他の装置によ。」
れば,共通駆動部が『く』の字型に屈曲されたアーム状に構成される。こ
のため,共通駆動部上に第1,第2の搬送部を取り込んだ状態において,
両搬送部を揃えることが可能となる」というものであり,これらの作用。
効果と第1,第2の駆動軸と共通駆動部の回転中心を同一にするというこ
ととは,無関係である。
()イ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを充足するか2
(争点1−2。)
アイ号物件の構成fの「前記第2アーム(6a,第2アーム(6b)及)
び前記第1アーム(11)とこれと一体の第1の支軸(15)を回動制御
するモータ部(23,モータ部(30,およびモータ部(33」は,)))
本件各特許発明の構成要件Fの「駆動制御手段(14」に該当する。)
したがって,イ号物件は本件各特許発明の構成要件Fを充足する。
イ「駆動制御手段(14」の位置関係について)
,(),()被告は構成要件Fの駆動制御手段14は第1の駆動軸13C
を駆動するモータと第2の駆動軸(13D)を駆動するモータを一つの胴
体(棚板,旋回台,支持台等)に搭載する構成の駆動手段を含まず,イ号
物件は第1の駆動軸13Cを駆動するモータに相当するモータ部2,()(
3)及び第2の駆動軸を駆動するモータに相当するモータ部(30)が一
つの棚板(24)に搭載されているから構成要件Fを充足しない旨主張す
る。
しかし,構成要件Fにおいては,駆動制御手段(14)を構成する複数
のモータ部の配置すなわち装置本体に配置されるか,一つの胴体(棚板,
旋回台,支持台等)に配置されるか否かについては規定していないのであ
るから,被告主張のような限定解釈をすべき理由はない。
被告は,被告主張の根拠として,被告主張のように解釈しなければ,第
1の駆動軸(13C,第2の駆動軸(13D)及び共通駆動部(13))
のうちの二つあるいは三つを駆動制御手段により同期させて回動すること
ができない旨主張する。しかし,第1の駆動軸(13C)を駆動するモー
タと第2の駆動軸(13D)を駆動するモータを一つの胴体(棚板,旋回
台,支持台等)に搭載する構成であっても,駆動制御手段の駆動方法次第
で第1の駆動軸13C第2の駆動軸13D及び共通駆動部1,(),()(
3)のうちの二つあるいは三つを駆動制御手段により同期させて回動する
ことは可能であるし,本件各特許発明が想定している本件訂正部分に記載
された動作状態を実現することは可能である。駆動制御手段を装置本体内
に固定する構成を採用した場合には,メンテナンス面及びモータ配線等に
おいて有利であるという作用効果を生じることはあっても本件明細書0(【
039,かかる構成でなければ本件各特許発明が想定する作用効果を】)
奏し得ないということはない。被告の主張は採用することができない。
ウ「駆動制御手段(14」の解釈について)
被告は,本件各特許発明の構成要件Fにおける「駆動制御手段」は,三
つの部分を駆動制御する一つの機構でなければならないところ,イ号物件
においては,第2アーム(6a)を回動制御するモータ部(23,第2)
アーム(6b)を回動制御するモータ部(30,第1アーム(11)と)
一体の第1の支軸(15)を回動制御するモータ部(33)の三つのモー
タ部が存在するから,構成要件Fを充足しない旨主張する。
しかし,本件明細書において本件特許発明1の実施例として記載されて
いる図4には,第1の多関節駆動部を駆動するモータ(24A,第2の)
多関節駆動部を駆動するモータ(24B,共通駆動部を駆動するモータ)
(24C)が存在しており,これらを総称して駆動制御装置(24)とし
ていることが認められる(甲2。また,本件明細書の図4の実施例につ)
いて,本件明細書においては「駆動制御装置24は多回転アブソリュー,
トエンコーダ付きのサーボモータ24A∼24C及びら成り,モータ24
Aはエンコーダから出力される回転検出信号に基づいて第1の駆動軸13
Cに回転力を供給する。モータ24Bも回転検出信号に基づいて同様に第
2の駆動軸13Dに回転力を供給する。モータ24Cも同様に共通駆動ア
ーム23に回転力を供給する。これにより,駆動制御装置24は次の制御
を行うことができる・・・」と記載されている。そして,特許請求の範。
囲の「前記第1の多関節駆動部(11,第2の多関節駆動部(12)及)
び共通駆動部(13)を回動制御する駆動制御手段(14)とを備え」と
の文言は,第1の多関節駆動部(11,第2の多関節駆動部(12)及)
び共通駆動部(13)をそれぞれ個別に駆動する三つの装置が存在し,こ
れらの装置を総称して「駆動制御手段(14」とする構成を含むもので)
あることは当然である。
そうすると,構成要件Fの「駆動制御手段(14」は,第1の多関節)
駆動部(11)を回動制御するモータ,第2の多関節駆動部(12)を回
動制御するモータ,共通駆動部(13)を回動制御するモータ全体の総称
であると解釈すべきである。したがって,被告の主張は採用できない。
()小括3
イ号物件は,本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足する。
2イ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が成
立するか(争点2。)
()直接侵害の成否1
ア証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
被告は,第3アーム(3a)及び第3アーム(3b)を備えないイ号物
件(未完成イ号物件)を製造し,これにエンドエフェクターと呼ばれる検
査用の部品を設置して駆動検査を行った上,これを輸出している。未完成
イ号物件を韓国に輸出する場合には,被告の子会社である韓国法人ローツ
ェ・システムが,外国において製造した第3アーム(3a)及び第3アー
(),。ム3bを未完成イ号物件を購入した者に対してこれを譲渡している
以上の認定事実によれば,被告が未完成イ号物件を生産し,海外に輸出
する行為については,これをもって国内においてイ号物件の完成品を製造
し,譲渡する行為と評価することはできない。
イ原告は,未完成イ号物件にエンドエフェクターを設置した物は本件各特
許発明の技術的範囲に属するから,未完成イ号物件にエンドエフェクター
()。を設置する行為は本件各特許発明の実施行為生産に当たると主張する
しかし,エンドエフェクターは性能検査のために一時的に設置されるもの
にすぎず,製品の一部を構成しておらず,また,未完成イ号物件とともに
販売される部品でもないから,未完成イ号物件にエンドエフェクターを設
置する行為をもって本件各特許発明の実施品を生産する行為ということは
できない。また,原告は,本件においては,未完成イ号物件について,必
要な部品をすべて日本で生産し,その組み立てを海外で行っている場合と
同視できるとも主張する。しかしながら,本件においては,被告が未完成
イ号物件について必要なすべての部品を日本で生産しているとの事実を認
めるに足りる証拠はないから,原告の主張は採用し得ない。
したがって,被告による未完成イ号物件の製造,販売(輸出)行為につ
いて本件特許権の直接侵害は成立しない。
()間接侵害の成否2
ア特許法101条柱書き及び同1号は「特許が物の発明についてされてい
る場合において,業として,その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡若
しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為」について「当該特許権又は専用
実施権を侵害するものとみなす」旨規定する。。
イ未完成イ号物件のうち国内販売分について
未完成イ号物件は,イ号物件のうち第3アーム(3a)及び第3アーム
(3b)のみを有しないものであり,その余の構成はイ号物件と全く同一
であるから,イ号物件の生産にのみ用いる物に当たり,前記のとおり,イ
号物件は本件各特許発明の技術的範囲を充足する。
,,,したがって未完成イ号物件のうち国内販売分を製造譲渡する行為は
特許法101条1号の規定する行為に当たる。
ウ未完成イ号物件のうち海外輸出分について
特許法101条は,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその実
効性を確保するという観点から,特許権侵害とする対象を,それが生産,
譲渡される等の場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する
蓋然性が極めて高い物の生産,譲渡等に限定して拡張する趣旨の規定であ
ると解される。そうすると「その物の生産にのみ使用する物(1号),」
という要件が予定する「生産」は,日本国内における生産を意味するもの
と解釈すべきである。外国におけるイ号物件の生産に使用される物を日本
国内で生産する行為についてまで特許権の効力を拡張する場合には,日本
の特許権者が,属地主義の原則から,本来当該特許権によっておよそ享受
し得ないはずの,外国での実施による市場機会の獲得という利益まで享受
し得ることになり,不当に当該特許権の効力を拡張することになるという
べきである。
本件についてみると,前記()アの認定事実によれば,未完成イ号物件1
は外国におけるイ号物件の生産に使用されるものであって,日本国内にお
けるイ号物件の生産に使用されるものではないから,特許法101条1号
の「その物の生産にのみ用いる物」に当たるということはできない。
()小括3
被告による未完成イ号物件の製造ないし販売については,国内販売分につ
いては特許法101条1号により本件特許権の侵害に当たるものの,海外輸
出分については直接侵害も間接侵害も成立しない。
3ロ号物件が本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足するか(争点3)
()ロ号物件の構成eが本件特許発明1及び2の各構成要件Eを充足するか1
(争点3−1。)
アロ号物件の構成eの「支持筒(10a」及び「支持筒(10b」は))
構成要件Eの「第1の固定軸(13A」及び「第2の固定軸(13B」))
,「()」「()」にロ号物件の構成eの第2の支軸16及び第3の支軸17
「()」「()」は構成要件Eの第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸13D
に,ロ号物件の構成eの「第1アーム(11)と該第1アーム(11)と
一体の第1の支軸(15」は,構成要件E「共通駆動部(13」にそ))
れぞれ該当する。したがって,ロ号物件は構成要件Eを充足する。
,「(),()イ被告は構成要件Eの共通駆動部13は第1の駆動軸13C
と第2の駆動軸(13D)を有する」の意味について,イ号物件における
と同様の限定解釈を主張する。
この点についての判断は,前記1()イに記載したとおりであり,被告1
の主張は採用することができない。
なお,ロ号物件は,イ号物件と異なり,第1の駆動軸(13C)及び第
2の駆動軸(13D)に相当する第2の支軸(16)及び第3の支軸(1
7)が,共通駆動部(13)の軸部分を取り囲む状態で配置されているの
ではなく,共通駆動部の平面部分(11)に設けられている点で差異があ
る。しかし,第1の駆動軸及び第2の駆動軸が共通駆動部の平面部分に設
けられている場合であっても,構成要件Eの「第1の駆動軸(13C)と
・・・第2の駆動軸(13D)とを有する共通駆動部(13」との構成)
を充足することに変わりはない。
ウ被告はロ号物件において原告が駆動軸であると主張する第2の支軸1,(
6)と第3の支軸(17)はモータの回転シャフトであって駆動軸ではな
ないと主張する。
しかしながら,構成要件Eにおける「駆動軸」とは,本件各特許発明の
特許請求の範囲の記載によれば「多関節駆動部に回転力を与える軸」で,
あるから,モータの回転シャフトであっても,多関節駆動部に回転力を与
える軸である以上,構成要件Eにおける「駆動軸」に当たる。被告は,回
転力を「与える」との文言に着目すれば,回転の動力となるモータの構成
部品は「駆動軸」になり得ない旨主張するが,かかる被告の主張は採用す
ることができない。
()ロ号物件の構成fが本件特許発明1及び2の各構成要件Fを充足するか2
(争点3−2。)
アロ号物件の構成fの「前記第2アーム(6a,第2アーム(6b)及)
び前記第1アーム(11(第1アーム(11)と一体の第1の支軸(1)
)。)(),(),5も同様であるを回動制御するモータ部23モータ部30
およびモータ部(33」は,本件各特許発明の構成要件Fの「駆動制御)
手段(14」に該当する。したがって,ロ号物件は,本件各特許発明の)
構成要件Fを充足する。
イ被告は,駆動制御装置の位置,駆動制御装置と被駆動物との対応関係に
ついてイ号物件におけると同様の主張をする。しかし,これに対する判断
は前記1()イ及びウ記載のとおりであり,被告の主張は採用することが2
できない。
なお,ロ号物件は,イ号物件と異なり,モータ部(23)及びモータ部
(30)が,本件各特許発明の共通駆動部の平面部に相当する第1アーム
(11)の下側に設置されているという点で差異がある。しかし,かかる
位置関係であったとしても駆動制御手段の操作次第で第1の駆動軸1,,(
3C,第2の駆動軸(13D)及び共通駆動部(13)のうちの二つあ)
るいは三つを駆動制御手段により同期させて回動し,本件各特許発明が想
定している動作状態を実現することは可能である。また,モータが上記の
ような位置関係にあったとしても,第1の多関節駆動部(11,第2の)
多関節駆動部(12)及び共通駆動部(13)をそれぞれ個別に駆動する
三つの装置が存在し,これらの装置を総称する「駆動制御手段(14」)
を備えていることに変わりはない。
()小括3
ロ号物件は,本件特許発明1及び2の技術的範囲を充足する。
なお,被告は,原告が,当初「ロ号物件であるRR421については本,
件各特許発明の技術的範囲に属しないから取り下げる」旨述べていたにもか
かわらず前言を撤回して侵害の主張を維持することは信義則に反して許され
ない旨主張する。しかし,本件記録によれば,本件において,原告が上記の
ように述べたにもかかわらず,RR421についての請求を維持した経緯は
次のとおりであり,被告の主張は採用することができない。すなわち,被告
は,当初,RR421の構造を開示することに難色を示し,自らが作成した
簡易な略式図のみを開示した(乙5。原告は,ロ号物件の構成が当該略式)
図のとおりであれば取り下げることも検討する旨述べた。しかしながら,そ
の後,被告が,RR421のより正確な図面を開示したところ,原告は,先
に被告が示した略式図は不正確であり誤導されたとして,後に示された,よ
り正確な図面に基づいて侵害の主張を維持するに至ったものである。かかる
経緯に鑑みれば,原告がロ号物件に対する侵害の主張を維持することは何ら
信義則に反するものではない。
4ロ号物件の未完成品の製造ないし販売について直接侵害ないし間接侵害が成
立するか(争点4。)
()直接侵害の成否1
ア証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば次の事実が認められる。
被告は,ロ号物件を外国に輸出する際には,第3アーム(3a)及び第
3アーム(3b)を備えず,かつ,アーム部各部の回動を個別に制御する
コンピュータ,コントローラ,ドライバ,ソフトウエア等を欠いたロ号物
件(未完成ロ号物件)を製造し,これにエンドエフェクターと呼ばれる検
査用の部品を設置して駆動検査を行った上,これを輸出している。未完成
ロ号物件を韓国に輸出する場合には,被告の子会社である韓国法人ローツ
ェ・システムが,外国において製造した第3アーム(3a)及び第3アー
ム(3b)及びアーム各部の回動を個別に制御するコンピュータ等を未完
成ロ号物件を購入した者に譲渡している。
以上の認定事実によれば,被告は,未完成ロ号物件を生産し,これを海
外へ輸出しているのであり,その行為をもって国内においてロ号物件の完
成品を製造し,譲渡しているものと評価することはできない。
イ原告は,未完成ロ号物件にエンドエフェクターを設置し,何らかのアー
ム部各部の回動をロ号物件と同様に制御するためのシステムを備えた物は
本件各特許発明の技術的範囲に属するから,未完成ロ号物件にエンドエフ
ェクター及びそのような駆動制御システムを設置する行為は本件各特許発
明の実施行為(生産)に当たると主張する。しかし,エンドエフェクター
及び上記駆動制御システムは性能検査のために一時的に設置されるものに
すぎず,製品の一部を構成しておらず,また,エンドエフェクター及び上
記駆動制御システムが未完成ロ号物件とともに販売される部品とは認めら
れないから,未完成ロ号物件にエンドエフェクター及び上記駆動制御シス
テムを設置する行為をもって本件各特許発明の実施品を生産する行為とい
うことはできない。
なお被告は未完成ロ号物件が第3アーム3a及び第3アーム3,,()(
b)並びに駆動制御部を有していないことを証明する証拠として,被告代
表者作成の報告書(乙18。以下「乙18報告書」という)を提出す,。
るものの,同報告書は,相当な範囲にわたってブランクとなっているだけ
でなく,充分に整理されていないところもあることから,現段階において
は,これを認定証拠としては採用しないこととする。ただし,未完成ロ号
物件の存在については,原告も積極的にはこれを争っていないことから,
前記のとおり,認定する。
()間接侵害の成否2
特許法101条柱書き及び同1号は「特許が物の発明についてされている
場合において,業として,その物の生産にのみ用いる物の生産,譲渡若しく
は輸入又は譲渡等の申出をする行為」について「当該特許権又は専用実施権
を侵害するものとみなす」旨規定する。。
特許法101条は,特許権の効力の不当な拡張とならない範囲でその実効
性を確保するという観点から,特許権侵害とする対象を,それが生産,譲渡
される等の場合には当該特許発明の侵害行為(実施行為)を誘発する蓋然性
が極めて高い物の生産,譲渡等に限定して拡張する趣旨の規定と解される。
そうすると「その物の生産にのみ使用する物(1号)という要件が予定,」
「」,。する生産は日本国内における生産を意味するものと解釈すべきである
外国におけるロ号物件の生産に使用される物を日本国内で生産する行為につ
いてまで特許権の効力を拡張する場合には,日本の特許権者が,属地主義の
原則から,本来当該特許権によっておよそ享受し得ないはずの,外国での実
施による市場機会の獲得という利益まで享受し得ることになり,不当に当該
特許権の効力を拡張することになるというべきである。
本件についてみると,前記()アの認定事実によれば,未完成ロ号物件は1
外国におけるロ号物件の生産に使用されるものであって,日本国内における
ロ号物件の生産に使用されるものではないから,特許法101条1号の「そ
の物の生産にのみ用いる物」に当たるということはできない。
()小括3
未完成ロ号物件の製造及び海外への輸出については,本件特許権の直接侵
害も間接侵害も成立しない。
5本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものとい
えるか(争点5。)
,,。まず乙1発明乙2発明及び乙7発明に基づく無効理由について判断する
()本件特許発明1が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発明1
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点5−1。)
ア乙1公報には次のような記載がある(乙1。)
)〔発明が解決しようとする課題(2頁左上欄14行ないし右上欄3a〕
行)
「1本の移し換えアームでは,例えば,最終の処理室から半導体ウエ
ハを取り出した後,移し換えアームを1段階前の処理室まで戻し,この
処理室から半導体ウエハを取り出して最終の処理室に移し換え,さらに
前の段階の処理室に移し換えアームを戻すという動作を繰り返す必要が
あり,移し換えアームを各処理室に何度も往復移動させながら,ひとつ
づつの半導体ウエハを移し換えるという,非常に面倒で手間のかかる作
業を行っていた」。
)〔課題を解決するための手段(2頁右上欄9行ないし19行)b〕
「上記課題を解決するこの発明にかかる基板の移し換え装置は,それ
ぞれの先端に基板保持部を備えた一対の移し換えアームが支持台上に並
設され,各移し換えアームは,2組の平行リンク機構が屈伸自在に連結
されてなり,前記基板保持部は,各移し換えアームの伸長により前記支
持台から外方に向けて移動し,各移し換えアームの屈曲により前記支持
台内に戻るようになっているとともに,左右の各移し換えアームの屈曲
は互いに外側に向けてなされるようになっている」。
)〔作用(2頁左下欄5行ないし15行)c〕
「・・・一方の移し換えアームに次ぎに装入する基板を保持させた状
態で,他方の移し換えアームで処理を終えた基板を取り出し,移し換え
アーム全体すなわち支持台を移動させることなく,ただちに前記一方の
移し換えアームに保持された基板を処理位置に装入すればよいのであ
る。他方の移し換えアームで取り出された基板は,この移し換えアーム
で保持したまま,支持台を旋回させるなどして,つぎの処理位置に移動
させる。そして,前記した一連の作業を再び繰り返せばよい」。
)実施例(2頁右下欄16行ないし3頁右上欄7行)d
「移し換えアームを支持する支持台として,歯車機構12を介して駆
動モータ11で旋回する旋回台10を備えている。駆動モータ11とし
ては,旋回台10を所定の角度だけ正確に回転できるパルスモータが好
ましい。旋回台10には,一対の移し換えアーム20,30が並べて設
けられている。各移し換えアーム20,30は,2組の平行リンク機構
40,50が連結されており,先端に半導体ウエハの保持部,すなわち
基板保持部60a,60bを備えている。移し換えアーム20と30と
では,保持部60aと60bの高さ位置に差がある」。
「平行リンク機構40は,一対の長いリンク41,42が旋回台10
に旋回可能に支持され,一方のリンク42の旋回中心となる駆動軸43
は,支持台部10の下方に取り付けられた駆動モータ44に連結されて
おり,駆動モータ44の回転でリンク42が旋回する。この駆動モータ
,,44も前記旋回台10用の駆動モータ11と同様にパルスモータ等の
旋回角度を正確に設定できるものが好ましい。リンク41,42の先端
は,もうひとつの平行クランク機構50の一対のリンク51,52とそ
れぞれ旋回可能に連結されている。リンク51,52の先端は,C字形
の基板保持部60a,60bに旋回可能に連結されている。前記リンク
41,42とリンク51,52の連結個所には,それぞれ歯車70,7
2が取り付けられており,互いにギヤ比1:1で噛み合っている。歯車
,。70はリンク42に固定され歯車72はリンク52に固定されている
リンク51,52は,歯車70,72よりも先に延長され,短いリンク
54で旋回可能に連結されている」。
)3頁右上欄15行ないし左下欄2行e
「平行リンク機構40が旋回すると,歯車70,72の噛み合いによ
り,平行リンク機構50は平行リンク機構40と反対方向に同じ角度だ
け旋回する。その結果,左右の移し換えアーム20,30が互いに外側
に向けて屈曲するとともに,保持部60a,60bは平行リンク機構の
短節に沿う方向に直線的に平行移動することになる」。
)4頁左上欄17行ないし右上欄7行f
「まず,移し換えアーム20,30が予備室84を向くように旋回台
10を旋回させ,一方の移し換えアーム20(または30)で,予備室
82の半導体ウエハを受け取る。つぎに,旋回台10を一定角度旋回さ
せて,最初の処理室,例えば処理室86に向ける。空の移し換えアーム
30(または20)で処理室86の処理済み半導体ウエハを受け取った
後,残りの移し換えアーム20(または30)に保持された半導体ウエ
ハを空になった処理室86に移す」。
)4頁右下欄8行ないし14行g
「旋回台10の内部にはリンク42,42を旋回させる駆動軸43,
43が通っている・・・駆動軸43は旋回台10の下部に固定された。
駆動モータ44に連結されている」。
イ前記ア及び乙1公報の第1図,第3図及び第4図によれば,乙1公報に
は,次の構成を有する乙1発明が記載されていると認められる(以下「乙
1発明の構成A」などという。’。)
A’基板保持部60bと,
B’基板保持部60bの回転面に対して上側に位置するように高さを規定
した基板保持部60aと,
C’基板保持部60bを一方向に伸縮する移し換えアーム30(2組の平
行リンク機構(40,50)が屈伸自在に連結されてなる)と,
D’基板保持部60aを一方向に伸縮する移し換えアーム20(2組の平
行リンク機構(40,50)が屈伸自在に連結されてなる)と,
E’左リンク42の回動中心となる左駆動軸43の先端部と,右リンク4
2の回動中心となる右駆動軸43の先端部とを有し,かつ,左リンク4
2(移し換えアーム30)に回転力を与える左駆動軸43と,右リンク
42(移し換えアーム20)に回転力を与える右駆動軸43とを有する
旋回台10と,
F’移し換えアーム30及び移し換えアーム20を回動制御する左右の駆
動モータ44,旋回台10を回動制御する旋回台用駆動モータ11及び
歯車機構12とを備え,
G’前記基板保持部60b及び前記基板保持部60aを前記旋回台10の
上部に縮めたとき,前記基板保持部60bと前記基板保持部60aとを
高低差をもって重なるようにした
H’基板の移し換え装置
ウ乙1発明と本件特許発明1の一致点及び相違点
)乙1発明の構成A,B,G’及びH’が,本件特許発明1の構成要a’’
件A,B,G及びHの構成と一致することは当事者間に争いがない。
また,乙1発明の構成E’のうち「左駆動軸(43」及び「右駆動)
軸(43」が,構成要件Eの「第1の駆動軸(13C」及び「第2))
()」,。の駆動軸13Dにそれぞれ当たることは当事者間に争いがない
)乙1発明の構成C’及びD’の構成が本件特許発明1の構成要件C及b
びDの構成と一致するといえるか。
本件特許発明1の特許請求の範囲の記載によれば,本件特許発明1の
構成要件Eにおける「第1の多関節駆動部(11」及び「第2の多関)
()」,()(,)節駆動部12は共通駆動部13に固定軸13A13B
を介して設けられ,回動することによって第1の搬送部15及び第2の
搬送部16をそれぞれ一方向に伸縮するものであると認められる。
そして,前記ア,イ,乙1公報の第1図及び第3図によれば,乙1発
明の「移し換えアーム30(2組の平行リンク機構(40,50)が屈
伸自在に連結されてなる」及び「移し換えアーム20(2組の平行リ)
ンク機構(40,50)が屈伸自在に連結されてなる」は,旋回台1)
0に固定軸を介して設けられ,回動することによって基板保持部60b
及び基板保持部60aをそれぞれ一方向に伸縮するものである。
そうすると,乙1発明の「移し換えアーム30(2組の平行リンク機
構(40,50)が屈伸自在に連結されてなる」及び「移し換えアー)
ム20(2組の平行リンク機構(40,50)が屈伸自在に連結されて
なる」は,本件特許発明1の構成要件Eにおける「第1の多関節駆動)
部(11」及び「第2の多関節駆動部(12」に相当し,乙1発明))
の構成C’及びD’の構成は本件特許発明1の構成要件C及びDの構成
と一致する(なお,乙1発明は,アームの駆動機構が平行リンク機構で
構成されているが,本件特許発明1は,アームの駆動機構の内容につい
て限定するものではない。。)
,,「(,)」この点について原告は乙1発明の移し換えアーム3020
と「基板保持部(60b,60a」との連結関係が,本件特許発明1)
における「第1の搬送部(15,16」と「第1の多関節駆動部(1)
1,12」との連結関係と異なることを指摘して,乙1発明の「移し)
換えアーム30」及び「移し換えアーム20」は,本件特許発明1の構
成要件C及びDにおける「第1の多関節駆動部(11」及び「第2の)
多関節駆動部(12」に当たらない旨主張する。しかし,本件特許発)
明1において,搬送部(15,16)と多関節駆動部(11,12)の
連結関係についての限定がなされているとはいえないから,この点に関
する原告の主張は採用できない。
)乙1発明の構成E’の構成が本件特許発明1の構成要件Eの構成と一c
致するといえるか。
①構成要件E(前記第1の多関節駆動部(11)の回動中心となる「
第1の固定軸(13A)と,前記第2の多関節駆動部(12)の回動
中心となる第2の固定軸(13B)とを有し,かつ,前記第1の多関
節駆動部(11)に回転力を与える第1の駆動軸(13C)と前記第
2の多関節駆動部(12)に回転力を与える第2の駆動軸(13D)
とを有する共通駆動部(13)と)及び構成要件F(前記第1の」「
多関節駆動部(11,第2の多関節駆動部(12)及び共通駆動部)
()()」),13を回動制御する駆動制御手段14とを備えによれば
構成要件Eにおける「共通駆動部(13」とは,多関節駆動部(1)
1,12)の回動中心となる固定軸(13A,13B)及び多関節駆
動部に回転力を与える駆動軸(13C,13D)を有し,駆動制御手
段により回動制御されるものである。
また「第1の固定軸(13A」及び「第2の固定軸(13B」,))
とは,多関節駆動部(11,12)を共通駆動部(13)に固定し,
かつ,多関節駆動部(11,12)の回動中心軸となるものである。
さらに「第1の駆動軸(13C」及び「第2の駆動軸(13D」,))
とは,多関節駆動部(11,12)に回転を与える軸である。
②そして,前記ア,イ,乙1公報の第1図,第3図及び第4図によれ
ば,乙1発明の「旋回台10」は,構成要件Eの「多関節駆動部(1
1,12)に相当する「移し換えアーム(30,20」の一部を構)
成するリンク42の回動中心軸となり,同時に,構成要件Eの「駆動
軸(13C,13D」にも相当する「左駆動軸43」及び「右駆動)
軸43」を有し,それ自体歯車機構12を介して駆動モータ11で旋
回制御されるものである。
同様に,乙1発明の「右リンク42の根元にある右駆動軸43の先
端部」及び「左リンク42の根元にある左駆動軸の先端部」は,構成
要件Eの「多関節駆動部(11,12」に相当する「移し換えアー)
ム(20,30」を旋回台10に固定し,かつ「移し換えアーム),
(20,30」の一部を構成するリンク42を回動する軸となるも)
のである。
③そうすると,乙1発明の「右リンク42の根元にある右駆動軸43
の先端部「左リンク42の根元にある左駆動軸43の先端部」及」,
び「旋回台10」は,本件特許発明1の構成要件Eにおける「第1の
固定軸(13A「第2の固定軸(13B」及び「共通駆動部(1)」,)
3」に相当し,また「左駆動軸43」及び「右駆動軸43」は構),
成要件Eにおける第1の駆動軸13C及び第2の駆動軸1「()」「(
3D」に相当し,この限りで,乙1発明の構成E’は本件特許発明)
1の構成要件Eと一致する。
ただし,構成要件Eの「第1の固定軸(13A」と「第1の駆動)
軸(13C」とは別軸であるのに対し,これらに対応する乙1発明)
の「左駆動軸43」は1個の軸が固定軸と駆動軸の双方の機能を果た
していること,構成要件Eの「第2の固定軸(13B」と「第2の)
駆動軸(13D」も別軸であるのに対し,これらに対応する乙1発)
明の「右駆動軸43」が1個の軸であり,同様に双方の機能を果たし
ているものであり,この点が相違する(以下,本争点における「相違
点1」という。。)
また,構成要件Eにおいては,第1及び第2の固定軸(13A,1
3B)が第1及び第2の多関節駆動部の回動中心であるのに対し,乙
1発明においては「多関節駆動部」に当たる平行四辺形のリンク機,
構である移し換えアーム30及び20の回動中心は,左右の駆動軸4
3の先端部ではない。すなわち,駆動軸43は,移し換えアーム30
及び20の一部であるリンク42の回動中心にすぎない点でも相違す
る(以下,本争点における「相違点2」という。。)
,,「()」なお原告は本件特許発明1の構成要件Eの共通駆動部13
は,装置の旋回運動のみならず,アームの伸縮運動においても回動す
るものであるところ,乙1発明の「旋回台(10」は装置の旋回運)
動においてのみ回動するものであって,アームの伸縮運動に全く使用
されないものであるから,両者は相違する旨主張する。確かに,本件
明細書においては,本件特許発明1の実施例として,アームの伸縮運
動において,共通駆動部が回動するとの構成が開示されている(本件
明細書の【図6【図7】等参照。しかし,前記①のとおり,本件】,)
,「()」特許発明1の特許請求の範囲の記載においては共通駆動部13
とは「第1の固定軸(13A「第2の固定軸(13B「第1,)」,)」,
の駆動軸(13C」及び「第2の駆動軸(13D」を有し「駆動)),
()」,制御手段14により回動するものと規定されているだけであり
アームを伸縮させるために回動するものであるとは規定されていない
のであるから,本件特許発明1の「共通駆動部(13」をアームを)
伸縮させるために回動するものと限定して解することはできない。こ
の点に関する原告の主張は採用することができない。
)乙1発明の構成F’の構成が本件特許発明1の構成要件Fの構成と一d
致するといえるか。
乙1発明の構成F’の「移し換えアーム20,30」及び「旋回台1
0」は,本件特許発明1の構成要件Fの多関節駆動部(11,12)及
び共通駆動部(13)に相当し,前者が左右の駆動モータ44により,
後者が旋回台用駆動モータ11により回動制御されるものであるから,
乙1発明の構成要件F’は本件特許発明1の構成要件Fと一致する。
原告は,乙1発明が「共通駆動部」を有していないことを理由に,こ
れを駆動制御する手段である「駆動制御装置」を有していない旨主張す
る。しかし,乙1発明が「共通駆動部」に相当する「旋回台10」を有
することは前記)において述べたとおりであるから,原告の上記主張c
は理由がない。
エ相違点1の容易想到性について
本件特許発明1の実施例においては,第1の固定軸13Aと第1の駆動
軸13C,及び,第2の固定軸13Bと第2の駆動軸13Dは別軸である
本件特許発明の原理図である図1第1の実施例の構成図である図(【】,【
4,第2の実施例の構成図である【図9】等参照。ただし,前記認定】)
のとおり,本件特許発明1の第1及び第2の固定軸は,多関節駆動部を共
通駆動部に固定し,これを回動する軸となるものであれば足り,また,本
件特許発明1の第1及び第2の駆動軸は,多関節駆動部を駆動する軸であ
り,共通駆動部に取り付けられていれば足りるものであるから,一つの軸
をもって,多関節駆動部の固定軸と駆動軸を兼ねるものであっても,それ
,,,が共通駆動軸に取り付けられていれば当該軸は本件特許発明1にいう
多関節駆動部の固定軸であり,駆動軸でもあるということができるもので
ある。このように,本件特許発明1においては,1個の軸をもって固定軸
と駆動軸とを兼ねていたとしても,多関節駆動部の固定と駆動の機能を果
たすものであれば,これを多関節駆動部の固定軸と駆動軸ということがで
きるものである。したがって,乙1発明の駆動軸43は,1個の軸ではあ
るが,本件特許発明1の駆動軸であると同時に固定軸であり,いずれも共
通駆動部に取り付けられているものと解することができ,相違点1は,一
応の相違点ではあるものの,設計的事項の範囲内のものであり,実質的な
相違点であるということはできない。
オ相違点2の容易想到性について
)乙7によれば,乙7公報には次のような記載がある。a
①【0007】
「上下方向に移動可能なZ軸可動ベース1に回転保持される第1中
空シャフト2には,その中で回転可能な第2中空シャフト3が内蔵さ
れる。第2中空シャフト3の中には同じく回転可能な第3中空シャフ
ト4が,また,第3中空シャフト4の中には同じく回転可能な第4シ
ャフト5が内蔵される。第1中空シャフト2には第1プーリ6が固定
される。第2中空シャフト3には第1アーム7が固定される。第1ア
ーム7には第5シャフト8が回転保持される。第5シャフト8には同
軸で第1タイミングベルト9により第1プーリ6と連結され第1プー
リ6の半分の歯数の第2プーリ10が固定される。また,第5シャフ
ト8には第2アーム11と第2プーリ10と同歯数の第3プーリ12
が固定される。第2アーム11内には,第5シャフト8に対し,第1
中空シャフト2との軸間距離を等しくして,第6シャフト14が回転
保持される。また,第6シャフト14には同軸で第3プーリ12と第
2タイミングベルト13で連結され第1プーリ6と同歯数の第4プー
リ15が固定される。第6シャフト14には第3アーム16が固定さ
れ,また,第3アーム16には第1ウォンド17が固定される」。
②【0008】
「第3中空シャフト4には第5プーリ21が固定される。第4シャ
フト5には第4アーム22が固定される。第4アーム22には第7シ
ャフト23が回転保持される。第7シャフト23には同軸で第3タイ
ミングベルト24により第5プーリ21と連結され第5プーリ21の
半分の歯数の第6プーリ25が固定される。また,第7シャフト23
には第5アーム26と第6プーリ25と同歯数の第7プーリ27が固
定される。第5アーム26内には,第7シャフト23に対し,第3中
空シャフト4との軸間距離を等しくして,第8シャフト28が回転保
持される。また,第8シャフト28には同軸で第7プーリ27と第4
タイミングベルト29で連結され第5プーリ21と同歯数の第8プー
リ30が固定される。第8シャフト28には第6アーム31が固定さ
れ,また,第6アーム31には第2ウォンド32が固定される」。
③【0009】
「第1中空シャフト2の下部には第1歯車33が固定され,第1歯
車33とかみ合う第2歯車34は,Z軸可動ベース1に固定される第
1モータ35に固定される。第2中空シャフト3の下部には第3歯車
36が固定され,第3歯車36とかみ合う第4歯車37は第1歯車3
3に固定される第2モータ38に固定される。第3中空シャフト4の
下部には第5歯車39が固定され,第5歯車39とかみ合う第6歯車
,。40はZ軸可動ベース1に固定される第3モータ41に固定される
第4シャフト5の下部には第7歯車42が固定され,第7歯車42と
かみ合う第8歯車43は第5歯車39に固定される第4モータ44に
固定される。Z軸可動ベース1は固定ベース45を摺動可能であり,
Z軸可動ベース1を駆動するボールねじ46と第5モータ47は固定
ベース45に固定される」。
④【0010(4欄36行ないし49行)】
「第5プーリ21の中心と第8プーリ30の中心を結んだ直線をL
とする。第4モータ44が回転し,第8歯車43及び第7歯車42に
より,第4アーム22が直線Lよりα度回転したとき,第5プーリ2
1と第6プーリ25の歯数比は2:1なので第5アーム26は第4ア
ーム22に対し−2α度回転する。また,第6アーム31は第7プー
リ27と第8プーリ30の歯数比が1:2なのでα度回転する。よっ
て,第6アーム31は,第4モータ44の回転により,直線L上を動
き,ウエハカセット移載ロボット50の片方のアーム部51の半径
(R)方向の動作となる。同様に,他方のアーム部52(第1アーム
7と第2アーム11と第3アーム16)も,第2モータ38の回転に
より,半径(R)方向の動作を行う」。
⑤【0011】
「回転(θ)方向の動作について説明する。第1モータ35が回転
,,,すると第1歯車33と第2歯車34により第1アーム7が回転し
これが,ウエハカセット移載ロボット50の他方のアーム部52の回
転(θ)方向の動作となる。なお,第2モータ38は第1歯車33に
固定されているので第1モータ35が回転しても,半径(R)方向に
他方のアーム部52は動作しない。第3モータ41が回転すると,第
5歯車39と第6歯車40により,第4アーム22が回転し,これが
ウエハカセット移載ロボット50の片方のアーム部51の回転(θ)
方向の動作となる。なお,第4モータ44は第5歯車39に固定され
ているので第3モータ41が回転しても,半径(R)方向に片方のア
ーム部51は動作しない」。
⑥【0012】
「以上によりウエハカセット移載ロボット50の片方のアーム部5
1と他方のアーム部52は個々に,半径(R)方向と回転(θ)方向
に動作可能である」。
)前記)及び乙7公報の【図1】ないし【図3】によれば,乙7公報ba
には,次のような構成を有する乙7発明が記載されていると認められる
(以下「乙7発明の構成A」などという。’。)
A’第1ウォンド17と,
B’第1ウォンド17の回転面に対して下側に位置するように高さを規
定した第2ウォンド32と,
C’前記第1ウォンド17を一方向に伸縮する第2アーム11と,
D’前記第2ウォンド32を一方向に伸縮する第5アーム26と,
E’前記第2アーム11の回転中心となる第5シャフト8の軸受けと,
前記第5アーム26の回転中心となる第7シャフト23の軸受けとを
有し,かつ,前記第2アーム11に回転力を与える第1中空シャフト
2と,前記第5アーム26に回転力を与える第3中空シャフト4とを
有する第1アーム7,第4アーム22及び第1中空シャフト2(具体
的には,第5シャフト8の軸受けを有する第1アーム7,第7シャフ
ト23の軸受けを有する第4アーム22,第1中空シャフト2及び第
)(,,3中空シャフト4とを有する第1中空シャフト2となお被告は
第2アーム11に回転力を与えるもの(すなわち,第1の駆動軸(1
))「」,3Aに相当するものを第2中空シャフト3と記載しているが
第1プーリが設けられているのは第2中空シャフト3ではなく第1中
空シャフト2なので「第1中空シャフト2」が第1の駆動軸(13,
A)に相当するものである,。)
F’前記第2アーム11,第5アーム26並びに第1アーム7,第4ア
ーム22及び第1中空シャフト2を回動制御する第1モータ35,第
2モータ38,第3モータ41及び第4モータ44とを備え,
G’第1ウォンド17及び第2ウォンド32を前記第1アーム7,第4
アーム22及び第1中空シャフト2の上部に納めたとき,前記第1ウ
ォンド17と第2ウォンド32とを高低差をもって重なるようにし
た,
H’ウエハ移載ロボット
)乙1発明における多関節駆動部すなわち平行リンク機構(移し換えアc
ーム(30,20)と,乙7発明における第1アーム7及び第2アー)
ム11並びに第4アーム22及び第5アーム26の構成は,同じ多関節
搬送装置という技術分野に属するものであり,いずれも搬送部を伸縮さ
せるためのアーム機構である。そして,乙1発明における多関節駆動部
は,アーム機構として伸縮するものであれば,必ずしも平行リンク機構
である必然性はないのであるから乙1発明における平行リンク機構移,(
し換えアーム(30,20)に代えて,乙7発明における第1アーム)
7及び第2アーム11並びに第4アーム22及び第5アーム26を採用
し,よりシンプルな構成とすることは,当業者が適宜選択し得る設計的
事項であるということができる。そして,乙1発明の平行リンク機構に
代えて乙7発明における上記アーム機構を採用すると,本件特許発明1
の「多関節駆動部」に当たる,乙7発明の第1アーム7及び第2アーム
11並びに第4アーム22及び第5アーム26の回動中心は,第1アー
ム7及び第4アーム22を固定し,駆動する軸となるのであり,これが
多関節駆動部の固定軸に当たるものであることは明らかであるから,乙
1発明に乙7発明の上記技術を適用すれば,相違点2が解消され,本件
特許発明1にかかる構成が容易に想到されるものということができる。
)以上によれば,本件特許発明1は,当業者が乙1発明と乙7発明からd
容易に想到し得るものであるから,無効理由を有しており,特許無効審
判により無効にされるべきものと認められる(特許法29条2項,12
3条1項2号。)
()本件特許発明1が特開平2−83182号公報(乙2)に記載された発明2
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点5−2。)
ア乙2によれば,乙2公報には次のような記載がある。
)(課題を解決するための手段)a
「本発明に係るハンドリングユニットは,第1及び第2の多関節アー
ムの先端に試料を保持するハンドを設け,これら第1のアームを伸縮動
せしめる第1の回転軸,第2のアームを伸縮動せしめる第2の回転軸,
更には,第1及び第2のアームを同時に回転せしめる第3の回転軸を同
軸的に配置した」。
(作用)
「モータによって第1及び第2の回転軸を回転させることで第1及び
第2のアームを伸長し,一方のアームの先端のハンドを例えばカセット
内に,他方のアーム先端のハンドを処理チャンバー内に臨ませ,処理終
了後は第1及び第2の回転軸を逆転させて第1及び第2のアームを収縮
し更に第3の回転軸を回転させて第1及び第2のアームを方向転換し,
再び第1及び第2のアームを伸長して処理済みのウエハーを所定のカセ
ットに,未処理のウエハーを処理チャンバー内にそれぞれ投入する」。
)2頁右上欄9行ないし左下欄11行b
「ハンドリングユニットは上半部を操作部,下半部を駆動部とし,操
作部には第1及び第2の2本の多関節アーム1,2を設け,駆動部には
上記多関節アーム1,2に回転と伸縮動をなさしめる軸及びモータ等を
配設している。
具体的には枠状フレーム3の上板に軸受4を固設し,この軸受4内方
に第1のアーム1を動作させる第1の回転軸5,第2のアーム2を動作
させる第2の回転軸6及び第1及び第2のアーム1,2を同時に回転動
させる第3の回転軸7を同軸的に且つ独立して回転し得るように支承
し,且つ各軸間には磁石・・・からなる磁性流体シールを介在せしめて
いる。尚,実施例にあっては第3の回転軸7を最も外側に,第2の回転
軸6をその内側に,第1の回転軸5を最も内側に配置しているが,この
配置の順は任意である。また,磁性流体を利用した磁気シールを用いた
ことで操作部を真空室内に,駆動部を真空室の外に配置することができ
る。
また,駆動部には第1の回転軸5を回転せしめる第1のモータ8,第
2の回転軸6を回転せしめる第2のモータ9及び第3の回転軸7を回転
せしめる第3のモータ10を設けている」。
)2頁右下欄9行ないし3頁右上欄8行c
「次に第1及び第2のアーム1,2の構造を第6図及び第7図等を参
。,,照して説明する先ず前記第3の回転軸7の上面にケース23を設け
このケース23の上端部及び内部に筒体24,25を固着し,これら筒
体24,25の外周にギヤ26,27を刻設している。そして,第1の
回転軸5の上端は筒体24よりも突出せしめ,この第1の回転軸5の上
端に第1のアーム1を構成する中空状カバー30の基端部を取付け,こ
のカバー30の先端部に軸31をベアリング32を介して回転自在に支
持し,この軸31に嵌着したギヤ33と前記ギヤ26間にタイミングベ
ルト34を張設し,またカバー30の先端上面に筒体35を固着し,こ
の筒体35の外周にギヤ36を刻設するとともに,前記軸31の上端は
筒体35よりも突出せしめ,この軸31の上端に別の中空状カバー37
を取付け,このカバー37の先端部にベアリング38を介して軸39を
回転自在に支持し,この軸39に嵌着したギヤ40と前記ギヤ36間に
タイミングベルト41を張設し,更に軸39の上端にハンド42の基端
部を取付けている。そして,ハンド42には・・・円環の一部を切欠い
た形状の保持部43を設けている。
一方,第2のアーム2の構造も第1のアーム1と略同様に,筒体25
から突出する第2の回転軸6の上端に第2のアーム2を構成する中空状
カバー50の基端部を取付け,このカバー50の先端部に軸51をベア
リング52を介して回転自在に支持し,この軸51に嵌着したギヤ53
と前記ギヤ27間にタイミングベルト54を張設し,またカバー50の
先端上面に筒体55を固着し,この筒体55の外周にギヤ56を刻設す
るとともに,筒体55から前記軸51を突出せしめ,この軸51の上端
に別の中空状カバー57を取付け,このカバー57の先端部にベアリン
グ58を介して軸59を回転自在に支持し,この軸59に嵌着したギヤ
60と前記ギヤ56間にタイミングベルト61を張設し,更に軸59の
上端に保持部63を有するハンド62の基端部を取付けている」。
)3頁右上欄9行ないし左下欄9行d
「次に前記各モータ8,9,10の回転とアーム1,2の動作につい
て説明する。
先ずモータ8を回転させ第1の回転軸5を第3図において反時計廻り
に回転せしめられる。すると第1の回転軸5に取付けられたカバー30
が矢印a方向(反時計廻り)に回動する。そしてカバー30が回動する
と,ギヤ26がサンギヤとして,ギヤ33がプラネタリーギヤとして作
用することとなり,カバー30の回動量に応じてタイミングベルト34
が走行し,これにつれてギヤ33が一定角度だけ時計回りに回転する。
()。ギヤ33が回転するとカバー37が矢印b方向時計廻りに回動する
またカバー37が回動すると今度はギヤ36がサンギヤとして,ギヤ4
0がプラネタリーギヤとして作用し,ハンド42が矢印c方向(反時計
廻り)に回動する。一方,モータ9を駆動することで第2のアーム2に
ついても同様に,カバー50を矢印d方向(反時計廻り)に回動せしめ
ると,カバー57が矢印e方向に回動し,更にハンド62が矢印f方向
に回動する」。
)3頁左下欄10行ないし14行e
「その結果,第1及び第2のアーム1,2が一直線状に伸長した第3
図の状態から第4図に示すような第1及び第2のアーム1,2が収縮し
た状態となる。またモータ8,9を逆転せしめることで再び伸長状態と
なる」。
)3頁左下欄15行ないし18行f
「モータ10を駆動することで,第1及び第2のアーム1,2が同時
に水平面内で例えば180°回転して位置を変える。そして上記の各動
作を組合わせることで試料の授受を行う」。
イ前記ア並びに乙2公報の第1図,第2図,第6図及び第7図によれば,
乙2公報には,次のような構成を有する乙2発明が記載されていると認め
られる(以下「乙2発明の構成A」などという。’。)
A’試料を保持する一方のハンド42と,
B’試料を保持する他方のハンド62と,
C’前記一方のハンド42を一方向に伸縮する中空状カバー37と,
D’前記他方のハンド62を一方向に伸縮する中空状カバー57と,
E’前記中空状カバー37の回動中心となる軸31ないし筒体35が中空
状カバー30に存在し,前記中空状カバー57の回動中心となる軸51
ないし筒体55が中空状カバー50に存在し,かつ,中空状カバー37
に回転力を与える回転軸5と(回転軸5によって中空状カバー30が回
転することによりギヤを介して前記中空状カバー37が回転する,中)
空状カバー57に回転力を与える回転軸6(回転軸6によって中空状カ
バー50が回転することによりギヤを介して前記中空状カバー57が回
),,(,)転すると第1及び第2のアーム12中空状カバー30同50
を同時に回転動させる第3の回転軸7が,同軸的にかつ独立して回転し
得るように軸受4内方に支承されている(回転軸5はケース23のみな
らず,中空状カバー30及び同50の内部にも亘っている。また,回転
軸6はケース23のみならず中空状カバー50の内部にも亘ってい
る,。)
F’前記中空状カバー37,同カバー57並びにケース23,中空状カバ
ー30,筒体35,中空状カバー50及び筒体55を回動制御するモー
タ8,9,10とを備えた,
G’ハンド42及びハンド62を,前記中空状カバー30及び前記中空状
カバー50の上部に縮めたとき,前記ハンド42と前記ハンド62が重
ならず,かつ,高低差を有しないようにした,
H’ことを特徴とするハンドリングユニット
ウ乙2発明と本件特許発明1の一致点及び相違点
’,’,’,,,a)乙2発明の構成ACHが本件特許発明1の構成要件AC
及びHの構成と一致することは当事者間に争いがない。
また,乙2発明の構成G’が本件特許発明1の構成要件Gと相違して
いること(したがって,乙2発明の構成B’及びD’が本件特許発明1
の構成要件B及びDと相違することになる)については当事者間に争。
いがない。
)乙2発明の構成E’の構成と本件特許発明1の構成要件Eの構成につb
いて
被告は,乙2発明において三つの回転軸が同軸的に配置されたケース
23,中空状カバー30,筒体35,中空状カバー50及び筒体55を
「()」含む全体が本件特許発明1の構成要件Eにおける共通駆動部13
に該当し,上記各部材のいずれかに,本件特許発明1の多関節駆動部の
回動中心となる固定軸(13A,13B)に相当する軸31,51,多
(,),関節駆動部に回転力を与える駆動軸13C13Dに相当する軸5
6が設けられているから,乙2発明の構成E’は本件特許発明1の構成
要件Eと一致する旨主張し,原告は,共通駆動部は左右のアームが単一
部材でなければならないと主張するので,この点について判断する。
本件特許発明1の「共通駆動部(13」は,多関節駆動部の回動中)
心となる固定軸(13A,13B,多関節駆動部に回転力を与える第)
1,第2の駆動軸(13C,13D)を有し「駆動制御手段(14」,)
により回動制御されるものであることは前記のとおりである。したがっ
て,本件特許発明1の「共通駆動部(13」は,その回動中心の左右)
にのびるアーム状部分が一体として回動制御される必要はあるものの,
単一の部材として一体的に形成されたものである必要はない(甲2。)
乙2発明においては,本件特許発明1の多関節駆動部の回動中心とな
る固定軸(13A,13B)に相当する軸31,51,多関節駆動部に
回転力を与える駆動軸(13C,13D)に相当する軸5,6が設けら
れているものの,左右のアームのうち,中空状カバー30はモータ8を
駆動することで回転軸5により,中空状カバー50はモータ9を駆動す
ることで回転軸6により,それぞれ個別に回転制御されるものである。
なお,乙2発明においては,中空状カバー30及び同50は,モータ1
0を駆動することで回転軸7により同時に一体的に回動し,水平面内で
回転して位置を変えるものであるものの,乙2公報においては,アーム
の伸縮時に中空状カバー30及び50が一体的に回動するかどうかにつ
いての記載はない。したがって,乙2発明の中空状カバー30及び50
は,その伸縮動作において一体的に回動制御されるものとはいえないか
ら,駆動制御手段により常に一体的に回動制御されるものである構成要
件Eの「共通駆動部(13」とはこの点において相違する。)
)乙2発明の構成F’が本件特許発明1の構成要件Fと一致するといえc
るか。
前記)で記載したとおり乙2発明においては本件特許発明1の共b,「
()」,,通駆動部13に相当するものが存在するとはいえずしたがって
「()()」構成要件Fの共通駆動部13を回動制御する駆動制御手段14
とはこの点において相違する。
)小括d
以上によれば,本件特許発明1と乙2発明との相違点は,次のとおり
であり,その余の構成は一致する。
①本件特許発明1においては,第2の搬送部(16)が第1の搬送部
(15)の回転面に対して上又は下側に位置するように高さを規定さ
れているのに対し,乙2発明においては,他方のハンドが一方のハン
ドの回転面と同じ高さに規定されている点(構成要件B,G関係。以
下,本争点における「相違点1」という)。
②本件特許発明1には,左右のアーム全体が常に一体的に回動制御さ
れる「共通駆動部(13」が存在する(構成要件E)のに対し,乙)
2発明にはそのような部材が存在せず,別部材で構成され,個別に回
動制御される中空状カバー30中空状カバー50が存在している以,(
下,本争点における「相違点2」という。なお,前記c)の相違点は
相違点2において評価されている。。)
エ容易想到性について
)相違点1についてa
相違点1に関して,本件特許出願前に公開されたウエハ搬送装置に関
,「()する乙4公報2頁右下欄9行ないし13行にはウエハ保持部28
と(33,回転プーリ(24)と(29,第1のアーム部材(14)))
と第2のアーム部材(21・・・は互いに取付け位置を上下方向にず)
らせて取付けてあり,互いの干渉をなくしている」との記載がある。。
そして,乙2発明と乙4発明は,いずれもダブルアーム型のウエハ搬
送装置に関する発明である。ウエハ搬送装置においては製造コストを下
げるために専有面積を小さくすることが一般的な課題とされており,ダ
ブルアーム型のウエハ搬送装置においては専有面積を小さく抑えつつ両
アームが互いに干渉しないよう動作させることも一般的な課題であると
いえる。実際,乙2公報の4頁右欄1行ないし5行には「本発明に係る
ハンドリングユニットは互いに独立した動きを2本のアームに干渉する
ことなく行わせることができる・・・」と記載されている。
,,そうするとダブルアーム型ウエハ搬送装置である乙2発明において
専有面積を小さく抑えつつ二つのアームが干渉し合わないように乙4公
報に記載された両アームの高さを上下方向にずらした上で重ねて取り付
けるという構成を組み合わせることは,本件特許出願当時,当業者が容
易になし得たことというべきである。
原告は,乙2発明はアームの位置を反対向きにすることによって各ア
ームが他方のアームに干渉されることなく独立に動作できるという効果
を奏する発明であるから乙4発明と組み合わせる動機付けがないのみな
らず,その組合せについて阻害要因が存在する旨主張する。しかし,乙
2発明がアームの向きを反対向きにした発明であったとしても,二つの
アームが収縮したホームポジションの状態においては各アームのハンド
部分やハンド部分に載置されたウエハ等が干渉し合う設計になり得る。
実際,左右の搬送部の高さを上下方向にずらす構成を採用した乙4発明
も乙2発明と同様,アームの向きを反対向きにした装置である。アーム
の向きを反対向きにしたからといって,搬送部同士の干渉を防ぐために
搬送部の高さを上下方向にずらすことが不要になるとはいえないから,
この点に関する原告の主張は採用できない。
)相違点2についてb
乙2発明との相違点2の構成について,容易に想到し得ると認めるに
足りる証拠はない。
なお,本件特許出願前に公開されたウエハ搬送装置に関する乙4公報
3頁右上欄13行ないし左下欄9行には,次のような記載があり,第4
図及び第5図には根元のアームが一つの部材で形成されたウエハ搬送装
置の図が記載されている。
「他の実施例として,上記ウエハ保持部(28(33)を全く同),
期させて直線軌道に沿って動かす場合には,第4図および第5図に示す
ような構造にしてもよい。つまり(40)は駆動モータで,この回転,
駆動は駆動モータ(40)に連結された駆動軸(41)に伝達され,こ
の駆動軸(41)の先端には第1アーム部材(42)が取付けられ,駆
動軸(41)の回転に応じて旋回するようにされている。また,駆動軸
(41)に同軸に固定プーリ(43)が支持板(44)に固定されてい
。,()(),るまた上記第1のアーム部材42の両端には回転プーリ45
(46)が回転自在に支持されており,上記固定プーリ(43)とワイ
ヤベルト(47(48)によって回転を伝達するように連結されて),
いる。上記回転プーリ(45(46)の回転軸(49(50)に),),
は第2および第3のアーム部材(51(52)の一端が取付けられ,),
この第2および第3のアーム部材(51(52)の他端にはウエハ),
保持部(53(54)が形成されている」),。
そこで,乙2発明に,乙4公報に記載された上記発明を組み合わせる
ことが,本件特許出願当時,当業者にとって容易であったか否かについ
て検討する。
乙2発明と乙4公報に記載された上記発明は,いずれもダブルアーム
型のウエハ搬送装置に関する発明である。乙4公報に記載された上記発
明は,二つのウエハ保持部を全く同期させて第1のアーム部材(42)
と同一の直線方向に伸ばすようなウエハ搬送装置において装置の構造を
単純化する技術である(乙4公報3頁右下欄11行ないし14行。こ)
れに対し,乙2発明は,前記のとおり,左右二つのアームを個々に伸縮
。,,動作することを前提とした装置であるそうすると乙2発明において
二つのアームの伸縮運動において,これを常に一体的に回動制御する構
造とすること,すなわち,中空状カバー30及び同50を構造状一体の
,,ものとするとの発想は取り入れ難いものであるから本件特許出願当時
当業者が,乙2発明に乙4公報に記載された根元の両アームを単一部材
で構成する技術を組み合わせることが容易であったとはいえない。
()本件特許発明1が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された発3
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの
といえるか(争点5−3。)
ア乙7公報には,上記()オ認定の記載があり,同認定の乙7発明の構成1
A’ないしH’が開示されている。
イ乙7発明と本件特許発明1の一致点及び相違点
)本件特許発明1と乙7発明とが,構成要件AないしD,G及びHの点a
で一致することは当事者間に争いがない。
)乙7発明の構成E’が本件特許発明1の構成要件Eと一致するといえb
るか。
①前記認定のとおり,本件特許発明1の構成要件Eにおける「共通駆
動部(13」とは,多関節駆動部(11,12)の回動中心となる)
固定軸(13A,13B)及び多関節駆動部に回転力を与える駆動軸
(13C,13D)を有し,駆動制御手段(14)により回動制御さ
れるものである。
そして,本件特許発明1においては「共通駆動部」の回転中心の,
左右のアームは,一体として回動制御されるものであり,共通駆動部
の左右のアームを別々に回動制御することを予定していないことは,
構成要件E及びF並びに本件明細書の発明の詳細な説明からも明らか
である(甲2。)
②乙7公報の前記()オの記載及び乙7公報の【図1】によれば,乙1
7発明における第1アーム7と第4アーム22は別部材として構成さ
れ,それぞれが個別に駆動されることを予定しており,乙7発明の駆
動制御機構も第1アーム7と第4アーム22を個別に駆動することを
前提とした機構になっていることが認められる。
,,「()」そうすると乙7発明は本件特許発明1の共通駆動部13
に相当する構成を有していない。
したがって,乙7発明の構成E’は本件特許発明1の構成要件Eと
相違する。
)乙7発明の構成F’が本件特許発明1の構成要件Fと一致するといえc
るか。
前記)で記載したとおり乙7発明においては本件特許発明1の共b,「
()」,,通駆動部13に相当するものが存在するとはいえずしたがって
構成要件Fの「共通駆動部(13)を回動制御する駆動手段(14」)
をも有しない。すなわち,被告が共通駆動部に相当すると主張する第1
アーム7,第4アーム22及び第1中空シャフト2全体を一体的に回動
する駆動制御手段が存在しない。
)小括d
以上によれば,本件特許発明1と乙7発明とは,次の2点において相
違する。
①本件特許発明1には,左右のアーム全体が一体的に回動制御される
「共通駆動部(13」が存在する(構成要件E)のに対し,乙7発)
明にはそのような部材が存在せず,別部材で構成され,個別に回動制
御される第1アーム7,第4アーム22,第1中空シャフト2が存在
している(以下,本争点において「相違点1」という。。)
②本件特許発明1には「共通駆動部(13」の全体を一体として回)
動制御する駆動制御手段が存在する(構成要件F)のに対し,乙7発
明にはそのような駆動制御手段が存在せず,第1アーム7,第4アー
ム22,第1中空シャフト2を個別に回動制御する駆動制御手段が存
在している(以下,本争点において「相違点2」という。。)
ウ容易想到性について
)相違点1についてa
本件特許出願前に公開されたウエハ搬送装置に関する乙4公報3頁右
上欄13行ないし左下欄9行には,次のような記載があり,第4図及び
第5図には根元のアームが一つの部材で形成されたウエハ搬送装置の図
が記載されている。
「他の実施例として,上記ウエハ保持部(28(33)を全く同),
期させて直線軌道に沿って動かす場合には,第4図および第5図に示す
ような構造にしてもよい。つまり(40)は駆動モータで,この回転,
駆動は駆動モータ(40)に連結された駆動軸(41)に伝達され,こ
の駆動軸(41)の先端には第1アーム部材(42)が取付けられ,駆
動軸(41)の回転に応じて旋回するようにされている。また,駆動軸
(41)に同軸に固定プーリ(43)が支持板(44)に固定されてい
。,()(),るまた上記第1のアーム部材42の両端には回転プーリ45
(46)が回転自在に支持されており,上記固定プーリ(43)とワイ
ヤベルト(47(48)によって回転を伝達するように連結されて),
いる。上記回転プーリ(45(46)の回転軸(49(50)に),),
は第2および第3のアーム部材(51(52)の一端が取付けられ,),
この第2および第3のアーム部材(51(52)の他端にはウエハ),
保持部(53(54)が形成されている」),。
そこで,乙7発明に,乙4公報に記載された上記発明を組み合わせる
ことが,本件特許出願当時,当業者にとって容易であったか否かについ
て検討する。
乙7発明と乙4公報に記載された上記発明は,いずれもダブルアーム
型のウエハ搬送装置に関する発明である。乙4公報に記載された上記発
明は,二つのウエハ保持部を全く同期させて同一の直線方向に伸ばすよ
うなウエハ搬送装置において装置の構造を単純化する技術である(乙4
公報3頁右下欄11行ないし14行。これに対し,乙7発明は,二つ)
のウエハ保持部を半径方向(伸縮方向)及び回転方向(旋回方向)にお
いて個々に動作できるようにすることによって迅速にウエハ移載を行う
という発明である(乙7公報【0012】及び【0013。そうす】)
ると,両発明が同じダブルアーム型のウエハ搬送装置に関するものであ
っても,乙7発明においては,ウエハ保持部を全く同期させて同一の直
線方向に伸ばすという発想は取り入れ難いから,本件特許出願当時,当
業者が,乙7発明に乙4公報に記載された根元の両アームを単一部材で
構成する技術を組み合わせることが容易であったとはいえない。
なお,乙7発明においては,第2中空シャフト及び第4シャフトの回
動方向及び速度を所定の方向及び速度に調整することによって第1アー
ム7と第4アーム22があたかも単一部材であるかのように同期させて
一体的に回転方向(旋回方向)に回動させることが可能である。また,
第1中空シャフト及び第3中空シャフトの回動方向及び速度を所定の方
向及び速度に調整することによって第1アーム7と第4アーム22があ
たかも単一部材であるかのように同期させて一体的に半径方向(伸縮方
向)に回動させることも可能である。そして,回転方向(旋回方向)及
び半径方向(伸縮方向)において,それぞれ上記の所定の制御を行った
場合には,本件特許発明1と実質的に同一の装置として用いることも可
能である。しかしながら,前記のとおり,乙7発明は,左右両アームを
個別に駆動させることを目的とした発明であり,その目的を実現するた
めに多数のシャフト及びモータを設けたものである。そうすると,乙7
発明に係る装置を上記のように左右両アームが個別の動作をしないよう
に意図的に調整して動作させるということは乙7発明からは発想しにく
いことであり,かつ,乙7発明に係る装置を上記のように意図的に調整
して動作させることによって生ずる作用効果を示唆するものが本件特許
出願当時存在した事実も認められない。また,仮に,そのような用法が
想到されるとしても,本件特許発明1に係る装置は,乙7発明に係る装
置と比較してより単純な構造で同一の用法を実現する装置なのであるか
ら,さらにこのような構造の単純化を行うことが本件特許出願当時,当
業者にとって容易であったことを示す証拠が存在しない限り,乙7発明
を理由に本件特許発明1の進歩性を否定することはできない。
)相違点2についてb
相違点2は,相違点1が解消されて初めて解消し得る事項である。前
記)のとおり,乙7発明及び乙4公報に記載された発明から相違点1a
にかかる構成を想到することが容易とはいえない以上,相違点2にかか
る構成を容易に想到し得るものということはできない。
エ以上によれば,本件特許出願当時,当業者が,乙7発明及び乙4公報に
記載された発明から本件特許発明1を想到することが容易であったとは認
められない。
6本件特許発明1の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点6。)
前記5に認定したところによれば,本件特許発明1は乙1発明及び乙7発明
から容易に想到し得た発明である,との無効理由を有する。
しかし,本件特許については,その無効審判事件において,本件訂正の請求
がなされており,特許庁は,その審決において,本件訂正を認め,本件訂正特
許1を無効と判断したものの,原告が同審決に対し審決取消訴訟を提起したた
めに,未だ本件訂正が確定していない状況にある。
特許法104条の3第1項における「当該特許が無効審判により無効とされ
るべきものと認められるとき」とは,当該特許について訂正審判請求あるいは
訂正請求がなされたときは,将来その訂正が認められ,訂正の効力が確定した
ときにおいても,当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められ
るかどうかにより判断すべきである。したがって,原告は,訂正前の特許請求
の範囲の請求項について容易想到性の無効理由がある場合においては,①当該
請求項について訂正審判請求ないし訂正請求をしたこと,②当該訂正が特許法
126条の訂正要件を充たすこと,③当該訂正により,当該請求項について無
効の抗弁で主張された無効理由が解消すること(特許法29条の新規性,容易
想到性,同36条の明細書の記載要件等の無効理由が典型例として考えられ
る,④被告製品が訂正後の請求項の技術的範囲に属することを,主張立証。)
すべきである。
本件においても,原告は,同趣旨の主張をするので,以下,この点について
判断する。
()本件訂正請求が特許法126条1項,3項及び4項の訂正要件を満たすと1
いえるか(争点6−2。)
ア本件訂正が特許法126条1項における「特許請求の範囲の減縮」に当
たることは明らかである。
イ新規事項の追加について
)特許法126条3項は「第1項の明細書,特許請求の範囲又は図面a,
の訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面・・・に記
載した事項の範囲内においてしなければならない」と規定する。。
被告は,本件訂正は,上記要件を満たさない訂正であると主張する。
本件訂正は,本件各特許発明の駆動制御手段(14)の回動制御につ
,「(),いて本件訂正前特許請求の範囲には前記第1の多関節駆動部11
第2の多関節駆動部(12)及び共通駆動部(13)を回動制御する駆
動制御手段(14)とを備え」とのみ記載されていたものを「前記駆,
動制御手段(14)が行う制御には,第1の搬送部(15)又は第2の
搬送部(16)を伸縮するために共通駆動部(13)を回動させる制御
,(),()とこの共通駆動部13を回動させる制御中第2の搬送部16
又は第1の搬送部(15)が共通駆動部(13)上に取り込まれた状態
であるようにする制御とが含まれるものであって」という構成を追加し
たものである。
)本件訂正前明細書には,次のような記載がある(甲2。b)
①【0019】
【】。,作用本発明の第1の多関節搬送装置の動作を説明する例えば
駆動制御手段14により第1の駆動軸13Cが固定され,第2の駆動
()軸13D及び共通駆動部13が同期して回動される第1の制御方法
と,第2の駆動軸13Dから第2の多関節駆動部12に回転力が与え
られ,第2の多関節駆動部12が第2の固定軸13Bを中心として回
動する。
【0020】この際に,共通駆動部13の回転方向を打ち消す方向
に第2の多関節駆動部12が回動する。これにより,第2の多関節駆
動部12は静止状態を保持し,第2の搬送部16は共通駆動部13上
(ホームポジション)に取り込まれる状態となる。また,第1の搬送
部15が第1の多関節駆動部11により一方向に伸縮される。次に,
駆動制御手段14により第2の駆動軸13Dが固定され,第1の駆動
()軸13C及び共通駆動部13が同期して回動される第2の制御方法
と,第1の駆動軸13Cから第1の多関節駆動部11に回転力が与え
られ,第1の多関節駆動部11が第1の固定軸13Aを中心として回
動する。
【0021】この際に,共通駆動部13の回転方向を打ち消す方向
に第1の多関節駆動部11が回動する。これにより,第1の多関節駆
動部11は静止状態を保持し,第1の搬送部15は共通駆動部13上
に取り込まれる状態となる。また,第1の搬送部15と独立した第2
の搬送部16が第2の多関節駆動部12により一方向に伸縮される。
②【0032】ないし【0037(10欄23行ないし24行,3】
3行ないし34行,11欄12行ないし17行)
(1)第1の実施例の説明
搬送アーム21は第1の多関節駆動部11の一例であり・・・搬,
送アーム22は第2の多関節駆動部12の一例であり・・・,搬送ア
ーム21は第1の駆動軸13Cと動力伝達ベルト23Aにより接続さ
れ,同様に,搬送アーム22と第2の駆動軸13Dとが動力伝達ベル
ト23Bにより接続される。駆動制御装置24は駆動制御手段14の
一例であり,第1の駆動軸13C,第2の駆動軸13D及び共通駆動
アーム23を個別に回動制御するものである。
③【0042】ないし【0044】
本発明の第1の実施例に係る多関節搬送ロボットの動作について説
明をする。例えば,図6(A)に示すようなホームポジションにある
フォーク25を水平方向に移動させる場合,まず,駆動制御装置24
により第1の駆動軸13Cが固定され,第2の駆動軸13D及び共通
駆動アーム23が同期して回動される(第1の制御方法」)。
「これにより,第2の駆動軸13Dから搬送アーム22に回転力が
与えられ,搬送アーム22が第2の固定軸13Bを中心として回動す
る。この際に,図6(B)に示すように共通駆動アーム23が時計方
向に回転し,この回転方向を打ち消す方向に搬送アーム22が回動す
る。これにより,見かけ上搬送アーム22は静止状態を保持し,フォ
ーク26が共通駆動アーム23上に取り込まれた状態で共通駆動アー
ム23と同様に旋回する。
また,共通駆動アーム23が時計方向に回転し,その最大回動時に
は,図6(C)に示すようにフォーク25,搬送アーム21及び共通
駆動アーム23が一直線上に並んだ状態になる。
④【図6【図7【図13】及び【図14】】,】,
一方のアームの伸縮運動において,共通駆動部が回動し,その間,
他方のアームは共通駆動部上に取り込まれた状態にある様子が記載さ
れている。
)前記)③及び④によれば,本件訂正前明細書には,搬送部(15,cb
16)を伸縮する際に共通駆動部(13)を回動させる構成及び当該共
通駆動部の回動の際,他方の搬送部(16,15)が駆動制御手段にお
ける制御により見かけ上静止状態を保持し,共通駆動部(13)上に取
り込まれた状態で共通駆動アームと同様に旋回する構成が記載されてい
ることが認められる。
そうすると,本件訂正にかかる本件訂正特許発明1は,本件訂正前明
細書に記載されていたといえるから,本件訂正は,願書に添付した明細
書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
,,被告は前記)①の記載を根拠に本件各特許発明の駆動制御手段はb
前記)①に記載された構成に限定して解釈すべきであると主張し,かb
かる限定解釈を前提とすれば,本件訂正は本件各特許発明における駆動
制御手段に含まれない構成を含むことになるから特許法126条3項に
違反する旨主張する。
しかし,本件訂正前の本件各特許発明の特許請求の範囲の記載及び本
件明細書の記載から被告が主張するような限定解釈をすべき理由はな
い。したがって,被告の主張は,その前提において誤っており,採用す
ることができない。
ウ本件訂正特許発明が特許法29条2項に当たることによる独立特許要件
違反について
被告は,本件訂正特許発明1は,本件特許の請求項7及び8に記載され
た制御方法に関する発明の制御方法の結果にすぎず,請求項7及び8に記
載された発明は乙7発明と乙4発明を組み合わせることで当業者が本件特
許出願当時容易に想到し得た発明であるから,本件特許の無効審判におい
てなされている本件訂正請求について,独立特許要件違反があると主張す
。,,,るしかし独立特許要件は訂正審判請求については必要であるものの
無効審判における訂正請求については必要な要件ではないから,この被告
の主張は,主張自体失当である(なお,被告のこの主張は,無効理由の主
,,。)。張とも解し得るのでその点についても後に簡単に触れることとする
エ本件訂正についてはその余の訂正要件違反も認められないから,本件訂
正は適法な訂正であると認められる。
()本件特許発明1の無効理由が本件訂正によって解消されるか(争点6−2
1。)
ア本件訂正は,本件訂正部分,すなわち「前記駆動制御手段(14)が行
う制御には,第1の搬送部(15)又は第2の搬送部(16)を伸縮する
ために共通駆動部(13)を回動させる制御と,この共通駆動部(13)
を回動させる制御中,第2の搬送部(16)又は第1の搬送部(15)が
共通駆動部(13)上に取り込まれた状態であるようにする制御とが含ま
れる」という構成を本件特許発明1の特許請求の範囲に追加するものであ
る。
イ原告は,本件訂正により,本件特許発明1の無効理由が解消されると主
張する。そこで,乙1発明及び乙7発明,あるいは,乙2発明及び乙4発
明から,本件訂正特許発明1を容易に想到し得るものであるかどうかを判
断する。
,,前記5()においては本件特許発明1の特許請求の範囲の記載からは1
「共通駆動部(13」がアームを伸縮させるために回動するものである)
,「」と限定して解釈することはできないとした上で乙1発明の旋回台10
が本件特許発明1の「共通駆動部(13」と一致する旨判断し,乙1発)
明と乙7発明から本件特許発明1の構成について,当業者が容易に想到し
うるものであると判断した。
,,「()」しかし本件訂正により本件訂正特許発明1の共通駆動部13
は,搬送部(15又は16)を伸縮するためにも回動するものであること
が,駆動制御手段が行う制御として,特許請求の範囲に追加されたのであ
,「」「」るから乙1発明の旋回台10が本件訂正特許発明1の共通駆動部
と同様にこのように制御されるものかどうかを検討する必要がある。
,「()ただし本件訂正の搬送部・・・を伸縮するために共通駆動部13
を回動させる制御」との構成は「ために」との用語が多義的な用語であ,
るため,①搬送部を伸縮するために,その準備行為として,共通駆動部を
回動させるとの制御であるのか,②共通駆動部の回動により,搬送部を伸
縮するとの制御であるのか,特許請求範囲の記載自体からは一義的に明ら
かであるとはいえないので,本件明細書の発明の詳細な説明を参酌する。
)本件明細書には次のような記載がある(甲2。a)
①【0019】
【作用】本発明の第1の多関節搬送装置の動作を説明する。例えば,
駆動制御手段14により第1の駆動軸13Cが固定され,第2の駆動
()軸13D及び共通駆動部13が同期して回動される第1の制御方法
と,第2の駆動軸13Dから第2の多関節駆動部12に回転力が与え
られ,第2の多関節駆動部12が第2の固定軸13Bを中心として回
動する。
【0020】この際に,共通駆動部13の回転方向を打ち消す方向に
第2の多関節駆動部12が回動する。これにより,第2の多関節駆動
部12は静止状態を保持し第2の搬送部16は共通駆動部13上ホ,(
ームポジション)に取り込まれる状態となる。また,第1の搬送部1
5が第1の多関節駆動部11により一方向に伸縮される。次に,駆動
制御手段14により第2の駆動軸13Dが固定され,第1の駆動軸1
(),3C及び共通駆動部13が同期して回動される第2の制御方法と
第1の駆動軸13Cから第1の多関節駆動部11に回転力が与えら
れ,第1の多関節駆動部11が第1の固定軸13Aを中心として回動
する。
【0021】この際に,共通駆動部13の回転方向を打ち消す方向に
第1の多関節駆動部11が回動する。これにより,第1の多関節駆動
部11は静止状態を保持し,第1の搬送部15は共通駆動部13上に
取り込まれる状態となる。また,第1の搬送部15と独立した第2の
搬送部16が第2の多関節駆動部12により一方向に伸縮される。
②【0042】次に,本発明の第1の実施例に係る多関節搬送ロボッ
トの動作について説明をする。例えば,図6(A)に示すようなホー
,,ムポジションにあるフォーク25を水平方向に移動させる場合まず
駆動制御装置24により第1の駆動軸13Cが固定され,第2の駆動
軸13D及び共通駆動アーム23が同期して回動される(第1の制御
方法。)
【0043】これにより,第2の駆動軸13Dから搬送アーム22に
回転力が与えられ,搬送アーム22が第2の固定軸13Bを中心とし
て回動する。この際に,図6(B)に示すように共通駆動アーム23
が時計方向に回転し,この回転方向を打ち消す方向に搬送アーム22
は回動する。これにより,見かけ上搬送アーム静止状態を保持し,フ
ォーク26が共通駆動アーム23上に取り込まれた状態で共通駆動ア
ーム23と同様に旋回する。
【0044】また,共通駆動アーム23が時計方向に回転し,その最
大回動時には,図6(C)に示すようにフォーク25,搬送アーム2
1及び共通駆動アーム23が一直線上に並んだ状態になる。
③本件明細書の【図6】及び【図7】には,共通駆動部が時計回りに
回転するのにともない,一方の搬送部及び多関節駆動部が徐々に搬送
方向に伸び,他方の搬送部及び多関節駆動部は常時共通駆動部上に取
り込まれた状態を保持する動作が図示されている。
④【0108】
【発明の効果】以上説明したように,本発明の多関節搬送装置によれ
ば,第1の搬送部の回転面に対して上又は下側に位置するように第2
の搬送部の高さを規定しているので,第1及び第2の搬送部を共通駆
動部の上部に縮めたとき,第1の搬送部と第2の搬送部との間に,被
搬送物が入り込めるような高低差を生じさせることができる。このた
,,,めホームポジションで被搬送物を載置した下側の第1の搬送部と
その上側の第2の搬送部とを重ね合わせることができる。従って,ホ
ームポジションで大きな被搬送物を載置して回転するときも,被搬送
物の旋回半径を小さくすることができる。
【0109】本発明の多関節搬送装置によれば,一方の搬送部が共通
駆動部上に取り込まれた状態で,他方の搬送部が一方向に伸縮された
り,2つの搬送部や2つの多関節駆動部が静止している状態で,共通
駆動部が旋回されるので,従来技術のような3つの基本動作に加え,
同一方向において,一方の搬送部に載置された被搬送物を搬送先に移
動して,それを他方の搬送部を用いて搬送先の被搬送物と交換するこ
とが可能となる。
)以上の本件明細書の記載によれば,本件訂正部分は,共通駆動部(1b
3)を回動させることにより,一方の搬送部(15又は16)を伸縮さ
せるものであり,また,この共通駆動部(13)の回動制御の際,他方
の搬送部(16又は15)が共通駆動部上に取り込まれた状態であるよ
うに,駆動制御手段(14)がその制御を行う構成を記載したものであ
ると解すべきである。これに対し,前記5()ア,イ並びに乙1公報の1
第1図及び第3図によれば,乙1発明の「旋回台10」は「移し換え,
アーム20,30」ないし「基板保持部60a,60b」の伸縮運動の
前に旋回するものであるものの,その旋回により,移し換えアームを伸
縮させるものではない。すなわち,乙1公報の前記記載及びその第3図
によれば,乙1発明においては,旋回台10の正面方向(第3図の1点
鎖線の方向)に基板保持部が伸縮するように設計されており,このよう
な装置において,移し換えアーム(20,30)の伸縮運動の際に旋回
台10を回動させると,基板保持部の伸縮する方向が変わってしまうた
め,乙1発明からは,伸縮運動の際に旋回台10を回動させることは発
想しにくいことである。したがって,乙1発明においては,本件訂正特
許発明1の「駆動制御手段が行う「共通駆動部」及び「第1及び第」,
2の搬送部」に対する上記制御を行うものではないことは明らかである
(以下,この相違点を「乙1発明との相違点3」という。。)
以上によれば,本件訂正特許発明1と乙1発明とは,前記認定の相違
点に加え,乙1発明との相違点3においても異なるものである。
)乙1発明との相違点3については,この相違点に係る構成を容易に想c
到し得る公知技術が存在することを認めるに足りる証拠はない。仮に,
乙1発明において,旋回台10をアームの伸縮運動の際にも回動させた
上で,基板保持部の伸縮方向を維持しようとすると,装置全体の構造を
変更する必要があり,乙1発明については,このような発想をすること
は容易ではない。したがって,本件特許出願当時,当業者が,乙1発明
から本件訂正後特許発明1を想到することが容易であったとは認められ
ない。
したがって,本件訂正によって,前記5()において認定した無効理1
由は解消されるものと認められる。
ウ乙2発明と本件訂正特許発明1について
本件訂正部分は,共通駆動部(13)を回動させることにより,一方の
搬送部(15又は16)を伸縮させるものであり,また,この共通駆動部
(13)の回動の際,他方の搬送部(16又は15)が共通駆動部上に取
り込まれた状態であるように,駆動制御手段(14)がその制御を行う構
成を記載したものであると解すべきであることは,上記イ)認定のとおb
りである。
これに対し,前記5()によれば,乙2発明の第1及び第2アームにつ2
いては,本件訂正部分のような制御が行われるものではないことは,乙2
公報から明らかである(以下,この相違点を「乙2発明との相違点3」と
いう。。)
そして,乙2発明との相違点3については,この相違点に係る構成を容
易に想到し得るとの公知技術が存在することを認めるに足りる証拠はな
い。
したがって,仮に,本件特許発明1について,何らかの理由により乙2
発明を主引例とする無効理由が認められるとしても,本件訂正により,当
該無効理由は解消されるものと認められる。
エ乙7発明と本件訂正特許発明1について
被告は,本件訂正後の本件訂正特許発明1は,乙7発明と乙4発明から
容易に想到し得るものであると主張し,同趣旨の審決もなされている(乙
17。)
しかし,乙7発明においては,そもそも本件特許発明1の共通駆動部が
存在せず(相違点1,乙4発明によっても,相違点1に係る構成を容易)
に想到し得ないことは,前記認定判断のとおりである。したがって,本件
訂正後の本件訂正特許発明1についても,この相違点が存在する以上,本
件訂正特許発明1を乙7発明及び乙4発明から容易に想到し得ないことに
おいて変わりはなく,被告の主張は採用し得ない。
オ本件訂正特許発明が特許法29条2項に当たることによる独立特許要件
違反について
被告は,本件訂正特許発明1は,本件特許の請求項7及び8に記載され
た制御方法に関する発明の制御方法の結果にすぎず,請求項7及び8に記
載された発明は乙7発明と乙4発明を組み合わせることで当業者が本件特
許出願当時容易に想到し得た発明であるから,本件訂正特許発明1も容易
に想到し得た発明である,と主張する。
しかし,特許に無効理由があるかどうかは,各請求項毎に独立に判断さ
れるべきことであるから,本件訂正特許発明1に無効理由があるかどうか
,。については本件訂正後の請求項1の記載に基づき判断されるべきである
被告の上記主張については,端的に,請求項1に係る本件訂正特許発明1
が乙7発明と乙4発明を組み合わせることにより容易に想到し得たかどう
かで判断すれば足りるのである。そして,本件訂正特許発明1が乙7発明
及び乙4発明から容易に想到し得るものということができないことは前記
説示のとおりである。よって,被告の上記主張は理由がないことが明らか
である。
なお,本件明細書の特許請求の範囲請求項7及び8の記載は次のとおり
であり,本件訂正特許発明1は,請求項7及び8に記載された制御方法に
関する発明の制御方法の結果以外の構成を含み得るものであるから,被告
の上記主張は,被告独自の限定解釈を前提とした主張であって,この点か
らも失当である。
①請求項7
「前記第1の駆動軸(13C)を固定し,前記第2の駆動軸(13
D)及び共通駆動部(13)を同期させて回動することを特徴とする
請求項1∼6記載の多関節搬送装置の制御方法」。
②請求項8
「前記第2の駆動軸(13D)を固定し,前記第1の駆動軸(13
C)及び共通駆動部(13)を同期させて回動することを特徴とする
請求項1∼6記載の多関節搬送装置の制御方法」。
()。()被告各製品が本件訂正特許発明1の技術的範囲に属するか争点6−33
ア本件訂正部分の解釈につき争いがあるので,この点について判断する。
)本件訂正部分の記載は次のとおりである。a
「前記駆動制御手段(14)が行う制御には,第1の搬送部(15)
又は第2の搬送部(16)を伸縮するために共通駆動部(13)を回動
させる制御と,この共通駆動部(13)を回動させる制御中,第2の搬
送部(16)又は第1の搬送部(15)が共通駆動部(13)上に取り
込まれた状態であるようにする制御とが含まれるものであって」
)前記()イの本件明細書の記載によれば,前記認定のとおり,本件訂b2
正部分は,共通駆動部(13)を回動させることにより,一方の搬送部
(15又は16)を伸縮させるものであり,また,この共通駆動部(1
3)の回動の際,他方の搬送部(16又は15)が共通駆動部上に取り
込まれた状態にあるように,駆動制御手段(14)がその制御を行う構
成を記載したものであると解すべきである。
被告は本件訂正部分の第1の搬送部15又は第2の搬送部1,「()(
6を伸縮するために共通駆動部13を回動させるとは前記())()」,2
イ)①の具体的駆動機構について記載したものであると主張する。すa
なわち,第1の駆動軸(13C)を固定した上で共通駆動部(13)を
回動すると,第1の搬送部(15)が第1の多関節駆動部(11)によ
り一方向に伸縮されるという前記()イ)①に記載された部分を「第2a,
()()」1の搬送部15を伸縮するために共通駆動部13を回動させる
と言い換えたものであると主張する。また,本件訂正部分のうち「こ,
の共通駆動部(13)を回動させる制御中,第2の搬送部(16)又は
第1の搬送部(15)が共通駆動部(13)上に取り込まれた状態であ
るようにする制御」については,前記()イ)①の共通駆動部と同期し2a
て第2の駆動軸13Dに回転力を与えることにより,同駆動軸から第2
の多関節駆動部12に回転力が与えられ,第2の多関節駆動部12が第
2の固定軸13Bを中心として共通駆動部13の回転方向を打ち消す方
向に回動し,これにより第2の多関節駆動部12は静止状態を保持する
という部分を言い換えたものであると主張する。
しかしながら本件訂正部分は・・・制御には第1の搬送部1,,「,(
5)又は第2の搬送部(16)を伸縮するために共通駆動部(13)を
回動させる制御と,この・・・制御中,第2の搬送部(16)又は第1
の搬送部(15)が共通駆動部(13)上に取り込まれた状態であるよ
うにする制御とが含まれるものであって」と規定するだけであることか
らすれば,被告が主張するような構成のもの,例えば,共通駆動部13
の回転を打ち消す方向に第2の多関節駆動部12が回動し,これにより
多関節駆動部が静止状態を保持するという制御のものにまで限定する趣
旨ではないと解すべきである。
また,請求項7及び8は,被告が主張する構成を請求項として記載し
たものであるから,請求項7及び8を被告主張のように解することは当
,,然としても本件訂正部分を含む請求項1記載の本件訂正特許発明1を
被告主張のように限定して解することはできない。
さらに,前記()イ)④に記載した本件各特許発明に共通の作用効果2a
を奏するためには,被告主張のような具体的駆動機構すなわち実施例と
して記載された具体的な機構が必要となるわけではなく,本件訂正部分
を前記のように解したとしても,本件各特許発明に共通の作用効果を奏
することが可能であるから,この点からも本件訂正部分を被告主張のよ
うに限定して解すべき理由はない。
特許請求の範囲の記載は,明細書に記載された実施例等により具現さ
れている発明の構成に欠くことができない事項のみを記載することにな
ること(平成6年改正前の特許法36条5項2号)からすれば,明細書
に開示された実施例に限定して解釈することは相当ではない。
以上によれば,本件訂正部分は,特許請求の範囲の文言どおり,共通
()(),駆動部13を回動させて一方の搬送部15又は16を伸縮させ
この共通駆動部(13)の回動の際,他方の搬送部(16又は15)が
共通駆動部上に取り込まれた状態であるように,駆動制御手段(14)
が制御を行うという意味に解すべきである。
イ被告各製品が本件訂正部分の構成を充足するか。
弁論の全趣旨によれば,被告各製品において第3アーム(3a)が伸縮
するための制御は第3アーム3aを伸縮させるために第1アーム1,()(
1)及びこれと一体の第1の支軸(15)を回動させ,この際,第3アー
ム(3b)は第1アーム(11)上に取り込まれた状態となるように制御
されている。また,第3アーム(3b)が伸縮するための制御は,第3ア
ーム(3b)を伸縮させるために第1アーム(11)及びこれと一体の第
1の支軸(15)を回動させ,この際,第3アーム(3a)は第1アーム
(11)上に取り込まれた状態となるよう制御されていると認められる。
,「()」,「()そうすると被告各製品の第3アーム3a第1アーム11
及びこれと一体の第1の支軸(15」及び「第3アーム(3b」は,))
本件訂正部分の「第1の搬送部(15「共通駆動部(13」及び「第)」,)
2の搬送部(16」にそれぞれ当たるから,被告各製品は,本件訂正部)
分の構成を充足する。
なお,イ号物件のモータ部(33,23,30)は,第1アームと一体
の第1の支軸(15)と一体の棚板(24)に固定されていることから,
イ号物件の第2アーム(6a,6b)が第1アーム(11)の回動に伴い
連れ回りする点が,本件各特許発明の第1及び第2の制御方法ないし実施
例とは異なるものである。また,ロ号製品も,モータ部(30,23)が
(),,第1アーム11に固定されていることから第1アームの回動に伴い
第2アーム(6a,6b)が連れ回りするものである。しかし,本件明細
書の実施例のように,各モータを装置本体に固定するとの構成を採用する
,,,ことにより多関節駆動部が共通駆動部と連れ回りしないとしてもまた
「メンテナンス面及びモータ配線等において有利である(0039)」【】
としても,本件各特許発明は,モータ部の配置に関する特許発明ではない
から,本件明細書の開示を受けた当業者であれば,本件各特許発明の基本
となる構成を採用しながら,モータの配置に関してのみ,イ号物件のよう
に各モータを第1アームと一体に回動する一枚の棚板に固定するとの構成
を採用したとしても,本件各特許発明の技術的範囲に属しないとする理由
はない。
()小括4
以上によれば,本件訂正は未だ確定していないものの,訂正要件を満たす
ものであり,本件訂正特許発明1について被告が主張する無効理由は認めら
れず,かつ,被告各製品は,本件訂正特許発明1の技術的範囲に属するもの
である。
そうすると,本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされ
るべきものとは認められないから,特許法104条の3第1項に基づく被告
の無効の抗弁は認められない。
7本件特許発明1に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものとい
()えるか・・・その他の公知技術による無効理由争点5−4ないし争点5−6
()本件特許発明1が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術(乙111」
の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」に基づいて当業者が容易
に発明することができたものといえるか(争点5−4。)
ア乙11の1・2によれば,乙11雑誌には次のような記載がある。
)本文a
「。揺動アーム端とハンド開閉シリンダ側面とをコンロッドで連結する
・・・パイプアームは中空とし,中にハンド開閉シリンダのロッドを貫
通させる」。
)図1,図2及び図3b
「一方のハンドと,他方のハンドと,一方のハンドを一方向に伸縮す
るハンド開閉シリンダ及びパイプアームと,他方のハンドを一方向に伸
縮するハンド開閉シリンダ,パイプアーム及びコンロッドと,上記各ハ
ンド開閉シリンダとコンロッドを介して固定され,動力源である加減速
ロータリアクチュエータが設置された揺動アームとを有することを特徴
とするWアーム式ローディン装置」
イ前記アによれば,乙11雑誌には,次のような構成を有する乙11装置
が記載されていると認められる(以下「乙11装置の構成A」などとい’
う。。)
A’一方のハンドと,
B’他方のハンドと,
C’一方のハンドを一方向に伸縮するコンロッドと,
D’他方のハンドを一方向に伸縮するコンロッドと,
E’上記一方のコンロッドを回動自在に支持する固定軸と,他方のコンロ
ッドを回動自在に支持する固定軸と,揺動アームに回転力を与える動力
源である(揺動アームを揺動することによって,これに接合されたコン
ロッド,コンロッドに接合されたハンド開閉シリンダ,パイプアームを
動作させる)加減速ロータリアクチュエータと揺動アームの接合部分と
を有する揺動アームと,
F’揺動アームを揺動する加減速ロータリアクチュエータとを備えた,
G’一方のハンドと他方のハンドが高低差をもたず,かつ重ならない
H’ことを特徴とするWアーム式ローディン装置
なお,被告は,乙11装置のコンロッドとパイプアームの接合部分が
本件特許発明1の駆動軸(13C,13D)に相当する旨主張する。し
かし,乙11の1からは,上記のとおり,揺動アームを介して伝わる動
力のほか,コンロッドとパイプアームの接合部分に何らかの回転力が与
えられていることを認めることはできない。
ウ乙11発明と本件特許発明1の一致点及び相違点
)前記ア及びイによれば,乙11装置の構成A’C’及びD’は本件特a
許発明1の構成要件A,C及びDと一致する。
乙11装置の構成B’及びG’が本件特許発明1のB及びGと相違す
ることについては当事者間に争いがない。
)乙11装置の構成E’と本件特許発明1の構成要件Eについてb
本件特許発明1の構成要件Eにおける駆動軸(13C,13D)は,
多関節駆動部(11,12)に回転力を与えるものである。ところが,
前記ア及びイによれば,乙11装置の構成E’においては,加減速ロー
タリアクチュエータと揺動アームの接合部分が動力を与えている対象
は,揺動アームである。確かに,乙11装置においては,加減速ロータ
リアクチュエータと揺動アームの接合部分に回転力が与えられることに
よって,揺動アームを介して被告が多関節駆動部の一つであると主張す
るコンロッドに駆動力が与えられる。しかし,コンロッドが揺動アーム
の固定軸から受ける力は回転力ではない。そうすると,乙11装置の構
成要件E’は,多関節駆動部に回転力を与える駆動軸を備えるものでは
ない。
したがって,乙11装置の構成E’は本件特許発明1の構成要件Eと
相違する。
)乙11装置の構成F’と本件特許発明1の構成要件Fについてc
本件特許発明1の構成要件Fは,その特許請求の範囲の文言から,共
通駆動部に回転力を与える駆動制御装置のみならず,多関節駆動部(1
1,12)に回転力を与える駆動装置をも有するものである。
前記ア及びイによれば,乙11装置においては,揺動アームに動力を
与える駆動制御装置(加減速ロータリアクチュエータ)は存在するが,
被告が多関節駆動部(11,12)に相当すると主張するコンロッドに
回転力を与える駆動制御装置が存在するとは認められない。
したがって,乙11装置の構成F’は本件特許発明1の構成要件Fと
相違する。
)小括d
以上によれば,本件特許発明1と乙11装置との相違点は,次の3点
である。
①本件特許発明1においては,第2の搬送部(16)が第1の搬送部
(15)の回転面に対して上又は下側に位置するように高さを規定さ
れているのに対し,乙11装置においては,他方のハンドが一方のハ
ンドの回転面と同じ高さに規定されている点(構成要件B,G関係。
以下,本争点において「相違点1」という)。
②本件特許発明1においては,駆動軸(13C,13D)によって回
(,),転力を与えられる対象が多関節駆動部1112であるのに対し
乙11装置においては,加減速ロータリアクチュエータと揺動アーム
の接合部分によって回転力を与えられる対象が被告が共通駆動部の一
(。,部に相当すると主張する揺動アームである点構成要件E関係以下
本争点において「相違点2」という)。
③本件特許発明1においては,共通駆動部に回転力を与える駆動制御
装置のみならず,多関節駆動部(11,12)に回転力を与える駆動
装置をも有するのに対し,乙11装置においては,揺動アームに動力
を与える駆動制御装置(加減速ロータリアクチュエータ)は存在する
ものの,被告が多関節駆動部(11,12)に相当すると主張するコ
ンロッドに回転力を与える駆動制御装置が存在するとは認められない
点(構成要件F関係。以下,本争点において「相違点3」という)。
エ相違点の評価
)相違点1についてa
相違点1に関して,本件特許出願前に公開されたウエハ搬送装置に関
,「()する乙4公報2頁右下欄9行ないし13行にはウエハ保持部28
と(33,回転プーリ(24)と(29,第1のアーム部材(14)))
と第2のアーム部材(21・・・は互いに取付け位置を上下方向にず)
らせて取付けてあり,互いの干渉をなくしている」との記載がある。。
しかしながら,乙11装置はローディング装置であるのに対し,乙4
発明は,ダブルアーム型のウエハ搬送装置に関する発明であり,技術分
野を異にする。そして,乙4発明における両アームの高低差は,次のよ
うな乙4発明の属するウエハ搬送装置の分野における要請に基づいて用
いられる構成である。すなわち,乙4発明の属するウエハ搬送装置の分
野においては,1台の搬送装置でウエハ処理工程に応じた複数の処理室
等にウエハを移載する必要があるから,アームの伸縮運動のほか装置全
体の旋回運動も必要である。その際,装置の専有面積を小さくするため
にアームを小さく畳む必要がある。さらに,ウエハを出し入れする複数
の処理室が異なる雰囲気下におかれている(例えば真空状態)ため,各
処理室のウエハの受渡し用開口部が狭くなっており,そのような狭い空
間からアームを処理室に挿入する必要があるためアームの形状が複雑に
なる。このようにアームの形状が複雑であり,かつ,旋回運動の際,ア
ームを畳む必要があるため,一方のアームが他方のアームの動きに干渉
しないよう工夫を施す必要がある。乙4発明の両アームの高低差は,こ
,,のように両アームを小さく畳む際や両アームが異なる動きをする際に
一方のアームが他方のアームの動きを干渉しないために設けられたもの
である(乙4公報の第1図,第4図,乙4公報2頁右下欄9行ないし1
3行。これに対し,乙11の1によれば,乙11装置においては,一)
方のハンドが他方のハンドの動きを干渉する関係にはないのである。し
たがって,乙11装置において乙4発明における両アームに高低差を設
ける構成を組み合わせることは本件特許出願当時,当業者が容易に想到
し得たとは到底いえない。
)相違点2についてb
乙11装置の相違点2に係る構成を本件特許発明1の構成に変更する
場合には,装置全体の構成を変更する必要がある。また,乙11装置の
構成を本件特許発明1の構成に変更する動機付けがあることも,これを
認めるに足りる証拠はない。
)相違点3についてc
乙11装置においては,揺動アームに動力を与えることによってコン
ロッドが駆動する構成になっているから,コンロッドに回転力を与える
駆動制御装置を設ける必要がない。したがって,乙11装置に本件特許
発明1の構成要件Fを組み合わせることには何らの動機付けも存在しな
い。
オ以上によれば,本件特許出願当時,当業者が,乙11装置から本件特許
発明1を想到することが容易であったとは到底認められない。
()本件特許発明1が合衆国特許4678393(乙12の1)に記載された2
発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点
5−5。)
ア乙12の1によれば,乙12公報には次のような記載がある。
)乙12の1の訳文6頁及び7頁(原文の3欄4行ないし29行)a
「搬入搬出機構11は,説明する機構で連続的に昇降するのに適する
支持部15を備える。支持部15は,それぞれ部分17,18で終端す
る対の外側に張り出した腕を有する。部分17,18はそれぞれ対のガ
イドロッド19,21を支持する。ガイドロッド19はその前端で第1
の把持装置22に固定しており,第1の把持装置22はエアシリンダ2
,。,4など適切な方法で順次開閉する対の顎状部材23を備える同様に
第2の把持装置25はガイドロッド21の外端で支持され,エアシリン
ダ27で操作する対の把持用の顎状部材26を備える内部に溝29図。(
5)が設けられているブロック28がガイドロッド19に固定されてい
る。同様のブロック31も同様の溝をもち,ガイドロッド19(判決注
:19は21の誤りである)に固定する」。。
「説明するように,支持部15に対して垂直に動くドライブメンバ3
2が備えられていて,支持部15が回転しないように保持されながら,
ドライブメンバ32は回転もする。ドライブメンバ32は対の外側に張
り出した腕をもち,腕がそれぞれブロック28,31の溝に収受される
各ピン33,34を支えるので,説明するようにロッド19,21と把
持具22,25が往復移動できる」。
)乙12の1の訳文10頁及び11頁(原文5欄5行ないし18行,4b
2行ないし55行)
「モータ47の電源を入れて操作サイクルを開始すると,球状カム5
6は図1に図示するようにドライブメンバ32を左回転させる。このと
きドライブメンバ32と支持部15はともにまだその上昇位置にある。
このドライブメンバ32の回転は,ピン33がブロック28とロッド1
9を移動させて,第1の把持具22をコンベア12と並ぶ第1位置まで
。,,後退するまで続く同時にピン34を担持する腕が移動しているので
ブロック31,ロッド21,第2の把持具25はワークステーション1
3と並ぶその第1外側位置まで移動する。これらの相対位置は図2に図
示するとおりである」。
「工作物が把持されると,表面カム57が第2のドライブメンバ21
と支持部15を再び上昇させる。この上昇が完了したら,表面カム57
が休止期に入り,ローラ型球状カム56が活動期に入る。このローラ型
球状カム56の活動期は,ドライブメンバ32を左回りに枢動させる。
この回転により,ブロック28,ロッド19,第1の把持具22は,コ
ンベア12と並ぶ第1位置から,工作物がワークステーション13に位
置する第2位置まで移動する。同時に,第2の把持具25がワークステ
ーション13と並ぶその第1位置から,コンベア14と並ぶその第2位
置まで移動する」。
)乙12の1の訳文12頁(原文6欄1行ないし6行)c
「2つの把持機構はそれぞれ互いに同調して操作しながらも,同時に
その間が全く妨げられないということを鑑みれば,この構成により最大
数の工作物を高速に処理できるのは容易に明らかであろう」。
イ)前記ア並びに乙12公報の第1図,第2図,第3図及び第5図によa
れば,乙12公報には,次のような構成を有する乙12発明が記載され
ていると認められる(以下「乙12発明の構成A」などという。’。)
A’左ガイドロッド(19)及び左顎部材(23)と,
B’右ガイドロッド(21)及び右顎部材(26)と,
’()(),C左ガイドロッド19を一方向に伸縮する左ブロック28と
D’右ガイドロッド(21)を一方向に伸縮させる右ブロック(31)
と,
E’左ブロック(28)の回動中心となる左ピン(33)と,右ブロッ
ク(31)の回動中心となる右ピン(34)とを有し,かつ,モータ
47からの動力をドライブメンバ(32)に伝える部材とを有するド
ライブメンバ(32)と,
F’第6図ないし第9図に図示された駆動機構とを備える
G’左ガイドロッド(19)及び左顎部材(23)と,右ガイドロッド
(21)及び右顎部材(26)とが高低差を有さず,かつ,重ならな

H’工作物搬入搬出移送機構
)被告は,被告作成の乙12の2に基づいて「左把持具(22)内にb,
あるクランク部材(221」及び「右把持具(25)内にあるクラン)
ク部材(251」が本件特許発明1の多関節駆動部に相当し「固定),
軸(222」及び「固定軸(252」が本件特許発明1の固定軸(1))
3A,13B)に相当し「左シリンダ(24)のロッド(241」,)
及び「右シリンダ(27)のロッド(271」が本件特許発明1の駆)
動軸(13C,13D)に相当するとも主張する。
しかしながら,乙12の2の「クランク部材(221「クランク)」,
部材251固定軸222固定軸252ロッド2()」,「()」,「()」,「(
41」及び「ロッド(271」が乙12公報に記載されていること))
を認めるに足りる証拠はない。また,被告の上記主張によれば「固定,
軸(222「固定軸(252「ロッド(241」及び「ロッド)」,)」,)
(271」がドライブメンバ(32)上に存在しないため,ドライブ)
メンバ(32)のみならず,両ブロック(28,31)及びガイドロッ
(,),「()」ド1921をも含めて本件特許発明1の共通駆動部13
に相当する旨の主張にならざるを得ないが,かかる主張が認められない
ことは,前記5()ウ),同エ)のとおりである。2bb
ウ乙12発明と本件特許発明1の一致点及び相違点
)乙12発明の構成B’及びG’が,本件特許発明1の構成要件B及びa
Gと相違することは当事者間に争いがない(以下,本争点において「相
違点1」という。。)
)乙12発明の構成E’及び本件特許発明1の構成要件Eについてb
本件特許発明1の特許請求の範囲の記載によれば,本件特許発明1に
おける駆動軸(13C,13D)が,多関節駆動部に回転力を与えるも
のであることは明らかである。
ところが,前記イによれば,乙12発明には,被告が多関節駆動部に
相当すると主張する左右ブロック(28,31)に回転力を与える部材
が,被告が共通駆動部に相当すると主張するドライブメンバ(32)上
に存在しないことは明らかである。
したがって,乙12発明は,少なくとも,構成E’において本件特許
発明1の構成要件Eと相違する(以下,本争点において「相違点2」と
いう。。)
エ容易想到性について
)相違点1a
乙12発明に,乙4発明,乙1発明,乙7発明のウエハ搬送装置に係
る発明と組み合わせて本件特許発明1の構成とすることが本件特許出願
当時,当業者にとって容易想到とはいえないことは,前記()エ)に記1a
載したと同様である。
)相違点2b
乙12発明の上記相違点に係る構成を本件特許発明1の構成に変更す
る場合には,装置全体の構成を変更する必要がある。また,乙12発明
の構成を本件特許発明1の構成に変更する動機付けがあることを認める
に足りる証拠もない。
オ以上によれば,本件特許出願当時,当業者が,乙12発明から本件特許
発明1を想到することが容易であったとは認められない。
()本件特許発明1が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲載3
された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか
(争点5−6)
ア乙14によれば,乙14雑誌には次のような記載がある。
)77頁本文a
「写真1はね,ちょっと変わった仕組みになってましてね,写真では
わからないんで,実際の構造とは若干違うけど,原理を図1に書いとき
ました.2本の腕が同一のベースの上に乗ってましてね,回しながらワ
ークに接近する腕を伸ばすわけです.こうすると,動作時間が短くなる
わけで,ロータリクランクプレス機械へのローディング・アンローディ
ングなどには,なかなか有効なんですな」.
)77頁図1の説明文b
「,.全体が回転しながらワーク位置に向かっているほうの腕が伸びる
・・・単にエアシリンダだけのものに比べ,作業時間は大幅に短縮でき
る」.
イ前記ア及び乙14雑誌の図1によれば,乙14雑誌には,次のような構
成を有する乙14装置が記載されていると認められる(以下「乙14装置
の構成A」などという。’。)
A’一方のアームと,
B’他方のアームと,
C’一方のアームを一方向に伸縮させる筒状アームと,
D’他方のアームを一方向に伸縮させる筒状アームと,
E’前記一方の筒状アームとの接合部と,他方の筒状アームの接合部とを
有するコの字型共通駆動部と,
F’コの字型共通駆動部を駆動する駆動制御手段とを備え,
G’一方のアーム及び他方のアームはコの字型共通駆動部の上部に縮める
ことができない構成になっている
H’産業用ロボット
ウ乙14装置と本件特許発明1の一致点及び相違点
)乙14装置の構成B’及びG’が本件特許発明1の構成要件B及びGa
と相違することは当事者間に争いがない(以下,本争点において「相違
点1」という。。)
)乙14装置の構成E’と本件特許発明1の構成要件Eについてb
乙14装置の構成E’には,本件特許発明1の多関節駆動部(11,
12)に回転力を与える駆動軸(13C,13D)に相当する部材が存
在しない点で本件特許発明1の構成要件Eと相違する(以下,本争点に
おいて「相違点2」という。。)
)乙14装置の構成F’と本件特許発明1の構成要件Fについてc
乙14装置の構成F’には,本件特許発明1の多関節駆動部(11,
12)を回動制御する駆動制御手段が存在しない点で本件特許発明1の
構成要件Fと相違する(以下,本争点において「相違点3」という。。)
エ容易想到性について
)相違点1a
乙14装置に,乙4発明,乙1発明,乙7発明のウエハ搬送装置に係
る発明と組み合わせて本件特許発明1の構成とすることが本件特許出願
当時,当業者にとって容易想到とはいえないことは,前記()エ)に記1a
載したと同様である。
)相違点2b
乙14装置における,本件特許発明1の多関節駆動部に相当する筒状
アームは,コの字型共通駆動部と独立して回動するものではないから,
筒状アームに回転力を与える軸を設けるという発想は生じない。
そうすると,本件特許出願当時,当業者が,乙14装置から多関節駆
動部に回転力を与える駆動軸を共通駆動部に設けるという本件特許発明
1を想到することが容易であったとはいえない。
)相違点3c
乙14装置は,本件特許発明1の多関節駆動部に相当する筒状アーム
は,コの字型共通駆動部と独立して回動するものではないから,筒状ア
ームを回動制御する駆動制御手段を設けるという発想は生じない。
そうすると,本件特許出願当時,当業者が,乙14装置から多関節駆
動部を回動制御する駆動制御手段を設けるという本件特許発明1を想到
することが容易であったとはいえない。
オ以上によれば,本件特許出願当時,当業者が,乙14装置から本件特許
発明1を想到することが容易であったとは認められない。
8本件特許発明2に係る特許が特許無効審判により無効とされるべきものとい
えるか(争点7。)
()本件特許発明2が特開平4−30447号公報(乙1)に記載された発明1
と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと
いえるか(争点7−1。)
ア乙1発明と本件特許発明2との対比は,本件特許発明2の構成要件Iに
ついての対比を除いて,前記5()に認定したとおりである。1
イ乙1発明と本件特許発明2の構成要件Iについて
)本件特許発明2の構成要件Iは「前記共通駆動部(13)の回転軸a,
を概略垂線とする平面において,該共通駆動部(13)が『く』の字型
」,「『』に屈曲されたアーム状を構成することを特徴とすることでありく
の字型に屈曲されたアーム状」といっても,どのようなものを「く」の
字型の範囲に含めるのか,特許請求の範囲からは一義的に明らかではな
いので,本件明細書の詳細な説明を参酌する。本件明細書には,構成要
件Iについて次のような記載がある。
①【0052(2)第2の実施例の説明】
【0056(15欄6行ないし15行)】
「第2の実施例では図10の共通駆動屈曲アーム33が『く』の字
型に屈曲されたアーム状を構成する。例えば,共通駆動屈曲アーム3
3が角度β°を有する。角度β°は第1の固定軸23Aと第2の固定
軸23Bと第1,第2の駆動軸23C,23Dの中心とを結ぶ二辺の
成す角度である。このようにすることで,当該多関節駆動部の旋回半
径を小さくすることができ,また,両フォーク35及び36を揃える
ことができる。このことから被搬送物を同一方向に伸縮させることが
できる」。
②【0069(17欄42行ないし44行)】
「その最大回動時には,図14(C)に示すようにフォーク36,
搬送アーム32及び共通駆動屈曲アーム33が並んだ状態になる」。
③図14(C)
第2の固定軸23Bと第1,第2の駆動軸23C,23Dの中心と
フラットフォーク36がほぼ一直線上に並んだ図が記載されている。
④【0074】
「,,、『』さらに本発明の第2の実施例によれば図9に示すようにく
。,の字型に屈曲された共通駆動屈曲アーム33が採用されるこのため
共通駆動屈曲アーム33上に両フォーク35及び36を取り込んだ状
態において・・・両フォーク35及び36を重なった状態に揃えるこ
とが可能となる。このことで,被搬送物30を同一方向に伸縮させる
ことが可能となる」。
⑤【0109(25欄18行ないし26行)】
「・・・また,本発明の他の装置によれば,共通駆動部が『く』の
字型に屈曲されたアーム状に構成される。このため,共通駆動部上に
第1,第2の搬送部を取り込んだ状態において,両搬送部を揃えるこ
とが可能となる。このことで,従来例に比べて装置の旋回半径を小さ
くすること,及び,被搬送物を同一方向に伸縮させることが可能とな
る。また,両搬送部の切り替え旋回時間が無用となり,被搬送物の入
れ替え時間の短縮化を図ることが可能となる。
)前記)の各記載によれば,本件特許発明2の構成要件Iの「共通駆ba
動部(13)が『く』の字型に屈曲されたアーム状を構成する」という
意味は,第1の固定軸13Aと第2の固定軸13Bと第1,第2の駆動
軸13C,13Dの中心(共通駆動部の回動中心)とを結んだ直線がく
の字型に屈曲されているアーム状の構成を意味すると解することができ
る。
)乙1公報の第1図及び第3図によれば,乙1発明の共通駆動部に当たc
る旋回台10は「く」の字型に屈曲されたアーム状のものではなく,,
円盤状の構成であり,この点で構成要件Iと相違することは明らかであ
る。すなわち,乙1発明の旋回台10においては,移し換えアーム30
の回動中心となる左リンク41,42の根元のピン(駆動軸43の先端
部)と,移し換えアーム20の回動中心となる右リンク41,42の根
元のピン(駆動軸43の先端部)が,回動中心の左右に2か所ずつ,回
動中心とを結んだ直線が略「X」字状になるように合計4か所設けられ
ていることからすれば,この円盤状の旋回台10を「く」の字型に屈曲
されたアーム状の構成に変更することは困難であるといわざるを得な
い。
したがって,乙1発明から本件特許発明2の構成要件Iの構成を想到
することが容易であるとは認められない。
)被告は,乙1公報の第3図には,旋回台10の回転中心点と図中左右d
の駆動軸43,43とを結ぶ線分が,くの字型に屈曲されていることが
示されていると主張する。しかし,乙1発明の左右のアームは,平行リ
ンク機構であり,旋回台10の回動中心と左右の駆動軸43の4点を結
ぶ線分が略「X」字状となるものであることからすれば,この乙1発明
から「く」の字状のアーム状の構成を想到することは困難であることは
上記のとおりであり,被告の主張は採用することができない。
()本件特許発明2が特開平5−109866号公報(乙7)に記載された発2
明と同一又は当該発明に基づいて当業者が容易に発明することができたもの
といえるか(争点7−2。)
前記5()に認定したとおり,本件特許出願当時,当業者が,乙7発明か3
ら本件特許発明1を想到することが容易であったとは認められないから,本
件特許発明1にさらに構成要件Iを付け加えた本件特許発明2についても同
様である。
()本件特許発明2が昭和60年9月1日発行の雑誌「自動化技術9(乙13」
1の1)に記載された「Wアーム式ローディン装置」及び特開平4−304
47号公報(乙1,特開昭63−288677号公報(乙4)ないし特開)
平5−109866号公報(乙7)のいずれかに基づいて当業者が容易に発
明することができたものといえるか(争点7−3。)
前記7()に認定したとおり,本件特許出願当時,当業者が,乙11装置1
から本件特許発明1を想到することが容易であったとは認められないから,
本件特許発明1にさらに構成要件Iを付け加えた本件特許発明2についても
同様である。
()本件特許発明2が合衆国特許4678393(乙12の1)及び特開平44
−30447号公報(乙1,特開昭63−288677号公報(乙4)な)
いし特開平5−109866号公報(乙7)のいずれかに記載された発明に
基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか(争点7−
4。)
前記7()に認定したとおり,本件特許出願当時,当業者が,乙12発明2
から本件特許発明1を想到することが容易であったとは認められないから,
本件特許発明1にさらに構成要件Iを付け加えた本件特許発明2についても
同様である。
()本件特許発明2が雑誌「自動化技術」1993年3月号(乙14)に掲載5
された装置に基づいて当業者が容易に発明することができたものといえるか
(争点7−5。)
前記7()に認定したとおり,本件特許出願当時,当業者が,乙14装置3
から本件特許発明1を想到することが容易であったとは認められないから,
本件特許発明1にさらに構成要件Iを付け加えた本件特許発明2についても
同様である。
9本件特許発明2の無効理由が本件訂正により解消されるか(争点8。)
()本件特許発明2の無効理由が本件訂正によって解消されるか(争点8−1
1。)
本件特許発明2が進歩性を有しない発明とはいえないことは前記認定のと
おりであるものの,仮に何らかの理由により乙1発明等から容易に想到し得
ると判断されるとしても,本件訂正特許発明1について述べたのと同様の理
由により,本件訂正特許発明2の無効理由も解消されるべきことは,前記6
に認定判断したとおりである。
()本件訂正請求が訂正要件を満たすといえるか等のその余の争点(争点8−2
2及び争点8−3)についても,本件訂正特許発明1について述べたのと同
様であり,本件訂正は訂正要件を満たす適法なものである。また,被告各製
品が本件訂正特許発明2の技術的範囲に属することも前記に認定したところ
から明らかである。
10本件明細書の発明の詳細な説明の記載が改正前特許法36条4項及び5項
2号の規定する要件を満たしているか(争点9。)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件訂正後の請求項1の
記載と比べ,本件各特許発明の特徴的部分である,搬送部の伸縮のための制御
についての記載がないことから「発明の構成に欠くことができない事項のみ,
を記載した項」とはいえず,改正前特許法36条5項2号に違反にしていると
みることも可能であるとしても,その無効理由は本件訂正により解消されてい
るものというべきである。また,被告が主張する改正前特許法36条違反の無
効理由がいずれも理由がないことは,次に述べるとおりである。
()共通駆動部の左右のアームを単一部材で構成する旨の記載の欠如と改正前1
特許法36条4項及び5項2号違反について
前記5()ウ)認定のとおり,本件各特許発明の特許請求の範囲の請求項2b
1及び6の記載及び本件明細書から,本件各特許発明の共通駆動部は,回動
中心の左右のアーム全体が一体的に回動される部材であると解される。
そして,本件明細書の実施例において開示されている「共通駆動部」は,
いずれも回動中心の左右のアームが単一の部材であり,全体が一体的に回動
される部材であるから,本件明細書について改正前特許法36条4項の規定
違反がないことは明らかである。
,,「」,また本件明細書の請求項1及び6においては共通駆動部について
左右のアームが一体的に回動されるとの記載はないものの「共通駆動部」,
の技術的意義が一義的に明らかではないことから,その発明の詳細な説明を
参酌してこれを解すべきことは前記のとおりであり,その「共通駆動部」の
技術的意義として,左右のアームが一体的に回動制御される部材であると解
すべきことも前記のとおりである。したがって,本件明細書の特許請求の範
囲の請求項1及び6における「共通駆動部」についての記載が,被告主張の
理由により,改正前特許法36条5項2号に違反するものとまでいうことは
できない。
()旋回運動の回転中心と伸縮運動の原点を一致させる構成の記載の欠如と改2
正前特許法36条4項及び5項2号違反について
前記5()ウ)③認定のとおり,本件各特許発明に係る搬送装置が,旋回1c
運動の回動中心と伸縮運動の原点を一致させた装置であると解することはで
きない。したがって,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び6の記載
について,改正前特許法36条5項2号違反があるということはできない。
また,本件明細書の実施例においては,旋回運動の回動中心と伸縮運動の
原点を一致させた例が示されているのであるから(図6ないし図8,図13
ないし図15【0069】等,本件明細書において,この点について,,)
改正前特許法36条4項違反がないことは明らかである。
()収納角度γを要しない構成とすることの作用効果(切り替え旋回時間が不3
要であるという作用効果)の記載の欠如と改正前特許法36条4項違反につ
いて
)本件明細書には,次のような記載がある。a
①【0012「このため第2の多関節搬送ロボットでは収納角度γを】
。,,設けなくてはならないしかし・・・被搬送物50の入れ替え時間や
第1,第2の搬送部1A,1Bの切り換え時間が増加するという問題が
ある。本発明は,かかる従来例の問題点に鑑み創作されたものであり,
,,・・・その構造を工夫し被搬送物の入れ替え時間の短縮化を図ること
及び搬送先の装置のスループットの向上を図ることが可能となる・・
・」
②【0029「このため,本発明の第1の多関節搬送装置に比べて,】
旋回半径は多少増加するが,共通駆動部13上に第1の搬送部15及び
第2の搬送部16を取り込んだ状態において,従来例のような収納角度
,。γを生じることなく両搬送部15及び16を揃えることが可能となる
このことで,被搬送物を同一方向に伸縮させることが可能となる」。
【】「,,0030これにより本発明の第1の多関節搬送装置に比べて
第1,第2の搬送部15,16の切り換え旋回時間が無用となり,被搬
送物の入れ替え時間の短縮化を図ることが可能となる」。
)前記)によれば,本件明細書には収納角度γを要しない構成とするこba
との作用効果(切り替え旋回時間が不要であるという作用効果)が記載さ
れていると認められ,この点に関する被告の主張は採用することができな
い。
()衝突防止の作用効果の記載の欠如と改正前特許法36条4項違反について4
衝突防止の作用効果が明記されていなければ当業者が本件各特許発明を実
施できないとはいえないから,当該記載がなければ改正前特許法36条4項
に違反する旨の被告の主張は失当である。
()小括5
以上によれば,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び6並びに発明
の詳細な説明の記載が改正前特許法36条4項及び5項2号の規定する要件
を満たしていない旨の被告の主張は理由がない。
11損害の額(争点10)について
()被告各製品の売上額について1
ア被告の平成15年3月1日から平成16年2月29日までの販売実績
は,次のとおりである(甲18。)
)ウエハ搬送機46億4999万7000円a
)ガラス基板搬送機18億7032万4000円b
)モータ制御機器1億0172万5000円c
)部品・修理他6億7921万2000円d
)商品1730万6000円e
イ弁論の全趣旨によれば,被告は,平成9年1月31日から平成16年2
月16日までの間に,被告各製品について,少なくとも次のとおり製造な
いし販売し,売上げを得ていることが認められる。
なお,原告は,被告各製品の売上げが上記範囲にとどまることについて
争っているものの,同売上げが上記範囲を超えることを認めるに足りる証
拠はない。
)イ号物件及びロ号物件(合計5億3086万9435円)a
①RR468(イ号物件)
15台,売上金合計1億0046万3000円
②RR469(イ号物件)
54台,売上金合計3億6271万6200円
③RR421(ロ号物件)
9台,売上金合計6769万0235円
)未完成イ号物件及び未完成ロ号物件のうち国内販売分(合計6998b
万8000円)
①未完成イ号物件(RR468のみ)
13台,売上金合計6998万8000円
②未完成ロ号物件(RR421,RR431)
なし
)未完成イ号物件及び未完成ロ号物件のうち海外輸出分(合計2億55c
68万9964円)
①未完成イ号物件(RR468のみ)
1台,売上金合計594万円
②未完成ロ号物件
49台,売上金合計2億4974万9964円(うち9台4574
万9964円がRR421,うち40台2億0400万円がRR43
1)
()実施料率について2
ア被告は,本件各特許発明の共通駆動部(13)に相当する第1アーム
(11)を備えた製品を「ブーメランアームロボット」と称し「独自,
のアーム構造(ブーメラン構造)により小さな旋回径で,ロングリーチ
を実現「独自のアーム機構によりアーム関節を減らし,高剛性を実。」,
現「ダブルアームでありながら,上下同じシンプルなリスト形状の。」,
ため,リスト部の高剛性化とコストダウンを実現」と宣伝広告し(甲。
15,他の製品との比較でスループットが高く,専有面積が小さい旨)
宣伝広告を行っている(甲6。)
イ平成16年8月28日付けの日本経済新聞に,次のような記事が掲載
された(甲14。)
「ローツェ・・・はウエハー・ガラス基板の製造工程に不可欠な搬送
装置最大手。半導体や液晶パネルの需要増に伴う電機・半導体メーカー
の設備投資拡大で,フル操業体制に入っている。二〇〇五年二月期は売
上高は前期比三四%増の九十八億八百万円,経常利益も同二・五倍の十
億千九百万円にそれぞれ増加する見通しだ・・・液晶パネル向けの主。
力製品となるのは第七世代と呼ばれる・・・RR430シリーズ。「」
三月下旬に韓国サムスン電子から総額百七十五億ウォン(約十七億円)
で同ロボットの搭載装置を受注した。韓国子会社のローツェシステムズ
・・・を通じて順次納入を始めており,本社工場では生産や最終調整作
業に追われている」。
ウ平成16年9月16日付け日刊工業新聞には,次のような記事が掲載
された(甲17。)
「液晶パネルの大型化に伴い『第7世代』といわれる一辺が2メー,
トルを超す大型ガラス基板対応の搬送機を開発。この搬送機で韓国サム
スン電子から大量受注を獲得し,勢いに拍車がかかっている・・・同。
社の搬送ロボットはアーム部分に回転機構を備える独自の技術を採用,
,。第7世代を超える大型ガラス基板でも高精度高速搬送できるのが特徴
これがサムスン電子から高く評価された。かつてサムスンからは『第5
世代」の搬送機の受注実績がある。だが,過去の取引関係に頼れるほ』
ど甘くはない『当社の技術力が認められた証拠・・・と手放しで喜。』
ぶ」。
なお,RR430シリーズは,ロ号物件であるRR431とシングル
アームロボットのRR430の2種類である(甲16。)
エ社団法人発明協会発行,発明協会研究センター編「実施料率〔第5」
版(甲20)113頁以下には,半導体製造装置技術を含む特殊産業〕
用機械の分野に関して次のような記載がある。
「実施料率の平均値については,平成4年度∼平成10年度は,イニ
シャル有りが5.2%,イニシャル無しが6.5%であり,昭和63年
度∼平成3年度と比較すると,イニシャル有りが5.1→5.2%,イ
ニシャル無しが4.7%→6.5%と,いずれも上昇しており,特にイ
ニシャル無しの伸びが大きい。平成4年度∼平成10年度は,実施料率
8%以上の契約が,イニシャル有りについては5件(0.7件/年,)
イニシャル無しについては7件(1.0件/年)あった」。
「なお,イニシャル有りの実施料率が30%の契約1件の技術内容は
半導体製造装置に関するものであり,イニシャル無しの実施料率が50
%の契約2件の技術内容は半導体製造装置に関するものと薄膜形成技術
に関するものであった」。
また,図2−12−2として,特殊産業用機械(イニシャル無)の実
施料率別契約件数が棒グラフで示されており,これによると実施料率5
%台の契約が最も多いことが認められる。
オ以上の認定事実によれば,被告は,本件各特許発明における特徴を積
極的に宣伝して被告各製品を販売しているといえる。また,本件各特許
発明は,ウエハ搬送装置全体についての発明であり,被告各製品全体が
その技術的範囲に属するものである。さらに,本件の技術分野における
実施料率としては,上記のイニシャルなしの平均実施料率6.5%が実
施料率50%の契約2件を含んだ平均値であるのに対し,実施料率5%
が最頻値であることからすれば,本件各特許発明のウエハ搬送装置の実
施料率は,少なくとも5%を下らないものと認めるのが相当である。
()原告が本件各特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額3
被告各製品のうち未完成イ号物件及び未完成ロ号物件の海外輸出分は本
件特許権を侵害しないから,原告が実施に対し受けるべき金銭の額の算定
の基礎になるのは,被告各製品の売上げのうち完成品の売上げと,未完成
イ号物件のうち国内販売分の売上げの合計である6億0085万7435
円である。
そうすると,原告が,本件各特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額
は3004万2871円(6億0085万7435円×5%,ただし小数
点以下切り捨て)を下らないものと認められる。
第5結論
以上によれば,原告の請求は,別紙物件目録記載の各製品の製造,譲渡等の
差止め,廃棄並びに損害賠償金3004万2871円及びこれに対する平成1
5年8月19日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度
で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却す
る。仮執行宣言については,主文第3項についてこれを認め,その余について
は相当ではないのでこれを却下する。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官設樂隆一
裁判官古河謙一
裁判官吉川泉
別紙
物件目録
1製品名RR468
2製品名RR469
3製品名RR421
4製品名RR431
ただし,その構成及び図面は,別紙イ号物件説明書及びロ号物件説明書記載のと
おりである。
(別紙イ号物件説明書及びロ号物件説明書(ロ号物件斜視図を含む)省略)
(別紙「特許公報(特許第2580489号」省略))

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