弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被上告人の控訴を棄却する。
     控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人勝部可盛の上告理由について
 一 原審が適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
 1 訴外D有限会社(以下「訴外会社」という。)は、昭和五三年一一月以来被
上告人から合計三五〇〇万円に及ぶ融資を受け、その担保として訴外A・(以下「
A」という。)所有にかかる松江市a町字bc番雑種地一八九七平方メートル(以
下「本件土地」という。)に根抵当権を設定することとし、訴外会社代表者Eが権
限なくしてAを代理し、昭和五四年八月二〇日被上告人との間に恣に本件土地につ
き極度額四〇〇〇万円、債権の範囲金銭消費貸借取引等、債務者訴外会社なる根抵
当権設定契約(以下「本件根抵当権」という。)を締結し、同年一一月一〇日その
旨の登記手続を経由した。
 2 被上告人は、本件根抵当権の実行として、昭和五六年一〇月一六日本件土地
につき松江地方裁判所に競売の申立をなし、昭和五七年三月二三日自ら本件土地を
代金九五一〇万円で買受けの申出をし、同月二六日売却許可決定を受け、同年四月
二二日同裁判所に右代金を納付し、翌日本件土地につき右売却を原因とする所有権
移転登記を受け、同年六月一七日被担保債権に対する弁済金として売却代金から四
一二三万二三九一円の交付を受けた。
 3 訴外Aは、昭和五三年六月一二日公正証書遺言により、本件土地を含む財産
全部を長男である上告人に包括遺贈したが、前記競売手続中の昭和五七年二月二八
日に死亡した。
 二 上告人は、原審において、本件根抵当権は無効であるから、被上告人が本件
土地の売却代金から弁済金を受け取るべき権利はなく、したがつて被上告人は右弁
済金を法律上の原因なく不当に利得したから、内金四〇〇〇万円の返還を求める旨
を請求原因事実として主張し、被上告人が争つたところ、原審は、これに対し前記
の事実関係に基づいて、次のような判断を示し、上告人の請求を認容した第一審判
決を取り消し、上告人の請求を棄却した。
 1 根抵当権の実行としての不動産競売において、競売を申し立てた根抵当権者
が買受人となつた場合でも、代金の納付による買受人の不動産の取得は、民事執行
法一八四条の規定により、根抵当権の不存在によつて妨げられないものと解される
から、上告人は、昭和五七年四月二二日被上告人が代金を納付した時に本件土地の
所有権を喪失したものといわなければならない。
 2 ところで、債務者が権限なくして不動産の所有者である第三者を代理し、債
権者に対する自己の債務の担保として、右不動産に根抵当権を設定した場合におい
て、債権者の根抵当権実行による競売の結果、第三者が不動産の所有権を喪失し、
債権者がその売却代金から弁済金の交付を受けて被担保債務が消滅したときは、法
律上の原因なくして第三者の不動産により利得したものは、債務者であつて債権者
ではない。
 3 してみれば、第三者である上告人が債権者たる被上告人に対し不当利得とし
て前記弁済金の返還を求める本訴請求は失当としてこれを棄却すべきである。
 三 しかしながら、原審の右1の判断は首肯できるが、2、3の判断はにわかに
これを是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 債権者が第三者所有の不動産のうえに設定を受けた根抵当権が不存在であるにも
かかわらず、その根抵当権の実行による競売の結果、買受人の代金納付により右第
三者が不動産の所有権を喪失したときは、その第三者は、売却代金から弁済金の交
付を受けた債権者に対し民法七〇三条の規定に基づく不当利得返還請求権を有する
ものと解するのが相当である。けだし、右債権者は、競売の基礎である根抵当権が
存在せず、根抵当権の実行による売却代金からの弁済金の交付を受けうる実体上の
権利がないにもかかわらず、その交付を受けたことになり、すなわち、その者は、
法律上の原因なくして第三者に属する財産から利益を受け、そのために第三者に損
失を及ぼしたものというべきだからである。
 したがつて、原審は、これと異なる見解のもとに上告人の被上告人に対する不当
利得返還請求権を排斥したものであつて、民法七〇三条の解釈、適用を誤つたもの
といわざるをえず、右違法が判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、
この違法をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、原審の適法
に確定した前記事実関係に照らすと、右説示に徴し、上告人の本訴請求は理由があ
るから、上告人の請求を認容した第一審判決は正当であり、被上告人の控訴は理由
がなくこれを棄却すべきものである。
 よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、八九条に従い、裁判官
全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奧   野   久   之
            裁判官    牧       圭   次
            裁判官    島   谷   六   郎
            裁判官    藤   島       昭
            裁判官    香   川   保   一

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