弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

判決 平成14年5月8日 神戸地方裁判所 平成14年(ワ)第145号損害賠
償請求事件
主文
1被告Aは,原告に対し,80万円及びこれに対する平成12年2月24日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告Bは,原告に対し,700万円及びこれに対する平成11年12月1日
から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3訴訟費用は,被告らの負担とする。
4この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨
第2事案の概要
1請求原因
(1)被告らに共通する請求原因
Cは,東京都千代田区a町b丁目c番d号に本店を置き,金融等を目的と
する株式会社Dの実質的経営者として同社の業務全般を統括掌理していた。被告A
は同社の室長兼営業部長として,被告Bは同社の営業次長として,それぞれ自ら同
社の営業活動に従事する傍ら,営業社員を指揮していた。Eは,同社の営業社員と
して,C及び被告らの指揮下に稼働していた。
C,E及び被告らは,顧客から株式購入代金又は株式買付資金融資の担保
金等の名目で現金をだまし取ることを企てた。
(2)被告Aに対する請求原因
C及び被告Aは,Eらと共謀の上,平成12年2月中旬ころ,原告に電話
をして,真実は原告のために株式を買い付け,株式買付資金を融資し,又は,保有
株式を譲渡する意思も能力もないのに,これがあるかのように装い,被告Aが,
「原告さん,カテナの株どうですか。850円で買っていたのがあるが,どうしま
す。明日ストップ高するから買っておいたらどう」などと嘘を言い,原告にDが原
告から受領した金員及び原告に融資する金員で株式を買い付けるものと誤信させ,
その結果,原告を欺いて,同月24日,F銀行G支店のD名義の普通預金口座で,
原告から株式会社購入代金等の名目で現金70万円の交付を受け,もってこれを詐
取した。
C及び被告Aの上記行為は,民法709条の不法行為に該当し,原告の訴
訟代理人弁護士に対する弁護士費用10万円も同不法行為と相当因果関係のある損
害である。
よって,原告は被告Aに対し,80万円及びこれに対する平成12年2月
24日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求
める。
(3)被告Bに対する請求原因
C及び被告Bは,Eらと共謀の上,別表記載のとおり,平成11年5月中
旬ころから11月ころまでの間,前後7回にわたり,原告に電話をする等し,原告
に対し,真実は,原告のために株式を買い付け,株式買付資金を融資し,又は,保
有株式を譲渡する意思も能力もないのに,これがあるかのように装い,別表の欺罔
文言欄記載のとおり,原告から受領した金員及び原告に融資する金員で株式を買い
付ける等と嘘を言い,原告にその旨誤信させ,その結果,原告を欺いて,同年5月
13日から12月1日までの間,前後7回にわたり,H銀行I支店のD名義の普通
預金口座外1か所で,原告から,株式購入代金等の名目で現金合計570万円の交
付を受け,もってこれを詐取した。
C及び被告Bは,Eらと共謀の上,平成11年6月上旬ころ,原告に電話
をし,原告に対し,真実は原告のために株式を買い付け,株式買付資金を融資し,
又は,保有株式を譲渡する意思も能力もないのに,これがあるかのように装い,E
が「原告さん,Jの株がいいですよ」「今回は,担保金は,一部と同じ2割の70
万円でいいわ」等と嘘を言い,原告に,Dが原告から受領した金員及び原告に融資
する金員で株式を買い付けるものと誤信させ,その結果,原告を欺いて,同月10
日,H銀行I支店のD名義の普通預金口座に,原告から株式購入代金等の名目で合
計170万円の現金の交付を受け,もってうち70万円を詐取した。
上記各行為はいずれも民法709条の不法行為に該当する。
原告が訴訟代理人弁護士に支払う弁護士費用の内60万円は上記各不法行
為と相当因果関係を有する。
よって,原告は,被告Bに対し,上記合計700万円及びこれに対する最
後の不法行為時である平成11年12月1日から支払済みまで,民法所定の年5分
の割合による遅延損害金の支払いを求める。
2被告Aの認否
請求原因(1),(2)は否認する。
被告Aの関与は極めて限定的なものであった。原告はEが担当していた顧客
であったが,被告Aは,Eに対して指揮命令をする上司部下の関係ではなかった。
被告Aは原告に一度電話をしたことがあるが,Eが属していた営業グループ
の責任者Kの手が空かないために,Eから,原告との電話応対を頼まれ,Eが持っ
てきたメモに書かれていた連絡事項等を,業務のAですと名乗って,5分未満話し
たに過ぎない。
以上の次第で,被告Aが,原告に対し,カテナの株を勧誘した事実はない。
3被告Bの認否反論
請求原因(1)は認める。
請求原因(3)の各詐欺の内,別表記載の6の事実については,自分が直接原告
に入金させているので認めるが,その余の詐欺については否認する。
もっとも,個人として着服したわけではなく,Dの社員として行った詐欺で
あり,給与として,顧客入金額の1パーセントを歩合給として受け取っているの
で,上記180万円の1パーセントに当たる1万8000円については弁済義務を
認めるが,それ以上を支払うことはできない。
また,原告に対しては,自分の直接の上司であるL部長が,原告との間の和
解成立により損害を賠償しているので,自分が和解金を支払うと二重払いになる。
第3争点に対する判断
1被告Aに対する請求
(1)証拠(甲1ないし7)及び弁論の全趣旨によれば,被告Aに対する請求原
因事実(平成12年2月24日の70万円の詐欺)を認めることができる。
(2)これに対し,被告Aは,原告はEの担当する顧客であったが,被告AはE
を指揮命令する関係になかったこと,Eに頼まれて,同人の持ってきたメモに書か
れていた連絡事項を原告に対し電話で告げたに過ぎないことなどを理由に,自己の
関与の程度は極めて限定的であったと主張し,原告に対してカテナの株を勧誘した
事実を否認する。
しかしながら,被告Aは,検察官に対する供述調書(甲6,7)におい
て,原告に電話をしてカテナの株を勧誘し,70万円を詐欺した旨明確に認める供
述をしている。もっとも,被告Aは,上記検察官に対する供述調書(甲6,7)に
ついて,あらかじめワープロで作成された調書を脅迫によって押しつけられた旨弁
解するが,そのような事実を認めるに足りる証拠はない。かえって,上記各検察官
調書のいずれにも被告Aの署名及び指印がなされていること,甲7号証について
は,調書の内容を読み聞かせられた後の追加供述まで記載されていること,被告A
の刑事事件判決(甲1)には,被告Aが上記各供述調書の任意性を争ったり,本件
不法行為を含む犯罪事実を否認して争ったりした形跡がないこと等に照らすと,上
記各検察官調書は被告Aの意思に基づいて作成されたものと認めることができる。
また,証拠(甲1,4ないし9)によれば,被告らの不法行為は,Dを舞
台とした組織的かつ大規模な犯罪であって,被告Aは,Dの営業部長として,その
ような組織ぐるみの犯罪について十分認識していたと認められるから,被告Aの原
告に対する電話による勧誘が1回限りであり,かつ,Eに頼まれて行ったものであ
るとしても,被告Aとしては,それが不法行為に当たることは十分認識していたと
推認できる。
以上によれば,被告Aの上記主張を採用することはできない。
(3)そして,原告が訴訟代理人弁護士(ただし,平成14年3月20日に辞任
した)に支払う弁護士費用の内10万円の範囲で,被告Aによる不法行為と
相当因果関係のある損害と認めることができる。
(4)よって,被告Aは原告に対し,上記損害額の合計80万円及びこれに対す
る不法行為日である平成12年2月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割
合による遅延損害金の支払義務を負う。
2被告Bに対する請求
(1)証拠(甲1ないし5,8ないし10)によれば,被告Bに対する請求原因
事実(別表記載の1ないし7の各詐欺及び平成11年6月上旬ころの詐欺。被害額
合計640万円)を認めることができる。
(2)これに対して,被告Bは,別表記載の6の詐欺の事実についてのみ認め,
それ以外の詐欺の事実については,自己が直接関与していないことを理由に否認す
る。しかしながら,被告Bに対する刑事事件の判決(甲1)において,本件全請求
原因事実を含む犯罪事実が認定されたにもかかわらず,同判決に対して被告Bが控
訴せず,被告Bに対する関係で同判決が確定していること(甲10)に照らすと,
上記弁解を採用することはできない。
また,被告Bは,原告に対する詐欺について,Dの社員として行った詐欺
であることを理由に,歩合給として受け取った1パーセントの範囲しか弁済義務が
ない旨主張するが,法律上抗弁たり得ない主張であって,失当である。
さらに,被告Bは,被告Bの直接の上司であるL部長が,原告との間の和
解成立により損害を賠償している旨主張するが,かかる事実を認めるに足りる証拠
はない。
(3)そして,原告が訴訟代理人弁護士(ただし,平成14年3月20日に辞任
した)に支払う弁護士費用の内60万円の範囲で,被告Bの上記各不法行為と相当
因果関係のある損害と認めることができる。
(4)よって,被告Bは原告に対し,上記損害額の合計700万円及びこれに対
する最後の不法行為時である平成11年12月1日から支払済みまで民法所定の年
5分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
3結論
以上の次第で,原告の請求はいずれも理由がある。
神戸地方裁判所第4民事部
裁判官太田敬司

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛