弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人千葉恒久,同亀井時子,同浅井通泰の上告受理申立て理由について
1本件は,被相続人である預金者が死亡し,その共同相続人の一人である被上
告人が,被相続人が預金契約を締結していた信用金庫である上告人に対し,預金契
約に基づき,被相続人名義の預金口座における取引経過の開示を求める事案であ
る。
2原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)Aは被上告人の父であり,Bは被上告人の母である。Aは平成17年11
月9日に,Bは平成18年5月28日に,それぞれ死亡した。被上告人はA及びB
の共同相続人の一人である。
(2)平成17年11月9日当時,Aは上告人a支店において1口の普通預金口
座と11口の定期預金口座を有しており,Bは同支店において1口の普通預金口座
と2口の定期預金口座を有していた。
(3)被上告人は,上告人に対し,A名義の上記各預金口座につき平成17年1
1月8日及び同月9日における取引経過の開示を,B名義の上記各預金口座につき
同日から平成18年2月15日までの取引経過の開示を,それぞれ求めたが,上告
人は,他の共同相続人全員の同意がないとしてこれに応じない。
3預金契約は,預金者が金融機関に金銭の保管を委託し,金融機関は預金者に
同種,同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから,消費寄
託の性質を有するものである。しかし,預金契約に基づいて金融機関の処理すべき
事務には,預金の返還だけでなく,振込入金の受入れ,各種料金の自動支払,利息
の入金,定期預金の自動継続処理等,委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務
等」という。)の性質を有するものも多く含まれている。委任契約や準委任契約に
おいては,受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義
務を負うが(民法645条,656条),これは,委任者にとって,委任事務等の
処理状況を正確に把握するとともに,受任者の事務処理の適切さについて判断する
ためには,受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解され
る。このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であ
り,預金口座の取引経過は,預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したもの
であるから,預金者にとって,その開示を受けることが,預金の増減とその原因等
について正確に把握するとともに,金融機関の事務処理の適切さについて判断する
ために必要不可欠であるということができる。
したがって,金融機関は,預金契約に基づき,預金者の求めに応じて預金口座の
取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。
そして,預金者が死亡した場合,その共同相続人の一人は,預金債権の一部を相
続により取得するにとどまるが,これとは別に,共同相続人全員に帰属する預金契
約上の地位に基づき,被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求め
る権利を単独で行使することができる(同法264条,252条ただし書)という
べきであり,他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由と
なるものではない。
上告人は,共同相続人の一人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示するこ
とが預金者のプライバシーを侵害し,金融機関の守秘義務に違反すると主張する
が,開示の相手方が共同相続人にとどまる限り,そのような問題が生ずる余地はな
いというべきである。なお,開示請求の態様,開示を求める対象ないし範囲等によ
っては,預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があ
ると考えられるが,被上告人の本訴請求について権利の濫用に当たるような事情は
うかがわれない。
4以上のとおりであるから,被上告人の請求を認容した原審の判断は,結論に
おいて是認することができる。論旨は採用することができない。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官涌井紀夫裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官
宮川光治裁判官櫻井龍子)

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