弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人倉重達郎の上告理由について。
 原審が適法に確定したところによれば、(一) 訴外D株式会社は、昭和四二年一
一月二二日その所有にかかる本件土運船を含む二隻の土運船を代金二七〇三万円で
訴外E株式会社に売り渡したが、代金支払方法として、契約と同時に二〇〇万円を
支払い、残代金は昭和四四年九月二五日までにこれを二五回に分割して支払い、右
代金完済に至るまで土運船の所有権はD株式会社に留保し、代金完済のときE株式
会社に移転することとし、その間D株式会社は右土運船をE株式会社に無償で使用
させる旨の特約が締結されたこと、(二) ところが、E株式会社は、残代金三一八
万五〇〇〇円の未払を残したまま昭和四四年七月一九日大阪地方裁判所に和議開始
の申立をしたので、D株式会社は、E株式会社がみずから破産、和議開始あるいは
会社更生手続の開始等の申立をしたときは契約を解除して土運船の返還を求めるこ
とができる旨の特約に基づき、同月二三日契約を解除して、同会社から土運船二隻
の返還を受けたうえ、同月三一日これを訴外F株式会社に代金三三〇万円で売り渡
し、さらに被上告人が同年九月一三日同会社からこれを買い受けたこと、(三) 昭
和四五年三月二日上告人はE株式会社に対する債務名義に基づき本件土運船を差し
押えたこと、以上の事実が認められる、というのである。
 おもうに、動産の割賦払約款付売買契約において、代金完済に至るまで目的物の
所有権が売主に留保され、買主に対する所有権の移転は右代金完済を停止条件とす
る旨の合意がなされているときは、代金完済に至るまでの間に買主の債権者が目的
物に対して強制執行に及んだとしても、売主あるいは右売主から目的物を買い受け
た第三者は、所有権に基づいて第三者異議の訴を提起し、その執行の排除を求める
ことができると解するのが相当である。いまこれを本件についてみるに、前記原審
の確定した事実関係のもとにおいて、被上告人がD株式会社からF株式会社を経て
取得した本件土運船の所有権に基づき上告人の強制執行の排除を求めることができ
ることは、右説示に照らして明らかであり、これと結論を同じくする原審の判断は、
正当として是認することができる。所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切
とはいえない。原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法はなく、
論旨は採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸       盛   一
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸   上   康   夫

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