弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人横田勉の上告理由について
 数人が各自全部の履行をする義務を負う場合において(以下、全部の履行をする
義務を負う者を「全部義務者」という。)、その全員又は一部の者が和議開始の決
定を受けたときは、和議開始決定時における当該債権の全額を和議債権として届け
出た債権者は、和議開始決定後に、当該和議債務者に対して将来行うことのあるべ
き求償権を有する全部義務者から債権の一部の弁済を受けても、届出債権全部の満
足を得ない限り、右債権の全額について和議債権者としての権利を行使することが
できるものと解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。破産法(以
下「法」という。)二四条によれば、数人の全部義務者の全員又は一部の者が破産
宣告を受けたときは、債権者は破産宣告の時に有した債権の全額について、各破産
財団に対して破産債権者としての権利を行うことができるのであるから、破産宣告
時の債権の全額を破産債権として届け出た債権者は、破産宣告後に全部義務者から
当該債権の一部の弁済を受けても、届出債権全部の満足を得ない限り、なお右債権
の全額について破産債権者としての権利を行使することができるものと解される。
そして、債権者が債権の全額につき破産債権者としての権利を行使した場合に、破
産者に対して将来行うことのあるべき求償権を有する全部義務者が弁済したときは、
「其ノ弁済ノ割合ニ応シテ債権者ノ権利ヲ取得ス」との法二六条二項の規定は、将
来の求償権を有する複数の全部義務者による一部ずつの弁済により、又は右の弁済
と破産財団からの配当とにより、届出債権全部を満足させてなお配当金に余剰を生
じた場合に、右余剰部分について、右全部義務者が各自の弁済額の割合に応じて債
権者の権利を取得する旨を定めたものと解すべきである。けだし、同項が債権の一
部を弁済したにすぎない全部義務者において直ちに届出債権額に対する弁済額の割
合に応じて債権者の権利を取得する旨を定めたものと解すれば、債権者が届出債権
全部の満足を得られない場合にも、残債権につき履行する義務を負つている右全部
義務者が前記の割合に応じて債権者の権利を取得し破産債権者としての権利を行使
しうることとなり、債権者を害する結果となつて妥当でないからである。以上に述
べたことは、和議法四五条によつて右各規定が和議債権について準用される場合に
も異なるところはないというべきである。
 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、(一) (1)
 上告人を債務者とする和議申立事件(以下「本件和議事件」という。)において、
昭和五七年九月二一日次のとおりの和議条件のもとに和議認可の決定がされ、右決
定は同年一〇月一六日に確定した、(ア) 債務者は、和議認可決定確定の日の翌
日から六か月満了の日を第一回として和議債権元本額の一〇パーセントを、その一
年後を第二回として以後一年毎に第九回まで元本額の五パーセントずつをそれぞれ
支払う(合計五〇パーセント)、(イ) 各債権者は、前項の支払が履行されたと
きは、残余の元本債権及び利息、損害金などを全部免除する、(2) 被上告人は、
上告人に対し、上告人の振出に係る第一審判決別紙約束手形目録記載の約束手形四
通(以下「本件約束手形」という。)の手形金債権合計四〇〇〇万円を有しており、
昭和五七年九月八日これを和議債権として届け出た、(3) 上告人は、昭和五八年
七月九日被上告人に対し、三二〇万円を支払つた、(二) (1) D株式会社(以下
「訴外会社」という。)は、本件約束手形の裏書人であつて被上告人に対して遡求
義務を負つていたところ、昭和五七年九月二四日、和議認可決定確定の日の翌日か
ら三か月後に和議債権元本額の二〇パーセントを、その一年後に元本額の七・五パ
ーセントを、更に和議認可決定確定後二七か月目を第一回として以後一年毎に元本
額の一・二五パーセントずつをそれぞれ支払う(合計四〇パーセント)との和議条
件のもとに和議認可の決定を受けた、(2) 被上告人は、昭和五八年六月一三日訴
外会社から右和議条件に従い八〇〇万円の支払を受けた、というのである。右の事
実関係及び既に説示したところによれば、被上告人は、本件和議事件について和議
開始の決定がされた当時、上告人に対し四〇〇〇万円の債権を有していたものとい
うことができるところ、その後、全部義務者である訴外会社から八〇〇万円の弁済
を受けたが、いまだ右債権全部の満足を得ていないので、上告人に対し四〇〇〇万
円全額について和議債権者としての権利を行使することができるものというべきで
ある。そうすると、上告人は、被上告人に対し、第一回分として支払うべき金額四
〇〇万円から既払額三二〇万円を控除した残額八〇万円及びこれに対する弁済期の
翌日以降の遅延損害金を支払う義務があるので、被上告人の本訴請求を認容した原
判決は結論において是認することができる。論旨は、判決に影響を及ぼさない事項
について、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつて、採用するこ
とができない。
 よつて、民訴法四〇一条、三九六条、三八四条二項、九五条、八九条に従い、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    伊   藤   正   己
            裁判官    安   岡   滿   彦
            裁判官    長   島       敦
            裁判官    坂   上   壽   夫

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