弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件特別抗告を棄却する。
     特別抗告の費用は特別抗告人の負担とする。
         理    由
 本件特別抗告の理由は、未尾添付の書面記載のとおりである。
 特別抗告理由第一点について。
 行政事件訴訟特例法(以下特例法という)一〇条二項は、行政庁の違法な処分の
取消又は変更を求める訴の提起があつた場合、一般に適用される規定であるから、
同項の「処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害」が何であるかは、提
起された訴の内容如何によつて個々の場合に異ならざるを得ないのである。されば
右つ損害は所論のように原状回復不能の損害のみを指すものではなく、金銭賠償不
能の損害を意味する場合もあるのであつて、裁判所は、事案に応じいずれかの趣旨
に解して請求保全の必要があれば処分の執行を停止するのである。また特例法一〇
条二項により、裁判所が処分の執行を停止すべきことを命ずるのは、行政庁の違法
な処分の取消又は変更を求める本案の訴訟に附随する手続に過ぎないのであつて、
裁判所は、同項による処分の執行停止を命じたと否とにかかわらず、本案訴訟にお
いては請求の当否につき審判することはいうまでもないところである。そして審判
の結果、行政庁の処分の違法であつたことが明らかとなつて判決により取り消し又
は変更されて確定すれば、その判決はその事件について関係の行政庁を拘束し、行
政庁の違法処分に対する救済は全うされるのである。要するに裁判所は、特例法一
〇条二項による処分の執行停止の有無にかかわらず行政庁の違法な処分の取消又は
変更を求める訴の当否を審判するのであるから、前記特例法の規定が憲法によつて
裁判所に与えられた行政事件審判権を侵犯する違憲の法律であるとの論旨は理由が
ない。
 本件において特別抗告人は、国が農地委員会のした農地買収計画に基き取得した
特別抗告人所有の大阪府南河内郡志紀村大字二俣二八〇番地三反四畝二七歩外二筆
の土地につき国を相手方として農地買収不服の訴を提起するに当り、特例法一〇条
二項により国が右訴訟事件の判決あるに至るまで前記土地を他人に売り渡し又は譲
渡する等農地買収事業に関する行政処分を執行することを停止する旨の決定を求め
たところ、第一審裁判所は本件行政処分の執行によつては償うことのできない損害
が発生するものとは認め得ないとの理由によつて特別抗告人の申立を却下し、原裁
判所もまた同一の理由により特別抗告人のした抗告を棄却したものであること記録
上明らかである。かかる事案の本件においては、行政庁の処分の執行に因り仮りに
土地所有権の移転が行われたとしても、これによつて生じた損害は金銭で賠償でき
るばかりでなく、特別の事情のない限り原状に回復することも不能ではないのであ
るから、いずれにしても処分の執行に因り償うことのできない損害の生ずる場合で
はないと認めることもできない訳けではない。それゆえ、本件につきかかる損害の
生ずることが認められないとして申立を却下した第一審裁判所の決定は違憲ではな
く、従つて原裁判所が前記のように特別抗告人のした抗告を棄却したのも正当であ
つて、原決定には所論のような憲法違反はない。
 同第二点について。
 民訴四一九条ノ二によつて最高裁判所に特に抗告をすることのできるのは、原裁
判所がその決定又は命令において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかし
ないかについてした判断が不当であることを理由とするときに限られること同条の
規定に徴し明らかである。しかるに所論は、このような理由を主張するものではな
いから適法な特別抗告の理由とならない。のみならず、特別抗告人は同条所定の五
日の期間内に本件特別抗告を申立てながら、右期間を定めた同条の規定が違憲であ
ると主張しているのである。それゆえ、このような主張は本件の適切な抗告理由と
いうことはできない。(なお、特別抗告の提起期間を五日と定めた前記規定が違憲
でないことについては、昭和二四年七月二三日当裁判所大法廷決定、判例集三巻八
号二八一頁参照)。
 よつて、裁判官全員の一致した意見で主文のとおり決定する。
  昭和二七年一〇月一五日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    田   中   耕 太 郎
            裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    井   上       登
            裁判官    真   野       毅
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    島           保
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    岩   松   三   郎
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎
            裁判官    入   江   俊   郎

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