弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人樫田忠美、同中山長治の上告趣意は末尾添附の書面記載のとおりである。
 上告趣意第一点について。
 所論は、憲法違反を主張するが、その実質は、単なる法令違反の主張であつて適
法なる上告理由とならない。刑訴三九二条二項の規定が、高等裁判所に対し職権調
査の義務を課したものではなく、従つて高等裁判所が控訴趣意書に包含されない事
項について調査しなかつたからといつて違法であるといえないことは既に当裁判所
の判例とするところであり(昭和二四年新(れ)四九〇号同二五年五月一八日第一
小法廷判決参照)また被告人又は弁護人のなす上訴において被告人に不利益な主張
が上告適法の理由にならないことも亦当裁判所の判例の示すところである(昭和二
七年(あ)八七八号同二八年一月二九日第一小法廷決定参照)。所論は原判決が第
一審判決において被告人の判示行為を一罪として処断したことは正当であると判断
したのに対し、これを数罪として処断すべきであると主張するものであつて、それ
が被告人に不利益な主張であることは明かであるから、上告理由としてこれを主張
することは許されない。所論は要するに独自の見解に基くものであるから採るを得
ない。
 同第二点について。
 原判決は第一審判決が刑法施行法三条三項の適用を示さなくても判決に影響を及
ぼさないと言つているだけで、同法条の適用を示す必要はないと判断している訳で
はないから引用の当裁判所判例に相反する判断を示したものとはいえない。従つて
所論判例違反の主張は前提を欠くものである。しかも刑法施行法三条三項の規定は
これを適用すれば足り、必ずしもその適用を明示する必要はないものであつて(昭
和二四年(れ)第一八九三号同年一二月一五日第一小法廷判決参照)第一審判決が
同法条をも適用した趣旨であることは、その判文自体から窺知できるのであるから、
原判決の説示に妥当を欠く点があつても未だ以つて原判決を破棄すべき理由とはな
らない。
 同第三点について。
 所論は単なる法令違反の主張であつて適法な上告理由とならない。(その理由の
ないことは前記説明のとおりである)。
 同第四点について。
 所論は憲法違反を主張するがその実質は量刑不当の主張にすぎないのであつて前
同様上告適法の理由にならない。(裁判所が普通の刑を法定刑の範囲内で量定した
場合憲法三六条に違反しないことについては昭和二二年(れ)第三二三号同二三年
六月二三日大法廷判決参照)
 なお記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
 よつて、同四一四条三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお
り決定する。
  昭和二八年四月一四日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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