弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は,原告らの負担とする。
事実及び理由
第1請求
1主位的請求
被告が,被告補助参加人に対し,別紙物件目録記載の各土地についてされた
別紙登記目録記載の各所有権移転登記の抹消登記手続の請求をすることを怠る
ことは違法であることを確認する。
2予備的請求
被告は,訴訟被告知人及び被告補助参加人に対し,それぞれ1億3094万
7800円及びこれに対する平成17年5月28日から支払済みまで年5分の
割合による金員の支払を請求せよ。
第2事案の概要
1本件は,町田市の住民である原告らが,町田市が緑地保全目的で平成14年
に購入した別紙物件目録記載の各土地(以下,同目録記載1の各土地を「本件
平坦地,同目録記載2の各土地を「本件傾斜地」といい,併せて「本件売却」
地」という)を,平成17年5月27日,被告補助参加人(以下単に「補助。
参加人」という)に代金3億9526万2036円で随意契約により売り渡。
したこと(以下「本件売買契約」という)が違法かつ無効であるとして,被。
告に対し,地方自治法242条の2第1項3号及び4号に基づき,本件売却地
につき,補助参加人に対し所有権移転登記の抹消登記手続の請求を怠ることの
違法確認を求めるとともに,訴訟被告知人(同契約当時の町田市長P1。以下
「元市長」という)及び補助参加人に対し適正価額との差額1億3094万7。
800円の損害賠償及び遅延損害金の支払の請求をすることを求めている事案
である。
2関係法令の定め等
(1)地方自治法及び地方財政法
ア随意契約
(ア)普通地方公共団体は,売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争
入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するもの
とし,指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該
当するときに限り,これによることができる(平成18年法律第53号
改正前の地方自治法234条(以下「地方自治法234条」という),。
1項,2項。)
(イ)そして,上記(ア)の随意契約によることができる場合の一つとし
て,不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品
の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いそ
の他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき
が,政令で定められている(平成18年政令第319号による改正前
の地方自治法施行令167条の2(以下「地方自治法施行令167条
の2」という)第1項2号。。)
イ予算の執行等
地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進
に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければな
らず(地方自治法2条14項,また,地方公共団体の経費は,その目的)
を達成するための必要かつ最少の限度を超えて,これを支出してはならな
いものとされる(地方財政法4条1項。)
ウ地方公共団体の法令違反行為の効力
,(,。)地方公共団体は法令市町村にあっては当該都道府県の条例も含む
に違反してその事務を処理してはならず,当該法令に違反して行った地方
公共団体の行為は,無効とされる(地方自治法2条16項,17項。)
エ普通地方公共団体の長の事務及び責任
普通地方公共団体の長は,その担任する事務の一つとして,普通地方公
共団体の財産の取得,管理及び処分を行う(地方自治法149条6号。)
そして,普通地方公共団体の長(執行機関)は,当該普通地方公共団体の
条例,予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,規則その他の規定
に基づく当該普通地方公共団体の事務を,自らの判断と責任において,誠
実に管理し及び執行する義務を負う(同法138条の2。)
(2)町田市における緑の保全と育成に係る条例等
ア町田市は,すべての市民が健康で快適な生活を営むことができ,かつ,
自然と生活が調和した環境を将来の市民に引き継いでいくため,緑の保全
と育成を図り,もって市民の福祉の増進に寄与することを目的として,町
田市緑の保全と育成に関する条例(昭和58年町田市条例第37号(甲
9。以下「緑条例」という)を定めている(緑条例1条。)。)
,,イ町田市長は自然と生活が調和した環境の形成をまちづくりの基本とし
緑の保全と育成が図られるよう努めなければならず(緑条例2条1項,)
この目的を達成する上で重要な事項については,町田市みどり委員会(以
下「みどり委員会」という)の意見を聞かなければならないものとされ。
ている(同条2項。)
みどり委員会は,町田市長の諮問に応じ,①緑の保全と育成にかかわる
基本事項,②著しく緑を損なうおそれのある事業及び行為に関すること,
③その他緑の保全と育成に関することについて調査審議するものとされて
おり(同条例6条,上記②にいう著しく緑を損なうおそれのある事業及)
(),()び行為同条2号とは(a)宅地開発指導要綱平成6年4月1日施行
の適用を受けるもの,(b)区画整理事業,(c)公団,公社及び都営の住宅
建設事業,(d)市が行う事業(いずれも対象面積が1ヘクタール以上のも
の,(e)その他市長が必要と認めるもののうち,まちづくり協議会設置)
要綱(昭和59年5月1日施行)に基づくまちづくり協議会の議を経て町
田市長が諮問することと決定したものをいうとされている(町田市緑の保
(()。全と育成に関する条例施行規則昭和61年町田市規則第2号乙44
以下「緑条例施行規則」という)9条,別表第2。。)
ウ緑条例2条1項に規定する緑の保全と育成を図るための町田市長の施策
の一つとして,緑地保全の森に関することがあり(緑条例施行規則2条4
号,その設置・名称等については,緑地保全の森設置要綱(平成7年4)
月1日施行(乙27。以下「設置要綱」といい,緑条例及び緑条例施),
行規則と併せて「緑条例等」と総称する)の定めるところによるとされ。
ている(緑条例施行規則5条。そして,設置要綱においては「α・β),
緑地」として,本件売却地の一部(別紙物件目録記載2(4)の土地)が指
定されていた(設置要綱第3,別表(16。))
(3)国有地を公共事業の代替用地として売り払う場合の取扱いについて
国有地を公共事業の代替用地として売り払う場合の取扱基準については,
「国有地を公共事業の代替用地として売り払う場合の取扱いについて(昭」
和58年5月26日蔵理第1879号。ただし,平成16年6月30日財理
第2508号による改正後のもの(甲28。以下「公共事業用地基準」と)
いう)において,国有地(普通財産)を公共事業の代替用地として当該事。
業を施行する者に売り払うことのできるのは,当該売払い及び当該事業を施
行する者による代替地としての提供が「事業者が提供する代替地は,事業,
用地として取得する土地の面積及び価格等を勘案して相当と認められる範囲
内のものであること」等の基準を充たす場合であるとされている(公共事業
用地基準1(4))
(4)公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱
土地収用法その他の法律により土地等を収用し,又は使用することがで
きる事業に必要な土地等の取得又は土地等の使用に伴う損失の補償の基準
の大綱として「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱(昭和37年6,」
月29日閣議決定。ただし,平成14年7月2日閣議決定による改正後の
もの(甲24。以下「損失補償基準要綱」という)が定められており(同)。
要綱1条,同要綱は,損失の補償は原則として金銭をもってするものとし)
ている(同要綱6条1項。)
3前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨
により容易に認められる事実)
(1)本件売買契約前の本件売却地の状況
ア町田市は,平成2年12月より,財団法人P2公社(以下「公社」とい
う)から本件売却地を公園緑地用地として使用する目的で1年間無償で。
借り受けをする使用貸借契約を締結し,以降同内容で契約の更新を続けて
いた。
そして,平成7年4月1日,設置要綱制定後は,本件売却地をα・β緑
地」との名称で,緑地保全の森として指定した。
(以上につき,甲1,乙43)
イ平成12年12月28日,上記アの使用貸借契約の目的について,本件
。(,平坦地の一部を放置自転車駐輪場として使用できる旨を追加した甲1
乙43)
ウ平成14年3月27日,町田市は,町田市土地開発基金を買主として,
公社より,本件売却地を3億8300万円で購入した。これにより,町田
市土地開発基金が本件売却地を所有することとなった(甲1,乙35,。
43)
(2)本件売買契約
ア平成17年1月31日,町田市は,町田市土地開発基金から,町田市一
般会計予算により,代金3億8300万円で本件売却地を購入した(甲。
1)
イ同年5月27日,町田市は,補助参加人との間で,本件売却地を代金3
億9526万2036円で売却する売買契約(本件売買契約)を締結し,
当該契約に基づき別紙登記目録記載のとおり所有権移転登記手続をした。
(甲1)
ウ本件売買契約については,上記イに先立ち,同年3月2日,町田市議会
において,本件売却地を代金3億9526万2036円で売却する旨の議
案を承認する議決がされた(乙24,43)。
(3)原告らの監査請求から本件訴訟提起に至る経緯
ア原告らは,平成17年5月12日,本件売買契約について,当該契約
締結の差止め又は当該契約の取消し及び所有権移転登記の回復を求めて
監査請求をしたところ,町田市監査委員はこれを棄却し,同年6月30
日に原告らにその旨を通知した(甲1)。
イ原告らは,同年7月26日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
4争点
本件における争点は,(Ⅰ)本件売買契約の有効性並びに(Ⅱ)本件売買契約の
締結についての元市長及び補助参加人の損害賠償責任の有無であるところ,こ
れらの点に関する具体的な争点は,以下のとおりである。
(1)随意契約の要件の該当性
(2)本件売買契約の締結における元市長の裁量権の逸脱又は濫用の有無
ア本件売却地の売却の必要性
イ土地収用法の適用等の選択の可能性
ウ金銭支払の選択の可能性
エ交渉努力義務違反の有無
オ本件売却地の売却価格の適否
(3)市議会の議決の瑕疵の有無(元市長の欺罔的答弁の有無)
(4)緑条例等の違反の有無
5争点に関する当事者の主張の要旨
(1)争点(Ⅰ)(本件売買契約の有効性)及び争点(Ⅱ)(本件売買契約の締結
についての元市長及び補助参加人の損害賠償責任の有無)について
ア原告らの主張の要旨
後記(2)ないし(5)において原告らが主張するところによれば,①<ア>本
件売買契約の締結は,地方自治法234条及び地方自治法施行令167条
の2所定の要件に違反した違法な随意契約であり,地方自治法2条16項
及び17項により無効というべきであり,また,<イ>本件売買契約の締結
は,元市長における地方自治法138条の2の執行機関の事務を誠実に管
理・執行する義務,交渉努力義務等を踏まえた善管注意義務に違反し,市
長の裁量権を逸脱・濫用するものであること,欺罔により町田市議会の承
認を得たものであること,みどり委員会の意見を聞かずにされたものであ
ることからして,公序良俗に反して無効と解すべきである。
仮に,その違法性が本件売買契約を無効と解するにまで至らないものと
しても,②少なくとも,同契約の締結について,元市長は,要件に違反し
,,た違法な随意契約の締結及び善管注意義務違反等をしたものでありまた
補助参加人は,契約交渉の相手方として,信義則上,町田市に不測の損害
を与えることのないようにすべき義務があったにもかかわらず,本件買収
地を所有していたことを奇貨とし,不合理な要求を突き付け,権利濫用に
より不正な利益を得ることにより,後記(3)オ(ア)の損害を町田市に与え
たものであるから,元市長及び補助参加人は連帯して1億3094万78
00円の損害賠償責任を負うというべきである。
イ被告の主張の要旨
後記(2)ないし(5)において被告が主張するところによれば,本件売買契
約の締結は,①<ア>随意契約の要件を満たすものであり,<イ>町田市長に
善管注意義務違反があり,その裁量権を逸脱・濫用するものとはいえず,
欺罔により町田市議会の承認を得たものでもなく,みどり委員会の意見を
聞く必要もなかったものであるから,適法なものであり,したがって,本
件売買契約は有効である。
また,②本件売買契約の締結について,元市長が町田市に対して損害賠
償責任を負うこともなく,最終的に町田市の提示した本件売却地の売却価
格に応じ,これを売却した補助参加人が町田市に対して損害賠償責任を負
うこともない。
ウ補助参加人の主張の要旨
補助参加人は,町田市から,東京都町田市γ×番1の一部及び同3の合
計394.36平方メートルの土地(以下「本件買収地」という)の売。
却を求められたため,町田市との間で交渉し,その結果,本件売却地が補
助参加人に売却されることを条件に,補助参加人の所有する本件買収地を
町田市に売却することに応じることとなったものであって,補助参加人か
ら本件売却地を売却するよう一方的に要求したり,不透明な取引をしたも
のではなく,本件売買契約は有効であって,また,補助参加人が町田市に
対して損害賠償責任を負うこともない。
(2)争点(1)(随意契約の要件の該当性)について
ア原告らの主張の要旨
本件売買契約は,地方自治法234条及び地方自治法施行令167条の
2所定の随意契約の要件を満たさず,違法である。
イ被告の主張の要旨
(ア)本件売却地の売却が必要となった経緯
町田市は,都市計画道路×号線の整備事業として,町田市γ内をP3
の東側からδ街道までの延長219メートル,幅員18メートルの都道
を築造する事業(以下「本件事業」といい,本件事業のための用地を,
「」。),,本件事業地というを東京都が多摩地域の道路整備事業として
都市町村協議会の合意を受けて進めるみちづくり・まちづくりパートナ
ー事業(以下「みちまち事業」という)の計画の一部として進めてい。
たところ,本件事業の完遂のため,みちまち事業の計画期間内に本件事
業を進めることが,当時急務とされていた。
本件事業地内のほぼ中心には,P4の建物及び墓地が存在し,その敷
地の一部(東京都町田市γ×番3の公簿地積493.95平方メートル
中280.48平方メートル及び同×番3の公簿地積624.79平方
メートル中0.45平方メートル。以下「P4所有地」という)が事。
業地内の4割近くを占めており,本件事業の実施に当たっては,P4の
移転先の確保が問題となっていたところ,交渉の結果,その移転先とし
て,補助参加人が所有する土地(東京都町田市γ×番1の一部及び同3
の合計378.84平方メートル。以下「本件移転予定地」という)。
が選ばれることとなった。
そして,本件移転予定地は,当時,補助参加人が,本件事業地内の土
地(東京都町田市γ×番1の一部である15.52平方メートル)とと
もにこれを所有していたところ(同土地及び本件移転予定地を併せたも
のが本件買収地,町田市においては,本件事業の実施に当たり,補助)
参加人から本件買収地を買収することが必要となった。
その上で,補助参加人との交渉の結果,本件買収地を買収する条件と
して,本件売却地を補助参加人に売却することが条件となった。
(イ)本件売買契約を随意契約としたのは,仮に競争入札にすると,補助
参加人以外の者が入札するかもしれず,本件買収地を買収するための条
件としての補助参加人に本件売却地を売却することができなくなるため
であった。
したがって,本件売買契約において,随意契約により,本件売却地を
補助参加人に売却することは,地方自治法施行令167条の2第1項2
号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」に
該当する。
(3)争点(2)(本件売買契約の締結における元市長の裁量権の逸脱又は濫用の
有無)について
ア争点(2)ア(本件売却地の売却の必要性)について
(ア)原告らの主張の要旨
,,被告はみちまち事業の計画期間内に本件事業を完成させるためには
本件売買契約を早急に締結する必要があった旨主張する。
しかしながら,町田市のみちまち事業の計画期間は,既に一度,平成
15年度から平成20年度までに延長されており,他にみちまち事業に
参加している自治体において現に再度の延長をしているところもあるこ
とからして,町田市においても再度の延長の可能性がないとはいい切れ
ないものであり,補助参加人の要求に応じなかったからといって,直ち
に,みちまち事業における本件事業を断念することにはならない。そも
そも,本件事業の対象地には,補助参加人の所有地が含まれており,対
象地の取得が難航することは予想され,事業が5年間で終了する見通し
はなかったにもかかわらず,町田市の担当者は,みちまち事業の採択を
申請したのである。こうした事情によれば,本件売買契約に緊急性・必
要性があったということはできない。
また,代替地の提供については,公共事業用地基準において,事業者
が提供する代替地は,事業用地として取得する土地の面積及び価格等を
勘案して相当と認められる範囲内のものであることを基準としているこ
とを参考とすべきところ,本件売却地は,補助参加人の所有する本件買
収地の面積の約54.6倍で,その価格の約3.6倍であり,両者の土
地の形状も全く異なるのであるから,上記相当と認められる範囲内のも
のに当たるということはできない。
(イ)被告の主張の要旨
町田市は,東京都との共同事業であるみちまち事業の一環として実施
している道路事業を実現するためにやむを得ず,本件売買契約の締結を
決定したものであり,重大な公益上の必要性と緊急性があった。
原告の主張する公共事業用地基準は,公共事業用地を取得する場合に
適用されるものであるが,町田市は本件買収地全体を公共事業用地とし
て取得し,その代替地として本件売却地を売却したものではないので,
同基準は適用がない。
イ争点(2)イ(土地収用法の適用等の選択の可能性)について
(ア)原告らの主張の要旨
町田市は,補助参加人が本件買収地の買収について不合理な要求を突
き付けて譲らない以上,土地収用法の適用や,本件買収地以外のP4の
移転先を検討するなど,本件売却地の売却を行う以外の方法を選択すべ
きであった。
(イ)被告の主張の要旨
P4所有地には,墓地が多数含まれており,土地収用は現実的ではな
く,仮に土地収用をしたとしても,代替地の要求は認められることにな
ることが想定された。また,補助参加人所有の本件買収地についても,
(.),本件事業地内の土地1552平方メートル以外の部分については
土地収用の対象とならない。
また,町田市としては,本件買収地以外のP4の移転先等も検討し,
本件売却地の売却以外の方法を検討し,交渉を行ったものであるが,実
らず,やむを得ず本件売却地を売却し,本件買収地の買収を目指すこと
になったものである。
ウ争点(2)ウ(金銭支払の選択の可能性)について
(ア)原告らの主張の要旨
損失補償基準要綱は,損失の補償は原則として金銭給付が原則である
旨を定めており(6条,その趣旨は公共用地の任意の取得にも妥当す)
るものであるから,本件売買契約は,同要綱に違反し,裁量権の逸脱又
は濫用に当たる。
そもそも,補助参加人所有の本件買収地は,住宅や事業用地として使
用されているものではなかったので,およそ代替地を必要とするもので
はなかった。したがって,町田市としては,補助参加人に対し,単に売
買代金を支払えば済むはずである。
町田市が補助参加人所有の本件買収地を取得するに当たっては,金銭
の支払による契約をすることが原則であり,補助参加人の要求が相当で
あり,かつ,真にやむを得ないものであると認められる特段の事情のな
い限り,被告所有の本件売却地を代替地として提供し又はその旨を約す
ることは裁量権を逸脱し又は濫用したものというべきであるところ,補
助参加人は,実際にはP5株式会社(以下「P5」という)のペーパ。
ーカンパニーであり,代替地を利用する必要がなかったのであり,本件
では,上記特段の事情はない。
(イ)被告の主張の要旨
本件売却地の売却は,補助参加人が本件売買契約の締結に応ずるため
の条件であり,補助参加人に対し売買代金を支払えば問題が解決するよ
うなものではなかった。
損失補償基準要綱は,公共用地の強制収用の場合と,強制収用が可能
であるが,これによらず任意買収を行う場合に適用されるものであり,
本件には適用がない。
(ウ)補助参加人の主張の要旨
もともと,補助参加人としては,適当な土地の提供がなければ,金銭
の支払を受けたとしても,被告に対し,補助参加人所有の本件買収地を
売却する理由はなかった。
エ争点(2)エ(交渉努力義務違反の有無)について
(ア)原告らの主張の要旨
,,,地方財政法4条1項地方自治法2条14項138条の2によれば
市長は交渉努力義務を負うところ,元市長は,補助参加人が代替地を必
要としていなかったこと及び補助参加人がP5のペーパーカンパニーに
すぎないことを知り得たのであり,こうした事実に基づき,補助参加人
の要求に対し,有効な説得・反駁を試みることが可能であった。
また,元市長は,補助参加人がその所有する本件買収地の面積を大き
く超える本件売却地を必要とする言い分を十分に検討し,ボーリング調
査等を行った上,補助参加人に対し,適切な説得・反論をすべきであっ
たのであり,仮に補助参加人の言い分どおり,本件売却地のうち本件平
坦地の地盤確保のため本件傾斜地が必要であったとしても,譲渡する範
囲を真に地盤確保のため必要な面積に限定すべきであった。
(イ)被告の主張の要旨
本件買収地を町田市に売却するかどうかは,補助参加人の自由であっ
た一方で,本件売却地は,本件傾斜地の傾斜が急である上,一部えぐれ
た状態になっており,過去に崩落があったことをうかがわせるのである
から,本件平坦地のみでは地盤確保に不安があるとする補助参加人の指
。,,摘には合理的な根拠があるといえるこうした場合に元市長において
原告らが主張するような義務違反があったということはできない。
(ウ)補助参加人の主張の要旨
補助参加人としては,本件売却地以外の土地の売却を受けることを条
件とすることも検討していたところであるが,町田市が,本件買収地を
購入するため,他に補助参加人の希望に沿う適当な土地の提供ができな
かったものである。
オ争点(2)オ(本件売却地の売却価格の適否)について
(ア)原告らの主張の要旨
①本件売却地のうち本件傾斜地の面積は1万7119平方メートルで
あるところ,元市長と補助参加人は本件傾斜地を6505万2200
円(3800円/平方メートル)として売却価格を決めたが,本件訴
訟における鑑定(以下「本件鑑定」という)の結果によれば,本件。
傾斜地の時価は実際には1億9600万円(約1万1400円/平方
メートル)であった。
したがって,元市長及び補助参加人は,町田市に対し,本件売買契
約により,その差額1億3094万7800円の損害を与えたもので
ある。
②また,町田市は,平成17年11月30日,国から本件売却地に隣
接する山林を取得しているところ,当該土地の価格が,平成15年4
,,月1日時点で2万7900円/平方メートルとされ実際の購入額は
約1万7834円/平方メートルとなっている。これに対し,本件売
却地のうち本件傾斜地の売却価格は3800円/平方メートルとされ
ているところ,本件売却地は宅地開発可能な山林であるのに,市街化
調整区域の上記山林より低価格となっており,この点からも本件売買
契約における3800円/平方メートルという価格は不合理というべ
きである。
③被告は,本件売買契約により譲渡益が出た旨を主張するが,そもそ
,,(),も本件売却地は当初の所有者であった東京都公社にとっては
,,これを保有する行政目的はなく管理の負担だけがある土地であって
譲渡先が地方自治体であり,緑地保全という公共目的に提供する趣旨
から,価格について町田市の意向を最大限尊重した結果と推察され,
譲渡益が生じたとしても,本件売買契約に係る価格が正当なものであ
るということはできない。
また,株式会社P6の不動産鑑定士P7(以下「鑑定士P7」とい
う)及び株式会社P8の不動産鑑定士P9(以下「鑑定士P9」と。
いう)に対し,平成16年本件売却地を補助参加人に売却するに当。
たって,平成16年の本件傾斜地の価格比率についての意見書の作成
を依頼しているが,同人らは,平成14年に町田市が本件売却地を公
社から購入するに当たっての鑑定評価書を作成したものであり,過去
の鑑定評価書を作成した者に意見書の作成を依頼すれば,異なる意見
が出るはずがないことは明らかである。町田市としては,新たに鑑定
評価を依頼すべきであったのであり,町田市が同人らに意見書の作成
を依頼したのは,最初から,購入時の鑑定評価が出されることを容認
した上の措置であり,結論先にありきのなれ合いである。
(イ)被告の主張の要旨
①本件売却地の売却価格3億9526万2036円は,町田市の公
有財産規則に基づき,町田市公共財産評価等審査会に付議して決定
されたものである。そして,同審査会は,町田市が通常行う土地売
買の際の鑑定評価方法と同様の方法で行った鑑定士P7及び鑑定士
P9による各鑑定評価書及び各意見書を参考にして当該売却価格を
決定したものであり,当該売却価格の決定は妥当なものである。
のみならず,町田市には,本件売買契約によって,本件売却地の
購入時の価格である3億8300万円と比して1226万2036
円の譲渡益が生じており,本件売買契約によって,被告に損害が生
じたということはできない。
②本件売却地中,本件傾斜地の価格の評価に当たり,意見書という
形式をとったのは,当初補助参加人が本件売却地のうち本件平坦地
の取得を申し入れていたため,上記各鑑定評価書はその部分に限っ
ていたところ,予算措置の関係で本件傾斜地についてもその比率を
求める必要が生じたため,各意見書の作成を併せて依頼することと
したためである。
そして,その後,補助参加人の要求が本件傾斜地を含む本件売却
地全体に及ぶに至ったことから,本件売却地全体の価格を決定する
ことが必要になったものであるが,既に上記の各鑑定評価書と各意
,,()見書が存在し平成14年の時点において町田市が東京都公社
から本件売却地を購入するに当たって鑑定評価がされた時から2年
10月しか経過しておらず,この間に価格比率が変化したとは考え
られなかったことなどから,新たに本件売却地全体の鑑定評価をす
る必要はないとされたものである。
また,当該各意見書の内容については,本件傾斜地には崩落の危
険があり,維持管理に困難な状態にあること,開発にも莫大な費用
を要すると考えられること,交通の便がよくないこと,各意見書が
作成された平成16年の時点ではまだ金融引締めが継続し,不動産
需要が萎縮していたこと等にかんがみると,本件傾斜地につき,本
件平坦地との価格比率を5%とし,その価格を6505万2200
円(3800円/平方メートル)としたことに不合理な点があると
いうことはできない。
③これに対し,本件鑑定では,本件傾斜地の価格が1億9600万
円(約1万1400円/平方メートル)と評価されているが,⒜本
件平坦地の価格を所与のものとしていること,⒝比較している取引
,,事例が平成16年10月当時のものでなく多くがその後のもので
平成19年の事例が4件,平成18年の事例が5件となっているこ
と,⒞本件傾斜地と同様の土地(北側傾斜地,大規模な土地でかつ
交通不便)の取引事例を比較対象に用いていないこと,⒟平成16
年10月当時本件売却地において104戸の大規模分譲住宅地の開
発を手がける業者が一般的に存在し得たと判断した根拠が不明であ
るし,想定している開発工程について,調査測量を開始してから2
年後に販売が完了するものとし,第1期販売は調査開始から1年7
か月後に1か月で完売,第2期販売は調査開始から2年後に1か月
で完売するとしているが,平成16年10月当時,郊外の交通が不
便でかつ日照に難点のある北側斜面の崖地に位置する大規模分譲地
を半年で完売することは想定できないこと等の問題点からすれば,
当該評価額は妥当ではない。
(ウ)補助参加人の主張の要旨
本件鑑定は,造成工事費を11億6190万円と想定しているが,
本件売却地に要する造成工事費は,実際には16億5165万円とい
うように,より高額なものであって,造成工事費を低額に見積もって
評価を下している本件鑑定の評価額は妥当ではない。
(4)争点(3)(市議会の議決の瑕疵の有無(元市長の欺罔的答弁の有無))
について
ア原告らの主張の要旨
元市長は,町田市議会に対し,本件事業の実施における本件買収地の
買収の条件として,補助参加人に対し本件売却地を代替地として売却す
る必要があり,緑地保全については,本件売却地の代わりに,本件売却
地の隣接地(東京都町田市ε×番1の地積2218平方メートルのうち
1776平方メートル,ζ×番の地積2128平方メートルのうち20
36平方メートル及び同所×番の地積442平方メートル。以下「本件
隣接地」という)を,その所有者であるP10から使用貸借したとし。
て,本件売却地の売却の議案を提出した。
しかしながら実際には本件売却地を補助参加人に対して代替地都,,(
市計画法74条参照)として提供する必要はなかった。
また,元市長は,本件隣接地の所有者であるP10に,本件売却地を
補助参加人に売却する予定であるという重要な事実を秘して,本件隣接
地について使用貸借契約を締結させ,緑地保全として新たに確保したと
の外形を作出したものであり,P10が当該事実を知れば,当然,当該
使用貸借契約の無効を主張することが予想され,現にそのようになった
のであるから,町田市議会に対する説明の前提は崩れることになる。
さらに,元市長は,町田市議会に対し,本件売却地の売却価格の決定
の経緯や周辺事情を十分に説明しておらず,補助参加人の背後には過去
に町田市と不動産に関して紛争の生じたことのあるP5が関与している
ことについても情報を開示しなかった。
,,,したがって元市長は本件売却地の売却の議案を提出するに当たり
欺罔的答弁をして町田市議会の承認を得たものというべきであり,町田
市議会の承認の議決には瑕疵がある。
イ被告の主張の要旨
本件事業の実施における本件買収地の買収の条件として,補助参加人
に本件売却地を売却する必要があったものであり,また,当時,緑地保
,,全のためP10から本件隣接地を使用貸借していたことは間違いなく
元市長は必要な説明を行っているのであって,その答弁に欺罔的な点は
ない。
本件売却地の売却は,都市計画法上の代替地の提供とは異なるもので
あるが,本件売却地の売却の必要性をもって代替地と説明していたもの
であって,代替地との用語によって説明すること自体は違法ではない。
また,元市長が,P10に対し,本件売買契約の締結の事実を殊更に
秘したことはない。
その他,本件売買契約についての説明に不十分な点はない。
(5)争点(4)(緑条例等の違反の有無)について
ア原告らの主張の要旨
本件売却地は,緑条例等において,永続的に保全と育成が図られなけ
ればならないとされている土地の最も標高の高いところに位置し,その
要の土地といえるところであるが,本件売買契約の締結後,本件売却地
を買い受けた補助参加人がこれを緑地のまま保全し続けることは想定で
きない。こうした状況の下では,緑条例等において,直接にみどり委員
会に諮問することが義務付けられているわけではないとしても,その制
度趣旨に基づき,元市長は,本件売買契約を締結する前にみどり委員会
に諮問すべきであったが,元市長はこれをしなかった。
イ被告の主張の要旨
緑条例等によれば,開発行為の許可申請などがあって初めて,みどり
委員会の調査審議が必要とされるのであって,単に土地売買がされただ
けの場合には必要とされないものである。本件では,開発行為の許可申
請はされていないのであるから,本件売買契約について,みどり委員会
の調査審議は必要とされない。
第3当裁判所の判断
1前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認
めることができ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)本件事業の再開に至る経緯
ア本件事業の開始と中断
町田市は,昭和63年ころから,本件事業を中心市街地の再開発事業の
。,一環として開始した都市計画道路×号線の整備事業としての本件事業は
町田市内の主要幹線道路である上記都市計画道路の整備が遅れて慢性的な
渋滞が続いていたことなどから,町田市の中心市街地の活性化,交通事情
の改善等の観点から,町田市の長年の懸案事項であった。
本件事業により,P11の旧η駅がP12線駅側に移転され,同駅付近
の踏切が閉鎖され,路線橋が整備されたが,その後の経済情勢の変動によ
り,再開発事業に参画する事業者の撤退が相次いだことや財政難のため,
,,,頓挫し平成9年事業主体となっていた市街地再開発準備組合は解散し
本件事業も中断することとなった。
(以上につき,甲1,乙2,42,49)
イみちまち事業の発足
(ア)東京都は,多摩地域の道路整備事業を進めていたところ,平成10
年11月5日に開催された都市町村協議会での合意により,みちまち事
業を平成11年度から発足させて推進することとなった。
みちまち事業は,駅周辺のまちづくりや公共施設への連絡など市町村
の要望が強く部分的整備の急がれている都道を対象としてその整備を行
うものであり,事業主体は東京都であるが,市町村と協同で事業を実施
し,具体的には,用地取得・補償等の事務は市町村が都から委託を受け
て実施し,その費用は東京都が負担し,都道整備のため必要となる工事
・設計等の施工は市町村が実施し,その費用は市町村が負担するという
ものであった。そして,当初の事業計画期間は,平成11年度から平成
15年度の5年間を予定していた。
(以上につき,甲1,乙3,42,49)
(イ)町田市のみちまち事業への参加
町田市は,本件事業を再開するため,みちまち事業に参加することを
決定し,平成11年,東京都との間で基本協定及び用地委託協定を締結
した。これにより,一時頓挫していた本件事業が再開されることになっ
た(甲1,乙4ないし10,42,49)。
(2)本件事業における寺院の移転先を巡る交渉の経緯
アP4の移転先の検討
(ア)本件事業地内のほぼ中心にP4の建物及び墓地が存在し,その敷地
の一部であるP4所有地が本件事業地内に存在したため,本件事業の実
施に当たり,P4の移転先の確保が問題となっていた(甲1,31の。
3,乙13,42,49,証人P13)
(イ)本件事業が市街地再開発事業の一環として開始された当初は,P4
全体をθに移転するという案が検討されたが,近隣住民の反対により成
立しなかった(甲1,31の3,乙49,証人P13)。
(ウ)その後,みちまち事業として本件事業が再開されたころ,P4の移
転先として,東京都町田市ιの都営住宅跡地又は補助参加人が所有する
本件移転予定地のいずれかとする案が浮上したが,都営住宅跡地案は合
意に至らず,本件移転予定地が移転先となることとなった(甲1,3。
1の3,乙49)
イ本件移転予定地の買収交渉
(ア)平成11年の本件事業の再開時,P14合資会社は,本件移転予定
地を含む本件買収地を所有していたところ,町田市は,P4の移転先の
確保のため平成11年10月3日以降その買収交渉を開始した甲,,。(
1,乙42,49)
(イ)平成12年7月19日,P14合資会社は,本件買収地を補助参加
人に譲渡した(甲1,乙42,49)。
(ウ)町田市は,平成12年7月26日,補助参加人に対し,本件買収地
,,,の買収交渉を申し入れたが補助参加人はP4と直接交渉するとして
町田市との交渉を拒否した(甲1,乙42,49)。
(エ)その後,補助参加人は,P4に対し,墓石材店の権利を要求した
が,P4はこれを拒否した(乙42)。
(オ)P4において,町田市に対し,補助参加人との直接交渉につき拒
否の意思を表明していたこともあり,町田市は,補助参加人に対し,
再三にわたり交渉を申し入れ,平成15年5月に至り,補助参加人は,
。(,,,。)町田市との交渉に応じるに至った甲1乙4249証人P13
(カ)補助参加人は,平成15年5月27日,自らの移転先として,P
4の墓地跡地を要求したため,町田市は,P4との間で墓地跡地の買
収の交渉を進めたが,同年12月12日,P4は,墓地跡地の補助参
加人への売却を拒否する意向を表明した(甲1,乙42,49)。
(キ)みちまち事業における本件事業の事業期間は,当初平成11年度か
ら平成15年度までの5年間と予定されていたところ,平成15年度ま
でに,本件事業地のうちP4所有地以外の土地の用地取得はほぼ完了し
ていたが,P4所有地については買収の見込みが立たないままとなって
いた。
そこで,町田市は,本件事業の事業期間の延長を東京都に求めたと
ころ,みちまち事業の進行は,他の市町村の事業地区においても当初
の予定よりも遅れが生じていたこともあり,東京都は,みちまち事業
の事業期間を5年間延長し,平成20年度までとした。
(以上につき,甲1,31の3,乙11,12,49)
(ク)平成16年1月,町田市は,補助参加人に対し,改めて本件買収地
の買収を申し入れ,これに対し,同月13日,補助参加人は,δ駅その
他の駅周辺の土地を提供することを求め,売却の条件とした。
そこで,町田市は,同年7月までの間にP11δ駅南口に隣接する店
,,,,舗ビル同南口P11用地P11κ駅北口前用地P15λ駅前用地
P12δ駅前μビルなどについて,各権利者との買収交渉を進めたが,
いずれも不調に終わり,補助参加人の要望に沿った土地の提供を行うこ
とができなかった。
また,これと並行して,町田市は,α公園前の町田市市営住宅跡地
のあっせんを試み,補助参加人の側でもいったんはこの案を了承する
方向で検討を進めていたが,他の公共建物の建築予定との関係で行政
運営上の支障が生じ,同年5月28日,当該あっせんを断念せざるを
得なかった。
(以上につき,甲1,乙42,49,証人P13)
(ケ)平成16年7月7日,補助参加人は,町田市に対し,売却の条件と
して,本件売却地のうちの本件平坦地を提供することを求めた。
これに対し,町田市は,同年8月2日,補助参加人に対し,本件平
坦地のうち,放置自転車駐輪場を除く部分のみとしてほしい旨回答し
たが,補助参加人はこれを受け入れず譲らなかった。
(以上につき,甲1,乙42,43,49,証人P13)
(コ)町田市は,平成16年9月21日付けで,不動産鑑定士による本
件平坦地の価格の鑑定評価を依頼することとし,その依頼を受けて,
鑑定士P7からは同年10月19日付けで,同月1日時点の本件平坦
地の価格を3億3100万円(7万5000円/平方メートル)とす
る鑑定評価書が提出され,また,鑑定士P9からも同月19日付けで,
同月1日時点の本件平坦地の価格を3億2900万円(7万4500
円/平方メートル)とする鑑定評価書が提出された。
また,町田市は,併せて,本件傾斜地の価格についても鑑定士P7
及び鑑定士P9に対し意見を求め,それぞれ同月19日付けで,本件
傾斜地の価格につき,本件平坦地の価格の5%査定するのが相当であ
るとする意見書が提出された。
(以上につき,甲1,50の1ないし3,乙15ないし18,38)
(サ)平成16年10月25日,補助参加人は,町田市に対し,本件平
坦地が区画整理事業により埋め立てられた土地であるため地盤が不安
定であることを指摘し,その地盤を確保するため必要であるとして,
本件平坦地に加えて本件傾斜地の一部を併せて提供するよう要求した。
同年11月10日,補助参加人は,町田市に対し,地盤の確保のた
めには本件平坦地に加えて本件傾斜地の全部が必要であるとして,本
件買収地を売却する条件として本件売却地全体の提供を要求し,その
提供がなければ,当初求めた駅前の適当な土地が提供されない限り,
交渉には応じられないと申し入れた。
(以上につき,甲1,31の3,乙42,43,49,証人P13)
(3)本件隣接地の使用貸借に至る経緯
ア町田市において,本件隣接地の所有者であるP10が町田市に土地を寄
付する意向をもっている旨を聞き及んだことから,町田市職員は,平成1
6年8月24日,野生動物一時保護地区設置の賛同者とともに,P10と
面談してその意向を確認した。
面談の結果,P10の意向は,寄付ではなく,賃貸又は売却であったた
め,町田市としては,財政上購入はできないが,無償で借り,緑地として
利用することを申し入れた。
(以上につき,甲1,乙50)
イ平成16年11月30日,町田市は,P10との間で,本件隣接地につ
いて,同年12月1日から平成26年11月30日までの10年間,無償
で貸借する旨の使用貸借契約を締結した(甲1,48,乙43)。
(4)本件売買契約の締結に至る経緯
ア平成17年1月26日,町田市は,元市長の決裁を経て,本件事業に伴
う本件買収地の買収のため,本件売却地を補助参加人に売却することを決
,,,,定し同月31日町田市土地開発基金から町田市一般会計予算により
代金3億8300万円で本件売却地を購入した(甲1,乙43,49)。
イ平成17年2月4日,町田市は,本件売却地の売却価格について,町田
市公共財産評価等審査会(以下「審査会」という)に付議した。。
同月15日,審査会は,前記(2)イ(コ)の鑑定士P7及び鑑定士P9の
各鑑定評価書及び各意見書を踏まえ,本件売却地の売却価格を3億952
6万2036円と決定した。
この決定の際,審査会は,前記(2)イ(コ)の鑑定士P7及び鑑定士P9
が,それぞれ,鑑定評価書において,本件平坦地の鑑定評価額を7万50
00円/平方メートル及び7万4500円/平方メートルとした上,意見
書において,本件傾斜地の価格をいずれもその5%としたことに基づき,
本件傾斜地の鑑定評価額を3750円/平方メートル及び3725円/平
方メートルとする意見であると解した上で,本件傾斜地の価格について,
これらを平均し,100円未満を切り上げた価格3800円/平方メート
ルと考えるのが相当であるとして,その決定をしたものである。
(以上につき,甲1,乙19,20,43,49)
ウ元市長は,平成17年2月28日,町田市議会に対し,本件売却地につ
いて,代金3億9526万2036円で補助参加人に売却する旨の議案を
。,,,,提出したそしてその際同議案について①本件事業の実施において
用地取得の対象であるP4の移転先としての本件移転予定地の買収が必要
となっており,買収の条件として,本件移転予定地の所有者である補助参
加人に対する本件売却地の売却が必要となっていること,②本件売却地を
含むα・β緑地保全の森における緑地保全については,本件売却地の隣接
()。地本件隣接地を緑地として使用貸借契約を締結している旨を説明した
(乙21,22,23,43)
エ平成17年3月2日,町田市議会は,上記ウの議案を承認する議決をし
た(乙24,43)。
オ平成17年3月9日,町田市は,補助参加人から,本件買収地を合計1
億1002万6440円で買収した。
カ平成17年4月1日,町田市は,P10から,上記(3)イの本件隣接地
の使用貸借契約について,本件売却地が補助参加人に売却される予定であ
ることを告げられていなかったとして「契約無効による契約解除の通告,
書」の提出を受けた。これに対し,町田市は,同月11日に同市職員がP
10を訪問し,また,同年5月16日付け書面によって,本件隣接地の使
用の継続を申し入れた(甲1,51,乙43)。
キ平成17年5月27日,町田市は,補助参加人との間で,本件売却地を
補助参加人に代金3億9526万2036円で売り渡す旨の売買契約(本
件売買契約)を締結し,同契約に基づき,別紙登記目録記載のとおり所有
権移転登記手続をした。
ク平成17年5月27日,町田市は,補助参加人に対し,本件傾斜地につ
き,引き続きα・β緑地保全の森の一部として利用することを申し入れ,
1年の期間で使用貸借契約を締結して,緑地としての利用を継続したが,
その後の使用については拒否する旨の回答を受けた(乙28,証人P1。
3)
(5)本件売買契約締結後のα・β緑地保全の森の拡張
町田市は,平成17年11月30日,本件売却地に隣接する国有地(東京
都町田市ζ×番3)5088.31平方メートルのうち,分筆後の同所×番
3の土地(3392.37平方メートル)を代金6050万円(約1万78
34円/平方メートル)で国から買い受ける旨の契約を締結し,同年12月
,。19日に代金を納入し同日を登記原因日として所有権移転登記を経由した
また,町田市は,平成18年1月30日,上記国有地から分筆された同所
×番4の土地(1695.94平方メートル)について,国から,貸与期間
を平成17年12月19日から平成22年12月18日までの5年間として
(引渡しが平成17年12月19日であったとみなし,特段の意思表示がな
ければ更新される旨の約定付き,無償で貸借する旨の使用貸借契約を締結)
した。
(以上につき,乙29の1ないし4,同30)
(6)P4所有地の取得
平成18年3月28日,町田市は,P4との間で,①P4所有地を代金合
計8812万7741円で買い取る旨の売買契約を締結するとともに,②P
4の建物・工作物等の移転に関し,合計5億0184万3190円の損失補
償金を支払う旨の物件移転補償契約を締結した(乙31の1・2)。
(7)補助参加人の宅地造成工事計画
補助参加人は,平成18年11月27日付け書面により,本件売却地に関
し,その周辺住民に対し,着工予定日を平成19年7月1日,完了予定日を
平成21年6月30日として,事業者として宅地造成工事を行う旨のお知ら
せを行った(甲30)。
(8)事実認定に関する補足説明
補助参加人は上記(2)イ(ウ)(エ)及び(オ)の事実はなく同(カ)(ケ),,,,
及び(サ)のように補助参加人が町田市に対し一方的に要求したことはなく,
町田市との話合いの過程でそのような案が検討されていったものである旨主
張するが,上記各項に掲記した証拠及び弁論の全趣旨(そのような案が検討
されたこと自体は,補助参加人も認めていることを含む)並びに上記(2)。
の補助参加人と町田市のその余の交渉経緯に照らせば,当該事実が存したも
のと認められ,上記認定を覆すに足りる証拠はない。
2争点(1)(随意契約の要件の該当性)について
(1)随意契約の要件について定める地方自治法234条2項に基づく地方自
治法施行令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に
適しないものとするとき」とは,普通地方公共団体が契約を締結するに当た
り競争入札の方法によることが不可能又は著しく困難とはいえない場合であ
っても,不特定多数の者の参加を求めて競争原理に基づいて契約の相手方を
決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有
利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において当該契約
の目的,内容に照らし,それに相応する資力,信用,技術,経験等を有する
相手方を選定してその者との間で契約を締結するという方法をとるのが当該
契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり,
ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断され
る場合もこれに該当するものと解すべきであり,そのような場合に該当する
か否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公
共団体の契約締結の方法に制限を加えている同法及び同法施行令の趣旨を勘
案し,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般
の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断に
より決定されるべきものと解するのが相当である最高裁判所昭和57年行((
ツ)第74号同62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁
参照。)
(2)前記1(1)及び(2)の認定事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれ
ば,以下の事実を認めることができる。
ア平成20年度までを事業期間とされていたみちまち事業において,同年
度までに本件事業を実施するためには,工事の工程を考慮すれば,できる
限り,平成17年中に,本件事業地内のP4所有地及び本件買収地を取得
する必要があった(甲1,乙49)。
イみちまち事業に関しては,他の参加自治体である東久留米市の都市計画
道路×号線整備事業については,進捗が遅れ,平成23年度までに交通解
放とし,平成21年度以降の工事を予定していたとはいえ,他方で,町田
市内の主要幹線道路である都市計画道路×号線の整備事業としての本件事
業については,当該道路の渋滞状態の継続を踏まえ,町田市の中心市街地
の活性化,交通事情の改善等の観点から,町田市の長年の懸案事項であっ
たところ,本件事業自体,昭和63年から実施され,平成9年に一度頓挫
し,みちまち事業の一環として平成11年に再開されてから,さらに数年
を経過し,当初は平成15年度までとされていた計画が,平成20年度ま
でと既に一度の延長を経ていた状況にかんがみれば,本件事業の達成のた
,。め平成20年度までの実施を目指す必要性は相当程度高いものであった
(前記1(1)及び(2)イ(キ),甲55ないし57)
ウ本件事業地内のP4所有地を取得するには,P4の移転先を確保する必
要があったところ,町田市としては,補助参加人所有の本件移転予定地以
,,,外の土地とすることを検討したものの周辺住民の反対等もあり実らず
結局,本件移転予定地をもって移転先とすることとなった(前記1(2)。
ア)
エ本件移転予定地は本件事業地外の土地であったため,本件移転予定地を
町田市に売却するかどうかは,あくまでも,その所有者である補助参加人
の任意の選択によるものであった(甲1,乙1の1・2,同49)。
オ町田市は,本件移転予定地をその所有者である補助参加人から買収する
に当たり,平成12年7月から平成16年末まで補助参加人と交渉をした
結果,本件売却地を補助参加人に売却することを必須の条件として要求さ
れ,この条件に応じなければ,町田市が本件移転予定地を取得することは
できない状況に立ち至った。その交渉の過程で,町田市としては,当該条
件以外の条件で本件移転予定地を買収すべく,上記の約4年余にわたり,
,,交渉及び調整の努力を続けたものであるが補助参加人の上記要求により
上記の状況に立ち至ったものである(前記1(2)イ)。
(3)以上の事実関係によれば,本件売買契約は,本件事業の実施のために本
件移転予定地を含む本件買収地を補助参加人から買収するための条件とし
て,本件売却地を補助参加人に売り渡すことを目的とするものであり,競争
入札によっては補助参加人に本件売却地を売却できるとは限らず,他の入札
者に本件売却地を売り渡すことになるとすれば,その売却は上記の目的に反
して全く無意味となるものであったところ,町田市において,補助参加人と
の間で随意契約によって本件売買契約を締結することによって,本件移転予
定地を含む本件買収地を買収することが可能となり,これによって本件事業
(,の実施が可能になるという政策遂行上の重要な利点が確保されることなお
後記3(6)のとおり,本件売却地の売却価格の観点からも,同契約の締結が
元市長の裁量権を逸脱し又は濫用するものということはできない)にかん。
がみると,前記(1)に説示したところによれば,本件売買契約は競争入札に
適さないものとして随意契約によることが許容される地方自治法施行令16
7条の2第1項2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものとする
とき」に該当するものと解するのが相当であり,この点について所論の違法
はないというべきである。
3争点(2)(本件売買契約の締結における元市長の裁量権の逸脱又は濫用の有
無)について
(1)地方自治法149条6号は普通地方公共団体の財産の管理又は処分を普
通地方公共団体の長の担任事務としているところ,普通地方公共団体が行
政上の必要からその所有に属する不動産を随意契約により売却する場合に
は,当該普通地方公共団体の長は,適正な財産の処分という観点に留意し
つつ,合理的な範囲で裁量権を行使してその売却価格を決定する権限を有
しているというべきである。もとより,普通地方公共団体の長としては,
所与の条件のもとで,当該普通地方公共団体にできる限り有利な価格でそ
の所有に属する不動産を売却するよう努力すべき義務があるものというべ
きであるが(地方自治法2条14項,138条の2参照,不動産について)
は,その価格の評価には相当の幅があるのが通例であるため,その客観的
な価格を的確に把握することは必ずしも容易ではなく,また,売買契約は
価格について相手方との合意に至ってはじめて成立するものであるから,
①行政上の必要性を踏まえ,相手方との相当の交渉を経た上,その時点に
おける一定の合理性のある根拠に基づき,売却価格を決定して当該不動産
を売却したと評価される場合には,普通地方公共団体の長においてその裁
量権を逸脱し又は濫用するものではなく,違法とはいえないと解するのが
相当であり,②特に,当該売買契約の締結に係る行政上の必要性がある場
合において,相手方との相当の交渉を経て,不動産鑑定士の評価・意見に
沿って合意に至った売却価格が近接した時期の購入価格を相当程度上回る
ものであり,当該売却価格の額を含めて当該売買契約の締結について議会
の承認の議決が得られているときは(当該承認の議決の有効性については,
後記4のとおり,別途の検討を要する,その当時において,当該売却価。)
格の基礎とされた不動産鑑定士の評価・意見が著しく合理性を欠き,当該
売却価格による売買が著しく不当に廉価な売買に当たることが明らかであ
ると認められるなどの特段の事情のない限り,上記①の場合に当たるもの
として,当該売買契約の締結が上記裁量権の逸脱又は濫用により違法であ
るということはできないものというべきである。
(2)争点(2)ア(本件売却地の売却の必要性)について
ア前記2(2)によれば,①本件事業の実施に当たっては,本件事業地内の
P4所有地を取得する必要があったところ,その移転先を確保するため,
町田市における数年来の検討及び交渉の結果として,補助参加人から本件
買収地を買収する必要が生じ,さらに本件買収地の買収の条件として,補
助参加人からの要求により,本件売却地の売却が必要となったものであっ
て,②みちまち事業の一環としての本件事業は,数年来における事業の中
断,再開,延期等の経緯に照らせば,本件事業の達成のため,平成20年
度までの実施を目指す必要性は相当程度高かったものであり,P4所有地
以外の用地はほぼ取得済みであったこと及び工事の工程を考慮すれば,町
田市において平成17年中に本件売却地を売却し,本件買収地を買収する
ことの行政上の必要性は相当程度高かったものと認めるのが相当である。
イこれに対し,原告らは,本件売却地の売却の必要性について,公共事業
用地基準により,事業者が提供する代替地は,事業用地として取得する土
地の面積及び価格等を勘案して相当と認められる範囲内のものであること
を基準としていることを踏まえるべきであり,本件売却地は,補助参加人
の所有する本件買収地の面積の約54.6倍で,その価格の約3.6倍で
あり,両者の土地の形状も全く異なるのであるから,上記相当と認められ
る範囲内のものに当たるということはできず,違法である旨主張する。
ウしかしながら,公共事業用地基準は,国が国有地を公共事業の代替用地
として売り払う場合の取扱基準であって,地方自治体が公共事業の施行に
必要な土地を提供する者に契約の条件として土地を売却する場合に適用さ
れるものではなく,また,地方公共団体についてそのような一般的な取扱
基準は定められていないのであって,町田市においても,そのような取扱
基準は定められておらず,個別の事案ごとの市長の合理的な裁量による個
別具体的な判断にゆだねられている。なお,原告らの監査請求を受けた監
査委員からは,公共事業用地基準を踏まえつつ,町田市における過去数年
の実例を併せ考えると,公共事業の施行に必要な土地を提供する者に契約
の条件として売却する土地は,原則的には,町田市に提供される土地と価
値的に相当程度に同等のものとする運用がされるべきとの指摘のあるとこ
ろであるが(甲1,そもそも公共事業用地基準は法的拘束力を欠き地方)
,,公共団体に適用はなく上記アの本件売却地の売却の必要性を踏まえれば
本件買収地と本件売却地の面積及び価格の比率の点のみをもって,本件売
買契約の締結が元市長の裁量権を逸脱し又は濫用するものということはで
きないというべきであり(現に,上記監査委員の監査結果も,本件売却地
の売却の必要性を勘案して,本件の事案について同旨の結論を導いている
(甲1),上記イの主張を採用することはできない。。)
(3)争点(2)イ(土地収用法の適用等の選択の可能性)について
ア原告らは,町田市において,土地収用法の適用や,本件買収地以外の
P4の移転先を検討するなど,本件売却地の売却以外の方法を選択すべ
きであった旨主張する。
イしかしながら,本件事業地内のP4所有地には,墓地が多数含まれて
おり,土地収用を行うことは,これに対する関係者及び周辺住民の強い
反発・反対を考慮すれば,事柄の性質に照らしても,事実上困難であり,
また,仮にP4所有地について土地収用をしたとしても,その移転先と
して代替地の提供は必要不可欠となる事案であったと考えられる。また,
補助参加人の所有する本件買収地については,本件事業地内の土地(1
5.52平方メートル)以外の部分である本件移転予定地は土地収用の
対象とならないため,結局のところ,本件移転地予定地を補助参加人か
ら任意に取得する必要があったことからすると,本件事業地内の土地を
含め,本件買収地全体について土地収用をすることは困難であったとい
うべきである。
また,前記2(2)によれば,町田市としては,本件買収地以外のP4の
移転先や本件売却地の売却以外の方法を検討し,約5年余の長期にわたり
関係各方面及び補助参加人との交渉を行ったものであるが,遂に実らなか
ったものであって,かかる交渉の経緯に加えて,墓地とともに移転するP
4の移転先を探すことについては,移転先の周辺住民の理解を得ることの
困難も想定されることからすると,最終的に,他の移転先の調整が頓挫し
た末に本件買収地がP4の移転先として選択され,その結果,その所有者
との交渉の末に必須の条件とされた本件売却地の売却に応ずるに至ったこ
とも,事態の推移としてやむを得なかったものとみるのが相当であり,長
期にわたる他の方法の検討及び交渉を経た上で最終的に本件売却地の売却
以外の方法の選択に至らなかったことについて,元市長の裁量権の行使に
その逸脱又は濫用があったということはできず,また,善管注意義務の違
反があったということもできないというべきである。
したがって,上記アの主張を採用することはできない。
(4)争点(2)ウ(金銭支払の選択の可能性)について
ア原告らは,損失補償基準要綱上,損失の補償は原則として金銭給付が
原則である旨を定めており,その趣旨は公共用地の任意の取得にも妥当
するものであるから,本件売却地の売却を条件とした本件売買契約は,
同要綱に違反し,元市長の裁量権の逸脱又は濫用に当たる旨主張する。
イしかしながら,前記第2の2(4)のとおり,損失補償基準要綱は,公共
用地の強制収用の場合と,強制収用が可能であるが,これによらず任意買
収を行う場合に適用されるものであり(甲24,強制収用が可能ではな)
い本件移転予定地を含む本件買収地全体の取得に適用があるものではない
というべきである。そして,町田市としては,補助参加人に対し本件移転
予定地を含む本件買収地全体の町田市への売却を強制する手段はなく,本
件買収地全体の売却は,あくまでも補助参加人の任意の意思にゆだねられ
たものであったのであり,約4年余の長期にわたる交渉の結果,補助参加
人から,代金の支払のみでは本件買収地の売却に応じず,本件売却地の売
却を本件売買契約の締結のための必須の条件とすることを最終的な要求と
して提示されたのを受けて,前記(2)アの行政上の必要性を踏まえ,町田
市が本件買収地の取得のためにやむを得ずこれを条件とすることに応じた
としても,そのことのみをもって,元市長の裁量権の逸脱又は濫用に当た
るということはできず,また,善管注意義務の違反があったということも
できないというべきである。
したがって,上記アの主張を採用することはできない。
(5)争点(2)エ(交渉努力義務違反の有無)について
ア前記2(2)によれば,①町田市は,平成12年7月から平成16年末ま
での約4年余の交渉の過程で,当初は補助参加人から本件売却地の売却以
外の条件で本件買収地を買収することを試み,他の条件による調整が奏功
しなかったことから,次いで本件売却地の売却を条件とする場合でも,本
件平坦地のみの売却を条件とするよう補助参加人と交渉したが,結果とし
て,補助参加人が譲らず,本件売却地の全体の売却が必須の条件であるこ
とを最終的な要求として提示したこと,②本件移転予定地は本件事業地外
の土地であるため,本件移転予定地を町田市に売却するかどうかは,あく
までも補助参加人の任意の意思によるものであったことが認められる。
そうすると,町田市において,本件売却地の全体の売却を避けるための
交渉の努力に懈怠があったということはできず,この点に関し,本件売買
契約の締結につき,元市長に裁量権の逸脱又は濫用があったということは
できず,また,善管注意義務の違反があったということもできないという
べきである。
イ原告らは,被告において,そもそも補助参加人がP5のペーパーカンパ
ニーにすぎず,本件買収地からの移転先を必要としていたわけではないこ
と,補助参加人は当初本件平坦地のみの売却を要求していたところ,後に
本件平坦地の地盤確保に本件傾斜地が必要であるとして,本件傾斜地をも
要求するに至ったところ,その補助参加人の主張について十分に検討し,
ボーリング調査等をも行った上,補助参加人に対し適切な説得・反論をす
べきであったのであり,仮に補助参加人の主張のとおり地盤確保に本件傾
斜地が必要であったとしても,譲渡する範囲を真に地盤確保に必要な面積
に限定するように交渉する義務を怠った旨主張する。
ウしかしながら,上記のとおり,町田市において,本件売却地の全体の売
却を避けるための交渉の努力に懈怠があったということはできず,他方,
本件傾斜地の傾斜及び過去の崩落の状況(乙39の1・2)にかんがみれ
ば,本件平坦地のみではその地盤確保に問題がある旨の補助参加人の主張
は,社会通念上一定の合理性があることは否定できず,町田市においてこ
れを全く根拠のないものとして反駁して斥けることは事実上困難であった
といわざるを得ず,また,補助参加人とP5との関係について,上記主張
に係る事実が現に存在し,かつ,元市長がそれを把握して認識していたこ
とを認めるに足りる客観的な証拠はなく,いずれにせよ,本件買収地の買
収に応じるかどうかは補助参加人の任意の意思にゆだねられていたもので
あることからすれば,元市長において,前記(2)アの行政上の必要性も踏
まえ,その当時,なお相当額の費用の支出を要するボーリング調査等をし
てまで補助参加人との交渉を更に継続する義務があったとは認め難いの
で,原告らの上記主張によっても,本件売買契約の締結について,市長に
裁量権の逸脱又は濫用があったということはできず,また,善管注意義務
の違反があったということもできないというべきである。
したがって,上記イの主張を採用することはできない。
(6)争点(2)オ(本件売却地の売却価格の適否)について
,,,ア前記前提事実(1)ウ及び(2)前記1(2)イ(ケ)(コ)及び(サ)及び(4)ア
イ及びキ並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認め
ることができる。
(ア)町田市は,平成14年3月27日,公社から,町田市土地開発基金
を買主として,本件売却地を代金3億8300万円で購入し,その後,
平成17年1月31日に町田市土地開発基金から町田市一般会計予算に
より本件売却地を代金3億8300万円で購入した上で,同年5月27
日,補助参加人に対し,本件売却地を代金3億9526万2036円で
売却しており,差額として1226万2036円の譲渡益を得た。
(イ)町田市は,補助参加人に本件売却地を売却するに先立ち,不動産鑑
定士に本件平坦地の価格を鑑定することを依頼し,これにより,鑑定士
P7からは平成16年10月19日付けで,同月1日時点の本件平坦地
の価格を3億3100万円(7万5000円/平方メートル)とする鑑
定評価書が提出され,また,鑑定士P9からも同月19日付けで,同月
1日時点の本件平坦地の価格を3億2900万円(7万4500円/平
方メートル)とする鑑定評価書が提出された(乙15,17)。
また,町田市は,本件傾斜地の本件平坦地との価格の比率について
の意見も求め,これにより,鑑定士P7及び鑑定士P9からは,それ
ぞれ同月19日付けで,本件傾斜地の価格につき,本件平坦地の価格
の5%であるとする各意見書が提出された(乙16,18)。
(ウ)当初,町田市が補助参加人から売却を求められていたのは,本件平
坦地のみであったため,上記(イ)のように本件平坦地のみの鑑定評価が
行われたが,町田市が町田市土地開発基金から町田市一般会計予算によ
り購入するに当たり,本件売却地全体で購入すべきとされたため,予算
配分の明確化の観点から,上記(イ)のように本件傾斜地についても不動
産鑑定士による価格の比率の意見が求められることとなった。そして,
その後,補助参加人の要求が本件売却地の全体に拡張されたため,当該
各鑑定評価書及び当該各意見書をもって後記(エ)の価格の算定が行われ
ることとなった(甲1,31の3,乙42,49,証人P13,同P。
16)
(エ)本件売却地の売却価格については,平成17年2月15日,審査会
が,上記(イ)の鑑定士P7及び鑑定士P9の各鑑定評価書及び各意見書
を参考に,3億9526万2036円と決定した。この決定の際,審査
会は,鑑定士P7及び鑑定士P9が,それぞれ,鑑定評価書において,
本件平坦地の鑑定評価額を7万5000円/平方メートル及び7万45
00円/平方メートルとした上,意見書において,本件傾斜地の価格を
いずれもその5%としたことに基づき,本件傾斜地の鑑定評価額を37
50円/平方メートル及び3725円/平方メートルとする意見である
と解した上で,本件傾斜地の価格について,これらを平均し,100円
未満を切り上げた価格3800円/平方メートルと考えるのが相当であ
るとして,その決定をしたものである(乙20)。
(オ)町田市が平成14年3月27日に公社から町田市土地開発基金を買
主として本件売却地を購入するに先立ち,本件売却地の価格について,
鑑定士P7は,同年1月18日付け不動産鑑定評価書において同月1日
時点で4億1500万円(1万9285円/平方メートル)と評価し,
鑑定士P9は,同月22日付け不動産鑑定評価書において同月1日時点
()。で4億2000万円1万9500円/平方メートルと評価していた
(乙36,37)
(カ)前記(イ)の鑑定士P7及び鑑定士P9の各意見書においては,①鑑
定士P7からは,本件傾斜地は,本件平坦地と比較して,増加要因は特
になく,減価要因として,(a)10度ないし20度の傾斜のある山林で
あり,造成のために多額の費用が必要となるので,造成費による減価が
認められ,(b)傾斜地であるため,利用上の制約が生じるので,市場性
の観点から減価が認められ,(c)用途及び容積率の制限があるので,行
政上の減価が認められることを理由として,②鑑定士P9からは,本件
傾斜地は山林であり,単独で開発するには開発の困難性等から投資効率
がかなり劣るので,総合的に検討した結果,当時の不動産市況では市街
化調整区域の林地並みの価格と思料されることを理由として,いずれも
本件平坦地の価格の5%と査定するのが相当であるとする意見書が提出
されたものであり,主として,本件傾斜地の地形及び仮に宅地造成した
場合の造成費用等を踏まえた上での採算からして,宅地造成することが
困難であること等を理由とするものであった(乙16,18)。
(キ)前記(オ)の平成14年の各鑑定評価書において,鑑定士P7及び鑑
定士P9は,本件売却地の価格評価につき,本件傾斜地は,本件傾斜地
の傾斜,窪み等の地形並びに仮に宅地造成した場合の造成費用等及び交
通状況等の周辺事情を踏まえた上での採算からして,宅地造成すること
が困難であって,本件売却地の最有効使用は,本件平坦地を宅地造成し
つつ,本件傾斜地については緑地公園とすることと考えられること等を
理由として挙げていた(乙36,37)。
イ以上からすれば,本件売却地を補助参加人に売却するに当たっては,約
3年前の購入価格に比べ,1226万2036円の譲渡益が出ており,町
田市は,本件売却地の売却価格について,鑑定士P7及び鑑定士P9の2
者の平成16年の各鑑定評価書及び各意見書を踏まえて決定し,当該各鑑
定評価書及び各意見書については,平成14年の鑑定評価書との対比にお
,,,,いてその価格の評価・意見が近似しておりまた前提としている事情
特に本件傾斜地について宅地造成することが宅地造成費用等の面からして
最有効使用といえるかどうかの判断について共通しているものであった。
本件においては,前記(2)アのとおり本件売買契約の締結に係る行政上
の必要性は相当程度高いものであったところ,前記(5)のとおり約4年余
の長期にわたる相当の交渉を経て,上記不動産鑑定士2名の評価・意見に
沿って補助参加人との間で合意に至った本件売却地の売却価格は,約3年
前の購入価格を1226万円余り上回るものであり,当該売却価格の額を
含めて本件売買契約の締結について町田市議会の承認の議決が得られてい
る以上(上記承認の議決に係る瑕疵の有無については,後記4参照,前)
記(1)で検討したところによれば,その当時において,当該売却価格の基
礎とされた上記不動産鑑定士2名の評価・意見が著しく合理性を欠き,当
該売却価格による売買が著しく不当に廉価な売買に当たることが明らかで
あると認められるなどの特段の事情のない限り,本件売買契約の締結が上
記裁量権の逸脱又は濫用により違法であるということはできないというべ
きであり,以下,上記特段の事情の有無について,本件鑑定の結果との比
較及び原告らの主張を踏まえ,検討することとする。
ウ本件鑑定の結果においては,本件傾斜地の価格が1億9600万円(1
万1400円/平方メートル)と評価されており,原告らは,この鑑定結
果等を踏まえて,町田市は,本件売却地の購入時に鑑定評価をしたことの
ある鑑定士P7及び鑑定士P9から各意見書を徴するだけで価格を決定す
るのでなく,改めて他の不動産鑑定士に本件傾斜地についての鑑定を依頼
すべきであったのであり,これを行わずに,町田市が本件売却地を代金3
億9526万2036円で補助参加人に売却したことは,不当に廉価に売
却したものである旨主張する。
そこで検討するに,本件鑑定の結果及び上記主張については,以下の
事項を指摘することができる。
(ア)まず,本件鑑定の概要は,次のとおりである。
本件鑑定は,本件傾斜地の価格について,①林地からのアプローチ
(市街化調整区域の山林との比較による試算)と②宅地見込地からの
アプローチ(本件傾斜地について宅地造成することを前提とする取引
事例比較法及び開発法による試算)から検討を行っている。
そして,①林地からのアプローチでは,本件傾斜地の試算価格を1
億7100万円(10000円/平方メートル(本件鑑定の鑑定評価)
の要項9頁)とし,②宅地見込地からのアプローチでは,本件傾斜地
の試算価格を1億9600万円(11400円/平方メートル(同要)
項12頁)としている。
その上で,①林地からのアプローチによる試算価格は本件売却地の
下限の価格であるのに対し,②宅地見込地からのアプローチによる試
算価格は宅地見込地としての本件傾斜地を含む本件売却地の適正価格
を算出したものであり,これらを対比した上,後者の試算価格を相当
として,本件傾斜地の試算価格を1億9600万円(11400円/
平方メートル)と評価している(同要項13頁。)
(イ)しかしながら,まず,前記①の林地からのアプローチについては,
その取引事例として,林地としての比準価格(取引事例比較法の適用)
の検討においては,(a)東京都町田市ν所在の山林・畑約6941平
方メートルで取引価格10828円/平方メートル,(b)東京都町田
市ξ所在の山林約3884平方メートルで取引価格7724円/平方
メートル,(c)東京都町田市π所在の山林2175平方メートルで取
引価格10713円/平方メートル,(d)東京都町田市ν所在の山林
約1万5640平方メートルで取引価格10109円/平方メートル,
(e)東京都町田市π所在の山林約1万2425平方メートルで取引価
格19662円/平方メートルが挙げられているところ,このうち,
(c)及び(e)については宅地転用を目的とした取引であることが明ら
かであるとして対象事例から除かれ,残る(a),(b)及び(d)が対象
事例として検討されているものの,このうち,(a)及び(b)について
は,本件傾斜地と比したときに,傾斜地ではない点が異なる。そうす
ると,傾斜地である取引事例としては(d)のみが挙げられているにと
どまることになる(本件鑑定の別表1−1。)
また,公示価格等を基準とした価格の検討においては,<A>東京都
町田市σ×番所在の山林6347平方メートルで公示価格4550円
/平方メートル及び<B>町田市τ×番所在の山林4383平方メート
ルで公示価格が5400円/平方メートルが対象事例として挙げられ,
それぞれ格差による修正が加えられているが,そのうち,特に地域格
差による修正について,<A>は100/60,<B>は100/75が
乗じられているところ,このような大幅な増額を伴う修正の合理性を
()。基礎付ける客観的な根拠が示されているとはいい難い同別表1−1
(ウ)次に,前記②の宅地見込地からのアプローチについては,前記イ
の平成14年の各鑑定評価書及び平成16年の各意見書と比較した上
で,本件売却地の売却時において,本件傾斜地を宅地造成することが
最有効使用であると判断することの適否,本件傾斜地の宅地造成に要
する費用の試算の適否等が問題となる。
この点に関し,補助参加人は,平成18年11月27日の時点で,
本件売却地について,開発面積21570.64平方メートル,戸建
住宅105戸,着手予定を平成19年7月1日,完了予定を平成21
()(),年6月30日建築工事を含まずとする宅地造成を予定し甲30
また,平成20年4月10日の時点で,本件売却地全体を開発する目
的で都市計画法32条(公共施設の管理者の同意等)の手続中であり,
「仮)φ宅地造成工事協議申請書(事業区域:φ×番5外,事業区(」
域の面積:21536.51平方メートル(実測面積,用途等:戸建)
住宅104戸)を提出していることがうかがわれるところである(本
件鑑定の鑑定評価の要項10頁。)
しかしながら,本件鑑定においては,想定される工事期間を14か
月としているが,上記のように,補助参加人は平成18年11月27
日の時点において,工事期間を平成19年7月1日から平成21年6
月30日の24か月と予定しており,より長い期間を想定していた。
また,上記のように,補助参加人は平成18年11月27日の時点で
は,平成19年7月1日からの着工を予定していたのに対し,実際に
は,本件売却地の開発については,結局,平成20年4月10日の時
点においてもなお都市計画法32条の手続中であり,その進行は相当
に遅延していることがうかがわれる。また,本件鑑定においては,造
成工事後の分譲住宅の販売期間について,104戸が販売開始から5
か月で完売となることが前提とされているが,平成17年の本件売買
契約時において,郊外の北側斜面の傾斜地に位置する交通の利便を必
ずしも期待し難い100戸余の大規模分譲住宅が本件鑑定の想定する
ような短期の期間内に完売される確たる見込みがあったと断定し得た
ものであるかについても,その客観的な根拠が示されているとはいい
難い。
また,本件鑑定では,想定される造成工事費が11億6190万円
とされているところ,補助参加人は,想定される造成工事費は,丙4
号証の1ないし3の擁壁杭基礎工事費2億4150万円,丙2号証の
工事費10億8150万円及び丙3号証の地中埋設物対策工事費3億
2865万円の合計額である16億5165万円と主張する。この点,
丙4号証の1ないし3の擁壁杭基礎工事費は,丙2の擁壁工事の費用
(第6号内訳書)と一部重複するところがあるように見受けられるも
のの,他方,丙3号証の地中埋設物対策工事費については,丙2号証
と重複するとはいい難く,別途算定すべきものと考えられる。そして,
丙3号証は,平成20年6月6日付けの本件鑑定の結果が提出される
前の平成20年4月16日付けで作成されたものと認められ,特に本
件鑑定に対抗するために作成されたものとも考え難い。そうすると,
丙2号証及び丙3号証の合計額である14億1015万円を造成工事
費用として,本件鑑定の別表3−1「開発法による試算価格」の計算方
法に従って計算すると,本件売却地の価格は3億0306万9965
円となり,実際の売却価格よりも低額となるとの評価も考えられると
ころである。
さらに,本件鑑定では,平成20年4月10日時点での上記協議申
請書における開発計画が,合法的で実現性が高い計画と判断したとす
るが(本件鑑定の鑑定評価の要項10頁,周辺事情等の変化を踏まえ)
れば,平成20年4月10日時点の開発計画が本件売却地の売却時で
ある平成17年の時点においても同様に評価されるものであったとは
直ちにいえないというべきである。また,本件鑑定では,造成事例と
比較した造成工事費の検討も行われているが,当該事例はいずれも平
坦地の造成事例で,工期も10か月及び6か月と短期のものであって,
これらの比較からは本件傾斜地における宅地造成のための費用を直ち
に算出し難いものと考えられる(本件鑑定の別表3−6。)
エ他方,前記アのとおり,鑑定士P7及び鑑定士P9による平成14年
の各鑑定評価書及び平成16年の各意見書では,いずれも,宅地造成の
ために多額の費用を要すること等にかんがみ,本件傾斜地については宅
地造成が最有効使用とはいえないことを前提として評価され,特に平成
16年の各意見書では,①鑑定士P7からは,本件傾斜地は,本件平坦
地と比較して,増加要因は特になく,減価要因として,(a)10度ない
し20度の傾斜のある山林であることによる多額の造成費による減価,
(b)傾斜地であるため利用上の制約が生じることによる市場性の観点か
らの減価,(c)用途及び容積率の制限による行政上の減価が認められる
ことを理由として,②鑑定士P9からは,本件傾斜地は山林であり,単
独で開発するには開発の困難性等から投資効率がかなり劣るので,総合
的な検討により当時の不動産市況では市街化調整区域の林地並みの価格
と思料されることを理由として,いずれも本件平坦地の価格の5%と査
定するのが相当である旨の意見が述べられており(前記ア(カ)),不動産
評価の専門家である不動産鑑定士2名からそれぞれ上記各理由を付して
一致した意見が示されたものであって,本件傾斜地の傾斜角度及び過去
の崩落の状況からすれば,宅地造成に相当多額の費用を要すること自体
は容易に想像され,社会通念に照らしても,宅地造成が最有効利用とは
いえない旨の上記意見にも一定の合理性のある根拠があるということが
できる。そして,前記アのとおり,平成16年の各鑑定評価書及び各意
見書と平成14年の各鑑定評価書の内容は,全体として整合的で理由も
共通していること,これらの評価・意見を基礎とする本件売却地全体の
価格は,町田市公有財産規則に基づく審査会(町田市公共財産評価等審査
会)の審査を経て決定され,2年10か月前の購入価格に比して1226
万円余の譲渡益を生ずるものであったこと,同一の鑑定士に鑑定評価を
依頼する場合でも,真に地価の大幅な変動要因があれば相応に異なる評
価・意見が得られる可能性は十分にあるところ,その2年10か月の間
に本件売却地及び周辺地の地価の著しい上昇の原因となるべき事情の存
在を認めるに足りる的確な証拠はないこと等の諸事情にかんがみれば,
前記(イ)及び(ウ)のような問題点のある本件鑑定の評価・意見と比較し
ても,なお,上記不動産鑑定士2名の評価・意見が著しく合理性を欠き,
当該売却価格による売買が著しく不当に廉価な売買に当たることが明ら
かであると認めるには足りないといわざるを得ない(なお,仮に,他の
不動産鑑定士に依頼してより高額な評価の意見が出されたとしても,本
件鑑定の評価・意見の上記問題点にかんがみると,上記不動産鑑定士2
名による平成16年の各鑑定評価書及び各意見書との比較を踏まえて,
審査会の審査及び補助参加人との交渉を経た上で,2年10か月前の購
入価格に1226万円を付加した価格を更に大幅に上回る価格での決定
及び合意に至ることが実際に可能であったとは直ちに認め難い。また,
原告らは,本件売却地の購入価格は公社(東京都)が町田市の意向に配
慮した結果と推察され,正当なものではない旨主張するが,現に購入価
格との差額1226万円余の譲渡益が町田市に生じていることは事実で
ある上,購入価格の決定の経緯に係る上記主張は推測を述べるものにす
ぎず,公社の性質に照らしても,その購入価格が不当な考慮に基づき過
度に低廉に設定されたものと認めるに足りる的確な証拠はない。。)
オ以上によれば,本件においては,本件売買契約の締結に係る行政上の
必要性は相当程度高いものであったところ,約4年余の長期にわたる相
当の交渉を経て,上記不動産鑑定士2名の評価・意見に沿って補助参加
人との間で合意に至った本件売却地の売却価格は,約3年前の購入価格
を1226万円余り上回るものであり,当該売却価格の額を含めて本件
売買契約の締結について町田市議会の承認の議決が得られており(上記
承認の議決に係る瑕疵の有無については,後記4参照,その当時におい)
て,当該売却価格の基礎とされた上記不動産鑑定士2名の評価・意見が
著しく合理性を欠き,当該売却価格による売買が著しく不当に廉価な売
買に当たることが明らかであると認められるなどの特段の事情を認める
に足りない以上,本件売買契約の締結が元市長の裁量権の逸脱又は濫用
により違法であるということはできないというべきである。
カなお,前記アによれば,当初は本件平坦地のみの売却が検討されてい
たため,平成16年の時点で,本件平坦地についてのみ各鑑定評価書を
求め,本件傾斜地については予算措置の関係から各意見書の限りでこれ
を求めたものであったが,その後の補助参加人の要求により,本件傾斜
地を含む本件売却地全体を売却することになったものであるところ,そ
の時点で,本件傾斜地についても別途の鑑定評価書を更に求めることが
より望ましい取扱いであったことは否定し難いものの,上記オで検討し
たところによれば,前記アの平成14年の各鑑定評価書並びに平成16
年の各鑑定評価書及び各意見書を踏まえた本件売却地の売却価格の決定
の過程において,そのことのみによって,元市長の裁量権の行使に逸脱
又は濫用があり,あるいは手続上の違法があったとまで認めることはで
きないというべきである。
また,原告らは,被告と国との間で平成17年11月30日に締結さ
れた本件売却地に隣接する山林の取得価額が約1万7834円/平方メ
ートルであったことを指摘しているが,この事例は本件鑑定でも比較事
例として取り上げられていないところであり,これをもって,上記の判
断を左右するに足りるものではないというべきである。
(7)小括
以上によれば,本件売買契約については,元市長において,前記(2)のと
おり,行政上の必要性を踏まえ,前記(3)ないし(6)のとおり,相手方との
相当の交渉を経た上,一定の合理性のある根拠に基づいて売却価格を決定
して当該不動産を売却したものと評価することができ,普通地方公共団体
の長としての裁量権を逸脱し又は濫用するものではなく,善管注意義務に
違反するものでもなく,違法とはいえないというべきである。
なお,原告らは,本件売却地が緑条例等によりα・β緑地の一部として
指定されていたことを指摘するが,そのことを勘案しても,上記の判断が
左右されるものではないというべきである。
4争点(3)(市議会の議決の瑕疵の有無(元市長の欺罔的答弁の有無)につ)
いて
,,(「」(1)原告らは元市長において本件売却地の売却の議案以下本件議案
という)を提出するに当たり,実際には本件売却地を補助参加人に対して。
代替地(都市計画法74条参照)として提供する必要はないのに,これがあ
るかのように説明し,また,P10との間で本件隣接地について締結した使
用貸借契約について,本件売却地を補助参加人に売却する予定であるという
重要な事実を秘して締結されたもので,P10が当該事実を知れば当該使用
貸借契約の無効を主張することが予想される状況であったにもかかわらず,
このような問題点を隠したまま,緑地保全のために本件隣接地を確保したと
の説明をしているなど,欺罔的答弁をして町田市議会の承認を得たものであ
り,同議会の承認の議決には瑕疵がある旨主張する。
(2)しかしながら「代替地」の用語は原告らの指摘に係る都市計画法74,
条において用いられているものではなく,同条に基づいて提供される土地
のみを指す用語ではないところ,前記2(2)及び3(2)のとおり,本件議案
の提出時において,町田市としては,本件事業の実施のための本件買収地
の買収の条件として,補助参加人に本件売却地を売却する必要があったこ
とは事実であって,都市計画法74条に基づいて提供される土地として本
件売却地の売却が必要であったものではないものの,上記のとおり本件買
収地を補助参加人から買収するための条件として,本件売却地を補助参加
人に売却することが条件となっていたことについて,元市長が本件議案に
ついて本件売買契約の締結(本件売却地の売却)を必要とする事情を説明
するに際して,本件売却地を本件買収地の「代替地」と表現したことをも
って,これを欺罔的な説明に当たるということはできない。
また,本件議案の提出時において,緑地の保全のため,町田市がP10
との間で本件隣接地を使用貸借契約を締結していたことは事実であり,他
方で,本件事業の実施のための本件売却地に係る本件売買契約と,緑地保
全のための本件隣接地に係る使用貸借契約とは,法的には不可分一体の関
係にあるものではなく,町田市において,本件売却地に係る本件売買契約
の締結及びその認識の有無によって,P10が本件隣接地に係る使用貸借
契約について動機の錯誤による無効等の主張をするに至ることを予見し得
たものと解すべき事情を認めるに足りる的確な証拠はない以上,このよう
に本件議案の提出・審議の時点で予見し得たとは認められない事情に言及
しなかったことをもって,欺罔的な説明に当たるということもできない。
(3)さらに,原告らは,本件売却地の売却価格の決定の経緯や周辺事情が十
分に説明がされておらず,適正価格であったかのように欺罔されたものであ
るかのように主張するが,この点については,本件売却地の売却価格の決定
,,の基礎とされた事情等について虚偽の説明がされた事実は認められずまた
前記3(7)のとおり,その当時,元市長においてその決定に係る本件売却地
の売却価格が適正価格であると認識したことには一定の合理性のある根拠が
,。あったと認められる以上その売却価格について欺罔があったとはいえない
なお,原告らは,補助参加人の背後には,過去に町田市と不動産に関して紛
争の生じたことのあるP5が関与していたという情報も開示する必要があっ
たと主張するが,その当時,その主張に係る事実が現に存在し,かつ,元市
長においてその事実を把握して認識していたことを認めるに足りる客観的な
証拠はなく,事柄の性質上,確実な証拠に基づく確認を経ていない段階でこ
のような情報を議会に説明しなかったことをもって,これを欺罔的な説明に
当たるということはできないというべきである。
(4)したがって,元市長の町田市議会に対する本件議案に関する説明が欺罔
的な説明に当たるということはできず,本件議案の承認の議決について所論
の瑕疵があるとは認められず,町田市議会における本件議案の承認の議決は
有効に成立したものと認めるのが相当である。
5争点(4)(緑条例等の違反の有無)について
(1)前記第2の2(2)のとおり,緑条例において,市長は,自然と生活が調
和した環境の形成をまちづくりの基本とし,緑の保全と育成が図られるよ
う努めなければならず(同条例2条1項,この目的を達成する上で重要な)
事項については,みどり委員会の意見を聞かなければならないとされ(同
条2項,みどり委員会は,市長の諮問に応じ,①緑の保全と育成にかかわ)
る基本事項,②著しく緑を損なうおそれのある事業及び行為に関すること,
③その他緑の保全と育成に関することについて調査審議するものとされて
おり(同条例6条,上記②にいう著しく緑を損なうおそれのある事業及び)
行為(同条2号)とは,(a)宅地開発指導要綱(平成6年4月1日施行)
の適用を受けるもの,(b)区画整理事業,(c)公団,公社及び都営の住宅
建設事業,(d)市が行う事業(いずれも対象面積が1ヘクタール以上のも
の,(e)その他市長が必要と認めるもののうち,まちづくり協議会設置要)
綱(昭和59年5月1日施行)に基づくまちづくり協議会の議を経て町田
市長が諮問することと決定したものをいうとされている(同条例施行規則
9条,別表第2。)
緑条例及び同条例施行規則の上記各規定によれば,上記①又は②の事項
については,緑条例の目的を達成する上で重要な事項としてみどり委員会
の意見聴取が義務付けられ,上記③の事項については「その他」の事項と,
しての事柄の性質上,みどり委員会に諮問するか否かは市長の合理的な裁
量にゆだねられているものと解するのが相当である。
そして,本件売買契約の締結は,(ア)それ自体は上記(a)ないし(d)の
いずれにも該当せず,特に市長が必要と認めてまちづくり協議会の議を経
て諮問することを決定したものでもない以上,上記(e)にも該当しないの
で,上記②の事項(著しく緑を損なうおそれのある事業及び行為)に当た
るとはいえず,また,(イ)上記①の事項(緑の保全と育成にかかわる基本
事項)に当たるともいえず,(ウ)仮に上記③の事項に含まれるとしても,
上記のとおり,上記③の事項についてみどり委員会に諮問するか否かは市
長の合理的な裁量にゆだねられており,市長はその諮問を義務付けられる
ものではないと解されるので,本件売買契約の締結は,緑条例上,みどり
委員会の調査審議を経ることが義務付けられる事項には該当しないものと
解するのが相当である。
(2)原告らは,緑条例等の規定の制定趣旨を踏まえれば,本件売買契約の締
結についてはみどり委員会の意見を聞くべきであった旨主張するが上記(1),
のとおり,緑条例上,本件売買契約の締結はみどり委員会の調査審議を経
ることが義務付けられる事項には該当しないものであったところ,<A>町
田市において,当時,本件事業の実施の必要上,平成17年中に本件売却
地の売却及び本件買収地の買収を実現する必要性は相当程度高かったこと
(前記3(2)ア,<B>緑地の保全のため,本件売買契約の締結に先立ち,)
P10との間で本件隣接地について使用貸借契約が締結され(前記1(3)
イ,本件売買契約の締結と同時に,補助参加人との間でも本件傾斜地につ)
いて使用貸借契約が締結され(同(4)ク,本件売買契約の締結直後にα・)
β緑地保全の森の拡張措置も執られていること(同(5))等の諸事情にかん
がみると,その当時,元市長においてみどり委員会に諮問をしなかったこ
とについて,元市長に上記裁量権の逸脱又は濫用があったとは認め難く,
みどり委員会の意見を聞かなかったことのみをもって,直ちに本件売買契
約が無効となり,あるいは,元市長又は補助参加人が町田市に対し損害賠
償責任を負うべき手続上の違法性が生ずるということはできないというべ
きである。
6(1)争点(Ⅰ)(本件売買契約の有効性)について
前記1ないし5において検討したところによれば,本件売買契約に関し,
地方自治法2条16項及び17項(随意契約の要件)違反又は公序良俗違反
を理由として同契約を無効とすべき違法があると認めることはできないとい
うべきである。
(2)争点(Ⅱ)(本件売買契約の締結についての元市長及び補助参加人の損害
賠償責任の有無)について
ア前記1ないし5において検討したところによれば,元市長において,本
件売買契約の締結において,本件売却地の売却及びその売却価格の決定等
について,善管注意義務違反があるということはできず,普通公共団体の
長としての裁量権の逸脱又は濫用による違法があるということはできず,
また,手続上も,町田市議会の承認の議決につき欺罔による瑕疵の存在は
認められず,みどり委員会への諮問を経ていない点も違法とはいえない以
上,元市長において町田市に対し損害賠償責任を負うものと認めることは
できないというべきである。
イそして,上記(1)及びアのとおり,本件売買契約自体が違法なものでは
なく,同契約の締結における元市長の行為に違法があるとは認められない
ことに加え,そもそも,本件買収地の所有者である補助参加人が本件移転
予定地を含む本件買収地全体の売却に応ずるか否かは専ら補助参加人の任
意の意思にゆだねられた事柄であって,株式会社である補助参加人におい
てより有利な内容の契約の締結のため相手方との交渉の過程でより有利な
条件の要求を提示すること自体は企業の経済活動として違法と評価される
ものではないことにかんがみると,前記1(2)のとおり,補助参加人にお
いて,町田市がP14合資会社と本件買収地の売買に関し交渉を始めた後
に,同社から本件買収地を取得して町田市と交渉を始め,その過程で,町
田市に対し本件平坦地の売却を求めるようになり,さらに本件傾斜地の売
却まで求めるようになった等の事情が認められるものの,他方で,本件買
収地の町田市への売却について,当初は他の土地(市営住宅跡地)の売却
を受ける条件を了承する方向で検討するなど,他の条件も検討していたこ
とも勘案すれば,本件買収地の売買に関する交渉の過程で,補助参加人が
町田市に対し損害賠償責任を負うべき権利濫用その他の違法な行為をした
ものと認めることはできないというべきである。
(3)なお,原告らのその余の主張も,上記(1)及び(2)の判断を左右するに足
りるものとは認められない。
したがって,本件売買契約の無効を理由とする原告らの主位的請求並び(4)
に本件売買契約の締結に係る元市長及び補助参加人の町田市に対する損害賠
償責任の存在を理由とする原告らの予備的請求は,いずれも理由がない。
7結論
,,,以上の次第で原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし
訴訟費用の負担について,行訴法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を
適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官岩井伸晃
裁判官倉澤守春は差し支えにつき,裁判官大畠崇史は転補につき,
いずれも署名押印することができない。
裁判長裁判官岩井伸晃

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