弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人坂本壽郎の上告理由第一について
 農地買収計画処分についての訴願を棄却した裁決に対して、買収計画処分及び裁
決を受けた者から買収計画処分の違法であることを理由に行政事件訴訟特例法(昭
和三七年法律一三九号によつて廃止)による裁決取消の訴が提起され、右訴につい
て買収計画処分の違法を理由として裁決を取り消す判決がされ、右判決が確定した
ときは、その買収計画処分の違法であることが確定して右処分は効力を失うと解す
るのが、相当である。けだし、原処分の違法を理由として裁決を取り消すことがで
きる行政事件訴訟特例法のもとにおいては、原処分の違法を理由とする裁決取消の
訴は実質的には原処分の違法を確定してその効力の排除を求める申立にほかならな
いのであり、右訴を認容する判決も裁決取消の形によつて原処分の違法であること
を確定して原処分を取り消し原処分による違法状態を排除し、右処分により権利を
侵害されている者を救済することをその趣旨としていると解することができるので
あり、また、もしこれと反対に、このような裁決取消の判決が原処分の効力に影響
を及ぼさず、原処分の失効には原処分取消の判決あるいは新たな行政処分を要する
と解すると、違法な行政処分を受けた者の権利救済に十分でないのみならず、原処
分取消の訴と裁決取消の訴の重複、その各判決の抵触、原処分取消の行政処分の遅
滞による違法状態の継続、右の新たな行政処分についての紛争の惹起等、種々不合
理な事態を生ずることになるからである。
 これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実は次のとおりである。
 すなわち、旧大阪市D委員会は、昭和二三年四月二九日被上告人所有の本件土地
が自作農創設特別措置法(昭和二七年法律二三〇号によつて廃止)三条一項の小作
地にあたるとして、同項によりその買収計画を定めた。被上告人は、右買収計画処
分につき異議を述べたのち、旧大阪府E委員会に訴願を申し立てたが、同二三年六
月三〇日同委員会は右訴願を棄却する裁決をした。そこで、被上告人は、同委員会
(承継人大阪府知事)を相手方として、大阪地方裁判所に右裁決取消の訴を提起し、
その理由としては、本件土地が小作地でなく、したがつて買収計画処分が違法であ
ることのみを主張した。同裁判所は、昭和三六年九月一九日被上告人の主張を認め
て右裁決を取り消す判決をし、更に同三八年三月二八日大阪高等裁判所において右
判決に対する控訴棄却の判決が言い渡され、同判決は上告の申立もなく確定した。
 右事実によると、右判決の確定によつて本件買収計画処分の違法であることが確
定し、右処分は失効したものといわなければならず、これと同趣旨の原審の判断は
正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用するこ
とができない。
 同第二について
 訴の提起が時効中断の効力を生ずるのは、訴の提起により権利主張がされ、かつ、
権利について判決による公権的判断がされることになるからであり、訴が取り下げ
られたときに訴の提起による時効中断の効力が生じないのは、訴の取下は、通常、
訴の提起による権利主張をやめ、かつ、権利についての判決による公権的判断を受
ける機会を放棄することにほかならないからである。そうすると、訴の取下が、権
利主張をやめたものでもなく、権利についての判決による公権的判断を受ける機会
を放棄したものでもないような場合には、訴を取り下げても訴の提起による時効中
断の効力は存続すると解するのを相当とする。
 原審の適法に確定した事実及び本件記録によると、次のことが明らかである。
 被上告人所有の本件土地について、昭和二三年七月二日付で自作農創設特別措置
法に基づく買収処分及びFへの売渡処分がされ、同二五年四月四日右Fのための所
有権取得登記がされ、更にFは右土地をGに贈与し、同二九年一一月三〇日Gのた
めの所有権取得登記がされた。そこで、被上告人は、昭和三三年四月七日大阪府知
事を相手方として、大阪地方裁判所に訴を提起し、右買収処分、売渡処分の無効確
認等を求めるとともに、右訴において、F、Gを相手方として、その各所有権取得
登記の抹消登記手続を求めた(大阪地方裁判所昭和三三年(行)第二一の二号事件、
以下「旧訴」という。)。右訴提起当時Fが死亡していたので、被上告人は、昭和
三九年三月二七日Fの相続人らを相手方として、Fの右所有権取得登記の抹消登記
手続を求めるとともに、G以降の本件土地の譲受人らを相手方として、各その所有
権取得登記の抹消登記手続を求める本訴を大阪地方裁判所に提起した。旧訴と本訴
は、別個に審理されていたが、のちに併合され、Gに対する訴が重複していること
が明らかとなり、被上告人は、そのうちの一方を取り下げることとなつたが、その
際、旧訴中の買収処分、売渡処分の無効確認を求める部分等がすでにその必要がな
くなつたなどしたので、手続の便宜上旧訴を取り下げ本訴を追行することとしたも
のである。
 右事実によると、被上告人の旧訴の取下は、権利主張をやめたものでもなく、権
利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないのである
から、右訴の取下によつて訴の提起による時効中断の効力は消滅しないといわなけ
ればならない。
 それ故、右と同趣旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はなく、論
旨は採用することができない。
 よつて民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    江 里 口   清   雄
            裁判官    関   根   小   郷
            裁判官    天   野   武   一
            裁判官    坂   本   吉   勝
            裁判官    高   辻   正   己

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